説明

金属製ガスケット及びその製造方法

【課題】複数の金属基板を積層して形成される金属製ガスケットにおいて、金属基板の方向、面の表裏、積層順位の取り違えが発生した時に、組み付け作業者又は監視員が容易に気づくことができる金属製ガスケット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の金属基板10に所定の方向に関して互いに重ねた時に一方が他方を包含しない複数の位置決め孔12a,12bを設け、下側の第2の金属基板20に、各位置決め孔12a,12bに嵌合する位置決め突起22a,22bを上方が下方より小さくなるように形成すると共に、上側の第3の金属基板30に前記所定の方向に関して互いに重ねた時に一方が他方を包含しない複数の位置決め孔32a,32bを設けて、組み付けに誤りが生じた時には、少なくとも一つの位置決め突起22a,22bが前記位置決め孔12b,32b,12a,32aに嵌合しないように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基板を積層して、2部材の間に挟持してシールを行う金属製ガスケットに関し、より詳細には、誤組み立てを防止できる金属製ガスケット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンにおいては、吸気マニホールドや排気マニホールド等で単一のシール対象孔をシールするガスケットや、シリンダヘッドとシリンダブロックの間をシールするシリンダヘッドガスケット等の金属製ガスケットが使用されている。これらの金属製ガスケットでは、材料や厚さや加工の異なる金属基板を複数枚積層して製造されており、所望のシール性能を得るためには、これらの複数の金属基板を正しい方向、正しい面の向きで正しい順序に積層する必要がある。
【0003】
しかしながら、これらの金属基板の形状は略同じ輪郭の形状をしていること多く、一見して、ガスケットの方向や面の裏表や積層における第何層目の金属基板であるかの判断が難しい場合がある。このような場合には、金属基板を積層する組み付けに際して、方向の取り違え、面の取り違え、積層順の取り違えが発生し易いという問題がある。
【0004】
この問題に対処するために、積層金属板ガスケットの各構成板が、単板の状態において何番目に積層されるものであるかその積層順序数が一目して明らかになるように、ガスケットを形成する各金属板に、単板状態において該金属板の積層順位数を認識できる切欠き、刻印、マーキング等の積層順位数の標識を設けた積層金属板ガスケットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、このような目視によって判別できるような構成であっても、人為的なミスの発生を完全に防ぐことができないという問題があり、更に、誤組み立てを防ぐ工夫が必要とされている。
【特許文献1】実開平6−85963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、複数の金属基板を積層して形成される金属製ガスケットにおいて、金属基板の方向の取り違え、面の表裏の取り違え、積層順位の取り違えが発生した時に、組み付け作業者又は監視員が容易に気づくことができる金属製ガスケット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明に係る金属製ガスケットは、金属基板を3枚以上積層して、2部材の間に挟まれてシール対象孔をシールする金属製ガスケットにおいて、第1の金属基板に複数の位置決め孔を設けると共に、該位置決め孔の少なくとも一つが、該金属製ガスケットの平面形状から定まる所定の方向に関して互いに重ねた時に他の位置決め孔を包含しない形状に形成し、積層時に前記第1の金属基板の下側となる第2の金属基板に、前記第1の金属基板の前記各位置決め孔に対面する位置に、該対面する位置決め孔に嵌合する位置決め突起を上方が下方より小さくなるように形成して設けると共に、該位置決め突起の少なくとも一つを他の位置決め孔には嵌合しないように形成し、積層時に前記第1の金属基板の上側となる第3の金属基板に、前記第1の金属基板の前記各位置決め孔に重なる位置に、該重なる位置決め孔から突出する前記各位置決め突起に嵌合するように前記重なる位置決め孔よりも小さい位置決め孔を設けると共に、該位置決め孔の少なくとも一つが、前記所定の方向に関して互いに重ねた時に他の小さい位置決め孔を包含しない形状に形成して構成する。
【0008】
また、上記の金属製ガスケットにおいて、前記第1の金属基板の前記位置決め孔を、前記所定の方向に関して互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成すると共に、前記第3の金属基板の前記小さい位置決め孔を、前記所定の方向に関して該小さい位置決め孔を互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成して構成する。
【0009】
あるいは、上記の目的を達成するための本発明に係る金属製ガスケットは、金属基板を2枚積層して、2部材の間に挟まれてシール対象孔をシールする金属製ガスケットにおいて、第1の金属基板に複数の位置決め孔を設けると共に、該位置決め孔の少なくとも一つが、該金属製ガスケットの平面形状から定まる所定の方向に関して互いに重ねた時に他の位置決め孔を包含しない形状に形成し、積層時に前記第1の金属基板の下側となる第2の金属基板に、前記第1の金属基板の前記各位置決め孔に対面する位置に、該対面する位置決め孔に嵌合する位置決め突起を設けると共に、該位置決め突起の少なくとも一つを他の位置決め孔には嵌合しないように形成して構成する。
【0010】
また、上記の金属製ガスケットにおいて、前記第1の金属基板の前記複数の位置決め孔を、前記所定の方向に関して互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成して構成する。
【0011】
そして、上記の目的を達成するための本発明に係る金属製ガスケットの製造方法は、上記の金属製ガスケットの製造方法であって、積層時に最上位の前記金属基板の前記小さい位置決め孔又は前記位置決め孔より突出する前記位置決め突起の先端を圧潰することにより、前記各金属基板を接合することを特徴とする。
【0012】
上記において、金属製ガスケットの平面形状から定まる所定の方向とは、この方向から各金属基板を見た場合に金属ガスケットの方向や面の裏表を間違えやすい方向のことをいう。例えば、平面形状が略線対称である場合にはその線対称の対称線の方向となる。金属製ガスケットは通常は正方形又は長方形に近い形状で形成されることが多いので、通常は縦方向と横方向とになる。
【0013】
また、互いに重ねた時に一方が他方を包含しない関係とは、一方の位置決め孔が他方の位置決め孔を包含しない、つまり、一方の位置決め孔の中に他方の位置決め孔が完全に入り込まない関係のことをいう。この包含する、包含しないの関係は、予め決めた所定の方向、例えば、縦と横において成立すればよく、必ずしも全方位で成立する必要は無い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属板ガスケット及びその製造方法によれば、正常な組み付けの時には嵌合する位置決め突起と位置決め孔を、金属基板の方向の取り違え、面の表裏の取り違え、積層順位の取り違えが発生した時には、嵌合しないように構成したので、金属基板の方向の取り違え、面の表裏の取り違え、積層順位の取り違えに組み付け作業者又は監視員が容易に気づくことができ、誤組み付けを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明に係る金属板ガスケット及びその製造方法の実施の形態について、エンジンの排気マニホールドと排気管のフランジの間に挟持される金属製ガスケットを例にして説明する。しかしながら、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、例えば、吸気マニホールド用のガスケット、シリンダヘッドガスケット等の他の金属製ガスケットにも適用できる。なお、図1〜図20は、模式的な説明図であり、構成をより理解し易いように、板厚、シール対象用穴の大きさ、ビードの大きさ、位置決め孔、位置決め突起の大きさ等の寸法を実際のものとは異ならせて、誇張して示している。
【0016】
最初に、本発明の第1の実施の形態の金属製ガスケットについて説明する。図1〜図5に示すように、この第1の実施の形態の金属製ガスケット1は、排気管のフランジの形状に合わせて製造された3枚の金属構成板10,20,30とを有してなる。これらの第1〜第3の金属構成板10,20,30は、軟鋼板、ステンレス焼鈍材(アニール材)、ステンレス調質材(バネ鋼板)等でそれぞれの金属基板に対する要求に合わせて形成される。
【0017】
そして、これらの第1〜第3の金属構成板10,20,30には、シール対象孔2が開口され、その周囲にフルビード3等の周知のシール手段が設けられ、四方に締結ボルト用のボルト穴4が形成される。
【0018】
第1の金属基板10は、金属製ガスケット1の平面形状から定まる所定の方向に関して、互いに重ねた時に、一方が他方を包含しない形状に形成した複数の位置決め部5a,5bを設けて構成される。この実施の形態では、第1の位置決め部5aの第1の位置決め孔12aは円形に開口され、また、第2の位置決め部5bの第2の位置決め孔12bは正方形に開口される。
【0019】
この金属製ガスケット1の平面形状から定まる所定の方向とは、この方向から各金属基板10,20,30を見た場合に金属ガスケットの方向や面の裏表や積層順位を間違え易い方向のことをいうが、平面形状が略線対称である場合にはその線対称の対称線の方向となる。通常は金属製ガスケット1は正方形又は長方形に近い形状で形成されることが多いので、この所定の方向は縦方向と横方向とになる。この包含する、包含しないの関係は、予め決めた所定の方向、例えば、縦と横において成立すればよく、必ずしも全方向で成立する必要は無い。
【0020】
この互いに重ねた時に一方が他方を包含しない関係とは、図3及び図5に示すように円形形状の第1の位置決め孔12aが正方形状の第2の位置決め孔12bを包含しない、つまり、この第1の位置決め孔12aの中に第2の位置決め孔12bが完全に入り込まない関係のことをいう。
【0021】
従って、四角形と菱形は同形であっても、正方形や長方形のガスケットのように、金属製ガスケット1の形状から定まる所定の方向が縦と横のみであれば、互いに包含しない関係となる。しかしながら、金属製ガスケットの形状がもしも八角形や円形等であって、このガスケットの形状から定まる所定の方向が縦と横に加えて斜め45度の方向もあれば、同形の四角形と菱形は、一方を45度回転した時に完全に重なり合うので、45度の方向(所定の方向)に関して、互いに包含する関係となる。
【0022】
第2の金属基板20は、積層時に第1の金属基板10の下側に積層される。この第2の金属基板20において、第1の金属基板10の第1の位置決め孔12aに対面する位置に、この対面する第1の位置決め孔12aに嵌合する第1の位置決め突起22aを上方が下方より小さくなるように形成して設ける。この形状はテーパー状であっても段差状であってもよい。また、更に、第1の金属基板10の第2の位置決め孔12bに対面する位置に、この対面する第2の位置決め孔12bに嵌合する第2の位置決め突起22bを上方が下方より小さくなるように形成して設ける。この実施の形態では、第1の位置決め突起22aは円錐形状に形成され、第2の位置決め突起22bは底面が正方形の角錐形状に形成される。
【0023】
第3の金属板30は、積層時に第1の金属基板10の上側に積層される。この第3の金属板30において、第1の金属基板10の第1の位置決め孔12aに重なる位置に、この重なる第1の位置決め孔12aから突出する第1の位置決め突起22aに嵌合するように、第1の位置決め孔12aよりも小さい第3の位置決め孔32aを設ける。また、更に、第1の金属基板10の第2の位置決め孔12bに重なる位置に、この重なる第2の位置決め孔12bから突出する第2の位置決め突起22bに嵌合するように、第2の位置決め孔12bよりも小さい第4の位置決め孔32bを設ける。
【0024】
しかも、この第3の位置決め孔32aと第4の位置決め孔32bを、第1の位置決め孔12aと第2の位置決め孔12bと同様に、金属製ガスケット1の平面形状から定まる所定の方向に関して、互いに重ねた時に、一方が他方を包含しない形状に形成する。この実施の形態では、第3の位置決め孔32aは円形に開口され、また、第4の位置決め孔32bは正方形に開口される。
【0025】
上記の位置決め孔12a,12b,32a,32bの形状は、円形形状や正方形の他にも、楕円形、長円形、三角形、四角形、多角形、星型等の形状を採用することができ、上記の位置決め突起22a,22bもこれに対応した形状とすることができる。要は、これらの形状は、互いに上記の条件を満たす形状であればよい。
【0026】
次に、この金属製ガスケット1の製造方法について説明する。これらの第1〜第3の金属基板10,20,30を図2及び図4に示すように積層して、図1に示すような金属製ガスケット1に組み付ける。この組み付けに際しては、金属基板20に、金属基板10を表裏が異なった状態で積層すると、第1の位置決め突起22aに対しては、第2の位置決め孔12bが対面し、第2の位置決め突起22bに対しては、第1の位置決め孔12aが対面することになる。従って、表裏が異なる場合には、第2の位置決め突起22bと対面する第1の位置決め孔12aとが嵌合しなくなる。
【0027】
また、金属基板10に金属基板30を表裏が異なった状態で積層すると、第1の位置決め突起22aに対しては、第4の位置決め孔32bが対面し、第2の位置決め突起22bに対しては、第3の位置決め孔32aが対面することになる。従って、表裏が異なる場合には、第2の位置決め突起22bと対面する第3の位置決め孔32aとは嵌合しなくなる。
【0028】
また、第2の金属基板20の上に誤って第3の金属基板30を積層すると、第1の位置決め突起22aに対しては、小さ目に形成された第3の位置決め孔32a又は第4の位置決め孔32bが対面し、第2の位置決め突起22bに対しては、小さ目に形成された第4の位置決め孔32b又は第3の位置決め孔32aが対面することになる。従って、第2の位置決め突起22bは対面する第4の位置決め孔32b又は第3の位置決め孔32aとは嵌合しなくなる。
【0029】
従って、組み付けが正常に行われないと、第2の位置決め突起22aと第1の位置決め孔12b又は第3の位置決め孔32bとが嵌合しないので、第1〜第3の金属基板10,20,30の間で位置決め部5a,5bが上手く積層されず、組み立て作業員又は監視員が容易に気付くことができる。この場合には、各金属基板10,20,30の表裏、取り付け方向及び積層順位を正しくして、再度組み付けるか、一旦製造ラインから外して、再度、正しい表裏、正しい方向、及び、正しい積層順位にして製造ラインに戻す。
【0030】
一方、第1〜第3の金属基板10,20,30が正しく積層された場合は、各位置決め突起22a,22bと各位置決め孔12a,32a,12b,32bとが嵌合するので正常に積層される。この場合には、第3の金属基板30の各位置決め孔32a,32bから突出した各位置決め突起22a,22bをプレス等により押圧して、圧潰してカシメて第1〜第3の金属基板10,20,30を接合する。
【0031】
次に、本発明の第2の実施の形態の金属製ガスケットについて説明する。図6〜図10に示すように、この第2の実施の形態の金属製ガスケット1Aでは、以下の点が第1の実施の形態の金属製ガスケット1と異なるだけで、その他の構成は同じである。
【0032】
第1の金属基板10Aは、金属製ガスケット1Aの平面形状から定まる所定の方向に関して、互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成した複数の位置決め部5Aa,5Abを設けて構成される。この実施の形態では、第1の位置決め部5Aaの第1の位置決め孔12Aaは円形に開口され、また、第2の位置決め部5Abの第2の位置決め孔12Abは正方形に開口される。
【0033】
この互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない関係とは、図8及び図10に示すように円形形状の第1の位置決め孔12Aaに正方形状の第2の位置決め孔12Abが完全に入り込まないだけでなく、逆に、第2の位置決め孔12Abの中に第1の位置決め孔12Aaが完全に入り込まない関係のことをいう。
【0034】
また、第3の金属板30Aにおいて、第3の位置決め孔32Aaと第4の位置決め孔32Abを、第1の位置決め孔12Aaと第2の位置決め孔12Abと同様に、金属製ガスケット1Aの平面形状から定まる所定の方向に関して、互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成する。この実施の形態では、第3の位置決め孔32Aaは円形に開口され、また、第4の位置決め孔32Abは正方形に開口される。
【0035】
次に、この金属製ガスケット1Aの製造方法について説明する。これらの第1〜第3の金属基板10A,20A,30Aを図7及び図9に示すように積層して、図6に示すような金属製ガスケット1Aに組み付ける。この組み付けに際しては、各金属基板10A,20A,30Aの表裏が異なった状態で積層すると、第1の位置決め突起22Aaに対しては、第2の位置決め孔12Ab又は第4の位置決め孔32Abが対面し、第2の位置決め突起22Abに対しては、第1の位置決め孔12Aa又は第3の位置決め孔32Aaが対面することになる。従って、表裏が異なる場合には、位置決め突起22Aa,22Abの両方が、それぞれ対面する位置決め孔12Ab,32Ab,12Aa,32Aaと嵌合しなくなる。
【0036】
また、第2の金属基板20Aの上に誤って第3の金属基板30Aを積層すると、第1の位置決め突起22Aaに対しては、第4の位置決め孔32Abが対面し、第2の位置決め突起22Abに対しては第3の位置決め孔32Aaが対面することになる。従って、位置決め突起22Aa,22Abの両方がそれぞれ対面する位置決め孔32Ab,32Aaと嵌合しなくなる。
【0037】
従って、組み付けが正常に行われないと、位置決め突起22Aa,22Abと位置決め孔12Aa,32Aa,12Ab,32Abとが嵌合しないので、第1〜第3の金属基板10A,20A,30Aが上手く積層されず、組み立て作業員又は監視員が、第1の実施の形態の金属製ガスケット1よりもより一層容易に気付くことができる。
【0038】
一方、第1〜第3の金属基板10A,20A,30Aが正しく積層された場合は、位置決め突起22aA,22Abと位置決め孔12Aa,32Aa,12Ab,32Abとが嵌合するので正常に積層される。この場合には、第3の金属基板30Aの位置決め孔32Aa,32Abから突出した位置決め突起22Aa,22Abをプレス等により押圧して、圧潰してカシメて第1〜第3の金属基板10A,20A,30Aを接合する。
【0039】
次に、本発明の第3の実施の形態の金属製ガスケットについて説明する。図11〜図15に示すように、この第3の実施の形態の金属製ガスケット1Bは、排気管のフランジの形状に合わせて製造された2枚の金属構成板10B,20Bとからなる。第1及び第2の金属構成板10B,20Bは、軟鋼板、ステンレス焼鈍材(アニール材)、ステンレス調質材(バネ鋼板)等でそれぞれの金属基板に対する要求に合わせて形成される。
【0040】
そして、第1及び第2の金属構成板10B,20Bには、シール対象孔2が開口され、その周囲にフルビード3等の周知のシール手段が設けられ、四方に締結ボルト用のボルト穴4が形成される。
【0041】
第1の金属基板10Bは、金属製ガスケット1Bの平面形状から定まる所定の方向に関して、互いに重ねた時に、一方が他方を包含しない形状に形成した複数の位置決め孔5Ba,5Bbを設けて構成される。この実施の形態では、第1の位置決め孔12Baは円形に開口され、また、第2の位置決め孔12Bbは正方形に開口される。この金属製ガスケット1Bの平面形状から定まる所定の方向や、互いに重ねた時に一方が他方を包含しない関係は、第1の実施の形態と同様である。
【0042】
また、第2の金属基板20Bは、積層時に第1の金属基板10Bの下側に積層される。この第2の金属基板20Bにおいて、第1の金属基板10Bの第1の位置決め孔12Baに対面する位置に、この対面する第1の位置決め孔12Baに嵌合する第1の位置決め突起22Baを形成して設ける。また、更に、第1の金属基板10Bの第2の位置決め孔12Bbに対面する位置に、この対面する第2の位置決め孔12Bbに嵌合する第2の位置決め突起22Bbを形成して設ける。この実施の形態では、組み付けの際に積層し易いように案内を兼ねて、第1の位置決め突起22Baは円錐形状に形成され、第2の位置決め突起22Bbは底面が正方形の角錐形状に形成されるが、必ずしも、先端側を小さくする必要は無い。
【0043】
次に、この金属製ガスケット1Bの製造方法について説明する。これらの第1及び第2の金属基板10B,20Bを図12及び図14に示すように積層して、図11に示すような金属製ガスケット1Bに組み付ける。この組み付けに際しては、各金属基板10B,20Bの表裏が異なった状態で積層すると、第1の位置決め突起22Baに対しては、第2の位置決め孔12Bbが対面し、第2の位置決め突起22Bbに対しては、第1の位置決め孔12Baが対面することになる。従って、表裏が異なる場合には、第2の位置決め突起22Bbと対面する第1の位置決め孔12Baとは嵌合しなくなる。
【0044】
従って、組み付けが正常に行われないと、第2の位置決め突起22Bbと第2の位置決め孔12Baとが嵌合しないので、第1及び第2の金属基板10B,20Bが上手く積層されず、組み立て作業員又は監視員が容易に気付くことができる。この場合には、各金属基板10B,20Bの表裏、取り付け方向及び積層順位を正しくして、再度組み付けるか、一旦製造ラインから外して、再度、正しい表裏、正しい方向、及び、正しい積層順位にして製造ラインに戻す。
【0045】
第1及び第2の金属基板10B,20Bが正しく積層された場合は、位置決め突起22Ba,22Bbと位置決め孔12Ba,12Bbとが嵌合するので正常に積層される。この場合には、第2の金属基板20Bの位置決め孔12a,12bから突出した位置決め突起22a,22bをプレス等により押圧して、圧潰してカシメて第1及び第2の金属基板10B,20Bを接合する。
【0046】
次に、本発明の第4の実施の形態の金属製ガスケットについて説明する。図16〜図20に示すように、この第4の実施の形態の金属製ガスケット1Cでは、以下の点が第3の実施の形態の金属製ガスケット1Bと異なるだけで、その他の構成は同じである。
【0047】
第1の金属基板10Cは、金属製ガスケット1Cの平面形状から定まる所定の方向に関して、互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成した複数の位置決め孔5Ca,5Cbを設けて構成される。この実施の形態では、第1の位置決め孔12Caは円形に開口され、また、第2の位置決め孔12Cbは正方形に開口される。
【0048】
この互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない関係とは、図18及び図20に示すように第1の位置決め孔12Caの中に第2の位置決め孔12Cbが完全に入り込まないだけでなく、逆に、第2の位置決め孔12Cbの中に第1の位置決め孔12Caが完全に入り込まない関係のことをいう。
【0049】
次に、この金属製ガスケット1Cの製造方法について説明する。これらの第1及び第2の金属基板10C,20Cを図17及び図19に示すように積層して、図16に示すような金属製ガスケット1Cに組み付ける。この組み付けに際しては、各金属基板10C,20Cの表裏が異なった状態で積層すると、第1の位置決め突起22Caに対しては、第2の位置決め孔12Cbが対面し、第2の位置決め突起22Cbに対しては、第1の位置決め孔12Caが対面することになる。従って、表裏が異なる場合には、位置決め突起22Ca,22Cbの両方が、それぞれ対面する位置決め孔12Cb,12Caと嵌合しなくなる。
【0050】
従って、組み付けが正常に行われないと、位置決め突起22Ca,22Cbと位置決め孔12Ca,12Cbとが両方とも嵌合しないので、第1及び第2の金属基板10C,20Cが上手く積層されず、組み立て作業員又は監視員がより一層容易に気付くことができる。
【0051】
第1及び第2の金属基板10C,20Cが正しく積層された場合は、位置決め突起22Ca,22Cbと位置決め孔12Ca,12Cbとが嵌合するので正常に積層される。この場合には、第1の金属基板10Cの位置決め孔12Ca,12Cbから突出した位置決め突起22Ca,22Cbをプレス等により押圧して、圧潰してカシメて第1及び第2の金属基板10C,20Cを接合する。
【0052】
上記の金属製ガスケット1,1A,1B,1C及びその製造方法によれば、正常な組み付けの時には嵌合する位置決め突起22a,22b〜22Ca,22Cbと位置決め孔12a〜12Bb,32a〜32Abを、金属基板10〜20C,30A,30Bの方向の取り違え、面の表裏の取り違え、積層順位の取り違えが発生した時には、嵌合しないように構成したので、金属基板10〜20C,30A,30Bの方向の取り違え、面の表裏の取り違え、積層順位の取り違えに組み付け作業者又は監視員が容易に気づくことができ、誤組み付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態の金属製ガスケットを示す平面図である。
【図2】図1のA−A部分の断面を示す図である。
【図3】図1の第1の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【図4】図1のB−AB部分の断面を示す図である。
【図5】図1の第2の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の金属製ガスケットを示す平面図である。
【図7】図6のA−A部分の断面を示す図である。
【図8】図6の第1の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【図9】図6のB−AB部分の断面を示す図である。
【図10】図6の第2の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の金属製ガスケットを示す平面図である。
【図12】図11のA−A部分の断面を示す図である。
【図13】図11の第1の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【図14】図11のB−AB部分の断面を示す図である。
【図15】図11の第2の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態の金属製ガスケットを示す平面図である。
【図17】図16のA−A部分の断面を示す図である。
【図18】図16の第1の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【図19】図16のB−AB部分の断面を示す図である。
【図20】図16の第2の位置決め部の構成を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C 金属製ガスケット
2 シリンダボア用穴
3 フルビード
5a,5Aa,5Ba,5Ca 第1の位置決め部
5b,5Ab,5Bb,5Cb 第2の位置決め部
10,10A,10B,10C 第1の金属構成板
12a,12Aa,12Ba,12Ca 第1の位置決め孔 12b,12Ab,12Bb,12Cb 第2の位置決め孔 20,20A,20B,20C 第2の金属構成板
22a,22Aa,22Ba,22Ca 第1の位置決め突起 22b,22Ab,22Bb,22Cb 第2の位置決め突起 30,30A 第3の金属構成板
32a,32Aa 第3の位置決め孔
32b,32Ab 第4の位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板を3枚以上積層して、2部材の間に挟まれてシール対象孔をシールする金属製ガスケットにおいて、
第1の金属基板に複数の位置決め孔を設けると共に、該位置決め孔の少なくとも一つが、該金属製ガスケットの平面形状から定まる所定の方向に関して互いに重ねた時に他の位置決め孔を包含しない形状に形成し、
積層時に前記第1の金属基板の下側となる第2の金属基板に、前記第1の金属基板の前記各位置決め孔に対面する位置に、該対面する位置決め孔に嵌合する位置決め突起を上方が下方より小さくなるように形成して設けると共に、該位置決め突起の少なくとも一つを他の位置決め孔には嵌合しないように形成し、
積層時に前記第1の金属基板の上側となる第3の金属基板に、前記第1の金属基板の前記各位置決め孔に重なる位置に、該重なる位置決め孔から突出する前記各位置決め突起に嵌合するように前記重なる位置決め孔よりも小さい位置決め孔を設けると共に、該位置決め孔の少なくとも一つが、前記所定の方向に関して互いに重ねた時に他の小さい位置決め孔を包含しない形状に形成したことを特徴とする金属製ガスケット。
【請求項2】
前記第1の金属基板の前記位置決め孔を、前記所定の方向に関して互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成すると共に、前記第3の金属基板の前記小さい位置決め孔を、前記所定の方向に関して該小さい位置決め孔を互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成したことを特徴とする請求項1記載の金属製ガスケット。
【請求項3】
金属基板を2枚積層して、2部材の間に挟まれてシール対象孔をシールする金属製ガスケットにおいて、
第1の金属基板に複数の位置決め孔を設けると共に、該位置決め孔の少なくとも一つが、該金属製ガスケットの平面形状から定まる所定の方向に関して互いに重ねた時に他の位置決め孔を包含しない形状に形成し、
積層時に前記第1の金属基板の下側となる第2の金属基板に、前記第1の金属基板の前記各位置決め孔に対面する位置に、該対面する位置決め孔に嵌合する位置決め突起を設けると共に、該位置決め突起の少なくとも一つを他の位置決め孔には嵌合しないように形成したことを特徴とする金属製ガスケット。
【請求項4】
前記第1の金属基板の前記複数の位置決め孔を、前記所定の方向に関して互いに重ねた時に、互いに一方が他方を包含しない形状に形成したことを特徴とする請求項3記載の金属製ガスケット。
【請求項5】
請求項1、2、3、又は4記載の金属製ガスケットの製造方法であって、積層時に最上位の前記金属基板の前記小さい位置決め孔又は前記位置決め孔より突出する前記位置決め突起の先端を圧潰することにより、前記各金属基板を接合することを特徴とする金属製ガスケットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−144794(P2008−144794A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330221(P2006−330221)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000198237)石川ガスケット株式会社 (57)
【Fターム(参考)】