説明

金属蒸着層転写フィルム

【課題】
樹脂フィルム基体上に金属蒸着層を形成した金属蒸着層積層フィルムにおいて、金属蒸着層を電極として電気めっきにより実用的な厚さの電気回路を形成し、これをプリプレグ等に加圧熱転写等の方法により転写してプリント配線基板を製造するとき、回路パターンを形成する工程では金属導体層が剥離することがなく、精細な回路をデザイン出来、これをプリプレグ等への転写した後は樹脂フィルム基体を容易に剥離でき、剥離した後は、転写された回路パターン層表面が平滑であり、且つ、銅表面にいわゆる糊残りや汚染を生じない事から、電極層のみを均一に且つ瞬時に除去出来る、金属蒸着層積層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
樹脂フィルム基体の平滑な片面に厚さが0.05〜10μmの再剥離性粘着剤層を設け、該再剥離性粘着剤層上に金属の蒸着層を形成、取り扱い時の腐食防止の為に金属蒸着膜上に防錆層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板などの電子材料分野うち、精細な配線回路の製造に好適な金属蒸着層転写フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、プリンター、電子カメラ、ビデオレコーダー、携帯用通信機等の各種電子機器部品に広く使用されているプリント配線板は、これらの機器の小型化に伴い薄層化が求められているが、導体層となる金属箔は12μm以下の厚みにするとハンドリングが困難であるとの問題がある。そこで、1)離型性を有するキャリアーに直接金属箔を貼り合わせて導体とし、プリプレグに転写する方法や、2)キャリアー上に蒸着及び/又はメッキによって導体層を形成し、これをプリプレグに転写する方法が検討されている。ここで、キャリアーとしては、絶縁層を有するプラスチックフィルム、粗面化プラスチックフィルムなどを用いられている。しかしながら、1)の方法では金属箔の薄層化に限界があり、転写後に薄層化しなければならないなどの問題があり、金属箔の無駄なエッチング廃液の発生など環境への負荷も大きい。又、2)の方法では、導体層をキャリアー上に形成すると、導体層とキャリアーが剥離してしまうなどの欠点がある。また、導体層とキャリアー間の剥離を防ぐ為にキャリアーと導体層の接着性を上昇させると、プリプレグへの転写後、キャリアーの剥離が困難となり、作業性、製品歩留まりが低下する問題が生じる。
【0003】
上記の両方法の欠点を解決するために、支持体上に再剥離可能な接着剤層を形成し、さらにその上に銅蒸着により銅を付着させて箔層を形成し、この銅箔層に、レジスト法を適用して導体パターンを形成し、この導体パターンに電気メッキを施して回路パターンとした後、これをプリプレグに転写し、上記の支持体および再剥離可能な接着剤層の部分を剥離除去して回路基板を製造する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−228306号公報
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1には、支持体上に形成して銅蒸着層を形成するベースとなる再剥離可能な接着剤層として、実施例においても単にアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などを使用し、これにシリカなどのフィラーを添加して密着力をコントロールする旨記載されているが、通常知られている接着剤に再剥離性を付与することが出来る程度にシリカ粒子などのフィラーを配合すると、その転写後に支持体および接着剤層の剥離除去した後形成される銅箔層(導体層)などの金属回路パターン層表面の平滑性が損なわれ、あるいは金属回路パターン層表面に接着剤が残留するいわゆる糊残りが生じやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂フィルム基体上に金属蒸着層を形成した金属蒸着層転写フィルムにおいて、この金属蒸着層にレジスト膜を作製し回路パターンを形成し、露出した金属蒸着層を電極としてめっき加工により実用的な厚さの電気回路を形成し、レジスト層を洗浄、除去後に、これをプリプレグシート等に加圧熱転写等の方法により電気回路パターン及び金属蒸着層を転写後、エッチング法にて金属蒸着層を除去する事により電気回路板を製造するとき、電気回路パターンを形成する工程では金属導体層がキャリアーから剥離することがなく、パターン形成後にこれを転写した後にはキャリアーフィルムを容易に剥離出来、キャリアーフィルムを剥離し、転写された金属蒸着層表面は平滑であり、且つ、同表面にいわゆる糊のこりや汚染が生じないため、瞬時に且つ均一に銅蒸着層をエッチング法により除去出来、高精細な配線板を高歩留まりで作製出来る、金属蒸着層転写フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、樹脂フィルム基体の平滑な片面に厚さが0.05〜10μmの粘着剤層が設けられており、該粘着剤層上に金属蒸着層が形成され、該金属蒸着層上に防錆層が設けられていることを特徴とする金属蒸着層転写フィルムに存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属蒸着層転写フィルムは、作製したいプリント基板の回路パターンが高精細な用途においては、パターンを作製する導体層が極薄である必要があるため、特に大きな効果を発揮する。また、基体フィルム及び粘着剤層は上記の加圧圧着工程後に剥離除去されるが、電気メッキ工程やエッチング工程に於いては、導体層が剥離したり脱落することが無く、剥離除去の際には剥離操作が容易であり、剥離後に露出される金属導体層表面には、粘着剤の残留、即ち、糊残り、および汚染が無い。
例えばこの金属蒸着層表面に、さらに全面に電気メッキして電気回路作製用金属導体層にした後、レジスト法により導体層へパターンをデザインし、その後電気メッキによりデザインした導体層上に電気回路パターンを形成し、これを例えばプリプレグシート表面に加熱圧着して金属導体層を転写し、基体フィルムを剥離した後、金属導体層をエッチングにより除去してプリント基板を作製する用途、あるいは、金属蒸着層表面にパターン状フォトレジスト層等を形成してエッチング法により導体層パターンを形成した後、レジスト膜を除去し、露出した導体層上にめっき法により回路パターンを作製し、作製したパターンを例えばプリプレグシート表面に加熱圧着して金属導体層を転写する用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の金属蒸着層転写フィルムは、樹脂フィルム基体の片面に粘着剤層が設けられており、該粘着剤層上に金属蒸着層が形成され、金属蒸着層の上に防錆層を形成して成る。
【0010】
上記の樹脂フィルム基体としては、折り曲げ可能で物理的な力により比較的容易に変形するフレキシブルなプラスチック製フィルムがあげられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレ−トやポリブチレンテレフタレ−トなどのポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレ−ト、シンジオタクチックポリスチレンを含むポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコ−ル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリ酢酸セルロースなどの各種セルロ−ス、(メタ)アクリル樹脂、各種ナイロンなどのポリアミド、フッ素樹脂で形成されたフィルムがあげられる。これらのうち、ポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレ−トが好ましい。かかる樹脂フィルム基体の厚さは特に限定されないが、5〜250μm程度であるのが好ましく、より好ましくは20〜125μmであり、更に好ましくは75〜125μmである。
【0011】
上記の樹脂フィルム基体の粘着剤層が形成される面は、その粘着剤層の上に蒸着される金属蒸着層の表面を平滑にするため、実質的に平滑面であるのが好ましく、その平滑度は、例えば、Rzとして0〜3μm程度であるのが好ましい。また、その裏面の平滑度は、特に限定されないが、Rzとして20μm以下であるのが好ましい。
【0012】
また、上記の樹脂フィルム基体の粘着剤層が形成される面は、粘着剤層が密着しうるように表面処理を施すことが出来る。かかる処理方法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV洗浄、超音波洗浄、プライマー塗工、粗面化処理等、特に制限なく用いることが出来る。
【0013】
前記の粘着剤層を構成する粘着剤としては、本発明の金属蒸着層転写フィルムの用途としてその金属蒸着層を形成し、これをプリプレグ表面に加熱圧着する工程を経た後においても、粘着剤層上に設けられた金属蒸着層界面において離型性を保持し、且つ剥離されて露出する金属導体層表面に糊残りが無いものが使用される。上記の離型性としては、185℃×3MPa×1時間加熱後に0.01〜1N/25mm以下であるのが好ましく、0.05〜0.5N/25mmであるのがより好ましい。かかる粘着剤を構成する主成分樹脂としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル樹脂系、ゴム系、ポリウレタン系、ポリエステル系、天然樹脂等があげられる。
【0014】
上記の(メタ)アクリル樹脂系としては、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレ−ト、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレ−ト等のアクリル(メタ)アクリレートのアルキル基が芳香族基、脂環族基、複素環族基若しくはハロゲン原子で置換されたアクリレート類、酢酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル等のアクリロイル基を有する物に官能基として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシアクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のアクリルカルボン酸類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジルアクリレート類など、一般にアクリルポリマーの合成に用いられるモノマーを用い合成された単一重合体若しくは共重合体があげられる。
【0015】
上記の(メタ)アクリル樹脂系の市販の粘着剤の具体例としては、アクリル系樹脂であるKP-1282(日本カーバイド工業株式会社製)、メラミン系樹脂であるCK-300(日本カーバイド工業株式会社製)、イソシアネート系硬化剤であるコロネートHL(日本ポリウレタン株式会社製)および酸触媒であるCK-902(日本カーバイド工業株式会社製)を組み合わせた粘着剤処方を挙げることができる。
【0016】
また、上記のゴム系粘着剤としては、天然ゴム(NR)、スチレン/ブタジエン共重合ゴム(SBR)、さらにはポリイソプロピレン(PIB)、イソブチレン/イソプレン共重合ゴム(ブチルゴム:IIR)、熱可塑性ゴム(スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー、SISまたはスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、SBSまたはスチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン:SEBS)などがあげられる。また、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエン/アクリロニトリル共重合ゴム(NBR)、及びポリブタジエン(BR)などがあげられる。
【0017】
前記の加熱圧着後の剥離力を0.01〜1N/25mmに成るように調節する方法として、上記の再剥離性の粘着剤には硬化性樹脂または架橋性樹脂を含有させる事が出来る。再剥離性の粘着剤層としては硬化されていることが望ましく、必要に応じて触媒を使用することが出来る。使用する硬化性樹脂または架橋性樹脂としては特に制限はなく、例えば、イソシアネート、エポキシ樹脂、ジアルデヒド、酸無水物、アミン、イミダゾール、アゾ化合物、シラン化合物、金属キレート、有機金属、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン、過酸化物、硫黄化合物、メラミン、フェノール樹脂、尿素樹脂、トリアジン樹脂が挙げられ、さらに、光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに必要に応じて光重合開始剤を混合したものなどがあげられる。上記の触媒は特に制限無く用いられることが出来る。例えばスルホン酸等の有機酸、金属化合物、アミン系化合物があげられる。特に、本発明では、上述した架橋や硬化性樹脂の混合等の方法により剥離力を所定の範囲に調節する事が出来ると共に、粘着層の耐溶剤性を向上させる事が出来る。
【0018】
前記の粘着剤層は、上記の粘着剤を溶解又は分散した溶液とし、該溶液を樹脂フィルム基体の片面に塗布し、溶媒を乾燥させながら熱硬化性樹脂を硬化させて粘着剤層を形成させるのがよい。これらの粘着剤溶液または分散液の濃度は、通常、1〜40質量%、実用的には、1〜25質量%である。
【0019】
上記の塗布方法は、常法により、フィルム基材上に、マイヤーバー、アプリケーター、シルクスクリーンにて塗布することができるが、好ましくはコンマ、リバース、ダイレクトグラビア、リバースグラビア、マイクログラビア、ダイ、エアナイフ、バー、カーテン、スプレー、ブレード等の各種コーティング装置を用いた方法により施すのがよい。
【0020】
上記の乾燥の条件は、使用される粘着剤の種類や塗布される層の厚さにより適宜決定されるが、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤の場合、通常、80〜150℃条件で 30〜120秒間程度であり、通常熱風により加熱される。
【0021】
上記の粘着剤層の厚さは、通常、0.05〜10μmであり、更に好ましくは0.07〜0.35μmである。粘着剤層の厚さがこの範囲内にあると、金属蒸着層およびさらにこの上にメッキによって形成される金属層転写フィルムのハンドリング時に金属層に皺や傷が入りにくく、糊残りが発生しない。又、メッキ時のメッキ層の収縮による粘着剤層と金属層の剥がれを良好に防止することができる。
【0022】
上記の粘着剤層表面に設けられる金属蒸着層を構成する金属としては、例えば、銅、アルミ、錫、ニッケル、金、白金、銀、はんだ、Ag−Pd、Ni−Sn、Ni−B、Ni−P等の合金等があげられる。このうち、導電性および経済性の観点から銅とアルミが好ましく、実用的には銅が特に好ましい。
【0023】
上記の金属蒸着層を形成する方法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、金属溶射等が挙げられる。これらの方法を組み合わせて、あるいは単独で行うことができるが、実用的には、真空蒸着法が実用的である。金属層の厚さは特に制限は無いが、50〜8000Åであるのが好ましく、より好ましくは100〜4000Åである。上記の真空蒸着層を形成する場合の条件は、公知の条件を適用することができる。
【0024】
上記の防錆層にはすでに防錆剤として公知に用いられる材料が使用され、具体例としては、例えばイミダゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、ピラゾールなどや、これらのハロゲン、アルキル、フェニル置換体などの単環または多環式のアゾール類、アニリンなどの芳香族アミン類、アルキルアミンなどの脂肪族アミン、これらの塩などが挙げられ、また、特に本記載の材料に制限する必要はない。
【0025】
上記の塗布方法は、常法により、金属蒸着層上に、マイヤーバー、アプリケーター、シルクスクリーンにて塗布することができるが、好ましくはコンマ、リバース、ダイレクトグラビア、マイクログラビア、ダイ、エアナイフ、バー、カーテン、スプレー、ブレード等の各種コーティング装置を用いた方法により施すのがよい。
【0026】
上記の防錆層の厚さは、通常、0.03〜2μmであり、更に好ましくは0.05〜0.5μmである。防錆層の厚さがこの範囲内にあると、金属蒸着層の防錆効果を保ちつつ、金属蒸着層へのエッチング加工、およびさらにこの上にメッキ層を形成する際に、防錆層の除去を行う工程において、希酸で容易に除去を行う事が出来る。
【実施例】
【0027】
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
樹脂基体フィルムとして、表面の平滑度Rzが1μmで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー50E07、東レ株式会社製)の表面に、アクリル系樹脂であるKP-1282(日本カーバイド工業株式会社製)100質量部、メラミン系樹脂であるCK-300(日本カーバイド工業株式会社製)9質量部、イソシアネート系硬化剤であるコロネートHL(日本ポリウレタン株式会社製)4.5質量部および酸触媒であるCK-902(日本カーバイド工業株式会社製)2質量部に溶剤として酢酸エチルを2800質量部加えて均一に混合して粘着剤層用塗布溶液を得た。この塗布溶液を、メイヤーバーを用いて乾燥後の塗布厚みが0.08μmと成るように粘着剤層が均一になるように注意して塗布し、希釈溶媒分の乾燥を行うために140℃×40秒の熱乾燥を行い、乾燥と架橋を行って粘着剤層を形成して、粘着剤層を有するフィルムを得た。得られたフィルムの粘着剤層の表面に、1.33×10-2〜10-3Pa条件下の真空蒸着法を用いて厚みが4000Åと成るように銅を蒸着させた。次いで防錆剤としてベンゾトリアゾール系防錆剤ライトパルC(共栄社化学株式会社製)を、メイヤーバーを用いて乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるように塗布し、80℃×20秒の乾燥を行い、本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0029】
[実施例2]
実施例1において、コロネートHLの混合量を3質量部に減量し、粘着剤層の厚さを2.5μmに上昇し、希釈溶剤量を160質量部に減少したこと以外は、実施例1の場合と全く同様にして塗布し、乾燥して本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0030】
[実施例3]
実施例1において、粘着剤層の塗布後の乾燥条件を、145℃×90秒間に強化したこと以外は実施例1と全く同様にして、本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0031】
[実施例4]
実施例1において、樹脂フィルム基体の厚さを100μm(ルミラー100S10、東レ株式会社製)のものを使用した以外は実施例1と全く同様にして、本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0032】
[実施例5]
実施例1において、樹脂フィルム基体の厚さを125μm(ルミラー125S10、東レ株式会社製)のものを使用した以外は実施例1と全く同様にして、本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0033】
[実施例6]
実施例1において、樹脂フィルム基体の厚さを125μm(ルミラー125S10、東レ株式会社製)のものを使用し、粘着層の厚みを0.03μmとなるように塗布した以外は実施例1と全く同様にして、本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0034】
[比較例1]
上記の実施例1において、粘着剤層の種類をアクリルポリエステル樹脂であるPR−AC PET30(大日精化工業株式会社製)100質量部、イソシアネート系硬化剤であるコロネートHL(日本ポリウレタン株式会社製)7質量部添加し、樹脂フィルム基体の厚さを100μm(ルミラー100S10、東レ株式会社製)のものを使用した以外は実施例1と全く同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム表面に金属蒸着層を形成して、比較例としての金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0035】
[比較例2]
実施例1において、樹脂フィルム基体の厚さを125μm(ルミラー125S10、東レ株式会社製)のものを使用し、剥離層を設けなかった事以外は、実施例1と全く同様にして、本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0036】
[比較例3]
実施例1において、防錆層を設けなかったこと以外は、実施例1の場合と全く同様にして本発明の金属蒸着層転写フィルムを得た。
【0037】
以上のようにして得られた実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた金属蒸着層転写フィルムについて金属蒸着層の密着性について評価した。建築塗装用紙粘着テープ日東No.720を金属蒸着層に貼合し、瞬発的に紙テープを剥離し蒸着層の脱落有無を目視にて観察し評価した。この際、全ての水準についてテープのみが剥離し、無理して剥離しようとすると紙テープが破損した。
【0038】
次に実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた金属蒸着層転写フィルムについて防錆層有無の効果を確認する為に60℃×95%RH雰囲気下に3日間保管して腐食の有無を目視で確認した。目視で確認し、外観変化が確認されない場合を○とし、腐食が確認された場合を×とした。
【0039】
次いで実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた金属蒸着層転写フィルムから70×50mmの試験用サンプルを採取し、別に、CuSO4・5H2O 50gと98%のH2SO4
20.4gを精製水に溶解させ250mlになるようにして電解めっき液を調製し、これを用いて銅蒸着層の上に印加電圧9V、液温23℃、通電時間5分にて10μmの銅めっき層を積層した。
この金属めっき工程においてはめっき層剥がれについて観察して評価した。この際、接着層と金属蒸着層界面で剥がれ発生が無かった場合を○とし、あった場合を×とした。
【0040】
次に、別に、プリプレグとして、厚さ100μmのガラス基材・エポキシ樹脂プリプレグ(有沢製作所
FR−4)を用意し、これに、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた金属蒸着層積層転写フィルムの金属蒸着面がプリプレグ表面に面するように重ね、185℃に温度設定したプレス機に挟み、加圧を行い、1時間熱プレスを行った。プレス時の圧力は3MPa、1MPa、0.5MPaの3条件を行い、金属蒸着層をプリプレグ表面に熱圧着した。型からはずした後、圧着品について、以下の評価基準によりフクレの有無を評価した。
フクレ
樹脂基体フィルム側から観察して、表面での発泡による凸面部の有無を目視にて判断し、無かった場合を○とし、あった場合を×とした。
【0041】
上記の金型から離型した後、各熱圧着板の金属転写層と粘着剤層(および樹脂基体フィルム)との間の剥離強度について、オートグラフAGS-50D(島津製作所製)により、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で剥離させて測定した。そして、プリプレグと金属蒸着層との多層構造体が得られた。
【0042】
上記の剥離された多層構造体の金属蒸着層表面について以下の基準により、糊残り及び蒸着膜破損有無を評価した。
糊残り
粘着剤の金属蒸着層表面への残留(糊残り)の有無を目視にて判断し、残留(糊残り)が無かった場合を○とし、残留(糊残り)があった場合を×した。
蒸着膜破損有無
金属蒸着層の表面を工業用顕微鏡(200倍)で観察し、蒸着層の破損の有無を観察し、破損がなかった場合を○、あった場合を×とした。
【0043】
以上得られた各評価結果を、粘着剤組成と共に表-1に示す。尚、表中の配合量は質量部である。
【0044】
【表1】

【0045】
KP-1282は、日本カーバイド工業株式会社製のアクリル樹脂/混合溶媒(トルエン/アセトン=3/2=40/60)である。
CK-300は、日本カーバイド工業株式会社製のメラミン樹脂/イソプロピルアルコール=20/80である。
CK-902は、日本カーバイド工業株式会社製の酸触媒である。
コロネートHLは、日本ポリウレタン株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネート樹脂である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の金属蒸着層転写フィルムは、高精細な回路デザインを常に要求されているプリント基板の電気回路パターン等を作製する工程に於いて、本材料の金属蒸着層すなわち導体層上に高精細な回路パターンの作製が容易に出来ると共に、キャリアーを設ける事で導体層はハンドリング性に優れ、電気回路パターンをプリプレグへ容易に転写でき、転写後はキャリアーフィルムを容易に導体層から剥離でき且つ、剥離後の導体層への粘着層残留物がないため、効率よく安全に使用出来る。
このように、電気回路の高精細化への必須技術となる導体薄膜化の実現と導体薄膜化に伴う諸問題を解決出来る材料であり、産業上の利用効果は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム基体の平滑な片面に厚さが0.05〜10μmの粘着剤層が設けられており、該粘着剤層上に金属蒸着層が形成され、該金属蒸着層上に防錆層が設けられていることを特徴とする金属蒸着層転写フィルム。
【請求項2】
加熱圧着前においては、樹脂フィルム基体に設けられた粘着剤層と金属蒸着層の界面が剥離出来ない状態を保持し、プリプレグ等の基板樹脂との加熱圧着により剥離が容易となる請求項1に記載の金属蒸着層転写フィルム。
【請求項3】
加熱プレス条件185℃×3MPa×1時間、もしくは185℃×1MPa×1時間、もしくは185℃×0.5MPa×1時間加熱圧着をした時のフィルム剥離力が0.01〜1 N/25mmとなる請求項1または2に記載の金属蒸着層転写フィルム。

【公開番号】特開2008−1034(P2008−1034A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174375(P2006−174375)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】