金属溶接管製造用内面シールド治具
【課題】大径の金属溶接管を製造する際であっても、気密性に優れ、少量のシールドガスの使用により管内の溶接部の酸化を確実に防止でき、かつ耐久性に優れた内面シールド治具を提供する。
【解決手段】オープンパイプ状に成形した金属帯又は金属溶接管１の内周面に接触する入側シール材４、出側シール材５、その両者間に、かつロッド３上にスプリング６を介して配置された、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有するガスシールボックス７からなり、当該ガスシールボックス７内の底部に、溶接点２より出側の位置で折り返す冷却水循環用水路、及び前記ガスシールボックス内で開口するシールドガス供給路を配設したもの。
【解決手段】オープンパイプ状に成形した金属帯又は金属溶接管１の内周面に接触する入側シール材４、出側シール材５、その両者間に、かつロッド３上にスプリング６を介して配置された、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有するガスシールボックス７からなり、当該ガスシールボックス７内の底部に、溶接点２より出側の位置で折り返す冷却水循環用水路、及び前記ガスシールボックス内で開口するシールドガス供給路を配設したもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、幅方向に曲げ加工した金属帯の幅方向両端部を溶接して金属溶接管を製造する際に使用される内面シールド治具に関する。
【背景技術】
【０００２】
金属溶接管は、所定幅にスリットされた金属帯板を多段配置された成形スタンドで板幅方向に順次湾曲させてオープンパイプにロール成形し、板幅方向両端部を突合せ溶接することにより製造されている。この際、溶接部の内外面が酸化すると溶接部の特性が劣化する。溶接部の酸化は、特に耐食性、耐候性、加工性、靭性、意匠性等が要求される用途で問題にされる。
そこで、ＴＩＧ溶接、レーザー溶接等の溶融溶接で金属溶接管を製造する場合、トーチ、ノズル等から供給される不活性ガスで溶接部をシールドすることにより、溶接部外面の酸化はある程度防止される。例えば、溶接部分にシールドガスを吹き付け、溶接部分を局部的に無酸素状態にシールして溶接している。また、溶接点よりも出側にアフターシールドカバー等を配置し、酸化領域以下の温度に冷却されるまで溶接部を不活性ガスでシールドするとき、溶接部の酸化が一層効果的に抑制される。例えば特許文献１では、高周波加熱とレーザー溶接を組み合わせて金属溶接管を製造する際に、予熱部にガスシールボックスを配置し、シールドガスを吹きつけ溶接部の酸化を抑制しつつ、レーザー溶接することが提案されている。
【０００３】
ところで、ＴＩＧ溶接トーチには一般的にシールドガスの吐出孔が設けられているので、別途シールドカバーやシールド室を設けなくても、溶接部をシールドガスで囲うことができ、溶接部が大気で酸化される恐れは少ない。しかし、ＴＩＧ溶接トーチを管外に置いた場合は、管の外面はガスシールできるが、管の内面はシールできない。そこで、管内の溶接部が酸化することになる。
このように、溶接部外面に供給されるガスシールドの効果は、溶接部の裏面、すなわち管内面の酸化防止に関してはほとんど期待できない。
【０００４】
そこで、特許文献２には、被溶接管の内側に挿入される中空ロッドに、シール部材によって画定されたシールドガス室を取り付け、当該シールドガス室にシールドガスを供給して、被溶接部の内面をガスシールドすることが提案されている。また、簡便的に、図１に示すように、金属帯又は金属溶接管１の走行方向に関し、溶接トーチ２による溶接点を挟んで一対のシール材４，５を配置した内面シールド治具が使用されている。ロッド３で支持された入側シール材４と出側シール材５との間の空間に不活性ガスを送り込むことにより、溶接部の内面をシールドしようとするものである。あるいは、溶接点の入側のみにシール材４を設け、シール材と溶接点との間にガス配管を開口させ、金属溶接管の断面積に走行速度を乗じることで概算される体積以上の流量で不活性ガスをガス配管から送り込むことによって溶接部を内面シールドすることも行われている。
【０００５】
【特許文献１】特開平８―１７４２５１号公報
【特許文献２】実開昭５８−４７３９０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、大径の金属溶接鋼管を製造しようとするとき、溶接部の内面ガスシールドは、シールを要する体積が大きくなるにつれ困難である。また、不活性ガスの流量を増大することによりある程度の効果は期待できるが、その方法では装置等が大型にとなってしまい経済的ではない。また、大気の巻き込みやシールドガスの不足で溶接部に有害な酸化物が生じ、品質を悪化させる。
本発明は、このような問題を解消するために案出されたものであり、大径の金属溶接管を製造する際であっても、気密性に優れ、少量のシールドガスの使用により管内の溶接部の酸化を確実に防止でき、かつ耐久性に優れた内面シールド治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の金属溶接管製造用内面シールド治具は、その目的を達成するため、幅方向に曲げ加工された金属帯の幅方向両端部を溶接トーチで溶接して金属溶接管を製造する際に使用される内面シールド治具であって、オープンパイプ状に成形した金属帯又は金属溶接管の内周面に接触する入側シール材、出側シール材、その両者間に、かつロッド上にスプリングを介して配置された、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有するガスシールボックス、当該ガスシールボックス内の底部に配置された、溶接点より出側の位置で折り返す冷却水循環用水路、及び前記ガスシールボックス内で開口するシールドガス供給路を備えていることを特徴とする。
ガスシールボックスは、金属溶接管の走行方向に沿って長い形状に形作られていることが好ましい。また、ガスシールボックスの金属溶接管の走行方向に沿って延びる両側壁面は、上方に向けてその間隔が狭くなった２つの湾曲面で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【０００８】
本発明では、内面シールド治具を構成するガスシールボックスをロッド上にスプリングを介して配置している。このため、容量の小さいガスシールボックスであっても、被溶接部の内面に当接することができ、その上面から噴出されるシールドガスにより被溶接部内面を効果的にシールすることができ、従来と比べて少ないシールドガスで内面酸化を抑制することができる。
また、本発明の内面シールド治具は、内蔵した水冷機構によりガスシールボックスが冷却されるため、溶接点直下が局部的に高温に曝されるレーザービーム等の高密度エネルギビームが照射される溶接であってもガスシールボックスの溶損が抑制され、長期間安定して使用される。しかも、冷却された冷却水循環用水路上にスパッタが堆積したとしても、堆積したスパッタは、冷却水循環用水路に強固に融着することなく簡単に除去される。
したがって、本発明により、大径の溶接管製造時にあっても使いやすく、しかも耐久性に優れたシールド治具が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明に従った内面シールド治具は、例えば図２に示すように、オープンパイプに成形した金属帯又は金属溶接管１の内部に配置させている。
ロッド３で支持された入側シール材４と出側シール材５との間に、上面に開口部を設けたガスシールボックス７を配置する形態となっている。しかも、当該ガスシールボックス７は、ロッド３上にスプリング６を介し、その全体が被溶接管の溶接内面に付勢されるように取り付けられている。なお、図２中、２は溶接トーチである。
【００１０】
入側シール材４及び出側シール材５は、好ましくは金属フェルト，セラミックウール等の耐熱性，耐摩耗性に優れた軟質材で作られており，金属溶接管の内周面との隙間からシールドガスの漏れを少なくするために金属溶接管の内周面に軽く接触するサイズに設定されている。この入側シール材４及び出側シール材５は、製造される金属溶接管のサイズに応じて取り替えられる。
また、ロッド３上にスプリング６を介して設置されたガスシールボックス７は、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有する、好ましくは溶接管の走行方向に沿って長くなるように形作られた形状とする。上面に形成する開口部も、溶接管の走行方向に沿った長方形とすることが好ましい。そして、金属溶接管の内周面との隙間からのシールドガスの漏れを少なくするために、開口部を有するガスシールボックス７の上面形状は、金属溶接管の内周面に軽く接触するサイズに設定することが好ましい。
【００１１】
さらに、側壁面や底壁面を形作る素材としては、高温に耐える耐熱性金属が好ましい。例えばステンレス鋼が用いられる。そして、ガスシールボックス７はスプリング６によって被溶接管の内面に接触するように設置されているので、被溶接管の内面を傷つけないように、かつガスシールボックス７が摩損しないように、ガスシールボックス７の表面を金属フェルト、セラミックウール等の耐熱性、耐摩耗性に優れた軟質材８で被覆することが好ましい（図３）。
【００１２】
さらにまた、ガスシールボックス７本体を形作る長手方向の側壁面は、上方に向けてその間隔が狭くなった２つの湾曲面で構成されていることが好ましい。具体的には、金属溶接管の内壁面に沿った断面円弧状形状とすることが好ましい。このためには、当該ガスシールボックス７を形作る側壁面及び底壁面を、短尺パイプを縦方向に分割し、半分割パイプの開口部を平坦な低壁用板で閉じた半円柱形状に形作れば足りる。半分割パイプの上方部をさらに縦方向に分割して上面に開放部を形成し、その両端部を平坦な板で覆って中央にガス噴出用の開口部を残すと、図４の（ｂ）で示されるような断面形状を有するガスシールボックス７が得られる。
【００１３】
ガスシールボックス７には、またシール用のガス供給路９と冷却水循環用水路１０が設けられている（図４）。ガス供給路９としては、シール用の不活性ガスを通す導管１１をガスシールボックス入側にて二股にし、溶接時に発生するスパッタの直撃を避けるために溶接部直下を避けるような格好で、ガスシールボックス７の出側近傍まで配置している。そして、好ましい態様では、ガス供給路にガスを噴射するための開口１２を６ヶ所設けている（図４（ａ））。
ガスシールボックス本体には、金属帯又は金属溶接管の走行方向に延びる冷却水循環用水路１０が内蔵されている。冷却水循環用水路１０は、入側シールより溶接点を経て出側に至る配置で設けられている。さらに、出側端部近傍を折り返して、溶接部近傍を再度通過するように配置し、冷却効果の向上を図っている。給水管１３より送り込まれて排水管１４より排出される冷却水により、ガスシールボックス７が冷却され、溶接部から脱落するスパッタの融着を防いでいる。
【００１４】
次に、この内面シールド治具を用いて金属溶接管を製造する態様について簡単に説明する。
固定用ブラケット（図示せず）で固定されたロッド３に被金属溶接管のサイズに応じて取り付けられた入側シール材４及び出側シール材５とスプリング６を介して取り付けられたガスシールボックス７を有する内面シールド治具を、溶接トーチ２よりも入側に入側シール材４が位置するように成形中の金属帯の内部に配置し、ブラケット（図示せず）を介して外部に固定する。
給水管１３より送り込み、排水管１４より排出される冷却水によりガスシールボックス７内を冷却しつつ、導管１１に不活性ガスを供給し、ガス供給路９の開口１２から不活性ガスを噴出させる。ガスシールボックス７を充満させた不活性ガスを当該ガスシールボックスの上面開口部より上方の被金属溶接管の内壁面側に噴射させた状態で、金属板の溶接を開始し、被溶接金属帯及び金属溶接管を走行させて、溶接を続行する。
【００１５】
導管１１から導入されたシール用の不活性ガスが被金属溶接管の内面をガスシールドするため、被金属溶接管の内面の酸化が抑制される。
また、ガスシールボックス７には、金属溶接管の走行方向に延びる冷却水循環用水路１０が内蔵されているため、当該ガスシールボックスは比較的低温に保たれている。このため、溶接に伴ってスパッタが落下しても底部のシールガス供給路に強固に融着することなく、また底部のシールガス供給路上に堆積しても、容易に除去することができる。
【００１６】
以上に説明したように、本発明の内面シールド治具は、オープンパイプ状に成形された金属帯の幅方向両端部を溶接トーチで溶接して金属溶接管を製造する際、ガス流路より不活性ガスが送り込まれ、シールドボックス内に充填される。そのガスシールドにより、内面ビードの酸化が抑制される。ガスシールボックスはスプリングにより溶接管内面に接触されているので、従来と比べて少ないガス量で効率的にシールされる。また、入側シール材及び出側シール材を交換することにより、各種径の溶接金属管の製造に使用される。さらに、溶接熱で加熱されたガスシールボックスは、冷却水循環用水路を通る冷却水によって冷却され、比較的低温に維持される。このため、耐久性に優れ、溶接に伴ってシールボックス内底部に堆積したスパッタも強固に融着しておらず簡単に除去される。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】従来の内面シールド治具の構造を概略的に説明する図
【図２】本発明の内面シールド治具の構造を概略的に説明する図
【図３】本発明内面シールド治具のガスシールボックス側面を説明する図
【図４】本発明内面シールド治具のガスシールボックスの構造を説明する平面図（ａ）及びＡ−Ａ断面図（ｂ）
【符号の説明】
【００１８】
１：金属帯，金属溶接管 ２：溶接トーチ ３：ロッド ４：入側シール材
５：出側シール材 ６：スプリング ７：ガスシールボックス ８：金属フェルト９：ガス供給路 １０：冷却水循環用水路 １１：ガス供給導管 １２：開口
１３：給水管 １４：排水管
【技術分野】
【０００１】
本発明は、幅方向に曲げ加工した金属帯の幅方向両端部を溶接して金属溶接管を製造する際に使用される内面シールド治具に関する。
【背景技術】
【０００２】
金属溶接管は、所定幅にスリットされた金属帯板を多段配置された成形スタンドで板幅方向に順次湾曲させてオープンパイプにロール成形し、板幅方向両端部を突合せ溶接することにより製造されている。この際、溶接部の内外面が酸化すると溶接部の特性が劣化する。溶接部の酸化は、特に耐食性、耐候性、加工性、靭性、意匠性等が要求される用途で問題にされる。
そこで、ＴＩＧ溶接、レーザー溶接等の溶融溶接で金属溶接管を製造する場合、トーチ、ノズル等から供給される不活性ガスで溶接部をシールドすることにより、溶接部外面の酸化はある程度防止される。例えば、溶接部分にシールドガスを吹き付け、溶接部分を局部的に無酸素状態にシールして溶接している。また、溶接点よりも出側にアフターシールドカバー等を配置し、酸化領域以下の温度に冷却されるまで溶接部を不活性ガスでシールドするとき、溶接部の酸化が一層効果的に抑制される。例えば特許文献１では、高周波加熱とレーザー溶接を組み合わせて金属溶接管を製造する際に、予熱部にガスシールボックスを配置し、シールドガスを吹きつけ溶接部の酸化を抑制しつつ、レーザー溶接することが提案されている。
【０００３】
ところで、ＴＩＧ溶接トーチには一般的にシールドガスの吐出孔が設けられているので、別途シールドカバーやシールド室を設けなくても、溶接部をシールドガスで囲うことができ、溶接部が大気で酸化される恐れは少ない。しかし、ＴＩＧ溶接トーチを管外に置いた場合は、管の外面はガスシールできるが、管の内面はシールできない。そこで、管内の溶接部が酸化することになる。
このように、溶接部外面に供給されるガスシールドの効果は、溶接部の裏面、すなわち管内面の酸化防止に関してはほとんど期待できない。
【０００４】
そこで、特許文献２には、被溶接管の内側に挿入される中空ロッドに、シール部材によって画定されたシールドガス室を取り付け、当該シールドガス室にシールドガスを供給して、被溶接部の内面をガスシールドすることが提案されている。また、簡便的に、図１に示すように、金属帯又は金属溶接管１の走行方向に関し、溶接トーチ２による溶接点を挟んで一対のシール材４，５を配置した内面シールド治具が使用されている。ロッド３で支持された入側シール材４と出側シール材５との間の空間に不活性ガスを送り込むことにより、溶接部の内面をシールドしようとするものである。あるいは、溶接点の入側のみにシール材４を設け、シール材と溶接点との間にガス配管を開口させ、金属溶接管の断面積に走行速度を乗じることで概算される体積以上の流量で不活性ガスをガス配管から送り込むことによって溶接部を内面シールドすることも行われている。
【０００５】
【特許文献１】特開平８―１７４２５１号公報
【特許文献２】実開昭５８−４７３９０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、大径の金属溶接鋼管を製造しようとするとき、溶接部の内面ガスシールドは、シールを要する体積が大きくなるにつれ困難である。また、不活性ガスの流量を増大することによりある程度の効果は期待できるが、その方法では装置等が大型にとなってしまい経済的ではない。また、大気の巻き込みやシールドガスの不足で溶接部に有害な酸化物が生じ、品質を悪化させる。
本発明は、このような問題を解消するために案出されたものであり、大径の金属溶接管を製造する際であっても、気密性に優れ、少量のシールドガスの使用により管内の溶接部の酸化を確実に防止でき、かつ耐久性に優れた内面シールド治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の金属溶接管製造用内面シールド治具は、その目的を達成するため、幅方向に曲げ加工された金属帯の幅方向両端部を溶接トーチで溶接して金属溶接管を製造する際に使用される内面シールド治具であって、オープンパイプ状に成形した金属帯又は金属溶接管の内周面に接触する入側シール材、出側シール材、その両者間に、かつロッド上にスプリングを介して配置された、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有するガスシールボックス、当該ガスシールボックス内の底部に配置された、溶接点より出側の位置で折り返す冷却水循環用水路、及び前記ガスシールボックス内で開口するシールドガス供給路を備えていることを特徴とする。
ガスシールボックスは、金属溶接管の走行方向に沿って長い形状に形作られていることが好ましい。また、ガスシールボックスの金属溶接管の走行方向に沿って延びる両側壁面は、上方に向けてその間隔が狭くなった２つの湾曲面で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【０００８】
本発明では、内面シールド治具を構成するガスシールボックスをロッド上にスプリングを介して配置している。このため、容量の小さいガスシールボックスであっても、被溶接部の内面に当接することができ、その上面から噴出されるシールドガスにより被溶接部内面を効果的にシールすることができ、従来と比べて少ないシールドガスで内面酸化を抑制することができる。
また、本発明の内面シールド治具は、内蔵した水冷機構によりガスシールボックスが冷却されるため、溶接点直下が局部的に高温に曝されるレーザービーム等の高密度エネルギビームが照射される溶接であってもガスシールボックスの溶損が抑制され、長期間安定して使用される。しかも、冷却された冷却水循環用水路上にスパッタが堆積したとしても、堆積したスパッタは、冷却水循環用水路に強固に融着することなく簡単に除去される。
したがって、本発明により、大径の溶接管製造時にあっても使いやすく、しかも耐久性に優れたシールド治具が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明に従った内面シールド治具は、例えば図２に示すように、オープンパイプに成形した金属帯又は金属溶接管１の内部に配置させている。
ロッド３で支持された入側シール材４と出側シール材５との間に、上面に開口部を設けたガスシールボックス７を配置する形態となっている。しかも、当該ガスシールボックス７は、ロッド３上にスプリング６を介し、その全体が被溶接管の溶接内面に付勢されるように取り付けられている。なお、図２中、２は溶接トーチである。
【００１０】
入側シール材４及び出側シール材５は、好ましくは金属フェルト，セラミックウール等の耐熱性，耐摩耗性に優れた軟質材で作られており，金属溶接管の内周面との隙間からシールドガスの漏れを少なくするために金属溶接管の内周面に軽く接触するサイズに設定されている。この入側シール材４及び出側シール材５は、製造される金属溶接管のサイズに応じて取り替えられる。
また、ロッド３上にスプリング６を介して設置されたガスシールボックス７は、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有する、好ましくは溶接管の走行方向に沿って長くなるように形作られた形状とする。上面に形成する開口部も、溶接管の走行方向に沿った長方形とすることが好ましい。そして、金属溶接管の内周面との隙間からのシールドガスの漏れを少なくするために、開口部を有するガスシールボックス７の上面形状は、金属溶接管の内周面に軽く接触するサイズに設定することが好ましい。
【００１１】
さらに、側壁面や底壁面を形作る素材としては、高温に耐える耐熱性金属が好ましい。例えばステンレス鋼が用いられる。そして、ガスシールボックス７はスプリング６によって被溶接管の内面に接触するように設置されているので、被溶接管の内面を傷つけないように、かつガスシールボックス７が摩損しないように、ガスシールボックス７の表面を金属フェルト、セラミックウール等の耐熱性、耐摩耗性に優れた軟質材８で被覆することが好ましい（図３）。
【００１２】
さらにまた、ガスシールボックス７本体を形作る長手方向の側壁面は、上方に向けてその間隔が狭くなった２つの湾曲面で構成されていることが好ましい。具体的には、金属溶接管の内壁面に沿った断面円弧状形状とすることが好ましい。このためには、当該ガスシールボックス７を形作る側壁面及び底壁面を、短尺パイプを縦方向に分割し、半分割パイプの開口部を平坦な低壁用板で閉じた半円柱形状に形作れば足りる。半分割パイプの上方部をさらに縦方向に分割して上面に開放部を形成し、その両端部を平坦な板で覆って中央にガス噴出用の開口部を残すと、図４の（ｂ）で示されるような断面形状を有するガスシールボックス７が得られる。
【００１３】
ガスシールボックス７には、またシール用のガス供給路９と冷却水循環用水路１０が設けられている（図４）。ガス供給路９としては、シール用の不活性ガスを通す導管１１をガスシールボックス入側にて二股にし、溶接時に発生するスパッタの直撃を避けるために溶接部直下を避けるような格好で、ガスシールボックス７の出側近傍まで配置している。そして、好ましい態様では、ガス供給路にガスを噴射するための開口１２を６ヶ所設けている（図４（ａ））。
ガスシールボックス本体には、金属帯又は金属溶接管の走行方向に延びる冷却水循環用水路１０が内蔵されている。冷却水循環用水路１０は、入側シールより溶接点を経て出側に至る配置で設けられている。さらに、出側端部近傍を折り返して、溶接部近傍を再度通過するように配置し、冷却効果の向上を図っている。給水管１３より送り込まれて排水管１４より排出される冷却水により、ガスシールボックス７が冷却され、溶接部から脱落するスパッタの融着を防いでいる。
【００１４】
次に、この内面シールド治具を用いて金属溶接管を製造する態様について簡単に説明する。
固定用ブラケット（図示せず）で固定されたロッド３に被金属溶接管のサイズに応じて取り付けられた入側シール材４及び出側シール材５とスプリング６を介して取り付けられたガスシールボックス７を有する内面シールド治具を、溶接トーチ２よりも入側に入側シール材４が位置するように成形中の金属帯の内部に配置し、ブラケット（図示せず）を介して外部に固定する。
給水管１３より送り込み、排水管１４より排出される冷却水によりガスシールボックス７内を冷却しつつ、導管１１に不活性ガスを供給し、ガス供給路９の開口１２から不活性ガスを噴出させる。ガスシールボックス７を充満させた不活性ガスを当該ガスシールボックスの上面開口部より上方の被金属溶接管の内壁面側に噴射させた状態で、金属板の溶接を開始し、被溶接金属帯及び金属溶接管を走行させて、溶接を続行する。
【００１５】
導管１１から導入されたシール用の不活性ガスが被金属溶接管の内面をガスシールドするため、被金属溶接管の内面の酸化が抑制される。
また、ガスシールボックス７には、金属溶接管の走行方向に延びる冷却水循環用水路１０が内蔵されているため、当該ガスシールボックスは比較的低温に保たれている。このため、溶接に伴ってスパッタが落下しても底部のシールガス供給路に強固に融着することなく、また底部のシールガス供給路上に堆積しても、容易に除去することができる。
【００１６】
以上に説明したように、本発明の内面シールド治具は、オープンパイプ状に成形された金属帯の幅方向両端部を溶接トーチで溶接して金属溶接管を製造する際、ガス流路より不活性ガスが送り込まれ、シールドボックス内に充填される。そのガスシールドにより、内面ビードの酸化が抑制される。ガスシールボックスはスプリングにより溶接管内面に接触されているので、従来と比べて少ないガス量で効率的にシールされる。また、入側シール材及び出側シール材を交換することにより、各種径の溶接金属管の製造に使用される。さらに、溶接熱で加熱されたガスシールボックスは、冷却水循環用水路を通る冷却水によって冷却され、比較的低温に維持される。このため、耐久性に優れ、溶接に伴ってシールボックス内底部に堆積したスパッタも強固に融着しておらず簡単に除去される。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】従来の内面シールド治具の構造を概略的に説明する図
【図２】本発明の内面シールド治具の構造を概略的に説明する図
【図３】本発明内面シールド治具のガスシールボックス側面を説明する図
【図４】本発明内面シールド治具のガスシールボックスの構造を説明する平面図（ａ）及びＡ−Ａ断面図（ｂ）
【符号の説明】
【００１８】
１：金属帯，金属溶接管 ２：溶接トーチ ３：ロッド ４：入側シール材
５：出側シール材 ６：スプリング ７：ガスシールボックス ８：金属フェルト９：ガス供給路 １０：冷却水循環用水路 １１：ガス供給導管 １２：開口
１３：給水管 １４：排水管
【特許請求の範囲】
【請求項１】
幅方向に曲げ加工された金属帯の幅方向両端部を溶接トーチで溶接して金属溶接管を製造する際に使用される内面シールド治具であって、オープンパイプ状に成形した金属帯又は金属溶接管の内周面に接触する入側シール材、出側シール材、その両者間に、かつロッド上にスプリングを介して配置された、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有するガスシールボックス、当該ガスシールボックス内の底部に配置された、溶接点より出側の位置で折り返す冷却水循環用水路、及び前記ガスシールボックス内で開口するシールドガス供給路を備えていることを特徴とする金属溶接管製造用内面シールド治具。
【請求項２】
金属溶接管の走行方向に沿って長い形状に形作られたガスシールボックスを備えた請求項１に記載の金属溶接管製造用内面シールド治具。
【請求項３】
金属溶接管の走行方向に沿って延びる両側壁面が、上方に向けてその間隔が狭くなった２つの湾曲面で構成されたガスシールボックスを備えた請求項１又は２に記載の金属溶接管製造用内面シールド治具。
【請求項１】
幅方向に曲げ加工された金属帯の幅方向両端部を溶接トーチで溶接して金属溶接管を製造する際に使用される内面シールド治具であって、オープンパイプ状に成形した金属帯又は金属溶接管の内周面に接触する入側シール材、出側シール材、その両者間に、かつロッド上にスプリングを介して配置された、四方の側壁面及び底壁面が閉じられて上面に開口部を有するガスシールボックス、当該ガスシールボックス内の底部に配置された、溶接点より出側の位置で折り返す冷却水循環用水路、及び前記ガスシールボックス内で開口するシールドガス供給路を備えていることを特徴とする金属溶接管製造用内面シールド治具。
【請求項２】
金属溶接管の走行方向に沿って長い形状に形作られたガスシールボックスを備えた請求項１に記載の金属溶接管製造用内面シールド治具。
【請求項３】
金属溶接管の走行方向に沿って延びる両側壁面が、上方に向けてその間隔が狭くなった２つの湾曲面で構成されたガスシールボックスを備えた請求項１又は２に記載の金属溶接管製造用内面シールド治具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００７−１９０５９５（Ｐ２００７−１９０５９５Ａ）
【公開日】平成１９年８月２日（２００７．８．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１１９５９（Ｐ２００６−１１９５９）
【出願日】平成１８年１月２０日（２００６．１．２０）
【出願人】（０００００４５８１）日新製鋼株式会社 (1,178)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年８月２日（２００７．８．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年１月２０日（２００６．１．２０）
【出願人】（０００００４５８１）日新製鋼株式会社 (1,178)
【Ｆターム（参考）】
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