説明

金属管の曲げ加工装置

【課題】圧縮制御を複雑化することなく、コンパクトな駆動源で効率良く金属管に圧縮力を付与して減肉を防ぐ。
【解決手段】金属管を環状に加熱する加熱手段と、加熱手段に向け金属管を推進させる推進手段と、金属管を把持すると共に支軸を中心として回動可能なアームと、推進手段による金属管の推進に伴い回動するアームを引き戻す引戻力を、支軸を支点としてアームに加え金属管に圧縮力をかける圧縮手段とを備える金属管の曲げ加工装置で、圧縮手段は、アームの、支軸側から見て金属管の把持点より外側位置に接続したチェーンと、チェーンを介してアームの外側位置に引戻力を作用させる油圧モータとを含む。更にアームの旋回軌道に沿うようにチェーンを円弧状に案内するチェーンガイドを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管の曲げ加工装置に係り、特に、管厚の減少を防ぎつつ金属管を曲げ加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石油やガス・各種液体などの流体を搬送するパイプとしてプラントや工場、発電所などの産業施設において、あるいは橋梁やスタジアム屋根など建造物の骨組構造材として金属管が今日広く用いられている。これらの金属管は、規格化され予め所定形状に製造された管(直管やエルボ、ベンド等の異形管)が使用される一方で、施工対象に応じて直線状の管を曲げ加工した管(以下「曲げ管」と言う)も、様々な曲率・管路形状に柔軟に対応できることから広範に使用されている。
【0003】
一方、曲げ管を製造する場合、素材となる直管を単純に曲げただけでは、曲管部分の外周側の肉厚が薄くなり、当該管に要求される強度を満たさなくなるおそれがある。そこで、曲げと同時に管軸方向へ圧縮力を加えつつ加工を行うことによりこのような管厚の減少(減肉)を防ぐ技術(いわゆる圧縮曲げ)が知られている。
【0004】
図5はこのような圧縮曲げに係る曲げ加工装置を模式的に示す図であるが、この図に示すように当該装置は、加工対象である金属管11の一部を環状に加熱する加熱コイル12と、加熱コイル12に向け金属管を管軸方向Bへ推進させる推進手段(推進シリンダ18)と、金属管11を把持すると共に支軸14を中心として回動可能なクランプアーム13を備え、クランプアーム(以下単に「アーム」と称することがある)13によってコイル12による金属管11の加熱部の前方部分を把持しながらこの把持点を推進手段18による金属管11の進行に伴い支軸14を中心として旋回させ、これにより金属管11に曲げモーメントを加える。
【0005】
またこのとき同時に、金属管11の推進方向Bとは反対方向への力である引戻力Gをクランプアーム13に加えることにより金属管11に圧縮力をかける。このため、推進手段18とは別に駆動手段(圧縮シリンダ41)を設け、これを例えばワイヤによりクランプアーム13の先端部に接続する。なお、図5において符号16は管軸方向に移動可能な移動ベース、符号17は当該移動ベース16に搭載され、金属管11の後部を把持する後部クランプをそれぞれ示す。
【0006】
また、このような圧縮曲げに関連する提案として下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−12062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の圧縮曲げでは、金属管に圧縮力を加える駆動手段として、推進用の駆動手段と同様に油圧シリンダが通常用いられている。
【0009】
しかしながら、圧縮用の駆動手段に油圧シリンダを使用する場合、推進用のシリンダは金属管を90°に曲げたとしても略曲げ半径分のストロークが必要なだけなのに対して、圧縮用のシリンダは、円弧状に曲げられていく金属管に追従して曲管部分の周に沿った距離に相当する長いストロークが必要となる。特に、当該ストロークは曲げ角度や曲げ半径が大きくなるほど長くなるから、加工装置を構成する場合に圧縮用シリンダに汎用の(従って廉価な)油圧シリンダを使用することが出来ず、特別に作製した長ストロークの専用のシリンダを使用せざるを得ないことも従来少なくない。このため、加工装置の製作に長期間を要する(納期が長くなる)うえに製造コストが嵩む問題があった。
【0010】
また、前記図5に示した装置では、図6に示すように曲げ加工が進行するにつれ、圧縮シリンダ41とクランプアーム13とを接続するワイヤと、クランプアーム13とがなす角度が変化するから、圧縮シリンダ41の出力(当該シリンダによる引張力G)と実際に金属管11にかかる圧縮力との関係が一定とならない。このため、金属管11にかかる圧縮力を一定にするために曲げ加工の進行に伴って圧縮シリンダ41の出力を変化させる必要があり、圧縮シリンダ41の制御が複雑とならざるを得ない。
【0011】
一方、上記のような不都合を回避するため、クランプアーム13の支軸14の近傍位置で引戻力を加えることも考えられる。
【0012】
例えば、図7に示すように、クランプアーム13と共に回転するピニオン42をアーム13の支軸部に固定し、このピニオン42と噛み合うラック43を介して油圧シリンダ41によってアーム13の回転と逆方向の回転力(G)をかければ、金属管11に圧縮力を生じさせることが出来る。また、図8に示すように、クランプアーム13と共に回転するスプロケット44をアーム13の支軸部に取り付け、チェーン45を介して油圧シリンダ41により前記図7の方法と同様にアーム13の回転と逆方向の回転力(G)をかけても良い。
【0013】
しかしながら、これら図7および図8に示した装置では、クランプアームの先端部に引戻力をかけることが可能な前記図5の方法と比較しても分かるように、大きな圧縮力が必要な場合に不利な構造であり、例えば零に近い厳しい減肉率に対応可能とするには、圧縮用のシリンダ41として非常に大きな出力を有するものを使用しなければならない難がある。
【0014】
したがって、本発明の目的は、圧縮制御を複雑化することなく、小出力かつコンパクトな駆動源で効率良く金属管に大きな圧縮力を付与することを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る金属管の曲げ加工装置は、曲げ加工対象である金属管の一部を環状に加熱する加熱手段と、当該加熱手段に向け前記金属管を管軸方向へ推進させる推進手段と、前記金属管を把持すると共に支軸を中心として回動可能なクランプアームを含み、このクランプアームによって前記加熱手段による金属管の加熱部の前方部分を把持すると共にこの把持点を前記推進手段による金属管の推進に伴い前記支軸を中心として旋回させ、これにより前記金属管に曲げモーメントを加える案内手段と、前記推進手段による金属管の推進に伴い回動するクランプアームを引き戻す引戻力を、前記支軸を支点として前記クランプアームに加えることにより前記金属管に圧縮力を作用させる圧縮手段とを備える金属管の曲げ加工装置であって、前記圧縮手段は、前記クランプアームの、前記支軸側から見て前記金属管の把持点より外側位置に接続した連結部材と、当該連結部材を介して前記クランプアームの前記外側位置に前記引戻力を作用させるモータとを含む。
【0016】
本発明の曲げ加工装置では、上記加熱手段により金属管の一部を環状に加熱しつつ当該金属管を推進させ、同時に、案内手段によって加熱手段を通過した金属管が弧を描いて湾曲するように案内する。
【0017】
具体的には、金属管の推進方向を「前方」とした場合に(本出願では金属管の推進方向に向かって先方を「前」、その逆である後方を「後」として説明する)、加熱部の前方部分をクランプアームによって把持する。このクランプアームは、支軸を中心として回動可能に設置してあり、上記推進手段による金属管の推進に伴って回動する。また、このアームの回動に伴い前記把持部分は当該支軸を中心に旋回し、金属管の前記加熱部に曲げモーメントが加わり、これにより金属管を連続的に塑性変形させて円弧を描くように金属管を曲げることが出来る。なお、金属管の後部は、例えば、前記加熱手段に向け進行可能な移動ベースに備えた後部クランプによって把持し、この移動ベースを介して前記推進手段が金属管を加熱手段に向け押し進めるようにすれば良い。
【0018】
一方、上記曲げモーメントに加えて管軸方向へ圧縮力を加えることにより、管外周側の減肉(肉厚の減少)を防ぐ。この圧縮力は、前記推進手段による金属管の推進に伴い回動するクランプアームを引き戻す引戻力を前記支軸を支点としてクランプアームに加えることにより、言い換えれば、クランプアームの回動方向とは逆方向の力をクランプアームに加えることにより生じさせる。
【0019】
この圧縮手段は、クランプアームに接続した連結部材と、当該連結部材を介してクランプアームに前記引戻力を作用させるモータとを含む。本発明では、このように圧縮力を付与する駆動手段としてシリンダではなくモータを使用することで、前述したシリンダのストロークの問題(長ストロークのシリンダが必要となる)を解消することが出来る。また、前記連結部材は、クランプアームの、支軸側から見て金属管の把持点より外側位置に接続する。支軸を支点として金属管に対して効率よく(小さな引戻力で大きな圧縮力を)金属管にかけることを可能とするためである。
【0020】
また好ましい態様として、上記連結部材をチェーンとし、クランプアームの旋回軌道に沿うように当該チェーンを円弧状に案内するチェーンガイドを更に備える。
【0021】
また、前記「モータ」としては、典型的には油圧モータを使用する。ただし、本発明の「モータ」は油圧モータに限定されるものではなく、例えば電動モータのような回転動力を発生する他の駆動手段の使用を本発明は除外するものではない。
【0022】
本発明の一態様では、上記加工装置において、クランプアームの先端部の旋回軌道の一端部側に、前記チェーンと噛み合う第一スプロケットを配置し、前記クランプアームの先端部の旋回軌道の他端部側に、前記チェーンと噛み合う第二スプロケットを配置し、これら第一スプロケットと第二スプロケットとの間に前記チェーンを環状に掛け渡し、前記第一スプロケットと第二スプロケットとの間に互いに平行に延在する2本のチェーン部分のうちの一方に前記クランプアームを接続し、前記第一スプロケット又は前記第二スプロケットに前記モータを接続し、これにより前記チェーン部分を介して前記モータにより前記引戻力をクランプアームに加えることを可能とする。
【0023】
また、本発明の別の一態様では、前記チェーンの一端部を、前記クランプアームの先端部の旋回軌道の一端部側に固定するとともに、前記チェーンの他端部を、前記クランプアームの先端部の旋回軌道の他端部側に固定し、当該チェーンと噛み合って前記クランプアームの旋回に伴い回転するスプロケットを、前記クランプアームの先端部に備え、前記クランプアームの旋回に伴う前記スプロケットの回転に抗する回転力を当該スプロケットに対して付与できるように前記モータを前記クランプアームの先端部に備え、これにより前記引戻力を前記クランプアームに加えることを可能とする。
【0024】
さらに本発明では、前記支軸が鉛直方向に延在し、前記クランプアームが金属管の推進に伴い水平に旋回して当該金属管を案内するよう構成することが好ましい。また、前記モータの出力軸とスプロケットとの間にはギアを適宜介在させて良く、このギア比を調節(大きく)すれば小出力のモータでも大きな圧縮力を金属管に付与することが可能となる。
【0025】
なお、本発明において加工対象となる金属管の寸法(外径・内径・肉厚寸法)は特に限定されない。また金属管の材料についても、本発明は典型的には鉄を主体とした材料からなる管(例えば鋼管やステンレス管、特殊鋼管など)を加工対象とするが、これ以外の金属材料を主体とする管や他の金属合金を材料とする管を対象とするものであっても良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る金属管の曲げ加工装置によれば、圧縮制御を複雑化することなく、小出力かつコンパクトな駆動源で効率良く金属管に大きな圧縮力を付与することが出来る。
【0027】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の第一の実施形態に係る金属管の曲げ加工装置を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は、前記第一実施形態に係る曲げ加工装置による加工中の状態を模式的に示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の第二の実施形態に係る金属管の曲げ加工装置を模式的に示す平面図である。
【図4】図4は、前記第二実施形態に係る曲げ加工装置による加工中の状態を模式的に示す平面図である。
【図5】図5は、本発明の第一の比較例に係る曲げ加工装置を模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、前記第一の比較例に係る曲げ加工装置の動作を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第二の比較例に係る曲げ加工装置を模式的に示す平面図である。
【図8】図8は、本発明の第三の比較例に係る曲げ加工装置を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
図1から図2に示すように本発明の第一の実施形態に係る金属管の曲げ加工装置は、加工対象である金属管11を環状に加熱する加熱コイル12と、加熱コイル12の前方直近位置で金属管11を把持するクランプ部15を有し支軸14を中心として回動可能に支持したクランプアーム13と、金属管11の後部を把持するクランプ部(後部クランプ)17を有するとともに金属管11の長さ方向(図1の左右方向)に移動可能な移動ベース16と、この移動ベース16をクランプアーム13(加熱コイル12)に向け推し進める推進シリンダ(推進手段)18とを備える。
【0030】
移動ベース16は、例えば、金属管11の推進に伴いアーム13に向け走行することが出来るよう車輪を備えた台車により構成することが出来る。またこの場合、金属管11に推進力を与える推進シリンダ18は、本装置の本体フレーム(図示せず)に設置して移動ベース16を推し進めるようにしても良いが、移動ベース16に搭載しても良く、この場合、当該推進シリンダ18は、移動ベース16と前記本体フレームとに係合して移動ベース16をアーム13側に引き寄せるように移動ベース16を進行させ、これにより後部クランプ17により把持した金属管11を加熱コイル12に向かって前方へ推し進める。なお、図において移動ベース16の進行を矢印Aで、またこれに伴う金属管11の推進を矢印Bで示した。
【0031】
またこの加工装置は、金属管11に圧縮力を付与するための圧縮手段として、油圧モータ21と、2つのスプロケット22,23の間に環状に掛け渡されて油圧モータ21が発生する回転力を引戻力Fとしてクランプアーム13に伝達するローラーチェーン(連結部材)24と、ローラーチェーン24(以下単に「チェーン」と称することがある)を円弧状に支持するチェーンガイド25,26を有する。
【0032】
前述のようにクランプアーム13は金属管11の推進に伴い支軸14を中心として回動し、したがってクランプアーム13の先端部は支軸14を中心として円弧状の軌道を描いて旋回するが、チェーン24を支持する上記スプロケット22,23は、当該アーム先端部の円弧状の旋回軌道の一端部側(アーム13が未だ回転せず金属管11に対し略直交した状態(図1に示した加工開始前の初期状態)にあるアーム先端部の近傍位置)に配置した第一スプロケット22と、当該アーム先端部の旋回軌道の他端部側(クランプアーム13が完全に(この例では約110°)回動した状態におけるアーム先端部の近傍位置)に配置した第二スプロケット23とからなる。
【0033】
チェーンガイド25,26は、アーム13の回動範囲に対応させて中心角が例えば約110°の円弧をなす平面形状を有する2枚のガイド板からなり、これら2枚のガイド板は、前記アーム先端部の旋回軌道に沿うように平面から見て互いに平行に円弧を形成するよう延在し、内側のガイド板(「内側ガイド板」と称する)25は、第一スプロケット22と第二スプロケット23との間に環状に掛け渡したローラーチェーン24の内側チェーン部分を、また外側に配置したガイド板(「外側ガイド板」と称する)26は、当該チェーン24の外側チェーン部分をそれぞれ円弧状に且つ走行可能に支持する。なお、これらのガイド板25,26は、クランプアーム13の回動の邪魔にならないように当該アーム13より下方に位置し、床に支持(設置)してある。
【0034】
また、上記第一および第二スプロケット22,23間に互いに平行に延在する2つのチェーン部分のうちの一方(内側チェーン部分)にはアーム13の先端部を接続(固定)する。なお、この固定状態を図1及び図2において黒丸(符号27)で示した。したがって、図2に示すように金属管11の推進によってアーム13が回動すると、チェーン24は上記各ガイド板25,26に当接しつつ両スプロケット22,23の間を走行する。
【0035】
またこのチェーン24の走行に従い第二スプロケット23は従動回転する。一方、第一スプロケット22には油圧モータ21を接続してあり、アーム13の回動C(チェーンの走行D)に伴う第一スプロケット22の回転に対して逆方向の回転力Eを当該油圧モータ21によって第一スプロケット22にかけることが可能である。したがって、油圧モータ21の駆動により、内側チェーン部分を介しクランプアーム13に対して引戻力Fをかけることが出来る。
【0036】
なお、上記内側チェーン部分は、支軸14の側から見てクランプ部15より外側のアーム先端部に接続してあるから、支軸14を支点として効率よく(小さな引戻力Fで大きな)圧縮力を金属管11に対してかけることが可能である。また、油圧モータ21と第一スプロケット22の間にはギア(図示せず)を介在させて良く、このギア比を大きく設定することで、例えば要求される減肉率が零に近い場合のように大きな圧縮力が必要な場合に対応することも出来る。
【0037】
また、前記特許文献1に記載の装置では、移動ベースに圧縮用シリンダを搭載し、圧縮用シリンダが移動ベースと一緒に移動するから、圧縮力(引戻力)の制御にあたっては、移動ベース(圧縮用シリンダ)の移動とクランプアームの回動の両方を考慮する必要がある。これに対し本実施形態(次に述べる第二実施形態も同様)では、クランプアームの回動のみを考慮すれば良く、推進駆動(移動ベースの移動)と切り離して圧縮力(引戻力)の制御を単独で行うことが出来るから、圧縮制御を簡便化できる利点もある。
【0038】
〔第2実施形態〕
次に、図3を参照して本発明の第二の実施形態に係る金属管の曲げ加工装置について説明するが、前記第一実施形態の装置と同様の構成には同一の符号を付して重複した説明を省略し、相違点を中心に述べる。
【0039】
図3に示すように本発明の第二の実施形態に係る曲げ加工装置は、前記第一実施形態の装置と同様に、油圧モータ21によってクランプアーム13に引戻力Fを加えることにより金属管11に圧縮力を付与するものであるが、油圧モータ21と、これを接続した圧縮駆動用のスプロケット22とをアーム13の先端部に搭載したものである。
【0040】
より具体的には、クランプアーム13の先端部に、油圧モータ21と、ローラーチェーン34に噛み合う複数のスプロケット22,31,32とを取り付ける。ローラーチェーン34は、前記第一実施形態と同様にアーム先端部の旋回軌道に沿って円弧を描くようにチェーンガイド35で支持することによりアーム先端部の旋回軌道の一端部側と他端部側との間に張り渡すが、2つのスプロケット間に環状に掛け渡してアームの回動に伴い走行する前記第一実施形態とは異なり、一端をアーム先端部の旋回軌道の一端部側に、また他端をアーム先端部の旋回軌道の他端部側にそれぞれ固定する。なお、このように本実施形態ではチェーン34は環状でなく1本の状態で掛け渡されるから、チェーンガイド35は、アーム先端部の旋回軌道に沿うように円弧状の平面形状を有する1枚のガイド板を備えれば良い。
【0041】
また、アーム先端部に搭載した上記スプロケットは、油圧モータ21の駆動軸を接続した駆動スプロケット22と、当該スプロケット間をチェーン34が蛇行するように駆動スプロケット22の前後にそれぞれ設置した2つの従動スプロケット31,32とを含む。従動スプロケット31,32は、チェーン34と噛み合って自由に(アーム13の回転進行を受けて自由に)回転するものであるが、駆動スプロケット22より支軸14に近い位置に配置してあり、これにより駆動スプロケット22の前後において従動スプロケット31,32によりチェーン34が支軸側に引き寄せられ、駆動スプロケット22にチェーン34を確実に噛み合わせることが出来る。
【0042】
図4に示すようにアーム13の回動に伴い、チェーン34と噛み合ったスプロケット22,31,32は回転するが、このとき駆動スプロケット22に接続した油圧モータ21を駆動し、当該スプロケット21の回転と逆方向の回転力(アーム13の回動に伴うスプロケット22の回転に抗する回転力)Eを加えることが可能であり、これによりクランプアーム13に引戻力Fをかけ、金属管11に圧縮力を付与することが出来る。
【0043】
このように本発明の実施形態に係る加工装置によれば、油圧モータ21によってクランプアーム13に引戻力Fをかけ、曲げ加工中に金属管11に対し圧縮力を付与して金属管11の減肉を抑制することが出来る。なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0044】
A 移動ベースの移動方向
B 金属管の推進方向
C クランプアームの回動方向
D クランプアームの回動に伴うチェーンの走行方向
E 圧縮手段(油圧モータ)による回転力
F アームの引戻力
G 圧縮用油圧シリンダによる引戻力
11 金属管
12 加熱コイル
13 クランプアーム
14 支軸
15 クランプ部
16 移動ベース
17 後部クランプ
18 推進シリンダ
21 圧縮用油圧モータ
22 圧縮駆動用スプロケット
23,31,32 従動スプロケット
24,34,45 ローラーチェーン
25 チェーンガイド(内側ガイド板)
26 チェーンガイド(外側ガイド板)
27 クランプアームとローラーチェーンとの連結部
41 圧縮用油圧シリンダ
42 ピニオン
43 ラック
45 スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工対象である金属管の一部を環状に加熱する加熱手段と、
当該加熱手段に向け前記金属管を管軸方向へ推進させる推進手段と、
前記金属管を把持すると共に支軸を中心として回動可能なクランプアームを含み、このクランプアームによって前記加熱手段による金属管の加熱部の前方部分を把持すると共にこの把持点を前記推進手段による金属管の推進に伴い前記支軸を中心として旋回させ、これにより前記金属管に曲げモーメントを加える案内手段と、
前記推進手段による金属管の推進に伴い回動するクランプアームを引き戻す引戻力を、前記支軸を支点として前記クランプアームに加えることにより前記金属管に圧縮力を作用させる圧縮手段と、
を備える金属管の曲げ加工装置であって、
前記圧縮手段は、
前記クランプアームの、前記支軸側から見て前記金属管の把持点より外側位置に接続した連結部材と、
当該連結部材を介して前記クランプアームの前記外側位置に前記引戻力を作用させるモータと
を含むことを特徴とする金属管の曲げ加工装置。
【請求項2】
前記連結部材は、チェーンであり、
前記金属管の曲げ加工装置は、前記クランプアームの旋回軌道に沿うように前記チェーンを円弧状に案内するチェーンガイドを更に備える
請求項1に記載の金属管の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記クランプアームの先端部の旋回軌道の一端部側に、前記チェーンと噛み合う第一スプロケットを配置し、
前記クランプアームの先端部の旋回軌道の他端部側に、前記チェーンと噛み合う第二スプロケットを配置し、
これら第一スプロケットと第二スプロケットとの間に前記チェーンを環状に掛け渡し、
前記第一スプロケットと第二スプロケットとの間に互いに平行に延在する2本のチェーン部分のうちの一方に前記クランプアームを接続し、
前記第一スプロケット又は前記第二スプロケットに前記モータを接続し、
これにより前記チェーン部分を介して前記モータにより前記引戻力を前記クランプアームに加えることを可能とした
請求項2に記載の金属管の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記チェーンの一端部を、前記クランプアームの先端部の旋回軌道の一端部側に固定するとともに、
前記チェーンの他端部を、前記クランプアームの先端部の旋回軌道の他端部側に固定し、
当該チェーンと噛み合って前記クランプアームの旋回に伴い回転するスプロケットを、前記クランプアームの先端部に備え、
前記クランプアームの旋回に伴う前記スプロケットの回転に抗する回転力を当該スプロケットに対して付与できるように前記モータを前記クランプアームの先端部に備え、
これにより前記引戻力を前記クランプアームに加えることを可能とした
請求項2に記載の金属管の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記モータは、油圧モータである
請求項1から4のいずれか一項に記載の金属管の曲げ加工装置。
【請求項6】
前記支軸は、鉛直方向に延在し、
前記クランプアームは、前記金属管の推進に伴い水平に旋回して前記金属管を案内する
請求項1から5のいずれか一項に記載の金属管の曲げ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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