説明

金属板材の圧延機および圧延方法

【課題】上下作業ロール間の開度を大きく取ることができ、かつ強力なロールベンディング力を付与についても容易に達成できるとともに、キャンバー及び反りのない金属板材を安定して製造でき、高精度の零点調整を可能とする圧延機、及び圧延方法を提供する。
【解決手段】上下作業ロールにそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、圧延機ハウジングの内側に突出したプロジェクトブロックに配備され、
上作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックの上方に位置する圧延機ハウジングウィンドウと上作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
前記作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置を有すること等を特徴とする、金属板材の圧延機、及びこの圧延機を用いた圧延方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板材の圧延機および圧延方法に関し、特に、厚板圧延機あるいは薄板熱間圧延の粗圧延機に好適な上下作業ロール間の最大開度を大きく取ることができ、強力なロールベンディング力の付与についても容易に達成できるとともに、キャンバー及び反りのない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な金属板材を安定して製造することのできる圧延機および圧延方法に関する。また、高精度の圧延機の初期圧下位置調整(圧下零調)を可能とする圧延機および圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板材の圧延工程においては、板クラウン・形状を制御することに加えて、圧延板材をキャンバーすなわち左右曲がりのない状態で圧延することが、圧延材の平面形状不良や寸法精度不良を回避するだけでなく、蛇行や尻絞りといった通板トラブルを回避するためにも重要である。
また、板材の圧延時に発生する反りも、圧延能率の低下、精整工程の増加など、製品の生産性に多大な影響を及ぼす。例えば、精整工程に関しては、レベラー、プレス等によるキャンバーや反りの矯正が必要となり、極端な場合、不良部を切断しなければならないこともある。また、さらに大きなキャンバーや反りが発生した場合、板の衝突によって、圧延設備が破損することもある。この場合、板自体が製品価値を失うばかりでなく、生産停止、圧延設備の修理など多大の損害をもたらす。
加えて、上記のようなキャンバーおよび反りを高精度で制御するためには、零点調整と呼ばれる初期設定も重要である。零点調整とは、ロール回転状態で圧下装置を操作してキスロール締め込みを実施し、圧延荷重の測定値があらかじめ定められた零点調整荷重(定格荷重の15%〜85%であらかじめ設定)に一致した時点を圧下位置の零点とし、その圧下位置を圧下制御上の原点(基準)とするものである。このとき、左右の圧下位置の差、すなわち圧下レベリングの零点も同時に調整することが多い。圧下レベリングの零点調整に関しても、キスロール締め込み時に圧延荷重の測定値が、作業側および駆動側のそれぞれで、あらかじめ定められた零点調整荷重に一致するように調整する。なおキスロール締め込みとは、圧延材の存在しない状態で、上下作業ロールを互いに接触させて、ロール間に負荷を与えることを意味している。
なお、本明細書では、表記を簡単にするために、圧延方向を正面とした場合の左右である圧延機の作業側および駆動側のことを左右と称することもある。
【0003】
このようなキャンバーに起因する問題に対し、特許文献1(国際公開WO2004/082860号)が、キャンバーのない、あるいは極めてキャンバーの軽微な金属板材を安定して製造することのできる、金属板材の圧延方法および圧延装置を提案している。
例えば、特許文献1には、金属板材の圧延方法において、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定し、該圧延方向力の作業側と駆動側との差異を演算し、この差異が零になるように、圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御する、という技術が開示されている。
また、特許文献1には、圧延装置において、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定するための荷重検出装置と、該圧延方向力の作業側と駆動側の差異を演算する演算装置と、前記圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する演算装置と、前記圧延機のロール開度を制御する制御装置とを備える、という技術が開示されている。
さらに、特許文献1には、この圧延機は、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつけるための装置を有する、という技術が開示されている。
【0004】
特許文献1の金属板材の圧延方法および圧延装置を用いることによって、キャンバーのない、あるいは極めてキャンバーの軽微な金属板材を安定して、また、圧延本数に依存することなく定常的に製造することが可能となり、金属板材の圧延工程の生産性および歩留の大幅な向上が実現できる。
【0005】
反りの問題に対して、特許文献2では、上下両方の作業ロールのロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、上下両方の作業ロールチョックに作用する圧延方向力を測定するための荷重検出装置を備え、上下両方の作業ロールのロールチョックに作用する圧延方向力を測定して、上側の圧延方向力と下側の圧延方向力との差異すなわち圧延方向力の上下差を演算し、上記圧延方向力の上下差を小さくする方向に、当該圧延装置上下非対称成分を操作することによって、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することを提案する。
【0006】
零調の問題に対して、特許文献3では、キスロールによる零点調整でも圧延方法力が発生することを見出し、その圧延方向力はロールスラスト力に影響しないことを突き止めたことにより、より高精度の圧延機の初期圧下位置調整(圧下零調)を可能とする方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2004/082860号明細書
【特許文献2】特開2007−260775号公報
【特許文献3】国際公開WO2011/129453号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方で、厚板圧延機あるいは薄板熱間圧延の粗圧延機のように板厚の大きい製品を多パスのリバース圧延で製造することがある。この場合、上下作業ロール間の間隙、すなわちロール開度を圧延素材の板厚よりも大きくとる必要がある。
【0009】
特許文献1、および特許文献2では、<1>補強ロールチョックが作業ロールチョックを抱え込む形式の圧延機、および<2>プロジェクトブロックが作業ロールチョックを支持する圧延機が開示されているが、上記のようにロール開度を大きくとる必要がある場合に、以下のような問題がある。なお、特許文献3は、キスロール時の零調に関するものであり、ロール開度を大きくとることに関する記載や示唆はない。
【0010】
図1に、<1>補強ロールチョックが作業ロールチョックを抱え込む形式の圧延機の例を示す。この圧延機は、上作業ロールチョック3−1を上補強ロールチョック4−1に繋がるアーム部が保持する形式であり、このアーム部に上作業ロール1−1のインクリースベンディング装置6−1、6−2を組み込み、このような形式とすることで、大きなロール開度をとることが可能になっている。
ここで、インクリースベンディング装置とは、そのアクチュエータである油圧シリンダーを含む装置の総称である。しかし、本明細書では、説明を簡単にするため、インクリースベンディング装置とは、特に断りの無い限り、そのアクチュエータである油圧シリンダーを指すものとする。
【0011】
図1では、下作業ロール1−2のインクリースベンディング装置6−3、6−4は圧延機ハウジング9に繋がるプロジェクトブロックに組み込まれているが、同様に大きなロール開度をとることができる圧延機形式として、上下とも補強ロールチョック4−1、4−2が作業ロールチョック3−1、3−2を保持する形式も従来技術として存在する。
【0012】
図1に示す形式においては、ロール開度を大きくとることを最優先として設計されているため、強力なロールベンディング力を十分に付与することができない場合がある。これは、圧下装置11によって上下位置が設定・制御される上補強ロールチョック4−1に繋がるアーム部が上作業ロールチョック3−1を保持して、当該アーム部にインクリースベンディング装置6−1、6−2を組み込むため、大容量の油圧シリンダーを組み込むことが困難だからである。このため、強力なロールベンディング力を十分に付与することができない場合が生じる懸念がある。
また、荷重検出装置および押し付け装置も、作業ロールチョックと補強ロールチョックに繋がるアーム部との間に設置される。この設置箇所は狭隘なため、荷重検出装置および押し付け装置の配置、配線の取り回しが複雑になってしまう懸念がある。
さらに、この設置箇所が狭隘なため、大容量の荷重検出装置および押し付け装置を取り付けることが出来ず、作業ロールチョックのサポートが十分でない場合を生じる懸念がある。
加えて、押し付け装置は、制御の応答性および精度の観点から、作業ロールチョックと補強ロールチョックとの間に設置される。この場合、補強ロールチョックとハウジングウィンドウ間の間隙が残存する。この間隙により、圧延材が作業ロールを通過する時に補強ロールチョックとハウジングウィンドウ間のガタつきを生じ、補強ロールチョックに繋がるアーム部を介して作業ロールチョックにもガタつきが伝播してしまう懸念がある。
【0013】
図2に、<2>プロジェクトブロックが作業ロールチョックを支持する圧延機の例を示す。この圧延機は、インクリースベンディング装置6−1、6−2が圧延機ハウジングと一体のプロジェクトブロック5−1、5−2に組み込まれており、これにより作業ロールシフト機能が提供される。なお、インクリースベンディング装置の油圧シリンダーがロール軸方向に複数個配備され、作業ロールシフト時に偏荷重がかからないように工夫されることもある。
【0014】
図2に示す形式の圧延機はインクリースベンディング装置6−1、6−2が圧延機ハウジング9に繋がるプロジェクトブロック5−1、5−2に組み込まれている。このため、ロール組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がない。したがって、この圧延機は、応答性の高いロールベンディング装置とすることができる。そのため、ホットストリップミル仕上圧延機に多用されている。
しかしながら、この圧延機は、上作業ロール1−1に作用するオフセット分力等の圧延方向力を支持するのは作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2との接触面である。そのため、圧下装置11を操作してロール開度を大きくすると、作業ロールの回転中心が該接触面の外側となって作業ロールチョック3−1の姿勢が不安定となる。結果として、大きなロール開度をとることができない。このため、大きなロール開度が必要な厚板圧延機ではこの圧延機が採用されることはほとんどない。
【0015】
上記のように、ロール開度を大きくとることのできる圧延機において、応答性が高く強力な作業ロールベンディング力の付与についても容易に達成できるとともに、キャンバー及び反りのない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な金属板材を安定して製造できる圧延機は従来技術では存在しない。また、これらのキャンバーおよび反りを高精度で制御するためには、零点調整の精度も高いことが重要である。本発明の解決すべき課題は、上下作業ロール間の開度を大きく取ることができ、かつ強力なロールベンディング力を付与についても容易に達成できるとともに、キャンバー及び反りのない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な金属板材を安定して製造できる圧延機および圧延方法を提供することである。さらに、これらのキャンバーおよび反りを高精度で制御するための、高精度の零点調整が可能である圧延機および圧延方法を提供することも本発明の解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、ハウジングからその内側方向に突出するプロジェクトブロックを、パスラインに対して下側にシフトし、パスラインに対して上下非対称にするように設置することにより、以下のことが可能となることを見出した。
(a)上作業ロールチョックにかかる圧延方向力を常にハウジングで受ける構造とできること。これにより、安定して作業ロールチョックを支えることができる。
(b)上記プロジェクトブロックに、上下インクリースベンディング装置を組み込むことができること。これにより、大容量・大ストロークの強力ベンディング装置を備えることができる。
(c)また、インクリースベンディング装置をプロジェクトブロックに組み込むことで、油圧配管を固定化でき、サーボバルブを適用することができること。これにより高応答のインクリースベンディング力の制御が可能となる。
また、これらの装置上の発明により、以下の圧延機操業方法が可能となることも見出した。
(d)応答性の低いディクリースベンディング装置であっても、応答性の速いインクリースベンディング装置との協働により、高応答のベンディング力制御が可能となること。これにより、製品品質、圧延歩留が大きく改善される。
本発明は、これら知見を基に、ロール開度を大きくとることのできる圧延機において、応答性が高く強力な作業ロールベンディング力の付与についても容易に達成でき、さらに、キャンバー及び反りのない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な金属板材を安定して製造することを可能とするものであり、また高精度の零点調整を可能とするものであり、その要旨は、以下のとおりである。
【0017】
(1)上下一対の作業ロールとこれらをそれぞれ支持する上下一対の補強ロールを有する金属板材の圧延機であって、
前記上下作業ロールにそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、圧延機ハウジングの内側に突出したプロジェクトブロックに配備され、
下作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックと下作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
上作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックの上方に位置する圧延機ハウジングウィンドウと上作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
前記作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置を有することを特徴とする、金属板材の圧延機。
【0018】
(2)前記押しつけるための装置が油圧装置であることを特徴とする、(1)に記載の金属板材の圧延機。
【0019】
(3)前記作業ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、前記補強ロールを基準として前記作業ロールをオフセットしている側とは反対側に、前記押しつけるための装置を備えることを特徴とする、(1)または(2)に記載の金属板材の圧延機。
【0020】
(4)前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、該作業ロールチョックに作用する圧延方向力を測定するための荷重検出装置と、
前記荷重検出装置による測定値に基づいて前記作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差異を演算する左右圧延方向力差分演算装置と、
該圧延方向力の作業側と駆動側の差異の演算値に基づいて前記圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する左右非対称成分制御量演算装置と、
該ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて前記圧延機のロール開度を制御する左右非対称成分制御装置と、
を有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機。
【0021】
(5)被圧延材のキャンバーを測定する、キャンバー測定装置と、
該キャンバー測定装置によるキャンバー測定値に基づいて該圧延方向力の作業側と駆動側の差異の制御目標値を学習する演算装置から構成されることを特徴とする(4)に記載の金属板材の圧延機。
【0022】
(6)前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、該作業ロールチョックに作用する圧延方向力を測定するための荷重検出装置と、
前記荷重検出装置により測定した前記上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する圧延方向力の差分を演算する上下圧延方向力差分演算装置と、前記上下圧延方向力差分演算装置の演算値に基づいて、前記圧延機の上下非対称成分制御量を演算する上下非対称成分制御量演算装置と、当該上下非対称成分制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延機の上下非対称成分制御量を制御する上下非対称成分制御装置と、を備えていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の圧延機。
【0023】
(7)前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、該作業ロールチョックに作用するキスロール状態における圧延方向力を測定するための荷重検出装置と、
前記荷重検出装置により測定した前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する圧延方向力の差分を演算する左右圧延方向力差分演算装置と、
前記左右圧延方向力差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延機の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延機の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備え、
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値とし、前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する左右圧延方向力差分が最小になるように前記圧延機の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する機能を有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の圧延機。
【0024】
(8)前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた前記値の許容範囲をその±2%の範囲内の値とし、
前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する前記左右圧延方向力差分の許容範囲を圧延方向力の平均の±5%の範囲とすることを特徴とする(7)に記載の圧延機。
【0025】
(9)前記荷重検出装置が、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックのそれぞれに発生する圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段によって荷重を検出していることを特徴とする(4)〜(8)のいずれか1項に記載の圧延機。
【0026】
(10)前記歪測定手段がピエゾ素子または歪ゲージであることを特徴とする(9)に記載の圧延機。
【0027】
(11)前記押しつけるための装置が前記荷重検出装置としても機能することを特徴とする、(4)〜(8)のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機。
【0028】
(12)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
前記作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけることを特徴とする、金属板材の圧延方法。
【0029】
(13)前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力を測定し、
該圧延方向力の作業側と駆動側との差異を演算し、
この差異が通常は零である制御目標値になるように、圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算し、
該ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて該ロール開度を制御することを特徴とする、(12)に記載の金属板材の圧延方法。
【0030】
(14)被圧延材のキャンバーを測定し、このキャンバー測定値に基づき、該圧延方向力の作業側と駆動側との差異の制御目標値を学習することを特徴とする、(13)に記載の金属板材の圧延方法。
【0031】
(15)前記作業ロールの上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する弾性歪の測定値に基づいて、上下弾性歪の差分を演算し、
前記上下弾性歪差分の演算値に基づいて、圧延機の上下非対称成分制御量を演算し、
当該上下非対称成分制御量の演算値に基づいて、前記圧延機の上下非対称成分制御量を制御することを特徴とする(12)に記載の金属板材の圧延方法。
【0032】
(16)キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値とし、
キスロール状態における前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する圧延方向力を測定し、
前記作業側および駆動側の圧延方向力の測定値に基づいて、左右の圧延方向力の差分を演算し、
前記左右の圧延方向力の差分が最小になるように、圧延機の左右圧下位置を設定し、
前記設定した圧下位置を初期圧下位置とすることを特徴とする、(12)に記載の金属板材の圧延方法。
【0033】
(17)前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた前記値の許容範囲をその±2%の範囲内の値とし、
前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する前記左右圧延方向力差分の許容範囲を圧延方向力の平均の±5%の範囲とすることを特徴とする(16)に記載の金属板材の圧延方法。
【0034】
(18)リバース圧延することを特徴とする、(12)〜(17)のいずれか1項に記載の金属板材の圧延方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、厚板圧延機または薄板熱間圧延の粗圧延機に好適な上下作業ロール間の開度を大きく取ることができ、かつ強力なロールベンディング力を付与についても容易に達成できるとともに、キャンバー及び反りのない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な金属板材を安定して製造できる。また高精度の零点調整が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、従来技術の圧延機の例であり、補強ロールチョックが作業ロールチョックを抱え込む形式の圧延機を示す図である。
【図2】図2は、従来技術の圧延機の例であり、プロジェクトブロックが作業ロールチョックを支持する圧延機を示す図である。
【図3】図3は、本発明の圧延機の一態様であり、上作業ロールチョックがハウジングウィンドウに接触して支持されている圧延機を示す図である。
【図3A】図3Aは、歪測定手段を上下作業ロールチョックの出側および入側のいずれにも配備した圧延機を示す図である。
【図3B】図3Bは、歪測定手段を上作業ロールチョックの出側および入側のいずれにも配備した圧延機を示す図である。
【図3C】図3Cは、歪測定手段による弾性歪の測定を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の圧延機の上作業ロールチョックおよびその周辺装置の一態様を示す図である。
【図5】図5は、本発明の圧延機の上作業ロールチョックおよびその周辺装置の一態様を示す図である。
【図6】図6は、ロールの摩耗等による圧延方向力左右差とキャンバー量の関係の変化を示した図である。
【図7】図7は、圧延方向力の測定に基づいて、蛇行・キャンバー制御、反り制御および零点調整手段を説明する図である。
【図8】図8は、ロードセルと歪測定手段の信号強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図を参照して、本発明に係る圧延機および該圧延機を用いた圧延方法について説明する。
図3は本発明に係る圧延機の構造の一例を示す側面図である。当該図に示すように、本発明に係る圧延機は、上下一対の作業ロール1−1、1−2とこれらをそれぞれ支持する上下一対の補強ロール2−1、2−2を備えた圧延機である。
そして、本発明に係る圧延機は、上作業ロール1−1にインクリースベンディング力を負荷する上インクリースベンディング装置6−1、6−2と、下作業ロール1−2にインクリースベンディング力を負荷する下インクリースベンディング装置6−3、6−4を、ハウジング9の内側に突出したプロジェクトブロック5−1、5−2に配備した圧延機である。
なお、図3には、基本的に作業側の装置構成のみを図示しているが、駆動側にも同様の装置が存在する。
【0038】
図1は従来技術に係る圧延機であり、ロール開度を大きくとることができる。
しかしながら、これらの従来の圧延機では、強力なロールベンディング力を付与することができない。これは、上補強ロールチョック4−1から下方に突出したアーム部に、上インクリースベンディング装置6−1、6−2を組み込む構造であるため、大容量および大ストロークの上インクリースベンディング装置6−1、6−2を配備することができないからである。また、これらの圧延機は、上補強ロールチョックからアーム部を出すため、上ディクリースベンディング装置の設置スペースがロールの軸心に寄ってしまう。そのため、上補強ロールの軸受けと干渉するので、大容量・大ストロークの上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を配備することができないからである。
【0039】
一方、図3に示すように本発明に係る圧延機では、圧延機のハウジング9からその内側方向に突出するプロジェクトブロック5−1、5−2に、大容量・大ストロークの上インクリースベンディング装置6−1、6−2を配備することができる。
また、本発明に係る圧延機は、上補強ロールチョック4−1には図1に示す圧延機のようなアーム部を備えない。このため、上補強ロールチョック4−1の上補強ロールの軸受けと干渉しない位置に、大容量・大ストロークの上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を配備することができる。これにより、上作業ロール1−1に大きなディクリースベンディング力を負荷することが可能となる。
【0040】
すなわち、プロジェクトブロック5−1、5−2の位置、ならびに上作業ロールチョック3−1の形状について抜本的な見直しを行って、上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を、上作業ロールチョック3−1とハウジングウィンドウ12との接触面によって支持する構造とした本発明に係る圧延機によれば、大きなロール開度をとることができるとともに、強力なロールベンディング力の付与もできる。
また、作業ロールの組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がない。このために、それぞれのインクリースベンディング装置6−1〜6−4には、固定油圧配管を介してそれぞれの油圧制御弁に接続することができ、高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することができる。したがって、応答性の高いインクリースベンディング装置とすることができる。
【0041】
ここまでは、主に解決課題の一つである強力なロールベンディング力の付与についても容易に達成する観点から、本発明に係る圧延機の構造について説明してきた。次に、この構造によれば、もう一つの解決課題である大きなロール開度を得られることを説明する。
【0042】
図3は本発明に係る圧延機の構造の一例を示す側面図である。当該図に示すように、本発明に係る圧延機は、上下一対の作業ロール1−1、1−2とこれらをそれぞれ支持する上下一対の補強ロール2−1、2−2を備えた圧延機である。
そして、本発明に係る圧延機は、上作業ロール1−1にインクリースベンディング力を負荷する上インクリースベンディング装置6−1、6−2と、下作業ロール1−2にインクリースベンディング力を負荷する下インクリースベンディング装置6−3、6−4を、ハウジング9の内側に突出したプロジェクトブロック5−1、5−2に配備した圧延機である。
【0043】
この点については、図2に示す従来の圧延機と同じである。しかしながら、本発明に係る圧延機は、抜本的な見直しを行って、図2に示す従来の圧延機の問題点を解決している。即ち、圧延機の構造設計上の観点、特にロール開度を大きくとるための観点から、プロジェクトブロック5−1、5−2の位置、ならびに上作業ロールチョック3−1の形状などを変えた。
【0044】
図2に示す従来の圧延機では、大きなロール開度をとることができない。この圧延機は、プロジェクトブロック5−1、5−2を被圧延材10の通過する位置(パスライン)に対してほぼ上下対称になるように配置している。このため、上作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2とが接触する接触面によって、上作業ロール1−1に作用するオフセット分力等の圧延方向力、すなわち、被圧延材10や上補強ロール2−1等から上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を支持する構造だからである。
この構造では、ロール開度を大きくするにしたがい、上作業ロール1−1の回転中心位置(圧延方向力の作用点)と上作業ロールチョック3−1が上方に移動し、前記圧延方向力を支持するプロジェクトブロック5−2との接触面積が減少する。したがって、ロール開度を大きくするにしたがって上作業ロールチョック3−1の姿勢が不安定となり、大きなロール開度をとることができない。
【0045】
本発明に係る圧延機は上記問題点を解決する。本発明に係る圧延機は、図3に示すように、ハウジング9からその内側方向に突出するプロジェクトブロック5−1、5−2を、パスラインに対して下側にシフトした位置に配置する。すなわち、図2に示す従来の圧延機とは異なり、パスラインに対して上下非対称になるように、プロジェクトブロック5−1、5−2を配置する。さらに、上作業ロールチョック3−1は、プロジェクトブロック5−2に接触し、圧延力を支えるのではなく、ハウジングウィンドウ12に接触し、圧延力を支えるようにした。
【0046】
これにより、本発明に係る圧延機では、上作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2より上方のハウジングウィンドウ12との接触面によって、上作業ロール1−1に作用するオフセット分力等の圧延方向力、すなわち、被圧延材10や上補強ロール2−1等から上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を支持する。
このような構造にすれば、圧延機の圧下装置11を操作してロール開度を大きくしても、上作業ロールチョック3−1とハウジングウィンドウとが接触する面積は一切変化しない。したがって、上作業ロールチョック3−1の姿勢は、ロール開度にかかわらず常に安定して保持されることになる。
【0047】
図2に示すように、上下のインクリースベンディング装置をプロジェクトブロックに配備した圧延機は周知ではある。しかし、本発明に係る圧延機は、プロジェクトブロック5−1、5−2の位置、ならびに上作業ロールチョック3−1の形状について抜本的な見直しを行って、上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を、上作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2の上方のハウジングウィンドウ12との接触面で支持する構造としたので、大きなロール開度をとることができる。
さらに、本発明に係る圧延機では、上作業ロール1−1にインクリースベンディング力を負荷する上インクリースベンディング装置6−1、6−2と、下作業ロール1−2にインクリースベンディング力を負荷する下インクリースベンディング装置6−3、6−4を、ハウジング9の内側に突出したプロジェクトブロック5−1、5−2に配備している。そのため、作業ロールの組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がなく、応答性の高いインクリースベンディング装置とすることができる。これは、固定配管された油圧配管を介してそれぞれの油圧制御弁に接続することができ、高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することができるからである。
【0048】
なお、本発明に係る圧延機において、下作業ロール1−2の胴部に負荷される圧延方向力は、下作業ロールチョック3−2とプロジェクトブロック5−2との接触面によって支持される。このため、図3に示す本発明に係る圧延機は、下作業ロールチョック3−2のプロジェクトブロック5−1、5−2に挟み込まれる部分の高さを大きくしている。
また、ロール開度は、主に上作業ロールチョックを上下に移動させることにより調整するので、下作業ロールチョックの上下の移動量は少ない。そのため、ロール開度が大きくなるにしたがい、下作業ロールの姿勢が不安定になることはない。
【0049】
次に、(1)に記載の本発明の構造によれば、もう一つの解決課題であるキャンバー及び反りのない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な金属板材を安定して製造できることを説明する。
【0050】
一般に、板材の圧延によってキャンバーを生ずる原因としては、ロールギャップ設定不良、被圧延材の入側板厚左右差あるいは変形抵抗左右差等があげられるが、何れの原因の場合でも、最終的には、圧延によって生じる圧延方向の伸び歪に左右差を生じることで先進率および後進率が板幅方向に変化し、圧延材の出側速度および入側速度に左右差を生じキャンバーを生じることになる。このとき、例えばキャンバーを生じやすい圧延材先端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さは短いので比較的自由な状態で出側速度に左右差を生じるが、入側速度に左右差を生じるためには、入側に存在する圧延材全体が水平面内で剛体回転する必要がある。しかし、先端部圧延時は、一般に入側に長い未圧延材が残っているので、圧延材自身の重量とテーブルローラーとの摩擦によって、上記剛体回転に抗するモーメントが発生する。このモーメントは、圧延機の作業ロールに反力として伝わることになるので、作業ロールチョック部に作用する圧延方向力に左右差を生じることで、最終的には支持されることになる。
【0051】
一般に、圧延によって反りが生ずる原因としては、1)作業ロールと圧延材との摩擦係数の上下差Δμ、2)圧延材の上下温度差(変形抵抗の上下差)Δt、3)上下作業ロール周速度の差ΔV、4)幾何学条件などがあげられるが、何れの原因の場合でも、最終的には、圧延によって生じる圧延方向の伸び歪に上下差を生じさせることで先進率および後進率が板厚方向に変化し、圧延材の出側速度および入側速度に上下差を生じ、反りが発生することになる。このとき、例えば、反りを生じさせやすい圧延材先端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さは短いので出側速度に上下差を生じさせることは比較的自由であるが、入側速度に上下差を生じさせるためには入側に存在する圧延材全体を上下方向に剛体回転させる必要がある。しかしながら先端部圧延時は一般に入側に長い未圧延材が残っているので、圧延材自身の重量とテーブルローラーとの拘束によって、上記剛体回転に抗するモーメントが発生する。このモーメントは、圧延機の作業ロールチョックに圧延方向の反力として伝わることになるので、作業ロールチョック部に作用する圧延方向力に上下差を生じることで最終的には支持されることになる。
【0052】
(1)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に作業ロールチョックを圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置を有している。このような装置構成にして、作業ロールチョックを圧延方向に押しつけた状態で圧延すると、前記したように伸び歪の左右差または上下差によって圧延材から作業ロールにモーメントが作用しても、作業ロールチョックに押さえつける力が作用しており、該モーメントが該押さえつける力によって減殺される。すなわち、このような装置構成によって、作業ロールチョックの圧延方向位置を安定させることができる。ひいては、実質的にキャンバー及び反りの発生のない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な圧延が実現可能となる。
【0053】
特に、図1の従来型の圧延機の場合、上補強ロールチョック4−1が上作業ロールチョック3−1を抱え込んだ型式となっている。この場合、上補強ロールチョック4−1とハウジングウィンドウとの間に間隙が残存しており、この間隙により、圧延材が作業ロールを通過する時に補強ロールチョックとハウジングウィンドウ間のガタつきを生じ、補強ロールチョックに抱え込まれた作業ロールチョックにもガタつきが伝播するという問題があった。
【0054】
図2の従来型の圧延機の場合、上作業ロール1−1に作用するオフセット分力等の圧延方向力を支持するのは作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2との接触面である。この場合にも、作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に作業ロールチョックをプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置を設置することはできる。しかしながら、図2の圧延機において、ロール開度を大きくすると、押しつけるための装置と作業ロールとの接触面が小さくなり、作業ロールチョック3−1の姿勢が不安定となる。
【0055】
(1)に記載の本発明の装置構成の場合、図3に示されるように、作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に作業ロールチョックを圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置によって、上作業ロールチョック3−1はハウジングブロックとの接触面に押しつけられ、上作業ロールチョック3−1とハウジングウィンドウ12との間に間隙は存在しない。また、ロール開度を大きくしても、押しつけるための装置と作業ロールとの接触面は十分に確保されている。したがって、圧延材が作業ロールを通過する時に作業ロールチョックとハウジングウィンドウ間のガタつきを生じるという問題、作業ロールチョック3−1の姿勢が不安定となるという問題が解決され、より安定した通板がもたらされる。ひいては、実質的にキャンバー及び反りの発生のない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な圧延が実現可能となる。
【0056】
(2)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールチョックを圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置が油圧装置であってもよい。油圧装置で作業ロールチョックを押しつけることによって、この押さえ力を、圧延操業に支障がない程度に低く制御することができ、しかも作業ロールチョックの圧延方向の振動を軽減してチョック位置を安定化できる程度に、高く制御することも可能となる。このような構成とすることによって圧延材咬み込み時のように作業ロールチョックが圧延方向に瞬間的に振動するような場合においても、安定した押し力を作用させて作業ロールチョックの動きを安定させることができる。
【0057】
さらに(3)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、補強ロールを基準として作業ロールをオフセットしている側とは反対側に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつけるための装置を備えてもよい。このような配置にすることによって、作業ロールオフセットによって圧延荷重の水平方向分力として発生するオフセット分力が前記装置で作用させる押しつけ力と同じ方向に作用するので、該作業ロールチョックの圧延方向位置を安定させるために与えるべき押しつけ力が小さくなって、押しつけ装置を小型化することができる。作業ロールチョックに対する圧延方向押しつけ力が過大になると、板厚制御機能等によって与えられるような圧延中の圧下位置制御に対する追従性に問題を生じることがあるが、この圧延方向押しつけ装置から作用させる押しつけ力を小さく抑えることによって、このような問題の発生も避けることができる。
【0058】
(4)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に荷重検出装置が備えられているので、入・出側双方の荷重測定値の方向性を考慮して合力を演算することで、入・出側何れの方向に力が作用していても作業側および駆動側それぞれのロールチョックに作用する圧延方向力を正確に求めることができる。また、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差異を演算する左右圧延方向力差分演算装置を備えているので、キャンバーの原因となる圧延方向の伸び歪の左右差に起因して圧延材より作業ロールに作用するモーメントを検出することができる。このモーメントは、上記したようにキャンバー発生の原因となる伸び歪の左右差が生じたときにのみ発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生するので、上記圧延方向力左右差を小さくする方向に、当該圧延機のロール開度の左右非対称成分すなわち圧下レベリングを操作することで、キャンバーの発生を未然に防止することが可能となる。(4)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の左右差に基づいて、伸び歪を左右均等化するための圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する左右非対称成分制御量演算装置と、該ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて該圧延機のロール開度を制御する左右非対称成分制御装置が配備されているので、伸び歪の左右差の発生を未然に防ぎ、キャンバーのない、あるいは極めてキャンバーの軽微な金属板材を圧延することが可能となる。
【0059】
上記の原理は、圧延材先端部圧延時の次にキャンバーが発生しやすい圧延材尾端部圧延時も同様であり、尾端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さが長いので、伸び歪そして先進率の左右差を生じようとしたときに主として出側圧延材からこれに抗するモーメントが発生し、これが作業ロールに反力として伝達されるので、この場合も作業ロールチョックに作用する圧延方向力の左右差を測定・演算することで伸び歪の左右差の発生を検知することができ、該圧延方向力左右差を小さくする方向に当該圧延機のロール開度の左右非対称成分すなわち圧下レベリングを操作することで、尾端部におけるキャンバーの発生も未然に防止することが可能となる。
【0060】
なお、下作業ロールチョックに作用する圧延方向力の検出装置および演算装置を省略してもよい。一般に伸び歪の左右差に起因して圧延材から作業ロールに作用するモーメントは、必ずしも上下作業ロールに均等に作用するとは限らないが、その時系列変化挙動については、上下作業ロールで傾向が逆転することはない。したがって、ロール開度を制御する制御装置において適正な制御ゲインを設定することによって、上下どちらか一方の作業ロールに作用する圧延方向力の左右差に基づく良好なキャンバー制御を実現することができる。
【0061】
また、ロール開度の左右非対称成分を直接的な制御パラメータとしているが、調質圧延のような極軽圧下圧延の場合には圧延荷重を目標値として圧延操業を実行することもできる。そのような場合には、制御目標値として圧延荷重の左右差を演算して与えても良い。すなわち、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の左右差に基づき、これを解消する方向に圧延荷重の左右差の制御量を演算し、これを目標値として圧延荷重制御を実施することで結果的にロール開度の左右非対称成分を制御することになる。
【0062】
さらに、(4)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に作業ロールチョックを圧延方向に押しつけるための装置を有している。このような装置構成にして、作業ロールチョックを圧延方向に押しつけた状態で圧延すると、前記したように伸び歪の左右差によって圧延材から作業ロールにモーメントが作用した際、直ちに作業ロールチョックに作用する圧延方向力左右差として検出できるので、応答性および精度のさらに優れたキャンバー制御システムとすることが可能となる。
【0063】
(5)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、(4)に記載の圧延機に加え、被圧延材のキャンバーを測定する、キャンバー測定装置と、該キャンバー測定装置によるキャンバー測定値に基づいて、該圧延方向力の作業側と駆動側の差異の制御目標値を学習する演算装置とを備えている。したがって、ロール摩耗等が起因で該作業ロールチョックに作用する圧延方向力の差異がシフトした場合においてもこのシフトした量をキャンバー実績値に基づく学習により修正し、適切な制御目標値を演算することができる。さらに作業ロールチョックに作用する圧延方向力の差異および該制御目標値に基づいて、伸び歪を左右均等化するための圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する左右非対称成分制御量演算装置と、該ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて該圧延機のロール開度を制御する左右非対称成分制御装置が配備されているので、伸び歪の左右差の発生を未然に防ぎ、キャンバーのない、あるいは極めてキャンバーの軽微な金属板材を圧延することが可能となる。なお、(5)に記載の圧延機は、(4)に記載の圧延機と同様に、ロールチョックを圧延方向に押しつける装置を備えるものである。
【0064】
圧延方向力の作業側と駆動側の差異の制御目標値を学習する演算装置(以下、制御目標演算装置と称する)での演算方法について説明する。通常、圧延方向力左右差の制御目標値は零であり、圧延方向力左右差がこの制御目標値になるように圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御することで、キャンバー発生を防止することができる。しかしながら、ロールの摩耗等が起因でロール径の左右差あるいは摩擦係数の左右差等が生じた場合、これによって圧延方向力左右差がシフトする可能性があり、この場合、制御目標値は零でなく、適切な値に変更する必要がある。
【0065】
図6は、ロールの摩耗等による圧延方向力左右差とキャンバー量の関係の変化を示した図である。図6に示すように圧延方向力左右差とキャンバー量の関係直線Aは、ロールの摩耗等が起因で関係直線Bのようにほぼ平行にシフトする。この場合、キャンバー量を零にするためには、制御目標値A′を制御目標値B′に変更する必要がある。また、このような圧延方向力左右差とキャンバー量の関係直線のシフトおよび制御目標値の変更は、圧延中または圧延後のキャンバー量を測定することで容易に判断することができる。
【0066】
すなわち、図6に示すように制御目標値A′になるように制御を実施した結果、キャンバー実績値が零ではなく、キャンバー実績値Cであったとするならば、圧延方向力左右差とキャンバー量の関係は、直線Bのようにシフトしていると考えられるので、当該パス、次パスまたは次材の圧延で制御目標値をB′に変更すれば良い。また、このロール摩耗起因の圧延方向力左右差のずれは、圧延本数が増加するに従って変化していく可能性があるので、制御目標値も常に学習し変更していく必要がある。尚、図中のα、およびαは、それぞれ圧延方向力左右差とキャンバー量の関係直線AおよびBの傾きであり、圧延機の寸法、圧延条件および圧延材の変形抵抗等によって決まる定数である。ロール摩耗起因等でこれらの傾きが変化するような場合は、予備実験等によって予め同定しておく必要がある。ただし、圧延条件および圧延材質によって変化することはあるものの条件をそろえば、一次近似的にαおよびαはほぼ等しく、α=α(=α)としても良い。しかし、圧延条件によっては経時的に変化することがあるので、定期的にαの値を測定しても良い。
【0067】
そこで本発明では、次のような方法によって、圧延方向力左右差の制御目標値の学習を行う。圧延機の後面に、キャンバー測定装置が備えられていて、圧延中または圧延後の被圧延材のキャンバーの測定が可能であり、測定されたキャンバー量の値は、制御目標値演算装置に送られる。制御目標値演算装置では、該キャンバー量の測定値に基づき、上記で説明した方法に従って、当該パス、次パスまたは次材の圧延での制御目標値が演算される。この制御目標値は、圧延本数が増加するに従って学習し変更していく必要があるので、例えば、下記式〈1〉を用いてパス毎または圧延材本数毎に学習すれば良い。
(n)=C(n−1)*γ+C(n−1)*(1−γ)・・・〈1〉
ただし、C(n)はnパス目または圧延材n本目の制御目標値、C(n)はnパス目または圧延材n本目のキャンバー実績値に基づき修正された制御目標値、γは学習ゲイン(0〜1.0)である。
【0068】
以上のように演算した該制御目標値と該圧延方向力の作業側と駆動側の差異の演算結果に基づいて、キャンバーを防止するための圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する。尚、圧延初回のキャンバー量が実測されていない段階では、制御目標値は、例えばキスロール締め込み時に発生している圧延方向力左右差の値または零を設定すれば良い。また、ここでは前記圧延方向力の左右差および式(1)より求めた制御目標値に対して、例えば、比例(P)ゲイン、積分(I)ゲイン、微分(D)ゲインを考慮したPID演算によってロール開度の左右非対称成分制御量を演算する。そしてこの制御量演算結果に基づいて、圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御することでキャンバー発生のない、あるいは極めてキャンバーの軽微な圧延が実現できる。尚、当該パスにおいて、制御目標値を変更する場合は、キャンバー量が実測された段階で圧延中にダイナミックに制御目標値を変更すれば良い。
【0069】
なお、(5)に記載の本発明の圧延機において、下作業ロールチョックに作用する圧延方向力の検出装置および演算装置を省略することもできる。一般に伸び歪の左右差に起因して圧延材から作業ロールに作用するモーメントは、必ずしも上下作業ロールに均等に作用するとは限らないが、その時系列変化挙動については、上下作業ロールで傾向が逆転することはなく、圧延方向力左右差の零点がシフトする可能性がある。この場合も圧延中または圧延後の被圧延材のキャンバーを測定し、このキャンバー実績値に基づき、学習した制御目標値を当該パス、次パスまたは次材の圧延に設定することで、圧延方向力左右差のずれを修正できるので、上下どちらか一方の作業ロールに作用する圧延方向力の左右差に基づく良好なキャンバー制御を実現することができる。
【0070】
(6)に記載の圧延機は、前記荷重検出装置により測定した前記上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する圧延方向力の差分を演算する上下圧延方向力差分演算装置と、前記圧延方向力差分演算装置の演算値に基づいて、前記圧延機の上下非対称成分制御量を演算する上下非対称成分制御量演算装置と、当該上下非対称成分制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延機の上下非対称成分制御量を制御する上下非対称成分制御装置と、を備えていることを特徴とする。
【0071】
(6)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に荷重検出装置が備えられているので、入・出側双方の荷重測定値の方向性を考慮して合力を演算することで、入・出側何れの方向に力が作用していても作業側および駆動側それぞれのロールチョックに作用する圧延方向力を正確に求めることができる。この荷重検出装置は、上下両方の作業ロールのロールチョックに
備えられているので、上側および下側それぞれのロールチョックに作用する圧延方向力を測定することができる。また、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の上側と下側の差異を演算する上下圧延方向力差分演算装置が備えられているので、上下圧延方向力差分を演算することができる。この上下圧延方向力差分から先端部圧延時の主として入側圧延材から作用するモーメントを検知できる。このモーメントは、反り発生の原因となる伸び歪の上下差が生じたときに発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生する。したがって上記圧延方向力の上下差を小さくする方向に、当該圧延機の上下非対称成分を例えばロール周速またはトルクで操作することにより、反りの発生を未然に防止することが可能となる。(6)に記載の圧延機は、上下圧延方向力差分に基づいて、伸び歪を上下で均等化するための圧延機の上下非対称成分制御量を演算する上下非対称成分制御量演算装置と、当該上下非対称成分制御量の演算値に基づいて、該圧延機の当該上下非対称成分制御量を制御する上下非対称成分制御装置が配備されている。これにより、金属板材の圧延において、伸び歪の上下差の発生を未然に防ぎ、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材の圧延を実施することが可能である。
【0072】
なお、前記上下非対称成分制御量としては、圧延機のロール速度、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、被圧延材の入射角、及び、上下作業ロールチョックの水平方向位置のいずれか一つでもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。前記上下非対称成分制御装置としては、前記上下非対称成分制御量に対応して、ロール速度制御装置、潤滑剤の供給量制御装置、温度制御装置、ローラーテーブル高さ制御装置、ロールチョック水平方向位置制御装置のいずれか一つでもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。いずれの場合であっても上下ロールの圧延トルクを測定せずに、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することができる。
【0073】
(7)に記載の圧延機は、前記荷重検出装置が、キスロール状態における圧延方向力を測定する圧延機であって、
さらに、前記荷重検出装置により測定した前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する圧延方向力の差分を演算する左右圧延方向力差分演算装置と、前記左右圧延方向力差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延機の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備え、
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値とし、前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する左右圧延方向力差分が最小になるように前記圧延機の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する機能を有することを特徴とする。
【0074】
上述の(4)の圧延機では、圧延中の制御量を演算し、キャンバーの発生を抑えることができる。すなわち、圧延開始後、制御を開始してからその抑制効果を発揮するが、制御を開始する前に圧延される最先端部のキャンバー抑制には寄与しない。また、圧延材が圧延機を抜ける前、つまり圧延終了直前には、制御の安定性の観点から前記制御を終了させる必要があることと、かつ圧下位置を制御終了後に初期圧下位置へと復帰させるため、初期圧下位置(零点位置)を誤ると圧延材の尾端部についてもキャンバーを発生させる原因となり得る。
【0075】
従来から、初期圧下位置(零点位置)を調整するために、キスロールによる調整が行われている。キスロール締め込みとは、圧延材の存在しない状態で、上下作業ロールを互いに接触させて、ロール間に負荷を与えることを意味する。このキスロール締め込み時に、圧延荷重、すなわち圧下方向に作用する補強ロールからの反力、の測定値が、作業側および駆動側のそれぞれで、あらかじめ定められた零点調整荷重に一致するよう調整されている。しかし、このキスロールによる零点位置調整では適正な零点位置調整をもたらさないことがある。
【0076】
一般に、キスロールによる零点位置調整が適正でない原因としては、作業ロールと補強ロールとの間、あるいはキスロール状態(キスロール締め込みをしている状態)であれば上下作業ロール間において、ロール同士がクロスしている場合、そのロール間にはスラスト力(ロール軸方向に作用する力)が発生する。このスラスト力は、ロールに余分なモーメントを与え、このモーメントに釣り合うようにロール間の接触荷重のロール軸方向分布が変化する。これが最終的に、圧延荷重測定用ロードセルの作業側と駆動側の差に対する外乱として現れ、適正な零点位置調整をもたらさないことになる。このロール同士のクロス角は、ペアクロス圧延装置のように意識的に設定しなくても、ハウジングとロールチョックとの間に存在するわずかな間隙によっても生じるため、ロールスラスト力を零に制御することは困難である。
【0077】
しかしながら、本発明者は、従来のキスロールによる零点位置調整においても、圧延方向力が発生し、その圧延方向力はロールスラスト力に影響を受けないことに着目し、圧延方向力をも加味した圧下零点調整を行うことにより精度の高い零点調整が可能であることを見出した。より詳しくは、以下のとおりである。
(A)圧下方向に作用する補強ロール反力は、ロール間スラスト力の影響を受け、その作業側と駆動側の差が顕著に変化する。しかし、作業ロールの作業側および駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差は、ロール間スラスト力の影響を受けずほぼ変化しない。
(B)具体的には、ロール間にクロス角が生じている場合、圧下方向に作用する補強ロール反力の作業側と駆動側の差はクロス角の方向、大きさによって変動する。しかし、作業ロールの圧延方向力の作業側と駆動側の差は、クロス角の方向、大きさが変化してもその影響を受けず、ほぼ一定である。
(C)つまり、作業ロールの圧延方向力の作業側と駆動側の差が最小になるように作業側と駆動側の差圧下レベリングの零点調整を行えば、ロール間にスラスト力が作用していてもその影響を受けず、高精度な圧下零調が可能である。
【0078】
(7)の圧延機は、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に荷重検出装置が備えられているので、入・出側双方の荷重測定値の方向性を考慮して合力を演算することで、入・出側何れの方向に力が作用していても作業側および駆動側それぞれのロールチョックに作用する圧延方向力を正確に求めることができる。圧延前の圧下零調のためにキスロール状態とすると、駆動トルクやオフセットによって、圧下方向力だけでなく、圧延方向力も発生する。前記荷重検出装置は、キスロール状態における作業ロールのロールチョックの圧延方向力を測定することができる。この作業側と駆動側に作用する圧延方向力を測定して、作業側の圧延方向力と駆動側の圧延方向力の差異すなわち左右圧延方向力差分を演算することができる。
【0079】
零点調整のためには、作業側および駆動側の圧下装置を同時に操作して、補強ロール反力の左右の和があらかじめ定められた値(零調荷重)になるまで締め込んでいき、その状態で圧延方向力の作業側と駆動側の差が最小になるように、前記圧延機の作業側および駆動側の圧下装置の圧下レベリング制御を行う。そのため、前記の左右圧延方向力差に基づいて、圧延機の作業側および駆動側の圧下装置の制御量を演算し、当該制御量の演算値に基づいて圧延機の作業側および駆動側の圧下装置を制御する。
【0080】
補強ロール反力の左右の和としてあらかじめ定められた値(零調荷重)とは、実圧延中に生じる荷重と同程度の荷重値として設定される。実際の圧延装置では、定格圧延荷重の50%程度が実圧延荷重となるように設定しているので、例えば定格圧延荷重の15%〜85%のうちの任意な値に設定するとよい。好ましくは、定格圧延荷重の30%〜70%のうちの任意な値に設定するとよい。
【0081】
続いて、上述した左右圧延方向力差分(作業側と駆動側の差)の演算結果に基づき、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分が最小になり、且つ零調荷重を維持するように、圧下装置の制御量を圧下レベリング制御量演算装置で演算する。このとき、圧延方向力の作業側と駆動側との差分は概ね零になることが理想的である。
【0082】
そして、この制御量演算結果に基づいて、圧下レベリング制御装置によって圧下装置を操作し、圧延装置のロールの圧下位置を制御する。これにより、作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる圧延方向力の作業側と駆動側との差分が最小になり、その時点での圧下位置を、作業側と駆動側個別に圧下位置の零点とする。前述したように、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分はスラスト力の影響を受けないため、ロール間にスラスト力が生じていたとしても極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できることになる。
【0083】
また、本発明では押し付け装置がロールチョックを押し付けているので、ロールチョックの圧延方向位置が安定しており、ロールチョックに作用する圧延方向力の測定の応答性および精度をさらに高めることが可能となる。このため、圧延方向力に基づく零点調整の精度がさらに向上する。
【0084】
(8)に記載の圧延機は、前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた前記値の許容範囲をその±2%の範囲内の値とし、
前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する前記左右圧延方向力差分が作業側および駆動側の圧延方向力の平均の±5%の範囲内とすることを特徴とする。
【0085】
上記(7)についての説明で述べたとおり、補強ロール反力の左右の和としてあらかじめ定められた値(零調荷重)は、実圧延中に生じる荷重と同程度の荷重値として設定される。例えば定格圧延荷重の15%〜85%のうちの任意な値に設定するとよい。実際には、この設定値(零調荷重)が、設定値どおりにならないことがあり得る。そのため、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた値、すなわち零調荷重、の許容範囲は、その予め定められた値(零調荷重)を中心にその±2%の範囲内とするとよい。2%より大きいと圧下量の変動が大きすぎ、板厚や形状不良となり易い。実際の圧延において±2%の範囲内にすれば問題はない。もちろん、誤差は小さい方がよく、好ましくは±1%以下とすることが望ましい。圧延材や圧延条件により、予め設定されるものである。設定方法についての詳細はここでは省略するが、通常の圧延作業において設定される方法でかまわない。
【0086】
続いて、上述した左右圧延方向力差分(作業側と駆動側の差)の演算結果に基づき、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分が最小になり、且つ零調荷重を維持するように、圧下装置の制御量を圧下レベリング制御量演算装置で演算される。このとき、(7)についての説明で述べたとおり、圧延方向力の作業側と駆動側との差分は概ね零になることが理想的である。実際は測定誤差や、設定精度を加味して作業側と駆動側の圧延方向力の平均の±5%以下(もしくは、作業側と駆動側の圧延方向力の和の±2.5%以下)になるように作業側と駆動側の差圧下レベリングの零点調整を行えば、ロール間にスラスト力が作用していてもその影響を受けず、高精度な圧下零調が可能である。好ましくは±4%以下、さらに好ましくは±3%以下、さらには2%以下とするとよい。
【0087】
(9)に記載の圧延機は、前記荷重検出装置が、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックのそれぞれに発生する圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段によって荷重を検出していることを特徴とする。
【0088】
圧延機の作業ロールに作用する圧延方向力は基本的には作業ロールチョックによって支持される、そして、作業ロールチョックはプロジェクトブロックやハウジングによって圧延方向に固定されている。したがって、作業ロールチョックに作用する圧延方向力は、作業ロールチョックに圧延方向の弾性歪みを生じさせ、これは歪測定手段により測定することができる。すなわち、弾性歪の測定値に基づいて、作業ロールチョックに作用する圧延方向力を求めることができる。
【0089】
歪測定手段は、作業ロールチョックの出側および入側のいずれにも配備する(図3A参照)。圧延方向力による作業ロールチョックの圧縮歪みを測定するには、出側と入側の両方に歪測定手段を配備し、両側の弾性歪みを考慮することにより、作業ロールチョックに圧延方向の何れの方向に力が作用しても、演算で求める圧延方向力の精度を高めることができる。ただし、実施態様に応じて、上側または下側の出側または入側のいずれかまたはそれらの組み合わせを省略してもよい。例えば、後述するように、出側または入側のいずれか一方の歪測定手段を、荷重検出機能を有する油圧装置に置き換えてもよい。油圧装置の荷重検出機能を、置き換えられた歪測定手段の代用として、圧延方向力を求める演算に利用することができる。また、油圧装置でロールチョックを押し付けることにより、ロールチョックの圧延方向位置を安定させ、ロールチョックに作用する圧延方向力の測定の応答性および精度をさらに高めることが可能となる。
【0090】
また、下作業ロールチョックに作用する圧延方向力の検出装置および演算装置を省略してもよい(図3B参照)。一般に伸び歪の左右差に起因して圧延材から作業ロールに作用するモーメントは、必ずしも上下作業ロールに均等に作用するとは限らないが、その時系列変化挙動については、上下作業ロールで傾向が逆転することはない。したがって、ロール開度を制御する制御装置において適正な制御ゲインを設定することによって、上下どちらか一方の作業ロールに作用する圧延方向力の左右差に基づく良好なキャンバー制御、零点調整を実現することができる。
【0091】
図3Cは、歪測定手段による弾性歪の測定を説明する図である。図3Cを参照して説明すると、歪測定手段304は、上記の圧延時、作業ロールチョック301に、圧延方向に発生する歪を測定するために設けられる。
図3Cでは、作業ロールチョック301に形成した穴の底部に歪測定手段304A,Bを挿入、配置させ、その後、ボルト305A,Bによって穴を塞ぎ、歪測定手段304A,Bを固定する構成となっている。歪測定手段304A,Bによるリード線306A,Bは、ボルト305A,B内を貫通させて、外部に引き出される。なお歪測定手段304A,Bは、垂直方向はロール軸中心高さ308を中心に、ロール軸上部からロール軸下部までのロール軸直径に収まる範囲309、軸方向は圧下支点位置310を中心に、ロール軸格納長さの範囲311に配置されることが好ましい。また歪測定手段304A,Bを取り付けるための穴深さについては、好ましくは圧延方向力作用位置307を基準に、深さ5mm程度から、圧延方向力作用位置307からロールチョック端面312までの長さの半分程度とすると良い。
【0092】
上記の歪測定手段は、作業ロールチョックの軽微な改造のみで配備可能であり、プロジェクトブロックを含むハウジングの大規模な改造が不要であり、投資規模を抑えることができる。
このとき、リード線等による配線が煩雑になることを回避するために、歪測定手段からの情報を無線によって発信してもよい。また、このための電源としてバッテリーの装着をしてもよい。
【0093】
また、上記の歪測定手段は、作業ロールチョックの穴に配備されており、作業ロールチョックとともに移動する。すなわち、圧延する板材の板厚が変化しても、板厚の変化に応じて歪測定手段も上下に移動する。したがって、常に作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪を正確に測定することが可能である。これは、本発明のロール開度を大きくとることができる圧延機において、非常に優れた利点である。つまり、板材の板厚に関わらず、制御の高いキャンバー制御および反り制御が可能である。いうまでもなく、大開度のみならず、キスロール状態であっても、正確な測定が可能である。したがって、零点調整においても精度の高い制御が可能である。従来の、作業ロールチョックとプロジェクトブロック等との間に挟みこんだロードセルは、各機器の位置関係を厳格に管理する必要があったが、本発明の歪測定手段ではそのような厳密な管理は必要ない。
図8を用いて説明する。図8は、ロードセルと歪測定手段の信号強度を示す図である。
荷重測定装置がロードセルである場合、作業ロールチョックへの設置は困難なため、プロジェクトブロックまたはハウジングに設置される。したがって、板厚が厚くなり、ロールチョックがロードセルの最適適用範囲から逸脱するにつれて、信号強度は低下する。また、ロードセルの適用範囲を広く使うために板厚0の位置では僅かに信号強度が落ちることがある。これに対して、歪測定手段は、作業ロールチョックの穴に配備されており、作業ロールチョックとともに移動する。すなわち、圧延する板材の板厚が変化しても、板厚の変化に応じて歪測定手段も上下に移動する。したがって、歪測定手段は作業ロールチョックに板厚の変動にかかわらず、信号強度は一定である。このため、厚板のキャンバー制御、反り制御も精度よくでき、且つ零点調整も精度よくできる。
【0094】
(10)に記載の圧延機は、前記歪測定手段がピエゾ素子または歪ゲージであることを特徴とする。
【0095】
ピエゾ素子は、圧電素子(あつでんそし)とも呼ばれ、圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、圧電効果を利用した受動素子である。
【0096】
歪ゲージは、薄い絶縁体上にジグザグ形状にレイアウトされた金属の抵抗体(金属箔)が取り付けられた構造をしており、変形による電気抵抗の変化を測定することによりひずみ量に換算することができる。測定原理として、被測定物が変形すると、ひずみゲージも同率で変形すること、およびひずみゲージの細い金属抵抗体は、伸びにより断面積が減るとともに長さが長くなり、その結果抵抗値が増えることを利用して、歪みを測定する。
【0097】
ピエゾ素子や歪ゲージは、従来の荷重検出器装置であるロードセルに比べて、非常に小さく、上述のとおりロールチョック内に配備することができ、大規模な改造が不要であり、また、機器配備に関する管理上の制約も少ない。
【0098】
(11)に記載の本発明の金属板材の圧延機では、作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置が前記荷重検出装置としても機能する。例えば図4に示すように、上作業ロールチョック3−1の入側に入側作業ロールチョック押し付け装置14に隣接して上作業ロール入側荷重検出装置17を有しており、作業ロールチョック3−1を入側から出側に所定の押し付け力で押し付けている構成であってもよい。このような構成とすることにより、上作業ロールチョック3−1の圧延方向位置を安定させるとともに、上作業ロールチョック3−1に作用する圧延方向力の測定の応答性および精度を高めることが可能となる。なお、図4の圧延機では、入側作業ロールチョック押し付け装置14は油圧装置としており、このような構成とすることによって圧延材咬み込み時のように作業ロールチョックが圧延方向に瞬間的に振動するような場合においても、安定した押し力を作用させて作業ロールチョックの動きを安定させることができる。また、油圧装置となっている入側作業ロールチョック押し付け装置14の油圧シリンダーに供給される作動油の圧力を測定するセンサー(図示せず)を配備することによって油圧装置そのものを荷重検出装置として代用することもできる。
【0099】
さらに、図5のように、上作業ロールチョックの出側に出側作業ロールチョック位置制御装置18を配備してもよい。この出側作業ロールチョック位置制御装置18も油圧装置であり、図5の圧延機では、形式的には上作業ロールチョック3−1を入側および出側の油圧シリンダーで挟み込んでいることになるが、出側作業ロールチョック位置制御装置18の場合は、出側作業ロールチョック位置検出装置19を配備して位置制御をしており、チョックの挟み込み力は入側作業ロールチョック押し付け装置14によって与えられる構造となっている。このような構造とすることによって、作業ロールのオフセット量、あるいは補強ロールとの間の微小クロス角を調整できる等の付加的な制御能力を与えることが可能となる。
【0100】
ところで、図3,3A,3B,4,5の実施形態では圧延機入側に作業ロールチョック押し付け装置14を配備した例を示しているが、これを逆に出側に配備しても差し支えない。ただし、図4,5の作業ロールオフセットとの相対的な位置関係は維持することが好ましい。
また、図3C,4,5の実施形態では上作業ロールチョック近辺の実施形態のみを示しているが、下作業ロールチョックに適用する場合の実施形態も基本的には同様である。
【0101】
(12)に記載の本発明の圧延方法は、(1)〜(11)のいずれかに記載の金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけることを特徴とする。(1)〜(11)の金属板材の圧延機はいずれも、作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置を有している。このような装置構成にして、作業ロールチョックを圧延方向に押しつけた状態で圧延すると、前記したように伸び歪の左右差および上下差によって圧延材から作業ロールにモーメントが作用しても、作業ロールチョックに押さえつける力が作用しており、該モーメントが該押さえつける力によって減殺される。すなわち、このような装置構成によって、作業ロールチョックの圧延方向位置を安定させることができる。ひいては、実質的にキャンバー及び反りの発生のない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な圧延が実現可能となる。
【0102】
(13)に記載の本発明の圧延方法によると、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力を測定して、作業側の圧延方向力と駆動側の圧延方向力との差異すなわち圧延方向力左右差を演算するので、この値から上記した先端部圧延時の主として入側圧延材から作用するモーメントを検知できる。このモーメントは、上記したようにキャンバー発生の原因となる伸び歪の左右差が生じたときにのみ発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生するので、上記圧延方向力左右差を小さく方向に、通常は零になるように、当該圧延機のロール開度の左右非対称成分すなわち圧下レベリングを操作することで、キャンバーの発生を未然に防止することが可能となる。
なお、(13)に記載の本発明の方法では、作業ロールチョックが該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけられている。このため、直ちに作業ロールチョックに作用する圧延方向力左右差として検出できるので、応答性および精度のさらに優れたキャンバー制御システムとすることが可能となる。
【0103】
上記の原理は、圧延材先端部圧延時の次にキャンバーが発生しやすい圧延材尾端部圧延時も同様であり、尾端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さが長いので、伸び歪そして先進率の左右差を生じようとしたときに主として出側圧延材からこれに抗するモーメントが発生し、これが作業ロールに反力として伝達されるので、この場合も作業ロールチョックに作用する圧延方向力の左右差を測定・演算することで伸び歪の左右差の発生を検知することができ、該圧延方向力左右差を小さくする方向に当該圧延機のロール開度の左右非対称成分すなわち圧下レベリングを操作することで、尾端部におけるキャンバーの発生も未然に防止することが可能となる。
【0104】
以上説明したように、(13)に記載の本発明の方法では、キャンバー発生の直接原因となる圧延による伸び歪の左右差を検出・測定し、直ちにこれを均一化するための圧下レベリング操作を実施するため、実質的にキャンバー発生のない、あるいは極めてキャンバーの軽微な圧延が実現可能となる。
【0105】
(13)に記載のように、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定して、作業側の圧延方向力と駆動側の圧延方向力との差異すなわち圧延方向力左右差を演算し、この圧延方向力左右差を小さくする方向に、当該圧延機の圧下レベリングを操作する圧延方法により、実質的にキャンバー発生のない圧延が可能となる。
しかしながら、上記方法では、ロールの摩耗等が起因でロール径の左右差あるいは摩擦係数の左右差等が生じた場合には、これによって圧延方向力左右差がシフトする可能性があるため、圧延方向力左右差を小さくする方向に圧下レベリングを操作してもキャンバーの発生を十分に防止できなくなる懸念がある。
【0106】
そこで、(14)に記載の本発明の金属板材の圧延方法では、上記のような懸念を解消するために、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定し、該圧延方向力の作業側と駆動側との差異を演算し、この差異すなわち圧延方向力左右差に基づいて、圧下レベリング制御を実施する際に、圧延方向力左右差の制御目標値を設定し、この制御目標値になるように圧下レベリング制御を実施する。そして、この制御目標値は、通常零とするが、圧延後または圧延中の被圧延材のキャンバーを測定し、このキャンバー実績値に基づき、該制御目標値を学習する圧延方法を提案している。このように圧延後のキャンバー実績値に基づき、制御目標値を学習し、この学習した制御目標値を当該パス、次パスまたは次材の圧延に設定することで、ロールの摩耗等が起因で生じる圧延方向力左右差のずれを修正し、キャンバー発生の直接原因となる圧延による伸び歪の左右差の正確な検出・測定ができ、これを均一化するための圧下レベリング操作を実施することにより、実質的にキャンバー発生のない、あるいは極めてキャンバーの軽微な圧延が実現可能となる。
【0107】
(15)に記載の圧延方法によれば、上下両方の作業ロールのロールチョックに作用する圧延方向力によって発生する、上下両方のロールチョックの圧延方向力を測定して、上側の圧延方向力と下側の圧延方向力の差異、すなわち上下圧延方向力の差分を演算する。この上下圧延方向力差分から先端部圧延時の主として入側圧延材から作用するモーメントを検知できる。このモーメントは、反り発生の原因となる伸び歪の上下差が生じたときにのみ発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生する。したがって、前記上下圧延方向力差分の演算値に基づいて、上記圧延方向力の上下差、を小さくする方向に、圧延装置の上下非対称成分制御量を演算し、その演算値に基づいて圧延装置の上下非対称成分制御量を制御する、つまり圧延装置の上下非対称成分、例えば、圧延装置のロール速度、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、被圧延材の入射角、及び、上下作業ロールチョックの水平方向位置のいずれか一つまたはそれらの組み合わせを操作することで、反りの発生を未然に防止することが可能となる。
【0108】
(16)に記載の圧延方法は、圧延装置の零調方法に関し、特に圧延装置の左右非対称成分において高精度な零調を可能とする。この方法によれば、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値とし、ここであらかじめ定められた値(零調荷重)とは、実圧延中に生じる荷重と同程度の荷重値として設定される。実際の圧延装置では、定格圧延荷重の50%程度が実圧延荷重となるように設定しているので、例えば定格圧延荷重の15%〜85%のうちの任意な値に設定するとよい。好ましくは、定格圧延荷重の30%〜70%のうちの任意な値に設定するとよい。
【0109】
キスロール状態とすると、圧下方向力だけでなく、圧延方向力も発生するので、作業ロールのロールチョックの作業側と駆動側に作用する圧延方向力を測定して、作業側の圧延方向力と駆動側の圧延方向力の差異すなわち左右圧延方向力差分を演算する。
【0110】
この左右圧延方向力の差分が、最小になるように、圧延装置の左右圧下位置を設定する。これにより、作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪の作業側と駆動側との差分が概ね零になり、その時点での圧下位置を、作業側と駆動側個別に圧下位置の零点とする。作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分はスラスト力の影響を受けないため、ロール間にスラスト力が生じていたとしても極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できることになる。
【0111】
(17)に記載の圧延方法は、前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた前記値の許容範囲をその±2%の範囲内の値とし、
前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する前記左右圧延方向力差分が作業側および駆動側の圧延方向力の平均の±5%の範囲内とすることを特徴とする。
【0112】
上記(16)についての説明で述べたとおり、補強ロール反力の左右の和としてあらかじめ定められた値(零調荷重)は、実圧延中に生じる荷重と同程度の荷重値として設定される。例えば定格圧延荷重の15%〜85%のうちの任意な値に設定するとよい。実際には、この設定値(零調荷重)が、設定値どおりにならないことがあり得る。そのため、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた値、すなわち零調荷重、の許容範囲は、その予め定められた値(零調荷重)を中心にその±2%の範囲内とするとよい。2%より大きいと圧下量の変動が大きすぎ、板厚や形状不良となり易い。実際の圧延において±2%の範囲内にすれば問題はない。もちろん、誤差は小さい方がよく、好ましくは±1%以下とすることが望ましい。圧延材や圧延条件により、予め設定されるものである。設定方法についての詳細はここでは省略するが、通常の圧延作業において設定される方法でかまわない。
【0113】
続いて、上述した左右圧延方向力差分(作業側と駆動側の差)の演算結果に基づき、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分が最小になり、且つ零調荷重を維持するように、圧下装置の制御量を圧下レベリング制御量演算装置で演算される。このとき、(16)についての説明で述べたとおり、圧延方向力の作業側と駆動側との差分は概ね零になることが理想的である。実際は測定誤差や、設定精度を加味して作業側と駆動側の圧延方向力の平均の±5%以下(もしくは、作業側と駆動側の圧延方向力の和の±2.5%以下)になるように作業側と駆動側の差圧下レベリングの零点調整を行えば、ロール間にスラスト力が作用していてもその影響を受けず、高精度な圧下零調が可能である。好ましくは±4%以下、さらに好ましくは±3%以下、さらには2%以下とするとよい。
【0114】
図7を参照して、本発明の蛇行・キャンバー制御(13)、反り制御(15)および零点調整手段(16)をさらに具体的に説明する。
圧延機は、上作業ロールチョック5に支持された上作業ロール701と、上作業ロール701を補強する上補強ロールチョック705に支持された上補強ロール703と、下作業ロールチョック706に支持された下作業ロール702と、下作業ロール702を補強する下補強ロールチョック707に支持された下補強ロール704を備え、圧下装置713を備えている。なお、金属板材721は、圧延方向722に圧延される。
なお、図7には、基本的に作業側の装置構成のみを図示しているが、駆動側にも同様の装置が存在する。
【0115】
圧延機の上作業ロール701に作用する圧延方向力は基本的には上作業ロールチョック705によって支持されるが、上作業ロールチョック705には上作業ロールチョック出側荷重検出装置709と上作業ロール入側荷重検出装置710が配備されており、これらの荷重検出装置(歪み測定手段)709,710により、上作業ロールチョック705を圧延方向に固定しているプロジェクトブロック(図示せず)等の部材と上作業ロールチョック705の間に作用する力を測定することができる。これらの荷重検出装置709,710は、通常は圧縮力を測定する構造とするのが装置構成を簡単にするため好ましい。上作業ロール圧延方向力演算装置714では、上作業ロール出側荷重検出装置709と上作業ロール入側荷重検出装置710による測定結果の差異を演算し、上作業ロールチョック705に作用する圧延方向力を演算する。さらに、下作業ロール702に作用する圧延方向力についても、下作業ロールチョック706の出側および入側に配備された下作業ロール出側荷重検出装置711および下作業ロール入側荷重検出装置712の測定値に基づき下作業ロール圧延方向力演算装置715によって、下作業ロールチョック706に作用する圧延方向力を演算する。
【0116】
(13)の蛇行・キャンバー制御の場合、作業ロール圧延方向合力演算装置716において、上作業ロール圧延方向力演算装置714の演算結果と下作業ロール圧延方向力演算装置715の演算結果の和をとり、上下作業ロールに作用する圧延方向合力を演算する。上記のような手続きは、作業側のみならず駆動側も全く同じ装置構成で演算を実施し、その結果が駆動側の作業ロール圧延方向合力717として得られる。そして作業側−駆動側圧延方向力差演算装置718によって、作業側の演算結果と駆動側の演算結果との差異が計算され、これによって作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差異が計算されることになる。
【0117】
次に、該圧延方向力の作業側と駆動側の差異の演算結果に基づいて圧下レベリング制御量演算装置719において、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差異を適正な目標値にし、キャンバーを防止するための圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する。ここでは、前記圧延方向力の左右差に基づいて、例えば、比例(P)ゲイン、積分(I)ゲイン、微分(D)ゲインを考慮したPID演算によって制御量を演算する。そして、この制御量演算結果に基づいて、圧下レベリング制御装置720によって圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御することで、キャンバー発生のない、あるいは極めてキャンバーの軽微な圧延が実現できる。
【0118】
ところで、上記した図7の装置構成において、作業側−駆動側圧延方向力差演算装置718の演算結果を得るまでは、基本的には作業側と駆動側を合わせて合計8個の荷重検出装置の出力の加減演算のみであるので、上記した装置構成そして演算の順番を任意に変更しても差し支えない。例えば、上下の出側荷重検出装置の出力を先に加算し、次に入側の加算結果との差異を演算し、最後に作業側と駆動側の差異を演算してもよいし、最初にそれぞれの位置の荷重検出装置の出力の作業側と駆動側の差異を演算してから、上下を合計し、最後に入側と出側の差異を演算してもよい。
【0119】
(15)の反り制御の場合、作業ロール圧延方向合力演算装置716において、上作業ロール圧延方向力演算装置714の演算結果と下作業ロール圧延方向力演算装置715の演算結果の差をとり、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の上側と下側の差を演算する。上記のような手続きは、作業側のみならず駆動側も全く同じ装置構成で演算を実施し、その結果が駆動側の作業ロール圧延方向力上下差717として得られる。そして上側−下側圧延方向力差演算装置718によって、作業側の演算結果と駆動側の演算結果(上下差)が集計され、これによって作業ロールチョックに作用する圧延方向力の上側と下側の差が計算されることになる。
【0120】
次に、該圧延方向力の上側と下側の差異の演算結果に基づいて上下ロール速度制御量演算装置719において、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の上側と下側との差を適正な目標値にし、反りを防止するための圧延機のロール速度の上下非対称成分制御量を演算する。ここでは、前記圧延方向力の上下差に基づいて、例えば、比例(P)ゲイン、積分(I)ゲイン、微分(D)ゲインを考慮したPID演算によって制御量を演算する。
そしてこの制御量演算結果に基づいて、上下ロール速度制御装置720によって圧延機のロール速度の上下非対称成分を制御することで反り発生のない、あるいは極めて反りの軽微な圧延が実現できる。
なお、ここでは、上下非対称成分制御量として、前記圧延機のロール速度を用いたが、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、被圧延材の入射角、及び、作業ロールチョックの水平方向位置等を用いてもよい。
【0121】
ところで、上記した図7の装置構成において、上側−下側圧延方向力差演算装置718の演算結果を得るまでは、基本的には上側と下側を合わせて合計8個の荷重検出装置の出力の加減演算のみであるので、上記した装置構成そして演算の順番を任意に変更しても差し支えない。例えば、作業側と駆動側の出側荷重検出装置の出力を先に加算し、次に入側の加算結果との差異を演算し、最後に上側と下側の差異を演算してもよいし、最初にそれぞれの位置の荷重検出装置の出力の上側と下側の差異を演算してから、作業側と駆動側を合計し、最後に入側と出側の差異を演算してもよい。
【0122】
(16)の零点調整の場合、(13)の蛇行・キャンバー制御と同様の演算工程を経て、作業側−駆動側圧延方向力差演算装置718によって、作業側の演算結果と駆動側の演算結果との差異が計算され、これによって作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差異が計算されることになる。
【0123】
そして、油圧圧下装置713を作業側および駆動側を同時に操作して、補強ロール反力の左右の和があらかじめ定められた値(零調荷重)になるまで締め込んでおき、その状態で圧延方向力の作業側と駆動側の差を最小にするためにレベリング操作を行う。
【0124】
続いて、上述した圧延方向力の作業側と駆動側の差分(作業側と駆動側の差)の演算結果718に基づき、圧下レベリング制御量演算装置719において、作業ロールチョック705,706に作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分が最小になり、且つ零調荷重を維持するように、油圧圧下装置713の制御量を演算する。そして、この制御量演算結果に基づいて、圧下レベリング制御装置720によって圧延機のロールの圧下位置を制御する。これにより、作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分を最小とし、その時点での圧下位置を、作業側と駆動側個別に圧下位置の零点とする。前述したように、作業ロールチョック(上作業ロールチョック705、下作業ロールチョック706)に作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分はロールスラスト力の影響を受けないため、ロール間にスラスト力が生じていたとしても極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できることになる。
【0125】
(16)の零点調整においても、上記した図7の装置構成において、作業側−駆動側圧延方向力差演算装置718の演算結果を得るまでは、基本的には作業側と駆動側を合わせて合計8個の荷重検出装置の出力の加減演算のみである。したがって、上記した装置構成そして演算の順番を任意に変更しても差し支えない。例えば、上下の出側荷重検出装置の出力を先に加算し、次に入側の加算結果との差異を演算し、最後に作業側と駆動側の差異を演算してもよいし、最初にそれぞれの位置の荷重検出装置の出力の作業側と駆動側の差異を演算してから、上下を合計し、最後に入側と出側の差異を演算してもよい。
【0126】
(18)に記載の本発明の圧延方法によると、リバース圧延をすることもできる。本発明の圧延方法に用いる圧延機は、作業ロールチョック押し付け装置を備えており、リバース圧延を行っても、作業ロールチョックの姿勢は安定している。また、本発明の圧延方法に用いる圧延機が、作業ロールチョックの入側、出側双方に荷重検出装置を配備することによって作業ロールチョックに圧延方向の何れの方向に力が作用しても、すなわちリバース圧延を行っても、その力の大きさを正確に測定することが可能となり、(12)〜(17)の圧延方法を実施することができる。ひいては、リバース圧延を起こった場合にも、実質的にキャンバー及び反りの発生のない、あるいは極めてキャンバー及び反りの軽微な圧延が実現可能となる。
【符号の説明】
【0127】
1−1 上作業ロール
1−2 下作業ロール
2−1 上補強ロール
2−2 下補強ロール
3−1 上作業ロールチョック
3−2 下作業ロールチョック
4−1 上補強ロールチョック
4−2 下補強ロールチョック
5−1 入側プロジェクトブロック
5−2 出側プロジェクトブロック
5−3 入側下プロジェクトブロック
5−4 出側下プロジェクトブロック
6−1 入側上インクリースベンディング装置
6−2 出側上インクリースベンディング装置
6−3 入側下インクリースベンディング装置
6−4 出側下インクリースベンディング装置
7−1 入側上ディクリースベンディング装置
7−2 出側上ディクリースベンディング装置
7−3 入側下ディクリースベンディング装置
7−4 出側下ディクリースベンディング装置
8−1 入側補強ロールバランス装置
8−2 出側補強ロールバランス装置
9 ハウジング
10 被圧延材
11 圧下装置
12 ハウジングウィンドウ
13 出側上作業ロールチョック荷重検出装置
14 入側上作業ロールチョック押し付け装置
15 出側下作業ロールチョック荷重検出装置
16 入側下作業ロールチョック押し付け装置
17 入側上作業ロールチョック荷重検出装置
18 出側上作業ロールチョック位置制御装置
19 出側上作業ロールチョック位置検出装置
20 入側下作業ロールチョック荷重検出装置
301 ロールチョック
302 ベアリング
303 ロール軸格納部
304 歪測定手段
305 ボルト
306 リード線
307 圧延方向力作用位置
308 ロール軸中心高さ
309 ロール軸直径
310 圧下支点位置
311 ロール軸格納長さ
312 ロールチョック端面
701 上作業ロール
702 下作業ロール
703 上補強ロール
704 下補強ロール
705 上作業ロールチョック(作業側)
706 下作業ロールチョック(作業側)
707 上補強ロールチョック(作業側)
708 下補強ロールチョック(作業側)
709 上作業ロール出側歪測定手段(作業側)
710 上作業ロール入側歪測定手段(作業側)
711 下作業ロール出側歪測定手段(作業側)
712 下作業ロール入側歪測定手段(作業側)
713 圧下装置
714 上作業ロール圧延方向力演算装置(作業側)
714’ 上作業ロール圧延方向力演算装置(駆動側)
715 下作業ロール圧延方向力演算装置(作業側)
715’ 下作業ロール圧延方向力演算装置(駆動側)
716 作業ロール圧延方向合力演算装置[加減算器](作業側)
717 作業ロール圧延方向合力演算装置[加減算器](駆動側)
718 圧延方向力差演算装置(作業側−駆動側/上側−下側)
719 制御量演算装置(圧下レベリング制御量/上下非対称成分制御量)
720 制御装置(圧下レベリング/上下非対称成分)
721 金属板材
722 圧延方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対の作業ロールとこれらをそれぞれ支持する上下一対の補強ロールを有する金属板材の圧延機であって、
前記上下作業ロールにそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、圧延機ハウジングの内側に突出したプロジェクトブロックに配備され、
下作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックと下作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
上作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックの上方に位置する圧延機ハウジングウィンドウと上作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
前記作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけるための装置を有することを特徴とする、金属板材の圧延機。
【請求項2】
前記押しつけるための装置が油圧装置であることを特徴とする、請求項1に記載の金属板材の圧延機。
【請求項3】
前記作業ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、前記補強ロールを基準として前記作業ロールをオフセットしている側とは反対側に、前記押しつけるための装置を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属板材の圧延機。
【請求項4】
前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、該作業ロールチョックに作用する圧延方向力を測定するための荷重検出装置と、
前記荷重検出装置による測定値に基づいて前記作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差異を演算する左右圧延方向力差分演算装置と、
該圧延方向力の作業側と駆動側の差異の演算値に基づいて前記圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する左右非対称成分制御量演算装置と、
該ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて前記圧延機のロール開度を制御する左右非対称成分制御装置と、
を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機。
【請求項5】
被圧延材のキャンバーを測定する、キャンバー測定装置と、
該キャンバー測定装置によるキャンバー測定値に基づいて該圧延方向力の作業側と駆動側の差異の制御目標値を学習する演算装置から構成されることを特徴とする、請求項4に記載の金属板材の圧延機。
【請求項6】
前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、該作業ロールチョックに作用する圧延方向の力を測定するための荷重検出装置と、
前記荷重検出装置により測定した前記上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する圧延方向力の差分を演算する上下圧延方向力差分演算装置と、前記上下圧延方向力差分演算装置の演算値に基づいて、前記圧延装置の上下非対称成分制御量を演算する上下非対称成分制御量演算装置と、当該上下非対称成分制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の上下非対称成分制御量を制御する上下非対称成分制御装置と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項7】
前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、該作業ロールチョックに作用するキスロール状態における圧延方向の力を測定するための荷重検出装置と、
前記荷重検出装置により測定した前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する圧延方向力の差分を演算する左右圧延方向力差分演算装置と、
前記左右圧延方向力差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備え、
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値とし、前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する左右圧延方向力差分が最小になるように前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する機能を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項8】
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた前記値の許容範囲をその±2%の範囲内の値とし、
前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する前記左右圧延方向力差分の許容範囲を圧延方向力の平均の±5%の範囲とすることを特徴とする請求項7に記載の圧延装置。
【請求項9】
前記荷重検出装置が、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックのそれぞれに発生する圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段によって荷重を検出していることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項10】
前記歪測定手段がピエゾ素子または歪ゲージであることを特徴とする請求項9に記載の圧延装置。
【請求項11】
前記押しつけるための装置が前記荷重検出装置としても機能することを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
前記作業ロールチョックを該圧延機ハウジングウィンドウまたはプロジェクトブロックとの接触面に圧延方向に押しつけることを特徴とする、金属板材の圧延方法。
【請求項13】
前記作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力を測定し、
該圧延方向力の作業側と駆動側との差異を演算し、
この差異が通常は零である制御目標値になるように、圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算し、
該ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて該ロール開度を制御することを特徴とする、請求項12に記載の金属板材の圧延方法。
【請求項14】
被圧延材のキャンバーを測定し、このキャンバー測定値に基づき、該圧延方向力の作業側と駆動側との差異の制御目標値を学習することを特徴とする、請求項13に記載の金属板材の圧延方法。
【請求項15】
前記作業ロールの上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する弾性歪の測定値に基づいて、上下弾性歪の差分を演算し、
前記上下弾性歪差分の演算値に基づいて、圧延装置の上下非対称成分制御量を演算し、
当該上下非対称成分制御量の演算値に基づいて、前記圧延装置の上下非対称成分制御量を制御することを特徴とする請求項12に記載の圧延方法。
【請求項16】
キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値とし、
キスロール状態における前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する圧延方向力を測定し、
前記作業側および駆動側の圧延方向力の測定値に基づいて、左右の圧延方向力の差分を演算し、
前記左右の圧延方向力の差分が最小になるように、圧延装置の左右圧下位置を設定し、
前記設定した圧下位置を初期圧下位置とすることを特徴とする、請求項12に記載の圧延方法。
【請求項17】
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和としてあらかじめ定められた前記値の許容範囲をその±2%の範囲内の値とし、
前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する前記左右圧延方向力差分の許容範囲を圧延方向力の平均の±5%の範囲とすることを特徴とする請求項16に記載の圧延装置。
【請求項18】
リバース圧延することを特徴とする、請求項12〜17のいずれか1項に記載の金属板材の圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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