説明

金属材の押出し方法及び装置並びに金属リサイクル方法及び装置

【課題】 酸化膜が付着した金属粉砕材を押し出す際に、酸化物を微細化し、また表面の膨らみをなくする。
【解決手段】 表面に酸化膜が付着した金属粉砕材25を加熱軟化させ押出しダイ10の押出し口17から押し出して押出し部材を製造する際に、金属粉砕材は押出し口に向かって径が減少する円錐状の傾斜面に沿って移動して押し出される。押出しダイには、押出し口の入口側にそれよりも大径の導入部16を形成するのがよい。導入部は円錐状としてその半角αは60度とするのがよい。本発明は金属材の押出し方法及び装置、金属リサイクル方法及び装置に適用可能である。本発明は、押し出される金属をマグネシウム合金とした場合に効果を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の押出し方法及び装置並びに金属リサイクル方法及び装置、特に表面などに酸化膜が付着し易いマグネシウム合金などに適したこの種の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムやアルミニウムなどの軽合金は高価であるので、ダイカスト製品などの加工過程で発生する切り粉を再使用する技術(例えば特許文献1)がある。これは成形型内にフレーク状の金属粒子(粒子の最大長/厚みが10以上のもの)を充填した後、該金属粒子を加熱状態で圧縮成形し、次いで押出しダイスを上記成形型内に挿入して前記圧縮成形体を圧縮方向に押出し成形することを特徴とするものである。これによれば、フレーク状の金属粒子を用いているので、一方向圧縮により粒子が圧縮方向に対してほゞ直角方向に配向し、これを圧縮方向に押出すことによって、粒子が強い塑性変形を受けるから密着性が向上する。したがって剛性の高い押出し部材を得ることができる。押出し部材の剛性向上とともに延性を増大させることができる。さらに、金属製品の切削加工過程で発生する切り粉を再使用することにより、資源の有効な活用を図ることができる。という各効果を得ることができる。
【特許文献1】特開平5−209206号公報(段落〔0006〕〜〔0012〕、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような切削加工過程で発生する切り粉には、表面に酸化膜が付着したり内部に多少とも酸化物が混入したりしているので、これらが製造された押出し部材の組織内に留まって押出し部材の強度を低下させるという問題がある。また特許文献1のダイスでは押出し口をダイスの面に直接形成しており、押出し口に送り込まれる加熱圧縮された切り粉の流れが乱れて切り粉の間に入っていた空気が巻き込まれるので、押し出された押出し部材の表面に膨れ欠陥が生じるという問題がある。本発明は、押出し部材の組織内に留まる酸化物を微細化することにより無害化し、また流れが乱れないようにしてこのような各問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、本発明による金属材の押出し方法は、表面に酸化膜が付着した金属粉砕材を融点以下であって変形が容易になる軟化温度に加熱し押出し口から押し出して押出し部材を製造する方法において、押し出しに際して軟化された金属粉砕材が押出し口に向かって径が減少する円錐状の傾斜面に沿って移動しながら同押出し口から押し出されることを特徴とするものである。
【0005】
また、本発明による金属材の押出し装置は、表面に酸化膜が付着した金属粉砕材を融点以下であって変形が容易になる軟化温度に加熱して押出しダイの押出し口から押し出す押出し手段を備えた金属材の押出し装置において、押出しダイには押出し口の入口側に同押出し口よりも大径で同押出し口に向かって径が減少する円錐状の導入部が形成され、この円錐状の導入部の半角は60度であることを特徴とするものである。
【0006】
前2項に記載の金属材の押出し方法または装置において、押し出される金属はマグネシウム合金もしくはアルミニウム合金とするのがよい。
【0007】
また、本発明による金属リサイクル装置は、表面に酸化膜が付着した金属の廃材を粉砕する金属粉砕材供給手段と、この金属粉砕材供給手段からの金属粉砕材を融点以下であって変形が容易になる軟化温度に加熱し押出し口から押し出して線材とする押出し手段を備えた金属リサイクル装置において、押出しダイには押出し口の入口側に同押出し口よりも大径で同押出し口に向かって径が減少する円錐状の導入部が形成され、この円錐状の導入部の半角は60度であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上述した金属材の押出し方法の発明によれば、押し出しに際して軟化された金属粉砕材が押出し口に向かって径が減少する円錐状の傾斜面に沿って移動しながら同押出し口から押し出されるので、軟化されて移動する金属粉砕材はこの傾斜面に沿って移動する際に剪断作用を受け、また流れの乱れも減少する。軟化された金属粉砕材は、その内部に混入された酸化物がこの剪断作用により微細化され、また空気を巻き込むことなく押出し口から押し出されて押出し部材となる。従ってこの金属材の押出し方法により製造された押出し部材は、その組織内に留る酸化物が微細化されて無害化されるので強度が低下するという問題は減少し、また表面に膨れ欠陥が生じることもなくなる。
【0009】
また、金属材の押出し装置の発明によれば、押出しダイには押出し口の入口側に同押出し口よりも大径で同押出し口に向かって径が減少する円錐状の導入部が形成され、この円錐状の導入部の半角は60度であるので、軟化されて移動する金属粉砕材はこの導入部内に形成される円錐状の傾斜面に沿って移動しながら同押出し口から押し出され、この傾斜面に沿って移動する際に剪断作用を受け、また流れの乱れも減少する。軟化された金属粉砕材は、その内部に混入された酸化物がこの剪断作用により微細化され、また空気を巻き込むことなく押出し口から押し出されて押出し部材となる。従ってこの金属材の押出し装置により製造された押出し部材は、その組織内に留る酸化物が微細化されて無害化されるので強度が低下するという問題は減少し、また表面に膨れ欠陥が生じることもなくなる。
【0010】
マグネシウム合金及びアルミニウム合金は軽量ではあるが酸化し易いという欠点がある。従って前2項に記載の金属材の押出し方法または装置は、押し出される金属をマグネシウム合金もしくはアルミニウム合金とした場合に最も効果を発揮することができる。
【0011】
また、本発明による金属リサイクル装置によれば、押出しダイには押出し口の入口側に同押出し口よりも大径で同押出し口に向かって径が減少する円錐状の導入部が形成され、この円錐状の導入部の半角は60度であるので、軟化されて移動する金属粉砕材はこの導入部内に形成される円錐状の傾斜面に沿って移動しながら同押出し口から押し出され、この傾斜面に沿って移動する際に剪断作用を受け、また流れの乱れも減少する。軟化された金属粉砕材は、その内部に混入された酸化物がこの剪断作用により微細化され、また空気を巻き込むことなく押出し口から押し出されて線材となる。従ってこの金属材の押出し装置により製造された線材は、その組織内に留る酸化物が微細化されて無害化され、また空気が巻き込まれることもないので、この線材を素材として製造される押出し部材の強度が低下したり表面に膨れ欠陥が生じるという問題は減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
金属の粒子等の押出しにより押出し部材を製造するには、例えば引用文献1の図1(c) に示すような装置を使用する。この装置では金属粒子を圧縮するラム側にダイスを設けてラム内に押出し部材を押し出しているが、ラムと反対側にダイスを設けて押出し部材を押し出すことも行われている。
【0013】
発明者は、先ずテスト用押出し装置により、押出しに使用する押出しダイに形成する押出し口などの押出し部の形状が押出し部材の特性に与える影響を調べた。図3に示すように、このテスト用押出し装置20Aは、円筒形のコンテナ21と、その底部に固定したテスト用押出しダイ10Aと、コンテナ21に液密かつ摺動自在に嵌合されてコンテナ21内に装填した金属粉砕材25をテスト用押出しダイ10Aから押し出すラム22により構成されている。
【0014】
図4〜図5に示すように、テスト用押出しダイ10Aは、同軸的に互いに一体に形成された何れも円形の本体部11Aとフランジ部12Aよりなり、本体部11Aをコンテナ21の下端部に嵌合挿入して、フランジ部12Aにより固定される。本体部11Aの外径D1及び厚さH1はそれぞれ40mm及び17.5mmであり、フランジ部12Aの外径D2及び厚さH2はそれぞれ60mm及び17mmである。テスト用押出しダイ10Aには、軸線方向に貫通する第1〜第4押出し部15A〜15Dが、テスト用押出しダイ10Aと同軸的に配置された直径D3が20mmのピッチ円14に沿って、等角度間隔で形成されている。
【0015】
第1押出し部15Aは、コンテナ21側となる本体部11Aの端面から順に形成された導入部16Aと、押出し口17と、第1逃げ部18と第2逃げ部19よりなるものであり、導入部16Aは押出し口17の入口側に設けられて押出し口17に向かって径が減少する円錐形である。本体部11Aの端面に開口する円錐状の導入部16Aの大径部の径d2は10mmで、端面に対する円錐面の傾斜角(以下単に半角という)αAが30度であり、押出し口17は内径d1が2mmで長さが2mm、第1逃げ部18は内径が4mm、第2逃げ部19は内径が6mmである。第2押出し部15Bは、円錐状の導入部16Bの半角αBが45度であり、その他は第1及び第2逃げ部18,19の長さが多少異なる点を除き第1押出し部15Aと同じである。第3押出し部15Cは円錐状の導入部16Cの半角αCが60度であり、その他は第1及び第2逃げ部18,19の長さが多少異なる点を除き第1押出し部15Aと同じである。第4押出し部15Dは導入部16Dは径d2が10mmで深さhが5mmの円筒状の凹部であり、従って半角αDは90度である。第4押出し部15Dの押出し口17も内径d1が2mmで長さが2mmであるが、導入部16Dの底面との間の角部に1mmのR面取りがなされ、第1及び第2逃げ部18,19は長さが多少異なる点を除き第1押出し部15Aと同じである。
【0016】
このテストでは、金属粉砕材25として鋳造用マグネシウム合金(AM60B)のペレット(断面積×長さ=2mm2×6mm、それとも直径×長さ=2mm×6mm)を使用し、ラム22の押出速度を20mm/min とし、コンテナ21を加熱することにより金属粉砕材25を融点以下であって変形が容易になる軟化温度に加熱して、軟化された金属粉砕材25を各押出し部15A〜15Dから押し出して、4種類の線材26A〜26Dを得た。コンテナ21の温度は300℃と400℃の2つの場合についてテストを行った。
【0017】
各押出条件を整理して示せば、次の表1の通りである。
【0018】
【表1】

【0019】
このようにして得られたテスト番号が1〜8の各線材26A〜26Dについて、顕微鏡写真の画像解析による酸化物の微細化、及びビッカース硬度Hvを測定した。
【0020】
酸化物の微細化の測定は、各4種類の線材26A〜26Dにつき断面の顕微鏡写真を撮影して行った。図7は400倍に拡大したこのような顕微鏡写真の一例(表1のテスト番号3の場合の例)を示し、押し出された線材の組織内に大小の白い部分(図7の写真では見にくい)が観察され、これが酸化物を示している。従ってこの白い部分のうち小さい部分(孤立点)が多く、大きい部分が少なければ酸化物が微細化さていると判断される。そこで画像処理により、この白い部分を大きさ毎に分けて抽出し、所定以下の大きさのものを除いた面積の合計を視野の全面積で除したものを面積率とすれば、この面積率が小さいほど酸化物が微細化されていると判断される。なお、このテストでは画面において1ピクセル(0.1×0.1μm2 に相当)のものを除いて残りの面積を合計した。
【0021】
各9個のサンプルにつきこのようにして測定した面積率の平均値を、次の表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
また図8の実線Pはコンテナ21の温度が300℃の場合における、各押出し部15A〜15Dの導入部16A〜16Dの半角に対する面積率の逆数の関係を示すグラフである。面積率逆数は、図8に示すように、導入部16Cの半角αCが60度である第3押出し部15Cの場合に最も大きく、導入部16Bの半角αBが45度である第2押出し部15Bと導入部16Dの半角αDが90度である第4押出し部15Dの場合はほゞ同じであり、導入部16Aの半角αAが30度である第1押出し部15Aの場合が最も小さくなっている。これは軟化されて移動する金属粉砕材25の内部の酸化物は、導入部の半角が60度の場合に最も微細化され、導入部の半角が45度と90度の場合は酸化物の微細化の程度は同程度であって導入部の半角が60度の場合よりは減少し、導入部の半角が30度以下となれば微細化の程度はさらに減少することを示している。
【0024】
導入部16Bの半角αBが45度である第2押出し部15Bの場合は、コンテナ21内から導入部16B内に入り込む軟化された金属粉砕材25は、図9(a) のフローライン28Bに示すように、円錐状の導入部16Bの傾斜面に沿って移動する。この傾斜面は停止しているのでこの傾斜面とフローライン28Bに沿って移動する軟化された金属粉砕材25は剪断作用を受けて、その内部に混入された酸化物が微細化される。図9(b) に示すように、導入部16Dの半角αDが90度である第4押出し部15Dの場合は、導入部16Dは円筒状の凹部であってその半径(D2/2)と深さ(h)がほゞ同じになるように設定されているので、コンテナ21内から導入部16B内に入り込む軟化された金属粉砕材25は、導入部16Dの下部の隅部に停留してデッドメタル25Aを生じ、押出し口17に向かって移動する軟化された金属粉砕材25とデッドメタル25Aの間には円錐状の境界面27が生じる。この円錐状の境界面27の半角は条件により変化するが、例えば45度であり、その場合は導入部16D内に生じるフローライン28Dは導入部16B内のフローライン28Bに近いものとなる。このように導入部16Dのフローライン28Dは導入部16B内のフローライン28Bとなるので、軟化されて導入部16Dを移動する金属粉砕材25は、導入部16B内におけるのとほゞ同様な剪断作用を受ける。前述のように第2押出し部15Bと第4押出し部15Dとで面積率逆数がほゞ同じになるのは、受ける剪断作用がこのようにほゞ同様なためと考えられる。なお、第2押出し部15Bにおける導入部16Bの傾斜面は移動しないのに対し、導入部16Dにおける傾斜した境界面27を形成するデッドメタル25Aは境界面27に沿って移動して押出し口17から押し出される金属粉砕材25に引きずられて移動するので、第4押出し部15Dの場合に生じる剪断作用は第2押出し部15Bの場合よりも多少弱くなり、従って面積率逆数も多少弱くなる。
【0025】
円錐状の導入部16Cの半角αCが60度である第3押出し部15Cの場合は、第2押出し部15Bの場合と同様、コンテナ21内から導入部16B内に入り込む軟化された金属粉砕材25は、円錐状の導入部16Cの傾斜面に沿って移動し、移動する軟化された金属粉砕材25は停止している導入部16Cの傾斜面による剪断作用を受けて、その内部に混入された酸化物が微細化される。この第3押出し部15Cでは、移動する金属粉砕材25は確実に導入部16Cの傾斜面に押し付けられ、また導入部16Cの傾斜面の長さが第2押出し部15Bの場合よりも長くなり、その分だけ移動する軟化された金属粉砕材25が剪断作用を受ける時間が長くなるので、この金属粉砕材25が受ける剪断作用は導入部16Bの半角αBが45度の場合より増大する。従って第3押出し部15Cから押し出される押出し部材に混入された酸化物は、第2押出し部15Bから押し出される押出し部材に混入された酸化物よりも微細化される。
【0026】
一方導入部16Aの半角αAが30度である第1押出し部15Aの場合は、導入部16Aの長さが第2押出し部15Bの導入部16Bの長さよりも短くなるので、上記と逆の理由により、第1押出し部15Aから押し出される押出し部材に混入された酸化物は、第2押出し部15Bから押し出される押出し部材に混入された酸化物よりも微細化の程度が低下する。
【0027】
図8の破線Qはコンテナ21の温度が400℃の場合における、実線Pと同様な面積率逆数を示すグラフである。破線Qは実線Pと同様な傾向で増減するが、実線Pに比して値が低く、また各半角αA〜αDの間の差も小さい。これはコンテナ21の温度が高いので再結晶が促進されるためと考えられる。
【0028】
ビッカース硬度Hvの測定は、コンテナ21の温度が300℃及び400℃の場合における、導入部16A〜16Dの半角αA〜αDが30度、45度、60度及び90度である各押出し部15A〜15Dから押し出して得られた各4種類の線材26A〜26Dについて行い、マクロ的硬度を測定するために計測荷重は10kgとした。各5つの測定点において測定したビッカース硬度Hvの平均値を、次の表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
図8の棒グラフR30、R45、R60 及びR90 は、コンテナ21の温度が300℃の場合における、各押出し部15A〜15Dの導入部16A〜16Dの半角に対するビッカース硬度Hvの関係を示すグラフである。この棒グラフR30〜R90は、酸化物の微細化を示す実線Pと同様な傾向で増減しており、酸化物の微細化の程度と硬度とはほゞ比例関係にあることを示している。棒グラフS30、S45、S60 及びS90 は、コンテナ21の温度が400℃の場合における、各押出し部15A〜15Dの導入部16A〜16Dの半角に対するビッカース硬度Hvの関係を示すグラフである。この棒グラフS30〜S90はあまり変化していないが、これはコンテナ21の温度が高いので再結晶が促進されるためと考えられる。
【0031】
また、前述したように押出し口をダイスの面に直接形成した従来技術では切り粉の間に入っていた空気が巻き込まれるので、押し出された押出し部材の表面に膨れ欠陥が生じるという問題がある。これは図4〜図6に示す押出しダイで半角を0度に設定した場合に相当するが、半角αAを30度とした第1押出し部15Aでも押し出された線材26Aの表面に膨れ欠陥が生じないことが確認された。
【0032】
上述したテスト用押出し装置20Aによるテスト結果によれば、コンテナ21の温度を適切に(金属粉砕材25が鋳造用マグネシウム合金(AM60B)の場合には300度)設定すれば、押出しダイ(10A)に形成する押出し部(15A〜15D)は、押出し口(17)の入口側に形成する導入部(16A〜16D)の半角(αA〜αD)が60度付近の時に混入された酸化物の微細化の程度及びビッカース硬度が最も高くなり、半角が45度及び90度付近では酸化物の微細化の程度及びビッカース硬度は同程度に低下するが実用可能であり、半角が30度付近では酸化物の微細化の程度及びビッカース硬度はさらに低下するが、押し出された押出し部材の表面に膨れ欠陥が生じないので、まだ実用可能であることが確認された。
【0033】
次に上述したテスト結果を、鋳造用マグネシウム合金のリサイクル装置に適用した実施形態の説明をする。図1及び図2に示すように、図1に示すように、この実施形態のリサイクル装置は粉砕材供給手段(金属粉砕材供給手段)1と、押出し手段2と、切断手段3により構成されている。粉砕材供給手段1は、マグネシウム合金鋳造品の切削加工過程で発生する切り粉を収集する装置、あるいはマグネシウム合金鋳造品のランナや湯口または不良品などの廃材を粉砕するクラッシャなどである。
【0034】
押出し手段2は、図2の製造用押出し装置20に示すように、円筒形のコンテナ21と、その底部に固定した押出しダイ10と、コンテナ21内に装填した金属粉砕材25をテスト用押出しダイ10Aから押し出すラム22よりなるもので、押出しダイ10を除き、図3に示すテスト用押出し装置20Aと実質的に同一である。
【0035】
押出しダイ10は、テスト用押出しダイ10Aと同様、同軸的に互いに一体に形成された何れも円形の本体部11とフランジ部12よりなり、本体部11をコンテナ21の下端部に嵌合挿入して、フランジ部12により固定される。本体部11及びフランジ部12のの外径及び厚さは、テスト用押出しダイ10Aの本体部11A及びフランジ部12Aと同じである。押出しダイ10には、テスト用押出しダイ10Aにおいて酸化物の微細化の程度及びビッカース硬度が最も高い線材26Cが得られる第3押出し部15Cと同一形状寸法の押出し部15が同軸的に形成され、この押出し部15を中心とするピッチ円上には、同じく第3押出し部15Cと同一形状寸法の6つの押出し部15が等角度間隔で形成されている。切断手段3は、押出しダイ10の各押出し部15から押し出された各線材26を、短い所定の長さ(例えば6mm)に切断するものである。
【0036】
次に上述した金属リサイクル装置の作動の説明をする。クラッシャなどの粉砕材供給手段1によりマグネシウム合金鋳造品のランナや湯口などの廃材を粉砕した金属粉砕材25は、コンテナ21内に装填されて融点以下であって変形が容易になる軟化温度(例えば300℃)に加熱され、ラム22により押圧されて各円錐状の導入部16の傾斜面に沿って移動して、各押出し口17から線材26となって押し出される。各押出し口17から押し出された線材26は、切断手段3により所定の長さに切断されてペレット化される。このようにして得られたペレットは、ダイカストの素材として使用できる。
【0037】
上述した実施形態のマグネシウム合金のリサイクル装置では、押出し装置20の後側に押出し口17から押し出された線材をペレット状に切断する切断手段3を設けており、このようにすれば線材をダイカストなどに適した形状とするための別工程によるペレット化が不要となる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、押し出された線材を別工程により二次加工するようにして実施することも可能である。
【0038】
また本発明が対象とする金属は、上述した実施形態のようにマグネシウム合金に限らず、アルミニウム合金や亜鉛合金など、押出加工可能な種々の金属に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による金属リサイクル装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す実施形態の要部である押出し装置の構造を示す長手方向断面図である。
【図3】押出しダイに形成する押出し口などの押出し部の形状が押出し部材の特性に与える影響を調べるのに使用したテスト用押出し装置の構造を示す長手方向断面図である。
【図4】図3に示すテスト用押出し装置の押出しダイの正面図である。
【図5】図4の5−5断面図である。
【図6】図4の5−5断面図である。
【図7】図3に示すテスト用押出し装置より得られた線材の断面の顕微鏡写真である。
【図8】図3に示すテスト用押出し装置より得られた線材のコンテナ温度に対する特性の変化を示す図である。
【図9】図3に示すテスト用押出し装置の押出しダイ内における金属粉砕材の挙動を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1…金属粉砕材供給手段(粉砕材供給手段)、2…押出し手段(製造用押出し装置)、3…切断手段、10…押出しダイ、16…導入部、17…押出し口、25…金属粉砕材(粉砕材)、α…半角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化膜が付着した金属粉砕材を融点以下であって変形が容易になる軟化温度に加熱し押出し口から押し出して押出し部材を製造する方法において、押し出しに際して軟化された金属粉砕材が前記押出し口に向かって径が減少する円錐状の傾斜面に沿って移動しながら同押出し口から押し出されることを特徴とする金属材の押出し方法。
【請求項2】
表面に酸化膜が付着した金属粉砕材を融点以下であって変形が容易になる軟化温度に加熱して押出しダイの押出し口から押し出す押出し手段を備えた金属材の押出し装置において、前記押出しダイには前記押出し口の入口側に同押出し口よりも大径で同押出し口に向かって径が減少する円錐状の導入部が形成され、この円錐状の導入部の半角は60度であることを特徴とする金属材の押出し装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属材の押出し方法または装置において、前記金属はマグネシウム合金もしくはアルミニウム合金である金属材の押出し方法または装置。
【請求項4】
表面に酸化膜が付着した金属の廃材を粉砕する金属粉砕材供給手段と、この金属粉砕材供給手段からの金属粉砕材を融点以下であって変形が容易になる軟化温度に加熱し押出し口から押し出して線材とする押出し手段を備えた金属リサイクル装置において、前記押出しダイには前記押出し口の入口側に同押出し口よりも大径で同押出し口に向かって径が減少する円錐状の導入部が形成され、この円錐状の導入部の半角は60度であることを特徴とする金属リサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−299355(P2006−299355A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123758(P2005−123758)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】