説明

金属粒子及び導電性重合体からなる複合体、およびその製造方法

【課題】本発明は、導電性に優れた金属粒子及び導電性重合体からなる複合体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】((1)ピロール及び/又はピロール誘導体と、
(2)銀イオン含有溶液
とを混合することにより、銀イオンが還元されて微粒子を形成すると同時にピロール及び/又はピロール誘導体が重合体を形成することを特徴とする、
銀粒子及び導電性重合体からなる複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子及び導電性重合体からなる複合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリピロールは、加工性のよさから、電気、電子工業の各種デバイス(例えば、配線、燃料電池、コンデンサー等)において、導電性材料、あるいは光学材料として広く利用されている。実用化に耐えられるように、導電性高分子の導電性、加工性等をより向上させるために新規な導電性高分子材料の開発が行われている。
【0003】
例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子に、保護剤で被覆された金属ナノ粒子を含む導電性高分子複合体が提案されている(特許文献1)。また、貴金属錯体を重合酸化剤として使用して導電性高分子の重合反応を行うと共に、当該金属錯体の還元により生成した貴金属系触媒を当該導電性高分子に1段階の工程で担持させる、導電性高分子複合体が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−95688号公報
【特許文献2】特開2004−359724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の複合体は、ポリピロール等の導電性高分子と金属ナノ粒子が単に混合されているにすぎず、このような複合体では電気抵抗に関して問題がある。
【0006】
また、特許文献2の複合体は、貴金属として白金を開示しており、この白金担持導電性高分子は、メタノール酸化等の触媒として使用することを目的としている。具体的には、原料であるHPtCl・6HOの濃度を非常に低く設定することによって、ポリピロール中に平均粒子径2nmの白金粒子を均一分散状態にて担持させて、触媒量の低減、あるいは高い触媒活性の維持が達成されることが記載されている。しかしながら、このような白金担持導電性高分子では、白金粒子の粒子径が非常に小さく、しかも白金粒子自体は均一に分散して存在するため、配線等の導電体として使用する場合、電気抵抗に関して問題がある。
【0007】
従って、導電性に優れた金属粒子及び導電性重合体からなる複合体の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、分子レベルの導電性重合体と金属粒子が複合体を形成し、かつ導電性に極めて優れた複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の金属イオンを酸化剤として金属粒子及び導電性重合体からなる複合体を製造する場合には、分子レベルのポリピロール系重合体と金属原子が複合体を形成し、上記金属粒子(金属原子)が均一分散状態ではなく、ポリピロール系重合体の表面に局在しているため、導電性に極めて優れた複合体が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の金属粒子及び導電性重合体からなる複合体およびその製造方法に関する。
1. (1)ピロール及び/又はピロール誘導体と、
(2)銀イオン含有溶液
とを混合することにより、銀イオンが還元されて微粒子を形成すると同時にピロール及び/又はピロール誘導体が重合体を形成することを特徴とする、
銀粒子及び導電性重合体からなる複合体の製造方法。
2. 前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または前記(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対して、さらにp−トルエンスルホン酸(PTS)、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(PTS−Na)、過塩素酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、アントラキノンβスルホン酸、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム、エチルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、プロピルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノンスルホン酸及びカンファースルホン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する、上記項1に記載の製造方法。
3. 水を含有する溶媒中で前記銀粒子及び導電性重合体からなる複合体を形成する、上記項1又は2に記載の製造方法。
4. 前記溶媒中における前記銀イオンの濃度が、0.05〜2mol/Lである、上記項3に記載の製造方法。
5. 前記溶媒中における前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体の濃度が、0.05〜0.9mol/Lである、上記項3又は4に記載の製造方法。
6. 前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体1molに対して、前記銀イオン1〜3.5molを反応させる、上記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7. 前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対して、分散剤を含有する、上記項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
8. 上記項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって得られた、銀粒子及び導電性重合体からなる複合体。
【0011】
以下、本発明の金属粒子及び導電性重合体からなる複合体およびその製造方法に関して詳細に説明する。
1.金属粒子及び導電性重合体からなる複合体の製造方法
本発明の金属粒子及び導電性重合体からなる複合体(以下、複合体とする)の製造方法によれば、(1)ピロール及び/又はピロール誘導体と、(2)銀イオン含有溶液とを混合することにより、銀イオンが還元されて微粒子を形成すると同時にピロール及び/又はピロール誘導体が重合体を形成し、結果として、複合体を得ることができる。
【0012】
(1)ピロール及び/又はピロール誘導体
本発明における複合体の製造方法では、原料としてピロール及び/又はピロール誘導体を使用する。なお、ピロール誘導体とは、ピロール骨格を有する化合物をさす。例えば、下記一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
(R、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルカルボニル基、炭素数1〜6のアルケニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のカルボキシルアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基又はスルホン酸基である。R及びRは、水素原子である。)で表されるピロール誘導体が挙げられる。より具体的には、N−メチルピロール、3−メチル−4−カルボキシオクチルピロール、3-メチル−4−カルボキシベンジル−ピロール、3−エチル−4−カルボキシヘキシル−ピロール、3−ブチル−4−カルボキシヘキシル−ピロール等が挙げられる。
【0015】
ピロール及び/又はピロール誘導体の中で、ピロールが好ましい。
【0016】
なお、本発明において、ピロール及び/又はピロール誘導体は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
本発明では、ピロール及び/又はピロール誘導体の純物質と、後述する銀イオン含有溶液とを混合することにより、本発明の複合体を得ることができるが、前記ピロール及び/又はピロール誘導体を溶媒中に分散させて、ピロール及び/又はピロール誘導体含有溶液としてもよい。前記溶媒(以下、溶媒Aとする)としては、水、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン等を使用することができる。前記溶媒Aは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
(2)銀イオン含有溶液
本発明における複合体の製造方法では、原料として銀イオン含有溶液を使用する。
【0019】
銀イオン含有溶液には、銀イオンの供給源として、各銀の塩(銀塩)を使用することができる。銀塩としては、塩化銀、硝酸銀、四フッ化ホウ素銀、六フッ化リン銀、酸化銀、酢酸銀、トリフルオロ硫酸銀、過塩素酸銀等を使用することができる。中でも、硝酸銀が好ましい。前記銀塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
銀イオン含有溶液は、溶媒中に銀イオンが存在すれば特に限定されないが、前記銀塩を溶媒に溶かすことによって得ることが好ましい。前記溶媒(以下、溶媒Bとする)としては、水、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン等を例示することができる。特に、水を含有する溶媒が好ましい。なお、前記溶媒Bは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
その他の成分
本発明における複合体の製造方法では、(1)ピロール及び/又はピロール誘導体、及び(2)銀イオン含有溶液の他、ドーパント、分散剤、担持剤等を使用することができる。前記ドーパント、分散剤、担持剤等は、前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対して含有させることができ、前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体、並びに(2)銀イオン含有溶液のいずれに含有させてもよい。なお、前記ドーパント、分散剤、担持剤等を(1)ピロール及び/又はピロール誘導体に含有させる際には、ピロール及び/又はピロール誘導体が重合しない範囲で含有すればよい。
【0022】
前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対してドーパントを含有することにより、導電性高分子自身の導電性が向上するとともに、形成された複合体中の銀(銀粒子)が複合体全体に導電性が付与される程度に適度に分散する。そのため、複合体に対してより優れた導電性を付与することができる。
【0023】
ドーパントとしては、p−トルエンスルホン酸(PTS)、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(PTS−Na)、過塩素酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、アントラキノンβスルホン酸、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム、エチルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、プロピルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノンスルホン酸、カンファースルホン酸等が挙げられる。中でも、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、アントラキノンβスルホン酸、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゾフェノンスルホン酸、過塩素酸及びカンファースルホン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。なお、これらのドーパントは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
なお、本発明の複合体の製造方法によれば、後述するpH調整剤によってpHを適宜調整することが可能であるが、上記ドーパント(例えば、p−トルエンスルホン酸等)がpH調整剤としての機能を有する場合がある。この場合、適宜ドーパント使用量を設定することにより、pHを調整しつつドーパントとしての機能を有することができる。
【0025】
ドーパントは、単独で(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または(2)銀イオン含有溶液に含有することができるが、溶媒に分散させた状態で含有することが好ましい。ドーパントを分散させる溶媒としては、前記溶媒A又はBと同様の溶媒が例示され、中でも水を含む溶媒が好ましい。
【0026】
ドーパントを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、使用する(1)ピロール及び/又はピロール誘導体1molに対して0.02mol以上が好ましく、0.05〜0.15molがより好ましい。
【0027】
前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対して分散剤を含有することにより、複合体が微粒子化し、均質化しやすくなる。そのため、複合体を微粒子化させたい場合には、前記分散剤を使用すると良い。
【0028】
分散剤としては、ネオペレックスGS(アルキルベンゼンスルホン酸)、ネオペレックスG−65(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ペレックスOT−P(ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム)、ドデシル硫酸ナトリウム等を使用することができる。
【0029】
分散剤を使用する場合、その使用量は特に限定されないが、前記複合体全重量に対する分散剤重量が0.01〜20wt%となるように分散剤を使用すること好ましく、0.1〜0.25wt%がより好ましい。
【0030】
前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対して担持剤を含有することにより、均一な粒径を有する粒子からなる複合体を得ることが容易になる。
【0031】
担持剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ等を使用することができる。中でも、コロイダルシリカが好ましい。
【0032】
担持剤を使用する場合、その使用量は特に限定されず、(1)ピロール及び/又はピロール誘導体と(2)銀イオンとの反応を妨げない程度に適宜使用量を設定すれば良い。
【0033】
金属粒子及び導電性重合体からなる複合体の製造方法
本発明の複合体の製造方法によれば、(1)ピロール及び/又はピロール誘導体と(2)銀イオン含有溶液とを混合することにより、銀イオンが還元されて微粒子を形成すると同時にピロール及び/又はピロール誘導体が重合体を形成し、本発明の複合体を得ることができる。
【0034】
本発明の前記複合体が得られる反応原理は、以下のように考えられる。前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体に対して銀イオンを加えて接触させると、前記銀イオンが前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体の水素を引き抜く。この時点で、(1)ピロール及び/又はピロール誘導体の酸化が開始し、重合体の形成が進行する。前記銀イオンは、重合体への酸化を開始させると共に、自身は還元されて極微細な金属粒子の状態となる。その結果、前記金属粒子(銀粒子)を取り込んだ重合体が、複合体として形成される。(1)ピロール及び/又はピロール誘導体の重合体は、金属粒子と金属粒子を結ぶバインダー機能を有するため、本発明の複合体は、導電性が格段に優れる。
【0035】
銀イオンの使用量は、特に限定されないが、(1)ピロール及び/又はピロール誘導体1molに対して1〜3.5molが好ましく、1.5〜2molがより好ましい。銀イオンの使用量が上記範囲であることによって、本発明の複合体を効率よく形成することができる。
【0036】
本発明の複合体の製造方法では、反応溶媒を使用することが好ましい。前記反応溶媒は、前述した溶媒A及び/又は溶媒Bを、最終的な反応溶媒としてそのまま使用することができる。
【0037】
前記反応溶媒は、例えば、水、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン等を例示することができる。特に、水を含む溶媒が好ましい。なお、これらの溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明の複合体の製造方法における、反応溶液中の(1)ピロール及び/又はピロール誘導体の濃度は、通常0.05〜0.9mol/Lであり、好ましくは0.1〜0.5mol/Lである。即ち、前記反応溶媒の量は、上記した濃度の範囲内となるように適宜設定すればよい。反応溶液中の(1)ピロール及び/又はピロール誘導体の濃度を上記の範囲内とすることによって、得られる複合体の形状が膜状である場合には当該膜を厚くすることが可能になり、また膜の連続性(即ち、膜が途切れず、繋がっている性質)も得られる。さらに、反応時間を短縮することも可能となる。
【0039】
本発明の複合体の製造方法における、反応溶液中の銀イオンの濃度は、通常0.05〜2mol/Lであり、好ましくは0.3〜1.5mol/Lである。即ち、前記反応溶媒の量は、上記した濃度の範囲内となるように適宜設定すればよい。反応溶液中の銀イオンの濃度を上記の範囲内とすることによって、得られる複合体の形状が膜状である場合には当該膜を厚くすることが可能になり、導電性が向上する。また反応時間を短縮することも可能になる。
【0040】
本発明の複合体の製造方法によれば、反応溶媒に対してpH調整剤としては、NaOH、アンモニア、有機アミン、塩酸、硝酸、硫酸等を使用することができる。
【0041】
反応温度は、特に限定されないが、0℃〜80℃程度で行うのが好ましく、より好ましくは5〜30℃である。
【0042】
反応時間は、反応温度、ピロール及び/又はピロール誘導体並びに銀イオンの濃度によって適宜設定できるが、例えば、25℃においては、3〜40時間が好ましく、15〜20時間がより好ましい。
【0043】
反応させるときの雰囲気は、特に限定されず、大気中;アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気;酸化性雰囲気等が挙げられる。好ましくは大気中である。
【0044】
反応させるときのpHは、特に限定されないが、2.5以下が好ましく、2以下がより好ましい。pHの調整については、上述したpH調整剤、ドーパント等によって適宜調整することができる。
【0045】
本発明の複合体の単離方法は、例えば、生成したポリピロール系複合体を遠心分離し、イオン交換水で精製する工程を1回又は複数回行った後、室温にて真空乾燥することが挙げられる。
【0046】
また、本発明の複合体が溶液中に分散している場合、PET基板、ガラス基板等に塗布及び乾燥することもできる。この場合、後述する複合体を導電インキとして使用する際に簡便であるため、非常に有利である。
【0047】
金属粒子及び導電性重合体からなる複合体
本発明で得られる複合体は、ピロール及び/又はピロール誘導体によって得られる導電性重合体の表面に、金属粒子(銀粒子)が局在している。そのため、前記複合体は導電性に極めて優れる。なお、前述の通り、ピロール及び/又はピロール誘導体によって得られる導電性重合体は、金属粒子と金属粒子を結ぶバインダー機能を有している。
【0048】
本発明の複合体の形状は、重合体の二次凝集体の形状が塊状又は板状であり、その重合体の表面(特に端部)に前記銀粒子が局在している形状を示す。
【0049】
本発明の複合体の粒子径は、100nm〜20μm程度である。
【0050】
本発明の複合体における金属粒子の粒子径(大きさ)は、5nm〜50nm程度である。
【0051】
ポリピロール系複合体の用途としては、各種配線、帯電防止剤、各種インキ(例えば、導電インキ)電磁波シールド剤、静電塗装剤用充填剤、抗菌剤、防錆剤、防根剤等が挙げられる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の複合体は、ピロール及び/又はピロール誘導体によって得られる導電性重合体の表面に、銀粒子が局在している。よって、本発明の複合体は導電性に極めて優れる。前記複合体は、各種配線、帯電防止剤、各種インキ(例えば、導電インキ)等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例14で作製した複合体を走査型電子顕微鏡「株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 SU8000(加速電圧 5kV、拡大倍率6000倍)」で撮影した二次電子像写真である。
【図2】実施例14で作製した複合体を走査型電子顕微鏡「株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 SU8000(加速電圧 5kV、拡大倍率6000倍)」で撮影した反射電子像写真である。なお、図1と図2は、全く同じ箇所を撮影したものである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
実施例1
ピロールモノマー(18mmol)を、水、イソプロピルアルコール(IPA)及びイソブチルアルコール(IBA)の混合溶媒(20mL)に溶解し、ピロールモノマー含有液とした。前記ピロールモノマー含有液に対して、ドーパント含有液として100mmol/LのPTS水溶液を10mL添加した。その後、さらに3mol/Lの硝酸銀水溶液を20mL加えて、16時間撹拌し、反応させた。反応溶液(複合体含有溶液)は、黒色固体に変化した。なお、以上の一連の操作は、室温(22℃)の大気中で行った。
【0055】
実施例2〜27及び比較例1〜8
上記実施例1と同様に、ピロールモノマー含有液に対して、各酸化剤含有液(銀イオン、鉄イオン又は過硫酸アンモニウム)を加えて、反応させた。なお、ピロールモノマー含有液にその他成分(分散剤、充填剤、pH調整剤)を添加する場合は、ドーパント含有液を添加する場合と同様、酸化剤を加える前に行った。
【0056】
評価試験(電気抵抗測定)
実施例1〜27及び比較例1〜8で得られた複合体(又は重合体)含有溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布及び乾燥し、複合体(又は重合体)薄膜を得た。前記薄膜に対して、デジタル・マルチメーターR6441D(ADVANTEST社)を用いて電気抵抗を測定した。
【0057】
実施例1〜27および比較例1〜8で得られた複合体(又は重合体)の電気抵抗について、以下の表1〜表4に示す。なお、実施例1〜27および比較例1〜8における各成分の配合量についても、以下の表1〜表4に示す。
【0058】
表中、「OL」とは、OverLoadの略で、抵抗値がデジタル・マルチメーターでは測定できない(即ち、10M(メガ)Ω以上)であることを示す。また、「10^3」とは10の3乗を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ピロール及び/又はピロール誘導体と、
(2)銀イオン含有溶液
とを混合することにより、銀イオンが還元されて微粒子を形成すると同時にピロール及び/又はピロール誘導体が重合体を形成することを特徴とする、
銀粒子及び導電性重合体からなる複合体の製造方法。
【請求項2】
前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または前記(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対して、さらにp−トルエンスルホン酸(PTS)、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(PTS−Na)、過塩素酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、アントラキノンβスルホン酸、アントラキノンβスルホン酸ナトリウム、エチルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、プロピルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノンスルホン酸及びカンファースルホン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水を含有する溶媒中で前記銀粒子及び導電性重合体からなる複合体を形成する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒中における前記銀イオンの濃度が、0.05〜2mol/Lである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒中における前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体の濃度が、0.05〜0.9mol/Lである、請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体1molに対して、前記銀イオン1〜3.5molを反応させる、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記(1)ピロール及び/又はピロール誘導体または(2)銀イオン含有溶液の少なくとも一方に対して、分散剤を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって得られた、銀粒子及び導電性重合体からなる複合体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−52043(P2012−52043A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196604(P2010−196604)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(504137554)株式会社イオックス (13)
【Fターム(参考)】