説明

金属表面の強化

銅または銅合金基板および基板の表面上に少なくとも1つの金属ベースの層を含むデバイスの耐腐食性、耐摩耗性および耐接触性を強化する方法および組成物。該組成物は、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル、リン酸、リン酸塩、リン酸塩、リン酸エステル、およびこれらの混合物から成る群から選択される酸化リン化合物と、窒素含有官能基を含む有機化合物と、25℃での測定で50dyne/cm未満の表面張力を有する溶媒と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子および超小型電子デバイスの製造に使用される銅基板の腐食保護、はんだ付け性、耐摩耗性、および耐接触性を改善する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属表面コーティングは通常、腐食保護および他の所望の機能特性を提供するために、電子デバイスおよび装飾品に適用される。銅または銅合金を含む電子デバイスは、典型的には、腐食保護、高表面耐接触性、および耐摩耗性を提供する金属表面コーティングを含む。
【0003】
電子産業において、金属コネクタおよびリードフレームは、1つ以上の金属層を含む表面コーティングで被覆することができる。例えば、金属表面コーティングは、卑金属下層および貴金属の上層を含み得る。コネクタ製造において、ニッケル下層等の卑金属下層は、銅または銅合金基板上に被覆される。卑金属は、拡散障壁の役割を担う。次いで、金、パラジウム、銀、またはこれらの合金等の貴金属上層は、卑金属下層コーティング上に被覆される。貴金属上層は、耐腐食性、耐摩耗性および高伝導性を提供する。1つの金属表面コーティングにおいて、ニッケル下層は、金上層の硬度を増加する。この金属表面は、通常、「ニッケルで硬化された金」または単に「硬質金」と称される。リードフレーム製造において、ニッケル基板は、最初にパラジウム層で被覆され、次いで、金のトップコートで上塗りされる。これらのコーティングの変形は、卑金属合金下層、貴金属合金上層、および2つ以上の卑金属下層ならびに/または2つ以上の貴金属上層を含む金属表面コーティングを含む。
【0004】
金およびパラジウム等の貴金属を使用することの明らかな不利点は、費用がかかることである。費用効率の良いコネクタは、所望の機能特性を失わずに、できるだけ薄くした貴金属コーティング層を使用する。従って、該産業では、典型的には、電子コネクタに約1.0μm台の厚さの貴金属層を使用する。より薄い層は、コーティングでの空隙率を非常に増大するという不利点に見舞われる。使用するうちに、空隙率が高い薄層は、表面への卑金属および銅拡散に対し効果がない。腐食環境に曝された卑金属および銅は腐食し、腐食生成物は被覆表面に移動し得、表面接触の伝導性を低下させる。さらに、薄い貴金属層は、適用中に摩耗し、コネクタの有用寿命を短縮し得る。
【0005】
印刷回路基盤(PCB)の製造において、長年、銅回路網を含む裸基盤は、ホットエアはんだレベリング(HASL)プロセスに従い、共融スズ−鉛はんだコーティングで仕上げられてきた。有害物質(RoHS)指令の規制により、産業は、裸基板の最終仕上げの構成成分として鉛の使用を控えている。代替的な最終仕上げの1つは、無電解ニッケル浸漬金(ENIG)である。別の代替的な最終仕上げは、銅回路網への直接的な銀の浸漬置換層である。
【0006】
PCB製造におけるENIG代替の最終仕上げに関して、耐腐食性および耐摩耗性の増加のために、金が銅基板への金属表面コーティングとして適用されてもよい。典型的には、金は、銅基板に直接堆積されるではなく、介在する卑金属下層に堆積される。卑金属下層は、典型的には、電無電解で堆積されるニッケルであるが、銅または銅合金基板上に堆積される。卑金属は、拡散障壁としての役割を果たす。次いで、金、パラジウム、またはこれらの合金、あるいはこれらの層等の貴金属上層は、典型的には卑金属下層コーティングに、浸漬置換方法で堆積される。貴金属上層(すなわち、金、パラジウム、金−パラジウム合金、または金の層で上塗りされたパラジウムの層)は、耐腐食性、耐摩耗性および高い伝導性を提供する。従来の無電解ニッケル浸漬金方法において、無電解堆積されたニッケル下層は、浸浸メッキされた金上層の硬度を増加させる。ENIGは、一般汚染物質に弱く、高湿に敏感で、腐食により機能しなくなる傾向がある。
【0007】
別の代替的な最終仕上げは、銅回路網への直接的な銀の浸漬置換層である。銀は、概して、浸漬置換メッキにより堆積され、ここでは、以下の反応に従い、メッキ組成物に存在する銀イオンが、表面の銅原子と接触して還元される。
Cu(s)+2Ag(aq)=>Cu2+(aq)+2Ag(s)
還元−酸化反応は、銀イオンを銀金属に還元し、銅基板上に粘着性の銀の層を形成する。該プロセスは、銅の表面が銀の層で覆われると、銅原子は、もはやさらなる銀イオンを還元するためにアクセスできないという点で、自己制限的なものである。銅上での銀浸漬置換膜の典型的な厚さは、約0.05から約0.8μmの範囲であり得る。例えば、参照することによってその全体が本明細書に記載されているものとみなす(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照のこと)。
【0008】
PCB製造における代替的な最終仕上げとしての、例えば、金および銀等の浸漬メッキされた貴金属コーティングに認められる具体的な問題は、銅と貴金属との間の特定の裸銅界面での銅塩の流出腐食である。例えば、浸漬銀置換メッキプロセスは、PCBの銅配線、特にメッキ貫通孔および高アスペクト比ブラインドビアを十分に被覆しない可能性がある。ビアおよびメッキ貫通孔を包囲する環状環として、これらの位置で腐食が明らかになる。
【0009】
さらに、銀は、環境、特に、紙加工設備、ゴム加工設備および高汚染環境に存在する還元硫黄化合物(例えば、硫化水素)により硫化されやすい。十分な銀の硫化は、局在化された孔を生じ得、これは、該環境に銅を曝す可能性がある。湿気および環境汚染は、銅を酸化および硫化して、銀の層の孔を通して流出する可能性がある銅塩を形成し得る。
【0010】
依然として貴金属の上層が提供する利点を保持しながら、できるだけ少ない貴金属を使用する金属コーティング表面の必要性がコネクタ産業において継続して存在する。さらに、PCB製造において、腐食に強い銅回路網へのENIGおよび浸漬銀最終仕上げの必要性も継続して存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,955,141号
【特許文献2】米国特許第6,319,543号
【特許文献3】米国特許第6,395,329号
【特許文献4】米国特許第6,860,925号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の態様は、卑金属層で被覆する銅または銅合金デバイスの耐摩耗性、耐腐食性および耐接触性を強化するための組成物および方法について言及し得る。卑金属層は、そこで、貴金属上層で被覆される卑金属下層であり得る。本発明は、依然として、耐腐食性、耐摩耗性および耐接触性の利点を保持しながら、超薄な貴金属上層の使用を可能にする。
【0013】
したがって、簡潔の述べると、本発明は、銅または銅合金基板、および該基板の1つの表面における少なくとも1つの金属ベースの層を含む、デバイスの耐摩耗性、耐腐食性および耐接触性を強化するための組成物を対象とする。該組成物は、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル、リン酸、リン酸塩、リン酸エステルおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される酸化リン化合物と、アミン、窒素を含有する芳香族複素環およびそれらの組み合わせから成る群から選択される窒素含有官能基を含む有機化合物と、25℃での測定で約50dyne/cm未満の表面張力を有する溶媒と、を含む。
【0014】
本発明は、銅または銅合金基板、および該基板の1つの表面における少なくとも1つの金属ベースの層を含む、デバイスの耐摩耗性、耐腐食性および耐接触性を強化するための方法をさらに対象とする。該方法は、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル、リン酸、リン酸塩、リン酸エステルおよびその組み合わせから成る群から選択される酸化リン化合物から成るリン酸化化合物と、アミン、窒素を含有する芳香族複素環およびそれらの組み合わせから成る群から選択される窒素含有官能基を含む有機化合物と、25℃での測定で約50dyne/cm未満の表面張力を有する溶媒と、を含む組成物に、該デバイスを曝すステップを含む。
【0015】
本発明は、1つの表面を有する銅基板と、該銅基板の表面に堆積された1つの表面を有する卑金属下層と、を含む電子デバイスをさらに対象とする。さらに、銅基板の表面は、窒素を含有する芳香族複素環を含む第1の保護有機膜を含み、卑金属下層の表面は、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル、リン酸、リン酸塩、リン酸エステルおよびその組み合わせから成る群から選択される酸化リン化合物を含む第2の保護有機膜を含む。
【0016】
他の目的および特徴は、一部は明らかであり、一部は以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コバルト硬化金を含む膜の厚さが減少すると、空隙率が増加することを示すグラフである。
【図2】ニッケル下層の表面に存在し得るニッケル酸化物と反応することにより、ニッケル下層上に保護膜を形成する酸化リン化合物を示す。酸化リン化合物は、さらに、金上層の孔を充填する。
【図3】ニッケル下層の表面に存在し得るニッケル酸化物と反応することにより、ニッケル下層上に保護膜を形成する酸化リン化合物、および表面の銅と反応することにより、銅または銅合金基板上に保護膜を形成する窒素を含有する芳香族複素環を示す。酸化リン化合物は、さらに、金上層の孔を埋め、窒素を含有する芳香族複素環は、ニッケル下層の孔を埋める。
【図4】耐用期間中に発生し、多孔性金属表面コーティングに起因する軽度の(A)、中程度の(B)、重度の(C)および全体な(D)銅酸化物の表面被覆率を示す電子コネクタの実施例である。
【図5】ニッケル下層の表面に存在し得るニッケル酸化物と反応することにより、ニッケル下層上に保護膜を形成する酸化リン化合物、表面の銅と反応することにより、銅または銅合金基板上に保護膜を形成する窒素を含有する芳香族複素環、および表面の金と反応することにより、金上層上に保護膜を形成するアルキルチオールを示す。酸化リン化合物は、さらに、金上層の孔を埋め、窒素を含有する芳香族複素環は、ニッケルの下層の孔を埋める。
【図6A】2.5μmのニッケル下層および0.5μmの硬質金の上層でメッキされた銅合金基板を含む試験片の写真である。試験片は、(A)未処理、(B)比較実施例1の従来の表面処理組成物で処理され、および(C)比較実施例1の従来の表面処理組成物で処理され、次いで、24時間のSO空隙率試験に供した。
【図6B】2.5μmのニッケル下層および0.5μmの硬質金の上層でメッキされた銅合金基板を含む試験片の写真である。試験片は、(A)未処理、(B)比較実施例1の従来の表面処理組成物で処理され、および(C)比較実施例1の従来の表面処理組成物で処理され、次いで、24時間のSO空隙率試験に供した。
【図6C】2.5μmのニッケル下層および0.5μmの硬質金の上層でメッキされた銅合金基板を含む試験片の写真である。試験片は、(A)未処理、(B)比較実施例1の従来の表面処理組成物で処理され、および(C)比較実施例1の従来の表面処理組成物で処理され、次いで、24時間のSO空隙率試験に供した。
【図7】硬質金上層の厚さおよび処理組成物の関数として空隙率指数を示すグラフである。サンプルは、1.0μm、0.5μmおよび0.25μmの厚さの硬質金層を有する未処理の金属表面、0.5μmおよび0.25μmの厚さの硬質金層を有する比較実施例1の表面処理組成物で処理した金属表面、および0.25μmの厚さの硬質金層を有する実施例1の表面処理組成物で処理した金属表面を含む。
【図8】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の写真である。試験片は、本発明の表面処理組成物で処理し、実施例8に説明する空隙率の試験に供した。
【図9】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。試験片は、本発明の表面処理組成物で処理し、実施例8に説明する空隙率の試験に供した。
【図10】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の写真である。試験片は、本発明の表面処理組成物で処理し、実施例9に説明する空隙率の試験に供した。
【図11A】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図11B】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図11C】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図11D】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図12A】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図12B】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図12C】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図12D】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図13A】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅または銅合金基板および前記基板の表面上に少なくとも1つの金属ベースの層を含むデバイスの耐腐食性、耐摩耗性および耐接触性を強化する組成物であって、
ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル、リン酸、リン酸塩、リン酸エステルおよびこれらの混合物から成る群から選択される酸化リン化合物と、
アミン、窒素を含有する芳香族複素環およびこれらの組み合わせから成る群から選択される窒素含有官能基を含む有機化合物と、
25℃での測定で約50dyne/cm未満の表面張力を有する溶媒と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記酸化リン化合物は、構造(I):

を有し、
式中、Rは、1から24個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、RおよびRは、それぞれ独立してまたは共に、水素、電荷平衡カチオンまたは1個の炭素原子から4個の炭素原子を有するヒドロカルビルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸化リン化合物は、メチルホスホン酸、ジメチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、tert−ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、n−オクチルホスホン酸、n−デシルホスホン酸、n−ドデシルホスホン酸、(12−ホスホノドデシル)ホスホン酸、n−テトラデシルホスホン酸、n−ヘキサデシルホスホン酸、n−オクタデシルホスホン酸、ジイソオクチルホスホン酸、これらの塩、これらのエステル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化リン化合物は、メチレンジホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸(2−イソプロピルフェニル)ホスホン酸、ベンジルホスホン酸、(オルト−トリル)ホスホン酸、(メタ−トリル)ホスホン酸、(パラ−トリル)ホスホン酸、(4−エチルフェニル)ホスホン酸、(2,3−キシリル)ホスホン酸、(2,4−キシリル)ホスホン酸、(2,5−キシリル)ホスホン酸、(3,4−キシリル)ホスホン酸、(3,5−キシリル)ホスホン酸、ホスホノ酢酸、3−ホスホノプロピオン酸、6−ホスホノヘキサン酸、11−ホスホノウンデカン酸、16−ホスホノヘキサデカン酸、これらの塩、これらのエステル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化リン化合物は、構造(II):

を有し、
式中、Rは、1から24個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、RおよびRは、それぞれ独立してまたは共に、水素、電荷平衡カチオンまたは1個の炭素原子から4個の炭素原子を有するヒドロカルビルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記酸化リン化合物は、エチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ジイソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸、tert−ブチルホスホン酸、トリイソブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、n−オクチルホスホン酸、n−デシルホスホン酸、n−ウンデシルホスホン酸、n−ドデシルホスホン酸、n−トリデシルホスホン酸、n−テトラデシルホスホン酸、n−ヘキサデシルホスホン酸、n−オクタデシルホスホン酸、アリルリン酸塩、フェニルリン酸塩、ジフェニルリン酸塩、1−ナフチルリン酸塩、2−ナフチルリン酸塩、これらの塩、これらのエステル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
窒素含有官能基を含む前記有機化合物は、前記アミンであり、構造(III):

を有し、
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミンは、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、ネオ−ペンチルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、1−アミノオクタン、2−アミノオクタン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノテトラデカン、1−アミノペンタデカン、1−アミノヘキサデカン、1−アミノヘプタデカン、1−アミノオクタデカン、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される1級アミンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アミンは、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される2級アミンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記アミンは、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリオクタデシルアミン、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される3級アミンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記アミンは、エチレンジアミン、2−(ジイソプロピルアミノ)エチルアミン、N,N′−ジエチルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、1−ジメチルアミノ−2−プロピルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、N−メチル−−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン等から成る群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
窒素含有官能基を含む前記有機化合物は、窒素を含む芳香族複素環であり、以下の構造(IV):

を有し、
式中、R、R、R、RおよびRは、炭素および窒素から成る群から選択される原子であり、R、R、R、RおよびR基のうちの1から4個は窒素であり、R、R、R、RおよびR基のうちの1から4個は、炭素であり、R11、R22、R33、R44およびR55は、それぞれ独立して、水素、炭素、硫黄、酸素および窒素から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
11、R22、R33、R44およびR55のうちの任意の1つ以上は、炭素であり、前記炭素は、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有する脂肪族基の一部、または2個の炭素原子から14個の炭素原子を有するアリール基の一部である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
任意の2つの連続したR11、R22、R33、R44およびR55は、それらが結合する炭素または窒素原子と共に6員芳香族環を形成する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
窒素を含む前記芳香族複素環は、ピロール(1H−アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、イソインドール、ベンズイミダゾール(1,3−ベンゾジアゾール)、インダゾール(1,2−ベンゾジアゾール)、1H−ベンゾトリアゾール、2H−ベンゾトリアゾール、イミダゾ[4,5−b]ピリジン、インドール(1H−ベンゾ[b]ピロール)、プリン(7H−イミダゾ(4,5−d)ピリミジン)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
窒素を含む前記芳香族複素環は、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ベンズイミダゾール(1,3−ベンゾジアゾール)、1H−ベンゾトリアゾール、および2H−ベンゾトリアゾールから成る群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記酸化リン化合物の濃度は、0.1質量%から5質量%の間であり、窒素を含む前記芳香族複素環の濃度は、0.1質量%から1.0質量%の間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記溶媒は、25℃での測定で40dyne/cm未満の表面張力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記溶媒は、パラフィン系ミネラルオイル溶媒またはイソパラフィン系ミネラルオイル溶媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記溶媒は、ナフテン系オイル溶媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記溶媒は、少なくとも90℃の沸点を有するアルコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記アルコールは、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、他のペンタノール類、1−ヘキサノール、他のヘキサノール類、ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノールおよび他のオクタノール類、1−デカノールおよび他のデカノール類、フェノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ならびにこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記溶媒は、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、他のペンタノール類、1−ヘキサノール、他のヘキサノール類、ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノールおよび他のオクタノール類、1−デカノールおよび他のデカノール類、フェノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−エトキシ−1−プロパノールブテン−ジオール、ヘキセン−ジオール、およびブチンジオール等のアセチレン類、グリセロール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ならびにこれらの組み合わせから成る群から選択されるアルコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記溶媒は、水および界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記界面活性剤は、ポリエーテル、エトキシル化されたグリセロールエステル、硫酸エステル、およびこれらの組み合わせを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
以下の一般構造(V):

を有するチオールをさらに含み、
式中、Rは、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビル、5から14個の炭素原子を有するアリール、または前記ヒドロカルビルは1個の炭素原子から24個の炭素原子を有し、前記アリールは5から14個の炭素原子を有するアリールヒドロカルビルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
は、前記ヒドロカルビルであり、前記チオールは、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、2−プロペン−1−チオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、2,2−ジメチル−1−プロパンチオール、1−ヘキサンチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1−ヘプタンチオール、2−エチルヘキサンチオール、1−オクタンチオール、1,8−オクタンジチオール、1−ノナンチオール、1,9−ノナンジチオール、1−デカンチオール、1−アダマンタンチオール、1,11−ウンデカンジチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、tert−ドデシルメルカプタン、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール、1−オクタデカンチオール、1−ノナデカンチオール、1−イコサンチオール、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記Rは、前記アリールまたは前記アリールヒドロカルビルを含み、前記チオールは、ベンゼンチオール、2−メチルベンゼンチオール、3−メチルベンゼンチオール、4−メチルベンゼンチオール、2−エチルベンゼンチオール、3−エチルベンゼンチオール、4−エチルベンゼンチオール、2−プロピルベンゼンチオール、3−プロピルベンゼンチオール、4−プロピルベンゼンチオール、2−tert−ブチルベンゼンチオール、4−tert−ブチルベンゼンチオール、4−ペンチルベンゼンチオール、4−ヘキシルベンゼンチオール、4−ヘプチルベンゼンチオール、4−オクチルベンゼンチオール、4−ノニルベンゼンチオール、4−デシルベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン、2,4−キシレンチオール、フルフリルメルカプタン、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオール、4,4′−ジメルカプトビフェニル、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
以下の一般構造(VI)を有するジスルフィドをさらに含み、

式中、RおよびRは、それぞれ独立して、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビル、5から14個の炭素原子を有するアリール、または前記ヒドロカルビルは1個の炭素原子から24個の炭素原子を有し、前記アリールは5から14個の炭素原子を有するアリールヒドロカルビルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記RおよびRは、それぞれヒドロカルビルであり、前記ジスルフィドは、とりわけ、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジイソブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−n−ペンチルジスルフィド、ジ−ネオペンチルジスルフィド、ジ−n−ヘキシルジスルフィド、ジ−n−ヘプチルジスルフィド、ジ−n−オクチルジスルフィド、ジ−n−ノニルジスルフィド、ジ−n−デシルジスルフィド、ジ−n−ウンデシルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−n−トリデシルジスルフィド、ジ−n−テトラデシルジスルフィド、ジ−n−ペンタデシルジスルフィド、ジ−n−ヘキサデシルジスルフィド、ジ−n−ヘプタデシルジスルフィド、ジ−n−オクタデシルジスルフィド、ジ−n−ノナデシルジスルフィド、およびジ−n−イコシルジスルフィドから成る群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記RおよびRは、それぞれ、前記アリールまたは前記アリールヒドロカルビルであり、前記ジスルフィドは、ジベンジルジスルフィド、ジチエニルジスルフィド、2−ナフチルジスルフィド、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
窒素含有官能基を含む前記有機化合物は、硫黄含有官能基をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
前記有機化合物は、ヒドロカルビル鎖を介して窒素含有官能基とチオールを連結するヒドロカルビル連結基を含み、一般構造(VII):

を有し、
式中、Rは、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビル、5から14個の炭素原子を有するアリール、または前記ヒドロカルビルは1個の炭素原子から24個の炭素原子を有し、前記アリールは5から14個の炭素原子を有するアリールヒドロカルビルであり、前記RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子または水素原子である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記有機化合物は、ヒドロカルビル鎖を介して窒素含有官能基とジスルフィドを連結するヒドロカルビル連結基を含み、一般構造(VIII):

を有し、
式中、RおよびRは、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビル、5から14個の炭素原子を有するアリール、または前記ヒドロカルビルは1個の炭素原子から24個の炭素原子を有し、前記アリールは5から14個の炭素原子を有するアリールヒドロカルビルであり、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子または水素原子である、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
銅または銅合金基板および前記基板の表面上に少なくとも1つの金属ベースの層を含むデバイスの耐腐食性、耐摩耗性および耐接触性を強化する方法であって、前記デバイスを請求項1から34のうちの1項に記載の組成物に曝露するステップを含む、方法。

【図13A】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図13A】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図13D】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例9に説明する空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図14A】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図14B】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図14C】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図14D】ニッケル下層および金上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に表面処理組成物で処理しなかった。
【図15A】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図15B】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図15C】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図15D】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流、およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図16A】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図16B】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図16C】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【図16D】ニッケルの下層および金の上層で被覆された銅試験片の顕微鏡写真である。これらの参照試験片は、実施例10に説明する、高温再流およびそれに続く空隙率の試験に供する前に本発明の表面処理組成物で処理した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、保護有機膜を金属表面コーティング、特に、銅基板上の金属表面コーティングに適用するための表面処理方法および表面処理組成物を対象とする。該表面処理は、1.0μmよりも大幅に薄い貴金属上層を含む、金属表面コーティングの耐腐食性、耐接触性および耐摩耗性を強化するのに効果的であることが見出された。本発明の有機保護膜を用いた保護に適切な銅基板は、印刷回路基盤(PCB)の銅回路網、チップキャリア、半導体基板、金属リードフレーム、コネクタおよび他のはんだ付け可能な銅基板を含む。例示的な金属表面コーティングは、卑金属層を含む。別の例示的な金属表面コーティングは、卑金属下層および貴金属の上層を含む。
【0019】
表面処理方法は、卑金属下層、および存在する場合、貴金属の上層に存在し得る孔を閉塞するのに効果的な添加剤を含む表面処理組成物に、金属表面コーティングを有する銅基板を曝すステップを含む。したがって、本発明の組成物は、銅または銅合金基板まで孔を効果的に閉塞できる。この強化された孔閉塞は、当該分野に既知の組成物と比較して腐食を阻害するため、摩耗および耐接触性を強化するため、そして電子デバイスの有用耐用年数を延ばすためにより効果的である。本発明は、電子デバイスに照らして説明されるが、表面処理方法および表面処理組成物は、その上に金属表面コーティングを有する銅または銅合金基板を含むいかなる物体にも適用可能である。
【0020】
したがって、本発明は、このような表面処理組成物をさらに対象とする。本発明の表面処理に使用する表面処理組成物は、酸化リン化合物と、アミンまたは窒素を含有する芳香族複素環等の窒素含有官能基を含む有機化合物と、溶媒とを含む。任意選択で、該組成物は、銅または銅合金基板、および存在する場合、貴金属の上層に対してさらなる保護を提供するアルキルチオールまたはジスルフィド等の硫黄含有官能基を含む有機化合物を含む。好ましくは、溶媒は、低表面張力溶媒である。
【0021】
本発明の表面処理組成物は、酸化リン化合物を含む。該酸化リン化合物は、表面処理組成物に添加され、卑金属層と反応し、卑金属層に保護有機膜を与える。酸化リン化合物は、また、貴金属の上層に存在し得る孔を充填することができる。費用を抑えるために、使用される場合、貴金属の上層は、好ましくは、超薄型、すなわち、当該分野で既知の貴金属コーティングの厚さである約1μmから2μmよりも大幅に薄い。薄い貴金属の上層の欠点は、厚さの減少に応じて空隙率が急激に増加することである。図1を参照すると、グラフは、貴金属の上層の厚さが減少すると空隙率が増加することを示す。空隙率の増大は、1μm未満の厚さで特に顕著である。したがって、酸化リン化合物は、本発明の表面処理組成物に添加され、貴金属上層の孔により露出される卑金属と反応する。貴金属上層の孔により露出される卑金属は、酸素を含有する腐食環境で容易に酸化され得るため、その表面に金属酸化物および金属水酸化物を含む。有利には、卑金属層の表面の卑金属酸化物および金属水酸化物は、酸化リン化合物と反応し、金属酸化物および金属水酸化物と酸化リン化合物との化学結合を形成する。表面水酸化物を有するニッケル等の例示的な卑金属と例示的なリン酸化物との反応は、以下のように生じる。
Ni(OH)2(s)+2R−PO(aq)=>Ni−(O−PO−R)+2H
上の反応に示す一般構造を有する各リン酸化物は、卑金属層の表面の1、2または3個の酸素原子と反応できる。その反応は、酸化リン化合物を卑金属層の表面の卑金属酸化物に化学的に結合させる一方で、図2に示すように貴金属の上層の孔も埋める。この点で、リン酸化物は、スズ、ニッケル、亜鉛、クロム、鉄、チタンおよびアルミニウム等の酸化物および水酸化物と反応することに留意されたい。
【0022】
本発明の組成物への添加に適切な酸化リン化合物は、好ましくは、ミセル界面活性物質に類似する構造を有する、すなわち、親水性ヘッド基および疎水性成分を有する。上述の通り、リン酸化物部分を有する親水性ヘッド基は、自己集合反応で金属酸化物および水酸化物と反応し、結合する。疎水性成分は、例えば、スズまたはニッケル等の卑金属の表面上に水および空中の水分をはじく高密度な疎水性膜を形成する。従って、酸化リン化合物は、好ましくは、疎水性基に結合するリン酸またはリン酸部分を含む。例えば、リン酸またはリン酸部分に結合する疎水性基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり得る。
【0023】
例示的な酸化リン化合物は、以下の一般構造(I)を有するホスホン酸誘導体であり、
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式中、Rは、2個の炭素原子から24個の炭素原子等、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、RおRよびは、それぞれ独立してまたは共に水素、電荷平衡カチオンまたは1個の炭素原子から4個の炭素原子を有するヒドロカルビルである。Rのヒドロカルビルは、分鎖または直鎖、置換または非置換であり得る。Rのヒドロカルビルは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアルキルアリールまたはアリールアルキル等のそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、Rのヒドロカルビルは、1から18個の炭素原子を有するアルキル鎖等のヒドロカルビル鎖が結合されるリン原子に結合するフェニル基を含み得る。別の実施例において、Rのヒドロカルビルは、リン原子に結合する1から18個の炭素原子を有するアルキル鎖を含み得、フェニル基をさらに含む。好ましくは、Rのヒドロカルビルは、約2個の炭素原子から約24個の炭素原子、好ましくは、約2個の炭素原子から22個の炭素原子、より好ましくは、約4個の炭素原子から22個の炭素原子、さらにより好ましくは、約6個の炭素原子から約18個の炭素原子、またより好ましくは、約8個から約18個の炭素原子を含むアルキル鎖を含む。
【0024】
特に記載がない限り、置換ヒドロカルビルは、炭素鎖原子が窒素、酸素、シリコン、リン、ボロン、硫黄またはハロゲン原子等のヘテロ原子と置換される部分を含む炭素以外の少なくとも1つの原子と置換される。ヒドロカルビルは、以下の1つ以上の置換基と置換され得る:ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ヒドロキシカルボニル、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、ホスホノ、シアノ、チオール、ケタル、アセタル、エステルおよびエーテル。
【0025】
および/またはRは、水素であり得る。この場合、酸化リン化合物は、ホスホン酸である。Rおよび/またはRは、リチウム、カリウム、ナトリウムまたはカルシウム等の電荷平衡金属カチオンであり得る。電荷平衡カチオンは、また、アンモニウムであり得る。Rおよび/またはRが電荷平衡カチオン(水素以外)を含む時、酸化リン化合物は、ホスホン酸塩である。Rおよび/またはRは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチル等のヒドロカルビルであり得る。Rおよび/またはRがヒドロカルビルである時、酸化リン化合物は、ホスホン酸エステルである。
【0026】
酸化リン化合物は、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステルまたはそれらの混合物を含み得る。本発明の表面処理組成物に使用するために適切なアルキル基に結合するホスホン酸塩部分を有する例示的な酸化リン化合物は、メチルホスホン酸、ジメチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、tert−ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、n−オクチルホスホン酸、n−デシルホスホン酸、n−ドデシルホスホン酸、(12−ホスホノドデシル)ホスホン酸、n−テトラデシルホスホン酸、n−ヘキサデシルホスホン酸、n−オクタデシルホスホン酸、ジイソオクチルホスホン酸、それらの塩およびそれらのエステルを含む。本発明の表面処理組成物に使用するために適切な他のヒドロカルビル型に結合するホスホン酸部分を有する例示的な酸化リン化合物は、メチレンジホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸(2−イソプロピルフェニル)ホスホン酸、ベンジルホスホン酸、(オルト−トリル)ホスホン酸、(メタ−トリル)ホスホン酸、(パラ−トリル)ホスホン酸、(4−エチルフェニル)ホスホン酸、(2,3−キシリル)ホスホン酸、(2,4−キシリル)ホスホン酸、(2,5−キシリル)ホスホン酸、(3,4−キシリル)ホスホン酸、(3,5−キシリル)ホスホン酸、それらの塩およびそれらのエステルを含む。適切な化合物は、例えば、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ビニルホスホン酸およびZip−Chem Products(Morgan Hill、California)の石油10ナフタ(ZC−026)である。また、適切な化合物は、例えば、ホスホノ酢酸等のカルボン酸部分、3−ホスホノプロピオン酸、6−ホスホノヘキサン酸、11−ホスホノウンデカン酸、16−ホスホノヘキサデカン酸、それらの塩およびそれらのエステルを含むリン酸化合物等の二官能分子である。
【0027】
別の例示的酸化リン化合物は、以下の一般構造(II)を有するホスホン酸誘導体であり、
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式中、Rは、2個の炭素原子から24個の炭素原子等、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、RおRよびは、それぞれ独立してまたは共に水素、電荷平衡カチオンまたは1個の炭素原子から4個の炭素原子を有するヒドロカルビルである。Rのヒドロカルビルは、分鎖または直鎖、置換または非置換であり得る。Rのヒドロカルビルは、アルキル、アルケニル、アリールまたはアルキルアリールまたはアリールアルキル等のそれらの組み合わせを含んみ得る。例えば、Rのヒドロカルビルは、1から18個の炭素原子を有するアルキル鎖等のヒドロカルビル鎖に結合される酸素原子に結合するフェニル基を含み得る。別の実施例において、Rのヒドロカルビルは、酸素原子に結合する1から18個の炭素原子を有するアルキル鎖を含み得、フェニル基をさらに含む。好ましくは、Rのヒドロカルビルは、約2個の炭素原子から約24個の炭素原子、好ましくは、約2個の炭素原子から22個の炭素原子、より好ましくは、約4個の炭素原子から22個の炭素原子、さらにより好ましくは、約6個の炭素原子から約18個の炭素原子、またより好ましくは、約8個から約18個の炭素原子を含むアルキル鎖を含む。
【0028】
特に記載がない限り、置換されたヒドロカルビルは、炭素鎖原子が窒素、酸素、シリコン、リン、ボロン、硫黄またはハロゲン原子等のヘテロ原子と置換される部分を含む炭素以外の少なくとも1つの原子と置換される。ヒドロカルビルは、以下の1つ以上の置換基と置換され得る。ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ヒドロキシカルボニル、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、ホスホノ、シアノ、チオール、ケタル、アセタル、エステルおよびエーテル。
【0029】
および/またはRは、水素であり得、この場合、酸化リン化合物は、ホスホン酸である。Rおよび/またはRは、リチウム、カリウム、ナトリウムまたはカルシウム等の電荷平衡金属カチオンであり得る。電荷平衡カチオンは、また、アンモニウムであり得る。Rおよび/またはRが電荷平衡カチオン(水素以外)を含む時、酸化リン化合物は、ホスホン酸塩である。Rおよび/またはRは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチル等のヒドロカルビルであり得る。Rおよび/またはRがヒドロカルビルである時、酸化リン化合物は、ホスホン酸エステルである。
【0030】
酸化リン化合物は、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステルまたはそれらの混合物を含み得る。本発明の表面処理組成物に使用するために適切なアルキル基に結合するホスホン酸塩部分を有する例示的な酸化リン化合物は、エチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ジイソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸、tert−ブチルホスホン酸、トリイソブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、n−オクチルホスホン酸、n−デシルホスホン酸、n−ウンデシルホスホン酸、n−ドデシルホスホン酸、n−トリデシルホスホン酸、n−テトラデシルホスホン酸、n−ヘキサデシルホスホン酸、n−オクタデシルホスホン酸、それらの塩およびそれらのエステルを含む。本発明の表面処理組成物に使用するために適切な他のヒドロカルビル型に結合するホスホン酸塩部分を有する例示的な酸化リン化合物は、アリルホスホン酸塩、フェニルホスホン酸塩、ジフェニルホスホン酸塩、1−ナフチルホスホン酸塩、2−ナフチルホスホン酸塩、それらの塩およびそれらのエステルを含む。
【0031】
酸化リン化合物は、約0.01質量%(約0.1g/L)から約10質量%(約100g/L)の間、好ましくは、約0.1質量%(約1g/L)から約5質量%(約50g/L)の間、より好ましくは、約1質量%(約10g/L)等、約0.1質量%(約1g/L)から約2質量%(約20g/L)の間の濃度で、本発明の表面処理組成物に添加され得る。急速なコーティングを達成するために、酸化リン化合物は、好ましくは、少なくとも約0.01質量%(約0.1g/L)で組成物に添加される。最大濃度である約10質量%(約100g/L)は、酸化リン化合物の溶解度により決定され、したがって、酸化リン化合物が何であるかに依存して記載される量より多いまたは少なくなり得る。好適な組成物において、化合物は、約0.2質量%(約2.0g/L)から約2質量%(約20.0g/L)の間、例えば、約1質量%(約10g/L)または約12.4g/L等の濃度で添加されるn−オクタデシルホスホン酸である。
【0032】
本発明の表面処理組成物は、アミンまたは窒素を含有する芳香族複素環等の窒素含有官能基を含む有機化合物をさらに含む。アミンおよび/または窒素を含有する芳香族複素環は、表面処理組成物に添加され、銅または銅合金基板と反応し、それを保護する。超薄貴金属の上層は、より高い空隙率(図1を参照)により特徴付けられるが、卑金属下層も、ある程度の空隙率により特徴付けされ得る。従って、貴金属の上層および卑金属を通して連続した孔が存在する可能性があることが観察された。銅または銅合金基板まで貫通する孔の図示は図3を参照のこと。銅または銅合金基板にまで貫通する孔により特徴付けされる多孔性卑金属下層および貴金属の上層は、基板から表面への銅拡散を阻害するのに効果的ではなく、銅を腐食から保護するのに効果的ではない。従って、時間が経つと銅(I)および(II)酸化物が形成され、電子コネクタおよびPCB基板の表面を覆う可能性がある。重度の酸化物形成は、電子コネクタを非伝導性にさせ、その意図する目的を果たし得なくする。耐用期間中に発生し、多孔性金属表面コーティングに起因する軽度の(A)、中程度の(B)、重度の(C)および完全な(D)銅酸化物の表面被覆率を示す電子コネクタの実施例は、図4を参照のこと。
【0033】
卑金属下層の空隙率に関する課題のため、酸化リン化合物を含む組成物を用いて電子コネクタの表面処理は、成分表面の腐食に関連する銅酸化物を防止するのに効果的ではない可能性がある。したがって、本発明の組成物は、銅または銅合金基板と反応し、卑金属下層の孔を充填する、アミンまたは窒素を含有する芳香族複素環等の窒素含有官能基を含む有機化合物をさらに含む。アミンおよび/または窒素を含有する芳香族複素環を使用した孔の閉塞は、銅拡散に対する電子コネクタの表面への保護をさらに提供する。銅イオンは、アミンおよび複素環式官能基を含む化合物と錯体を形成できる。銅イオンとベンゾトリアゾールとの間の錯体等、これらの錯体のいくつかは不溶性である。特定の論理に拘束されることないが、銅または銅合金表面の露出により、銅上表面の銅(I)イオンおよび溶液中の銅(II)イオンは、芳香族複素環中の窒素と錯体化すると思われる。これらの錯体は、銅表面上に析出し、銅または銅合金の露出した領域に保護膜を形成する。代替的に、特定の論理に拘束されることはないが、アミン官能基中の電子対は窒素−銅結合を形成し、よって銅伝導層上に自己集合単層膜を形成し、該膜は、銅表面に結合するアミンの窒素原子を含むとも思われる。
【0034】
一実施形態では、アミンは、以下の一般構造(III)を有する1級アミン、2級アミンまたは3級アミンであり、
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式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有するヒドロカルビルである。ヒドロカルビルは、好ましくは、約6個の炭素原子から約18個の炭素原子を含む。ヒドロカルビルは、置換または非置換であり得る。典型的な置換基は、典型的に、1から4個の炭素原子を有する短炭素鎖分枝アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル置換基、およびフェニル、ナフテニル、窒素、酸素および硫黄を含む芳香族複素環等の芳香族を含む。他の置換基は、アミン、チオール、カルボキシレート、リン酸、ホスホン酸、硫酸、スルホン酸、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、エステルおよびエーテルを含む。
【0035】
好適な実施形態において、直鎖アルキルを含む1級アミンは、銅表面上により所望する高密度の自己集合単層を達成するため、R、RおよびRのうちの1つは、非置換ヒドロカルビルおよび直鎖アルキルであり、一方、R、RおよびRのうち2つは、水素である。本発明の組成物に使用される適切な例示的な1級アミンは、単一または組み合わせで、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、ネオ−ペンチルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、1−アミノオクタン、2−アミノオクタン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノテトラデカン、1−アミノペンタデカン、1−アミノヘキサデカン、1−アミノヘプタデカンおよび1−アミノオクタデカンを含む。
【0036】
別の実施形態では、R、RおよびRのうち2つは、非置換ヒドロカルビルおよび直鎖アルキルであり、一方、R、RおよびRのうちの1つは、水素であるため、アミンは2級アミンである。本発明の組成物に使用される適切な例示的な2級アミンは、単一または組み合わせで、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン等を含む。
【0037】
、RおよびRの全てが非置換ヒドロカルビルおよび直鎖アルキルである3級アミンは、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリオクタデシルアミン等を含む。
【0038】
また、エチレンジアミン、2−(ジイソプロピルアミノ)エチルアミン、N,N′−ジエチルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、1−ジメチルアミノ−2−プロピルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン等の、2つ以上のアミンを含む有機官能分子も適切である。
【0039】
別の実施形態では、銅表面と相互作用して保護する有機官能基は、窒素を含有する芳香族複素環である。窒素を含有する芳香族複素環は、加えて、銅伝導層の表面上の銅(I)イオンと相互作用することにより銅表面を保護すると思われる。銅(I)イオンとの相互作用は、銅伝導層の表面上に析出する不溶性銅(I)ベースの有機金属を含む膜を形成する。本析出も、アミン、特に、複素環式芳香族アミンが、銅伝導層の表面上に保護有機膜を形成する別の機構であると思われる。
【0040】
本発明の組成物に使用するのに適切な窒素を含む芳香族複素環は、5員環で窒素を含む(アゾール)。5員環は、窒素原子を含む複素環式環でもあり得る別の5員環または6員環と縮合され得る。さらに、芳香族複素環は、1つ以上の窒素原子を含み、典型的には、芳香族複素環は、1から4個の窒素原子を含む。アゾールは、以下の一般構造(IV):
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を有することができ、
式中、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、炭素および窒素からなる群から選択され、R、R、R、RおよびR基のうちの1から4つは窒素であり、R、R、R、RおよびR基のうちの1から4つは炭素であり、R11、R22、R33、R44およびR55は、それぞれ独立して、水素、炭素(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル)、硫黄(例えば、スルフィドリルまたはチオエーテル)、酸素(例えば、ヒドロキシルまたはアルコキシ)、窒素(例えば、アミノまたはニトロ)およびハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)から成る群から選択される。
【0041】
構造(IV)のR11、R22、R33、R44およびR55のういちの1つ以上のいずれも、炭素であり得、該炭素は、1個の炭素原子から24個の炭素原子を有する脂肪族基の一部である。脂肪族基は、置換または非置換であり得る。脂肪族基は、分枝鎖または直鎖であり得る。特に記載がない限り、置換される脂肪族基は、炭素鎖原子が窒素、酸素、シリコン、リン、ボロン、硫黄またはハロゲン原子等のヘテロ原子と置換される部分を含む、炭素以外の少なくとも1つの原子と置換される。脂肪族基は、以下の1つ以上の置換基と置換され得る。ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ヒドロキシカルボニル、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、ホスホノ、シアノ、チオール、ケタル、アセタル、エステルおよびエーテル。
【0042】
構造(IV)において、連続するR11、R22、R33、R44およびR55(例えば、R11およびR22またはR22およびR33)の対のいずれも、結合する炭素または窒素原子と共に、R、R、R、RおよびR基により定義される環が別の環と縮合するように、連続するR、R、R、RおよびR(例えば、R11およびR22はRおよびRと環を形成する)の対応するペアと置換または非置換シクロアルキル、もしくは置換または非置換アリール基を形成する。この環は、1つまたは2つの窒素原子を含み得る。好ましくは、連続するR11、R22、R33、R44およびR55、および対応する連続したR、R、R、RおよびRは、6員芳香族環を形成する。アリール基は、置換され得る。特に記載がない限り、置換アリール基は、炭素鎖原子が窒素、酸素、シリコン、リン、ボロン、硫黄またはハロゲン原子等のヘテロ原子と置換される部分を含む、炭素以外の少なくとも1つの原子と置換される。アリールは、以下の1つ以上の置換基と置換され得る:ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ヒドロキシカルボニル、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、ホスホノ、シアノ、チオール、ケタル、アセタル、エステルおよびエーテル。
【0043】
一実施形態では、構造(IV)のアゾールは、置換されない。本発明の組成物の使用に適切な例示的な非置換アゾールを表1に示すが、ピロール(1H−アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、イソインドール、ベンズイミダゾール(1,3−ベンゾジアゾール)、インダゾール(1,2−ベンゾジアゾール)、1H−ベンゾトリアゾール、2H−ベンゾトリアゾール、イミダゾ[4,5−b]ピリジン、インドール(1H−ベンゾ[b]ピロール)、プリン(7H−イミダゾ(4,5−d)ピリミジン)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンおよびトリアゾロ[4,5−d]ピリミジンを含む。好適な非置換アゾールは、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、ベンズイミダゾール、プリン、イミダゾ[4,5−b]ピリジンおよびベンゾトリアゾールを含む。これらの中で、ベンズイミダゾールが、特に好ましい。
【表1】
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【0044】
一実施形態では、構造(IV)のアゾールは、置換アゾールである。つまり、上の表1に示す構造のいずれかのアゾールに存在する炭素原子および/または窒素原子に結合される1つ以上の水素原子は、構造IVに関して前述の官能基と置換され得、したがって、表1に示すアゾールの誘導体である。一実施形態では、アゾール化合物は、置換イミダゾールであり、以下の一般構造(V):
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を有し、
式中、R22、R44およびR55は、構造(IV)に関して定義される通りである。
【0045】
一実施形態では、アゾール化合物は、2−置換イミダゾールであり、以下の一般構造(VI):
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を有し、
式中、R22は、(IV)に関して定義される通りである。
【0046】
一実施形態では、アゾール化合物は、2,4−置換イミダゾールであり、以下の一般構造(VII):
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を有し、
式中、R55は、水素またはメチルであり、種々のR基は、水素、アルキル、ハロゲン化物、アルコキシ、アルキルアミノ、シアノおよびニトロであり得る。好ましくは、R基は、水素またはハロゲン化物である。ハロゲン化物は、塩化物、臭化物またはヨウ化物であり得、好ましくは、ハロゲン化物は塩化物である。
【0047】
一実施形態では、アゾール化合物は、ベンゾイミダゾール誘導体であり、以下の一般構造(VIII):
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を有し、
式中、R22は、構造(IV)に関して定義される通りであり、R66、R77、R88およびR99は、独立して、水素、ハロゲン化物、ニトロおよび置換または非置換ヒドロカルビル、置換または非置換アルコキシ、置換または非置換アミノおよびシアノから選択される。
【0048】
構造(VIII)に関して、ハロゲン化物は、塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択され得。好ましくは、ハロゲン化物は塩化物である。
【0049】
さらに、置換または非置換ヒドロカルビルは、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニルおよび置換または非置換アリールから選択され得る。置換または非置換ヒドロカルビルは、典型的には、1から約25個の炭素原子、より典型的には、1から約7個の炭素原子等、1から約12個の炭素原子を有する。ヒドロカルビルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニルまたはベンジルであり得る。置換ヒドロカルビル上の典型的な置換基は、ニトロ、アミノ、ハロゲン化物、シアノ、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシルおよびアルコキシを含む。好適な置換基は、ハロゲン化物であり、塩化物、臭化物またはヨウ化物であり得る。好ましくは、ハロゲン化物は、塩化物である。
【0050】
加えて、置換または非置換アルコキシおよび置換または非置換アミノは、典型的には、1から約25個の炭素原子、より典型的には、1から約6個の炭素原子等、1から約12個の炭素原子を有する。置換アルコキシおよび置換アミン上の典型的な置換基は、ニトロ、アミノ、ハロゲン化物、シアノ、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシルおよびアルコキシを含む。
【0051】
一実施形態では、アゾール成分は、2−置換ベンズイミダゾールであり、以下の一般構造(IX):
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を有し、
式中、R22は、構造(IV)に関して定義される通りである。
【0052】
例示的な置換アゾールは、2−(3,4−ジクロロベンジル)−ベンズイミダゾール、2−ブロモベンジルベンズイミダゾール、2−ブロモフェニルベンズイミダゾール、2−ブロモエチルフェニルベンズイミダゾール、2−クロロベンジルベンズイミダゾール、2−クロロフェニルベンズイミダゾールおよび2−クロロエチルフェニルベンズイミダゾールを含む。
【0053】
窒素含有官能基を含む有機化合物、すなわち、アミンまたは窒素含有する芳香族複素環は、少なくとも0.01質量%(約0.1g/L)の濃度で組成物に存在し得る。典型的には、銅表面と相互作用しそれを保護する少なくとも1つの有機官能基を含む分子の濃度は、最大約10質量%(約100g/L)である。その有機化合物は、溶解限度の最大濃度で組成物に存在してもよいため、濃度は、約10質量%より高いまたは低い可能性がある。従って、窒素を含有する有機化合物は、約0.01質量%(約0.1g/L)から約10質量%(約100g/L)の間、好ましくは、約0.1質量%(約1g/L)から約1.0質量%(約10g/L)の間の濃度で、本発明の表面処理組成物に添加され得る。濃度は、典型的には、腐食保護のために基板の適度な被覆を達成するため、この最小濃度またはそれ以上である。典型的には、窒素を含有する有機化合物は、少なくとも、約1.0g/L、より典型的には、少なくとも約2.0g/Lである。従って、濃度は、組成物において、約0.1g/Lから最大溶解限度の間、典型的には、約1.0g/Lから約10g/Lの間、より典型的には、約3g/L等、約2.0g/Lから約10g/Lの間であり得る。
【0054】
1つの好適な実施形態において、表面処理組成物は、硫黄含有官能基を含む有機化合物をさらに含む。硫黄含有官能基を含む有機化合物は、チオール(メルカプタン)、ジスルフィド、チオエーテル、チオアルデヒドおよびチオケトンを含む。特定の論理に拘束されることはないが、硫黄原子からの電子対は、硫黄貴金属結合を形成し、よって、貴金属コーティング層上に保護有機膜を自己集合し、該膜は、貴金属表面に結合される硫黄原子を含有する有機分子を含む自己集合単層を含むと思われる。一実施形態では、銅基板は、例えば、浸漬置換メッキ等により堆積される銀コーティング層で被覆され、有機分子に存在する硫黄原子は、硫黄−銀結合を形成する。一実施形態では、銅基板は、浸漬置換メッキ等により堆積される金コーティング層でコーティング被覆され、有機分子に存在する硫黄原子は、硫黄−金結合を形成する。硫黄を含有する化合物は、典型的には、膜に疎水性よりを与え、したがって、水および空中の水分をよりはじくことができる有機保護膜の効果を強化する有機成分を含む。
【0055】
一実施形態では、硫黄含有官能基を含む有機化合物は、チオールである。チオールは、以下の一般構造(X):
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を有し、
式中、Rは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有するヒドロカルビル(すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル)、約5から約14個の炭素原子を有するアリールまたはアリールヒドロカルビルであり、該ヒドロカルビルは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有し、該アリールは、約5から約14個の炭素原子を有する。ヒドロカルビルは、好ましくは、約6個の炭素原子から約18個の炭素原子を含む。アリールは、好ましくは、約4から約10個の炭素原子を含む。アリールは、1個の5員環または1個の6員環、もしくは2環が5員環および6員環、または2個の6員環を含む縮合2環系を含み得る。アリールおよびヒドロカルビルは、置換または非置換であり得る。典型的な置換基は、典型的には、1から4個の炭素原子を有する短炭素鎖分枝アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル置換基、およびフェニル、ナフテニル、および窒素、酸素および硫黄を含む芳香族複素環等の芳香族基を含む。他の置換基は、アミン、チオール、カルボキシレート、リン酸、ホスホン酸、硫酸、スルホン酸、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、エステルおよびエーテルを含む。
【0056】
一実施形態では、構造(X)のRは、ヒドロカルビルであり、チオールは、アルキルチオール、アルケニルチオールまたはアルキニルチオールである。本発明の組成物に使用する適切な例示的なこのようなヒドロカルビルチオールは、単一または組み合わせで、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、2−プロペン−1−チオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、2,2−ジメチル−1−プロパンチオール、1−ヘキサンチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1−ヘプタンチオール、2−エチルヘキサンチオール、1−オクタンチオール、1,8−オクタンジチオール、1−ノナンチオール、1,9−ノナンジチオール、1−デカンチオール、1−アダマンタンチオール、1,11−ウンデカンジチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、tert−ドデシルメルカプタン、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール、1−オクタデカンチオール、1−ノナデカンチオールおよび1−イコサンチオールを含む。好適な実施形態の1つにおいて、直鎖アルキルは、貴金属表面コーティング上に望ましい高密度の自己集合単層をよりよく達成するため、Rは、ヒドロカルビルであり、他の基と置換されず、直鎖アルキルである。
【0057】
別の好適な実施形態において、Rは、アリールまたはアリールヒドロカルビルを含む。アリールおよびアリールヒドロカルビルチオールも、貴金属表面コーティング上に高疎水性で、高密度自己集合単層を達成する。本発明の組成物に使用する適切な例示的なアリールおよびアリールヒドロカルビルチオールは、単一または組み合わせで、ベンゼンチオール、2−メチルベンゼンチオール、3−メチルベンゼンチオール、4−メチルベンゼンチオール、2−エチルベンゼンチオール、3−エチルベンゼンチオール、4−エチルベンゼンチオール、2−プロピルベンゼンチオール、3−プロピルベンゼンチオール、4−プロピルベンゼンチオール、2−tert−ブチルベンゼンチオール、4−tert−ブチルベンゼンチオール、4−ペンチルベンゼンチオール、4−ヘキシルベンゼンチオール、4−ヘプチルベンゼンチオール、4−オクチルベンゼンチオール、4−ノニルベンゼンチオール、4−デシルベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン、2,4−キシレンチオール、フルフリルメルカプタン、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオールおよび4,4′−ジメルカプトビフェニルを含む。
【0058】
一実施形態では、硫黄含有官能基を含む有機化合物は、ジスルフィドである。ジスルフィドは、2つのチオールの酸化により形成され得、以下の構造(XI):
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を有し、
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有するヒドロカルビル(すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル)、約5から約14個の炭素原子を有するアリールまたはアリールヒドロカルビルであり、該ヒドロカルビルは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有し、該アリールは、約5から約14個の炭素原子を有する。ヒドロカルビルは、好ましくは、約6個の炭素原子から約18個の炭素原子を含む。アリールは、好ましくは、約4から約10個の炭素原子を含む。アリールは、1個の5員環または1個の6員環、もしくは2環が5員環および6員環、または2つの6員環を含む縮合2環系を含み得る。アリールおよびヒドロカルビルは、置換または非置換であり得る。アリールおよびヒドロカルビルは、置換または非置換であってもよい。典型的な置換基は、典型的には、1から4個の炭素原子を有する短炭素鎖分枝アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル置換基、およびフェニル、ナフテニル、および窒素、酸素および硫黄を含む芳香族複素環等の芳香族基を含む。他の置換基は、アミン、チオール、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、エステルおよびエーテルを含む。
【0059】
一実施形態では、RおよびRは、それぞれヒドロカルビルであり、ジスルフィドは、ジアルキルチオール、ジアルケニルチオールまたはジアルキニルチオールである。本発明の組成物に使用する適切な例示的なジスルフィドは、単一または組み合わせで、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジイソブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−n−ペンチルジスルフィド、ジ−ネオペンチルジスルフィド、ジ−n−ヘキシルジスルフィド、ジ−n−ヘプチルジスルフィド、ジ−n−オクチルジスルフィド、ジ−n−ノニルジスルフィド、ジ−n−デシルジスルフィド、ジ−n−ウンデシルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−n−トリデシルジスルフィド、ジ−n−テトラデシルジスルフィド、ジ−n−ペンタデシルジスルフィド、ジ−n−ヘキサデシルジスルフィド、ジ−n−ヘプタデシルジスルフィド、ジ−n−オクタデシルジスルフィド、ジ−n−ノナデシルジスルフィドおよびジ−n−イコシルジスルフィド等を含む。好適な実施形態の1つにおいて、直鎖アルキルは、貴金属表面コーティング上に望ましい高密度の自己集合単層をよりよく達成するため、RおよびRヒドロカルビルは、他の基と置換されず、直鎖アルキルである。
【0060】
別の好適な実施形態において、RおよびRは、それぞれ、アリールまたはアリールヒドロカルビルである。硫黄−硫黄結合は、芳香族ジスルフィドにとってより容易に壊れるかもしれないため、硫黄原子は、銀または金に結合により容易に利用可能である。アリールおよびアリールヒドロカルビルジスルフィドも、貴金属表面コーティング上に高疎水性で、高密度自己集合単層を達成する。本発明の組成物に使用する適切な例示的なアリールおよびアリールヒドロカルビルジスルフィドは、単一または組み合わせで、ジベンジルジスルフィド、ジチエニルジスルフィドおよび2−ナフチルジスルフィドを含む。
【0061】
基金属表面と相互作用し保護する少なくとも1つの有機官能基を含む有機分子は、約0.01質量%(約0.1g/L)から約10質量%(約100g/L)の間、好ましくは、約0.1質量%(約1.0g/L)から約1.0質量%(約10g/L)の間の濃度で、本発明の組成物に添加され得る。硫黄含有化合物は、表面コーティングの適度な被覆および保護を達成するため、少なくとも0.1g/Lで組成物に添加される。約100g/Lの最大濃度は、化合物の溶解度に基づく推定であり、したがって、硫黄含有化合物が何であるかにより記載される量より多いまたは少なくなり得る。好適な組成物において、貴金属表面と相互作用し保護する少なくとも1つの官能基を含む有機分子は、例えば約5.0g/L等、約0.5g/Lから約10.0g/Lの間の濃度で添加される1−オクタデカンチオールである。
【0062】
代替的な実施形態において、窒素含有官能基および硫黄含有官能基は、同一分子上に位置する、したがって、分子を多重官能分子にする。別の言い方をすれば、窒素含有官能基を含む有機化合物は、硫黄含有官能基をさらに含む。
【0063】
一実施形態では、多重官能分子は、窒素およびチオールを含む官能基を含む。窒素含有官能基は、アミンまたは窒素を含む芳香族複素環であり得る。一般に、多重官能分子は、ヒドロカルビル鎖を通して窒素含有官能基とチオールを連結するヒドロカルビル連結基を含み、一般構造(XII):
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を有し、
式中、Rは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有するヒドロカルビル(すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル)、約5から約14個の炭素原子を有するアリールまたはアリールヒドロカルビルであり、該ヒドロカルビルは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有し、該アリールは、約5から約14個の炭素原子を有する。RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子または水素原子である。RおよびRが炭素原子または窒素原子である時、その原子は、典型的には、官能基の一部である。例えば、RおよびRのいずれか、または両方が炭素原子の時、これらは、ヒドロカルビル基(例えば、2級または3級アミン)を定義し得る、あるいはアリール環(例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾールおよびその他等、窒素を含む複素環芳香族環)の一部であり得る。RおよびRのいずれか、または両方が窒素原子の時、窒素含有官能基は、典型的には、インダゾール(1,2−ベンゾジアゾール)、1H−ベンゾトリアゾールおよび2H−ベンゾトリアゾール等の複素環芳香族環の一部である。
【0064】
のヒドロカルビルの炭素鎖は、約1から約24個の炭素原子を含み得る。窒素含有官能基がアミンである実施形態において、Rの炭素鎖は、より典型的には、約6から約24個の炭素原子、より典型的には、約12から約18個の炭素原子を含む。窒素含有官能基が窒素を含有する芳香族複素環である実施形態において、典型的には、約1個の炭素原子から約6個の炭素原子、より典型的には、約1個の炭素原子から約4個の炭素原子等、Rのヒドロカルビル連結は短い。Rのヒドロカルビルの炭素鎖は、置換または非置換であり得る。典型的な置換基は、典型的には、1から4個の炭素原子を有する短炭素鎖分枝アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル置換基、およびフェニル、ナフテニル、および窒素、酸素および硫黄を含む芳香族複素環等の芳香族基を含む。他の置換基は、アミン、チオール、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、エステルおよびエーテルを含む。好適な1つの実施形態において、直鎖炭化水素は、銀および銅表面上に望ましい高密度の自己集合単層をよりよく達成するため、Rのヒドロカルビルは、他の基と置換されない。
【0065】
一実施形態では、構造(XII)で定義される多重官能分子は、アミンおよびチオールを含む。アミンは、1級アミン(Rはヒドロカルビル、およびRおよびRは、両方とも水素である)、2級アミン(Rはヒドロカルビル、RおよびRのうちの1つはヒドロカルビルであり、RおよびRのもう一方は水素である)または3級アミン(R、RおよびRは、それぞれヒドロカルビルである)であり得る。アミンおよびチオールを含む例示的な多重官能分子は、システイン、メチオニン、2−アミノ−エタン−チオール(シスタミン)、3−アミノプロパンチオール、4−アミノブタンチオール、5−アミノペンタンチオール、6−アミノヘキサンチオール、8−アミノオクタンチオール、8−アミノオクタンチオール、10−アミノデカンチオールおよび12−アミノドデカンチオールを含む。比較的に長い鎖の炭化水素を含む多重官能基は、チオール基と反対側の末端の炭化水素鎖以外の位置でアミノ官能性を有し得る。例えば、適切なアミノドデカンチオールは、アミノ官能基が炭化水素鎖のいずれの炭素に位置するものをも含む。
【0066】
一実施形態では、構造(XII)で定義される多重官能分子は、窒素およびチオールを含む芳香族複素環を含む。一実施形態では、構造(XII)の窒素原子、RおよびR、および他の2個の原子は、5員芳香族複素環を形成する。5員環の他の2個の原子は、炭素原子または窒素原子であり得る。5員芳香族複素環は、縮合しない(すなわち、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールまたはテトラゾール)、または6員環(すなわち、イソインドール、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、ベンゾトリアゾール、プリンまたはイミダゾ[4,5−b]ピリジン)に縮合することができる。上の表1を参照のこと。多重官能分子は、一般構造(XIII):
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を有し得、
式中、Rは、ヒドロカルビル、(すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル)であり、R、R、R、Rは、窒素、硫黄または炭素である。Rのヒドロカルビルの炭素鎖は、約1から約24個の炭素原子、2から約24個の炭素原子、典型的には、約6から約24個の炭素原子、より典型的には、約12から約18個の炭素原子を含み得る。ヒドロカルビルのR、R、RおよびRのうちのいずれの炭素鎖も、置換または非置換であり得る。典型的な置換基は、典型的には、1から4個の炭素原子を有する短炭素鎖分枝アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル置換基、およびフェニル、ナフテニル、および窒素、酸素および硫黄を含む芳香族複素環等の芳香族基を含む。他の置換基は、アミン、チオール、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、エステルおよびエーテルを含む。好適な実施形態の1つにおいて、直鎖炭化水素は、銀および銅表面上に望ましい高密度の自己集合単層をよりよく達成するため、Rヒドロカルビルは、他の基と置換されない。
【0067】
別の実施形態では、構造(XII)の窒素原子、RおよびR、および他の2個の原子は、5員芳香族複素環を形成する。代替的に、構造(XII)のRおよびR、および他の2個の原子は、5員芳香族複素環を形成する。5員環の他の2個の原子は、炭素原子または窒素原子であり得る。5員芳香族複素環は、縮合しない(すなわち、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールまたはテトラゾール)、または6員環(すなわち、イソインドール、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、ベンゾトリアゾール、プリンまたはイミダゾ[4,5−b]ピリジン)に縮合されることができる。上の表1を参照のこと。本実施形態において、多重官能分子は、一般構造(XIVa)から(XIVd):
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のいずれをも有し得、
式中、Rは、ヒドロカルビルであり、R、RおよびRは、窒素、硫黄または炭素である。ヒドロカルビルの炭素鎖は、約1から約24個の炭素原子、約2から約24個の炭素原子、典型的には、約6から約24個の炭素原子、より典型的には、約12から約18個の炭素原子を含み得る。ヒドロカルビル、R、R、およびRのうちのいずれの炭素鎖も、置換または非置換であり得る。典型的な置換基は、典型的には、1から4個の炭素原子を有する短炭素鎖分枝アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル置換基、およびフェニル、ナフテニル、および窒素、酸素および硫黄を含む芳香族複素環等の芳香族基を含む。他の置換基は、アミン、チオール、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、エステルおよびエーテルを含む。好適な実施形態の1つにおいて、直鎖炭化水素は、銀および銅表面上に望ましい高密度の自己集合単層をよりよく達成するため、Rヒドロカルビルは、他の基と置換されない。
【0068】
浸漬銀および銅表面上の抗腐食組成物に使用するための、および保護膜に使用するための窒素およびチオールを含有する芳香族複素環を含む例示的な官能分子は、
【0069】
2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、5−エトキシ−2−メルカプトベンズイミダゾール、5−(ジフルオロメトキシ)−2−メルカプト−1H−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−チオール、1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−テトラゾール−5−チオール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−テトラゾール−5−チオール、1−(2−メトキシフェニル)−4−(4−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール−2−チオール、1−(2−メチルフェニル)−4−(4−メチルフェニル)−1H−イミダゾール−2−チオール、4−フェニルチアゾール−2−チオール、1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、2−トリアゾリン−2−チオール、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール、4−アミノ−5−(4−ピリジル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4−アミノ−5−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、2−メルカプト−5−メチルアミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−メルカプト−1−メチルテラゾール、1−フェニル−1H−テトラゾール−5−チオール、およびアゾールおよびチオール官能基を有する他のバス互換性分子を含む。
【0070】
一実施形態では、多重官能分子は、窒素含有官能基およびジスルフィドを含む。この官能分子は、実質的に、2個のチオールがジスルフィド連結である−S−S−を通して結合されることを除き、窒素およびチオールを含有する官能基を含む分子と類似する。従って、多重官能分子は、以下の一般構造(XV):
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を有し得、
式中、RおよびRは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有するヒドロカルビル(すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル)、約5から約14個の炭素原子を有するアリール、またはアリールヒドロカルビルであり、該ヒドロカルビルは、1個の炭素原子から約24個の炭素原子を有し、該アリールは、約5から約14個の炭素原子を有する。R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、または水素原子である。R、R、R、Rが炭素原子または窒素原子である時、該原子は、典型的には、官能基の一部である。例えば、RおよびRのいずれか、または両方が炭素原子の時、これらは、ヒドロカルビル基(例えば、2級または3級アミン)を定義し得る、あるいはアリール環(例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール等、窒素を含む複素環芳香族環)の一部であってもよい。RおよびRのいずれか、または両方が窒素原子の時、窒素含有官能基は、典型的には、インダゾール(1,2−ベンゾジアゾール)、1H−ベンゾトリアゾールおよび2H−ベンゾトリアゾール等の複素環芳香族環の一部である。
【0071】
ヒドロカルビルの炭素鎖は、約1から約24個の炭素原子を含み得る。窒素含有官能基がアミンである実施形態において、炭素鎖は、より典型的には、約6から約24個の炭素原子、より典型的には約12から約18個の炭素原子を含む。窒素含有官能基が窒素含有芳香族複素環である実施形態において、ヒドロカルビル連結は、典型的には、約1個の炭素原子から約6個の炭素原子、より典型的には、約1個の炭素原子から約4個の炭素原子等、短い。ヒドロカルビルの炭素鎖は、置換または非置換であり得る。典型的な置換基は、典型的には、1から4個の炭素原子を有する短炭素鎖分枝アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル置換基、およびフェニル、ナフテニルおよび窒素、酸素および硫黄を含む芳香族複素環等の芳香族基を含む。他の置換基は、アミン、チオール、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、エステルおよびエーテルを含む。好適な実施形態の1つにおいて、直鎖炭化水素は、銀および銅表面上に望ましい高密度の自己集合単層をよりよく達成するため、RおよびRヒドロカルビルは、他の基と置換されない。
【0072】
例示的な窒素およびジスルフィドを含有する官能基を含む分子は、2,2′−ジピリジルジスルフィド、4,4′−ジピリジルジスルフィド2−アミノフェニルジスルフィド、4−アミノフェニルジスルフィド、シスタミン(通常、ジヒドロクロライド塩として入手可能)、ビス(2−アミノエチル)ジスルフィド、ビス(3−アミノピロピル)ジスルフィド、ビス(4−アミノブチル)ジスルフィド、ビス(5−アミノペンチル)ジスルフィド、ビス(6−アミノヘキシル)ジスルフィド、ビス(7−アミノヘプチル)ジスルフィド、ビス(8−アミノオクチル)ジスルフィド、ビス(10−アミノデシル)ジスルフィド、およびより長い炭素鎖を有するジスルフィド類を含む。
【0073】
多重官能分子は、約3g/Lの典型的な濃度で、抗腐食組成物に存在し得る。濃度は、腐食保護のために基板の適度な被覆を達成するために、この最小濃度である。典型的には、多重官能分子の濃度は、少なくとも約0.01g/L、より典型的には、少なくとも約0.1g/L、さらにより典型的には、少なくとも約1g/Lである。多重官能分子は、最大溶解限界、典型的には、約100g/Lで、抗腐食組成物に存在し得る。典型的には、多重官能分子の濃度は、約10g/L未満、より典型的には、約6g/L未満である。従って、多重官能分子の濃度は、約0.1g/Lから約10g/Lの間、一実施形態では、約3g/L等、典型的には、約1g/Lから約6g/Lの間であり得る。
【0074】
一実施形態では、上述の酸化リン化合物、窒素含有官能基(アミン類および窒素を含有する芳香族複素環)を含む有機化合物、および任意選択で、硫黄含有官能基(チオール類およびジスルフィド類)を含む有機化合物は有機溶媒系に溶解される。組成物が電子コネクタの表面を適度に被覆し、貴金属上層および卑金属下層に存在し得る孔を湿潤するように、溶媒は、好ましくは、低表面張力を有する。これらの表面金属層の孔の適度な湿潤は、本発明の組成物の有効性にとって重要である。つまり、孔の適度な湿潤は、表面処理組成物中の添加剤を孔の中に浸透させ、卑金属酸化物および銅または銅合金の基板の表面と反応させる。さらに、表面処理組成物の疎水性成分、特に、長い炭化水素鎖n−アルキルホスホン酸を適度に溶解できるように、溶媒は、好ましくは、疎水性溶媒である。
【0075】
適切な溶媒は、好ましくは、25℃での測定で約50dyne/cm未満の表面張力を有する。(単位変換:1dyne/cm=1nN/m、表面張力標準試験ASTM D971。)好ましくは、溶媒の表面張力は、25℃での測定で45dyne/cm未満で、より好ましくは、表面張力は、25℃での測定で約35dyne/cm未満等、25℃での測定で40dyne/cm未満である。低表面張力の溶媒は、溶解度の観点および湿潤の観点の両方から有利である。低表面張力溶媒は、本発明の表面処理組成物を保護金属表面コーティング上に存在し得るあらゆる孔に浸透させることができる。好適な溶媒は、ISOPAR(登録商標)溶媒、ナフテン油、2−オクタノール等のアルコールおよび界面活性剤を添加した水を含む。
【0076】
低表面張力を有する1つの溶媒種は、商品名ISOPAR(登録商標)(Exxon Mobil Corporation,Fairfax,VA)で販売されているパラフィン系およびイソパラフィン系ミネラルオイル溶媒である。適切なISOPAR溶媒は、ISOPAR−C、ISOPAR−E、ISOPAR−G、ISOPAR−H、ISOPAR−K、ISOPAR−L、ISOPAR−MおよびISOPAR−Vを含む。これらの全てのISOPAR(登録商標)溶媒は、25℃での測定で30dyne/cm未満の表面張力を有する。
【0077】
別の種類の低表面張力の溶媒は、商品名RENOIL(Renkert Oil,Elverson,PA)で販売されているナフテン油である。ナフテン油は、高飽和シクロアルカンにより特徴付けられる。適切なRENOIL溶媒は、40−S、60B、100HT、200−S、535、775−S、2000−Sおよび3710を含む。
【0078】
さらに適切な低表面張力の溶媒は、アルコールを含む。アルコールは低表面張力を有する傾向があり、一次溶媒として使用される。アルコールは、水溶性ベースの溶媒系で補助溶媒として使用される時、水の表面張力を低下させる。エタノールおよびイソプロパノールは、例えば、20℃での測定で約22dyne/cmの表面張力を有する。
【0079】
本発明の表面処理プロセスは、上昇温度で実施され得るため、アルコールは、好ましくは、揮発性が低く、高沸点アルコールで、好ましくは、少なくとも約90℃、好ましくは、少なくとも約110℃、さらにより好ましくは、少なくとも約150℃の沸点を有する。本発明のOSP(プリフラックス)組成物に使用するための例示的な高沸点アルコールは、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、イソ−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、他のペンタノール、1−ヘキサノール、他のヘキサノール、ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノールおよび他のオクタノール、1−デカノールおよび他のデカノール、フェノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール等、3個以上の炭素原子を有するものを含む。好ましくは、アルコールは、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、イソ−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、他のペンタノール、1−ヘキサノール、他のヘキサノール、ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノールおよび他のオクタノール、1−デカノールおよび他のデカノール、フェノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコールを含む、4個以上の炭素を有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、アルコールの沸点特性は、厳密には重要ではなく、比較的揮発性のアルコールが使用され得る。本発明の表面処理組成物に使用される例示的なアルコールは、ジオール、トリオール、および高ポリオールを含む。適切なアルコールは、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、イソ−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、他のペンタノール、1−ヘキサノール、他のヘキサノール、ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノールおよび他のオクタノール、1−デカノールおよび他のデカノール、フェノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−エトキシ−1−プロパノール等を含む。次いで、ブテン−ジオール、ヘキセン−ジオール、およびブチンジオール等のアセチレン類等、不飽和ジオール類がある。適切なトリオールは、グリセロールである。さらなるアルコールは、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコールを含む。
【0081】
代替的な実施形態において、低表面張力の溶媒系は、水および補助溶媒として上に挙げたものから選択されるアルコールを含む。アルコールは、有機分子の溶解度を強化し、25℃での測定で約50dyne/cm未満に溶媒系の表面張力を低下するために使用することができ、一方、一次溶媒としての水の使用は、費用および環境の観点の両方から有利である。さらに、本発明の表面処理組成物は、プロセスが大部分の水を処理組成物に引き込む時でさえ、銅表面のはんだ付け性を保持するために十分に機能することが観察されている。1容積等価量体積の量の水でも、表面処理組成物の質に不利に影響を与えないことが認められた。つまり、初期の溶液の1Lは、水で2Lの合計容積に希釈されたとしても、組成物は、銅表面を処理するのに効果的であるということである。アルコールは、少なくとも約10mL/Lの初期の濃度で、組成物に存在し得る。典型的には、アルコールの濃度は、少なくとも約100mL/L、より典型的には、少なくとも約150mL/Lである。アルコールは、最大で、水における溶解限度までの濃度で組成物に存在し得る。アルコールのみを含む溶媒系を使用するのも、本発明の範囲内である。アルコールが補助溶媒である水性溶媒系において、アルコールの濃度は、約750mL/L、約650mL/Lくらい高く、または約600mL/Lまたは約500mL/L等、それ未満、より典型的には、約200mL/L未満であり得る。従って、アルコール濃度は、約10mL/Lから約750mL/L、典型的には、約150mL/Lから500mL/Lの間であり得る。
【0082】
さらに別の実施形態において、界面活性剤を水溶性ベースの溶媒系に添加することができる。界面活性剤は、低濃度で比較的多く水溶性の表面張力を低減し、加えて、銅および他の金属表面の湿潤度を強化する。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、または双性イオン性であり得る。特定の界面活性剤を、単独で、または他の界面活性剤と組み合わせて使用することができる。1つの種類の界面活性剤は、親水性ヘッド基および疎水性末端を含む。アニオン性界面活性剤に付随する親水性ヘッド基は、カルボキシレート、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびホスホン酸塩を含む。カチオン性界面活性剤に付随する親水性ヘッド基は、4級アミン、スルホニウムおよびホスホニウムを含む。4級アミンは、4級アンモニウム、ピリジニウム、ピリジニウム、ジピリジニウム、およびイミダゾリウムを含む。非イオン性界面活性剤に付随する親水性ヘッド基は、アルコールおよびアミドを含む。双性イオン性界面活性剤に付随する親水性ヘッド基は、ベタインを含む。疎水性末端は、典型的には、炭化水素鎖を含む。炭化水素鎖は、典型的には、約6から約24個の炭素原子、より典型的には、約8から約16個の炭素原子を含む。
【0083】
例示的なアニオン性界面活性剤は、アルキルホスホネート、アルキルエーテルホスフェート、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、カルボン酸エーテル、カルボン酸エステル、アルキルアリールスルホネート、およびスルホコハク酸塩を含む。アニオン性界面活性剤は、商品名Genapol(Clariantから。Genapol LRO液体、Genapol LRO paste、Genapol NH、Genapol LSA/LRA、Genapol LSS/S28、Genapol LST 40、Genapol XRO等を含む)およびTriton(Dow Chemicalから。Triton QS−15およびTriton W−30を含む)等の、 あらゆる硫酸エステルを含む。アニオン性硫酸エステルは、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリム(1 EO)、ラウレス硫酸ナトリウム(2 EO)、ラウレスナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム(3 EO)、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、TEA−ラウリル硫酸塩、TEA−ラウレス硫酸塩、MEA−ラウリル硫酸塩、MEA−ラウレス硫酸塩、ラウリル硫酸カリウム、ラリレス硫酸カリウム、デシル硫酸ナトリウム、オクチル/デシル硫酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ノノキシノール−4硫酸ナトリウム、ノノキシノール−6硫酸ナトリウム、クメン硫酸ナトリウム、ノノキシノール−6硫酸アンモニウム、および硫酸ポリエーテルを含む。また、α−オレフィン硫酸ナトリウム、キシレンスルホン酸アンモニウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、およびリグノスルホン酸塩等のスルホン酸エステル、ラウリルスルホコハク酸二ナトリウム、ラウレススルホコハク酸二ナトリウム等のスルホコハク酸塩界面活性剤も適用可能である。さらに、他のアニオン性界面活性剤は、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウリルリン酸塩、ULTRAPHOSシリーズのあらゆるリン酸エステル、Cytec工業から入手可能なCyastat(登録商標)609(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3’−ドデシルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメト硫酸塩およびCyastat(登録商標)LS((3−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチル硫酸塩を含む。さらにリン酸エステルは、Dow Chemicalから入手可能なTriton H−55、Triton H−66、Triton QS−44、およびTriton XQS−20を含む。
【0084】
例示的なカチオン性界面活性剤は、ドデシルトリメチル塩化アンモニウム、臭化および塩化セチルトリメチルアンモニウム塩、臭化および塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、塩化および臭化アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩を含む。この点に関して、Lodyne106A(フルオロ塩化アルキルアンモニウムカチオン性界面活性剤28〜30%)およびAmmonyx4002(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウムカチオン性界面活性剤)等が、特に好ましい。
【0085】
好適な実施形態において、界面活性剤は、非イオン性である。非イオン性界面活性剤の種類は、例えば、酸化エチレン(EO)繰り返し単位および/または酸化プロピレン(PO)繰り返し単位ベースのポリエーテル基を含有するものを含む。これらの界面活性剤は、典型的には、非イオン性である。ポリエーテル鎖を有する界面活性剤は、約1から約36EO繰り返し単位、約1から約36PO繰り返し単位、または約1から約36EO繰り返し単位とPO繰り返し単位の組み合わせを含み得る。より典型的には、ポリエーテル鎖は、約2から約24EO繰り返し単位、約2から約24PO繰り返し単位、または約2から約24EO繰り返し単位とPO繰り返し単位の組み合わせを含む。さらにより典型的には、ポリエーテル鎖は、約6から約15EO繰り返し単位、約6から約15PO繰り返し単位、または約6から約15EO繰り返し単位とPO繰り返し単位の組み合わせを含む。これらの界面活性剤は、例えば、1つのEO繰り返し単位のブロックが2つのPO繰り返し単位のブロックに囲まれる、または1つのPO繰り返し単位が2つのEO繰り返し単位のブロック囲まれる等、EO繰り返し単位とPO繰り返し単位のブロックを含み得る。ポリエーテル系界面活性剤の別の種類は、POおよびEO繰り返し単位を交互にを含む。これらの種類の界面活性剤の中には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールが含まれる。
【0086】
非イオン性界面活性剤のまた別の種類は、グリセロールエーテル、ブタノールエーテル、ペンタノールエーテル、ヘキサノールエーテル、ヘプタノールエーテル、オクタノールエーテル、ノナノールエーテル、デカノールエーテル、ドデカノールエーテル、テトラデカノールエーテル、フェノールエーテル、アルキル置換フェノールエーテル、α−ナフトールエーテル、およびβ−ナフトールエーテル等のアルコールまたはフェノールベース基上に構成されるEO、POまたはEO/PO繰り返し単位を含む。アルキル置換フェノールエーテルに関して、フェノール基は、約8(オクチルフェノール)または約9個の炭素原子(ノニルフェノール)等の約1から約10個の炭素原子を有する炭化水素鎖と置換される。ポリエーテル鎖は、約1から約24のEO繰り返し単位、約1から約24のPO繰り返し単位、または約1から約24のEO繰り返し単位とPO繰り返し単位の組み合わせを含んでもよい。より典型的には、ポリエーテル鎖は、約8から約16のEO繰り返し単位、約8から約16のPO繰り返し単位、または約8から約16のEO繰り返し単位とPO繰り返し単位の組み合わせを含む。さらにより典型的には、ポリエーテル鎖は、約9、約10、約11または約12のEO繰り返し単位、約9、約10、約11または約12のPO繰り返し単位、または約9、約10、約11または約12のEO繰り返し単位とPO繰り返し単位の組み合わせを含む。
【0087】
例示的なβ−ナフトール誘導体非イオン性界面活性剤は、ナフトールヒドロキシ基に結合する12エチレンオキシドモノマー単位を有するβ−ナフトールエトキシレートであるLugalvan BNO12である。類似した界面活性剤は、ポリエトキシル化ノニルフェノールであるPolymax NPA−15である。ポリエトキシル化ノニルフェノールは、Dow ChemicalのTergitol(登録商標)商品名でも販売されており、Tergitol(登録商標)NP−4、Tergitol(登録商標)NP−6、Tergitol(登録商標)NP−7、Tergitol(登録商標)NP−8、Tergitol(登録商標)NP−9、Tergitol(登録商標)NP−10、Tergitol(登録商標)NP−11、Tergitol(登録商標)NP−12、Tergitol(登録商標)NP−13、Tergitol(登録商標)NP−15、およびTergitol(登録商標)NP−30を含む。別の界面活性剤は、オクチルフェノールエトキシレートである、Triton(登録商標)−X100非イオン性界面活性剤であり、典型的には、約9または10のEO繰り返し単位を有する。さらなる市販の非イオン性界面活性剤は、BASFから入手可能なPluronic(登録商標)シリーズの界面活性剤を含む。Pluronic(登録商標)界面活性剤は、BASFから入手可能なP65、P84、P85、P103、P104、P105およびP123を含むPシリーズのEO/PO ブロックコポリマー、BASFから入手可能なF108、F127、F38、F68、F77、F87、F88、F98を含むFシリーズのEO/POブロックコポリマー、およびBASFから入手可能なL10、L101、L121、L31、L35、L44、L61、L62、L64、L81およびL92を含むLシリーズのEO/POブロックコポリマーを含む。別の種類の非イオン性ポリエーテルの界面活性剤は、Triton CF シリーズのTriton CF−10、Triton CF−21、Triton CF−32、Triton CF−76、Triton CF−87を含み、およびTriton DFシリーズのTriton DF−12、Triton DF−16、Triton DF−18およびTriton DF−20等の低起泡の界面活性剤を含む。
【0088】
さらなる市販の非イオン性界面活性剤は、DuPontから入手可能な水溶性のエトキシル化非イオン性フルオロ界面活性剤を含み、Zonyl(登録商標)FSN(ポリエチレングリコール非イオン性界面活性剤を伴うTelomar Bモノエーテル)、Zonyl(登録商標)FSN−100、Zonyl(登録商標)FS−300、Zonyl(登録商標)FS−500、Zonyl(登録商標)FS−510、Zonyl(登録商標)FS−610、Zonyl(登録商標)FSPおよびZonyl(登録商標)URを含むZonyl(登録商標)の商品名で販売されている。他の非イオン性界面活性剤は、ULTRAFAXの商品名で販売されているココアミドDEAおよびココアミドMEA等のアミン縮合類を含む。他の種類の非イオン性界面活性剤は、酸エトキシル化脂肪酸(ポリエトキシ−エステル)を含み、これは、典型的には、約25EO繰り返し単位、約30EO繰り返し単位、約36EO繰り返し単位、または約40EO繰り返し単位等の、約1から約40EO繰り返し単位等、約1から約60のEO繰り返し単位を含むポリエーテル基でエステル化された脂肪酸を含む。グリセロールエステルは、グリセロール基上に1、2または3個の脂肪酸基を含む。例示的なこのような界面活性剤は、BASFから入手可能なCremophor(登録商標)、およびClariantから入手可能なEmulsogen EL、Emulsogen EL−250、Emulsogen EL−300、およびEmulsogen EL−400を含むEmulsogen ELシリーズを含む。また別の種類の非イオン界面活性剤は、Dow Chemicalから入手可能なTriton BG−10およびTriton CG−110等のアルキルポリグリコシド類を含む。
【0089】
典型的には、界面活性剤または界面活性剤ブレンドは、約0.01g/Lから約10g/L等の比較的に低濃度で水性濃度に添加され得、効果的な湿潤および表面張力低減を提供する。本発明の背景において、界面活性剤ブレンドの界面活性剤の総濃度は、典型的には、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/Lおよびさらに少なくとも約25g/L等、従来見られるより高い。界面活性剤の濃度は、起泡を避けるため、約150g/L未満、または好ましくは、約100g/L未満に制限され得る。界面活性剤の濃度は、典型的には、約20g/Lおよび約100g/L等の約10から約150g/Lの間、さらにより典型的には、約35から約55g/Lの間等、約20g/Lから約80g/Lの間であり得る。
【0090】
本発明の水性組成物は、好ましくは、約1.0から12.0の間、典型的には、約7.0から約11.0の間のpHである。アルカリ性溶液中では、保護有機コーティングの形成は、酸性溶液中での形成より速いので、組成物は、好ましくは、アルカリ性である。アルカリの調節は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の4級アミンの水酸化物等pH調節剤を使用することにより達成することができる。典型的には、アルカリpH調節剤の濃度は、所望のアルカリpHを達成するのに十分であり、約0.01g/Lから約10.0g/L、典型的には、約0.01g/Lから約2.0g/L、より典型的には、約0.1g/Lから約0.5g/Lの間であってもよい。
【0091】
1つの特に好適な実施形態において、組成物は、アルカリ金属水酸化物を含まず、テトラホウ酸ナトリウム等の代替剤のみがpH調節に使用される。
【0092】
本発明の実施形態を以下の表2に示す。
【表2】
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【0093】
本発明の組成物を用いた表面処理が適用可能な電子デバイスは、典型的には、銅または銅合金ワイヤおよび電子コネクタである。さらなる基板は、印刷回路基盤の銅回路網を含む。これらの銅または銅合金ワイヤ、コネクタ、および銅回路網は、典型的には、金属表面コーティングで被覆される。金属表面コーティングは、銅または銅合金基板上に電解的にメッキ、無電解堆積により堆積、または浸漬メッキにより堆積することができる。金属表面コーティングは、典型的には、1、2、または2つ以上の金属層を含み得る。2つまたは2つ以上の金属層を有する実施形態において、第1の層は、下層として説明され、典型的には、銅または銅合金基板の表面に堆積される卑金属層である。卑金属層の表面上に堆積される金属層は、上層と称すことができる。上層は、典型的には、卑金属層の表面上に堆積される貴金属層である。卑金属下層は、卑金属合金層または2つの別個の卑金属層のいずれかとして存在する、1つまたは2つ以上の卑金属を含み得る。同様に、貴金属上層は、1つの貴金属、2つ以上の貴金属、または貴金属と卑金属との合金を含み得る。貴金属層は、貴金属合金層または2つの別個の貴金属層を含み得る。金属表面コーティングが1層のみを含む実施形態において、単一層は、卑金属下層または貴金属層のいずれかを含み得る。卑金属下層は、純卑金属コーティング、または別の卑金属もしくは貴金属を含有する卑金属合金コーティングを含み得る。同様に、貴金属上層は、純貴金属コーティング、または別の貴金属もしくは卑金属を含有する貴金属合金コーティングを含み得る。
【0094】
下層に適切な卑金属は、ニッケル、スズ、亜鉛、クロム、チタン、アルミニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、タングステン、これらの金属の互いの合金、およびこれらの各金属の他の合金を含む。適切なニッケル合金は、ニッケル−アルミニウム−チタン、ニッケル−銅、ニッケル−銅−アルミニウム、ニッケル−クロム−鉄、ニッケル−クロム−コバルト、およびニッケル−クロム−モリブデンを含む。適切なスズ合金は、スズ−鉛、スズ−銅、スズ−銀、スズ−銀−銅、スズ−銀−銅−アンチモン、スズ−亜鉛、スズ−亜鉛−ビスマス、スズ−アンチモン、スズ−インジウム−銀−ビスマス、スズ−ビスマス−銀、スズ−ビスマス、およびスズ−インジウムを含む。卑金属は、貴金属、典型的には、パラジウムとの合金であり得る。
【0095】
上層に適切な貴金属は、金、銀、白金、および別の貴金属とこれらのいずれかの貴金属との合金を含む。好適な貴金属コーティングは、金である。貴金属合金の実施例は、金とパラジウムの合金であり得る。貴金属上層は、約1μm、2μm、または3μm、4μm、またはさらには5μm等、約2μm以上の厚さであり得る。より厚い貴金属上層は、汚染がひどい場所等、過酷な環境で使用することができる。より厚い貴金属オーバーレイは、金属表面コーティングにより多くの費用がかかる。従って、貴金属オーバーレイは、約0.5μm、約0.25μm、またはさらには約0.1μm等、上述のこれらの厚さより薄くあり得る。従って、貴金属オーバーレイは、約0.1μmから約5μm、好ましくは、約0.1μmから約1μm、さらにより好ましくは、約0.25μmから約1μmであり得る。
【0096】
金は、ニッケル下層により硬化することが知られているため、ニッケル下層および金上層を含むコネクタ仕上げは、一般的に「硬化」または「硬質」金仕上げと呼ばれる。ニッケル下層は、市販の化学性質によりメッキされ得る。電解ニッケルメッキにおいて、SULFAMEX(登録商標)MLS等のEnthone Inc.から入手可能なSULFAMEX(登録商標)化学性質を使用することができる。金上層は、同じくEnthone Inc.から入手可能なニッケル硬質金をメッキするのに適切なAUTRONEX(登録商標)化学性質等の市販の化学性質によりメッキされ得る。PCBの銅回路網の金属表面コーティングの背景において、ニッケル層は、典型的には、無電解堆積により堆積され、その後浸漬金仕上げが続く。本背景において、最終仕上げは、無電解ニッケル浸漬金、またはENIGと呼ばれる。ニッケルおよび金層は、市販の化学性質によりメッキすることができる。
【0097】
一実施形態では、電子デバイスは、ニッケルまたはニッケル合金を含有する卑金属層を含む金属表面コーティングで被覆される銅または銅合金基板を含む。本実施形態において、金属表面コーティングは、酸化リン化合物および窒素を含有する芳香族複素環を含む組成物で表面処理することができる。従って、例えば、溶媒としてISOPAR(登録商標)を使用して表面処理組成物を金属表面コーティングに適用することにより、例えば、ベンゾトリアゾールであり得る窒素を含有する芳香族複素環がニッケル層に存在する可能性のある孔に浸透することを可能にする。芳香族複素環は、銅または銅合金基板と反応し、銅または銅合金基板に保護膜を形成し、ニッケル層の孔を充填し得る。さらに、酸化リン化合物は、ニッケル層に保護有機膜を形成し得る。
【0098】
別の実施形態では、電子デバイスは、ニッケルまたはニッケル合金を含有する卑金属下層および金または金合金を含有する貴金属上層を含む金属表面コーティングで被覆される銅または銅合金基板を含む。本実施形態において、金属表面コーティングは、酸化リン化合物および窒素を含有する芳香族複素環を含む組成物で表面処理することができる。従って、例えば、溶媒としてISOPAR(登録商標)を使用して表面処理組成物を金属表面コーティングに適用することにより、例えば、ベンゾトリアゾールであり得る窒素を含有する芳香族複素環がニッケル層に存在する可能性のある孔に浸透することを可能にする。芳香族複素環は、銅または銅合金基板と反応し、銅または銅合金基板に保護膜を形成し、ニッケル層の孔を充填し得る。さらに、酸化リン化合物は、ニッケル層に保護有機膜を形成し、金上層に存在する可能性のある孔を充填し得る。本実施形態を図3に例示する。
【0099】
さらに別の実施形態において、電子デバイスは、ニッケルまたはニッケル合金を含有する卑金属下層および金または金合金を含有する貴金属上層を含む金属表面コーティングで被覆される銅または銅合金基板を含む。本実施形態において、金属表面コーティングは、好ましくは、酸化リン化合物、アミンまたは窒素を含有する芳香族複素環等の窒素含有官能基を含む有機化合物、およびアルキルチオールまたはジスルフィド等の硫黄含有官能基を含む有機化合物を含む組成物で表面処理される。酸化リン化合物および窒素含有官能基(アミンまたは窒素を含有する芳香族複素環)を含む有機化合物は、前の実施形態に例示する通り、電子デバイスを保護する役割を果たす。さらなる硫黄含有官能基(アルキルチオールまたはジスルフィド)を含む有機化合物は、電子デバイスを保護するさらなる手段を提供する。アルキルチオールは、金上層と反応し、その上に保護膜を形成する。さらに、アルキルチオールは、銅または銅合金基板と反応し、その上に保護膜を形成するように、ニッケル下層に存在する可能性がある孔に浸透し、ニッケル下層の孔を充填し得る。本実施形態を図5に例示する。
【0100】
さらに別の実施形態において、貴金属コーティングは銀を含む。銀コーティング層は、当該分野で周知の浸漬メッキ銀コーティング方法により銅基板上に堆積することができる。例えば、参照することによって本明細書にその全体が記載されているとみなす米国公開公報第2006/0024430号に記載される浸漬メッキ銀を用いて銅基板を被覆する方法が、適用可能である。浸漬メッキ銀コーティングのための市販の化学性質は、Enthone Inc.から入手可能なAlphasSTAR(登録商標)を含む(West Haven、CT)。
【0101】
本発明の表面処理組成物を使用して保護され得る他の金属表面組成物は、Cu−Ni−Pd−Au−Sn、Cu−Ni−Pd−Au−Sn、Cu−Ni−SnおよびCu−Agを含む。
【0102】
本発明の別の態様は、その表面に貴金属コーティングを有するはんだ付け可能な銅基板の耐腐食性を強化する方法を対象とする。本発明の表面処理組成物は、適用方法が、添加剤が金属表面コーティングに存在する可能性がある孔に充填し、コーティングに保護膜を形成するのに十分な時間、電子デバイスの表面を十分に湿潤するという条件で、浸漬、浸水またはスプレー浸漬により電子デバイスに適用され得る。
【0103】
曝露時間は、本発明の効果に対して厳密に重大ではなく、部分的に、プロセスの工学技術の面に依存する可能性がある。典型的な露出時間は、わずか約1秒から長くて約10分、より典型的には、約5秒から約360秒であり得る。実際は、曝露時間は、約120秒から約300秒等、約60秒から約300秒であり得る、またはいくつかの実施形態では、約30秒から約60秒等、わずか約15秒から約60秒であり得る。これらの比較的に短い曝露時間を考慮して、本発明の方法は、急速なコーティングを達成する。表面処理組成物の温度は、約20℃から最大75℃、典型的には、約45℃から約55℃等、約25℃から約55℃の間で変動する。表面処理組成物の曝露は、研磨、ブラシがけ、圧搾、振盪、および攪拌により強化され得る。特に、煽動は、保護有機コーティングを基板に適用するための組成物の能力を強化する効率的な手段であることが見出されている。振盪は、強力であり得る。基板を表面処理組成物に曝露した後、典型的には、約10秒から約2分間、脱イオン水で基板を洗浄することができる。
【0104】
分子は、自己集合吸着により銅および貴金属表面と反応し、その上に保護有機膜を形成する。従って、分子は、種々の金属表面上の単一層に自己集合する。従って、保護有機膜は、比較的、高密度で、空中の水分に対して強化された保護を提供し得る疎水性膜であり、したがって、浸漬銀コーティングの腐食および硫化への耐性を強化する。
【0105】
本発明の保護有機膜は、加えて、特に、通常、無鉛再流中に達する温度に対する高熱安定性によって特徴付けされ得る。本発明の保護有機コーティングは、差動走査熱量計および熱重量分析法により示される通り、従来の有機コーティング(OSP等)と比較して再流温度に良く耐えることができる。例えば、保護有機コーティングは、約254℃の高温でで安定しているが、わずか5%の膜のみが274℃との高温で失われれる。これは、典型的には、約230℃から約240℃の温度で再流されるスズ−鉛共融はんだの典型的な再流温度と有利に匹敵する。さらに、保護有機コーティングは、多重無鉛再流プロセスに耐えることができる。
【0106】
最後に、保護有機コーティングは、銅基板の視覚的外観およびはんだ付け性に悪影響を及ぼさないことが観察されている。はんだ付け性は湿潤平衡試験および耐接触性によって示される。
【0107】
本発明を詳しく説明したが、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明白であろう。
【実施例】
【0108】
実施例1.本発明の表面処理組成物
本発明の表面処理組成物は、低表面張力ミネラルオイル溶媒中で調製され、以下の成分を有した。
n−デシルホスホン酸(12.4g)
ベンゾトリアゾール(3g)
ISOPAR−H(1Lに)
全ての固体が溶解するまで12.4gのn−デシルホスホン酸および3.0gのベンゾトリアゾールを1LのISOPAR(登録商標)に添加することにより、溶液を調製した。
【0109】
比較実施例1.従来の表面処理組成物
本発明の比較用表面処理組成物を以下の成分を用いて調製した。
n−デシルホスホン酸(12.4g)
ISOPAR−H(1Lに)
【0110】
ベンゾトリアゾールを添加しないことを除き、上述の実施例1に類似した方法で溶液を調製した。
【0111】
実施例2.本発明の表面処理組成物
本発明の表面処理組成物は、低表面張力ミネラルオイル溶媒中で調製され、以下の成分を有した。
n−デシルホスホン酸(12.4g)
ベンゾトリアゾール(3g)
n−オクタデシルメルカプタン(5g)
ISOPAR−H(1Lに)
【0112】
実施例3.本発明の表面処理組成物
本発明の表面処理組成物は、低表面張力ミネラルオイル溶媒中で調製され、以下の成分を有した。
n−デシルホスホン酸(1.3g)
ベンゾトリアゾール(2.7g)
ISOPAR−H(685g)
2−オクタノール(44g)
【0113】
実施例4.実施例1および比較実施例1の溶液を用いたニッケル下層および金上層を有する銅基板の処理
3つの銅試験片(銅合金725)を金属表面コーティングでメッキした。金属面コーティングは、ニッケルを含有する卑金属層(2.5μmの厚さ)、および金を含有する貴金属上層((0.5μmの厚さ)を含んだ。ニッケル下層をEnthone Inc.から入手可能なSULFAMEX(登録商標)MLSを使用してメッキした。金上層をEnthone Inc.から入手可能なAUTRONEX(登録商標)を使用して金上層でメッキした。金メッキは、Enthone Inc.から提供された技術パンフレットに従い実施された。
【0114】
ニッケル/金表面層を銅試験片上にメッキした後、(A)試験片の1つは、未処理のまま、(B)試験片の1つは、比較実施例1の表面処理組成物を用いて処理され、(C)試験片の1つは、実施例1の表面処理組成物を用いて処理された。実施例1および比較実施例1の組成物の処理は、組成物を45℃の温度に加熱しながら、組成物に試験片を3分間浸すことを含んだ。
【0115】
実施例5.ニッケル下層および金上層を有する処理および未処理銅基板の空隙率試験
実施例4の試験片を、24時間SO空隙率試験に供した。空隙率試験は、ASTM標準B799に基づく。標準プロトコルは、銅試験片をSO蒸気に90分間曝露してから、HS蒸気に15分間曝露することを含む。本実施例において、標準試験は、SO蒸気への曝露時間を24時間に延ばすことにより修正された。
【0116】
空隙率試験は、それぞれの内径が150mmの2つのガラス乾燥器中で実施した。第1のガラス乾燥器では、6%の亜硫酸(150mL)からSO蒸気を発生させた。第2のガラス乾燥器では、23.5%(NHS溶液(100mLの脱イオン水中の1mL)からHS蒸気を発生させた。試験片は、第1のガラス乾燥器でSO蒸気に24時間、次いで、第2のガラス乾燥器でHS蒸気に15分間曝露することにより試験した。
【0117】
試験後、試験片の表面腐食を視覚的に検査した。試験片の写真の結果を図6A、6B、および6Cに示す。図6Aは、未処理試験片の写真であり、大幅な表面の腐食を示す。図6Bは、従来の表面処理組成物(比較実施例1)を用いて処理した試験片の写真であり、未処理試験片と比較して大幅に減少した腐食を示す。図6Cは、本発明の表面処理組成物(実施例1)を用いて処理した試験片の写真であり、未処理試験片および比較表面処理組成物を用いて処理した試験片の両方と比較して、非常に少ない表面腐食を示す。
【0118】
実施例6.薄い金層および厚い金層を有する銅基板の空隙率試験
ニッケル下層およびその上に金上層を有する銅合金試験片の耐腐食性を試験した。本発明の表面処理組成物を用いて処理される時により薄い金上層が十分な耐腐食性を提供できるかどうかを判定するために、金上層の厚さを変化させた。6つの銅合金試験片をニッケル下層でメッキした(2.5μmの厚さ)。ニッケル下層をEnthone Inc.から入手可能なSULFAMEX(登録商標)MLSを使用して成膜した。6つの試験片をEnthone Inc.から入手可能なAUTRONEXを使用して金上層でメッキした。金メッキは、Enthone Inc.から提供された技術パンフレットに従い実施された。金メッキは、Enthone Inc.から提供された技術パンフレットに従い実施された。金上層の厚さを変化させ、基板は、未処理または以下の表3に示す通り、表面処理組成物で処理された。
【表3】
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【0119】
処理後、6つの試験片を、実施例5に説明したのと同様のASTM B799空隙率試験に供した。本実施例において、標準に従って、SO蒸気への曝露期間は、1.5時間であった。試験後、各試験片の空隙率指数は、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡のいずれかを使用して決定された。これらのデータは、図7に示すグラフを作図するために使用された。グラフから、非常に薄い0.25μm金上層でメッキされ、実施例1の組成物で処理された銅試験片(F)は、空隙率指数により判断される通り、厚さが1.0μmの硬質金上層でメッキされた未処理の銅試験片(A)および、厚さが0.5μmの硬質金上層でメッキされ、比較実施例1の従来の表面処理組成物で処理された銅試験片(C)の腐食低抗に匹敵する耐腐食性を有した。より薄い金上層の使用を可能にすることにより、製造費用が削減され得る。
【0120】
実施例7.本発明の表面処理組成物
本発明の表面処理組成物は、アルコール/水混合物の低表面張力で調製され、以下の成分を有した。
n−オクタデシルホスホン酸(3.0g)
2−メルカプトベンズイミダゾール(1.0g)
2−ブトキシエタノール(500mL)
水(250mL)
溶液は、3.0gのn−オクタデシルホスホン酸を500mLの2−ブトキシエタノールに添加することにより調製された。n−オクタデシルホスホン酸の溶解を促進するために、溶液を1時間、50℃に加熱した。次に、250mLの水、最後に2−メルカプトベンズイミダゾールを添加した。溶液を50℃に保持しながら成分を添加し、成分を溶解するためにこの温度で1時間加熱した。
【0121】
実施例8.ニッケル下層および金上層を有する処理および未処理銅基板の空隙率試験
実施例4に説明する方法に従い、9つの銅試験片をニッケル下層および金上層で被覆した。1つの銅試験片は、参照試験片としていずれの後処理の溶液でも処理をしなかった。残り8つのそれぞれ1つをアニオン性および非イオン性界面活性剤を含む水中で1−オクタデカチオール(0.64質量%)、オクチルホスホン酸(1.2質量%)、およびベンゾトリアゾール(0.5質量%)を含有する表面処理組成物に曝露した。
【0122】
以下の表4に示す条件に従い、試験片を処理した。
【表4】
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【0123】
9つの試験片が、実施例5(SO周囲環境で24時間、HS周囲環境で15分)に説明する方法に従い、空隙率試験に供され、視覚的に検査された。9つの試験片の写真を図8に示す。横列Aは、それぞれ、10秒(A1)、30秒(A2)、2分(A3)、および5分(A4)間、50℃の組成物温度で処理された試験片を含む、一方、横列Bは、それぞれ、10秒(B1)、30秒(B2)、2分(B3)、および5分(B4)間、35℃の組成物温度で処理された試験片を含む。横列Cの試験片は、参照試験片であり、明らかな腐食を示した。
【0124】
図9は、各試験片の顕微鏡写真を示す。この程度の詳細写真ではで、参照試験片(横列C)は、大幅な腐食を表し、一方、10秒(B1)は、および30秒(B2)間処理された列Bの試験片は、かなりではあるが腐食程度は少ない。残りの試験片は、小幅な腐食を示し、試験片A4は、実質的に、腐食を示さない。
【0125】
実施例9.ニッケル下層および金上層を有する処理および未処理銅基板の空隙率試験
実施例4に説明する方法に従い、12の銅試験片をニッケル下層および金上層を用いて被覆した。金上層の厚さを変化させ、厚さが1.0μm金コーティングで3つの試験片を被覆し、厚さが0.5μm金コーティングで3つの試験片を被覆し、厚さが0.25μm金コーティングで3つの試験片を被覆し、厚さが0.1μm金コーティングで3つの試験片を被覆した。
【0126】
4つの試験片(各金コーティング厚さにつき1つ)は、参照試験片としていずれの後処理の組成物中でも処理されなかった。4つの試験片(各金コーティング厚さにつき1つ)は、実施例7の表面処理組成物中で処理され、4つの試験片(各金コーティング厚さにつき1つ)は、実施例8の表面処理組成物中で処理された。12の全ての試験片が、実施例5(SO周囲環境で24時間、HS周囲環境で15分)に説明する方法に従い、空隙率試験に供され、視覚的に検査された。
【0127】
1μm2の試験片の顕微鏡写真を図10に示す。横列Aの試験片は、1μm金コーティング(A1)、0.5μm金コーティング(A2)、0.25μm金コーティング(A3)、および0.1μm金コーティング(A4)を有する参照試験片である。厚さが1μmの金上層を有する試験片でさえ、ある程度の腐食を示し、一方、非常に薄い金層を有する試験片は、かなりの腐食を示した。参照試験片の顕微鏡写真である図11A(厚さが1μm金コーティング)、11B(厚さが0.5μm金コーティング)、11C(厚さが0.25μm金コーティング)、および11D(厚さが0.1μm金コーティング)も参照のこと。この程度の詳細写真では、未処理の金コーティングは、1μmの厚さでさえ、腐食に影響されやすいことは明らかである。
【0128】
図10を再び参照すると、横列Bの試験片は、実施例8の表面処理組成物を用いて処理された。これらの試験片は、1μm金コーティング(B1)、0.5μm金コーティング(B2)、0.25μm金コーティング(B3)、および0.1μm金コーティング(B4)でメッキされた。実施例8の表面処理組成物で処理された試験片は、金上層が非常に薄くても、ほとんどまたは全く腐食を示さなかった。参照試験片の顕微鏡写真である図12A(厚さが1μm金コーティング)、12B(厚さが0.5μm金コーティング)、12C(厚さが0.25μm金コーティング)、および12D(厚さが0.1μm金コーティング)も参照のこと。この程度の詳細写真では、処理された金コーティングは、試験片が非常に薄い金上層で被覆される時でさえ、腐食に抵抗があることが明らかである。
【0129】
図10を再び参照すると、横列Cの試験片は、実施例7の表面処理組成物を用いて処理された。これらの試験片は、1μm金コーティング(C1)、0.5μm金コーティング(C2)、0.25μm金コーティング(C3)、および0.1μm金コーティング(C4)でメッキされた。4Cの試験片は、ある程度の腐食を示したが、実施例7の表面処理組成物で処理された残りの試験片は、ほとんど、または視覚的に明かな腐食は見られなかった。参照試験片の顕微鏡写真である図13A(厚さが1μm金コーティング)、13B(厚さが0.5μm金コーティング)、13C(厚さが0.25μm金コーティング)、および13D(厚さが0.1μm金コーティング)も参照のこと。この程度の詳細写真では、厚さが0.1μmおよび0.25μmの金上層コーティングを有する試験片の腐食が、明らかである一方、厚さが0.5および1μmの金上層コーティングは、非常に少ない腐食を示した。
【0130】
実施例10.ニッケル下層および金上層を有する処理および未処理銅基板の空隙率試験
実施例9の12の銅試験片が、高温無鉛の再流を受け、次いで、空隙率試験(SO周囲環境で10時間、HS周囲環境で15分)に供された。再流された銅試験片の顕微鏡写真を図14から16に示す。
【0131】
図14A(厚さが1μm金コーティング)、14B(厚さが0.5μm金コーティング)、14C(厚さが0.25μm金コーティング)、および14D(厚さが0.1μm金コーティング)は、1再流プロファイル後の参照試験片の顕微鏡写真である。各試験片は、図14Aに示す厚さが1μmの金コーティングの試験片でさえ、大幅な腐食を示す。
【0132】
図15A(厚さが1μm金コーティング)、15B(厚さが0.5μm金コーティング)、15C(厚さが0.25μm金コーティング)、および15D(厚さが0.1μm金コーティング)は、実施例8の表面処理組成物を使用して処理した試験片の、1再流プロファイル後の顕微鏡写真である。非常に薄いコーティング(図15D)を有する試験片が、大幅な腐食を示したものの、より厚い金コーティングを有する試験片は、図14に示す参照対照物と比較して、大幅な腐食の低下を示した。
【0133】
図16A(厚さが1μm金コーティング)、16B(厚さが0.5μm金コーティング)、16C(厚さが0.25μm金コーティング)、および16D(厚さが0.1μm金コーティング)は、実施例7の表面処理組成物を使用して処理した試験片の、1再流プロファイル後の顕微鏡写真である。非常に薄いコーティング(図16D)を有する試験片は、大幅な腐食を示したものの、より厚い金コーティングを有する試験片は、図14に示す参照対照物と比較して、大幅な腐食の低下を示した。
【0134】
上記を鑑みて、本発明のいくつかの目的が達成され、他の有利な結果が得られた。
【0135】
本発明の要素またはその好適な実施形態を紹介する時、冠詞(「a」、「an」、「the」、および「前記」)は、1つ以上の要素が存在することを意味するものとする。例えば、「a」(1つの)層と称する前述の説明および以下の請求項は、1つ以上のそのような層が存在し得ることを意味する。「含む(comprising)、(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図し、リストにあげられた要素以外の追加の要素が存在することを意味する。
【0136】
本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更が上に成され得るため、上述に含まれる、および付随の図に示される全ての事項は、例示的なものであり、制限されるものではないこととして解釈されるべきである。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−525169(P2010−525169A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504269(P2010−504269)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060801
【国際公開番号】WO2008/131206
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(501407311)エントン インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】