説明

金属板の梱包方法

【課題】複数の金属板を積層して搬送する際に、梱包物が振動をうけても、金属板の表面に傷が発生することが防止され、製品としての清浄な表面状態を維持することができる金属板の梱包方法を提供する。
【解決手段】パレット1上に、複数枚の金属板2を積載し、その上に蓋3を載置する。これらのパレット1、金属板2、蓋3からなる積層体を、バンド4により緊締する。これらの束ねられた金属板2の積層体に対し、金属板2の平行な1対の縁に沿うように、1対の棒状横部品10を配置し、横部品10を縦部品11にボルトにより緊締することにより、上下の横部品10により、積層金属板を狭圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多数の金属板(シート等を含む)を積層して搬送するために梱包する金属板の梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム又はアルミニウム合金板のような金属板を搬送する場合、図5に示すように、金属製パレット1の上に、この金属製パレット1から若干はみ出るようにして、多数の金属板2を積層し、更に、この積層金属板2の上に、金属板2より若干小さい蓋(金属板)3を載置し、更に、パレット1,積層金属板2及び蓋3の全体を、一方向2本のバンド4で巻回し、これらのバンド4を2方向に直交するようにして配置し、これらのバンド4を締め付けて相互に固定することにより、積層金属板2が搬送中に崩れないようにこれを固定している(特許文献1)。なお、パレット1及び蓋3が金属板2より小さく、バンド4が金属板2の側面に接触しているのは、振動を受けたときに、バンド4により、金属板2が横方向(表面に平行の方向)にずれてしまわないようにするためである。
【0003】
【特許文献1】特開2006−347564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来の梱包方法においては、積層金属板2が、パレット1及び蓋3と共にバンド4により固定されているので、積層金属板2が崩れてしまうことは防止されるが、この梱包物を鉄道、トラック等の輸送機に積層して運搬する際に、運搬後に、図6に示すように、金属板2の4隅部の表面に微細な傷5が生じることがあった。
【0005】
本願発明者等が、この傷5の発生現象を究明すべく種々実験研究した結果、このバンド4の緊締力を強めても、また、バンド4の本数を増やしても、傷5の発生防止に対して、影響(効果)がなかった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、複数の金属板を積層して搬送する際に、梱包物が振動をうけても、金属板の表面に傷が発生することが防止され、製品としての清浄な表面状態を維持することができる金属板の梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る金属板の梱包方法は、複数の金属板を積み重ねて運搬するために金属板を梱包する金属板の悃包方法において、パレット上に複数の金属板を積み重ねて載置し、この積層金属板とパレットの全体をバンドにより巻回して前記積層金属板を前記バンドで締め付けて固定し、更に、剛体治具により、前記積層金属板と前記パレットとをその厚さ方向に締め付けることを特徴とする。
【0008】
この金属板の梱包方法において、前記剛体治具により、前記積層金属板と前記パレットとをその厚さ方向に締め付ける位置は、前記バンドを巻回した部位より前記金属板の端部側の位置であることが好ましい。また、例えば、前記剛体治具はクランプである。更に、前記剛体治具は、前記金属板の4隅部に配置することが好ましい。更にまた、前記積層金属板の上に蓋としての板状部材を積層し、この蓋と共に前記積層金属板及び前記パレットを前記バンドにより巻回することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パレットと積層金属板とを、その積層体の全体にベルトを巻回することにより第1義的に固定し、更に、パレットと積層金属板とを、第2義的に、剛体治具により厚さ方向に締め付け固定するので、運搬中の振動を受けても、積層された金属板同士が擦れ合うことはない。これにより、運搬により金属板に微小な傷が発生することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。先ず、本発明を完成するに至った経緯について説明する。本発明者等は、積層金属板の運搬時に発生する微小傷の発生原因について、種々調査研究した結果、図6に示すように、傷5の発生箇所は、金属板2の周辺部、特に隅部に集中していることが判明した。また、金属板2がパレット1からはみ出すように梱包する場合は、はみ出た部分(オーバーハング部)に傷5が特に多く発生することも見出した。
【0011】
これらの知見から、本発明者等は、金属板2の表面の傷5が、以下の現象によって発生することを見出した。図5に示すように、梱包された金属板2はバンド4によって結束されているものの、金属板2の端部又は隅部のように、バンド4による結束部位から遠い箇所では、結束力がやや弱くなっている。また、結束バンド4は樹脂又は金属を使用しているが、多少の柔軟性を持っている。そのため、金属板2の端部又は隅部においては、輸送時の振動によって、図7に示すような擦れ6が生じる。長時間の輸送では、この擦れ6によって金属板2から磨耗粉が発生し、この摩擦粉が金属板2に押し付けられることにより、傷が発生する原因となる。この場合、金属板2に予め潤滑剤が塗布されていても、擦れ6の摩擦熱で潤滑剤が揮発し、磨耗紛の発生を促進してしまう。このような擦れ6による傷は、擦れ6に対する通常の対策として容易に考えられる結束バンドの本数増加、又はバンド拘束位置の変更によっては、十分に抑制することはできない。
【0012】
本発明では、製品としての積層金属板の端部又は隅部を、剛体の固定治具で拘束することにより、運搬時に振動を受けても、金属板に擦れ6が発生することを防止し、その結果、金属板2に傷5が発生することを抑制するものである。
【0013】
本発明で使用する固定治具は剛性のある素材を使用し、これにより、バンドによる材料の拘束が不十分な箇所を十分に拘束することができる。
【0014】
本発明における固定部位は、バンド掛けした部位よりも端側の部位とする。これは、上述のように、バンド拘束では不十分で擦れが発生する箇所を拘束することによって傷の発生を抑えるためである。
【0015】
本発明における固定部位においては、金属板製品の上面とパレットの下面とを拘束する。このように、金属板製品とパレットを合わせて拘束することになり、拘束された製品はパレットによる剛性も加わるため、振動を受けても擦れの発生が少なくなる。また、オーバーハング部にて、積層金属板のみを拘束した場合、拘束治具の重量が積層金属板を変形させてしまうのに対し、パレットと共に拘束する場合は、拘束治具の重量による影響が殆ど無い。
【0016】
このように、従来方法で梱包した梱包物を鉄道又はトラック等の輸送機に積載して運搬する際、振動を受けると、積層した金属板同士が振動によって擦れ合い、個々の板の表面に微細な傷を生じることがあった。この金属板表面の傷は、運搬時間が長時間になるほど顕著になり、アルミニウム板等の比較的軟質の材料においては、塗装後の美観等、表面性状が要求される用途では、問題となることがあった。
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る金属板の梱包方法を示す斜視図、図2はその動作を示す模式的正面図である。多数の金属板を積層してベルトにより金属板をパレットと共に束ねる点は従来と同様である。即ち、パレット1上に、複数枚の金属板2を積載し、更に最上層の金属板2上に剛性が高く厚い金属板からなる蓋3を載置し、これらのパレット1、金属板2、蓋3からなる積層体を、バンド4により緊締する。この場合に、バンド4は1方向に2本、2方向で計4本、前記積層体に巻回し、バンド4により、金属板2をパレット1及び蓋3と共に、束ねて固定する。この場合に、金属板2は、パレット1及び蓋3よりも横方向に延出しており(はみ出しており)、従って、バンド4は、パレット1,蓋3及び金属板2の全てに接触している。
【0018】
そして、本実施形態においては、これらの束ねられた金属板2の積層体に対し、剛体治具により、金属板の端部でその厚さ方向に締め付ける。即ち、図1に示すように、金属板2の平行な1対の縁に沿うように、1対の棒状横部品10を積層金属板の下方に配置すると共に、1対の棒状横部品10を積層金属板の上方に配置する。そして、上方の棒状横部品10の端部と、下方の棒状横部品10の端部との間に、縦に延びる棒状縦部品11を配置し、横部品10と縦部品11とを、横部品10の外面側からボルト12を横部品10内に挿入し、このボルト12を縦部品11内に設けたナット(図示せず)にねじ込むことにより、連結固定する。このとき、ボルト12の縦部品11へのねじ込み量を調節することにより、上下2対の横部品10により挟持された金属板積層体に対する金属板厚さ方向の締め付け力を調整することができる。
【0019】
棒状の横部品10の配置位置は、金属板2におけるバンド4の巻回位置よりも金属板端部側である。また、横部品10及び縦部品11の材質は、例えば、ステンレス鋼製であるが、これに限らず、束ねる金属板よりも剛性が高いもの等、剛性が高い剛体であればよい。また、蓋としての板状部材は、平板の他、角棒又は形材を接合した板状の構造体等でもよい。
【0020】
次に、上述の如く構成された本実施形態の動作について説明する。パレット1上に複数枚の金属板2を積層し、最上層に蓋3を載置した状態で、この積層体に対し、バンド4を1方向2箇所で2方向について計4箇所で巻回し、バンド4で積層体を緊締する。そして、積層体の下面の端部及び上面の端部に、夫々平行に1対の横部品10を配置し、更に、上下に対となる横部品10同士を、縦部品11により連絡して、四角の枠を構成し、横部品10をボルト12により縦部品11にねじ込む。そして、このボルト12を縦部品11に締め込むことにより、上下1対の横部品10により積層体に狭圧力を印加する。
【0021】
このようにして、バンド4の巻回位置よりも、端部側の位置にて、四角の枠(横部品10,縦部品11)により、積層体が拘束され、金属板の厚さ方向に締め付けられる。
【0022】
このため、図2に示すように、輸送の過程で、梱包体に振動が印加されて、金属板2における パレット1からはみ出た部分が上下に振動しても、金属板2の端部において、金属板2が剛体治具により締め付けられているので、この金属板2の端部において、金属板2同士がずれることがなく、このため、 パレット1からはみ出た金属板部分が上下動しても、この金属板2の相互間でその表面に傷を付け合うことが抑制される。即ち、本発明においては、振動を受けた場合に金属板2同士間で自由に運動できるのは、横部品10により緊締された部分よりも端部側の部分のみである。これに対し、従来のように、横部品10により積層体を緊締しない場合には、バンド4で強く縛っていたとしても、振動により、金属板2同士は、極めて広範な領域で、相対的な運動が可能となり、金属板2の暴れにより、金属板2同士で、その表面に微小な傷を付けてしまう。本発明は、剛体治具により、金属板の端部でその厚さ方向に締め付けるだけで、運搬中に金属板の表面に傷を付けてしまうことを効果的に防止することができる。
【0023】
図3は本発明の第2実施形態に係る金属板の梱包方法を示す斜視図である。本実施形態は、パレット1,金属板2,蓋3の積層体を、バンド4により緊締した後、バンド4の巻回位置よりも金属板2の端部側の4隅部で、C型クランプ20により締め付けたものである。C型クランプ20の積層体上面側の端部には、回転軸21がこの端部に螺合するようになっており、蓋3の上面に接触するように、押圧板23が設けられていて、回転軸21に設けたハンドル22を介して、回転軸21を回転させることにより、回転軸21が下方に移動して、その下端部が押圧板23を介して、蓋3を押圧する。これにより、積層体の金属板2には、その厚さ方向に締め付け力が作用する。
【0024】
本実施形態も第1実施形態と同様の効果を奏するのに加え、以下の効果を奏する。即ち、本実施形態では、金属板2の隅部を4個のクランプ型固定具(C型クランプ20)で拘束するので、金属板の積層体を複数箇所で点状に固定することになる。このため、金属板2が大面積の大型の板である場合も、剛体治具は、大型化する必要はない。このため、本実施形態は、大型の固定具を取り回す必要が無く、作業性が向上するという効果を奏する。なお、クランプとしては、上下にねじ込み固定するタイプのC型、角型、L型と呼ばれるクランプを使用できる。
【0025】
図4(a)、(b)は、本発明の第3実施形態を示す図であり、(a)は金蔵板積層体の平面図、(b)はクランプした状態を示す斜視図である。本実施形態の金属板2aは、図4(a)に示すように、矩形ではなく、台形又は縁部が曲線である形状を有する。このような場合、通常、バンド4a、4bのうち、金属板2aの斜辺側を巻回するバンド4bは、金属板2aの斜辺に沿ってズレ易く、金属板2aの隅部又は端部の拘束が更に弱まってしまう。しかし、このような形状であっても、図4(b)のように、隅部をC型クランプ20により拘束することによって、傷の発生を抑制することができる。
【0026】
固定用の剛体治具の材質としては、例えば鋼、ステンレス鋼、アルミニウム材等の棒材、中空材、鋳物材、鍛造材を使用できる。本発明において、剛体という場合は、梱包される金属板よりも剛性が高いもののことをいう。
【0027】
固定治具の形状及び個数も、金属板の寸法及び形状によって適宜選択することができる。また、本発明に使用するパレットについては特に限定しないが、製品の金属板を載置するだけの強度を持つ金属材料が好ましい。素材としては鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等を使用することができる。
【0028】
結束バンド4,4a、4bの材質は、金属及び樹脂等、従来から使用されているものを使用できる。
【0029】
また、剛体の治具で固定する金属板積層体の部位は、バンドで拘束した部位よりも、金属板の端部側の部位であり、この金属板の端部側で、パレットと共に拘束できる箇所であれば、任意の部位を選択でき、製品金属板の寸法及び形状によって適宜選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、輸送による振動を受けても表面傷が発生しないように金属板を梱包することができるので、金属板が長時間、悪路等の悪条件下で輸送される場合においても、表面に傷を付けることなく、搬送することができるので、アルミニウム合金板のように、比較的軟らかい金属板の搬送に多大の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属板の梱包方法を示す斜視図である。
【図2】同じくその動作を示す平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る金属板の梱包方法を示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の第3実施形態に係る金属板の梱包方法を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図5】従来の金属板の梱包方法を示す斜視図である。
【図6】従来の梱包方法の傷の発生位置を示す平面図である。
【図7】従来の梱包方法における振動により擦れが発生する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 パレット
2 金属板
2a 金属板
3 蓋
3 金属板
4 バンド
4a バンド
4b バンド
5 傷
6 擦れ
10 横部品
11 縦部品
12 ボルト
20 C型クランプ
21 回転軸
22 ハンドル
23 押圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板を積み重ねて運搬するために金属板を梱包する金属板の悃包方法において、パレット上に複数の金属板を積み重ねて載置し、この積層金属板とパレットの全体をバンドにより巻回して前記積層金属板を前記バンドで締め付けて固定し、更に、剛体治具により、前記積層金属板と前記パレットとをその厚さ方向に締め付けることを特徴とする金属板の梱包方法。
【請求項2】
前記剛体治具により、前記積層金属板と前記パレットとをその厚さ方向に締め付ける位置は、前記バンドを巻回した部位より前記金属板の端部側の位置であることを特徴とする金属板の梱包方法。
【請求項3】
前記剛体治具がクランプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の梱包方法。
【請求項4】
前記剛体治具は、前記金属板の4隅部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属板の梱包方法。
【請求項5】
前記積層金属板の上に蓋としての板状部材が積層されており、この蓋と共に前記積層金属板及び前記パレットを前記バンドにより巻回することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属板の梱包方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−12810(P2009−12810A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176797(P2007−176797)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】