金属製缶蓋被覆用塗料、該塗料を塗布した金属製缶蓋およびそれらの製造方法
【課題】金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際に、エナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる金属製缶蓋被覆用塗料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む金属製缶蓋被覆用塗料、ならびに(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および(d)該分離した粒子を、溶媒中に分散させる工程からなる金属製缶蓋被覆用塗料の製造方法。
【解決手段】熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む金属製缶蓋被覆用塗料、ならびに(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および(d)該分離した粒子を、溶媒中に分散させる工程からなる金属製缶蓋被覆用塗料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製缶蓋被覆用塗料、該塗料を塗布した金属製缶蓋およびそれらの製造方法に関する。詳細には、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際にエナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる金属製缶蓋被覆用塗料およびその製造方法に関する。また、該塗料を塗布した金属製缶蓋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食物などを保存する食缶や飲料缶などの金属製容器に使用される缶蓋の表面には、耐蝕性、装飾性などを付与するために一般に塗装や印刷が施されている。その塗料としては、エポキシ系熱硬化性樹脂塗料やフェノール成分としてビスフェノールAを使用して製造したフェノール系熱硬化性樹脂塗料が使用されていた。これらの塗料では、缶詰貯蔵中に、該塗料を乾燥硬化させた塗膜から、微量のビスフェノールAが缶詰内容液中に溶出するといわれており、ビスフェノールAは環境ホルモン物質であるので問題とされていた。また、該塗料からなる塗膜は、低分子量の樹脂に硬化剤を添加して架橋させることにより得られるため、未反応の低分子量成分が塗膜中に残存することがあり、該未反応低分子量成分が缶詰内容液の味や香りの成分を吸着して、缶詰内容液の風味を損なうという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂からなる塗料の開発がなされている。たとえば、特許文献1には、金属板の少なくとも内面側に、エポキシ、ポリエステルまたはウレタンの接着剤を介して、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂フィルムを被覆させることが開示されている。しかし、この方法では、接着剤層と熱可塑性樹脂フィルム層の二層を形成させる必要があるため、手間と製造コストがかかり、経済的ではない。さらに、成形後に缶胴に二重巻き締めされる際、缶蓋はシーミングロール(巻き締めロール)と呼ばれる加工工具に沿う形に加工を受けるが、前記したような熱可塑性樹脂からなるフィルムでは、この加工時の缶蓋表面(外面側フィルム面)は加工工具面と接触することで引き離し(剥ぎ取り)作用を受け、巻き締め部の表面のフィルムに削れが発生し、耐錆性の問題が生じるだけでなく、外観が見苦しくなるという問題点を有していた。
【0004】
また、前記問題点を解決する方法として、特許文献2には、缶蓋外側面に、非晶質化率60%以上の熱可塑性樹脂フィルム層を設け、缶蓋内側面に、金属面側が低融点の樹脂で、金属面から離れる側が高融点の樹脂からなる2軸配向二層構造を有する熱可塑性フィルム層を設ける方法が開示されている。この方法では、缶蓋製造工程において、表面削れ等が発生することはないが、膜厚が10μm程度と厚く、塗膜の物性だけではなく、経済的にも充分に満足のいくものではない。
【0005】
また、配向させたポリエステル樹脂フィルムを接着させたラミネート材を用いた場合、蓋の成形加工や開缶の際にエナメルヘアー(エンゼルヘアー)と称する髪の毛状(髭状)の樹脂細片が発生する不具合があった。これはポリエステル樹脂フィルムの強度が高く、またフィルムが厚いためであり、エナメルヘアーの発生を抑制する方法としては樹脂フィルム作製時に延伸倍率を下げるなどによる方法などが試みられているが、技術的に困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭48−49589号公報
【特許文献2】特開2002−193256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際に、エナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる金属製缶蓋被覆用塗料およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む金属製缶蓋被覆用塗料に関する。
【0009】
前記金属製缶蓋被覆用塗料が、さらに熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明は、金属製缶蓋被覆用塗料の製造方法であって、(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および(d)該分離した粒子を溶媒中に分散させる工程からなる製造方法に関する。
【0011】
前記製造方法に、さらに、(e)工程(d)で得られた塗料に熱硬化性樹脂を添加する工程を含むことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、前記金属製缶蓋被覆用塗料を塗布した金属製缶蓋に関する。
【0013】
また、本発明は、前記金属製缶蓋の製造方法であって、(f)前記金属製缶蓋被覆用塗料を金属板に塗布する工程、および(g)該塗布した塗料を加熱して粒子を溶融させる工程からなる製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料に含まれる熱可塑性樹脂は、本来常温では有機溶媒に溶解しにくく、たとえ溶解しても高粘度で、そのまま塗料化できない熱可塑性樹脂の粒子であるが、該熱可塑性樹脂の溶液を冷却することにより、平均1次粒子径を10〜1000nmにできるものであるため、公知の各種重合反応を利用することで得られる粒子のように塗膜物性に影響を与える重合開始剤、乳化剤、分散剤などを使用せずに得られる粒子である。そのため、該熱可塑性樹脂の粒子を含む本発明の金属製缶蓋被覆用塗料は、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際に、エナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料は、熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む。
【0016】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料の塗布対象となる金属の素材としては、通常の製缶材料として使用される金属板であればよいが、例えば、アルミニウム、スチール、銅、ステンレス鋼板、ならびにこれらに表面処理を施した金属板、例えば、極薄スズメッキ鋼板、スズメッキ鋼板(ブリキ)、ニッケルメッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール)、クロムメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、リン酸処理鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板などがあげられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。金属メッキ鋼板には、耐食性および熱可塑性樹脂との接着の観点から、表面処理が施されているものが望ましく、たとえばクロメート処理、リン酸処理、有機無機複合処理などである。
【0017】
さらには2層クラッド、部分クラッド、多層クラッド、完全被覆クラッドなど種類を問わずクラッド材が使用可能であり、たとえばニッケル/ステンレス鋼クラッド材、モネル/ステンレス鋼クラッド材、銅/ステンレス鋼クラッド材、ステンレス鋼/鉄/ステンレス鋼クラッド材、タンタル/銅/ステンレス鋼クラッド材、チタン/ステンレス鋼/ニッケルクラッド材、アルミニウム/ステンレス鋼クラッド材、鉄/銅クラッド材、アルミニウム/ニオブクラッド材、アルミニウム/チタン/ステンレス鋼クラッド材、銅/アルミニウムクラッド材、銅/ニッケルクラッド材、ニッケル/鉄クラッド材などがあげられる。
【0018】
板厚は一般には0.20〜0.50mmであることが好ましく、より好ましくは0.23〜0.30mmである。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンアルカノエート、ポリブチレンアルカノエート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、MXD6ナイロンなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂などがあげられる。なかでも、バリヤー性、透明性、物性、安全性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、再生PET樹脂などに代表される再生樹脂を用いることもでき、さらに結晶性、非結晶性のどちらであってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0020】
芳香族ポリエステル樹脂には、1〜15モル%のイソフタル酸を共重合したものが、加工性などの諸物性が優れる点で好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒および水ならびにこれらの混合物などがあげられるが、これらに限定されるものではない。なかでも得られた懸濁液から粒子を分離した後の液をさらに熱可塑性樹脂を溶解する溶媒として繰り返し使うことが可能である点から、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合には、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノールが、熱可塑性樹脂としてナイロンを用いる場合には、ベンジルアルコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂を溶解する際の溶媒の温度は、70〜200℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである場合は、130〜190℃であることがより好ましく、140〜185℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸である場合は、70〜150℃であることがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリグリコール酸である場合は、130〜170℃が好ましく、140〜160℃がさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、MXD6ナイロンである場合は、130〜180℃であることがより好ましく、150〜170℃であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂が、ナイロン6である場合は、120〜180℃であることがより好ましく、130〜170℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂がナイロン6,6である場合は、150〜190℃であることがより好ましく、170〜180℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ナイロン12である場合は、120〜150℃であることがより好ましく、130〜140℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートである場合は、130〜180℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。溶媒の温度が、70℃未満であると熱可塑性樹脂が溶解しないため、目的とする平均1次粒子径1000nm以下の粒子が得られない傾向にあり、200℃をこえると熱可塑性樹脂あるいは溶媒の分解が起こり黄色に変色する傾向がある。
【0023】
熱可塑性樹脂の溶媒への配合量は、溶媒100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部がさらに好ましい。配合量が1重量部未満であると、生産性の点で問題がある。また、30重量部を超えると、目的とする平均1次粒子径1000nm以下の粒子を得ることが困難になる傾向がある。
【0024】
熱可塑性樹脂の溶液の冷却手段としては、熱交換器などの冷却装置があげられる。該冷却手段を使用して、70〜200℃の熱可塑性樹脂溶液を、50℃以下に冷却することが好ましく、より好ましくは45℃以下である。冷却後の溶液の温度が50℃をこえると、得られる粒子の1次粒子径、2次粒子径共に大きくなる傾向がある。
【0025】
冷却方法としては、熱可塑性樹脂の溶液そのものを熱交換器を使用して冷却する方法と、熱交換器を使用して20〜−90℃に冷却された溶媒と該熱可塑性樹脂の溶液を混合することで冷却する方法があげられる。冷却効率の点から、冷却された溶媒と混合する方法が好ましい。
【0026】
冷却速度としては、20℃/s以上が好ましく、50℃/s以上がより好ましく、100℃/s以上がさらに好ましい。20℃/s未満であると、得られる粒子の1次粒子径が1000nmを超える傾向がある。
【0027】
冷却して得られる熱可塑性樹脂の粒子の平均1次粒子径は10〜1000nmであり、好ましくは10〜800nmであり、より好ましくは30〜500nm、さらに好ましくは50〜300nmである。平均1次粒子径が1000nmをこえると、塗膜の膜厚が大きくなる、または薄膜にした場合に、連続膜にならないなどの問題が生じる傾向がある。また、平均1次粒子径が10nmより小さい場合は、得られた懸濁液の粘度が高くなり、分離操作が困難になる傾向がある。
【0028】
前記粒子の平均2次粒子径は30μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。平均2次粒子径が30μmをこえると、塗布した際に膜厚が大きくなり、求める塗膜を得ることができない傾向がある。
【0029】
ここで、1次粒子とは、それ以上に分散できない状態の粒子をいう。また、2次粒子とは、1次粒子が凝集した状態の粒子をいう。
【0030】
粒子を含む懸濁液から、粒子を分離する方法としては、ろ過、遠心分離などがあげられるが、これらに限定されるものではない。ろ過するためのフィルターとしては、たとえばセラミックフィルターなどがあげられる。
【0031】
また、粒子を分離したのち、粒子を乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、真空乾燥、自然乾燥、ドライヤーまたはオーブンによる乾燥など、特に限定されるものではない。ただし、ドライヤーまたはオーブンによる乾燥を行なう際は、粒子が溶融しない温度に設定する必要がある。
【0032】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料は、平均1次粒子径が10〜1000nmである熱可塑性樹脂の粒子からなるものである。しかし、該熱可塑性樹脂粒子相互の混合物からなるものであっても良いし、該熱可塑性樹脂粒子に硬化剤、熱硬化性樹脂などの添加剤を加えても良い。なかでも、塗膜の密着性、耐傷つき性、塗膜の破断性により優れた塗膜を形成することができる点で、熱硬化性樹脂を加えることが好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂などをあげることができるが、これらの中でも塗膜の破断性の点から、フェノール樹脂であることが好ましい。
【0034】
熱硬化性樹脂の添加量としては、熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。配合量が1重量部未満であると、耐傷付き性、塗膜の破断性に充分な効果が得られない傾向があり、20重量部をこえると、加工性などの物性が低下する傾向がある。
【0035】
さらに、該熱可塑性樹脂粒子をその他の塗料に添加して使用してもよい。該熱可塑性樹脂粒子をその他の塗料に添加する方法は、より強靭な塗膜を形成することができるため好ましい。
【0036】
前記塗料としては、一般的に塗料として用いられているものであれば、特に限定はされないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂などからなる熱硬化型塗料をあげることができる。
【0037】
得られた粒子を分散させる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒および水ならびにこれらの混合物などがあげられるが、これらに限定されるものではなく、求める塗料に適したあらゆる溶媒を使用することができる。
【0038】
熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである場合は、シクロヘキサノンおよびキシレン混合溶媒、ジメチルアセトアミド、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、水が好ましく、熱可塑性樹脂が、MXD6ナイロンである場合は、ジメチルアセトアミドが好ましく、熱可塑性樹脂がナイロン12である場合は、ジメチルアセトアミド、ベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂がナイロン6,6である場合はベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂がナイロン6である場合は、ジメチルアセトアミド、ベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂がポリ乳酸である場合は、ジメチルアセトアミド、酢酸ブチル、コハク酸ジメチル、メチルイソブチルケトンが好ましく、熱可塑性樹脂がポリグリコール酸である場合は、ビス(2−メトキシエチル)エーテルが好ましく、熱可塑性樹脂がポリカーボネートである場合はジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒が好ましい。分散させる際に、一般的に使用されている分散剤を用いてもよい。分散剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、求める塗膜の性能を損なわない程度で使用できるものである。
【0039】
また、必要により、たとえば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類、アルキルリン酸などのリン酸類などの酸触媒、該酸触媒のアミンブロック体などの硬化助剤、レベリング剤、消泡剤、滑剤などの添加剤、顔料などの着色剤などが配合されていてもよい。
【0040】
熱可塑性樹脂粒子の添加量は、塗料に含まれる全樹脂中、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂の添加量が5重量%未満であると、得られた塗膜にピンホールが発生する傾向にある。
【0041】
また、熱可塑性樹脂粒子と溶媒との割合は、特に限定されるものではなく、求める塗膜に応じて、適宜調整すればよい。
【0042】
熱可塑性樹脂粒子の分散方法としては、超音波による分散、攪拌機による分散などがあげられる。たとえば、ホモジナイザー、ホモミキサー、ロールミル、ビーズミル、高圧型湿式微粉化装置などがあげられる。
【0043】
2次粒子を溶媒に分散する場合、溶媒および分散方法を選択して、微粒化することが好ましく、最終的には1次粒子とすることがより好ましい。微粒化することは、塗膜厚を所望の厚さに制御することが可能となり、より滑らかな塗膜に仕上げることが可能である。
【0044】
本発明の塗料の塗装は、たとえば、ロールコート法、スプレーコート法、ハケ塗り法、ヘラ塗り法、浸漬塗装法、電着塗装法、静電塗装法などの公知の方法によって行うことができる。
【0045】
本発明の塗料を用いて塗膜を形成する場合の該塗料の塗布量は、該塗料の乾燥後の重量が、0.1〜50g/m2であり、好ましくは1〜50g/m2、より好ましくは3〜10g/m2となるように調整される。
【0046】
本発明の塗料からの塗膜の形成は、塗料を塗布した後に、加熱により溶媒を蒸発させ、その後粒子を溶融させることで行う。これにより、ピンホールがなく、均一な塗膜が形成され、耐溶剤性などに優れた塗膜が得られる。
【0047】
加熱温度は100〜300℃が好ましく、150〜280℃がより好ましい。また、加熱時間は、10〜60秒が好ましく、15〜30秒がより好ましい。さらに、加熱後、水冷することが好ましい。水冷を行なうことで、塗膜の外観、加工性等の諸物性がより優れるためである。
【0048】
本発明の金属製缶蓋は、本発明の塗料で被覆した金属板を用いて成形することによって得られる。また、無塗装の缶蓋に本発明の塗料で被覆することによっても得られる。金属製缶蓋の製造方法および形状は、一般的な缶蓋に用いられている方法および形状であればよく、特に限定されるものではない。金属製缶蓋としては、たとえば、飲料缶、食缶、美術缶、エアゾール缶、18L缶、乾電池外装缶、電池缶などの蓋および封口があげられる。
【0049】
本発明の塗料は、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際に、エナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる金属製缶蓋被覆用塗料である。
【実施例】
【0050】
つぎに、本発明の塗料を、実施例にもとづいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
<平均1次粒子径>
走査型電子顕微鏡(JEM−6301F、日本電子株式会社製)、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB−550、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0052】
<膜厚>
電磁誘導/過電流式膜厚計(LZ−200W、株式会社ケット科学研究所製)を用いて測定した。
【0053】
<リベット加工性>
塗装板をリベットホール加工したときの状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
A・・・まったく剥離が見られない。
B・・・部分的に剥離が見られる。
C・・・全体的に剥離が見られる。
【0054】
<密着性>
JIS K−5400(1990)に記載の方法に準拠し、焼き付け後の塗装板上をカッターナイフで塗膜を貫通して素地に達するように1mm間隔で切り傷をつけ、碁盤目100個(10×10)を作る。これに株式会社ニチバン製セロテープ(登録商標)を完全に密着させ、塗面に対して90°の方向に急激に剥離し、塗膜の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
A・・・全く剥離しない。
B・・・1〜5個の升目が剥離している。
C・・・6個以上の升目が剥離している。
【0055】
<通電量>
焼き付け後の塗装板100cm2を、界面活性剤0.3%を含む1%食塩水に浸して6Vの電圧を印加し、4秒後の通電量をミリアンペア(mA)で表示する。この値が小さいほど塗膜欠陥が少なく、良好な塗装がなされている。
【0056】
<巻締部外観>
塗装、製造した缶蓋を溶接缶胴に巻き締めた後、巻き締め部を目視により評価した。
A・・・塗膜の削れが見られない。
B・・・塗膜の削れが部分的に見られる。
C・・・塗膜が全体的に削れている。
【0057】
<耐食性>
塗装、製造した缶蓋を、リンゴ酸、クエン酸、食塩の各5%混合溶液をパックし、蓋を下にして、55℃の恒温槽に4日間保存し、腐食の程度を目視により評価した。
A・・・まったく変色が見られない。
B・・・薄く変色が見られる。
C・・・強く変色が見られる。
【0058】
<全有機炭素量>
塗装板600cm2に対して600ccの蒸留水を用いて130℃×30分レトルト抽出を行い、全有機炭素計(TOC−V CHS/CSN、株式会社島津製作所製)を用いて全有機炭素溶出量(TOC溶出量)を測定した。
【0059】
<エナメルヘアー性>
実施例1〜4で得られた金属板を用いて、缶蓋打抜機(加藤機工製作所製)により、缶蓋を100個製造した時のエナメルヘアーの発生率を目視により評価した。
【0060】
製造例1(ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子の製造)
温度計、攪拌器を備えつけた容量1Lの4つ口フラスコに熱可塑性樹脂として8モル%のイソフタル酸を共重合させたポリエチレンテレフタレート(MA−1340P、ユニチカ株式会社製)を30g、溶媒として、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルの混合物(DBE(登録商標)、デュポン株式会社製)570gを量り取った。その後、窒素を通気しながら液温を180℃にして、熱可塑性樹脂を溶媒中に溶解させた。得られた溶液を、熱交換器(エムテクニック株式会社製)により−35℃に冷却したDBE溶媒と混合することにより、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液を得た。混合した時点から1秒後の懸濁液の温度は45℃であった。
【0061】
得られた懸濁液から、シャープレス遠心分離機(巴工業株式会社製)を用いて粒子を分離し、濾過ケーキを得た。得られたケーキは溶剤含有率75%であった。
【0062】
また、得られた粒子のSEM画像(図1)および粒径分布(図2)より、平均1次粒子径は200nm以下であった。
【0063】
製造例2(ポリブチレンテレフタレート樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレート(ノバデュラン5008、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)、溶媒としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を用いて、溶解時の温度を160℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液を得た。混合した時点から1秒後の懸濁液の温度は、45℃であった。
【0064】
得られた懸濁液から、製造例1と同様、シャープレス遠心分離機を用いて粒子を分離し、濾過ケーキを得た。得られたケーキの溶剤含有率は90%であった。
【0065】
また、得られた粒径分布(図3)より、平均1次粒子径は200nm以下であった。
【0066】
製造例3(ポリ乳酸樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリ乳酸、溶媒としてDBEを用いて、溶解時の温度を140℃、冷却温度を−35℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0067】
得られたケーキの溶剤含有率は71%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図4)より250nm以下であった。
【0068】
製造例4(ポリグリコール酸樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリグリコール酸(PGA−P 三井化学株式会社)、溶媒としてビス(2‐メトキシエチル)エーテルを用いて、溶解温度を150℃、冷却温度を−35℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0069】
得られたケーキの溶剤含有率は73%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図5)より150nm以下であった。
【0070】
製造例5(MXD6ナイロン樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてMXD6ナイロン(メタキシリレンジアミンアジパミド、6007、三菱ガス化学株式会社製)、溶媒としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を用いて、溶解温度を160℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0071】
得られたケーキの溶剤含有率は80%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図6)より350nm以下であった。
【0072】
製造例6(ナイロン6樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてナイロン6(ノバミッド1010J、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学株式会社製)を用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0073】
得られたケーキの溶剤含有率は79%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図7)より350nm以下であった。
【0074】
製造例7(ナイロン6,6樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてナイロン6,6(ノバミッド3010、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、溶媒としてベンジルアルコール(東北東ソー化学株式会社製)を用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−15℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0075】
得られたケーキの溶剤含有率は77%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図8)より200nm以下であった。
【0076】
製造例8(ポリカーボネート樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリカーボネート(ユーピロンS−2000R、三菱ガス化学株式会社製)、溶媒としてDBEを用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0077】
得られたケーキの溶剤含有率は64%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図9)より300nm以下であった。
【0078】
実施例1
製造例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂のケーキ150.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、DBE98.0gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分15.0%、粘度44秒(フォードカップNo.4)であった。
【0079】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内外面に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:4.2g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0080】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1(内面側)、表2(外面側)に示した。以下の実施例で得られた塗膜の性能試験の結果についても、表1に内面側の結果、表2に外面側の結果を示す。
【0081】
実施例2
製造例2で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂のケーキ200.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.1g、ジメチルアセトアミド 48.9gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分8.0%、粘度58秒(フォードカップNo.4)であった。
【0082】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内外面に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.9g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0083】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0084】
実施例3
内面側の塗料として、温度計、攪拌機を備え付けた500mlの4つ口フラスコにエポキシ樹脂(エピコート1009 ジャパンエポキシレジン株式会社製)60.8gをエチレングリコールモノブチルエーテル 12.1g、スワゾール1000 43.6g、プロピレングリコールモノメチルアセテート 20.6gで130〜140℃で溶解させ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 72.7g、アーコソルブPM 14.2g、メチルイソブチルケトン 27.0gで溶解したハードラノリン(日本精化株式会社製)0.5gを加え、フェノール樹脂(ヒタノール4010 ブタノール溶液 固形分50% 日立化成ポリマー株式会社製)6.4g、エチレングリコールモノブチルエーテル 5.2gを加え、攪拌後、塗料を得た。得られた塗料は固形分24.0%、粘度30秒(フォードカップNo.4)であった。
【0085】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.3g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れ、内面側が樹脂被覆されたアルミニウム板を得た。得られた内面被覆アルミニウム板をこの実施例3を含む実施例4〜8の外面側被覆用に使用した。
【0086】
外面側の塗料として、製造例3で得られたポリ乳酸樹脂のケーキ155.2g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.4g、DBE 92.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分18.0%、粘度40秒(フォードカップNo.4)であった。
【0087】
得られた塗料をバーコーターを用いて、内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.9g/m2)、200℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0088】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0089】
実施例4
製造例4で得られたポリグリコール酸樹脂のケーキ162.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.4g、ビス(2−メトキシエチル)エーテル 85.6g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分17.5%、粘度43秒(フォードカップNo.4)であった。
【0090】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:4.8g/m2)、230℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0091】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0092】
実施例5
製造例5で得られたMXD6ナイロン樹脂のケーキ175.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.9g、ジメチルアセトアミド 73.1g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.0%、粘度50秒(フォードカップNo.4)であった。
【0093】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.6g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0094】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0095】
実施例6
製造例6で得られたナイロン6樹脂のケーキ166.7g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.9g、N−メチル−2−ピロリドン 81.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.0%、粘度54秒(フォードカップNo.4)であった。
【0096】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.4g/m2)、250℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0097】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0098】
実施例7
製造例7で得られたナイロン6,6樹脂のケーキ157.6g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、ベンジルアルコール 90.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.5%、粘度58秒(フォードカップNo.4)であった。
【0099】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.4g/m2)、280℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0100】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0101】
実施例8
製造例8で得られたポリカーボネート樹脂のケーキ156.3g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)3.0g、DBE 90.7g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分22.5%、粘度60秒(フォードカップNo.4)であった。
【0102】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.6g/m2)、250℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0103】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0104】
実施例9
製造例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂のケーキ135.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、フェノール樹脂(ヒタノール4010(ブタノール溶液、固形分50%)日立化成工業株式会社製)7.5g、DBE105.5gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分15.0%、粘度40秒(フォードカップNo.4)であった。
【0105】
得られた塗料を実施例1と同様にして試験板を作製した。
【0106】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0107】
実施例10
製造例2で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂のケーキ180.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.1g、フェノール樹脂(ヒタノール4010(ブタノール溶液、固形分50%)日立化成工業株式会社製)4.0g、ジメチルアセトアミド 64.9gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分8.0%、粘度52秒(フォードカップNo.4)であった。
【0108】
得られた塗料を実施例2と同様にして試験板を作製した。
【0109】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0110】
比較例1
内面側の塗料として、温度計、攪拌機を備え付けた500ml 4つ口フラスコにエポキシ樹脂(エピコート1009 ジャパンエポキシレジン株式会社製)60.8gをエチレングリコールモノブチルエーテル 12.1g、スワゾール1000 43.6g、プロピレングリコールモノメチルアセテート 20.6gで130〜140℃で溶解させ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 72.7g、アーコソルブPM 14.2g、メチルイソブチルケトン 27.0gで溶解したハードラノリン(日本精化株式会社製)0.5gを加え、フェノール樹脂(ヒタノール4010 ブタノール溶液 固形分50% 日立化成ポリマー株式会社製)6.4g、エチレングリコールモノ-ブチルエーテル 5.2gを加え、攪拌後、塗料を得た。得られた塗料は固形分24.0%、粘度30秒(フォードカップNo.4)であった。
【0111】
外面側の塗料として、ポリエステル樹脂(バイロンGK880(シクロヘキサノン/キシレン1:1溶液、固形分30%)東洋紡績株式会社製)261.3g、メラミン樹脂(サイメル303、固形分100%、三井サイテック株式会社製)5.6g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.1g、シクロヘキサノン/キシレン1:1混合溶媒 89.4gを1Lのステンレスビーカーに量り取り、ディスパー(浅田鉄鋼株式会社製撹拌機)で10分間撹拌して塗料を得た。得られた塗料は固形分23.5%、粘度25秒(フォードカップNo.4)であった。
【0112】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.3g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後空冷した。
【0113】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0114】
比較例2
二軸延伸ポリエステルフィルム11.5μm(ルミラーS10 #12 東レ株式会社製)をアルミニウム板(A5182、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内外面に、板温250℃、ラミネートロール温度160℃、通板速度30m/分で熱ラミネートし、直ちに水冷することによりラミネートによる樹脂被覆板を得た。
【0115】
得られた被膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
比較例2
二軸延伸ポリエステルフィルム11.5μm(ルミラーS10 #12 東レ株式会社製)を板温250℃、ラミネートロール温度160℃、通板速度30m/分で熱ラミネートし、直ちに水冷することによりラミネートによる樹脂被覆鋼板を得た。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】製造例1で得られた熱可塑性樹脂の1次粒子のSEM画像(×35000倍)である。
【図2】製造例1で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図3】製造例2で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図4】製造例3で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図5】製造例4で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図6】製造例5で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図7】製造例6で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図8】製造例7で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図9】製造例8で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【符号の説明】
【0119】
1 1次粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製缶蓋被覆用塗料、該塗料を塗布した金属製缶蓋およびそれらの製造方法に関する。詳細には、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際にエナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる金属製缶蓋被覆用塗料およびその製造方法に関する。また、該塗料を塗布した金属製缶蓋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食物などを保存する食缶や飲料缶などの金属製容器に使用される缶蓋の表面には、耐蝕性、装飾性などを付与するために一般に塗装や印刷が施されている。その塗料としては、エポキシ系熱硬化性樹脂塗料やフェノール成分としてビスフェノールAを使用して製造したフェノール系熱硬化性樹脂塗料が使用されていた。これらの塗料では、缶詰貯蔵中に、該塗料を乾燥硬化させた塗膜から、微量のビスフェノールAが缶詰内容液中に溶出するといわれており、ビスフェノールAは環境ホルモン物質であるので問題とされていた。また、該塗料からなる塗膜は、低分子量の樹脂に硬化剤を添加して架橋させることにより得られるため、未反応の低分子量成分が塗膜中に残存することがあり、該未反応低分子量成分が缶詰内容液の味や香りの成分を吸着して、缶詰内容液の風味を損なうという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂からなる塗料の開発がなされている。たとえば、特許文献1には、金属板の少なくとも内面側に、エポキシ、ポリエステルまたはウレタンの接着剤を介して、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂フィルムを被覆させることが開示されている。しかし、この方法では、接着剤層と熱可塑性樹脂フィルム層の二層を形成させる必要があるため、手間と製造コストがかかり、経済的ではない。さらに、成形後に缶胴に二重巻き締めされる際、缶蓋はシーミングロール(巻き締めロール)と呼ばれる加工工具に沿う形に加工を受けるが、前記したような熱可塑性樹脂からなるフィルムでは、この加工時の缶蓋表面(外面側フィルム面)は加工工具面と接触することで引き離し(剥ぎ取り)作用を受け、巻き締め部の表面のフィルムに削れが発生し、耐錆性の問題が生じるだけでなく、外観が見苦しくなるという問題点を有していた。
【0004】
また、前記問題点を解決する方法として、特許文献2には、缶蓋外側面に、非晶質化率60%以上の熱可塑性樹脂フィルム層を設け、缶蓋内側面に、金属面側が低融点の樹脂で、金属面から離れる側が高融点の樹脂からなる2軸配向二層構造を有する熱可塑性フィルム層を設ける方法が開示されている。この方法では、缶蓋製造工程において、表面削れ等が発生することはないが、膜厚が10μm程度と厚く、塗膜の物性だけではなく、経済的にも充分に満足のいくものではない。
【0005】
また、配向させたポリエステル樹脂フィルムを接着させたラミネート材を用いた場合、蓋の成形加工や開缶の際にエナメルヘアー(エンゼルヘアー)と称する髪の毛状(髭状)の樹脂細片が発生する不具合があった。これはポリエステル樹脂フィルムの強度が高く、またフィルムが厚いためであり、エナメルヘアーの発生を抑制する方法としては樹脂フィルム作製時に延伸倍率を下げるなどによる方法などが試みられているが、技術的に困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭48−49589号公報
【特許文献2】特開2002−193256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際に、エナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる金属製缶蓋被覆用塗料およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む金属製缶蓋被覆用塗料に関する。
【0009】
前記金属製缶蓋被覆用塗料が、さらに熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明は、金属製缶蓋被覆用塗料の製造方法であって、(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および(d)該分離した粒子を溶媒中に分散させる工程からなる製造方法に関する。
【0011】
前記製造方法に、さらに、(e)工程(d)で得られた塗料に熱硬化性樹脂を添加する工程を含むことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、前記金属製缶蓋被覆用塗料を塗布した金属製缶蓋に関する。
【0013】
また、本発明は、前記金属製缶蓋の製造方法であって、(f)前記金属製缶蓋被覆用塗料を金属板に塗布する工程、および(g)該塗布した塗料を加熱して粒子を溶融させる工程からなる製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料に含まれる熱可塑性樹脂は、本来常温では有機溶媒に溶解しにくく、たとえ溶解しても高粘度で、そのまま塗料化できない熱可塑性樹脂の粒子であるが、該熱可塑性樹脂の溶液を冷却することにより、平均1次粒子径を10〜1000nmにできるものであるため、公知の各種重合反応を利用することで得られる粒子のように塗膜物性に影響を与える重合開始剤、乳化剤、分散剤などを使用せずに得られる粒子である。そのため、該熱可塑性樹脂の粒子を含む本発明の金属製缶蓋被覆用塗料は、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際に、エナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料は、熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む。
【0016】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料の塗布対象となる金属の素材としては、通常の製缶材料として使用される金属板であればよいが、例えば、アルミニウム、スチール、銅、ステンレス鋼板、ならびにこれらに表面処理を施した金属板、例えば、極薄スズメッキ鋼板、スズメッキ鋼板(ブリキ)、ニッケルメッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール)、クロムメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、リン酸処理鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板などがあげられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。金属メッキ鋼板には、耐食性および熱可塑性樹脂との接着の観点から、表面処理が施されているものが望ましく、たとえばクロメート処理、リン酸処理、有機無機複合処理などである。
【0017】
さらには2層クラッド、部分クラッド、多層クラッド、完全被覆クラッドなど種類を問わずクラッド材が使用可能であり、たとえばニッケル/ステンレス鋼クラッド材、モネル/ステンレス鋼クラッド材、銅/ステンレス鋼クラッド材、ステンレス鋼/鉄/ステンレス鋼クラッド材、タンタル/銅/ステンレス鋼クラッド材、チタン/ステンレス鋼/ニッケルクラッド材、アルミニウム/ステンレス鋼クラッド材、鉄/銅クラッド材、アルミニウム/ニオブクラッド材、アルミニウム/チタン/ステンレス鋼クラッド材、銅/アルミニウムクラッド材、銅/ニッケルクラッド材、ニッケル/鉄クラッド材などがあげられる。
【0018】
板厚は一般には0.20〜0.50mmであることが好ましく、より好ましくは0.23〜0.30mmである。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンアルカノエート、ポリブチレンアルカノエート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、MXD6ナイロンなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂などがあげられる。なかでも、バリヤー性、透明性、物性、安全性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、再生PET樹脂などに代表される再生樹脂を用いることもでき、さらに結晶性、非結晶性のどちらであってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0020】
芳香族ポリエステル樹脂には、1〜15モル%のイソフタル酸を共重合したものが、加工性などの諸物性が優れる点で好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒および水ならびにこれらの混合物などがあげられるが、これらに限定されるものではない。なかでも得られた懸濁液から粒子を分離した後の液をさらに熱可塑性樹脂を溶解する溶媒として繰り返し使うことが可能である点から、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合には、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノールが、熱可塑性樹脂としてナイロンを用いる場合には、ベンジルアルコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂を溶解する際の溶媒の温度は、70〜200℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである場合は、130〜190℃であることがより好ましく、140〜185℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸である場合は、70〜150℃であることがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリグリコール酸である場合は、130〜170℃が好ましく、140〜160℃がさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、MXD6ナイロンである場合は、130〜180℃であることがより好ましく、150〜170℃であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂が、ナイロン6である場合は、120〜180℃であることがより好ましく、130〜170℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂がナイロン6,6である場合は、150〜190℃であることがより好ましく、170〜180℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ナイロン12である場合は、120〜150℃であることがより好ましく、130〜140℃であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートである場合は、130〜180℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。溶媒の温度が、70℃未満であると熱可塑性樹脂が溶解しないため、目的とする平均1次粒子径1000nm以下の粒子が得られない傾向にあり、200℃をこえると熱可塑性樹脂あるいは溶媒の分解が起こり黄色に変色する傾向がある。
【0023】
熱可塑性樹脂の溶媒への配合量は、溶媒100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部がさらに好ましい。配合量が1重量部未満であると、生産性の点で問題がある。また、30重量部を超えると、目的とする平均1次粒子径1000nm以下の粒子を得ることが困難になる傾向がある。
【0024】
熱可塑性樹脂の溶液の冷却手段としては、熱交換器などの冷却装置があげられる。該冷却手段を使用して、70〜200℃の熱可塑性樹脂溶液を、50℃以下に冷却することが好ましく、より好ましくは45℃以下である。冷却後の溶液の温度が50℃をこえると、得られる粒子の1次粒子径、2次粒子径共に大きくなる傾向がある。
【0025】
冷却方法としては、熱可塑性樹脂の溶液そのものを熱交換器を使用して冷却する方法と、熱交換器を使用して20〜−90℃に冷却された溶媒と該熱可塑性樹脂の溶液を混合することで冷却する方法があげられる。冷却効率の点から、冷却された溶媒と混合する方法が好ましい。
【0026】
冷却速度としては、20℃/s以上が好ましく、50℃/s以上がより好ましく、100℃/s以上がさらに好ましい。20℃/s未満であると、得られる粒子の1次粒子径が1000nmを超える傾向がある。
【0027】
冷却して得られる熱可塑性樹脂の粒子の平均1次粒子径は10〜1000nmであり、好ましくは10〜800nmであり、より好ましくは30〜500nm、さらに好ましくは50〜300nmである。平均1次粒子径が1000nmをこえると、塗膜の膜厚が大きくなる、または薄膜にした場合に、連続膜にならないなどの問題が生じる傾向がある。また、平均1次粒子径が10nmより小さい場合は、得られた懸濁液の粘度が高くなり、分離操作が困難になる傾向がある。
【0028】
前記粒子の平均2次粒子径は30μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。平均2次粒子径が30μmをこえると、塗布した際に膜厚が大きくなり、求める塗膜を得ることができない傾向がある。
【0029】
ここで、1次粒子とは、それ以上に分散できない状態の粒子をいう。また、2次粒子とは、1次粒子が凝集した状態の粒子をいう。
【0030】
粒子を含む懸濁液から、粒子を分離する方法としては、ろ過、遠心分離などがあげられるが、これらに限定されるものではない。ろ過するためのフィルターとしては、たとえばセラミックフィルターなどがあげられる。
【0031】
また、粒子を分離したのち、粒子を乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、真空乾燥、自然乾燥、ドライヤーまたはオーブンによる乾燥など、特に限定されるものではない。ただし、ドライヤーまたはオーブンによる乾燥を行なう際は、粒子が溶融しない温度に設定する必要がある。
【0032】
本発明の金属製缶蓋被覆用塗料は、平均1次粒子径が10〜1000nmである熱可塑性樹脂の粒子からなるものである。しかし、該熱可塑性樹脂粒子相互の混合物からなるものであっても良いし、該熱可塑性樹脂粒子に硬化剤、熱硬化性樹脂などの添加剤を加えても良い。なかでも、塗膜の密着性、耐傷つき性、塗膜の破断性により優れた塗膜を形成することができる点で、熱硬化性樹脂を加えることが好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂などをあげることができるが、これらの中でも塗膜の破断性の点から、フェノール樹脂であることが好ましい。
【0034】
熱硬化性樹脂の添加量としては、熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。配合量が1重量部未満であると、耐傷付き性、塗膜の破断性に充分な効果が得られない傾向があり、20重量部をこえると、加工性などの物性が低下する傾向がある。
【0035】
さらに、該熱可塑性樹脂粒子をその他の塗料に添加して使用してもよい。該熱可塑性樹脂粒子をその他の塗料に添加する方法は、より強靭な塗膜を形成することができるため好ましい。
【0036】
前記塗料としては、一般的に塗料として用いられているものであれば、特に限定はされないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂などからなる熱硬化型塗料をあげることができる。
【0037】
得られた粒子を分散させる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒および水ならびにこれらの混合物などがあげられるが、これらに限定されるものではなく、求める塗料に適したあらゆる溶媒を使用することができる。
【0038】
熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである場合は、シクロヘキサノンおよびキシレン混合溶媒、ジメチルアセトアミド、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒、炭酸プロピレン、4−ブチロラクトン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、水が好ましく、熱可塑性樹脂が、MXD6ナイロンである場合は、ジメチルアセトアミドが好ましく、熱可塑性樹脂がナイロン12である場合は、ジメチルアセトアミド、ベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂がナイロン6,6である場合はベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂がナイロン6である場合は、ジメチルアセトアミド、ベンジルアルコールが好ましく、熱可塑性樹脂がポリ乳酸である場合は、ジメチルアセトアミド、酢酸ブチル、コハク酸ジメチル、メチルイソブチルケトンが好ましく、熱可塑性樹脂がポリグリコール酸である場合は、ビス(2−メトキシエチル)エーテルが好ましく、熱可塑性樹脂がポリカーボネートである場合はジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびコハク酸ジメチルからなる混合エステル系溶媒が好ましい。分散させる際に、一般的に使用されている分散剤を用いてもよい。分散剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、求める塗膜の性能を損なわない程度で使用できるものである。
【0039】
また、必要により、たとえば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類、アルキルリン酸などのリン酸類などの酸触媒、該酸触媒のアミンブロック体などの硬化助剤、レベリング剤、消泡剤、滑剤などの添加剤、顔料などの着色剤などが配合されていてもよい。
【0040】
熱可塑性樹脂粒子の添加量は、塗料に含まれる全樹脂中、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂の添加量が5重量%未満であると、得られた塗膜にピンホールが発生する傾向にある。
【0041】
また、熱可塑性樹脂粒子と溶媒との割合は、特に限定されるものではなく、求める塗膜に応じて、適宜調整すればよい。
【0042】
熱可塑性樹脂粒子の分散方法としては、超音波による分散、攪拌機による分散などがあげられる。たとえば、ホモジナイザー、ホモミキサー、ロールミル、ビーズミル、高圧型湿式微粉化装置などがあげられる。
【0043】
2次粒子を溶媒に分散する場合、溶媒および分散方法を選択して、微粒化することが好ましく、最終的には1次粒子とすることがより好ましい。微粒化することは、塗膜厚を所望の厚さに制御することが可能となり、より滑らかな塗膜に仕上げることが可能である。
【0044】
本発明の塗料の塗装は、たとえば、ロールコート法、スプレーコート法、ハケ塗り法、ヘラ塗り法、浸漬塗装法、電着塗装法、静電塗装法などの公知の方法によって行うことができる。
【0045】
本発明の塗料を用いて塗膜を形成する場合の該塗料の塗布量は、該塗料の乾燥後の重量が、0.1〜50g/m2であり、好ましくは1〜50g/m2、より好ましくは3〜10g/m2となるように調整される。
【0046】
本発明の塗料からの塗膜の形成は、塗料を塗布した後に、加熱により溶媒を蒸発させ、その後粒子を溶融させることで行う。これにより、ピンホールがなく、均一な塗膜が形成され、耐溶剤性などに優れた塗膜が得られる。
【0047】
加熱温度は100〜300℃が好ましく、150〜280℃がより好ましい。また、加熱時間は、10〜60秒が好ましく、15〜30秒がより好ましい。さらに、加熱後、水冷することが好ましい。水冷を行なうことで、塗膜の外観、加工性等の諸物性がより優れるためである。
【0048】
本発明の金属製缶蓋は、本発明の塗料で被覆した金属板を用いて成形することによって得られる。また、無塗装の缶蓋に本発明の塗料で被覆することによっても得られる。金属製缶蓋の製造方法および形状は、一般的な缶蓋に用いられている方法および形状であればよく、特に限定されるものではない。金属製缶蓋としては、たとえば、飲料缶、食缶、美術缶、エアゾール缶、18L缶、乾電池外装缶、電池缶などの蓋および封口があげられる。
【0049】
本発明の塗料は、金属製缶蓋材に塗布した場合に、蓋の成形加工や開缶の際に、エナメルヘアーが発生しにくく、従来の樹脂フィルムと比較して扱いが容易であり、ラミネート材に比べて薄膜で、加工性、耐食性、溶出性、金属板に対する密着性などを有する塗膜を短時間で簡単に形成することができる金属製缶蓋被覆用塗料である。
【実施例】
【0050】
つぎに、本発明の塗料を、実施例にもとづいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
<平均1次粒子径>
走査型電子顕微鏡(JEM−6301F、日本電子株式会社製)、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB−550、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0052】
<膜厚>
電磁誘導/過電流式膜厚計(LZ−200W、株式会社ケット科学研究所製)を用いて測定した。
【0053】
<リベット加工性>
塗装板をリベットホール加工したときの状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
A・・・まったく剥離が見られない。
B・・・部分的に剥離が見られる。
C・・・全体的に剥離が見られる。
【0054】
<密着性>
JIS K−5400(1990)に記載の方法に準拠し、焼き付け後の塗装板上をカッターナイフで塗膜を貫通して素地に達するように1mm間隔で切り傷をつけ、碁盤目100個(10×10)を作る。これに株式会社ニチバン製セロテープ(登録商標)を完全に密着させ、塗面に対して90°の方向に急激に剥離し、塗膜の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
A・・・全く剥離しない。
B・・・1〜5個の升目が剥離している。
C・・・6個以上の升目が剥離している。
【0055】
<通電量>
焼き付け後の塗装板100cm2を、界面活性剤0.3%を含む1%食塩水に浸して6Vの電圧を印加し、4秒後の通電量をミリアンペア(mA)で表示する。この値が小さいほど塗膜欠陥が少なく、良好な塗装がなされている。
【0056】
<巻締部外観>
塗装、製造した缶蓋を溶接缶胴に巻き締めた後、巻き締め部を目視により評価した。
A・・・塗膜の削れが見られない。
B・・・塗膜の削れが部分的に見られる。
C・・・塗膜が全体的に削れている。
【0057】
<耐食性>
塗装、製造した缶蓋を、リンゴ酸、クエン酸、食塩の各5%混合溶液をパックし、蓋を下にして、55℃の恒温槽に4日間保存し、腐食の程度を目視により評価した。
A・・・まったく変色が見られない。
B・・・薄く変色が見られる。
C・・・強く変色が見られる。
【0058】
<全有機炭素量>
塗装板600cm2に対して600ccの蒸留水を用いて130℃×30分レトルト抽出を行い、全有機炭素計(TOC−V CHS/CSN、株式会社島津製作所製)を用いて全有機炭素溶出量(TOC溶出量)を測定した。
【0059】
<エナメルヘアー性>
実施例1〜4で得られた金属板を用いて、缶蓋打抜機(加藤機工製作所製)により、缶蓋を100個製造した時のエナメルヘアーの発生率を目視により評価した。
【0060】
製造例1(ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子の製造)
温度計、攪拌器を備えつけた容量1Lの4つ口フラスコに熱可塑性樹脂として8モル%のイソフタル酸を共重合させたポリエチレンテレフタレート(MA−1340P、ユニチカ株式会社製)を30g、溶媒として、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルの混合物(DBE(登録商標)、デュポン株式会社製)570gを量り取った。その後、窒素を通気しながら液温を180℃にして、熱可塑性樹脂を溶媒中に溶解させた。得られた溶液を、熱交換器(エムテクニック株式会社製)により−35℃に冷却したDBE溶媒と混合することにより、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液を得た。混合した時点から1秒後の懸濁液の温度は45℃であった。
【0061】
得られた懸濁液から、シャープレス遠心分離機(巴工業株式会社製)を用いて粒子を分離し、濾過ケーキを得た。得られたケーキは溶剤含有率75%であった。
【0062】
また、得られた粒子のSEM画像(図1)および粒径分布(図2)より、平均1次粒子径は200nm以下であった。
【0063】
製造例2(ポリブチレンテレフタレート樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレート(ノバデュラン5008、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)、溶媒としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を用いて、溶解時の温度を160℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液を得た。混合した時点から1秒後の懸濁液の温度は、45℃であった。
【0064】
得られた懸濁液から、製造例1と同様、シャープレス遠心分離機を用いて粒子を分離し、濾過ケーキを得た。得られたケーキの溶剤含有率は90%であった。
【0065】
また、得られた粒径分布(図3)より、平均1次粒子径は200nm以下であった。
【0066】
製造例3(ポリ乳酸樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリ乳酸、溶媒としてDBEを用いて、溶解時の温度を140℃、冷却温度を−35℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0067】
得られたケーキの溶剤含有率は71%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図4)より250nm以下であった。
【0068】
製造例4(ポリグリコール酸樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリグリコール酸(PGA−P 三井化学株式会社)、溶媒としてビス(2‐メトキシエチル)エーテルを用いて、溶解温度を150℃、冷却温度を−35℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0069】
得られたケーキの溶剤含有率は73%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図5)より150nm以下であった。
【0070】
製造例5(MXD6ナイロン樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてMXD6ナイロン(メタキシリレンジアミンアジパミド、6007、三菱ガス化学株式会社製)、溶媒としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を用いて、溶解温度を160℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0071】
得られたケーキの溶剤含有率は80%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図6)より350nm以下であった。
【0072】
製造例6(ナイロン6樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてナイロン6(ノバミッド1010J、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学株式会社製)を用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0073】
得られたケーキの溶剤含有率は79%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図7)より350nm以下であった。
【0074】
製造例7(ナイロン6,6樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてナイロン6,6(ノバミッド3010、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、溶媒としてベンジルアルコール(東北東ソー化学株式会社製)を用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−15℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0075】
得られたケーキの溶剤含有率は77%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図8)より200nm以下であった。
【0076】
製造例8(ポリカーボネート樹脂粒子の製造)
熱可塑性樹脂としてポリカーボネート(ユーピロンS−2000R、三菱ガス化学株式会社製)、溶媒としてDBEを用いて、溶解温度を170℃、冷却温度を−20℃として、製造例1と同様の操作により、熱可塑性樹脂の粒子を含む懸濁液および濾過ケーキを得た。
【0077】
得られたケーキの溶剤含有率は64%であった。また、得られた粒子の平均1次粒子径は、粒径分布(図9)より300nm以下であった。
【0078】
実施例1
製造例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂のケーキ150.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、DBE98.0gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分15.0%、粘度44秒(フォードカップNo.4)であった。
【0079】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内外面に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:4.2g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0080】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1(内面側)、表2(外面側)に示した。以下の実施例で得られた塗膜の性能試験の結果についても、表1に内面側の結果、表2に外面側の結果を示す。
【0081】
実施例2
製造例2で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂のケーキ200.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.1g、ジメチルアセトアミド 48.9gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分8.0%、粘度58秒(フォードカップNo.4)であった。
【0082】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内外面に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.9g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0083】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0084】
実施例3
内面側の塗料として、温度計、攪拌機を備え付けた500mlの4つ口フラスコにエポキシ樹脂(エピコート1009 ジャパンエポキシレジン株式会社製)60.8gをエチレングリコールモノブチルエーテル 12.1g、スワゾール1000 43.6g、プロピレングリコールモノメチルアセテート 20.6gで130〜140℃で溶解させ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 72.7g、アーコソルブPM 14.2g、メチルイソブチルケトン 27.0gで溶解したハードラノリン(日本精化株式会社製)0.5gを加え、フェノール樹脂(ヒタノール4010 ブタノール溶液 固形分50% 日立化成ポリマー株式会社製)6.4g、エチレングリコールモノブチルエーテル 5.2gを加え、攪拌後、塗料を得た。得られた塗料は固形分24.0%、粘度30秒(フォードカップNo.4)であった。
【0085】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.3g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れ、内面側が樹脂被覆されたアルミニウム板を得た。得られた内面被覆アルミニウム板をこの実施例3を含む実施例4〜8の外面側被覆用に使用した。
【0086】
外面側の塗料として、製造例3で得られたポリ乳酸樹脂のケーキ155.2g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.4g、DBE 92.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分18.0%、粘度40秒(フォードカップNo.4)であった。
【0087】
得られた塗料をバーコーターを用いて、内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.9g/m2)、200℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0088】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0089】
実施例4
製造例4で得られたポリグリコール酸樹脂のケーキ162.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.4g、ビス(2−メトキシエチル)エーテル 85.6g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分17.5%、粘度43秒(フォードカップNo.4)であった。
【0090】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:4.8g/m2)、230℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0091】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0092】
実施例5
製造例5で得られたMXD6ナイロン樹脂のケーキ175.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.9g、ジメチルアセトアミド 73.1g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.0%、粘度50秒(フォードカップNo.4)であった。
【0093】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.6g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0094】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0095】
実施例6
製造例6で得られたナイロン6樹脂のケーキ166.7g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.9g、N−メチル−2−ピロリドン 81.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.0%、粘度54秒(フォードカップNo.4)であった。
【0096】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.4g/m2)、250℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0097】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0098】
実施例7
製造例7で得られたナイロン6,6樹脂のケーキ157.6g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、ベンジルアルコール 90.4g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分14.5%、粘度58秒(フォードカップNo.4)であった。
【0099】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.4g/m2)、280℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0100】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0101】
実施例8
製造例8で得られたポリカーボネート樹脂のケーキ156.3g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)3.0g、DBE 90.7g、および2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカーで2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分22.5%、粘度60秒(フォードカップNo.4)であった。
【0102】
実施例3と同様に、得られた塗料をバーコーターを用いて実施例3の内面被覆アルミニウム板の外面側に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.6g/m2)、250℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後水冷した。
【0103】
得られた塗膜の性能試験の結果を表2に示した。
【0104】
実施例9
製造例1で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂のケーキ135.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)2.0g、フェノール樹脂(ヒタノール4010(ブタノール溶液、固形分50%)日立化成工業株式会社製)7.5g、DBE105.5gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分15.0%、粘度40秒(フォードカップNo.4)であった。
【0105】
得られた塗料を実施例1と同様にして試験板を作製した。
【0106】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0107】
実施例10
製造例2で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂のケーキ180.0g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコール−n−モノブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.1g、フェノール樹脂(ヒタノール4010(ブタノール溶液、固形分50%)日立化成工業株式会社製)4.0g、ジメチルアセトアミド 64.9gおよび2mmφガラスビーズ125.0gを450mlマヨネーズ瓶に量り取り、よく蓋を閉めた後、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)で2時間分散し、ガーゼを用いてガラスビーズと濾別して金属被覆用塗料を得た。得られた塗料は固形分8.0%、粘度52秒(フォードカップNo.4)であった。
【0108】
得られた塗料を実施例2と同様にして試験板を作製した。
【0109】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0110】
比較例1
内面側の塗料として、温度計、攪拌機を備え付けた500ml 4つ口フラスコにエポキシ樹脂(エピコート1009 ジャパンエポキシレジン株式会社製)60.8gをエチレングリコールモノブチルエーテル 12.1g、スワゾール1000 43.6g、プロピレングリコールモノメチルアセテート 20.6gで130〜140℃で溶解させ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 72.7g、アーコソルブPM 14.2g、メチルイソブチルケトン 27.0gで溶解したハードラノリン(日本精化株式会社製)0.5gを加え、フェノール樹脂(ヒタノール4010 ブタノール溶液 固形分50% 日立化成ポリマー株式会社製)6.4g、エチレングリコールモノ-ブチルエーテル 5.2gを加え、攪拌後、塗料を得た。得られた塗料は固形分24.0%、粘度30秒(フォードカップNo.4)であった。
【0111】
外面側の塗料として、ポリエステル樹脂(バイロンGK880(シクロヘキサノン/キシレン1:1溶液、固形分30%)東洋紡績株式会社製)261.3g、メラミン樹脂(サイメル303、固形分100%、三井サイテック株式会社製)5.6g、カルナバワックス分散液(SL506(ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル中分散物、固形分18.5%)サンノプコ株式会社製)1.1g、シクロヘキサノン/キシレン1:1混合溶媒 89.4gを1Lのステンレスビーカーに量り取り、ディスパー(浅田鉄鋼株式会社製撹拌機)で10分間撹拌して塗料を得た。得られた塗料は固形分23.5%、粘度25秒(フォードカップNo.4)であった。
【0112】
得られた塗料をバーコーターを用いてアルミニウム板(A5182、リン酸クロメート(CP)処理済、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)に、乾燥後の膜厚が3μmになるように塗装し(乾燥後塗布量:3.3g/m2)、260℃、風速20m/秒に設定した熱風循環式オーブン(株式会社正英製作所製)に20秒間入れた後空冷した。
【0113】
得られた塗膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
【0114】
比較例2
二軸延伸ポリエステルフィルム11.5μm(ルミラーS10 #12 東レ株式会社製)をアルミニウム板(A5182、板厚0.300mm、住友軽金属工業株式会社製)の内外面に、板温250℃、ラミネートロール温度160℃、通板速度30m/分で熱ラミネートし、直ちに水冷することによりラミネートによる樹脂被覆板を得た。
【0115】
得られた被膜の性能試験の結果を表1、表2に示した。
比較例2
二軸延伸ポリエステルフィルム11.5μm(ルミラーS10 #12 東レ株式会社製)を板温250℃、ラミネートロール温度160℃、通板速度30m/分で熱ラミネートし、直ちに水冷することによりラミネートによる樹脂被覆鋼板を得た。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】製造例1で得られた熱可塑性樹脂の1次粒子のSEM画像(×35000倍)である。
【図2】製造例1で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図3】製造例2で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図4】製造例3で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図5】製造例4で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図6】製造例5で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図7】製造例6で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図8】製造例7で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【図9】製造例8で得られた熱可塑性樹脂粒子の粒径分布である。
【符号の説明】
【0119】
1 1次粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む金属製缶蓋被覆用塗料。
【請求項2】
さらに熱硬化性樹脂を含む請求項1記載の金属製缶蓋被覆用塗料。
【請求項3】
金属製缶蓋被覆用塗料の製造方法であって、
(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、
(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、
(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および
(d)該分離した粒子を溶媒中に分散させる工程、
からなる製造方法。
【請求項4】
さらに、(e)工程(d)で得られた塗料に熱硬化性樹脂を添加する工程を含む請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の金属製缶蓋被覆用塗料を塗布した金属製缶蓋。
【請求項6】
金属製缶蓋の製造方法であって、
(f)請求項1または2記載の金属製缶蓋被覆用塗料を金属板に塗布する工程、および
(g)該塗布した塗料を加熱して粒子を溶融させる工程、
からなる製造方法。
【請求項1】
熱可塑性樹脂の溶液を冷却して得られる平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子を含む金属製缶蓋被覆用塗料。
【請求項2】
さらに熱硬化性樹脂を含む請求項1記載の金属製缶蓋被覆用塗料。
【請求項3】
金属製缶蓋被覆用塗料の製造方法であって、
(a)熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を得る工程、
(b)該溶液を冷却して平均1次粒子径10〜1000nmの該熱可塑性樹脂の粒子の懸濁液を得る工程、
(c)該懸濁液から粒子を分離する工程、および
(d)該分離した粒子を溶媒中に分散させる工程、
からなる製造方法。
【請求項4】
さらに、(e)工程(d)で得られた塗料に熱硬化性樹脂を添加する工程を含む請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の金属製缶蓋被覆用塗料を塗布した金属製缶蓋。
【請求項6】
金属製缶蓋の製造方法であって、
(f)請求項1または2記載の金属製缶蓋被覆用塗料を金属板に塗布する工程、および
(g)該塗布した塗料を加熱して粒子を溶融させる工程、
からなる製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−45542(P2006−45542A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193956(P2005−193956)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(591176225)桜宮化学株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(591176225)桜宮化学株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
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