説明

金属溶接管の製造方法及びその設備

【課題】本発明は、ロールクーラント水を用いずに短時間で切屑を除去でき、金属溶接管の製造効率を向上できる金属溶接管の製造方法及び製造設備を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明による金属溶接管の製造方法及びその設備は、圧力容器54に圧縮エアーを貯めておき、電縫鋼管素体5の溶接部に形成された内面ビード7が切削されるとともに電縫鋼管素体5が所定長さに切断された後に、圧力容器54の封止弁543を開放して、圧力容器54に接続されたノズル55から電縫鋼管素体5の内部に圧縮エアーを噴射することにより、電縫鋼管素体5の内部に残存していた内面ビード7の切屑7aを電縫鋼管素体5の外部に排出する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶接管の製造方法及びその設備に関し、特に、圧力容器に貯めていた圧縮エアーを封止弁の開放により金属溶接管素体の内部に噴射して、金属溶接管素体の内部に残存していた内面ビードの切屑を金属溶接管素体の外部に排出するように構成することで、ロールクーラント水を用いずに短時間で切屑を除去でき、金属溶接管の製造効率を向上できるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の金属溶接管の製造方法及びその設備としては、例えば以下の特許文献1等に示されている構成が挙げられる。すなわち、従来の金属溶接管の製造方法及びその設備では、オープンパイプの突合わせられた端部が溶接されることで金属溶接管素体が形成され、金属溶接管素体の溶接部に形成された内面ビードが切削されるとともに、金属溶接管素体が所定長さに切断される。そして、所定長さに切断された金属溶接管素体の内部に高圧のロールクーラント水が噴射されることで、内面ビードの切屑が金属溶接管素体の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−89424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の金属溶接管の製造方法及びその設備では、高圧のロールクーラント水の噴射により内面ビードの切屑を排出するので、金属溶接管素体の内面油が洗い流されてしまい、内面油を改めて塗布する作業が必要となる。また、管内にロールクーラント水が残っていると錆の原因となるので、水切り作業が必要となる。すなわち、ロールクーラント水を用いる構成では、切屑を排出した後に追加作業が必要となり、金属溶接管の製造効率が悪くなる。
【0005】
一方で、一般に工場には圧縮エアーを生成する圧縮エアーポンプが設置されているので、この圧縮エアーポンプからの圧縮エアーを用いて内面ビードの切屑を金属溶接管素体の外部に排出するようにすることも考えられる。しかしながら、圧縮エアーポンプの圧縮エアーの供給能力には限度がある。すなわち、ポンプからの圧縮エアーを直接用いる構成では、大量の圧縮エアーを一時に噴射することができず、切屑の排出に時間が掛かってしまう。従って、この構成でも金属溶接管の製造効率を改善できない。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ロールクーラント水を用いずに短時間で切屑を除去でき、金属溶接管の製造効率を向上できる金属溶接管の製造方法及び製造設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る金属溶接管の製造方法は、オープンパイプの突合わせられた端部を溶接することで金属溶接管素体を形成する金属溶接管の製造方法であって、圧力容器に圧縮エアーを貯めておき、金属溶接管素体の溶接部に形成された内面ビードが切削されるとともに金属溶接管素体が所定長さに切断された後に、圧力容器の封止弁を開放して、圧力容器に接続されたノズルから金属溶接管素体の内部に圧縮エアーを噴射することにより、金属溶接管素体の内部に残存していた内面ビードの切屑を金属溶接管素体の外部に排出する。
【0008】
また、圧力容器にブースター設備を接続し、圧力容器に貯められる圧縮エアーの圧力を高める。
【0009】
また、本発明に係る金属溶接管の製造設備は、オープンパイプの突合わせられた端部を溶接することで金属溶接管素体を形成し、金属溶接管素体の溶接部に形成された内面ビードを切削するとともに、金属溶接管素体を所定長さに切断する金属溶接管の製造設備であって、圧縮エアーを貯める圧力容器と、圧力容器に設けられ圧力容器を封止する封止弁と、圧力容器に接続されたノズルとを備え、封止弁を開放して、内面ビードが切削されるとともに所定長さに切断された金属溶接管素体の内部にノズルから圧縮エアーを噴射することにより、金属溶接管素体の内部に残存していた内面ビードの切屑を金属溶接管素体の外部に排出するように構成されている。
【0010】
また、圧力容器に接続され、圧力容器に貯められる圧縮エアーの圧力を高めるブースター設備をさらに備えている。
また、金属溶接管素体から排出された切屑を収容するための切屑箱と、切屑箱に設けられ、切屑が排出される金属溶接管素体の排出側管端部に接続された受入口と、切屑箱に設けられ、受入口を通って切屑箱内に進入した圧縮エアーを排気するための排気口とをさらに備えている。
また、ノズルの外周部からノズルの径方向に沿って突出された後部壁と、後部壁からノズルの軸方向に沿って突出された環状外周壁とを有し、ノズルの先端部の周囲に環状凹部を形成するようにノズルに取付けられたエアー飛散防止部材をさらに備えている。
また、ノズルは、圧縮エアーをそれぞれ噴射する複数のノズル体を含んでおり、各ノズル体にそれぞれ対向するように複数本の金属溶接管素体をライン方向に沿って搬送する搬送手段と、ノズル体よりもライン方向に沿う上流の位置に配置され、各金属溶接管素体の両端を挟持することにより、各金属溶接管素体の長手方向に沿う各金属溶接管素体のノズル側管端部の位置を揃える管端位置合わせ手段とをさらに備えている。
また、ノズルに取付けられた軸位置合わせ手段をさらに備え、軸位置合わせ手段によって、ノズルの軸中心が金属溶接管素体の軸中心に一致されるように、ノズルの軸位置が調節される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属溶接管の製造方法及び製造設備によれば、圧力容器に貯めていた圧縮エアーを封止弁の開放により金属溶接管素体の内部に噴射して、金属溶接管素体の内部に残存していた内面ビードの切屑を金属溶接管素体の外部に排出するので、大量の圧縮エアーを金属溶接管素体の内部に一時に噴射でき、ポンプからの圧縮エアーを直接用いる場合に比べてより確実に切屑を短時間で排出できる。これにより、ロールクーラント水を用いずに短時間で切屑を除去でき、金属溶接管の製造効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1による金属溶接管の製造設備を示す構成図である。
【図2】図1の切屑除去手段をより具体的に示す構成図である。
【図3】図2の圧力容器の断面図である。
【図4】図2の切屑箱の断面図である。
【図5】図2のノズルと電縫鋼管素体とを示す平面図である。
【図6】図5の搬送手段を示す正面図である。
【図7】図5の軸位置合わせ手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による金属溶接管の製造設備を示す構成図である。図において、金属溶接管の製造設備は、所定幅にスリットされた鋼帯1(金属帯)から電縫鋼管2(金属溶接管)を製造するためのものであり、成形ロール10、溶接手段20、ビード切削手段30、切断刃40、及び切屑除去手段50を含んでいる。
【0014】
成形ロール10は、ライン方向4に沿う下流側に鋼帯1を送りつつ鋼帯1を板幅方向に順次湾曲させるものであり、板幅方向に沿う鋼帯1の端部を突合わして一部開口円筒形状のオープンパイプ3を成形するものである。なお、図1では成形ロール10を1つのロールであるように示しているが、周知のように成形ロール10は複数のロールから構成される。
【0015】
溶接手段20は、成形ロール10の後段に配置されている。この溶接手段20には、高周波コイル21とスクイズロール22とが設けられている。高周波コイル21は、オープンパイプ3の外周側に配置された巻線であり、電磁誘導によりオープンパイプ3を加熱するものである。オープンパイプ3の突合わせられた端部は、高周波コイル21の加熱によって溶融される。スクイズロール22は、溶融されたオープンパイプ3の端部を互いに押し当てて接合するものである。すなわち、溶接手段20は、オープンパイプ3の突合わせられた端部を溶接することで管体である電縫鋼管素体5(金属溶接管素体)を形成するものである。なお、具体的には図示しないが、周知のように、オープンパイプ3の突合わせられた端部の直下には、高周波コイル21による電磁誘導加熱の効率を高めるためのインピーダが配置されている。溶接手段20による溶接が行われる際には、インピーダを冷却するための冷却水がオープンパイプ3の内部に供給される。
【0016】
電縫鋼管素体5の溶接部の外面及び内面には、溶融金属が盛り上がって硬化された外面ビード6及び内面ビード7が形成される。ビード切削手段30は、溶接手段20の後段に配置されており、外面ビード6及び内面ビード7を切削するものである。
【0017】
具体的には、ビードカッタ31と内面ビード切削治具32とがビード切削手段30に設けられている。ビードカッタ31は、電縫鋼管素体5の外面に当接される刃であり、外面ビード6を切削する。外面ビード6の切屑6aは、電縫鋼管素体5の外面から適宜脱落される。内面ビード切削治具32は、周知のように電縫鋼管素体5の内面に当接される刃を有する治具であり、内面ビード7を切削する。内面ビード7の切屑7aは、電縫鋼管素体5の内部に残存される。なお、内面ビード切削治具32は、ライン方向4に沿うオープンパイプ3の成形位置よりも上流に配置された固定部32aからオープンパイプ3内に挿入された軸体32bに接続されている。
【0018】
切断刃40は、ビード切削手段30の後段に配置されており、電縫鋼管素体5を所定長さに切断するものである。
【0019】
切屑除去手段50は、ビード切削手段30及び切断刃40の後段に配置されており、電縫鋼管素体5の内部に残存されている内面ビード7の切屑7aを電縫鋼管素体5の外部に排出するためのものである。すなわち、内面ビード7の切屑7aは、内面ビード7が切削されるとともに電縫鋼管素体5が所定長さに切断された後に除去される。電縫鋼管素体5は、内面ビード7の切屑7aが除去された後に製品としての電縫鋼管2とされる。なお、切屑除去手段50は、成形ロール10、溶接手段20、ビード切削手段30、及び切断刃40とは別ラインに設置されていてもよい。
【0020】
次に、図2は図1の切屑除去手段50をより具体的に示す構成図であり、図3は図2の圧力容器54の断面図であり、図4は図2の切屑箱57の断面図である。図2に示すように、切屑除去手段50には、圧縮エアーポンプ51、ブースターポンプ52(ブースト設備)、減圧弁53、圧力容器54、ノズル55、エアー飛散防止部材56、及び切屑箱57が設けられている。
【0021】
圧縮エアーポンプ51は、例えば0.65MPa程度の圧縮エアーを供給するものである。ブースターポンプ52は、圧縮エアーポンプ51に接続されており、圧縮エアーポンプ51からの圧縮エアーを例えば0.97MPa程度まで加圧するものである。減圧弁53は、ブースターポンプ52に接続されており、ブースターポンプ52からの加圧された圧縮エアーの圧力を適宜調節するためのものである。圧力容器54は、減圧弁53に接続されており、減圧弁53からの圧縮エアーを貯めるためのものである。すなわち、この実施の形態の構成では、圧力容器54に貯められる圧縮エアーの圧力は、ブースターポンプ52によって高められている。なお、ブースターポンプ52は、必要とされる圧縮エアーの圧力によっては省略されてもよい。
【0022】
図3に示すように、圧力容器54には、入気口540、圧力容器本体541、背圧室542、封止弁543、噴射口544、及び作動弁545が設けられている。入気口540には、減圧弁53に接続されており、減圧弁53からの圧縮エアーが導入される。この入気口540には、圧力容器本体541及び背圧室542が接続されており、これら圧力容器本体541及び背圧室542に減圧弁53からの圧縮エアーが貯められる。背圧室542の容積は圧力容器本体541の容積よりも小さくされており、圧力容器本体541及び背圧室542に圧縮エアーが貯められる際には、背圧室542内の圧力が圧力容器本体541内の圧力よりも早く高くなる。
【0023】
封止弁543は、背圧室542の長手方向542aに沿って変位可能に背圧室542の内部に配置されている。この封止弁543は、背圧室542内の圧力が圧力容器本体541内の圧力よりも高い時に、背圧室542と圧力容器本体541との間の差圧によって、圧力容器本体541の開口部541aを塞ぐ閉位置に位置される。
【0024】
噴射口544は、背圧室542に接続されており、閉位置に位置された封止弁543によって閉じられている。
【0025】
作動弁545は、背圧室542に接続されており、背圧室542内の圧縮エアーを排気するためのものである。すなわち、作動弁545によって背圧室542内の圧縮エアーが排気されると、瞬時に圧力容器本体541内の圧力が背圧室542内の圧力よりも高くなる。このとき、背圧室542と圧力容器本体541との間の差圧によって、封止弁543が開口部541a及び噴射口544を開放する開放位置に変位されて、圧力容器本体541内の圧縮エアーが開口部541a及び噴射口544を通って爆発的に噴射される。つまり、圧力容器54に貯められた大量の圧縮エアーが封止弁543の開放により一時に噴射される。
【0026】
図2に戻り、圧力容器54の噴射口544には、可撓性を有する配管58を介してノズル55が接続されている。ノズル55は、電縫鋼管素体5のノズル側管端部5aに対向するように配置されている。従って、封止弁543が開放されると、圧力容器54に貯められた大量の圧縮エアーがノズル55から電縫鋼管素体5の内部に一時に噴射される。
【0027】
ここで、電縫鋼管素体5の内部に残存している切屑7aを動かすためのエネルギーは、切屑7aに吹き付けられる圧縮エアーの流速及び噴射量に関連する。仮に、圧縮エアーポンプ51からの圧縮エアーを直接的にノズル55から噴射させたとすると、圧縮エアーポンプ51の供給能力の制限から単位時間当りの噴射量を大きくできない。従って、圧縮エアーポンプ51からの圧縮エアーを直接用いる場合には、切屑7aを排出するのに時間が掛かってしまう。これに対して、この実施の形態の構成では、電縫鋼管素体5の内部に一時に大量の圧縮エアーを噴射できるので、より短い時間で大きなエネルギーを切屑7aに与えることができ、より短い時間で切屑7aを電縫鋼管素体5の外部に排出できる。なお、切屑7aを除去すると同時に、インピーダを冷却するために供給された冷却水も除去される。
【0028】
ノズル55には、ノズル55から噴射された圧縮エアーが周囲に飛散することを防止するためのエアー飛散防止部材56が取付けられている。詳細に説明すると、エアー飛散防止部材56は、ノズル55の外周部からノズル55の径方向55aに沿って突出された後部壁56aと、後部壁56aからノズルの軸方向55bに沿って突出された環状外周壁56bとを有しており、ノズル55の先端部の周囲に環状凹部56cを形成している。ノズル55から噴射された圧縮エアーの一部は、ノズル側管端部5aの端面で吹き返されて、環状凹部56cに進入される。エアー飛散防止部材56は、環状凹部56cに進入された圧縮エアーの流れを、ノズル55から噴射される圧縮エアーに合流する向きに後部壁56a及び環状外周壁56bによって整えることで、圧縮エアーの飛散を防止する。
【0029】
切屑7aが排出される電縫鋼管素体5の排出側管端部5bには、切屑箱57の受入口570aが接続されており、電縫鋼管素体5から排出された切屑7aは、切屑箱57に収容される。なお、この実施の形態では、受入口570aの側方には切欠部570bが設けられており、後述のように電縫鋼管素体5は切欠部570bを通って受入口570a内に進入される。
【0030】
図4に示すように、受入口570aは切屑箱57の第1端面570に設けられており、この第1端面570に対向する第2端面571には排気口571aが設けられている。受入口570aを通って切屑箱57内に進入した圧縮エアーは、排気口571aから排気される。これにより、切屑箱57での圧縮エアーの吹返しを低減でき、より少ない抵抗で電縫鋼管素体5の内部に圧縮エアーを噴射できる。
【0031】
ここで、排気口571aは、受入口570aと非対向に配置されている。具体的には、排気口571aは、切屑箱57の幅方向57aに関して受入口570aの配置位置からずらされて設けられている。これにより、圧縮エアーとともに切屑箱57内に進入された切屑7aが排気口571aから排出される可能性を低くできる。また、排気口571aには、フィルタ572が取付けられており、切屑7aが排気口571aから排出される可能性がさらに低くされている。
【0032】
次に、図5は図2のノズル55と電縫鋼管素体5とを示す平面図であり、図6は図5の搬送手段を示す正面図であり、図7は図5の軸位置合わせ手段を示す斜視図である。図5に示すように、ノズル55は、互いに離間されて配置された一対のノズル体550を含んでおり、各ノズル体550から圧縮エアーがそれぞれ噴射される。複数本の電縫鋼管素体5は、各ノズル体550にそれぞれ対向するようにライン方向4に沿って搬送手段60によって搬送される。詳細に説明すると、図6に示すように、搬送手段60には、ライン方向4に沿って互いに離間された複数の凸部600aと、各凸部600a間に設けられた複数の凹部600bとを含む搬送体600が設けられている。各電縫鋼管素体5は凹部600bにそれぞれ挿入されており、搬送体600がライン方向4に沿って駆動されることで電縫鋼管素体5が搬送される。なお、各電縫鋼管素体5がノズル体550にそれぞれ対向するように搬送される際には、各電縫鋼管素体5の排出側管端部5bは、切屑箱57の切欠部570bを通って受入口570a内に進入される。
【0033】
図5に戻り、各ノズル体550よりもライン方向4に沿う上流の位置には、各電縫鋼管素体5のノズル側管端部5aの位置を揃えるための管端位置合わせ手段70が配置されている。すなわち、各ノズル体550から圧縮エアーが噴射される前に、ノズル側管端部5aの位置が揃えられる。詳細に説明すると、管端位置合わせ手段70は、電縫鋼管素体5の長手方向5cに沿う両側に配置された押圧板700を有している。押圧板700によって複数本の電縫鋼管素体5が挟持されることで、各電縫鋼管素体5のノズル側管端部5aの位置が揃えられる。これにより、電縫鋼管素体5毎に切屑7aの除去にばらつきが生じる可能性を低くでき、切屑除去の信頼性を向上できる。
【0034】
ここで、各ノズル体550が取り替えられた際には、各ノズル体550を設置位置に誤差が生じる虞がある。そこで、この実施の形態の構成では、ノズル体550に軸位置合わせ手段80が取付けられており、圧縮エアーを噴射させる前に、ノズル体550の軸中心と電縫鋼管素体5の軸中心とが一致されるように、軸位置合わせ手段80によってノズル体550の軸位置が調節される。
【0035】
詳細に説明すると、図7に示すように、軸位置合わせ手段80には、枠体800、一対の水平位置調節ネジ801、及び一対の垂直位置調節ネジ802が設けられている。枠体800は、各ノズル体550の外周位置に配置されており、各調節ネジ801,802を支持している。各水平位置調節ネジ801は、水平方向に沿って延在されており、枠体800に設けられた水平ネジ穴800aを通して各ノズル体550の外周面に当接されている。すなわち、水平位置調節ネジ801が回転駆動されることで、各ノズル体550の軸中心がエアー飛散防止部材56の取付け位置を支点にして水平方向に沿って回動されて位置調節される。同様に、各垂直位置調節ネジ802は、垂直方向(鉛直方向)に沿って延在されたネジ体であり、枠体800に設けられた垂直ネジ穴800bを通して各ノズル体550の外周面に当接されている。すなわち、垂直位置調節ネジ802が回転駆動されることで、各ノズル体550の軸中心がエアー飛散防止部材56の取付け位置を支点にして垂直方向に沿って回動されて位置調節される。なお、具体的には図示しないが、エアー飛散防止部材56の後部壁56aには、可撓性を有する支持体がノズル体550の外周面を取り囲むように設けられており、この支持体によってノズル体550の回動が許容されるように構成される。
【0036】
次に、図1〜図7に示す製鋼設備を用いた金属溶接管の製造方法について説明する。まず、図1に示すように、成形ロール10によって鋼帯1からオープンパイプ3が成形された後に、オープンパイプ3の突合わされた端部が溶接手段20によって溶接されて電縫鋼管素体5が形成される。電縫鋼管素体5の形成の後、ビード切削手段30によって外面ビード6及び内面ビード7が切削されるとともに、切断刃40によって電縫鋼管素体5が所定長さに切断される。その次に、図5に示す管端位置合わせ手段70によって複数本の電縫鋼管素体5のノズル側管端部5aの位置が揃えられた上で、各電縫鋼管素体5がノズル体550にそれぞれ対向するように搬送手段60によって各電縫鋼管素体5が搬送される。
【0037】
このとき、図2及び図3に示す圧力容器54には、ブースターポンプ52によって圧力が高められた状態で、圧縮エアーポンプ51からの圧縮エアーが貯められている。そして、各電縫鋼管素体5がノズル体550に対向された状態で、図3の作動弁545の開放により封止弁543が開放されることで、圧力容器54に貯められていた圧縮エアーが各ノズル体550から各電縫鋼管素体5の内部に一時に噴射される。各ノズル体550から圧縮エアーが噴射された際には、ノズル側管端部5aの端面で吹き返された圧縮エアーの流れが、ノズル体550から噴射される圧縮エアーに合流する向きに、エアー飛散防止部材56の後部壁56a及び環状外周壁56bによって整えられることで、圧縮エアーの飛散が防止される。
【0038】
電縫鋼管素体5の内部に圧縮エアーが噴射されると、電縫鋼管素体5の内部に残存していた内面ビード7の切屑7aが電縫鋼管素体5の排出側管端部5bから切屑箱57へと排出される。これにより、電縫鋼管素体5から切屑7aが除去された電縫鋼管2が製造される。
【0039】
なお、切屑7aが切屑箱57に排出されたときには、圧縮エアーが切屑7aとともに切屑箱57に進入する。しかしながら、この圧縮エアーは、切屑箱57の排気口571aから排気される。また、ノズル体550が取り替えられた際には、図5及び図7に示す軸位置合わせ手段80によって、ノズル体550の軸中心を電縫鋼管素体5の軸中心に一致させるようにノズル体550の位置が調節される。
【0040】
次に、この実施の形態の製造方法の実施結果を示す。まず、本実施の形態の方法による切屑7aの除去を本出願人が製造する表1の電縫鋼管素体5に対して実施した。また、比較例として、インラインでのロールクーラント水による除去、圧縮エアーポンプ51からの圧縮エアーの直接利用による除去、及びオフラインでの人力による除去を表1の電縫鋼管素体5に対して実施した。表2のA〜Dに各方法による切屑7aの除去の結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表2に示すように、本実施の形態の方法によれば、ロールクーラント水による除去等と同様に、ほぼすべての切屑7aを除去できることが分かった。また、切屑7aを除去した後に電縫鋼管2を放置して、電縫鋼管2の内面での錆の発生を観察したところ、ロールクーラント水による除去の場合では2〜3日で錆が発生してしまったが、本実施の形態の方法によれば錆の発生を抑制できることが分かった。さらに、切屑除去の効率を比較したところ、本実施の形態の方法によれば、圧縮エアーポンプ51からの圧縮エアーの直接利用による除去、及びオフラインでの人力による除去に比べて、短時間でより多くの切屑7aを除去できることが分かり、ロールクーラント水による除去と同程度の効率で切屑7aを除去できることが分かった。従って、これらの結果から、本実施の形態の方法によれば、他の方法に比べて電縫鋼管2の製造効率を向上できることが分かる。
【0044】
このような金属溶接管の製造方法及び製造設備によれば、圧力容器54に貯めていた圧縮エアーを封止弁543の開放により電縫鋼管素体5の内部に噴射して、電縫鋼管素体5の内部に残存していた内面ビード7の切屑7aを電縫鋼管素体5の外部に排出するので、大量の圧縮エアーを電縫鋼管素体5の内部に一時に噴射でき、ポンプ51からの圧縮エアーを直接用いる場合に比べてより確実に切屑7aを短時間で排出できる。これにより、ロールクーラント水を用いずに短時間で切屑7aを除去でき、電縫鋼管2の製造効率を向上できる。
【0045】
また、圧力容器54にブースターポンプ52を接続し、圧力容器54に貯められる圧縮エアーの圧力を高めるので、重量が大きい切屑7aの発生が想定されるような場合に圧縮エアーの圧力を高めることができ、より確実に切屑7aを除去できる。
【0046】
さらに、受入口570aを通って切屑箱57内に進入した圧縮エアーは切屑箱57に設けられた排気口571aから排気されるので、切屑箱57での圧縮エアーの吹返しを低減でき、より少ない抵抗で電縫鋼管素体5の内部に圧縮エアーを噴射できる。これにより、より多くの圧縮エアーを電縫鋼管素体5内に噴射でき、より確実に切屑7aを除去できる。
【0047】
さらにまた、ノズル55の先端部の周囲に環状凹部56cを形成するエアー飛散防止部材56をノズル55に取付けるので、ノズル55から噴射された圧縮エアーの飛散を少なくできる。
【0048】
また、圧縮エアーが噴射される前に管端位置合わせ手段70によって複数本の電縫鋼管素体5の両端を挟持することにより、各電縫鋼管素体5の長手方向5cに沿うノズル側管端部5aの位置を揃えるので、電縫鋼管素体5毎に切屑7aの除去にばらつきが生じる可能性を低くでき、切屑除去の信頼性を向上できる。
【0049】
さらに、圧縮エアーが噴射される前に、ノズル55に取付けられた軸位置合わせ手段80によって、ノズル55の軸中心を電縫鋼管素体5の軸中心に一致させるようにノズル55の軸位置を調節するので、ノズル55から噴射された圧縮エアーの飛散を少なくできる。
【0050】
なお、実施の形態では、高周波コイルで加熱されることで電縫鋼管素体5が形成されると説明したが、金属溶接管素体を形成するための溶接方法は、例えば溶接トーチを用いたTIG溶接等でもよい。
【0051】
また、実施の形態では、ノズル55は電縫鋼管素体5のノズル側管端部5aに対向されると説明したが、ノズルは金属溶接管素体のノズル側管端部に進入されてもよい。
【0052】
さらに、実施の形態では、電縫鋼管素体5の排出側管端部5bは、切欠部570bを通って切屑箱57の受入口570a内に進入されることで受入口570aに接続されるように説明したが、金属溶接管素体の排出側管端部は切屑箱の受入口に対向されることで接続されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
2 電縫鋼管(金属溶接管)
3 オープンパイプ
4 ライン方向
5 電縫鋼管素体(金属溶接管素体)
5a ノズル側管端部
5b 排出側管端部
5c 長手方向
7 内面ビード
7a 切屑
52 ブースターポンプ(ブースター設備)
54 圧力容器
543 封止弁
55 ノズル
55a 径方向
55b 軸方向
550 ノズル体
56 エアー飛散防止部材
56a 後部壁
56b 環状外周壁
56c 環状凹部
57 切屑箱
570a 受入口
571a 排気口
60 搬送手段
70 管端位置合わせ手段
80 軸位置合わせ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンパイプ(3)の突合わせられた端部を溶接することで金属溶接管素体(5)を形成する金属溶接管の製造方法であって、
圧力容器(54)に圧縮エアーを貯めておき、前記金属溶接管素体(5)の溶接部に形成された内面ビード(7)が切削されるとともに前記金属溶接管素体(5)が所定長さに切断された後に、前記圧力容器(54)の封止弁(543)を開放して、前記圧力容器(54)に接続された前記ノズル(55)から前記金属溶接管素体(5)の内部に前記圧縮エアーを噴射することにより、前記金属溶接管素体(5)の内部に残存していた前記内面ビード(7)の切屑(7a)を前記金属溶接管素体(5)の外部に排出することを特徴とする金属溶接管の製造方法。
【請求項2】
前記圧力容器(54)にブースター設備(52)を接続し、前記圧力容器(54)に貯められる前記圧縮エアーの圧力を高めることを特徴とする請求項1記載の金属溶接管の製造方法。
【請求項3】
オープンパイプ(3)の突合わせられた端部を溶接することで金属溶接管素体(5)を形成し、前記金属溶接管素体(5)の溶接部に形成された内面ビード(7)を切削するとともに、前記金属溶接管素体(5)を所定長さに切断する金属溶接管の製造設備であって、
圧縮エアーを貯める圧力容器(54)と、
前記圧力容器(54)に設けられ前記圧力容器(54)を封止する封止弁(543)と、
前記圧力容器(54)に接続されたノズル(55)と
を備え、
前記封止弁(543)を開放して、前記内面ビード(7)が切削されるとともに所定長さに切断された前記金属溶接管素体(5)の内部に前記ノズル(55)から前記圧縮エアーを噴射することにより、前記金属溶接管素体(5)の内部に残存していた前記内面ビード(7)の切屑(7a)を前記金属溶接管素体(5)の外部に排出するように構成されていることを特徴とする金属溶接管の製造設備。
【請求項4】
前記圧力容器(54)に接続され、前記圧力容器(54)に貯められる前記圧縮エアーの圧力を高めるブースター設備(52)をさらに備えていることを特徴とする請求項3記載の金属溶接管の製造設備。
【請求項5】
前記金属溶接管素体(5)から排出された前記切屑(7a)を収容するための切屑箱(57)と、
前記切屑箱(57)に設けられ、前記切屑(7a)が排出される前記金属溶接管素体(5)の排出側管端部(5b)に接続された受入口(570a)と、
前記切屑箱(57)に設けられ、前記受入口(570a)を通って前記切屑箱(57)内に進入した前記圧縮エアーを排気するための排気口(571a)と
をさらに備えていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の金属溶接管の製造設備。
【請求項6】
前記ノズル(55)の外周部から前記ノズル(55)の径方向(55a)に沿って突出された後部壁(56a)と、前記後部壁(56a)から前記ノズル(55)の軸方向(55b)に沿って突出された環状外周壁(56b)とを有し、前記ノズル(55)の先端部の周囲に環状凹部(56c)を形成するように前記ノズル(55)に取付けられたエアー飛散防止部材(56)をさらに備えていることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の金属溶接管の製造設備。
【請求項7】
前記ノズル(55)は、前記圧縮エアーをそれぞれ噴射する複数のノズル体(550)を含んでおり、
各ノズル体(550)にそれぞれ対向するように複数本の前記金属溶接管素体(5)をライン方向(4)に沿って搬送する搬送手段(60)と、
前記ノズル体(550)よりも前記ライン方向(4)に沿う上流の位置に配置され、各金属溶接管素体(5)の両端を挟持することにより、各金属溶接管素体(5)の長手方向(5c)に沿う各金属溶接管素体(5)のノズル側管端部(5a)の軸位置を揃える管端位置合わせ手段と
をさらに備えていることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の金属溶接管の製造設備。
【請求項8】
前記ノズル(55)に取付けられた軸位置合わせ手段(80)をさらに備え、
前記軸位置合わせ手段(80)によって、前記ノズル(55)の軸中心が前記金属溶接管素体(5)の軸中心に一致されるように、前記ノズル(55)の位置が調節されることを特徴とする請求項3から請求項7までのいずれか1項に記載の金属溶接管の製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−92980(P2011−92980A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250068(P2009−250068)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(592260572)日新鋼管株式会社 (26)