説明

金属調化粧シート及び化粧金属板

【課題】 金属に対する接着性が優れた金属調を有する化粧シートを提供し、更に、打抜き、曲げ、深絞りなどの2次加工によっても剥離することが無く、十分な表面硬度をもつ化粧金属板を提供することにある。
【解決手段】 不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体で変性された、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン、又は変性エチレン−プロピレンラバーを主成分とし、5%伸張時の引張応力が25〜500MPaである変性ポリオレフィン樹脂層と、無機質充填材を10〜70重量%含有し、5%伸張時の引張応力が250〜1000MPaである合成樹脂層と、金属薄膜層と、透明フィルム層とがこの順に設けられた構成であることを特徴とする金属調化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅内装用、例えばキッチン扉、収納扉等の表面材や、家電製品、例えば冷蔵庫などの表面材として用いられ、該表面に金属調の意匠性をもたせるために用いられる金属調化粧シート及び該シートが用いられてなる化粧金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の住宅内装材、冷蔵庫扉の家電製品、キッチン扉等の表面材としては、金属板に塗装が施された塗装鋼板や、金属粉が充填された塩化ビニルフィルムにポリエステルフィルムが貼り合わされた化粧シートが接着剤を介して鋼板に貼り付けられた化粧金属板などがある。塗装鋼板は、加工時に塗膜が剥がれたり、塗膜にクラックが入ったりして加工性に問題があったり、塗膜に傷が付きやすいという問題があった。
また、金属粉が充填された塩化ビニルフィルムにポリエステルフィルムが貼り合わされた化粧シートでは、目的とする金属調の意匠性を充分発揮することができないといった問題点があった。
【0003】
金属調の意匠性を備えた金属調化粧シートとしては、例えば、最上層となるヘアーライン加工を施した合成樹脂シートの裏面に、アルミニウム金属薄膜と合成樹脂層を積層した化粧シートが開示されている(特許文献1)。この化粧シートにおいては、アルミニウム薄膜と合成樹脂シートとの密着が弱いため、耐久性に欠け外観品質が低下するという問題があった。
【0004】
また、基材層、金属薄膜層、印刷層、透明フィルム層とを、この順に設け、前記透明フィルム層の表面に、前記印刷層の絵柄に同調した凸部印刷層を設けたことを特徴とする金属調印刷物が開示されている(特許文献2)。この化粧シートは、各種家電製品、AV機器に用いられる鋼板に積層してステンレス調の意匠を与えるものとして各部位に使用されるが、基材層について特に好ましい範囲が言及されておらず、また、実施例においてはカード紙や板紙が使われており、鋼板へ応用した場合には、折り曲げ加工や打抜き等の加工性が悪いといった不具合があった。更に、上記化粧シートを鋼板等に貼り合わせる際には接着剤を用いる必要があり、そのため、化粧シートの表面に接着剤塗工むらが浮きでてしまい、外観上好ましくないといった問題もあった。
【0005】
一方、近年になって、金属板の軽量化、吸音性付与、振動減衰性付与、断熱性付与などの観点から、金属板とプラスチックシートとを組み合わせた化粧金属板が開発され、各種家電製品、AV機器として家電弱電分野などに広く実用化されているが、該積層複合体を用いて折り曲げ、打抜き、切断、深絞りなどの2次加工をした部品を塗装する際には、切断部及び打抜き加工部から溶融樹脂が流れ出して、後加工に支障をきたしたり、溶融樹脂が冷却凝固する過程で大きく収縮するため、切断加工部の付近が変形するといった問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−10415号公報
【特許文献2】特開2000−153665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その目的は、金属に対する接着性が優れた金属調を有する化粧シートを提供し、更に、打抜き、曲げ、深絞りなどの2次加工によっても剥離することが無く、十分な表面硬度をもつ化粧金属板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属調化粧シートは、不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体で変性された、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン、又は変性エチレン−プロピレンラバーを主成分とし、5%伸張時の引張応力が25〜500MPaである変性ポリオレフィン樹脂層と、無機質充填材を10〜70重量%含有し、5%伸張時の引張応力が250〜1000MPaである合成樹脂層と、金属薄膜層と、透明フィルム層とがこの順に設けられた構成であることを特徴とする。
ここで、主成分とは、そのものが50重量%以上であることを意味する。
【0009】
また、本発明の化粧金属板は、本発明の金属調化粧シートが積層されてなることを特徴とする。即ち、上記化粧金属板は、上記金属調化粧シートによる変成ポリオレフィン樹脂層が、金属に接するように積層された化粧金属板のことである。
【0010】
本発明者は、少なくとも被着体である鋼板に接する層として、5%伸張時の引張応力が25〜500MPaの範囲にあり、且つ不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体で変性された、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン、又は変性エチレン−プロピレンラバーを主成分とする変性ポリオレフィン樹脂層を用いることにより、接着剤を用いることなく鋼板に接着可能であり、折り曲げ、打抜き、切断、深絞りなどの2次加工に耐えうる接着強度を有しており、更に、無機質充填材を10〜70重量%含有し、5%伸張時の引張応力が250〜1000MPaである合成樹脂層が、金属薄膜層との間に配置されることにより、金属薄膜の表面強度不足を克服できることを見いだした。
【0011】
上記変成ポリオレフィン樹脂層の主成分は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はエチレン−プロピレンラバー系樹脂が、不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体で変成されたものであり、5%伸張時の引張応力が25〜500MPaの範囲にあれば、特に限定されるものではない。引張応力が25MPa未満の場合は、化粧金属板の折り曲げ、打抜き,切断、深絞りなどの2次加工をする際に十分な強度が得られず破断する恐れがある。また、500MPaを超えた場合は、鋼板との十分な接着強度が得られず、深絞り加工時に剥離してしまう恐れがある。
【0012】
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレンとα−オレフィン等の他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレンとα−オレフィン等の他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、また、エチレン−プロピレンラバー系樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−他のモノマーとの共重合体からなるゴム弾性を有する熱可塑性ゴム等が挙げられる。
上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ネオヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテンが好適に用いられる。
【0013】
上記変性ポリオレフィン樹脂の変性方法としては、例えば、結晶性ポリプロピレンと不飽和カルボン酸若しくはその誘導体を、有機過酸化物の存在下に溶媒中若しくは溶媒の不存在下で結晶性ポリプロピレンの融点以上に加熱処理する公知の方法を挙げることができる。また、上記変性ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−プロピレンラバー系樹脂を重合する際に、不飽和カルボン酸又はその誘導体を共重合させて得られる変性ポリオレフィン樹脂を用いてもよい。
【0014】
また、変性ポリオレフィン樹脂の製造に用いられる不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸又はこれらの酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などを例示でき、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N、N−ジエチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウムなどを挙げることができる。特に、無水マレイン酸を用いるのが好ましい。
【0015】
上記変性ポリオレフィン樹脂中の上記不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量(以下、変性率と称する)は、0.01〜5重量%が好適であり、0.05〜1重量%が特に好ましい。変性率が、0.01重量%未満では、十分な鋼板接着強度が得られ難く、5重量%を超える場合は、ブロッキング等の不具合が発生し易い。
【0016】
また、上記変性ポリオレフィン樹脂としては、その耐熱性を鑑みて、変性率が0.05〜1重量%のマレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
【0017】
上記変性ポリオレフィン樹脂層には、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の熱可塑性エラストマーが用いられて良く、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−1−ブテンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ポリ4−メチル1−ペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、又はスチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0018】
また、本発明で用いられる変性ポリオレフィン樹脂には、その機能を疎外しない範囲内で、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、無機質充填材などが配合されていても構わない。
【0019】
本発明においては、変性ポリオレフィン樹脂層と金属薄膜層との間に、無機質充填材を10〜70重量%含有し、5%伸張時の引張応力が250〜1000MPaの範囲にある合成樹脂層が配置される。
上記合成樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−プロピレンラバー系樹脂等が挙げられるが、無機質充填材を10〜70重量%含有し、その5%伸張時の引張応力が250〜1000MPaの範囲にあれば、特に限定されるものではない。5%伸張時の引張応力が250MPa未満の場合や、無機質充填材の含有率が10重量%未満の場合は、化粧金属板の表面強度の向上効果が得られず、化粧鋼板等の硬度を補完する効果は得られない。また、5%伸張時の引張応力が1000MPaを超えたり、無機質充填材の含有率が70重量%を超える場合は、化粧鋼板の深絞り等の加工時に剥離してしまう恐れがある。
【0020】
上記合成樹脂層は、単独でシート状又はフィルム状に成形したものを用いてもよく、また、変性ポリオレフィン樹脂層を形成するシート上に押出しラミネートをして積層体として用いてもよく、更に、変性ポリオレフィン樹脂と共押出しをして積層体として用いてもよい。上記合成樹脂層の厚さは、0.01〜5mmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、更に好ましくは20〜80μmの範囲である。0.01mm未満であると、折り曲げ、深絞りなどの2次加工性向上効果が乏しく、5mmを超えると、打抜き、切断加工性が乏しくなる。
【0021】
本発明で用いられる金属薄膜層は、金属の薄膜を有する層であれば特に限定されず、金属箔からなる層であっても良いし、真空蒸着・スパッタリング法・プラズマ法等により形成された層であっても良い。
上記金属箔としては、例えば、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等からなる金属箔が挙げられ、意匠性、加工の容易さ、経済性等からアルミニウムが好適に用いられる。
上記蒸着からなる層としては、アルミニウム、チタン、モリブデン、クロム、金、銀、銅等の金属、黄銅・ステンレス等の合金、酸化珪素、酸化チタン、ITO等の金属酸化物をスパッタリング法やイオンプレーティング法などにより、本発明を構成する材料上に金属層を形成させても良いし、基材上に金属層を形成せしめて積層しても良い。
【0022】
上記金属薄膜層の表面には、意匠性をさらに向上させる目的で印刷層が設けられてもよい。本印刷層は、絵柄、表示などの層であって、パターン層でも、ベタ層であってもよく、この印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷など、公知の印刷方法が採用される。使用するインキとしては、一般的に用いられているインキが用いられて良いが、金属調の効果を上げるために、透明性のあるタイプの色インキが好適に用いられる。
【0023】
本発明による透明フィルム層は、表面光沢と表面強度を持たせるため設けられるが、用いられるフィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のプラスチックフィルムを挙げることができる。中でも透明性、平滑性、光沢性が良好なポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルフィルム等が好適に用いられる。これらのフィルムの厚さとしては、10〜200μmが一般的に用いられ、好ましくは12〜100μmである。10μ未満であると、十分な表面強度を維持するのが難しく、200μを超える場合、透過率が低くなり外観上好ましくない。
【0024】
本発明においては、さらなる表面光沢と表面強度を持たせるために、透明フィルム層の表面に表面保護層が設けられていてもよい。上記表面保護層は、その目的から3次元架橋型の硬化樹脂層が好ましく、熱硬化性樹脂であっても、電離放射線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂であってもよい。
【0025】
上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。上記樹脂には、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、又は重合促進剤が添加されてもよい。例えば、硬化剤としては、イソシアネートまたは有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル系樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステルには添加される。
【0026】
上記電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、又はモノマーが適宜混合された電離放射線により硬化可能な組成物が用いられる。尚、ここで電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合或いは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線又は電子線が用いられる。
【0027】
上記プレポリマー、オリゴマーの例としては不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0028】
上記電離放射線硬化性樹脂に用いられるモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N、N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置酸の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等が挙げられる。通常、上記の化合物を必要に応じて1種もしくは2種以上を混合して用いるが、電離放射線硬化性樹脂に通常の塗工適性を付与するために、上記プレポリマー又はポリチオールを5重量%以上、上記モノマー又はポリチオールを95重量%以下とするのが好ましい。
【0029】
上記電離放射線硬化性樹脂を硬化させるために紫外線を照射する場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン、又は、光重合促進剤(増感剤)として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を更に混合して用いることができる。
【0030】
上記3次元架橋硬化樹脂には、球状粒子が添加されていてもよい。この球状粒子としては、アルミナ、シリカ等の無機物、シリコン樹脂、架橋アクリル樹脂の有機物からなる球状粒子等が好適に用いられる。無機粒子は、分散性を向上させるために、有機酸、界面活性剤、シランカップリング剤等で処理されていてもよい。
上記球状粒子の粒子径は特に限定されないが、通常は、平均粒子径が3〜50μmの球状粒子が使用される。また、球状粒子の添加量は特に限定されないが、通常は、樹脂成分100重量部に対して5〜20重量部が添加される。
【0031】
また、上記3次元架橋硬化樹脂には、上記バインダー樹脂及び球状粒子以外の成分として、染料や顔料等の着色剤、その他の炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ナイロン樹脂ビーズ等の充填剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤などの塗料、インキに通常添加される添加剤を加えることができる。また、3次元架橋硬化樹脂には、粘度を調整するために、架橋性樹脂成分を溶解可能であり、且つ常圧における沸点が70〜150℃の溶剤を、組成物中に30重量%以下の範囲で用いることができる。溶剤の添加量が30重量%以下の範囲であれば、乾燥がスムーズであり、生産スピードの大きな低下がない。
【0032】
上記溶剤としては、塗料、インキ等に通常使用されるものが使用でき、具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミルなどの酢酸エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0033】
上記3次元架橋硬化樹脂層を形成する方法としては、塗工組成物を直接塗工する直接コーティング法、又は、剥離性の基材表面に樹脂層を予め形成した後、該層を転写する、転写コーティング法等が用いられる。
【0034】
上記直接コーティング法は、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等を用いることができるが、好ましいのはグラビアコートである。
【0035】
また、上記電離放射線硬化性樹脂を硬化させるために用いられる電離放射線照射装置は、紫外線を照射する場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源が用いられ、又、電子線を照射する場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器等が用いられる。この電子線の照射量は、通常100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子を0.1〜30Mrad程度の照射量で照射することができる。照射量が0.1Mrad未満の場合、硬化が不十分となる恐れがあり、又、照射量が30Mradを超えると、硬化した塗膜或いは基材が損傷を受ける恐れが出てくる。また、紫外線により硬化させる場合の照射量は、好ましくは50〜1000mJ/cmである。紫外線の照射量が50mJ/cm未満では硬化が不十分となる恐れがあり、照射量が1000mJ/cmを超えると、硬化した塗膜が黄変化する恐れがある。
【0036】
本発明の化粧金属板において基材となる金属板としては、鉄、鋼、アルミニウム、銅、亜鉛、錫、ニッケル、チタン等の金属又はこれらの金属の1種若しくは2種以上を主成分とする合金を用いることができ、用途に応じて適宜選択して用いられる。最も一般的に用いられる材料は鉄板、鋼板である。この際、通常は、表面に亜鉛メッキ等が施されている場合が多い。特に、溶融亜鉛メッキ鋼板又は電解亜鉛めっき鋼板が好適に用いられる。
これらの金属板の厚さは0.05〜2mmが好ましく、より好ましくは0.15〜1.0mmである。
【0037】
上述したように、本発明の金属調の化粧金属板は、意匠性が高く、住宅内装、冷蔵庫扉、キッチン扉等の表面材や、ポスター、ラベル、パッケージ、ディスプレイなどに利用することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の金属調化粧シートは、金属に対して優れた接着性を示し金属調を有する化粧シートであり、また、該金属調化粧シートが積層された化粧金属板は、切断、打抜き、曲げ、深絞り等の2次加工性に優れ、更に優れた耐久性と密着性をもつ。
また、変性ポリオレフィン樹脂として、マレイン酸変成ポリプロピレンを用いることにより、耐熱性がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明をさらに詳細に説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変成率0.8重量%、5%伸張時の引張応力:80MPa)と酸化チタン微粒子を40重量%含有するポリプロピレン樹脂(5%伸張時の引張応力:400MPa)とを共押出ししてシートを作成した。変成ポリプロピレン樹脂層の厚さは20μm、ポリプロピレン樹脂層の厚さは80μmであった。得られたシートのポリプロピレン樹脂側にコロナ処理(6KW、処理速度20m/分)を施して、表面張力を45×10−5N/cm以上になるように調節した後、ポリエステル系接着剤(大日精化工業社製、セイカボンドE295)を用いて、ヘアライン加工した厚さ50μmのアルミニウム箔とドライラミネートした。このアルミニウム箔上に、グラビア印刷法にて薄黒色透明なウレタン樹脂系インキをコートし、続いて、この印刷面の上に、ポリエステル系接着剤(大日精化工業社製:セイカボンドE295)を用いて、厚さ25μmのポリエステルフィルム(東洋紡社製)をドライラミネートし透明樹脂層を設けた。
【0041】
次に、電離放射線硬化型樹脂塗料(下記に組成を示す)を、ポリエステルフィルムの透明樹脂層の上にリバースコーターを使用して塗布し、ドライヤーにて乾燥処理して膜厚10μmの塗膜を形成した。この塗膜に、電子線放射装置で175KV、7Mrad、酸素濃度200ppm以下の条件で電子線を照射し、所望の金属調化粧シートを得た。この化粧シートを、200℃に加熱した電解亜鉛めっき鋼板の上に熱ラミネートして化粧鋼板を得た。
・電離放射線硬化型樹脂塗料の組成
ウレタンアクリレートオリゴマー・・・50重量部
2官能アクリレートモノマー・・・40重量部
3官能アクリレートモノマー・・・10重量部
シリコーンアクリレート・・・3重量部
球状アルミナ・・・25重量部
酢酸エチル・・・100重量部
【0042】
(比較例1)
酸化チタン微粒子を40重量%含有するポリプロピレン樹脂(5%伸張時の引張応力:400MPa)の代わりに、ポリプロピレン樹脂(5%伸張時の引張応力:120MPa)を用い、ポリプロピレンの厚さが20μmであったこと以外は実施例1と同様にして、金属調化粧シート及び化粧鋼板を得た。
【0043】
(比較例2)
酸化チタン微粒子を40重量%含有するポリプロピレン樹脂(5%伸張時の引張応力:400MPa)の代わりに、酸化チタン微粒子を3%含有する変性エチレンプロピレンラバ-樹脂(5%伸張時の引張応力:10MPa)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、金属調化粧シート及び化粧鋼板を得た。
【0044】
(性能評価)
上記で得られた各化粧鋼鈑の性能を以下の方法で評価した。その結果は表1に示す通りであった。なお、厚さ2mmのステンレス板の評価結果を、参考例として表1に示した。1)エリクセン試験
各化粧鋼板の表面に、3mm間隔にてクロスカットの切り込みを施した後、該クロスカット部のエリクセン試験を行い、化粧シートの剥がれが発生するまでの押し込み距離の測定と、化粧シートの剥がれの様子の目視での観察を行った。
2)外観
各化粧鋼板の化粧面の外観を目視で観察した。
3)表面強度
各化粧板鋼板の表面を爪で強くひっかき試験を行い、ひっかき部の傷つきの様子を目視で観察した。評価基準は以下のとおりであり、○、◎が合格である。
×:一瞥してひっかきキズがはっきりと認められる。
○:反射光で観察するとひっかきのキズが認められるが、めだたない。
◎:全くキズが認められない。
4)鉛筆硬度
各化粧板鋼板の表面の鉛筆硬度試験を行った。
【0045】
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体で変性された、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン、又は変性エチレン−プロピレンラバーを主成分とし、5%伸張時の引張応力が25〜500MPaである変性ポリオレフィン樹脂層と、無機質充填材を10〜70重量%含有し、5%伸張時の引張応力が250〜1000MPaである合成樹脂層と、金属薄膜層と、透明フィルム層とがこの順に設けられた構成であることを特徴とする金属調化粧シート。
【請求項2】
変性ポリオレフィン樹脂層が、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体で変性された変性ポリプロピレンであり、合成樹脂層がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の金属調化粧シート。
【請求項3】
変性ポリオレフィン樹脂層が、変性率が0.05〜1重量%のマレイン酸変性ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1又は2記載の金属調化粧シート。
【請求項4】
金属薄膜層が金属箔層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の金属調化粧シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の金属調化粧シートが積層されてなることを特徴とする化粧金属板。




【公開番号】特開2006−272643(P2006−272643A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92475(P2005−92475)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】