説明

金属細線を含む廃棄物用破砕機

【課題】回転カッタの切断隙間の調整を容易かつ短時間で行う。
【解決手段】回転軸13A,13Bに回転カッタ21とスペーサ22とを交互に嵌合させて、回転カッタ21の外周部に形成された切断刃26と、隣接する回転カッタ21の切断刃26とを切断隙間γをあけて噛み合わせ、ピアノ線を含む廃タイヤを破砕する破砕機において、回転軸13A,13Bの両端部に回転カッタ21とスペーサ22とを挟圧して固定するねじ式のカッタ調整固定具を設け、スペーサ22の内周面に、収縮用スリットを周方向に形成することにより、回転軸方向に圧縮可能とし、カッタ調整固定具により隣接する切断刃26の切断隙間γを調整可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属細線を含む廃家電樹脂や廃タイヤなど破砕して、燃料資源として再利用するための金属細線を含む廃棄物用破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば二軸破砕機では、互いに平行に配置された一対の回転軸に、回転カッタとスペーサとをそれぞれ交互に嵌合し、回転カッタの外周部に形成された切断刃が、所定の切断隙間をあけて噛み合うように設置し、回転カッタの外周部所定位置に突設されたフックにより、廃棄物を引き込み、切断刃により切断破砕する。
【0003】
ところで、廃家電樹脂や廃タイヤなどの軟質廃棄物には、たとえば径が0.2mm程度の金属細線を多く含んでいる。たとえばピアノ線などを切断する場合、直径の1/20〜1/5程度の切断隙間が必要とされている。これは切断隙間がさらに大きくなると、金属細線が引きちぎられる状態で切断されることになり、たとえば破砕ゴム片では、ゴム片から多数の金属細線が伸びた状態となり、このようなゴム片は、自動化された炉などの燃料として適さないからである。
【0004】
したがって、回転式破砕機では、切断隙間が金属細線の直径の1/10〜1/2(0.2mmの金属細線では、0.02〜0.1mm)に設定される。
しかしながら、切断刃の磨耗が発生し、1日や数日の稼動で切断隙間が拡大して金属細線の切れ味が低下するという問題があった。
【0005】
特許文献1などの従来の破砕機では、回転カッタの切断隙間は、厚みの異なるスペーサに交換することで調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2911415号(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スペーサの交換作業に時間を要するとともに、厚みの異なる多種のスペーサを用意しなければならず、設備コストおよびランニングコストが高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決して、切断隙間の調整を容易かつ短時間で行え、回転刃の交換や研磨無しに長時間の稼動が可能となる金属細線を含む廃棄物用破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、
互いに平行な複数の回転軸に回転カッタとスペーサが交互に外嵌されて、隣接する回転軸の回転カッタの外周部同士が交互に噛み合うように配置された破砕機であって、
回転カッタの外周両縁部に沿って切断刃を形成するとともに、複数のフックを等間隔ごとに突設し、
各回転軸の両端部に、回転軸にそれぞれ形成された雄ねじ部と、当該雄ねじ部に螺着された固定ナット部材とを有し、回転カッタとスペーサとを挟圧して固定するカッタ調整固定具を設け、
前記スペーサの内周面に、半径方向に所定深さを有する収縮用スリットを周方向に沿って形成することにより、回転軸方向に圧縮可能に構成し、
前記固定ナット部材を締め付けることにより、前記スペーサを圧縮して、隣接する切断刃間の切断隙間を調整可能としたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の構成において、
スペーサの左右側面に、湾曲状に凹む凹状部を周方向に形成するとともに、外周部に中央が膨らむ湾曲凸面を形成したものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の構成において、
スペーサの収縮用スリット内に、周方向に沿ってばね部材を内装したものである。
請求項4記載の発明は、互いに平行な複数の回転軸に回転カッタとリング状スペーサが交互に外嵌されて、隣接する回転軸の回転カッタの外周部同士が交互に噛み合うように配置された破砕機であって、
回転カッタの外周両縁部に沿って切断刃を形成するとともに、複数のフックを等間隔ごとに突設し、
各回転軸の両端部に、回転軸にそれぞれ形成された雄ねじ部と、当該雄ねじ部に螺着された固定ナット部材とを有し、回転カッタとスペーサとを挟圧して固定するカッタ調整固定具を設け、
前記スペーサの外周面に、半径方向に所定深さを有する収縮用スリットを周方向に沿って形成することにより、回転軸方向に圧縮可能に構成するとともに、スペーサの内周部の幅を、外周部の幅より狭く形成し、
前記固定ナット部材を締め付けることにより、前記スペーサを圧縮して、隣接する切断刃間の切断隙間を調整可能としたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、スペーサの内周面に開口されて、スペーサを回転軸方向に圧縮可能な収縮用スリットを形成したので、各回転軸の両端部に設けられたカッタ調整固定具の固定ナット部材を締め付けることにより、回転カッタの切断刃の切断隙間を調整することができる。これにより切断刃が磨耗して切断刃の切断隙間が広くなり、金属細線の切断不良が多発した場合に、切断隙間を容易かつ短時間に調整して金属細線を良好に切断することができる。したがって、スペーサの圧縮可能な範囲で、カッタ調整固定具の調整のみで切断隙間を調整することができ、スペーサの交換を不要として長時間の稼動が可能となる。また、収縮用スリットがスペーサの内周面に開口されるので、切断された金属細線が入り込んで絡まることもなく、金属細線を含む廃棄物を良好に破砕することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、スペーサの左右側面に形成した凹状部により、挟圧力を内周側および外周側に分散させるとともに、外周部に形成した湾曲凸面により、スペーサ外周部の湾曲を促進させてスペーサを効果的に圧縮し、切断隙間の調整をスムーズに行うことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、収縮用スリット内にばね部材を介装することにより、幅の広い収縮用スリットであっても、ばね部材の材質や特性を選択することにより、スペーサのばね定数を任意に設定することができ、回転軸方向の破砕荷重で圧縮されず、かつカッタ調整固定具により圧縮可能なスペーサを提供することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、スペーサの外周面に開口された収縮用スリットと、スペーサの内周部の幅を外周部の幅より狭くして、スペーサを回転軸方向に圧縮可能としたので、各回転軸の両端部に設けられたカッタ調整固定具の固定ナット部材を締め付けることにより、回転カッタの切断刃の切断隙間を調整することができる。これにより切断刃が磨耗して切断刃の切断隙間が広くなり、金属細線の切断不良が多発した場合に、切断隙間を容易かつ短時間に調整して金属細線を良好に切断することができる。したがって、スペーサの圧縮可能な範囲で、カッタ調整固定具の調整のみで切断隙間を調整することができ、スペーサの交換を不要として長時間の稼動が可能となる。また、収縮用スリットがスペーサの内周面に開口されるので、切断された金属細線が入り込んで絡まることもなく、金属細線を含む廃棄物を良好に破砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る破砕機の実施例1を示し、スペーサ部分の拡大横断面図である。
【図2】スペーサの正面図である。
【図3】破砕機の平面視の部分断面図である。
【図4】破砕機の中央縦断面図である。
【図5】図3に示すA−A断面図である。
【図6】図3に示すB−B断面図である。
【図7】(a)および(b)はスペーサの他の実施例を示し、(a)は実施例2の部分拡大横断面図、(b)は実施例3の部分拡大横断面図である。
【図8】本発明に係る破砕機の実施例2を示し、スペーサ部分の拡大横断面図である。
【図9】(a)乃至(c)はスペーサを示し、(a)は実施例2のスペーサを説明する部分拡大横断面図、(b)は実施例2のカッタ調整固定具による締め付け状態のスペーサの部分拡大横断面図、(c)は他の実施例のスペーサの部分拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図3〜図6は、たとえば径が0.2mm程度のピアノ線(金属細線)を多数含む廃タイヤ(軟質廃棄物)を破砕する回転式二軸破砕機を示すものである。この破砕機は、破砕物投下口11aを有する台板11上に、廃棄物投入用のホッパ17が上部に設置された平面視が矩形状のケーシング12が立設配置され、ケーシング12の左右側板12a,12b間に、互いに平行な水平方向の回転軸13A,13Bが回転自在に貫設支持されている。そしてこれら回転軸13A,13Bに、ピアノ線を含む廃タイヤを破砕可能な回転カッタ21とリング状スペーサ22が設けられている。
【0018】
図3に示すように、台板11上に、回転軸13A,13Bをそれぞれ回転駆動する破砕駆動装置14が配置されている。この破砕駆動装置14は、ケーシング12の左右両側の台板11上に一対の減速機付駆動モータ15A,15Bが設置されており、駆動モータ15A,15Bの出力軸が、過負荷防止用フランジ16を介して回転軸13A,13Bの対称側の端部にそれぞれ連結されている。これにより、後述する切断隙間γの調整や、回転カッタ21やスペーサ22や支持部材の分解や交換などを容易かつ迅速に行うことができる。そして、この破砕機で回転カッタ21に硬質廃棄物が混入した時に破損を防止する過負荷停止機構として、前記過負荷防止用フランジ16と、駆動モータ15A,15Bに組み込まれた非常停止機構とが二重に設けられている。前記過負荷防止用フランジ16は、互いに突き合わされた一対のフランジ板を、周方向一定間隔ごとに形成された貫通穴を介して複数の破断ピン16aを装着して連結し、これら破断ピン16aを介して動力を伝達させることにより、過負荷時に破断ピン16aを破断させることで、回転カッタ21を強制停止させて、機器の損傷を防止し、安全に作業することができる。駆動モータ15A,15Bの非常停止機構は、過負荷時の過電流を検出して非常停止させるものである。
【0019】
前記回転軸13A,13Bは、図4に示すように、たとえば略正六角形断面に形成され、回転カッタ21とスペーサ22の軸心部に略正六角形の中心穴21a,22aがそれぞれ形成されている。そして、回転カッタ21とスペーサ22が中心穴21a,22aを介して回転軸13A,13Bにそれぞれ交互に嵌合されるとともに、回転カッタ21,21の外周部が互いに噛み合うように配置されている。またケーシング12の前後側板12c,12dの内面に、回転カッタ21の外側に所定隙間をあけて噛み合う櫛歯形のスクレーパ23が取り付けられている。
【0020】
ケーシング12は、回転軸13A,13Bに対応して上下に分離可能な上下フレーム12U,12Dからなり、図示しない複数のボルトにより組立分離可能に構成されている。これにより、回転カッタ21とスペーサ22の交換時に、下フレーム12Dから上フレーム12Uを分離して回転軸13A,13Bをケーシング12から取り外すことができる。また図3,図5に示すように、ケーシング12の上下フレーム12U,12Dで左右側板12a,12bに、上下基台部40U,40Dを介して上下に分割された軸受ボックス41U,41Dがそれぞれ取り付けられ、軸受ボックス41U,41Dにそれぞれ回転軸13A,13Bの両端部の軸受42A,42Bが嵌脱可能に保持されている。
【0021】
図3,図6に示すように、回転軸13A,13Bの両端側で回転カッタ21、スペーサ22群と軸受42A,42Bとの間に、挟圧スリーブ43を介して回転カッタ21およびスペーサ22を挟圧して調整固定可能なカッタ調整固定具44が設けられている。このカッタ調整固定具44は、回転軸13A,13Bにそれぞれ形成された雄ねじ部44aと、これら雄ねじ部44aにそれぞれ螺着された固定ナット部材44b,44cからなり、固定ナット部材44b,44cは溝付き丸ナットからなるダブルナットで、図6に仮想線で示すように、溝に嵌合可能な爪部を有する調整工具45により、固定ナット部材44b,44cを所定の挟圧力で締め付けて回転カッタ21およびスペーサ22を固定するとともに、さらに大きい挟圧力によりスペーサ22を圧縮して、回転カッタ21の回転軸方向の位置を微調整することができる。
【0022】
図1,図2に示すように、回転カッタ21は、所定厚みを有する円形のディスク本体24に中心穴21aが形成され、外周部の対称位置に180°隔てて一対のフック25が形成されている。これらフック25には、回転方向の前部に廃タイヤを回転カッタ21間に引き込み破断する前刃25aが設けられている。またディスク本体24の外周両縁部に、切断刃26がフック25の内周側を含む全周にわたって設けられている。この切断刃26は、ディスク本体24の外周で両縁部に沿って形成された切刃取付溝に、切削チップがロウ付けにより植設されている。なお、図1では、断面を示すハッチングを省略している。
【0023】
スペーサ22は、図1,図2に示すように、スペーサ本体31が、回転軸13A,13Bが嵌合される略正六角形の中心穴22aが形成され、この中心穴22aの内周面に、半径方向に所定深さを有する収縮用スリット32が全周にわたって形成されている。この収縮用スリット32の幅δは、たとえば0.7〜1.5mmに形成されている。またスペーサ22は、横断面において、四隅が角丸の矩形状に形成されており、左右側面の中央部に湾曲状に凹む凹状部33が全周にわたって形成され、これら凹状部33により回転軸方向の圧縮力を内周側と外周側とに分散させることができる。また外周部には、中央が膨らむ湾曲面34に全周にわたって形成され、回転軸方向の圧縮力により、外周部が法線方向に膨らむことでスペーサ22が回転軸心方向に圧縮可能なように構成されている。このスペーサ22は金属製で圧縮力に対向できる剛性と高いばね定数とを有し、たとえば工具鋼などでもよいが、弾性限度の高いばね鋼を使用することもできる。
【0024】
上記構成において、回転軸13A,13Bに、回転カッタ21とスペーサ22とが交互に嵌合され、回転カッタ21とスペーサ22の集合体の両端部に挟圧スリーブ43A,43Bが嵌合され、さらに雄ねじ部44aに固定ナット部材44b,44cが装着され、さらに両端部に軸受42A,42Bが取り付けられる。そして、回転カッタ21の切断刃26が互いに噛み合う状態で、軸受42A,42Bを下軸受ボックス41Dに嵌め込み、次いで上フレーム12Uを上方から重ねて上軸受ボックス41Uを軸受42A,42Bに嵌合させて下軸受ボックス41Dに固定し、軸受42A,42Bを保持させて回転軸13A,13Bをケーシング12に回転自在に支持させる。
【0025】
次いで、調整工具45を使用して、カッタ調整固定具44の固定ナット部材44b,44cを操作し、隙間ゲージなどの計測具を使用して、切断刃26の切断隙間γを調整する。この切断隙間γは、廃タイヤや金属細線の内在状態により0.05〜0.25mmの範囲から選択され、好ましくは0.08〜0.15mmの範囲で設定される。
【0026】
破砕駆動装置14を起動して回転軸13A,13Bを回転させ、回転カッタ21,21を相対方向に回転駆動する。そしてホッパ17から廃タイヤ片を投入し、フック25により廃タイヤ片を回転カッタ21の噛み合い部に引き込んで前刃25aおよび切断刃26で破砕するとともに、内在するピアノ線を引き込んで切断刃26により切断する。
【0027】
所定の稼動時間たとえば8〜24時間程度が経過すると、破砕機を停止し、廃タイヤ片のピアノ線の切断状態を確認する。切断刃26が磨耗して切断隙間γが拡大することで、ピアノ線の切断状態が悪くなった場合には、調整工具45を使用して回転軸13A,13Bの両端部の固定ナット部材44b,44cを締め込むことにより、スペーサ22を圧縮して、切断刃26の切断隙間γを縮小し、隙間ゲージなどを使用して切断隙間γを初期値に戻す。
【0028】
上記起動時の調整範囲が、スペーサ22の圧縮範囲を超えると、回転軸13A,13Bを取り外して、スペーサ22を幅の狭いものと交換したり、または新しい回転カッタ21に交換する。また磨耗した回転カッタ21は、切断刃26を新しい刃先に取り替えて再使用される。
【0029】
上記実施例1によれば、スペーサ22の内周面に開口されてスペーサ22を回転軸方向に圧縮可能な収縮用スリット32を形成したので、各回転軸13A,13Bの両端部に設けられたカッタ調整固定具44の固定ナット部材44b,44cを締め付けることにより、回転カッタ21の切断刃26の切断隙間γを容易かつ短時間で調整することができる。
【0030】
したがって、ピアノ線の切断が必須となる廃タイヤを良好に切断破砕できるとともに、切断刃が磨耗して切断隙間γが広がり、ピアノ線の切断不良が生じた場合であっても、スペーサ22の圧縮範囲内で、カッタ調整固定具44により切断隙間γを調整することだけで、スペーサ22の交換を不要として長時間の稼動が可能となり、切断隙間γが最小で保持されることにより、破砕作業の効率化を図ることができる。
【0031】
またスペーサ22の左右側面に凹状部33を形成するとともに、外周部に湾曲凸面34を形成することで、カッタ調整固定具44によりスペーサ22を回転軸方向に圧縮して切断隙間γの調整をスムーズに行うことができる。
【0032】
そして、複数の安全機構により安全性が向上されている。すなわち、1)スペーサ22が圧縮されることによる切断刃の弾性で、切断刃の欠けや破損を未然に防止することができる。2)硬質の破砕物(異物)が混入した場合でも、スペーサ22の圧縮範囲内で切断隙間γが押し広げられることで、回転カッタ21間を通過させることができる。3)さらに大きい硬質の破砕物は、回転カッタ21に噛み込んだ状態で、過負荷防止用フランジ16による非常停止機構により、破断ピン16aが破断されて動力の伝達を停止する。4)駆動モータ15A,15Bの非常停止機構により、過負荷による過電流が検出されて非常停止される。これにより、回転カッタ21などの破損が防止される。
【0033】
さらに、スペーサ22が圧縮されることによる切断刃の弾性で、粉塵、騒音や振動の低減が図られる。さらにまた、収縮用スリット32は、スペーサ22の内周面に開口されるので、切断されたピアノ線が入り込んで回転カッタ21に絡まることもなく、ピアノ線を含む廃タイヤを良好に破砕することができ、省エネおよび低コスト化を図ることができる。
【0034】
なお、廃タイヤの破砕中に回転カッタ21に大きいラジアル方向の負荷が生じるが、タイヤ自体は軟質の合成ゴムであるため、スラスト方向の負荷は比較的小さい。またスラスト方向の負荷が過大となることがあっても、スペーサ22のばね定数を適宜設定することにより、回転カッタ21が回転軸方向に位置ずれして隣接する切断刃26同士が、切断隙間γを超えて衝突するのを防止することができる。
【0035】
[実施例2]
図7(a)は、スペーサの実施例2を示す部分拡大横断面図である。
ばね定数の高い金属材料を使用してスペーサを形成する場合、幅δが0.7〜1.5mmと狭い収縮用スリットを中心穴の内周面に形成するのが困難なことがある。この場合には、図示するように、スペーサ51の中心穴51aの内周面に幅δが広い収縮用スリット52を形成するとともに、収縮用スリット52内に円板状のばね板(ばね部材)53を周方向に沿って内装することにより、スペーサ51とばね板53とで、ばね定数が十分に高く回転軸方向の荷重に対向できるスペーサ51を提供することができる。
【0036】
このばね板53は、収縮用スリット52への挿入のために、周方向に複数に分割されたものや、一部が切断されて拡縮径可能な皿ばねにより形成されているが、半径方向や周方向に沿って波形断面に変形された皿ばねでもよい。
【0037】
実施例2のスペーサ51によれば、幅δの狭い収縮用スリットが形成できないものや、スペーサ51のばね定数を調整したいものに対して、収縮用スリット52の幅を幾分広く形成して、その内部に所定のばね定数のばね板53を介装することにより、スペーサ51に対する回転軸方向の負荷に対して、圧縮される荷重を高くすることができる。またばね定数の異なるばね板53と変更することにより、スペーサ51のばね定数を変更することができ、設計の自由度を広くすることができる。
【0038】
[実施例3]
図7(b)は、スペーサの実施例3を示す部分拡大横断面図である。実施例3のスペーサ61は、深さの異なる複数の収縮用スリット62A,62Bを中心穴61aの内周面に開口して形成したものである。中央部の収縮用スリット62Aを深く形成し、両側の収縮用スリット62Bを浅く形成し、さらに湾曲面34の突出距離を大きく形成することにより、回転軸方向の圧縮に対するスペーサ61の収縮をスムーズに行えるようにしている。
【0039】
実施例3のスペーサ61によれば、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
なお、実施例1では二軸式破砕機を説明したが、三軸以上の回転式破砕機であってもよい。また破砕物を廃タイヤとしたが、金属細線を多く含む廃家電樹脂などの軟質廃棄物であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
[実施例4]
図8および図9(a)(b)は、スペーサの実施例4を示すスペーサ部分の拡大横断面図である。実施例4のスペーサ81は、外周面で幅方向(軸心方向)の中央部に開口するV字形の収縮用スリット82が、半径方向の中間部から内周側に至る一定深さで周方向に沿って形成されている。またスペーサ81の外周面の幅Woが、内周面(中心穴81a)の幅Wiよりも大きく、たとえば収縮用スリット82の開口部の幅d1≧Wo−Wiに設定されている。
【0041】
上記構成において、切断隙間γが設定された初期の使用状態では、カッタ調整固定具(図示せず)により、スペーサ81の幅を、外周面の幅Woか、幅Woより少し狭くした状態として使用する。所定の稼動時間が経過すると、破砕機を停止して、ピアノ線の切断状態を確認する。そして切断刃26が磨耗して切断間隔γが拡大することで、ピアノ線の切断状態が悪くなった場合には、調整工具45を使用して回転軸13A,13Bの両端部の固定ナット部材44b,44cを締め込むことにより、スペーサ81を圧縮して、切断刃26の切断隙間γを縮小し、隙間ゲージなどを使用して初期値に戻す。
【0042】
何回かの調整の後、図9(b)に示すように、収縮用スリット82が閉じた状態になって圧縮範囲を超えると、スペーサ81や回転カッタ21の交換を行う。
実施例4のスペーサ81によれば、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また外周面に収縮用スリット82を形成したので、加工が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0043】
図9(c)は、実施例4の変形例を示し、スペーサ91にV字形の収縮用スリット82に替えて、開口幅の広い(d2>d1)のU字形の収縮用スリット92を形成し、リング形の皿ばね93を嵌合したものである。この皿ばね93は、収縮用スリット92に挿入のために、周方向に複数に分割されたものや、一部が切断されて拡縮径可能なもの、半径方向や周方向に沿って波形断面に変形されたものが採用される。
【0044】
実施例4の変形例によれば、実施例4の作用効果に加えて、収縮用スリット92の加工がさらに容易であり、また皿ばね93により切り屑の収縮用スリット92の入り込みを防止することができる。
【符号の説明】
【0045】
γ 切断隙間
δ スリット幅
12 ケーシング
12U 上フレーム
12D 下フレーム
13A,13B 回転軸
14 破砕駆動装置
21 回転カッタ
21a 中心穴
22,51,61 スペーサ
22a 中心穴
23 スクレーパ
24 ディスク本体
25 フック
26 切断刃
31 スペーサ本体
32,52,62A,62B 収縮用スリット
33 凹状部
34 湾曲凸面
41U 上軸受ボックス
41D 下軸受ボックス
42A,42B 軸受
43A,43B 挟圧スリーブ
44 カッタ調整固定具
44a 雄ねじ部
44b,44c 固定ナット部材
45 調整工具
53 ばね板
81 スペーサ
82 収縮用スリット
91 スペーサ
92 収縮用スリット
93 皿ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数の回転軸に回転カッタとリング状スペーサが交互に外嵌されて、隣接する回転軸の回転カッタの外周部同士が交互に噛み合うように配置された破砕機であって、
回転カッタの外周両縁部に沿って切断刃を形成するとともに、複数のフックを等間隔ごとに突設し、
各回転軸の両端部に、回転軸にそれぞれ形成された雄ねじ部と、当該雄ねじ部に螺着された固定ナット部材とを有し、回転カッタとスペーサとを挟圧して固定するカッタ調整固定具を設け、
前記スペーサの内周面に、半径方向に所定深さを有する収縮用スリットを周方向に沿って形成することにより、回転軸方向に圧縮可能に構成し、
前記固定ナット部材を締め付けることにより、前記スペーサを圧縮して、隣接する切断刃間の切断隙間を調整可能とした
ことを特徴とする金属細線を含む廃棄物用破砕機。
【請求項2】
スペーサの左右側面に、湾曲状に凹む凹状部を周方向に形成するとともに、外周部に中央が膨らむ湾曲凸面を形成した
ことを特徴とする請求項1記載の金属細線を含む廃棄物用破砕機。
【請求項3】
スペーサの収縮用スリット内に、周方向に沿ってばね部材を内装した
ことを特徴とする請求項1または2記載の金属細線を含む廃棄物用破砕機。
【請求項4】
互いに平行な複数の回転軸に回転カッタとリング状スペーサが交互に外嵌されて、隣接する回転軸の回転カッタの外周部同士が交互に噛み合うように配置された破砕機であって、
回転カッタの外周両縁部に沿って切断刃を形成するとともに、複数のフックを等間隔ごとに突設し、
各回転軸の両端部に、回転軸にそれぞれ形成された雄ねじ部と、当該雄ねじ部に螺着された固定ナット部材とを有し、回転カッタとスペーサとを挟圧して固定するカッタ調整固定具を設け、
前記スペーサの外周面に、半径方向に所定深さを有する収縮用スリットを周方向に沿って形成することにより、回転軸方向に圧縮可能に構成するとともに、スペーサの内周部の幅を、外周部の幅より狭く形成し、
前記固定ナット部材を締め付けることにより、前記スペーサを圧縮して、隣接する切断刃間の切断隙間を調整可能とした
ことを特徴とする金属細線を含む廃棄物用破砕機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−115822(P2012−115822A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85856(P2011−85856)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(599172472)株式会社サカモト (8)
【Fターム(参考)】