説明

金属板材を巻付けた部材

【課題】金属板材を保護し、且つ、基材の外面に沿って巻付けても開口の縁部分が基材の外面から離れる方向に反る力が生じ難く、正確に巻き付けることが可能となる。
【解決手段】保護シート被覆金属板5が、開口を有する金属板材3の外面を前記開口を含めて保護シート4で被覆することで構成される。前記保護シート被覆金属板5が、基材1の外面に沿って巻付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板材を巻付けた部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成樹脂製軒樋の外面にアンテナパターンを有する金属薄膜を貼り付けたアンテナ付き軒樋が開示されている。
【0003】
アンテナパターンは金属薄膜に開口を設けることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−84156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された従来例は以下の問題点がある。
【0006】
開口を有する金属薄膜を軒樋外面に沿って曲げて貼り付け際、開口の縁部分は軒樋外面から離れる方向に反る力が生じ、接着剤で接着しようとしても、接着が十分におこなわれず、剥離したり、変形しやすいという問題がある。
【0007】
また、金属薄膜が外部に露出し、錆の発生のおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、金属板材を保護し、且つ、基材の外面に沿って巻付けても開口の縁部分が基材の外面から離れる方向に反る力が生じ難く、正確に巻き付けることが可能な金属板材を巻付けた部材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属板材を巻付けた部材は、保護シート被覆金属板が、開口を有する金属板材の外面を前記開口を含めて保護シートで被覆することで構成され、前記保護シート被覆金属板が、基材の外面に沿って巻付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記保護シート被覆金属板が、アンテナパターン用の開口を有した前記金属板材を前記保護シートで被覆して形成したアンテナ板であり、このアンテナ板を、前記基材を構成する雨水を流すための樋体の外面に沿って巻付けることが好ましい。
【0011】
また、前記保護シート被覆金属板を前記基材の外面に巻付けた状態で接着することが好ましい。
【0012】
また、前記保護シート被覆金属板を前記基材の外面に巻付けた状態で取付部材で取付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、金属板材の外面が開口を含めて保護シートで被覆されるので、基材の外面に沿って巻付けられても、開口の縁部分が基材外面から離れる方向に反り難くすることが可能となる。これにより、開口を有する金属板材を基材の外面に正確に巻付けることが可能となる。また、保護シートで開口を有する金属板材が錆びないように保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の断面図である。
【図2】同上の一部省略全体斜視図である。
【図3】同上の一部破断した斜視図である。
【図4】(a)は同上に用いるアンテナ板の折り曲げる前の断面図であり、(b)は折り曲げた状態を示す表面側から見た斜視図であり、(c)は背面側から見た斜視図である。
【図5】同上に用いる取付部材の斜視図である。
【図6】同上に用いる同軸ケーブルの斜視図である。
【図7】同上の施工状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面に基づいて一実施形態を説明する。
【0016】
保護シート被覆金属板5は、開口6を有する金属板材3の外面(両外面又は片側の外面)を開口6を含めて保護シート4で被覆することで形成される。
【0017】
金属板材3は、薄い金属板材(金属箔も含まれる)であり、この金属板材3に切欠き、穴等を形成することで開口が形成される。
【0018】
開口を含めて保護シート4で金属板材3を被覆するには、合成樹脂シートを金属板材3に接着剤、溶着等により接着したり、あるいは、開口6を有する金属板材3に保護シート4を構成する合成樹脂層を一体に積層形成することで被覆する。
【0019】
保護シート被覆金属板5は、基材1の外面に沿って巻付けられ、巻付けられた状態で、接着又は取付部材8で基材1に固定される。
【0020】
以下の実施形態は、保護シート被覆金属板5であるアンテナ板7を、基材1を構成する樋体10の外面に巻付けて固定することで形成されるアンテナ付き樋22の例で説明する。
【0021】
本実施形態でアンテナパターン2は、導電性の薄肉の金属板材3に開口6を形成することで形成される。図4にはアンテナパターン2としてスロットアンテナパターンの例が示してある。このスロットアンテナパターンは、導電性の縦長矩形状の薄い金属板材3(金属箔も含まれる)に開口6となる細長いスロット28を設けることで形成される。
【0022】
また、図4の実施形態では、金属板材3に開口6となるスロット28が上下方向に複数並べて設けられており、隣接するスロット28同士は細溝25で接続されている。各スロット28は三角形の頂点を互いに突き合わせたようなボウタイ形状に形成されている。
【0023】
アンテナパターン2は、第一の周波数帯(例えば473〜600MHz)の電波を受信する第一の受信部29と、第二の周波数帯(例えば600〜720MHz)の電波を受信する第二の受信部30を有している。
【0024】
第一の受信部29は、スロット28及び当該スロット28の周縁部により構成される。第二の受信部30は、このスロット28に対し上下方向に隣接する金属板材3部分により構成される。
【0025】
第一の受信部29を構成するスロット28の上下方向の長さは、前記第一の周波数帯内の電波の電気的な半波長の長さと同じである。また、第二の受信部30の周方向の長さは、前記第二の周波数帯内の電波の電気的な半波長の長さと同じである。
【0026】
すなわち、第一の周波数帯内の中心周波数が536.5MHzであり、第一の周波数帯内の電波の電気的な半波長λ/2は約28cmであることから、各スロット28の上下方向の長さは約28cmとなっている。また、第二の周波数帯の中心周波数が660MHzであり、第二の周波数帯内の電波の電気的な半波長λ/2は約23cmであることから、第二の受信部30の周方向の長さは約23cmとなっている。
【0027】
金属板材3のスロット28の両側の三角形の頂点部分がそれぞれ給電部9となっている。
【0028】
保護シート4は、例えばPETのような電気絶縁性を有する合成樹脂フィルムであり、この合成樹脂フィルムが金属板材3の表裏両面又は表面に重ねて接着されることで、金属板材3が外部(少なくとも表面側の)に露出しないように保護シート4で被覆される。この場合、スロット28部分も保護シート4で被覆される。なお、保護シート4の厚みは例えば、0.1〜0.3mmであるが、これに限定されるものではない。
これにより、保護シート4は、アンテナパターン2を備えた金属板材3を保護し、錆び等が発生しないようする。
【0029】
給電部9には給電ケーブル11が接続される。
【0030】
給電部9に接続する給電ケーブル11は同軸ケーブルである。この同軸ケーブルは、内側の芯線32の外側を芯線外皮部33で覆い、芯線外皮部33の外周に編線34で覆い、更に編線34を外側外皮部35で覆っている。
【0031】
給電ケーブル11の端部は、図6のように、外側外皮部35を除去して編線34の端部が露出した部分が形成され、編線34の端部より突出して芯線外皮部33が露出する部分が形成され、更に、芯線外皮部33の端部より芯線32が突出するする部分が形成される。
【0032】
給電ケーブル11における芯線32の端部が一方の給電部9に接続され、編線34の端部が他方の給電部9に接続される。
【0033】
接続に当っては、例えば、保護シート被覆金属板5の表面側の保護シート4の給電部9に対応する部分を剥離して給電部9における金属板材3を露出させ、この露出面に半田付けなどの任意の接続手段で上記芯線32、編線34を接続することが考えられる。
【0034】
もちろん、ビス、ナットを用いて接続してもよく、あるいは、接続金具を用いて接続してもよい。
【0035】
前記のように、給電ケーブル11を接続した状態のアンテナ板7は、水平断面C字状又は多角形状となるよう上下方向に一様に湾曲させて円筒状又は角筒状をした樋体10の外周面に巻付けて重ね、接着剤や取付部材8を用いて固定される。
【0036】
アンテナ板7を樋体10の外周面に巻付けて固定する際、金属板材3の外面が開口6であるスロット28を含めて保護シート4で被覆されるので、スロット28の縁部分が樋体10外面から離れる方向に反り難くすることが可能となる。
【0037】
これにより、アンテナ板7が樋体10外面への巻付けが容易に且つ正確に行われ、接着剤や取付部材8で正確に固定されることになり、アンテナパターン2が変形したりせず、受信性能の低下を抑制することが可能となる。
【0038】
また、開口6を含め金属板材3が保護シート4で被覆されるので、開口6を有する金属板材3が保護され、特に、開口6であるスロット28の縁部分に位置する金属板材3の切断端面が保護され、錆の発生が抑制される。
【0039】
ここで、図4のように金属板材3の外周端を越えて保護シート4で被覆すると、金属板材3の外周端の切断端面が保護され、錆の発生が抑制される。
【0040】
また、金属板材3の開口6の縁部分の切断端面や外周端の切断端面が保護シート4で被覆され、且つ、開口6も含めて被覆されることで、巻付け作業時に切断端面で手指を傷付けるのが抑制される。
【0041】
添付図面に示す実施形態は、図5に示すような取付部材8を用いて図2、図3に示すように取付けた例を示している。
【0042】
前述のように給電部9に機械的、電気的に接続された給電ケーブル11は樋体10の外面に巻付けられたアンテナ板7の外面に樋体10の軸方向に沿って配置される。
【0043】
軸方向に沿って配置するに当っては、スロット28を避けて配置される。
【0044】
アンテナ板7を樋体10の外周面に取付けるための取付部材8は、非導電性の合成樹脂のような非導電性材料により形成されている。また、図5のように、取付部材8は、一対の半体38の一端部同士を軸受部39で回動自在に連結して構成され、一対の半体38の他端部の係止部40と被係止部41が係止自在となっている。
【0045】
取付部材8は、給電ケーブル11のアンテナ板7に対する位置を保持するケーブル保持部42を備え、このケーブル保持部42に給電ケーブル11が保持される。
【0046】
また、各取付部材8は、径外方向に突出する複数の突出部を有する。本実施形態の取付部材8は、軸受部39と、係止部40及び被係止部41と、ケーブル保持部42との計4箇所の突出部を有する。突出部は周方向に等間隔で配置されており、すなわち90°ごとに径外方向に突出する。
【0047】
外周にアンテナ板7を巻付けた樋体10に外筒部23を被せることで、二重筒構造のアンテナ付き樋22が構成される。
【0048】
外周にアンテナ板7を巻いた樋体10に外筒部23を被せると、取付部材8に突出部を設けているので、外筒部23の略中心に樋体10と樋体10に設けられたアンテナ板7の中心が配置されると共に、外筒部23の内周面に当接又は近接対向するようになる。
【0049】
このように、外筒部23によりアンテナ板7が覆われることで、アンテナ板7が雨水、外気、太陽光に晒されず、劣化が抑制される。
【0050】
二重筒構造のアンテナ付き樋22は、長手方向の端部に、接続体24が備えられ、上下の接続体24に樋体10と、外筒部23の上下方向の両端部が接続され、上下の接続体24は樋体10に連通する。
【0051】
樋体10の軸方向に沿った給電ケーブル11は、接続体24に設けた引出部43に至り、給電ケーブル11の端部に設けた接続具44が引出部43を構成する孔に嵌め込んで取付けられる。
【0052】
接続具44には、テレビ側ケーブル45の端部に設けた接続具が電気的に接続される。このテレビ側ケーブル45は、建物46の外壁47や軒天井48から建物内に導入され、既存の建物46内のテレビ側に接続される。
【0053】
図7は、アンテナ付き樋22が竪樋の一部として用いられた例を示している。図7において、符号49は軒樋、50は集水器、51はエルボ、52は呼び樋、53は一般の竪樋を示している。
【0054】
アンテナ付き樋22を竪樋の一部として用いる場合、アンテナ付き樋22の接続体24を一般の竪樋53やエルボ51に接続し、筒状をした樋体10内に雨水を流す。
【0055】
接続の際、アンテナ付き樋22を軸芯を中心に回転して、アンテナパターン2を最も強い受信方向に向ける。
【0056】
前述の実施形態においては、外筒部23を設けた例で説明したが、外筒部23を設けないものであってもよい。外筒部23を設けない場合、金属板材3は保護シート4で覆われるので、金属板材3は雨水、外気、太陽光にさらされず、アンテナパターン2の劣化を抑制できる。
【0057】
また、前述の実施形態ではアンテナ板7を巻付ける樋体10として円筒状又は角筒状の竪樋の例を示したが、必ずしもこれにのみ限定されない。
【0058】
例えば、アンテナ板7を巻付ける樋体10が呼び樋、軒樋などであってもよい。
【0059】
また、前述の各実施形態は、保護シート被覆金属板5がアンテナ板7、基材1が樋体10の例を示したが、これにのみ限定されないのは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 基材
2 アンテナパターン
3 金属板材
4 保護シート
5 保護シート被覆金属板
6 開口
7 アンテナ板
8 取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護シート被覆金属板が、開口を有する金属板材の外面を前記開口を含めて保護シートで被覆することで構成され、前記保護シート被覆金属板が、基材の外面に沿って巻付けられていることを特徴とする金属板材を巻付けた部材。
【請求項2】
前記保護シート被覆金属板が、アンテナパターン用の開口を有した前記金属板材を前記保護シートで被覆して形成したアンテナ板であり、このアンテナ板を、前記基材を構成する雨水を流すための樋体の外面に沿って巻付けることを特徴とする請求項1記載の金属板材を巻付けた部材。
【請求項3】
前記保護シート被覆金属板を前記基材の外面に巻付けた状態で接着することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属板材を巻付けた部材。
【請求項4】
前記保護シート被覆金属板を前記基材の外面に巻付けた状態で取付部材で取付けることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属板材を巻付けた部材。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−197561(P2012−197561A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60858(P2011−60858)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】