説明

金属蒸着面上塗り用光硬化型塗料組成物

【課題】種々のプラスチック成型体上の金属蒸着面に塗布し、紫外線照射することで、優れた密着性、硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる光硬化性塗料組成物、及びそれによって得られるプラスチック成型体を提供する。
【解決手段】水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有し、分子量が1,000〜100,000のアクリル系重合体(P)10〜90重量部と、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、及び(P)と(M)との総合計100重量部に対して、光開始剤(C)0.1〜15重量部を含むことを特徴とする、金属蒸着上塗り用光硬化型塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、電子線、放射線等で硬化可能な光硬化性塗料組成物に関するものである。更に詳しくは、金属蒸着面への優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる光硬化性塗料組成物、及びそれによって得られるプラスチック成型体である。
【背景技術】
【0002】
ランプ反射板、グリル、ノブ、エンブレム等の自動車部品や、化粧品などの容器、また携帯電話、自動販売機などの部品に、表面外観が金属様の部品が多く使用されている。これらはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、繊維強化複合材料(FRP)等の種々のプラスチックを用いて成型体の形成がなされ、その表面にアルミニウム等の金属を真空蒸着することによって作られている。さらにこの表面に光沢や高級感などの意匠性付与と、硬度や耐擦傷性を付与するために上塗り塗料が塗布されている。従来、この上塗り塗料にはウレタン樹脂やアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を使用した熱硬化型あるいは2液混合硬化型の塗料が使用されていた。一方、紫外線硬化塗料は光で硬化するため加熱が不要で、硬化が数秒で完了するという特徴から、非常に生産性、省エネルギー性に優れる塗料として知られている。しかしこの紫外線硬化塗料を金属蒸着面に適用した場合、密着性が不良であり使用できないという問題を抱えていた。
【0003】
例えば、プラスチック基材へ金属蒸着する場合の下塗り層としては、紫外線硬化型塗料の適用が開示されている。特許文献1、2には、少なくともジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートから選ばれたモノマーを構成成分とするアクリル樹脂と、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び光開始剤からなる塗料組成物が開示されている。しかし、この紫外線硬化型塗料組成物を金属蒸着面上に適用した場合、蒸着面との密着性は不十分であった。さらに、特許文献1では、金属蒸着面の上塗りにアクリル系ラッカー塗料、アクリルメラミン硬化系塗料、アルミキレート硬化型アクリル塗料を使用し、40〜120℃で5〜25分程度の条件で焼き付けるという、従来の熱硬化型塗料の適用が記載されている。
【特許文献1】特開2002−347175号公報
【特許文献2】特開2002−348498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の現状に鑑み、種々のプラスチック成型体上に金属蒸着された面に好適に塗布でき、優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる光硬化性塗料組成物、及びそれによって得られるプラスチック成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有し、分子量が1,000〜100,000のアクリル系重合体(P)10〜90重量部と、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、及び(P)と(M)との総合計100重量部に対して、光開始剤(C)0.1〜15重量部を含むこと特徴とする金属蒸着上塗り用光硬化型塗料組成物である。また、ラジカル重合性化合物(M)100重量部中に、ウレタンアクリレート(U)を1〜100重量部含むのが好ましい。また、本発明の光硬化型塗料組成物を、プラスチック成型体の金属蒸着面上に塗布し、これに紫外線を照射して塗料組成物を硬化させることによって得られたプラスチック成型体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、種々のプラスチック成型体上に施された金属蒸着面の上に、優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる。また本発明は生産性が高く省エネルギーである紫外線硬化によって塗膜を得ることができる。さらに得られたプラスチック成型体は、各種用途に好適に使用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下、詳細に説明する。
【0008】
《アクリル系重合体(P)》
本発明におけるアクリル系重合体(P)は、優れた密着性と耐擦傷性を発現するために、少なくともアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルから選択される1種の単量体を、アクリル系重合体(P)中に、50重量%以上含んで重合されたアクリル系重合体である。本発明のアクリル系重合体(P)は水酸基を含有する単量体(a)とその他の単量体(b)を共重合することによって得ることができる。水酸基を含有する単量体(a)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類が挙げられる。ここで、メチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及び/又はメチルメタアクリレートを示し、以下(メタ)とは同様の意味である。
【0009】
また、その他の単量体(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート類;;スチレン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの無水物等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類;モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類;2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、ビニルピロリドン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0010】
その他の単量体(b)として、これ等の中で、良好な密着性を得るため、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキルの炭素数が4以下のアルキル(メタ)アクリレート類を使用することが好ましい。
【0011】
本発明におけるアクリル系重合体(P)は密着性と硬度を発現するために、通常水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有するものであり、好ましくは10〜180mgKOH/g、更に好ましくは20〜160mgKOH/gの水酸基を含有するものである。
【0012】
また、本発明におけるアクリル系重合体(P)の分子量は、良好な塗膜の硬度及び耐擦傷性を発現するため、また、塗料組成物の粘度を塗装可能な範囲にするために、通常1,000〜100,000、好ましくは3,000〜60,000、更に好ましくは5,000〜30,000である。
【0013】
《ラジカル重合性化合物(M)》
本発明におけるラジカル重合性化合物(M)としてはアクリル基を有する化合物である。
例えば、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ビスフェノールA、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート、その他活性二重結合を持つアクリロイルモルホリン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルジビニルエーテル、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0014】
さらには、フタル酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ブタジオール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ポリアミドと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、所望とする塗膜の硬度と耐擦傷性に合わせて上記ラジカル重合性化合物(M)を1種以上適用するが、ウレタンアクリレート(U)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0016】
これらの中で、特に耐擦傷性に優れた塗膜を得るために、ラジカル重合性化合物(M)として、ウレタン樹脂にアクリル基を有するウレタンアクリレート(U)を含有することが好ましく、(U)の含有量は、ラジカル重合性化合物(M)100重量部に対して通常1〜100重量部、好ましくは50〜100重量部、更に好ましくは70〜100重量部である。
【0017】
ウレタンアクリレート(U)は、ジイソシアネート化合物とグリコール種の付加反応により重合を行い、残存するイソシアネート基にさらに水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートを付加することで合成される。ジイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6 XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)である。これらの中で、HDI、H6 XDI、IPDIが好ましい。
【0018】
また、グリコール種は、例えば、ピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール等のポリカーボネートポリオール;エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、炭素数が7〜22のアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、炭素数が17〜20のアルカン−1,2−ジオール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノール、その他の炭素数が8〜24の脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニット等である。これらの中で、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオールが好ましい。
【0019】
さらに、水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類が挙げられる。
【0020】
《光開始剤(C)》
本発明の光開始剤(C)とは、紫外線、電子線、放射線等でラジカルを発生することが可能な化合物であり、具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾイルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド等のパーオキシド化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物を挙げることができる。
【0021】
好ましい開始剤の例としては、ベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであり、これらを単独で使用、または、2種以上併用してもよい。
【0022】
本発明のアクリル系重合体(P)とラジカル重合性化合物(M)との割合は、金属蒸着面上に、優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得るため、通常アクリル系重合体(P)10〜90重量部、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、好ましくは、(P)15〜90重量部、(M)10〜85重量部、更に好ましくは、(P)20〜90重量部、(M)10〜80重量部である。
【0023】
光開始剤(C)の割合は、(P)と(M)との総合計100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であり、更に好ましくは1〜8重量部である。
【0024】
本発明の光硬化性樹脂組成物に、有機溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、染料、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤、はじき防止剤、湿潤剤、分散剤、だれ防止剤、カップリング剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0025】
このような光硬化型塗料組成物を基材に塗布する方法に限定はなく、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコートなどの常法によって行われる。十分な硬度と被膜にクラックを発生させず良好な密着性を発現させるためには、塗布量として、硬化被膜の膜厚が3〜30μmであることが好ましい。基材に塗布された被膜を硬化させる手段としては、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線を照射する公知の方法を用いることができ、紫外線発生源としては実用的、経済性の面から紫外線ランプが一般に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光等の紫外線などが挙げられる。照射雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。金属蒸着は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、メッキなどの方法を用いて行われるが、真空蒸着が生産性の点からより好ましい。蒸着される金属としては、Al、Zn、Cu、Ag、Au、Sn、Ni、あるいはこれらの合金などである。
【0026】
基材となるプラスチックとしては、各種の合成樹脂成型品が挙げられる。合成樹脂成型品の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、繊維強化複合材料(FRP)、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられる。また合成樹脂成型品とは、これらの樹脂からなるシート状成型品、フィルム状成型品、各種射出成型品などである。
本発明の光硬化性樹脂組成物よって得られた塗膜は、種々のプラスチック成型体上に金属蒸着された面に優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れたものとなるため、自動車部品、電化製品部品、容器、建築材料などの用途で好適に使用できるものである。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
メチルメタクリレート(MMA)85g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)14g、メタクリル酸(MAA)1g、アゾビスイソブチロニトリル1gの混合溶液を、トルエン85g、n−ブタノール37gを仕込んだ反応容器に、空気気流下で100℃で4時間かけて滴下した。さらに100℃を維持し、重合を完結させるためにアゾビスイソブチロニトリル0.2gを1時間ごとに2回添加した。滴下終了から3時間後に冷却し、不揮発分45%、重量平均分子量25,000のアクリル系重合体(P)溶液を得た。さらに、この重合体溶液111g(重合体50g)にオレスターRA1574(三井化学社製:ウレタンアクリレート)50g、イルガキュア184(チバスペシャリティ社製の光開始剤)3gを混合し、光硬化型塗料組成物を得た。
【0029】
[実施例2、3,4]
アクリル系重合体(P)を構成する単量体種、及びラジカル重合性化合物(M)の種類と混合比率を表1に示すように変更し、実施例1と同様な操作により光硬化型塗料組成物を得た。
【0030】
[比較例1、2]
重合体(P)を構成する単量体種、及びラジカル重合性化合物(M)の種類と混合比率を表1に示すように変更し、実施例1と同様な操作により比較例1、2の光硬化型塗料組成物を得た。
【0031】
[評価方法]
上記で得られた光硬化型塗料組成物を、以下に示す方法で試験を行った。その結果を表2に示す。
【0032】
<分子量の測定>
アクリル系重合体(P)の分子量をGPC(Shodex GPC SYSTEM−11:昭和電工製)でRI検出器により、重量平均分子量を測定した。
【0033】
<水酸基価の測定>
水酸基価をJIS K0070 によって評価した。
【0034】
<紫外線硬化条件>
アルミ蒸着したABS板の蒸着面上に、光硬化型塗料組成物をアプリケーターで10μm塗装し、60℃x1minで乾燥した後、100w/cmの高圧水銀灯を3灯有する紫外線照射装置で照射距離10cm、ライン速度10m/minで紫外線を照射した。これで得られた同試験片を、以降の試験に供した。
【0035】
<密着性>
密着性を碁盤目試験(JIS K5600−5−6)によって評価した。
【0036】
<硬度>
鉛筆硬度を(JIS K5600−5−6) によって評価した。実用的にはHB以上である。
【0037】
<耐擦傷性>
テーバー磨耗試験法(JIS K5600−5−9)によりCS−10F磨耗輪で荷重250g、50回転で外観の変化を調べた。外観の良好なものを◎、塗膜に傷が極わずかに入ったものを○、塗膜に傷が入り白くなったものを△、塗膜に傷が入り完全に金属様が失われたものを×とした。
[評価結果]
【0038】
【表1】

【0039】
MMA:メチルメタアクリレート
ST:スチレン
HEAM:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
MAc:メタクリル酸
RA1574:(オレスターRA1574(ウレタンアクリレート)三井化学株式会社製)
PE−3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート
NPG−A:ネオペンチルグリコールジアクリレート
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、生産性が高く省エネルギーである紫外線硬化型の塗料であり、かつプラスチック成型体上に施された金属蒸着面の保護コート剤として優れた特性を発揮するものである。具体的には、ランプ反射板、グリル、ノブ、エンブレム等の自動車部品や、化粧品などの容器、また携帯電話、自動販売機などの部品に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有し、分子量が1,000〜100,000であるアクリル系重合体(P)10〜90重量部と、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、及び(P)と(M)との総合計100重量部に対して、光開始剤(C)0.1〜15重量部を含むことを特徴とする金属蒸着上塗り用光硬化型塗料組成物。
【請求項2】
ラジカル重合性化合物(M)100重量部中に、ウレタンアクリレート(U)を1〜100重量部含む請求項1記載の金属蒸着上塗り用光硬化型塗料組成物。
【請求項3】
プラスチック基材上に金属蒸着し、その上に請求項1又は2記載の上塗り用光硬化型塗料組成物を塗布し、さらにこれに紫外線を照射して塗料組成物を硬化させることによって得られたプラスチック成型体。

【公開番号】特開2006−169308(P2006−169308A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360874(P2004−360874)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】