説明

金属粒子分散構造体、該構造体からなる微粒子、該構造体により被覆された物品およびこれらの製造方法

【課題】金属ナノ粒子が高分子構造体(ポリマーマトリックス)中に均一に分散した金属粒子分散構造体およびその製造方法を提供する。また、該分散構造体からなるフィルム、コーティング剤、微粒子およびその水系分散液を提供するものである。
【解決手段】(A)重合性高分子100重量部中に、(B)金属ナノ粒子0.005〜100重量部が分散していることを特徴とする金属粒子分散構造体であって、該金属ナノ粒子が、(b1) オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(b2) 成分(b3)に可溶な1種類以上の金属化合物とを(b3) 環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の有機溶媒中において均一混合することにより得られた金属粒子であることを特徴とする金属粒子分散構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属ナノ粒子が高分子中に分散した構造を有する金属粒子分散構造体に関するものであり、特には金属ナノ粒子がシリコーンからなる高分子構造中に分散しているシリコーン素材(シリコーン系の金属粒子分散構造体)に関するものである。また、本発明は、該金属粒子分散構造体からなる微粒子、該金属粒子分散構造体により被覆された物品に関するものであり、極めて容易にかかる金属粒子分散構造体を得るための製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属をナノサイズレベルまで微細化することにより、光学的機能、表面改質機能、熱特性等の粒径効果が現れるため、これらの金属粒子を複合化したポリマーは機能性材料として期待される。一方、ポリマーマトリックス中に金属微粒子を分散させてなる構造体は公知であり、光機能材料や導電性付与を目的として、架橋性高分子、特にはシリコーン系の高分子中に金属ナノ粒子を分散させることは知られている(例えば、特許文献1〜3等)。しかしながら、これらの方法では、金属ナノ粒子がポリマーマトリックス中に均一に分散しにくく、金属ナノ粒子の配合により期待されるポリマーの機能は未だ満足できるものではなかった。さらに、均一な金属ナノ粒子は取り扱い時に容易に、凝集して大きな粒子になりやすく、極めて不安定である。また、反応性が高いために容易に空気中で取り扱う場合には飛散・酸化しやすいという問題がある。このため、均一な金属ナノ粒子は工業的な製造が難しく、特殊な製造装置を用いることなく、特に工業的な生産工程において、ポリマーマトリックス中に金属微粒子を分散させてなる構造体を容易かつ大量に製造することが困難であった。
【0003】
また、ケイ素結合水素原子を有するポリシロキサン類を表面に有する粉体あるいは物品を、金属陽イオンを含む水溶液等で処理することにより、金属陽イオンを粉体あるいは物品の表面において還元し、粉体あるいは物品の表面金属被膜により被覆する表面処理、無電解めっきの手法は公知である(例えば、特許文献4〜9等)。しかし、これらの表面処理技術では、還元後の金属は、処理表面全体に層状に金属原子が配置された被覆層を形成してしまうため、金属ナノ粒子に期待される粒子効果、すなわち光学的機能、表面改質機能、熱特性等の諸機能が損なわれてしまうという問題があった。
【0004】
一方、特許文献10には、還元剤により、有機溶媒中あるいは水溶液中で金属化合物を還元することにより金属を析離させることが記載されている。また、該金属を含有する有機溶媒に可溶な架橋性ポリシロキサン粒子が記載されている。さらに、水素化ケイ素結合により、金属化合物が還元されうることが記載されている。しかしながら、当該特許文献10には、該架橋性ポリシロキサンを調製した後、その表面に金属ナノ粒子を形成させるものであり、架橋性ポリマーマトリックス中に安定な金属ナノ粒子を分散させた構造体や、ポリマーマトリックス中に金属ナノ粒子が安定に取り込まれた構造体を形成させることは記載されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2001-316501号公報(特登録3517698)
【特許文献2】特表2001-527108号公報
【特許文献3】特開平02-051535号公報(特公平04-077401)
【特許文献4】特開平01-115957号公報(特登録2686750)
【特許文献5】特開2000-073176号公報
【特許文献6】特開昭64-062475号公報
【特許文献7】特開2002-004057号公報(特登録3536788)
【特許文献8】特開2001-152045号公報(特登録3716903)
【特許文献9】特開平11-271981号公報(特登録3440815)
【特許文献10】特開平10-219112号公報(特登録2956030)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものである。本発明の目的は、平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属ナノ粒子が高分子からなる構造体(ポリマーマトリックス)中に均一に分散した金属粒子分散構造体を提供するものであり、該金属粒子分散構造体を工業的生産過程において容易かつ大量に製造することが可能な該金属粒子分散構造体の製造方法を提供するものである。さらに、本発明は該金属粒子分散構造体からなるフィルム状構造体を提供するものであり、該金属粒子分散構造体からなる微粒子状構造体を提供するものである。さらに、本発明は該金属粒子分散構造体により、表面が被覆された物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、
「[1] (A)(a)反応性官能基を有する高分子前駆体 を重合させてなる高分子100重量部中に、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子0.005〜100重量部が分散していることを特徴とする金属粒子分散構造体であって、該金属粒子が、
(b1) 1分子あたり少なくとも1個の珪素に結合した水素原子を有する1種類以上の有機珪素化合物と(b2) 下記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物とを(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の有機溶媒中において均一混合することにより得られた金属粒子であることを特徴とする金属粒子分散構造体。
組成式(1): LM、[LM]p+(Qq− または (Qq+[LM]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
[2] 前記成分(a)が架橋可能なオルガノシラン及び/またはオルガノシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物であり、前記成分(A)が該有機珪素化合物を架橋させてなる有機珪素系高分子である[1]に記載の金属粒子分散構造体。
[3] 成分(b2)が、前記組成式(1)において、Mが銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)からなる群から選択される1種類以上の金属の陽イオンであり、Lが炭素原子数2〜20のアルコール類、チオール類、脂肪族鎖状アミン類、脂肪族環状アミン類、芳香族アミン類、ピリジン誘導体、ジケトン類、ケトエステル類、ヒドロキシケトン類およびカルボン酸アニオンからなる群から選択される1種類以上の有機配位子であることを特徴とする[1]に記載の金属粒子分散構造体。
[4] (a)架橋可能な構造を有する高分子前駆体、(b1) 1分子あたり少なくとも1個の珪素に結合した水素原子を有する1種類以上の有機珪素化合物および(b2) 下記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物を(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の有機溶媒中において均一混合し、成分(a)を架橋反応させてなることを特徴とする[1]に記載の金属粒子分散構造体の製造方法。
組成式(1): LM、[LM]p+(Qq− または、 (Qq+[LM]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
[5] 前記成分(A)が、(a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノシラン及び/またはオルガノシロキサンと、(a2) 分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを(a3) ヒドロシリル化反応触媒の存在下に架橋させてなるオルガノポリシロキサンである[1]または[2]に記載の金属粒子分散構造体。
[6] (a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノシラン及び/またはオルガノシロキサン、(a2) 1分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(b2) 前記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物および(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサン及び/または1種類以上の有機溶媒を均一混合し、(a3) ヒドロシリル化反応触媒の存在下で架橋反応させてなる[1]に記載の金属粒子分散構造体の製造方法。
[7] 成分(b2)が、前記組成式(1)において、Mが白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の金属の陽イオンであり、LがR−COOで示される1価のカルボン酸アニオン(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基)、R−NHで示されるアミン類(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数4〜20のアルキル基)、HN−R−NHで示されるアルキレンジアミン類(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数4〜20のアルキレン基)であり、Qが正電荷を有する対イオンとしてはプロトン(H)、アンモニウムイオン(NH)、ナトリウムイオン(Na)およびカリウムイオン(K)からなる群から選択される陽イオンであり、Qが負電荷を有する対イオンとしては硝酸イオン(NO)、塩化物イオン(Cl)、硫酸イオン(SO2−)および過塩素酸イオン(ClO)からなる群から選択される陰イオンであることを特徴とする金属化合物である[1]に記載の金属粒子分散構造体。
[8] 厚さ0.1μm〜10,000μmの塗布薄膜状もしくはフィルム状であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の金属粒子分散構造体。
[9] 実体顕微鏡観察による平均粒子径または動的光散乱式粒径分布測定による平均粒子径が0.01〜1000μmの範囲にある粒子状の金属粒子分散構造体であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の金属粒子分散構造体。
[10] (a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(a2) 1分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(b2) 下記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物、(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンおよび(a3) ヒドロシリル化反応触媒を(C)乳化剤の存在下で水中に乳化し、水中で架橋反応させてなる[9]に記載の粒子状の金属粒子分散構造体の製造方法。
組成式(1): LM、[LM]p+(Qq− または、 (Qq+[LM]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
[11] [1]〜[7]のいずれか1項に記載の金属粒子分散構造体によって被覆された物品。」により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属ナノ粒子が高分子からなる構造体(ポリマーマトリックス)中に均一に分散した金属粒子分散構造体を得ることができる。さらに、本発明により、該金属ナノ粒子を含有する金属粒子分散構造体からなるフィルム材料、微粒子状材料を得ることができ、さらに、該金属粒子分散構造体により、表面が被覆された物品を提供することができる。これらの該金属粒子分散構造体は、金属析出による表面被覆とは異なり、前記の金属ナノ粒子の粒子効果による発色等の光学的機能、表面改質機能、熱特性等の諸機能が損なわれないという利点がある。また、本発明にかかる金属粒子分散構造体の製造方法は、工業的生産過程において該金属粒子分散構造体を容易かつ大量に製造できる利点があり、製品を安定して市場に供給することが可能である点で極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
はじめに、本発明の金属粒子分散構造体について、その最良の実施形態を示しつつ詳細に説明する。
本発明の金属粒子分散構造体は、
(A)(a)架橋可能な構造を有する高分子前駆体 を架橋させてなる高分子100重量部中に、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子0.005〜100重量部が分散していることを特徴とする金属粒子分散構造体であって、該金属粒子が、
(b1) 1分子あたり少なくとも1個の珪素に結合した水素原子を有する1種類以上の有機珪素化合物と(b2) 下記組成式
組成式: LM、 [L−M]p+(Qq− または、(Qq+[L−M]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)で示される1種類以上の金属化合物とを(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の有機溶媒中において均一混合することにより得られた金属粒子であることを特徴とする金属粒子分散構造体からなることを特徴とする。
【0010】
成分(A)は、(a)反応性官能基を有する高分子前駆体 を重合させてなる高分子であり、後述する本発明の金属粒子分散構造体において、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子をその表面および内部に担持する高分子から成る構造体(ポリマーマトリックス)を形成する成分である。
【0011】
該成分(A)は後述する1種類もしくは2種類以上のモノマーを重合させてなる高分子であれば、その種類、重合度、分子量は限定されるものではない。また、(a)反応性官能基を有する高分子前駆体から高分子を形成する際の重合反応は限定されるものではなく、ヒドロシリル化反応等の付加重合反応、脱水もしくは脱アルコールを伴う縮重合反応、エポキシ環等の開環重合反応、ラジカル重合反応等のいずれであってもよい。
【0012】
成分(A)として、ポリオルガノシロキサン;ポリアミド;ポリウレタン;ポリアクリル酸;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリオレフィン;ポリイミド;ポリスチレン;スチレン−ブタジエンゴム;エポキシ樹脂が例示される。また、これらの高分子からなる高分子アロイ、公知の官能基により部分的にその末端または側鎖を変性させた変性高分子であってもよい。本発明において、成分(A)がポリオルガノシロキサンであることが特に好ましい。
【0013】
成分(a)は、成分(A)を得るための反応性官能基を有する高分子前駆体であり、以下、各成分(A)と共に詳述する。ただし、本発明において、成分(A)は、各成分(A)を得るための重合反応機構を阻害しない範囲内において、公知の共重合反応性モノマーを部分的に含むことができ、成分(a)は、これらの共重合性モノマーをも含みうるものである。
【0014】
前記ポリアミドは、具体的には、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)が例示される。該ポリアミドは成分(a)であるアミノ酸の重縮合反応あるいは、成分(a)であるラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を公知の方法で共重合反応させることにより得ることができる。
【0015】
ポリアミドを得るための反応性官能基を有する高分子前駆体(成分(a))は、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸 等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム 等のラクタム;テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン 等のジアミン;アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸 等のジカルボン酸が例示される。
【0016】
前記ポリウレタンは、成分(a)であるポリヒドロキシル化合物(ポリオール類)とジイソシアネート化合物および必要に応じて短鎖のグリコール類を公知の方法により反応させることにより得ることができる。かかる成分(a)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール 等のポリオール類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、その他の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、その他の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、その他の脂環族ジイソシアネート 等のジイソシアネート化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール 等のグリコール類が例示される。
【0017】
前記アクリル樹脂は、具体的にはポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルが例示される。該アクリル樹脂は成分(a)であるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを公知の方法によりラジカル重合させることにより得ることができる。かかる成分(a)は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸-2-エチルへキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸オクタデシル 等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルへキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸オクタデシル 等のメタクリル酸エステルが例示される。
【0018】
前記ポリエステルは、成分(a)である多価カルボン酸(好適にはジカルボン酸化合物)とポリアルコール類(ジオール類)とを重縮合反応させる方法により得ることができ、必要に応じて、その他の共重合成モノマーを加えて重合反応させることができる。かかる成分(a)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、その他のジカルボン酸化合物;エチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、ビスフェノールS、その他のジオール類が例示される。
【0019】
前記ポリカーボネートは、成分(a)であるジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法により得ることができる。かかる成分(a)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:「ビスフェノールA」)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、その他のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、その他のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテル、その他のジヒドロキシジアリールエーテル類;ジヒドロキシジアリールスルホキシド類;ジヒドロキシジアリールスルホン類ジヒドロキシジアリール化合物が例示される。
【0020】
前記ポリオレフィンは、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリクロロイソプレンが例示される。該ポリオレフィンは、成分(a)であるオレフィン類を、公知の金属触媒の存在下で重合させることで得ることができる。成分(a)であるエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロイソプレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンまたはエチレン−αオレフィン共重合体が例示される。
【0021】
前記ポリイミドは、成分(a)であるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を公知の方法により重合させて得られたポリアミド酸を加熱等の手段によりイミド化反応させることにより得ることができる。同様に、成分(a)であるテトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート化合物を反応させることにより得ることができる。上記成分(a)であるテトラカルボン酸二無水物はジフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3'4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、3,3",4,4"-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、3,3'4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物が例示される。前記のジアミン化合物は、芳香族ジアミンであることが好ましく、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジンが例示される。成分(a)であるジイソシアネート化合物は前記同様の化合物が例示される。
【0022】
前記ポリスチレンは、成分(a)であるスチレンを公知の方法によりラジカル重合させることにより得ることができる。前記スチレン−ブタジエンゴムは、成分(a)であるスチレンおよび1,3-ブタジエンを公知の方法によりラジカル重合させ、所望により加硫することにより得ることができる。
【0023】
前記エポキシ樹脂は、成分(a)であるフェノール類とエピハロヒドリンを共重合させて得たプレポリマーを、公知の方法により開環重合反応(グラフト重合)させることにより得ることができる。前記フェノール類は、ハイドロキノン、カテコール、ジナフトール、その他の2価フェノール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:「ビスフェノールA」);フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、その他のフェノール類とホルムアルデビドから得るノボラック樹脂類が例示される。また、前記エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンが例示される。
【0024】
本発明において、好ましい成分(A)は、オルガノポリシロキサンおよびシロキサン単位を含む架橋性高分子であり、成分(a)は架橋可能な反応性官能基を分子中に有する1種類以上のオルガノシランまたはオルガノポリシロキサンであることが好ましい。該オルガノポリシロキサンを得るためのオルガノシランまたはオルガノポリシロキサンの架橋反応機構は、公知の架橋反応機構であれば、特に限定されるものでは無く、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物を開始剤とする過酸化物架橋反応、錫化合物等の縮重合触媒の存在下における縮合架橋反応、塩化白金酸等のヒドロシリル化触媒の存在下における付加型の架橋反応、紫外線照射による紫外線架橋反応およびこれらの架橋反応を組み合せた架橋反応の何れであっても良い。
【0025】
本発明において、好ましい成分(A)は、ヒドロシリル化触媒の存在下における付加硬化型の架橋反応により得られたオルガノポリシロキサンである。より具体的には、成分(A)が、(a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(a2) 分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを(a3) ヒドロシリル化反応触媒の存在下に架橋させてなるオルガノポリシロキサンであることが好ましく、以下、該オルガノポリシロキサンについて詳細に説明する。
【0026】
成分(a1)は1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであり、
室温(25℃)において、滴下可能な液体状から重力の影響下では流動性がないゴム状のオルガノポリシロキサンを用いることができる。該オルガノポリシロキサンの粘度は、25℃で1〜100,000mPa・sであることが好ましく、25℃で400〜10,000mPa・sであることが、取り扱いの点でより好ましい。しかしながら、アルコール類、トルエン、キシレン等の溶媒に可溶な固体状、ガム状等であっても使用できる。
【0027】
かかる成分(a1)の分子構造は限定されず、直鎖状、分岐鎖状(1分子中に1個以上のT単位(SiO3/2)を含んで分岐した構造、1分子中に1個以上のQ単位(SiO4/2)を含んで分岐した構造を含む、以下同じ)、樹脂状、環状のいずれの構造であってもよい。
【0028】
該成分(a1)はより具体的には、[R(CHSiO1/2]で表されるM単位、[R(CH)SiO2/2]で表されるD単位から選択されるアルケニル基を有するシロキサン単位を1分子あたり2個以上含有するものである。式中、Rはアルケニル基であり、炭素原子数2〜20のアルケニル基が好ましく、炭素原子数2〜6のアルケニル基、例えばビニル基または5−ヘキセニル基であることが特に好ましい。
【0029】
また、成分(a1)のオルガノポリシロキサンには、[RSiO1/2]で表されるM単位、[RSiO2/2]で表されるD単位、[RSiO3/2]で表されるT単位および[SiO4/2]で表されるQ単位が含まれうる。式中、Rは、Rであるアルケニル基を除く、置換又は非置換の1価炭化水素基から独立に選択される基である。該1価炭化水素基は、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,オクチル基などの炭素原子数1〜8のアルキル基;フェニル基,トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロプロピル基,トリフルオロプロピル基などのハロアルキル基が例示されるが、それらの合計数の50モル%以上が炭素原子数1〜8のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0030】
更に具体的には、該成分(a1)は下記平均組成式で表されるオルガノポリシロキサンを使用することができる。
平均組成式:
[R(CHSiO1/2]a[RSiO1/2]b[R(CH)SiO2/2]c[RSiO2/2]d[RSiO3/2]e[SiO4/2]f
式中、a、b、c、d、e、fは各々0以上1未満の正の数であり、a+b+c+d+e+f=1の関係を満たす。また、R、Rは前記同様の基である。
【0031】
該成分(a1)として、[(CHSiO1/2]で表されるM単位、[(CH=CH)(CHSiO1/2]で表されるViM単位、[(CH=CH)(CH)SiO2/2]で表されるViD単位、[(CHSiO1/2]で表されるM単位、[(CHSiO2/2]で表されるD単位、[(CH)SiO3/2]で表されるT単位および[(C)SiO3/2]で表されるPhT単位から選択されるシロキサン単位から構成される鎖状もしくは樹脂状のオルガノポリシロキサンが好適であり、さらに具体的には、ViM単位とT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサン、ViM単位とPhT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサン、M単位、ViD単位、D単位およびPhT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサンが例示される。これらの樹脂状オルガノポリシロキサンは付加反応により三次元架橋構造を有するポリシロキサンマトリックスを形成するため、本発明にかかる金属粒子分散構造体の金属ナノ粒子の担体として特に好適である。
【0032】
その他の成分(a1)として、末端にトリメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン−メチルビニルポリシロキサン・コポリマー、末端にビニルジメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン類、末端にビニルジメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン−メチルビニルポリシロキサン・コポリマー、末端にトリメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン−メチルヘキセニルポリシロキサン・コポリマー、末端にヘキセニルジメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン類、末端にヘキセニルジメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン−メチルヘキセニルポリシロキサン・コポリマー、末端にトリメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、末端にビニルジメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、末端にビニルジメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、末端にビニルジメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー、末端にトリメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー、末端にトリメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、末端にヘキセニルジメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、末端にヘキセニルジメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、末端にヘキセニルジメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー、末端にトリメチルシロキシ基を有するジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマーが例示される。
【0033】
(a2) 分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、成分(a1)の架橋剤として機能であり、ケイ素原子に結合している水素原子が成分(A)と成分(B)中のアルケニル基とヒドロシリル化反応する。さらに、成分(a2)は分子中に、Si−H結合を有するため、後述する(b1)還元作用を持つケイ素系化合物の下位概念に該当する成分でもある。
【0034】
成分(a2)は、成分(a1)の架橋剤として機能するために、1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが必要であり、1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。
【0035】
成分(a2)は、他成分との混合容易性の点で、常温で液状であることが好ましい。25℃における粘度は、好ましくは1〜1,000mPa・sであり、より好ましくは5〜500mPa・sである。また、成分(a2)の分子構造は限定されず、直鎖状,分岐鎖状,樹脂状,環状が例示される。成分(a2)の分子中における、ケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端,側鎖,これら両方が例示される。
【0036】
該成分(a2)はより具体的には、[H(CHSiO1/2]で表されるM単位、[H(CH)SiO2/2]で表されるD単位から選択されるケイ素原子結合水素原子を有するシロキサン単位を1分子あたり2個以上含有するものが好ましい。また、成分(a2)のオルガノポリシロキサンには、[RSiO1/2]で表されるM単位、[RSiO2/2]で表されるD単位、[RSiO3/2]で表されるT単位および[SiO4/2]で表されるQ単位が含まれうる。式中、Rは前記同様の基であり、それらの合計数の50モル%以上が炭素原子数1〜8のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0037】
更に具体的には、該成分(a2)は下記平均組成式で表されるオルガノポリシロキサンを使用することができる。
平均組成式:
[H(CHSiO1/2]g[RSiO1/2]h[H(CH)SiO2/2]i[RSiO2/2]j[RSiO3/2]k[SiO4/2]l
式中、g、h、i、j、k、lは各々0以上1未満の正の数であり、g+h+i+j+k+l=1の関係を満たす。Rは前記同様の基である。
【0038】
該成分(a2)として、[(CHSiO1/2]で表されるM単位、[H(CHSiO1/2]で表されるM単位、[H(CH)SiO2/2]で表されるD単位、[(CHSiO1/2]で表されるM単位、[(CHSiO2/2]で表されるD単位、[(CSiO2/2]で表されるPh2D単位、[(CH)SiO3/2]で表されるT単位および[(C)SiO3/2]で表されるPhT単位から選択されるシロキサン単位から構成される鎖状もしくは樹脂状のオルガノポリシロキサンが好適であり、さらに具体的には、M単位とT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサン、M単位とPhT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサン、M単位、M単位、D単位、D単位、Ph2D単位およびPhT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサン、M単位、D単位、D単位からなる鎖状オルガノポリシロキサンが例示される。
【0039】
その他の成分(a2)として、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,環状メチルハイドロジェンオリゴシロキサン,環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体,ジハイドロジェンテトラメチルジシロキサン,トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン,テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シランが例示される。
【0040】
成分(a2)の配合量は、成分(a1)中のアルケニル基(alkenyl)1モルに対する成分(a2)のケイ素原子結合水素原子(SiH)のモル比(すなわち、[SiH/alkenyl]で示されるモル比)が1〜60であるような量であり、好ましくは、該モル比が10〜40であるような量である。
【0041】
成分(a3)はヒドロシリル化反応触媒であり、成分(a1)および成分(a2)の付加反応を促進するための触媒である。該成分(a3)は白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。この白金系触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のケトン錯体、白金のビニルシロキサン錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末が例示され、これらのうちでは、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体,塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体,白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体,白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。
【0042】
かかる成分(a3)の配合量は、いわゆる触媒量である。具体的には白金族金属量で1〜1,000ppmであり、5〜200ppmの範囲にあることが好ましい。白金族金属量で1ppm未満であると、成分(a1)および成分(a2)の付加反応による本発明の構造体の硬化速度が著しく遅くなる。また、白金族金属量で1000ppmを超えると、必要な反応をそれ以上促進する効果が期待できず、多くの場合、不経済である。
【0043】
さらに、成分(a3)であるヒドロシリル化触媒は、非反応性の有機溶媒に分散させて系中に添加することが好ましく、非反応性の有機溶媒に分散させ、系中に滴下することが特に好ましい。該有機溶媒は、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジオキサン、THF等のエーテル系溶剤;脂肪族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、塩素化炭化水素系溶剤が例示される。最も好ましくは、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液を系中に滴下して使用することが出来る。なお、滴下に要する時間は、反応のスケールによって異なるが、急激な反応を防止する見地から、0.5時間〜5時間かけて一定量ずつ滴下することが好ましい。
【0044】
成分(B)は、電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子であり、本発明において、該金属粒子は、(b1) 1分子あたり少なくとも1個の珪素に結合した水素原子を有する1種類以上の有機珪素化合物と(b2) 下記組成式:
M、 [L−M]p+(Qq− または (Qq+[L−M]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
で示される1種類以上の金属化合物とを(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の非反応性の有機溶媒中において均一混合することにより得られた金属粒子であることを特徴とする。
【0045】
かかる金属粒子は、工業的生産過程において容易に調製することができる利点がある。
特に、該金属粒子は、成分(A)と別に調製するのみならず、前記の成分(a)である高分子前駆体が成分(b3)に可溶であれば、前記の成分(a)と前記の成分(b1)〜(b3)を均一に混合し、成分(a)が重合されてなる高分子中において、該金属粒子を形成させることができる。これにより、金属粒子は高分子からなる構造体(ポリマーマトリックス)中に均一に分散され、担持されることとなり、平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属ナノ粒子が高分子中に均一に分散した金属粒子分散構造体を、きわめて容易に製造することができるものである。
【0046】
成分(B)は、電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子(以下、「金属ナノ粒子」ということがある)であり、該金属粒子を構成する金属は、標準酸化還元電位が0.00Vより大きい1種類以上の金属である。具体的には、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)からなる群から選択される1種類以上の金属が例示される。
【0047】
該金属粒子の一次粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察により測定される。電子顕微鏡による一次粒子の観察は、公知の方法により10万倍から30万倍の倍率で可能である。特に粒子サイズ、形状を観察する場合、透過型の電子顕微鏡を用いることが好ましい。本発明の金属粒子の平均粒子径は、いわゆる金属ナノ粒子の粒子効果の点から、3〜1,000nmの範囲であり、光学的機能、表面改質機能、熱特性等の点から5〜500nmの範囲であることが好ましく、本発明においては、10〜100nmの金属粒子であっても、容易に調製することができるものである。
【0048】
該金属粒子は、成分(b1)であるSi−H結合を有する1種類以上の有機珪素化合物と成分(b2)である金属化合物とを(b3)であるジメチルポリシロキサンまたは非反応性の有機溶媒中において均一混合し、成分(b2)を成分(b1)により還元する反応によって容易に得ることができる。
【0049】
該還元反応は高分子からなる構造体(ポリマーマトリックス)の形成反応と同時に行なうことができる。さらに、成分(b1)〜(b3)および疎水性の高分子前駆体の混合物が、乳化剤および機械力によって水中に乳化されたエマルジョン粒子中においても、該還元反応により成分(B)である金属粒子を形成させることができる。
【0050】
成分(b1)は1分子あたり少なくとも1個の珪素に結合した水素原子を有する1種類以上の有機珪素化合物であり、分子中にSi−H結合を有することにより、還元作用を有する。すなわち、成分(b1)は還元剤である。本発明において、媒体である成分(b3)中において、成分(b2)である特定の有機配位子を有する1種類以上の金属化合物を、成分(b1)により還元し、0価の金属粒子を形成させる。
【0051】
該成分(b1)は、前記の成分(a2)である分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンのほか、1以上のSi−H結合を有するポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラザンの中から選ばれるものとすることができる。
【0052】
好適には、該成分(b1)は、前記の成分(a2)と同様のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを例示することができ、M単位とPhT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサン、M単位、M単位、D単位、D単位、Ph2D単位およびPhT単位からなる樹脂状オルガノポリシロキサン、M単位、D単位、D単位からなる鎖状オルガノポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、ジハイドロジェンテトラメチルジシロキサンが例示される。
【0053】
成分(b2)は、本発明の特徴的な成分の一つであり、下記組成式:
−M、[L−M]p+(Qq− または、 (Qq+[L−M]p−
で表される、特定の標準酸化還元電位を有する金属Mにn個の有機配位子Lが配位した構造を有する1種類以上の金属化合物である。かかる金属化合物を成分(b2)として用いる事により、還元前の陽電荷を有する金属イオンを、金属錯体の形態で、後述する成分(b3)である媒体中に溶解させることができる。かかる溶解状態の金属錯体を成分(b1)で還元することにより、平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子を容易に調製し、成分(b3)に均一分散させることができる。また、該金属粒子を、高分子からなる構造体(ポリマーマトリックス)に容易に均一分散させ、担持せしめることが可能になる。
【0054】
上記組成式において、Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンである。ここで、標準酸化還元電位は、2H + 2e ⇔ Hの半反応式で示される標準水素電極の電極電位を0.00Vと定義するものであり、Mは成分(b1)のSi−H結合の還元作用により0価の金属に還元される。したがって、Mは水素(H)よりも標準酸化還元電位が大きいものであれば、陽イオンの価数、種類により制限されるものではなく、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、水銀(Hg)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)からなる群から選択される1種類以上の金属の1価〜5価の陽イオンが例示される。より好適には、Cu2+,Ag,Au3+,Pt5+、またはこれらの金属イオンの混合物であり、最も好適には銅イオン(Cu2+)である。
【0055】
Lは、有機配位子であり、金属の陽イオンMと、配位数nの金属錯体([L−M],[L−M]p+ または[L−M]p−で表される構造)を形成することにより、成分(b3)中に、金属の陽イオンMを均一に溶解せしめることを目的として使用される。かかる有機配位子であるLとして、種々の有機溶媒に可溶な金属錯体を与える有機配位子が選択可能であり、炭素原子数2〜20のアルコール類、チオール類、脂肪族鎖状アミン類、芳香族アミン類、脂肪族環状アミン類、芳香族アミン類、ジケトン類、ケトエステル類、ヒドロキシケトン類およびカルボン酸アニオンを例示することができるが、これらに限定されるものではない。配位数nは、Mの種類およびLの配位座数によって異なるが、1〜6が一般的である。
【0056】
本発明において、成分(b2)との副反応がなく、金属錯体の安定性および成分(b3)中への溶解性に優れることから、Lがカルボン酸アニオン、脂肪族アミン類であることが好ましい。
【0057】
特に、LがR‐COOで表される炭素原子数2〜21のカルボン酸アニオン(式中、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基である)、R‐NH炭素原子数4〜20のアルキルアミン(式中、Rは炭素原子数4〜20のアルキル基である)、HN−R−NHで示されるアルキレンジアミン(式中、Rは炭素原子数2〜20のアルキレン基である)、ジケトン類またはジケトン類の共役塩基が好適である。
【0058】
Lは、より具体的には、アミノエチルアルコール等のアミノアルコール類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン等の1級アルキルアミン;フェニルアミン、ベンジルアミン等の芳香族アミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジ、アミンペンタン-1,2,5-トリアミン、ベンゼン-1,2,4,5-テトラアミン等の多価アミン;ピリジン、4−メチルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、メチルピペリジン、キノリン、イソキノリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、インドール、プリン、ビピリジン、コリジン、ベータピコリン等の脂肪族環状アミン類;アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類およびその共役塩基;アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類;ヒドロキシアセトン、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、ジアセトンアルコール等のヒドロキシケトン類;炭素原子数5〜10のアルキルカルボン酸アニオン(R−COO)が例示される。
【0059】
Qは[L−M]が電荷を有する場合の対イオンであり、前記の金属陽イオンMと配位子Lからなる金属錯体の電荷と逆の電荷を有する無機または有機イオンである。一般的には、Qが正電荷を有する対イオンとしてはプロトン(H)、アンモニウムイオン(NH)、ナトリウムイオン(Na)およびカリウムイオン(K)からなる群から選択される陽イオンが例示され、Qが負電荷を有する対イオンとしては硝酸イオン(NO)、塩化物イオン(Cl)、硫酸イオン(SO2−)および過塩素酸イオン(ClO)からなる群から選択される陰イオンが例示されるがこれらに限定されるものではない。また、後述する金属塩の対イオンが各々Qとして例示されうる。
【0060】
なお、Qは対イオンであるから、下記組成式:
[L−M]p+(Qq− または、(Qq+[L−M]p−
において、組成式全体としては電荷の総和は0である。従って、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。[L−M]が電荷を有しない場合には、Qは不要である。
【0061】
Mで示される金属錯体として、アセチルアセトン白金(II)(Pt(C)やラウリン酸銀(I)(AgOCOC1021)が例示される。
【0062】
以上、説明したような成分(b2)として、最も好適には、Cu2+,Ag,Au3+,Pt5+、またはこれらの金属イオンを含む金属塩の混合物と、R‐COOHで表される炭素原子数2〜21のカルボン酸(式中、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基である)、R‐NHで示される炭素原子数4〜20の1級アルキルアミン(式中、Rは炭素原子数4〜20のアルキル基である)、R2122NHで示される炭素原子数2〜20の2級アルキルアミン(式中、R21およびR22は各々独立に、炭素原子数2〜20のアルキル基である)、R222324Nで示される炭素原子数2〜20の3級アルキルアミン(式中、R22、R23およびR24は各々独立に、炭素原子数2〜20のアルキル基である)、HN−R−NHで示されるアルキレンジアミン(式中、Rは炭素原子数4〜20のアルキレン基である)、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類を後述する成分(b3)中で混合することにより容易に得ることができる。
【0063】
なお、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)または銅(Cu)の前記金属イオンMを含む金属塩は公知であり、特に限定されるものではないが、銅塩として、塩化銅、水酸化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅が例示される。同様に、銀塩として、塩化銀、硝酸銀、酢酸銀、AgBF4,AgClO4,AgPF,AgB(C,Ag(CFSO)が例示される。パラジウム塩として、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、Pd(OCOCFが例示される。白金塩として、塩化第一白金、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸カリウムが例示される。金塩として、NaAuCl,HAuCl,NaAuCl,NaAu(CN),NaAu(CN)等が例示される。本発明において最も好適には酢酸銅、硝酸銀、NaAuClである。
【0064】
成分(b3)は25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の非反応性の有機溶媒であり、上記成分(b1)および成分(b2)を均一に溶解せしめ、還元反応により、均一な金属微粒子を形成させる媒体である。
【0065】
かかる成分(b3)は、非反応性の有機溶媒であってよく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジオキサン、THF等のエーテル系溶剤;脂肪族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、塩素化炭化水素系溶剤が例示される。
【0066】
また、成分(b3)は、25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンであってもよく、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジメトキシポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンが例示される。
【0067】
成分(b1)の配合量は、成分(b2)中の金属陽イオンを、価数0の金属に還元しうる量であれば特に制限されるものではないが、成分(b2)の物質量に対して、成分(b1)の物質量が過剰であることが好ましい。すなわち、成分(b2)中の金属陽イオン 1モルに対する成分(b1)中の珪素原子結合水素(Si−H)のモル比が10以上であることが好ましく、同モル比が100〜100,000であることがより好ましい。成分(b3)の配合量は、成分(b1)および成分(b2)を均一に溶解しうる量であれば特に制限されるものではないが、成分(b1)および成分(b2)の重量の和を100重量部としたとき、成分(b3)は25〜1000重量部であることが好ましい。また、成分(b1)および成分(b2)を反応させる際には、各成分を別々に成分(b3)に溶解させ、均一混合することが、得られる金属ナノ粒子の均一性の点から特に好ましい。本還元反応により得られる反応後の組成物は、成分(b3)中に、平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子が安定に分散した金属粒子分散液であり、そのまま成分(A)に配合することができる。
【0068】
本発明にかかる金属粒子分散構造体は、高分子である成分(A)100重量部中に、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子0.005〜100重量部が分散していることを特徴とするものであり、前記の方法により得られた金属粒子を成分(A)に配合する方方は特に限定されるものではないが、成分(A)の前駆体である前記成分(a)中に、前記の成分(b3)である25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の非反応性の有機溶媒に予め調製した金属粒子分散液とを混合し、成分(a)を重合させることにより高分子である成分(A)中に金属粒子が分散した金属粒子分散構造体を得る方法が好適である。
【0069】
また、本発明の金属粒子分散構造体は、前記の成分(a)、(b1)〜(b3)を全て混合して反応させることにより、高分子である成分(A)100重量部中に、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子0.005〜100重量部が分散した金属粒子分散構造体を得ることができる。本発明の金属粒子分散構造体は、高分子である成分(A)100重量部中に、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子0.1〜50重量部が均一に分散した金属粒子分散構造体であることが好ましい。さらに、高分子である成分(A)100重量部中に、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子0.2〜30重量部が均一に分散した金属粒子分散構造体であることがより好ましい。
【0070】
特に、成分(A)がヒドロシリル化触媒の存在下における付加硬化型の架橋反応により得られたオルガノポリシロキサンである場合には、前記の成分(a1)、(a2)、(b2)、(b3)および(a3)を均一混合することにより、付加硬化型の架橋反応によりオルガノポリシロキサンを形成する過程で、該オルガノポリシロキサンからなるポリマーマトリックス中に(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子が均一に分散した金属粒子分散構造体を得ることができる。
【0071】
すなわち、前記同様の(a1)1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノシラン及び/またはオルガノシロキサン、(a2) 1分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(b2) 下記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物および(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサン及び/または1種類以上の有機溶媒を均一混合し、(a3) ヒドロシリル化反応触媒の存在下で架橋反応させることにより、本発明の金属粒子分散構造体を得ることができる。
【0072】
本発明の金属粒子分散構造体において、成分(a2)の好適な配合量は、成分(a1)中のアルケニル基1モルに対する成分(a2)中の珪素原子結合水素(Si−H)のモル比が、0.1〜10となる範囲である。成分(b2)の好適な配合量は、成分(a1)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲である。成分(b3)の好適な配合量は、成分(a1)100重量部に対して10〜100重量部であるが、各成分を均一に溶解するのに十分な量であれば特に制限されるものではない。また、成分(a3)の好適な配合量は、組成物全体量に対して、5〜500ppmとなる量である。
【0073】
本発明の金属粒子分散構造体は、以下の工程により得ることができる。第一に、成分(a1)に、成分(b3)中に均一に溶解した成分(b2)を加え、均一混合する工程である。第二に、さらに成分(a2)を加え、均一に混合する工程であり、この時点で金属の種類にもよるが金属ナノ粒子が混合物中に均一分散状態で形成される。最後に、該混合物に触媒である成分(a3)を加え、混合した後、加熱して硬化させる工程であり、揮発性の成分(b3)等はこの工程において加熱・減圧等の手段により除去されるものである。上記のような金属粒子分散構造体は、工業的生産過程において容易かつ大量に製造することが可能であるという利点がある。
【0074】
さらに、上記成分(a1)、(a2)、(b2)、(b3)および(a3)からなる組成物は、ヒドロシリル化反応遅延剤を添加することにより、該組成物の硬化により金属粒子分散構造体が形成されるまでの可使時間を延長し、保存安定性を向上することができる。かかる組成物は、金属粒子分散構造体からなる塗布被膜を有する物品製造に用いることができ、コーティング剤として極めて有用である。
【0075】
上記ヒドロシリル化反応遅延剤として、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示される。具体的には、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキニルンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケビニルシクロシロキサン;ベンゾトリアゾール;トリス(1,1−ジメチル−2−プロピノキシ)メチルシランが例示される。
【0076】
本発明の金属粒子分散構造体の形状は特に限定されるものはなく、板状、ペレット状、粒子状、繊維状、フィルム状のいずれの形状であってもよい。また、金属粒子分散構造体の硬化前に特定の形状に成形してもよく、硬化後に成形してもよい。本発明の金属粒子分散構造体の形状として特に好適には、フィルム状または粒子状である。
【0077】
フィルム状の金属粒子分散構造体は、硬化前の金属粒子分散構造体を薄膜状に塗布し、硬化させる方法によって得ることができ、また、硬化後の金属粒子分散構造体を成形することによっても得ることができる。該フィルム状の金属粒子分散構造体は、厚さ0.1μm〜10,000μmのフィルム状であることが好ましく、1〜5,000μmのフィルム状であることがさらに好ましく、50〜3,000μmのフィルム状であることが最も好ましい。
【0078】
また、上記成分(a1)、(a2)、(b2)、(b3)および(a3)からなる組成物(以下、架橋性オルガノポリシロキサン組成物という)を薄膜状に塗布し、室温あるいは加熱硬化させることによりフィルム状の金属粒子分散構造体を得ることができる。該組成物を塗工する方法は特に限定されるものではないが、工業的にはグラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、ロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンコート、コンマコート、スピンコートが例示される。
【0079】
また、上記架橋性オルガノポリシロキサン組成物は、テープ状基材またはシート状基材に塗工した後、室温もしくは50〜200℃の温度条件下で加熱することにより硬化させて、基材の表面の全部または一部を金属粒子分散構造体により、被覆することができる。かかる基材の種類として、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルムが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフォン(PES)等の耐熱性合成樹脂フィルムが好適である。
【0080】
次に、粒子状の金属粒子分散構造体について説明する。本発明の金属粒子分散構造体は、グラインドミル、ホバートミキサー等による機械力を用いて粉砕することにより、所望の粒子径を有する粒子状の金属粒子分散構造体を製造することができる。
【0081】
さらに、本発明の粒子状の金属粒子分散構造体は、成分(A)がヒドロシリル化触媒の存在下における付加硬化型の架橋反応により得られたオルガノポリシロキサンである場合には、以下に述べる高分子前駆体・金属粒子分散体の混合物を水中に乳化し、架橋反応させる方法によっても容易に得ることができる。
【0082】
すなわち、前記同様の(a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(a2) 1分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(b2) 下記組成式:
M、 [L−M]p+(Qq− または、 (Qq+[L−M]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは[L−M]が電荷を有する場合の対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
で示される1種類以上の金属化合物、(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンおよび(a3) ヒドロシリル化反応触媒からなる混合物を、(C)乳化剤の存在下で(D)水中に乳化し、水中で架橋反応させることにより、本発明の粒子状の金属粒子分散構造体を含む水系分散液を得ることができるものである。
【0083】
成分(a1)、(a2)、(b2)、(b3)および(a3)は前記同様の成分である。上記粒子状の金属粒子分散構造体の製造方法においては、成分(a1)、(a2)、(b2)および(b3)からなる混合物を、(C)乳化剤の存在下で(D)水中に乳化し、成分(a3)を添加した後、水中に分散状態の架橋性オルガノポリシロキサン組成物を加熱したり、あるいは室温で静置することによって、ヒドロシリル化反応を進行させて粒子状の金属粒子分散構造体を含む水系分散液を得るものである。
【0084】
本発明の粒子状の金属粒子分散構造体の製造方法において、架橋性オルガノポリシロキサン組成物を(C)乳化剤の存在下で(D)水中に分散させる方法は限定されないが、水中に分散している架橋性オルガノポリシロキサン組成物の平均粒径が0.1μm〜1,000μmの範囲内、好ましくは0.2〜500μmの範囲内となるように効率よく分散させるためには、ホモミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモディスパー、コロイドミキサー、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー、インライン式連続乳化機、超音波乳化機、真空式練合機等の混合装置を用いることが好ましい。
【0085】
成分(C)は乳化剤であり、特に水中油型エマルジョンの製造に通常用いられるものであれば特に限定されない。これには、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の併用がある。架橋性オルガノポリシロキサン組成物と水を混合することにより製造される水中油型エマルジョンの均一分散性および安定性の見地から、1種類以上のイオン性界面活性剤と1種類以上のノニオン性界面活性剤の併用が好ましい。
【0086】
イオン性界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤がある。アニオン性界面活性剤として、飽和もしくは不飽和高級脂肪酸塩(例えば、ラウリン酸ナトリウム,ステアリン酸ナトリウム,オレイン酸ナトリウム,リノレン酸ナトリウム等),長鎖アルキル硫酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸(例えば、ヘキシルベンゼンスルホン酸,オクチルベンゼンスルホン酸,ドデシルベンゼンスルホン酸等)およびその塩,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩,スルホコハク酸アルキルエステル塩,ポリオキシアルキレンスルホコハク酸塩,ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩,ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンのスルホコハク酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩,長鎖アルカンスルホン酸塩,長鎖アルキルスルホネート,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩,長鎖アルキルリン酸塩,ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩,アシルグルタミン酸塩,α−アシルスルホン酸塩、長鎖アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、長鎖α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、長鎖アルカンスルホン酸塩、長鎖アルキルまたはアルケニル硫酸塩、長鎖アルキルアミド硫酸塩、長鎖アルキルまたはアルケニルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体が例示される。上記の塩として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩が挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。
【0087】
カチオン性界面活性剤として、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化牛脂アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジ(POE)オレイルメチルアンモニウム(2EO)、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルベンザルコニウム,塩化アルキルジメチルベンザルコニウム,塩化ベンゼトニウム,塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ラノリン誘導四級アンモニウム塩、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化ベヘニン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、塩化ステアロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化トール油アルキルベンジルヒドロキシエチルイミダゾリニウム、ベンジルアンモニウム塩が例示される。
【0088】
両性界面活性剤として、リン脂質が例示され、好ましい。リン脂質として、レシチン、ホスフアチジルエタノールアミン、ホスフアチジン酸、ホスフアチジルイノシトール、ホスフアチジルセリン、ホスフアチジルコリン、ホスフアチジルグリセロール、スフインゴミエリン、カルジオリピン、これらの水素添加物が例示される。特に大豆レシチン、卵黄レシチン、コーンレチシン、綿実油レシチン、ナタネレシチン等を水素添加した水素添加天然レシチンが好ましい。
【0089】
ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシアルキレンエーテル類,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類,ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類,ポリオキシアルキレン脂肪酸ジエステル類,ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル類,ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油類,ポリオキシアルキレンアルキルフェノール類,ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類,ポリオキシアルキレンフェニルフェニルエーテル類,ポリオキシアルキレンアルキルエステル類,ポリオキシアルキレンアルキルエステル類,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル類,ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類,ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル類,ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類,ポリグリセリンアルキルエーテル類,ポリグリセリン脂肪酸エステル類,ショ糖脂肪酸エステル類,脂肪酸アルカノールアミド,アルキルグルコシド類,ポリオキシアルキレン脂肪酸ビスフェニルエーテル類,ポリプロピレングリコール,ポリエーテル変性シリコーン、すなわち、ポリオキシアルキレン変性ジオルガノポリシロキサン,ポリグリセリル変性シリコーン,グリセリル変性シリコーン,糖変性シリコーン,パーフルオロポリエーテル系界面活性剤,ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー,アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーエーテルが例示される。
【0090】
成分(D)は水であり、清浄であればよく、水道水、精製水、ミネラルウォーターが例示される。また、水溶性のイオン性界面活性剤等の水溶性成分を、予め水に分散させて配合することが可能である。
【0091】
本発明の粒子状の金属粒子分散構造体を含む水系分散液において、成分(a2)の好適な配合量は、成分(a1)中のアルケニル基1モルに対する成分(a2)中の珪素原子結合水素(Si−H)のモル比が、0.1〜10となる範囲である。成分(b2)の好適な配合量は、成分(a1)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲である。成分(b3)の好適な配合量は、成分(a1)100重量部に対して10〜100重量部の範囲である。成分(C)の使用量は、成分(a1)、(a2)、(b2)および(b3)からなる混合物 100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲であることが好ましく、特には、0.5〜10重量部の範囲であることが好ましい。また、成分(D)の使用量は任意であり、特に限定されないが、水系分散液全体の5〜99重量%の範囲内であることが好ましく、特には、10〜80重量%の範囲内であることが好ましい。触媒である成分(a3)の好適な配合量は、水系分散液の全体量に対して、1〜1000ppmとなる量である。
【0092】
本発明の粒子状の金属粒子分散構造体は、上記の架橋性オルガノポリシロキサン組成物を、(C)乳化剤の存在下で(D)水中に乳化し、成分(a3)を添加した後、30〜90℃の範囲で加熱あるいは室温(10〜25℃)で静置することによって、ヒドロシリル化反応を進行させて粒子状の金属粒子分散構造体を含む水系分散液を得ることができる。
【0093】
上記の方法により得られた粒子状の金属粒子分散構造体を有する水系分散液から水を除去すると、成分(B)である金属粒子が架橋性オルガノポリシロキサン中に均一に分散した構造を有する金属粒子分散構造体からなる均一な球状粒子を得ることができる。
【0094】
本発明の粒子状の金属粒子分散構造体は、実体顕微鏡観察による平均粒子径または動的光散乱式粒径分布測定による平均粒子径が0.01〜1000μmの範囲にあるものであり、好適にはレーザー回折・散乱法により測定した平均粒子径が0.1〜10μmの範囲にあるものである。すなわち、試料セル内に、粒子状の金属粒子分散構造体を分散媒中に分散させた測定試料を収容し、この測定試料に対してレーザ光を照射し、前記粒子により散乱された光の周波数強度分布に基づいて粒径分布を求める粒径分布測定により決定された平均粒子径が0.1〜10μmの範囲にあるものである。
【0095】
本発明の製造方法により得られた粒子状の金属粒子分散構造体およびその水系分散液は、電子材料、化粧品原料、塗料の原料、コーティング剤の原料および熱可塑性樹脂添加成分、繊維の原料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0097】
下記の実施例および比較例において、金属ナノ粒子の分析、光学的特性の測定は以下の方法で行った。また、粒子状金属粒子分散構造体の粒子径、金属粒子分散構造体中の金属ナノ粒子の分析、光学特性は以下の方法で測定した。
【0098】
[金属ナノ粒子の粒子径、分散構造]
実施例および比較例において、各金属ナノ粒子の粒子径や分散構造は下記の通り透過型電子顕微鏡により同定した。
透過型電子顕微鏡(型番):JEOL 2100F TEM
観察方法: 観察試料は、−60℃において低温ミクロトームにより薄切し、電子透過可能な切片として、炭素フィルムで被覆した銅TEMグリッド上に設置した。同観察試料は、200KeVで動作する明視野の透過型電子顕微鏡(JEOL 2100F TEM)を用いてその形態を観察した。
【0099】
[金属粒子分散構造体中の金属ナノ粒子の電子状態]
実施例および比較例において、金属粒子分散構造体中の金属ナノ粒子の電子状態はX線光電子分光(XPS)分析により、サンプル表面にX線を照射し、生じる光電子のエネルギーを測定することにより確認した。
X線光電子分光(XPS)分析装置:Kratos Analytical AXIS 165 ESCA(島津製作所製)
X線光源:単色化AlkαX線(260W)
測定条件:3点法により、O 1, C 1s, Si 2p および金属スペクトルを測定した。なお、低エネルギーエレクトロンフラッドにより試料表面の電荷補償を行なった。
【0100】
[金属ナノ粒子の状態]
実施例および比較例において、金属ナノ粒子が粒子状態であって、層構造を有しないことは、紫外線(UV)分光分析により、そのUV-Visスペクトルにおいて金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴に由来するシャープな光吸収を有することにより確認した。
UV/VIS表面・界面分光光度計:分光光度計UV3100PC(島津製作所)
測定条件:金属ナノ粒子を含むシリコーンレジンフィルム、或いは有機溶媒に分散した金属ナノ粒子の分光透過率は、同分光光度計を用い、合成石英をレファレンスとして測定した。
【0101】
[粘度]
各オルガノポリシロキサンの粘度は、25℃においてデジタル表示粘度計(芝浦システム株式会社製のビスメトロンVDA2型)にロータNo.1を装着し、所定のロータ回転数(6回/分)で測定した。
【0102】
[実施例1]
(a1−1) 平均組成式:[(CH=CH)(CH)SiO2/20.10[(CHSiO2/20.15[(C)SiO3/20.75で示されるビニル基を有するオルガノシロキサン樹脂 5.11g、
(a1−2) 分子式:[(CH=CH)(CHSiO1/2[(CSiO2/2]で示されるビニル基を有するオルガノシロキサン 2.02g、
(a1−3) 分子式:[(CH=CH)(CHSiO1/2[(C)SiO3/2]で示されるビニル基を有するオルガノシロキサン 2.02g、
(a2)平均組成式[H(CHSiO1/20.6[(C)SiO3/20.4で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン樹脂 5.74g、
(a3)白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体 0.002g、
(b3−1)トルエン 5.11g および トリス(1,1−ジメチル−2−プロピノキシ)メチルシラン 0.02gからなる架橋性オルガノポリシロキサン組成物に、
(b2)ラウリン酸銀(AgOCOC1021)0.05gを(b3−2)トルエン2.0gに分散させた金属錯体のトルエン溶液を添加し、攪拌することにより均一に混合した。
【0103】
上記混合物をアルミナカップに4mmの厚さになるように塗布し、1時間の間、150度で加熱することにより、硬化させ、オルガノポリシロキサン中に銀ナノ粒子が均一に分散した構造を有する、本発明の金属分散構造体を作成した。該金属分散構造体は、濃い黄色の厚さ2mmのフィルム(フィルム1)であった。
【0104】
フィルム1のUVスペクトルを測定した結果、銀粒子のプラズモン由来の吸収(波長420nm)が観測された。また、フィルム1の透過電子顕微鏡による観察結果を図1に示す。透過電子顕微鏡による観察の結果、フィルム1には、一次粒子の平均粒径20nmの銀ナノ粒子が上記ポリシロキサン樹脂の表面および内部に均一分布していることが確認された。またXPSによれば、銀原子の3d電子の結合エネルギーを示すスペクトルは368eV近辺に観測され、また、珪素原子の2p電子の場合は103eV近辺に観測された。
【0105】
[実施例2]
(A):(a1−1) 平均組成式:[(CH=CH)(CHSiO1/20.25[(C)SiO3/20.75で示されるビニル基を有するオルガノシロキサン樹脂 20.0g、
(a2−1) 分子式:[H(CHSiO1/2[(CSiO2/2]で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン 3.93g、
(a2−2) 分子式:[H(CHSiO1/2[(C)SiO3/2]で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン 3.93gを均一に混合した。
該混合物に、別途調製した「(b2)NaAuCl 0.25gとヘキシルアミン(C13NH) 0.14gに、(b3−1)トルエン 10.0gを加えて均一に溶解させた[金(III)−ヘキシルアミン錯体]を含むトルエン溶液」を添加し、攪拌することにより均一に混合した。この混合液を80度2時間保持してから室温に戻した。この混合物に(a3)白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体 0.01g、(b3−2)トルエン 10.0gおよびトリス(1,1−ジメチル−2−プロピノキシ)メチルシラン 0.1gからなる架橋性オルガノポリシロキサン組成物を加え、よく混合した。
【0106】
上記混合物をアルミナカップに4mmの厚さになるように塗布し、1時間の間、150度で加熱することにより、硬化させ、オルガノポリシロキサン中に金ナノ粒子が均一に分散した構造を有する、本発明の金属分散構造体を作成した。該金属分散構造体は、菫色(すみれいろ)を帯びた厚さ2mmのフィルム(フィルム2)であった。
【0107】
フィルム2のUVスペクトルを測定した結果、金粒子のプラズモン由来の吸収(波長520nm)が観測された。また、フィルム2の透過電子顕微鏡による観察では、一次粒子の平均粒径10nmの金ナノ粒子が上記ポリシロキサン樹脂の表面および内部に均一分布していることが確認された。またXPSによれば、金原子の4f電子の結合エネルギーを示すスペクトルは84eV近辺に観測され、また、珪素原子の2p電子の場合は103eV近辺に観測された。
【0108】
[実施例3]
(a1−1) 平均組成式:[(CH=CH)(CH)SiO2/20.10[(CHSiO2/20.15[(C)SiO3/20.75で示されるビニル基を有するオルガノシロキサン樹脂 5.11g、
(a1−2) 分子式:[(CH=CH)(CHSiO1/2[(CSiO2/2]で示されるビニル基を有するオルガノシロキサン 2.02g、
(a1−3) 分子式:[(CH=CH)(CHSiO1/2[(C)SiO3/2]で示されるビニル基を有するオルガノシロキサン 2.02g、
(a2)平均組成式[H(CHSiO1/20.6[(C)SiO3/20.4で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン樹脂 5.74gを均一混合した。
該混合物に、別途調製した「(b2)塩化銅(CuCl)0.05gとヘキシルアミン(C13NH) 0.10gに、(b3−1)トルエン 5gを加えて均一に溶解させた[銅(II)−ヘキシルアミン錯体]を含むトルエン溶液」を添加し、窒素中攪拌することにより均一に混合し、80度で3時間保持した後室温に戻した。上記の混合物に(a3)白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体 0.002g、(b3−2)トルエン 5.11gおよびメトリス(1,1−ジメチル−2−プロピノキシ)メチルシラン 0.02gからなる架橋性オルガノポリシロキサン組成物を加えて混合した。
【0109】
上記混合物をアルミナカップに4mmの厚さになるように塗布し、1時間の間、150度で加熱することにより、硬化させ、オルガノポリシロキサン中に銅ナノ粒子が均一に分散した構造を有する、本発明の金属分散構造体を作成した。該金属分散構造体は、濃い茶色の厚さ2mmのフィルム(フィルム3)であった。
【0110】
フィルム3のUVスペクトルを測定した結果、銅粒子のプラズモン由来の吸収(波長570nm)が観測された。また、フィルム3の透過電子顕微鏡による観察では、一次粒子の平均粒径10nmの銅ナノ粒子が上記ポリシロキサン樹脂の表面および内部に均一分布していることが確認された。
【0111】
[実施例4]
(a1)粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 18.8重量部、(b1)酢酸銀(AgOCOCH) 0.15重量部、(b3)粘度100mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 80重量部の混合物に、(a2)粘度30mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.5重量%) 1.4重量部を添加して、1時間攪拌し、均一に混合した。得られた混合物は、銀ナノ粒子を含む濃黄色の架橋性オルガノポリシロキサン組成物であった。
【0112】
次いで、この架橋性シリコーン組成物1の全量に、(C&D−1)3重量%−ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB=13.1)水溶液 53重量部を加え、コロイドミルにより乳化した。さらに(D)純水50重量部を加えて希釈することにより架橋性オルガノポリシロキサン組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0113】
別に調製しておいた、(a3)白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン錯体を主成分とする白金系触媒の水系エマルジョン(白金系触媒の平均粒径=0.05μm、白金金属濃度=0.05重量%)を、上記の架橋性シリコーン組成物の水系エマルジョンに、このエマルジョン中の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンに対して、白金金属が重量単位で20ppmとなる量、均一に混合した。
【0114】
上記水系エマルジョンを室温で架橋させることにより、水中に分散している(b3)粘度100mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンの液滴中に、銀ナノ粒子を含む架橋シリコーン粒子(粒子状の金属粒子分散構造体)が分散している水系エマルジョンを調製した。
【0115】
エバポレーションより水を除去したところ、黄色いクリーム状のジメチルポリシロキサン組成物を得た。このジメチルポリシロキサン組成物を実体顕微鏡で観察したところ、成分(b3)であるシリコーンオイル中に架橋シリコーン粒子が均一に分散しており、この架橋シリコーン粒子の形状が球状であることがわかった。
透過型電子顕微鏡で更に詳細に観測したところ、銀ナノ粒子は球状の架橋シリコーン粒子の表面及び内部に均一に分散した構造を形成していた。
【0116】
[実施例5]
(a1)粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン93.8gに、別途調製した「(b1)Cu(OCOCH)2・H2O 1.00gとヘキシルアミン(C13NH) 1.01gに、(b2)トルエン 15gを加えて均一に溶解させた[銅(II)−ヘキシルアミン錯体]を含むトルエン溶液」を添加し、窒素中で攪拌することにより均一に混合した。該混合物に粘度45mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.3重量%)6.2gと1,3−ジハイドロジェン−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1.0gを混合して架橋性シリコーン組成物を調製した後、80度で3時間保持した後室温に戻した。その後2.3重量%−ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテル(HLB=14.5、三洋化成工業株式会社製のサンノニックSS120)の水溶液87gを加え、次いで、ホモディスパー(回転数=500rpm)により乳化して架橋性シリコーン組成物の水系エマルジョンを調製した。
次に別に調製しておいた、(a3)白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を主成分とする白金系触媒の水系エマルジョン(白金系触媒の平均粒径=0.05μm、白金金属濃度=0.05重量%)を、上記の架橋性シリコーン組成物の水系エマルジョンに、このエマルジョン中の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンに対して、白金金属が重量単位で20ppmとなる量、均一に混合した。
【0117】
この水系分散液の一部を採取して、水を除去することにより架橋シリコーン粒子を得た。この架橋シリコーン粒子は、銅ナノ粒子が均一に分散した構造を有する濃い茶色の平均粒径が約50μmであり、均一な構造を有し、べたつきがなかった。
【0118】
[比較例1]
「(b2)ラウリン酸銀(AgOCOC1021)0.05gを(b3−2)トルエン2.0gに分散させた金属錯体のトルエン溶液」を添加しない以外は、実施例1と同様にして架橋性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させ、銀ナノ粒子を含まない厚さ2μmのフィルムを作成した。該フィルム上に、米国特許第3615272号明細書の方法によって製造された水素シルセスキオキサン樹脂 (HSiO3/2)nを塗布した後、硝酸銀(AgNO3)水溶液とエチレンジアミンからなる混合液に浸漬し、無電解メッキを行ったところ表面が銀金属の色となり、該フィルム上に銀(Ag)が析出した。走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製 FESEM JEOL JSM-6335F Field Emission Scanning Electron Microscope、加速電圧15kV)で観察した外観を図2に示す。該フィルム上の銀は、無定形の状態となっていた。また、実施例1と異なり、銀ナノ粒子のプラズモン由来の吸収(波長420nm)は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明にかかる金属粒子分散構造体は高分子からなる構造体(ポリマーマトリックス)中に、平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある均一な金属ナノ粒子が、均一に分散・担持された構造を有するため、金属微粒子が本来もっている様々な機能、例えば、抗菌性、防カビ性、防臭性、難燃性、紫外線防止、表面性の改善、意匠性の付与、化粧品、触媒機能の付与、導電性、防錆性、潤滑性、磁性、光反射性、光選択吸収、熱吸収、熱伝導、熱反射等の諸機能を有するポリマーとすることができる。これらの諸機能を備えた高機能ポリマー材料は、技術的特性を活用できる繊維、フィルム、バインダー、塗料、接着剤、センサー、樹脂、電気電子、化粧品、自動車、ガラスコーティング、食品用容器、衛生品などの各種分野に用いることができる。さらに、本発明にかかる金属粒子分散構造体の製造方法は、工業的生産過程において該金属粒子分散構造体を容易かつ大量に製造できるという利点があり、本発明にかかる金属粒子分散構造体を利用した製品群を、安定して市場に供給することが可能である点でも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】実施例1において、得られたシリコーンレジンフィルム中の銀のナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図2】比較例1において、硝酸銀(AgNO3)水溶液とエチレンジアミンからなる混合液に浸漬し、無電解メッキを行なったシリコーンレジンフィルム表面上の銀の析出層表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)反応性官能基を有する高分子前駆体 を重合させてなる高分子100重量部中に、(B)電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径が3〜1,000nmの範囲にある金属粒子0.005〜100重量部が分散していることを特徴とする金属粒子分散構造体であって、該金属粒子が、
(b1) 1分子あたり少なくとも1個の珪素に結合した水素原子を有する1種類以上の有機珪素化合物と(b2) 下記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物とを(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の有機溶媒中において均一混合することにより得られた金属粒子であることを特徴とする金属粒子分散構造体。
組成式(1):LM, [LM]p+(Qq− または (Qq+[LM]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
【請求項2】
前記成分(a)が架橋可能なオルガノシラン及び/またはオルガノシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物であり、前記成分(A)が該有機珪素化合物を架橋させてなる有機珪素系高分子である請求項1に記載の金属粒子分散構造体。
【請求項3】
成分(b2)が、前記組成式(1)において、Mが銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)からなる群から選択される1種類以上の金属の陽イオンであり、Lが炭素原子数2〜20のアルコール類、チオール類、脂肪族鎖状アミン類、脂肪族環状アミン類、芳香族アミン類、ピリジン誘導体、ジケトン類、ケトエステル類、ヒドロキシケトン類およびカルボン酸アニオンからなる群から選択される1種類以上の有機配位子であることを特徴とする請求項1に記載の金属粒子分散構造体。
【請求項4】
(a)架橋可能な構造を有する高分子前駆体、(b1) 1分子あたり少なくとも1個の珪素に結合した水素原子を有する1種類以上の有機珪素化合物および(b2) 下記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物を(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンまたは1種類以上の有機溶媒中において均一混合し、成分(a)を架橋反応させてなることを特徴とする請求項1に記載の金属粒子分散構造体の製造方法。
組成式(1): LM、[LM]p+(Qq− または、 (Qq+[LM]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
【請求項5】
前記成分(A)が、(a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノシラン及び/またはオルガノシロキサンと、(a2) 分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを(a3) ヒドロシリル化反応触媒の存在下に架橋させてなるオルガノポリシロキサンである請求項1または請求項2に記載の金属粒子分散構造体。
【請求項6】
(a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノシラン及び/またはオルガノシロキサン、(a2) 1分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(b2) 前記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物および(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサン及び/または1種類以上の有機溶媒を均一混合し、(a3) ヒドロシリル化反応触媒の存在下で架橋反応させてなる請求項1に記載の金属粒子分散構造体の製造方法。
【請求項7】
成分(b2)が、前記組成式において、Mが白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の金属の陽イオンであり、LがR−COOで示される1価のカルボン酸アニオン(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基)、R−NHで示されるアミン類(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数4〜20のアルキル基)、HN−R−NHで示されるアルキレンジアミン類(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数4〜20のアルキレン基)であり、Qが正電荷を有する対イオンとしてはプロトン(H)、アンモニウムイオン(NH)、ナトリウムイオン(Na)およびカリウムイオン(K)からなる群から選択される陽イオンであり、Qが負電荷を有する対イオンとしては硝酸イオン(NO)、塩化物イオン(Cl)、硫酸イオン(SO2−)および過塩素酸イオン(ClO)からなる群から選択される陰イオンであることを特徴とする金属化合物である請求項1に記載の金属粒子分散構造体。
【請求項8】
厚さ0.1μm〜10,000μmの塗布層状もしくはフィルム状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属粒子分散構造体。
【請求項9】
実体顕微鏡観察による平均粒子径または動的光散乱式粒径分布測定による平均粒子径が0.01〜1000μmの範囲にある粒子状の金属粒子分散構造体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属粒子分散構造体。
【請求項10】
(a1) 1分子あたり2個以上のアルケニル基を有するオルガノシロキサン、(a2) 1分子あたり2個以上の珪素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(b2) 下記組成式(1)で示される1種類以上の金属化合物、(b3) 25℃における粘度が1000mPa・s以下の環状もしくは鎖状のジメチルポリシロキサンおよび(a3) ヒドロシリル化反応触媒を(C)乳化剤の存在下で水中に乳化し、水中で架橋反応させてなる請求項9に記載の粒子状の金属粒子分散構造体の製造方法。
組成式(1): LM、[LM]p+(Qq− または、 (Qq+[LM]p−
(Mは標準酸化還元電位が0.00Vより大きい金属の陽イオンであり、Lは有機配位子であり、Qは対イオンであり、nは金属原子一個あたりに配位した有機配位子Lの個数であり、p,q,rは、p=q×rの関係を満たす数である。)
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属粒子分散構造体によって被覆された物品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−108312(P2009−108312A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261301(P2008−261301)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】