説明

金属複合体及びそれに有用な化合物

【課題】金属と効率よく強固に吸着できる化合物、及び、それを用いた金属複合体を提供する。
【解決手段】下記式(P−a)で表される構成単位を有する、分子量が5×102〜1×107の高分子化合物。


(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R2は、直接結合、又は、ヘテロ原子としては酸素原子のみを有していてもよい有機基を表し、Eは、ヘテロ原子を表し、R3は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、mt及びntはそれぞれ独立に、1以上の整数であり、ltは、1〜3の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属複合体及びそれに有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性、電気伝導性、耐熱性等の特性を有する共役化合物は金属と複合化させて、お互いの弱点を補ったり、新規な機能を発現したりするため、複合化により得られる金属複合体は、新世代の材料として注目されている。そして、金属複合体を製造するには、異種の材料である共役化合物と金属とを、効率よく強固に吸着させることが不可欠である(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.E.Katon、高分子有機半導体、2章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、金属と効率よく強固に吸着できる化合物、及び、それを用いた金属複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は第一に、下記式(II−a)で表される化合物を提供する。
【0006】
【化1】

(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R2は、直接結合、又は、ヘテロ原子としては酸素原子のみを有していてもよい有機基を表し、Eは、ヘテロ原子を表し、R3は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、mt及びntはそれぞれ独立に、1以上の整数であり、ltは、1〜3の整数である。複数あるR3、E及びltは、各々、同一であっても異なっていてもよい。mtは、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。Xa及びXbはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、−SO3Q(ここで、Qは置換又は非置換の1価の炭化水素基を表す。)、−B(OQ12(ここで、Q1は、水素原子又は1価の炭化水素基を表すか、2個のQ1が結合して一緒に環を形成する。2個あるQ1は、同一であっても異なっていてもよい。)、−B(OQ013・Ma(式中、Q01は、水素原子又は1価の炭化水素基を表すか、3個のQ01が結合して一緒に環を形成する。3個あるQ01は、同一であっても異なっていてもよい。Maは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。)、−Si(Q2)3(ここで、Q2は、1価の炭化水素基を表す。)、又は、−Sn(Q3)3(ここで、Q3は、1価の炭化水素基を表す。)を表す。mt、ntが付された括弧内の基が複数ある場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0007】
本発明は第二に、下記式(P−a)で表される構成単位を有する、分子量が5×102〜1×107の高分子化合物を提供する。
【0008】
【化2】

(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R2は、直接結合、又は、ヘテロ原子としては酸素原子のみを有していてもよい有機基を表し、Eは、ヘテロ原子を表し、R3は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、mt及びntはそれぞれ独立に、1以上の整数であり、ltは、1〜3の整数である。複数あるR3、E及びltは、各々、同一であっても異なっていてもよい。mtは、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。mt、ntが付された括弧内の基が複数ある場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0009】
本発明は第三に、前記高分子化合物と、膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属化合物とを接触させることにより得られる金属複合体を提供する。
【0010】
本発明は第四に、前記高分子化合物と、アスペクト比が1.5未満の金属ナノ粒子、又は、アスペクト比が1.5未満の金属化合物ナノ粒子とを接触させることにより得られる金属複合体を提供する。
【0011】
本発明は第五に、前記金属複合体を含む電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、金属と効率よく強固に吸着できる化合物、及び、それを用いた金属複合体が得られる。また、本発明の化合物は、電子複合材料等の先端機能材料の原料として、特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「吸着」とは、化学吸着、物理吸着を意味する。
【0014】
<化合物>
本発明の化合物は、前記式(II−a)で表される化合物である。
【0015】
前記式(II−a)中、Ar2で表される芳香族基は、以下の式(1)〜(91)で表される化合物から水素原子を2個取り除いた残りの原子団を意味する。この芳香族基は、置換基を有していてもよい。
【0016】
以下の式(1)〜(91)で表される化合物の中でも、合成が容易であるので、式(1)〜(12)、(15)〜(22)、(24)〜(31)、(37)〜(40)、(43)〜(46)、(49)、(50)、(59)〜(76)で表される化合物が好ましく、式(1)〜(3)、(8)〜(10)、(15)〜(21)、(24)〜(31)、(37)、(39)、(43)〜(45)、(49)、(50)、(59)〜(76)で表される化合物がより好ましく、式(1)〜(3)、(8)、(10)、(15)、(17)、(21)、(24)、(30)、(59)、(60)、(61)で表される化合物が更に好ましく、式(1)〜(3)、(8)、(10)、(59)で表される化合物が特に好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
前記Ar2で表される芳香族基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、メルカプト基、カルボニルメルカプト基、チオカルボニルメルカプト基、置換基を有していてもよい炭化水素チオ基、置換基を有していてもよい炭化水素チオカルボニル基、置換基を有していてもよい炭化水素ジチオ基、水酸基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、置換基を有していてもよい炭化水素カルボニル基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭化水素カルボニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭化水素一置換アミノ基、置換基を有していてもよい炭化水素二置換アミノ基、ホスフィノ基、置換基を有していてもよい炭化水素一置換ホスフィノ基、置換基を有していてもよい炭化水素二置換ホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)2、カルバモイル基、置換基を有していてもよい炭化水素一置換カルバモイル基、置換基を有していてもよい炭化水素二置換カルバモイル基、式:−B(OH)2で表される基、ホウ酸エステル残基、スルホ基、置換基を有していてもよい炭化水素スルホ基、置換基を有していてもよい炭化水素スルホニル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、2個以上のエーテル結合を有する炭化水素基、2個以上のエステル結合を有する炭化水素基、2個以上のアミド結合を有する炭化水素基、式:−CO2Mで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−PO2Mで表される基、式:−PO32で表される基、式:−OMで表される基、式:−SMで表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基(式中、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。)、式:−NR3M’で表される基、式:−BR3M’で表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−SR2M’で表される基(式中、Rは、1価の炭化水素基を表し、M’は、アニオンを表す。)、及び、第4級化された窒素原子を複素環内に有する置換基を有していてもよい1価の複素環基等が挙げられ、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭化水素チオ基、置換基を有していてもよい炭化水素ジチオ基、水酸基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよい炭化水素カルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭化水素一置換アミノ基、置換基を有していてもよい炭化水素二置換アミノ基、式:−P(=O)(OH)2、スルホ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、式:−CO2Mで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−SO3Mで表される基、又は、式:−NR3M’で表される基が好ましく、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、式:−P(=O)(OH)2、スルホ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、式:−CO2Mで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−NR3M’で表される基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭化水素基、メルカプト基、カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、式:−CO2Mで表される基が特に好ましい。
前記Ar2で表される芳香族基は、これらの置換基を一種のみ有していても二種以上有していてもよい。また、複数の置換基がある場合には、それらが一緒になって環を形成していてもよい。
【0022】
置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子が更に好ましい。
【0023】
置換基である、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素数1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素数3〜50の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素数7〜50のアラルキル基が挙げられ、炭素数1〜50のアルキル基、炭素数6〜50のアリール基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が特に好ましい。
【0024】
置換基である、置換基を有していてもよい炭化水素チオ基、置換基を有していてもよい炭化水素チオカルボニル基、置換基を有していてもよい炭化水素ジチオ基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭化水素カルボニル基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭化水素カルボニルオキシ基は、各基を構成する水素原子の一部又は全部(特には1〜3個、とりわけ1個又は2個)が、前記「置換基を有していてもよい1価の炭化水素基」で置換されていてもよい基である。
【0025】
置換基である、炭化水素一置換アミノ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素一置換ホスフィノ基、炭化水素二置換ホスフィノ基、炭化水素一置換カルバモイル基、炭化水素二置換カルバモイル基は、各基を構成する水素原子の1個又は2個が、前記「置換基を有していてもよい1価の炭化水素基」で置換されていてもよい基である。
【0026】
置換基であるホウ酸エステル残基は、例えば、以下の式で表される基である。
【0027】
【化7】

【0028】
置換基である1価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環式化合物としては、ピリジン、1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、1,3,5−トリアジン、フラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、アザジアゾール等の単環式複素環式化合物;単環式複素環式化合物を構成する複素環の2個以上が縮合した縮合多環式複素環式化合物;単環式複素環式化合物を構成する複素環2個を、又は、芳香環1個と単環式複素環式化合物を構成する複素環1個とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式複素環式化合物等が挙げられ、ピリジン、1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、1,3,5−トリアジンが好ましく、ピリジン、1,3,5−トリアジンがより好ましい。
【0029】
置換基である2個以上のエーテル結合を有する炭化水素基は、例えば、以下の式で表される基である。
【0030】
【化8】

(式中、R’は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。nは、2以上の整数である。複数あるR’は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0031】
R’で表される2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基等の炭素原子数1〜50の2価の飽和炭化水素基;エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等のアルケニレン基、及び、エチニレン基等の炭素原子数2〜50の2価の不飽和炭化水素基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数3〜50の2価の環状飽和炭化水素基;1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等の炭素原子数6〜50のアリーレン基等が挙げられる。これらの基における水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0032】
置換基である2個以上のエーテル結合を有する炭化水素基は、例えば、以下の式で表される基である。
【0033】
【化9】

(式中、R’は、前記と同じ意味を有する。複数あるR’は、同一であっても異なっていてもよい。n3は、2以上の整数である。)
【0034】
置換基である2個以上のエステル結合を有する炭化水素基は、例えば、以下の式で表される基である。
【0035】
【化10】

(式中、R’及びnは、前記と同じ意味を有する。)
【0036】
置換基である2個以上のアミド結合を有する炭化水素基は、例えば、以下の式で表される基である。
【0037】
【化11】

(式中、R’及びnは、前記と同じ意味を有する。)
【0038】
前記Mで表される金属カチオンとしては、1〜3価のイオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等の金属のイオンが挙げられる。
【0039】
前記Mで表される置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンにおいて、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0040】
前記Rで表される1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0041】
前記M’で表されるアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオン、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン、2−フェニル−8−キノリノラトアニオン等が挙げられる。
【0042】
置換基である第4級化された窒素原子を複素環内に有する1価の複素環基とは、以下の式で表される基が挙げられる。
【0043】
【化12】

(式中、R及びM’は、前記と同じ意味を有する。)
【0044】
前記式(II−a)中、R2で表されるヘテロ原子としては酸素原子のみを有していてもよい有機基としては、前記置換基を有していてもよい1価の炭化水素基のCH2を酸素原子で置き換えた基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団、及び、前記置換基を有していてもよい1価の炭化水素基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団が挙げられ、これらの基同士は環を形成してもよい。R2としては、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団、置換基を有していてもよいアリール基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団、フェニル基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団、フェニル基から水素原子の一部を取り除いた残りの原子団である。
【0045】
前記式(II−a)中、Eで表されるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子が挙げられ、好ましくは酸素原子、硫黄原子、窒素原子であり、更に好ましくは酸素原子、硫黄原子であり、特に好ましくは硫黄原子である。
【0046】
なお、Eが酸素原子又は硫黄原子であり、かつ、R3が水素原子の場合は、下記反応式で表される異性化反応が起こることがある。この異性化反応で生成する化合物も本発明の化合物と同等の効果を発揮する。
【0047】
【化13】

【0048】
また、Eが硫黄原子であり、かつ、R3が水素原子の場合は、二分子の−E−H同士の反応で−E−E−の構造が生成しやすい。この反応で生成した化合物も本発明の化合物と同等の効果を発揮する。
【0049】
前記式(II−a)中、R3で表される1価の炭化水素基としては、前記置換基の項で説明し例示した、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基と同じである。複数あるR3は同一でも異なっていてもよく、複数のR3同士は環を形成してもよい。
【0050】
前記式(II−a)中、Xa及びXbで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0051】
a及びXbで表される−SO3Qにおいて、Qで表される置換又は非置換の1価の炭化水素基は、前記置換基の項で説明し例示した、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基と同じである。ここで、置換基としては、フッ素原子が挙げられる。
【0052】
a及びXbで表される−SO3Qとしては、メタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が挙げられる。
【0053】
a及びXbで表される−B(OQ1)2及び−B(OQ01)3・Maにおいて、Q1又はQ01で表される1価の炭化水素基としては、前記置換基の項で説明し例示した、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基が挙げられるが、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が更に好ましい。2個のQ1が一緒に環を形成する場合には、2個のQ1からなる2価の炭化水素基としては、1,2−エチレン基、1,1,2,2−テトラメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−フェニレン基が好ましい。
【0054】
a及びXbで表される−B(OQ01)3・Maにおいて、Maは、前記Mとして説明し例示したものと同じである。
【0055】
a及びXbで表される−Si(Q2)3、−Sn(Q3)3において、Q2、Q3で表される1価の炭化水素基としては、前記置換基の項で説明し例示した、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基が挙げられるが、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が更に好ましい。
【0056】
前記式(II−a)中、Xa及びXbは、好ましくは、ハロゲン原子、−SO3Q、−B(OQ1)2、−B(OQ01)3・Maであり、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−SO3Qであり、更に好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基であり、特に好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、とりわけ好ましくは臭素原子である。
【0057】
前記式(II−a)中、ltは、1〜3の整数である。Eがケイ素原子である場合、Eに直結するR3の数を表すltは3であり、Eが窒素原子又はリン原子である場合、Eに直結するR3の数を表すltは2であり、Eが酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子である場合、Eに直結するR3の数を表すltは1である。
【0058】
前記式(II−a)で表される化合物の中でも、下記式(II−b)で表される化合物が好ましく、下記式(II−c)で表される化合物がより好ましい。
【0059】
【化14】

(式中、R02は、2価の炭化水素基を表し、E0は、硫黄原子又は酸素原子を表す。R4は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、ntは1又は2であり、ot=2−ntである。複数あるR3及びE0は、各々、同一であっても異なっていてもよい。R02は、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。R3、Xa及びXbは、前記と同じ意味を有する。ntが付された括弧内の基が複数ある場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0060】
【化15】

(式中、R3、R4及びE0は、前記と同じ意味を有する。Xaa及びXbbはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【0061】
前記式(II−b)中のR02で表される2価の炭化水素基としては、前記R’で表される2価の炭化水素基の項で説明し例示した2価の炭化水素基と同じであるが、フェニレン基が好ましい。
【0062】
前記式(II−b)中のXa及びXbで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0063】
前記式(II−b)、(II−c)中のR4で表される1価の炭化水素基は、前記置換基の項で説明し例示した、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基と同じである。
【0064】
本発明の化合物の例としては、以下の式(F−1)〜(F−29)で表される化合物が挙げられ、以下の式(F−1)〜(F−12)で表される化合物が好ましい。
【0065】
【化16】

【0066】
【化17】

【0067】
【化18】

【0068】
【化19】

【0069】
【化20】

【0070】
<化合物の製造方法>
本発明の化合物は、如何なる方法で合成したものであってもよいが、合成方法の一例を以下で説明する(スキームA)。
【0071】
【化21】

【0072】
このスキームAは、Xa及びXbがハロゲン原子である場合に適用できる。ここで、スキームAの目的物において、Xa及びXbが、−SO3Q、−B(OQ1)2、−Si(Q2)3又は−Sn(Q3)3である場合には、スキームAの適切な段階で、Xa及びXbを対応する基に変換すればよい。変換方法としては、Xa及びXbがハロゲン原子である化合物(スキームA中のいずれの段階でもよい。)に、n−ブチルリチウム等の有機リチウムを反応させ、その後、
(1)(Q1O)2B−B(OQ1)2と反応させることにより、Xa及びXbの少なくとも一方が−B(OQ1)2に変換された化合物が得られ、
(2)(Q2)3SiClと反応させることにより、Xa及びXbの少なくとも一方が−Si(Q2)3に変換された化合物が得られ、
(3)(Q3)3SnCl又は(Q3)3Sn−Sn(Q3)3と反応させることにより、Xa及びXbの少なくとも一方が−Sn(Q3)3に変換された化合物が得られる。
これらの変換方法における各反応は、パラジウム触媒の存在下で行うと、反応速度が向上する。なお、Xa及びXbが、ヨウ素原子又は臭素原子である場合、前記有機リチウムの反応は省略可能である。
【0073】
本発明の化合物の合成方法の他の一例としては、下記式(II−t)で表される化合物と下記式(II−u)で表される化合物とを反応させる方法が挙げられる。
【0074】
【化22】

(式中、R2、R3、E、lt及びmtは、前記と同じ意味を有する。Xcは、ハロゲン原子、ニトロ基、−SO3Q、−B(OQ12、−B(OQ013・Ma、−Si(Q2)3、又は、−Sn(Q3)3を表す。mtが付された括弧内の基が複数ある場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0075】
【化23】

(式中、Ar2、Xa、Xb及びntは、前記と同じ意味を有する。Xdは、ハロゲン原子、ニトロ基、−SO3Q、−B(OQ12、−B(OQ013・Ma、−Si(Q2)3、又は、−Sn(Q3)3を表す。)
【0076】
前記式(II−t)中のXc及び前記式(II−u)中のXdがハロゲン原子である場合、熊田・玉尾カップリングを用いることができる。即ち、前記式(II−t)で表される化合物、又は、前記式(II−u)で表される化合物に対して、予めマグネシウムを反応させるか、アルキルマグネシウムクロライド等を反応させることにより、Xc又はXdを、−MgXc、−MgXd又は−MgClとした後、ニッケル触媒(例えば、NiCl2(dppe)2)又はパラジウム触媒(例えば、Pd(PPh3)4)の存在下で、他方と反応させることにより、前記式(II−a)で表される化合物を得ることができる。
【0077】
前記式(II−t)中のXc及び前記式(II−u)中のXdがハロゲン原子である場合、山本カップリングを用いることもできる。即ち、前記式(II−t)で表される化合物、及び、前記式(II−u)で表される化合物を、ニッケル触媒(例えば、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0))の存在下で反応させるカップリングにより、前記式(II−a)で表される化合物を得ることができる。
【0078】
前記式(II−t)中のXc、前記式(II−u)中のXdの一方がハロゲン原子であり、他方が−B(OQ1)2又は−B(OQ01)3・Maである場合、鈴木・宮浦カップリングを用いることができる。即ち、前記式(II−t)で表される化合物、及び、前記式(II−u)で表される化合物を、塩基及びパラジウム触媒(例えば、Pd(PPh3)4)の存在下で反応させるカップリングにより、前記式(II−a)で表される化合物を得ることができる。
【0079】
その他にも、前記式(II−t)で表される化合物、及び、前記式(II−u)で表される化合物を、ウルマン反応、グレーサー反応、溝呂木・ヘック反応、根岸カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、ブッフバルト・ハートウィッグ反応等させることにより、前記式(II−a)で表される化合物を得ることができる。
【0080】
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、前記式(P−a)で表される構成単位を有する、分子量が5×102〜1×107の高分子化合物である。本発明の高分子化合物は、電荷が分子内を移動し易くなるので、共役高分子化合物であることが好ましい。
【0081】
本発明の高分子化合物の分子量は、電気伝導性及び塗布性が優れるので、1×103〜2×106が好ましく、2×103〜1×106がより好ましく、2×103〜5×105が更に好ましい。得られる高分子化合物の分子量は均一ではないことがあり、また、正確な分子量を計測することが困難なことがある。この場合には、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて、ポリスチレン等の標準高分子化合物に換算した分子量の分布から、数平均分子量又は重量平均分子量を得て、共役化合物の分子量とする。
【0082】
前記式(P−a)中のAr2、R2、E、R3、mt、nt及びltは、前記式(II−a)中のAr2、R2、E、R3、mt、nt及びltとして説明し例示したものと同じである。また、前記式(P−a)で表される構成単位の例としては、前記式(F−1)〜(F−28)で表される化合物のXa及びXbに対応する2個の原子又は基を取り除いてなる基が挙げられる。
【0083】
前記式(P−a)で表される構成単位は、導電性、HOMOのエネルギーレベル、LUMOのエネルギーレベル、及び、合成のし易さが良好となるので、下記式(P−b)で表される構成単位であることが好ましく、下記式(P−c)で表される構成単位であることがより好ましい。
【0084】
【化24】

(式中、R02は、2価の炭化水素基を表し、E0は、硫黄原子又は酸素原子を表し、R4は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、ntは1又は2であり、ot=2−ntである。R3は、前記と同じ意味を有する。複数あるR3及びE0は、各々、同一であっても異なっていてもよい。R02は、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。ntが付された括弧内の基が複数ある場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0085】
【化25】

(式中、R3、R4及びE0は、前記と同じ意味を有する。)
【0086】
前記式(P−b)中のR02、E0、R3、R4、ot及びntは、前記式(II−b)中のR02、E0、R3、R4、ot及びntとして説明し例示したものと同じである。
【0087】
前記式(P−b)中のR02は、フェニレン基であることが好ましい。
【0088】
前記式(P−c)中のE0、R3及びR4は、前記式(II−c)中のE0、R3及びR4として説明し例示したものと同じである。
【0089】
本発明の高分子化合物は、以上で説明した構成単位のみからなる単独重合体であってもよいし、その他の構成単位を含む共重合体であってもよい。その他の構成単位としては、ジオクチルフルオレンジイル基からなる構成単位、ビチオフェンジイル基からなる構成単位等の式:−Ar2−で表される構成単位(なお、この構成単位は、前記式(P−a)で表される構成単位とは異なる。)等が挙げられる。
【0090】
本発明の高分子化合物が共重合体である場合、金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子への吸着がより強固になり、かつ、溶媒への溶解性が向上するので、該高分子化合物1分子に含まれる前記式(P−a)で表される構成単位の数は、1〜2000個が好ましく、1〜1000個がより好ましく、1〜200個が更に好ましく、1〜50個が特に好ましく、1〜20個がとりわけ好ましい。
【0091】
<高分子化合物の製造方法>
本発明の高分子化合物は、如何なる方法で合成したものであってもよいが、合成方法の一例として、本発明の化合物を用いた方法を以下で説明する。
【0092】
本発明の高分子化合物は、例えば、本発明の化合物を単独で用いて反応させてもよいが、本発明の化合物と、下記式(V−a)で表される化合物及び/又は下記式(V−b)で表される化合物とを併用して反応させてもよい。これらの各化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0093】
【化26】

(式中、Xa、Xb及びAr2は、前記と同じ意味を有する。)
【0094】
【化27】

(式中、Xa及びAr2は、前記と同じ意味を有する。)
【0095】
本発明の化合物を単独で用いて反応させた場合、得られる高分子化合物は、前記式(P−a)で表される構成単位のみからなる高分子化合物である。一方、本発明の化合物と、下記式(V−a)で表される化合物及び/又は下記式(V−b)で表される化合物とを併用して反応させた場合、得られる高分子化合物は、下記式(P−V−a)で表される構成単位及び/又は下記式(P−V−b)で表される基を含む高分子化合物である。
【0096】
【化28】

(式中、Ar2は、前記と同じ意味を有する。)
【0097】
【化29】

(式中、Ar2は、前記と同じ意味を有する。)
【0098】
得られる高分子化合物は、Ar2で表される基が鎖状に連なった線状の構造となりやすく、前記式(P−V−b)で表される基は、その末端として含まれる。また、前記式(V−a)で表される化合物及び/又は本発明の化合物(前記式(II−a)で表される化合物)が、更に−Xaで表される基を有する場合には、得られる高分子化合物は、樹状や網目状の構造となる。
【0099】
本発明の高分子化合物を得るための反応としては、本発明の化合物のXa及びXbがハロゲン原子である場合、熊田・玉尾カップリングを用いることができる。即ち、本発明の化合物に対して、予めマグネシウムを反応させるか、アルキルマグネシウムクロライド等を反応させることにより、Xa又はXbを、−MgXa、−MgXb又は−MgClとした後、ニッケル触媒(例えば、NiCl2(dppe)2)又はパラジウム触媒(例えば、Pd(PPh3)4)の存在下で、反応させることにより、本発明の高分子化合物を得ることができる。また、前記式(V−a)で表される化合物及び/又は前記式(V−b)で表される化合物を系中に共存させる場合、それらの化合物のXa及びXbもハロゲン原子であることが好ましい。
【0100】
本発明の化合物のXa及びXbがハロゲン原子である場合、山本カップリングを用いることもできる。即ち、本発明の化合物を、ニッケル触媒(例えば、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0))の存在下で反応させるカップリングにより、本発明の高分子化合物を得ることができる。また、前記式(V−a)で表される化合物及び/又は前記式(V−b)で表される化合物を系中に共存させる場合、それらの化合物のXa及びXbもハロゲン原子であることが好ましい。
【0101】
本発明の化合物のXa及びXbの一方がハロゲン原子であり、
(1)他方が−B(OQ1)2又は−B(OQ01)3・Maである場合、
(2)本発明の化合物のXa及びXbがハロゲン原子であり、共存する前記式(V−a)で表される化合物のXa及びXb、並びに、前記式(V−b)で表される化合物のXaが−B(OQ1)2又は−B(OQ01)3・Maである場合、又は、
(3)本発明の化合物のXa及びXbが−B(OQ1)2又は−B(OQ01)3・Maであり、共存する前記式(V−a)で表される化合物のXa及びXb、並びに/又は、前記式(V−b)で表される化合物のXaとXbの両方がハロゲン原子である場合、
鈴木・宮浦カップリングを用いることができる。即ち、本発明の化合物を、塩基及びパラジウム触媒(例えば、Pd(PPh3)4)の存在下で反応させるカップリングにより、本発明の高分子化合物を得ることができる。
【0102】
その他にも、本発明の化合物を、ウルマン反応、グレーサー反応、溝呂木・ヘック反応、根岸カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、ブッフバルト・ハートウィッグ反応等させることにより、本発明の高分子化合物を得ることができる。
【0103】
本発明の高分子化合物は、前記式(P−a)中のR3が水素原子であると、金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子とより効率よく、より強固に吸着できるので好ましい。しかし、前述の合成方法を適用した場合には、本発明の化合物としてR3が水素原子である化合物を用いると、カップリング反応等が進みにくいことがある。その場合は、R3が水素原子ではない本発明の化合物を用いて高分子化合物を合成した後、塩化アルミニウム、蟻酸等のカルボン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸等を用いて、前記式(P−a)中のR3を水素原子に変換する反応を行うことが好ましい。
【0104】
<金属複合体>
本発明の金属複合体は、本発明の高分子化合物と、膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属化合物、或いは、アスペクト比が1.5未満の金属ナノ粒子又はアスペクト比が1.5未満の金属化合物ナノ粒子とを接触させることにより得られる金属複合体である。
【0105】
前記膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属複合体の厚さは、通常、0.01nm〜10cmであり、0.01nm〜0.5cmが好ましく、0.01nm〜200μmがより好ましく、0.01nm〜20μmが更に好ましい。
【0106】
前記金属、又は、金属化合物を構成する金属としては、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、すず、アンチモン、ランタン、セリウム、ユウロピウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマスが挙げられ、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、すず、アンチモン、ランタン、セリウム、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛及びビスマスが好ましく、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、すず、タングステン、イリジウム、白金、金及び鉛が更に好ましく、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、すず、イリジウム、白金、金が特に好ましい。
【0107】
金属化合物としては、合金、金属酸化物、複合酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属塩が挙げられ、合金、金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物が好ましい。
【0108】
金属化合物としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化モリブデン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅、二酸化銅、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化タングステン(VI)、酸化ケイ素、酸化スズ(IV)、ニッケルタングステン、酸化セリウム、酸化マンガン、硫化スズ、酸化コバルト、酸化ホルミウム、四三酸化コバルト、四三酸化鉄、アルミン酸コバルト(CoAl2O4)、スピネル(Al2O3/MgO)等が挙げられ、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化モリブデン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅、二酸化銅、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化タングステン(VI)、酸化ケイ素、酸化スズ(IV)が好ましく、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化モリブデン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛がより好ましい。
【0109】
前記膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属酸化物は、鋳造、圧延、面削、研磨等の成型、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の真空成膜、電気めっき、陽極酸化、無電解めっき、化学めっき等のめっき処理、粒子分散液の塗布等の塗装によって作製できるが、圧延蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングによって作製されたものが好ましい。
【0110】
前記金属ナノ粒子、金属複合体ナノ粒子は、通常、最長軸の長さが10μm以下であり、好ましくは0.1nm〜1μmであり、より好ましくは1nm〜500nmである。
【0111】
前記金属ナノ粒子、金属複合体ナノ粒子は、アスペクト比(即ち、最も長い径/最も短い径を意味し、アスペクト比に分布がある場合には平均値とする。)が1.5未満であるが、好ましくは1.4以下であり、より好ましくは1.3以下であり、更に好ましくは1.2以下であり、特に好ましくは1.1以下である。
【0112】
前記金属ナノ粒子は、前記金属そのものであっても、前記金属にその他の物質が吸着したものであってもよい。また、前記金属化合物ナノ粒子は、前記金属化合物そのものであっても、前記金属化合物にその他の物質が吸着したものであってもよい。
【0113】
前記金属、前記金属化合物に吸着し得る物質としては、炭素数が1〜50のアルカンチオール(例えば、テトラデカンチオール、ドデカンチオール、デカンチオール、オクタンチオール)、無機多孔体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等が挙げられる。なお、これらの物質の少なくとも一部は、金属複合体の製造工程において、本発明の高分子化合物に置き換わる。
【0114】
前記接触は、(1)本発明の高分子化合物を膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属化合物に貼り付ける方法、(2)本発明の高分子化合物を膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属化合物に塗布する方法、(3)本発明の高分子化合物と、金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子とを、攪拌又は混練させる方法により行うことができる。この接触の際には、溶媒を介在させることが好ましい。また、この接触の際には、系中にその他の成分を共存させてもよいし、超音波をかけてもよい。
【0115】
前記(2)の場合には、本発明の高分子化合物を0.0001〜50重量%含む溶液を調製し、膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属化合物に塗布することが好ましい。
【0116】
前記(3)の場合であって、接触の際に溶媒を介在させるときには、該溶媒としては、本発明の高分子化合物を溶解させることができ、金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子を溶解させないものが通常用いられる。この溶媒としては、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、酢酸エチル、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸、水、プロパノール、ブタノール、N−メチルピロリドンが挙げられ、共役化合物の溶解性の観点から、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、トルエン、キシレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、アセトニトリル、プロパノール、ブタノール、N−メチルピロリドンが好ましい。なお、この溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0117】
前記(3)の場合には、攪拌や混練の温度は、好ましくは−70〜200℃、より好ましくは−10〜120℃、更に好ましくは0〜100℃であり、特に好ましくは20〜70℃である。
【0118】
前記(3)の場合には、攪拌や混練の時間は、好ましくは0.01秒〜1000分、より好ましくは0.1秒〜900分、更に好ましくは1秒〜500分である。
【0119】
前記接触によって、本発明の高分子化合物が金属又は金属化合物に吸着していることを確認する方法としては、高分子化合物と金属又は金属化合物との相互作用に起因する、化学結合(共有結合、配位結合、水素結合)の結合エネルギーの変化、原子の電子密度の変化、電子の軌道のエネルギーレベルの変化等を捉えることが好ましい。これらの変化を捉える方法としては、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、紫外可視吸収分光法、蛍光分光法、燐光分光法、光電子分光法、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TG)核磁気共鳴(NMR)法等が挙げられる。これらの変化は、見た目の色の変化としても現れる場合がある。また、溶解性が変化することで金属複合体となったことを確認できる場合もある。
【0120】
前記接触の後に、得られた複合体を精製する工程(以下、「精製工程」と言う。)を行ってもよい。
前記(2)の場合には、得られた複合体を、加熱、乾燥させることで、溶媒を除去することができる。また、得られた複合体に過剰の高分子化合物が吸着している場合には、該高分子化合物を溶解できる溶媒を吹きかけたり、得られた複合体を溶媒に没入させたりすることにより、余剰の高分子化合物を除去することができる。
前記(3)の場合には、得られた複合体を、超音波分散、遠心分離、上澄み除去、再分散、透析、ろ過、洗浄、加熱、乾燥等させることにより、余剰の高分子化合物を除去することができる。
【0121】
<電子素子>
本発明の金属複合体では、高分子化合物と金属又は金属化合物との間での電荷の移動が容易である。従って、本発明の金属複合体を含む電子素子、即ち、本発明の高分子化合物と金属又は金属化合物とを層状に積み重ねた電子素子は、層間での電荷の移動が容易であり、素子内に流れる電流が増加されたものとなる。本発明の電子素子としては、有機EL素子等の発光素子、トランジスタ、太陽電池等の光電変換素子等が挙げられる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明について、実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0123】
<実施例1>
【0124】
【化30】

【0125】
[化合物2の合成]
窒素雰囲気下、化合物1(特開2009-149850号公報に記載)16.4g(33.9mmol)、4−フルオロベンゾニトリル4.11g(34.0mmol)、炭酸カリウム9.36g(67.8mmol)及び18−クラウン−6 8.95g(33.9mmol)のDMF懸濁液(164ml)を135〜140℃で25時間加熱攪拌した。冷却後、水(492ml)で希釈し、1N塩酸(20.3ml)を加えて酢酸エチルで抽出、分液した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下濃縮して得た残渣をシリカゲルクロマト精製(SiO、600g、ヘキサン:酢酸エチル=30:1→25:1(体積比))して、化合物2 13.3g(22.7mmol)を結晶として得た。収率は67.2%であった。この化合物2について、NMRで構造を確認した。
【0126】
[化合物3の合成]
窒素雰囲気下、化合物2 13.9g(23.8mmol)、塩化トリエチルベンジルアンモニウム1.81g(7.96mmol)、5N水酸化ナトリウム水溶液(192ml)及びエタノール(192ml)の混合物を16時間半加熱還流した。冷却後、濃塩酸で中和し、減圧下エタノールを除いた。混合物に濃塩酸を加えてpHを2とし、t−ブチルメチルエーテルで抽出、分液した。水層をt−ブチルメチルエーテルで抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、濃縮して化合物3 13.8g(22.9mmol)を結晶として得た。収率は96.2%であった。この化合物3について、NMRで構造を確認した。
【0127】
[化合物4の合成]
窒素雰囲気下、化合物3 12.6g(20.9mmol)とトルエン(38ml)との混合物に塩化チオニル20.6g(173mmol)を加え、80℃で1時間加熱した。冷却後、減圧下で濃縮し、得られた残渣にトルエンを加え、更に減圧濃縮する操作を3回繰り返した後、更に減圧乾燥させることで酸塩化物13.2g(21.2mmol)を得た。みかけ収率は101%であった。
【0128】
窒素雰囲気下、イソチオシアン酸カリウム2.27g(23.4mmol)のアセトニトリル溶液(51ml)を氷浴で冷却しながら、前記酸塩化物12.1g(19.5mmol)のトルエン溶液(12ml)を15分かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間攪拌した。得られた混合物をろ過し、ろ液を減圧下、濃縮した。得られた残渣にアセトン(47ml)を加え、更に尿素1.40g(23.3mmol)を加えて還流温度で3時間加熱攪拌した。冷却後、混合物を減圧下濃縮し、水を加えて析出した結晶をろ過した。ろ上物を水で洗浄し、減圧乾燥させて、化合物4 11.1g(15.8mmol)を結晶として得た。収率は81.0%であった。この化合物4について、NMRで構造を確認した。
【0129】
[化合物5の合成]
窒素雰囲気下、化合物4 10.2g(14.5mmol)、エタノール(136ml)及び4N水酸化ナトリウム水溶液(272ml)の混合物を室温で終夜攪拌した。氷浴で冷却しながら、1M硫酸でpH6とし、析出した結晶をろ過した。ろ上物を水で洗浄し、減圧乾燥させて、化合物5 10.3g(15.0mmol)を結晶として得た。みかけ収率は103%であった。この化合物5について、NMRで構造を確認した。
【0130】
[化合物6の合成]
窒素雰囲気下、化合物5 10.3g(15.0mmol)と1N水酸化ナトリウム水溶液(121ml)の混合物を氷浴で冷却しながら、30重量%過酸化水素水(30.3ml)を滴下した。同温度で15分攪拌後、室温で30分攪拌した。TLCにて原料の消失を確認後、氷浴で冷却しながら1M硫酸でpH7とした。析出した結晶をろ過し、ろ上物を水、ヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(体積比))の混合溶媒で洗浄後、減圧乾燥させて化合物6 6.67g(9.94mmol)を結晶として得た。収率は66.3%であった。この化合物6について、NMRで構造を確認した。
【0131】
<実施例2>
【0132】
【化31】

【0133】
[化合物7の合成]
窒素雰囲気下、化合物6 6.61g(9.85mmol)、オキシ塩化リン19.8ml(212mmol)及びN,N−ジエチルアニリン1.51g(10.1mmol)の混合物を105℃で3時間加熱攪拌した。冷却後、減圧下に過剰のオキシ塩化リンを除き、残渣にクロロホルムと水を加え室温で1時間攪拌した。分液した有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液(水層がpH7となる程度)、飽和食塩水の順に洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、濃縮して得られた結晶を更に減圧乾燥させて、化合物7 7.00g(9.85mmol)を得た。収率は100%であった。この化合物7について、NMRで構造を確認した。
【0134】
[化合物8の合成]
窒素雰囲気、氷浴下で55重量%水素化ナトリウム0.91g(20.9mmol)に脱水イソプロピルアルコール(210ml)を加え、水素化ナトリウムが消失、かつ水素発生が止むまで室温で攪拌した。再び氷浴で冷却しながらt−ブチルメルカプタン2.54ml(22.5mmol)を滴下した。滴下終了後、室温で化合物7 7.00g(9.89mmol)の脱水THF溶液(37ml)を滴下した。得られた混合物を還流温度で2時間加熱撹拌した。冷却後、得られた混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣にヘキサンを加え、析出した結晶をヘキサン及びアセトニトリルで洗浄、減圧乾燥させて化合物8(4.40g)を得た。また、そのろ液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマト精製(SiO、30g、ヘキサン→ヘキサン:トルエン=8:1→6:1(体積比))して、化合物8を合わせて5.46g(6.70mmol)結晶として得た(液体クロマトグラフィ純度:97.2%)。ヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=10:1(体積比))9倍容で再結晶を行い、ろ上物をヘキサンで2回洗浄することにより、化合物8 3.0gを得た。収率は37.2%であった。この化合物8について、NMRで構造を確認した。
【0135】
<実施例3>(高分子化合物P−1の合成)
50mlフラスコに化合物8を100mg(0.12mmol)と、下記式:
【0136】
【化32】

で表される化合物を560mg(1.06mmol)と、下記式:
【0137】
【化33】

で表される化合物を496mg(0.86mmol)と、相間移動触媒(商品名:Aliquat336(登録商標)(アルドリッチ製))を74mg仕込み、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。次いで、トルエン20mLにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム227mg(0.196mmol)を加えた溶液を加え攪拌し、0.60mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液10.0mLを加えて攪拌した。次いで、100℃で5時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、反応溶液の有機層と水層とを分離し、該有機層をメタノール100mLに滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥させ、717mgの高分子化合物Jを固体として得た。
【0138】
NMRの結果から、高分子化合物Jは、下記式で表される繰り返し単位2種を有する。
【0139】
【化34】

【0140】
【化35】

【0141】
高分子化合物J中の下記式で表される構成単位:
【0142】
【化36】

は4.4mol%であった。また、高分子化合物Jのポリスチレン換算の数平均分子量は6.7×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.3×104であった。
【0143】
50mlフラスコに高分子化合物Jを485mg、トルエン31.5ml仕込み、室温で攪拌した。次いで塩化アルミニウムを加えた後、115℃で1時間攪拌した。冷却後、反応容器中の有機層をメタノール100mlに滴下し、沈殿を析出させた。該沈殿を濾過、乾燥させることにより、固体260mgを得た。NMRの分析結果から高分子化合物Jのt−ブチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。固体は下記式で表される繰り返し単位2種を有する高分子化合物P−1(重合体)であると考えられる。
【0144】
【化37】

【0145】
【化38】

【0146】
高分子化合物P−1のポリスチレン換算の数平均分子量は6.6×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.6×104であった。
【0147】
<実施例4>(高分子化合物P−2の合成)
50mlフラスコに化合物8を100mg(0.12mmol)と、下記式:
【0148】
【化39】

で表される化合物を158mg(0.24mmol)と、下記式:
【0149】
【化40】

で表される化合物を67.4mg(0.12mmol)と、相間移動触媒(商品名:Aliquat336(登録商標)(アルドリッチ製))を19.3mg仕込み、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。そこに、トルエン8mLを仕込み、30℃で5分間攪拌した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム14.9mg(0.048mmol)を加え30℃で10分間攪拌し、2N炭酸ナトリウム水溶液4.0mLを加えた後、30℃で5分間攪拌した。次いで、100℃で8時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、反応溶液の有機層と水層とを分離し、該有機層をメタノール200mLに滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥させ、黄色固体を得た。この黄色固体を300mlフラスコに仕込み、トルエン100mLをいれ溶解させ、30℃で5分間攪拌した。次いで活性炭を10g仕込み100℃で2時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、有機層をろ過し、5mlに濃縮した。濃縮した有機層をメタノール200mlに滴下して沈殿を析出させ、沈殿をろ過、乾燥させることにより、高分子化合物Gを100mg得た。
【0150】
NMRの結果から高分子化合物Gは、下記式で表される繰り返し単位2種を有する。
【0151】
【化41】

【0152】
【化42】

【0153】
高分子化合物G中の下記式で表される構成単位:
【0154】
【化43】

は15mol%であった。また、高分子化合物Gのポリスチレン換算の数平均分子量は7.9×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.9×104であった。
【0155】
50mlフラスコに高分子化合物Gを80mg、トルエン20ml仕込み、10分室温で攪拌した。次いで塩化アルミニウムを加えた後、更に1時間攪拌した。反応容器中の有機層をメタノール500mlに滴下し、沈殿を析出させた。該沈殿を濾過、乾燥させ、固体を40mg得た。NMRの分析結果から高分子化合物Gのt−ブチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。固体は下記式で表される繰り返し単位2種を有する高分子化合物P−2(重合体)であると考えられる。
【0156】
【化44】

【0157】
【化45】

【0158】
高分子化合物P−2のポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量は、高分子化合物Gと同様である。
【0159】
<実施例5>(高分子化合物P−3の合成)
50mlフラスコに、化合物8を100mg(0.12mmol)と、下記式:
【0160】
【化46】

で表される化合物を410mg(0.98mmol)と、下記式:
【0161】
【化47】

で表される化合物を496mg(0.86mmol)と、相間移動触媒(商品名:Aliquat336(登録商標)(アルドリッチ製))を19.3mg仕込み、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム227mg(0.20mmol)を溶かしたトルエン溶液20mLを仕込み攪拌した。次いで、0.59mol/L炭酸ナトリウム水溶液10.0mLを加えた後、100℃で5.5時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、反応溶液の有機層と水層とを分離し、該有機層をメタノール200mLに滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥させ、高分子化合物Kを606mg得た。
【0162】
NMRの結果から高分子化合物Kは下記式で表される。
【0163】
【化48】

(式中、n及びmは、繰り返し単位数を表す数である。n:mは、仕込み比より推測すると7:1である。)
【0164】
また、高分子化合物Kのポリスチレン換算の数平均分子量は3.5×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×104であった。
【0165】
50mlフラスコに、高分子化合物Kを300mg、トルエン3.9ml仕込み、氷水浴で冷却し、次いでトリフルオロメタンスルホン酸0.6mLとトリフルオロ酢酸0.6mLを加えた後、80度に加熱し7時間攪拌した。室温まで冷却後、反応容器中の有機層をメタノール100mlに滴下し、沈殿を析出させた。該沈殿を濾過、乾燥させ、クロロホルムに溶かして、これをメタノール100mlに滴下し、沈殿を析出させた。該沈殿を濾過、乾燥させ、固体を250mg得た。NMRの分析結果から高分子化合物Gのt−ブチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。固体は下記式で表される高分子化合物P−3(重合体)であると考えられる。
【0166】
【化49】

(式中、n及びmは、繰り返し単位数を表す数である。n:mは、仕込み比より推測すると7:1である。)
【0167】
高分子化合物P−3のポリスチレン換算の数平均分子量は4.3×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.5×104であった。
【0168】
<実施例6>
高分子化合物P−1の6.7mgをトルエン3mLに溶かした。ドデカンチオールで表面修飾された銀ナノ粒子のヘキサン溶液(粒子サイズ(DLS):5-15nm、0.25%(w/v)ヘキサン溶液、アルドリッチ製)3mLからヘキサンをエバポレーターで留去し、トルエン3mLを加え、これを高分子化合物P−1トルエン溶液と混合して、1.5時間静置した。この溶液は安定であり、沈殿は生成しなかった。これを用いてスピンコーティング(事前にポアフィルターでろ過、500rpm、2分)を行うことにより、膜厚が10nmの膜を作製した。これは高分子化合物P−1と銀ナノ粒子との複合体である。
【0169】
<実施例7>
銀ナノ粒子(ナノパウダー、粒子サイズ: <100 nm、99.5% trace metals basis、アルドリッチ製)を7mgとり、トルエン1.5mLに加え、容器ごと超音波洗浄機に入れて超音波によって銀粒子を拡散させた。この時、しばらく液は灰色に濁っていたが、1時間もすると銀ナノ粒子は沈殿して上澄みは透明となった。超音波で銀粒子を拡散させた後、高分子化合物P−1を2mg加えて攪拌すると、得られた分散液は静置して1時間経っても濁っており、銀粒子が分散していた。このことから、高分子化合物P−1が銀粒子の表面に吸着することによって、銀ナノ粒子が安定化されていることが分かった。
【0170】
<実施例8>
高分子化合物P−3の8.6mgをトルエン2.2gに溶かし、高分子化合物P−3トルエン溶液を調製した。ドデカンチオールで表面修飾された銀ナノ粒子のヘキサン溶液(粒子サイズ(DLS):5-15nm、0.25%(w/v)ヘキサン溶液、アルドリッチ製)からヘキサンをエバポレーターで留去し(ここで、銀ナノ粒子の重量は8.6mg)、トルエン2.2gを加え、銀ナノ粒子のトルエン溶液を調製した。
【0171】
銀ナノ粒子のトルエン溶液から1.32gを取り、高分子化合物P−3トルエン溶液から1.29g取り、両者を混合した。得られた混合溶液は透明で均一であり、沈殿は生成しなかった。これをメタノールに滴下すると、茶色の沈殿が生成し、上澄みは無色で透明であった。
【0172】
一方、銀ナノ粒子のトルエン溶液をメタノールに滴下すると、沈殿は生成せず、茶色の透明な液体で均一となった。また、高分子化合物P−3のトルエン溶液をメタノールに滴下すると黄色の沈殿が生成し、上澄みは無色で透明であった。
【0173】
これらのことから考察すると、銀ナノ粒子のトルエン溶液と高分子化合物P−3のトルエン溶液との混合によって、銀ナノ粒子の表面にあったドデカンチオールは高分子化合物P−3によって置換され、メタノール中では高分子化合物P−3と共に銀ナノ粒子は沈殿し、液中に銀ナノ粒子は存在しない。この沈殿は高分子化合物P−3と銀ナノ粒子との複合体である。この沈殿を、遠心分離機を用いてメタノール溶液と分離し、乾燥させて1H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、TMS標準)を測定すると、ドデカンチオールに帰属できるシグナルはなかった。一方、前記の銀ナノ粒子のトルエン溶液からトルエンをエバポレーターで留去し乾燥させて、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、TMS標準)を測定すると、ドデカンチオールに帰属できるシグナル(例えば、2.66ppmが特徴的である。)が確認できる。
【0174】
これらのことから考察すると、銀ナノ粒子のトルエン溶液と高分子化合物P−3のトルエン溶液との混合によって、銀ナノ粒子の表面にあったドデカンチオールのほとんどは高分子化合物P−3によって置換され、高分子化合物P−3と銀ナノ粒子との複合体が生成しており、高分子化合物P−1は銀ナノ粒子に強く吸着していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II−a)で表される化合物。
【化1】

(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R2は、直接結合、又は、ヘテロ原子としては酸素原子のみを有していてもよい有機基を表し、Eは、ヘテロ原子を表し、R3は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、mt及びntはそれぞれ独立に、1以上の整数であり、ltは、1〜3の整数である。複数あるR3、E及びltは、各々、同一であっても異なっていてもよい。mtは、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。Xa及びXbはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、−SO3Q(ここで、Qは置換又は非置換の1価の炭化水素基を表す。)、−B(OQ12(ここで、Q1は、水素原子又は1価の炭化水素基を表すか、2個のQ1が結合して一緒に環を形成する。2個あるQ1は、同一であっても異なっていてもよい。)、−B(OQ013・Ma(式中、Q01は、水素原子又は1価の炭化水素基を表すか、3個のQ01が結合して一緒に環を形成する。3個あるQ01は、同一であっても異なっていてもよい。Maは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。)、−Si(Q2)3(ここで、Q2は、1価の炭化水素基を表す。)、又は、−Sn(Q3)3(ここで、Q3は、1価の炭化水素基を表す。)を表す。)
【請求項2】
下記式(II−b)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化2】

(式中、R02は、2価の炭化水素基を表し、E0は、硫黄原子又は酸素原子を表す。R4は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、ntは1又は2であり、ot=2−ntである。複数あるR3及びE0は、各々、同一であっても異なっていてもよい。R02は、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。R3、Xa及びXbは、前記と同じ意味を有する。)
【請求項3】
02がフェニレン基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
a及びXbがそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
下記式(II−c)で表される、請求項4に記載の化合物。
【化3】

(式中、R3、R4及びE0は、前記と同じ意味を有する。Xaa及びXbbはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【請求項6】
下記式(P−a)で表される構成単位を有する、分子量が5×102〜1×107の高分子化合物。
【化4】

(式中、Ar2は、置換基を有していてもよい芳香族基を表し、R2は、直接結合、又は、ヘテロ原子としては酸素原子のみを有していてもよい有機基を表し、Eは、ヘテロ原子を表し、R3は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、mt及びntはそれぞれ独立に、1以上の整数であり、ltは、1〜3の整数である。複数あるR3、E及びltは、各々、同一であっても異なっていてもよい。mtは、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記式(P−a)で表される構成単位が、下記式(P−b)で表される構成単位である、請求項6に記載の高分子化合物。
【化5】

(式中、R02は、2価の炭化水素基を表し、E0は、硫黄原子又は酸素原子を表し、R4は、1価の炭化水素基又は水素原子を表し、ntは1又は2であり、ot=2−ntである。R3は、前記と同じ意味を有する。複数あるR3及びE0は、各々、同一であっても異なっていてもよい。R02は、複数ある場合には、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
02がフェニレン基である、請求項7に記載の高分子化合物。
【請求項9】
前記式(P−b)で表される構成単位が、下記式(P−c)で表される構成単位である、請求項8に記載の高分子化合物。
【化6】

(式中、R3、R4及びE0は、前記と同じ意味を有する。Xaa及びXbbはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の高分子化合物と、膜状若しくは板状の金属、又は、膜状若しくは板状の金属化合物とを接触させることにより得られる金属複合体。
【請求項11】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の高分子化合物と、アスペクト比が1.5未満の金属ナノ粒子、又は、アスペクト比が1.5未満の金属化合物ナノ粒子とを接触させることにより得られる金属複合体。
【請求項12】
請求項10に記載の金属複合体、及び/又は、請求項11に記載の金属複合体を含む電子素子。

【公開番号】特開2011−219517(P2011−219517A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86738(P2010−86738)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】