説明

金属酸化物の製造方法

多孔質複合酸化物を製造する方法が、下記の工程を含んで成る:下記物質の混合物を準備する工程:a)複合酸化物の製造に好適な先駆成分;または、b)複合酸化物粒子の製造に好適な1つまたはそれ以上の先駆成分、および1つまたはそれ以上の金属酸化物粒子;およびc)約7nm〜250nmの気孔寸法を与えるように選択された粒状炭素含有気孔形成材料;ならびに、該混合物を下記のために処理する工程:i)多孔質複合酸化物を形成し(該多孔質複合酸化物において、上記(a)からの2つまたはそれ以上の先駆成分、または、上記(b)からの、1つまたはそれ以上の先駆成分、および金属酸化物粒子中の1つまたはそれ以上の金属が、複合金属酸化物の相に組み込まれ、複合金属酸化物が約1nm〜150nmの粒径を有する);ii)複合酸化物の多孔質構造および組成を実質的に維持する条件下で、気孔形成材料を除去する。該方法は、非耐火性金属酸化物の製造にも使用し得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、複合酸化物材料に関する。複合酸化物は、2つまたはそれ以上の異なる金属元素を含有する酸化物である。それらは、触媒および広範囲の電子材料を包含する種々の目的に有用である。好ましい実施形態において、本発明は、向上した高温安定性を有する多孔質複合酸化物の製造法に関する。他の態様において、本発明は、多孔質非耐火性酸化物の製造法にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、いくつかの異なる金属元素を含有する酸化物の結晶構造は、Al23およびSiO2のような単純酸化物の結晶構造より複雑である。さらに、これらの複合化合物において、相純度(即ち、所望の結晶相の存在、および不要相の不存在)を得ることは、一般に極めて難しい。その理由は、複雑な結晶構造が化学組成の変化に極めて感受性であるからである。
【0003】
従って、多くの用途に重要な均質かつ一貫した特性を得るために、複合酸化物の所望の純度を生じる均質な成分の分散を確実にする必要がある。そのような均質な成分の分散を得る際に生じる1つの問題は、個々の成分が処理中に異なる挙動を示すことである。
例えば、沈殿および反応速度が、成分ごとに大きく変化して、共沈およびゾル−ゲル処理のような方法において、分離を生じ得る。さらに、種々の成分が温度および雰囲気に極めて異なる反応をする。例えば、複合酸化物の形成に使用される多くの金属元素は、比較的低い融点を有する。熱処理中に、充分に還元性の雰囲気が存在する場合、これらの元素は、酸化物形態ではなく金属形態で存在し、溶融し得る。そのような溶融は、極度の分離、不純物相の広範囲な形成、および表面積の損失を生ずる。
【0004】
これらの問題にもかかわらず、種々の複合酸化物製造法が当分野において既知である。
そのような方法は、下記の方法を包含する:
・ 「振とうおよび焼付け」
・ 共沈
・ 熱蒸発および噴霧(spraying)法
・ 高分子錯化法
・ ゾル−ゲル
【0005】
「振とうおよび焼付け」法は、最も粗雑かつ最も簡単である。その例は、米国特許第5,932,146号に開示されている。1つまたはそれ以上の必要成分を含有する種々の酸化物粉末を、単に混合し、粉砕し、次に、高温で燃やして、拡散による種々の成分の均質混合を可能にする。この方法が有する問題は、出発物質が極めて不均質であり、従って、均質性を得るのに極めて高い焼結温度が必要とされる。中間粉砕も必要とされることが多い。高い焼結温度は、表面積をかなり減少させ、かつ、長い焼結時間、高温および中間粉砕は、極めて高い処理コストを生じる。この方法を使用して、ある所望の相および相純度が得られない場合もある。
【0006】
共沈法は、比較的単純な金属酸化物用に、より均質な先駆物質を与えることができる。その方法の例は、Applied Catalysis A: General 235,pp 79−92,2002(Zhang−Steenwinkel,Beckers and Bliek)およびJ.of Power Sources,86,pp 395−400,2000(Morie,Sammes & Tompsett)に開示されている。これらの方法は、多成分に関して極めて問題があるという欠点を有する。異なる成分が異なる速度で沈殿することは一般的であり、従って、ある材料については、不均質性が重大な問題であり、かなり高い焼結温度が必要とされる。例えば、Zhang−Steenwinkelらの方法は、適切な結晶相を形成するために800℃を超える温度を必要とし、Morieらの方法は1000℃を必要とする。さらに、適切な沈殿および化学均質性を得るために必要な沈殿剤は、高価であることが多い。
大部分の熱蒸発および噴霧法は、酸化フィルムまたは被膜の製造に、より関連性を有している。これらは、ガス凝縮処理、化学蒸気凝縮、プラズマスプレーおよび噴霧熱分解のような方法を包含する。大量処理に関して、これらの方法の中で最も重要なものは、噴霧熱分解法である(Messingら、1994)。
【0007】
噴霧熱分解法は、金属塩または有機金属溶液の熱分解によって、金属または酸化物の粉末を製造する方法である。溶液を、噴霧スプレーノズルまたは超音波トランスデューサーに通すことによって、エアロゾルに先ず変換する。次に、エアロゾルを、加熱領域、または充分に熱い加熱表面に吹き付けて、溶媒の蒸発、次に、金属または酸化物の析出を生じさせる。
一般に、噴霧熱分解法において、反応温度およびキャリアガス組成を変化させることによってエアロゾル分解パラメーターを変化させることは、基本的な操作変動である。さらに、溶液特性、例えば、先駆物質組成、濃度または補助溶媒の添加は、所望の生成物組成および形態を得るのに極めて重要である。噴霧熱分解法の限界は、相比率の制御が困難なこと、低い生成速度および低密度中空粒子の形成を包含する。
【0008】
高分子錯化法は、比較的単純な酸化物について、適度に均質な成分の分布を与えることができる。Laに基づくペロブスカイトに関する例が、Key Engineering Materials,206−213,pp 1349−52,2002(Popa & Kakihana)に記載されている。そのような方法の主要な問題は、使用されるポリマーが、発熱性発火(exothermic firing)を受けやすいことである。これは、処理を困難にする。さらに、多成分化合物については、いくつかの成分がポリマーと錯化しない場合があり、従って、均質な成分の分布が得られない。
【0009】
ゾル−ゲル法は、均質先駆物質を形成するために、注意深く管理された処理条件を一般に必要とする。La−Ca−Mnペロブスカイトについてのゾル−ゲル法の例が、J.Sol−Gel Science and Technology 25,pp 147−157,2002(Mathur & Shen)、およびChemistry of Materials 14,pp 1981−88,2002(Pohl and Westin)に記載されている。ゾル−ゲルは、化合物の複雑性が増すと共に極めて困難になり、いくつかの成分は、ゾル−ゲル法に全く適していない。ゾル−ゲルは、一般に、スケールアップが困難であり、必要とされる原材料が極めて高価である。
【0010】
本出願人名義の米国特許第6752979号は、均質に分布した成分を有する複合金属酸化物の製造法を開示している。この方法は、種々の複合酸化物の広い範囲において実証されている。この方法は、低い処理温度を使用して、高表面積を有する相純粋酸化物を生じる。
正確な酸化物結晶構造および成分の均質分布に加えて、多くの用途において、酸化物の焼結粒子間に存在する気孔率が性能に極めて重要である。より大きい連続気孔(>約1μm)が、優れた流体(気体または液体)輸送を必要とする用途に、一般に望ましい。例えば、固体酸化物燃料電池電解質用に、酸化物に大きい気孔を与えることができる方法が既知である(例えば、米国特許第4883497号および第6017647号)。大部分のこれらの方法は、種々の気孔形成剤、即ち、セラミック材料から浸出させるかまたは燃え切らせることができる物質(materials that can be leached or burned out of the ceramic material)を使用している。気孔形成剤は、1μmの大きさの気孔を形成するように、一般に1μmより大きい。この大きさの気孔は、大きすぎて、材料の表面積を有意に増加させることができない。
【0011】
かなりの数の小さい気孔(<約7nm)を有する物質は、高表面積を一般に示す。高表面積は、触媒作用のような表面特性を利用する用途に有用である。小さい気孔および高い表面積は、構造が、緩く充填された多くの極めて小さい粒子から成る場合に得られる。種々の有機気孔形成剤を使用して、極めて小さい気孔を形成することもできる。小さい気孔は一般に、高温で存続せず、従って、低い高温安定性を生じる。
【0012】
「中間」の寸法範囲(約7nm〜約250nm)の気孔も、流体の流れを向上させるのに有効であり、かつ表面積に有意に寄与するのに充分に小さい。それらは、いくつかの単純金属酸化物の高温安定性を向上させると考えられている。米国特許第6,139,814号は、向上した高温安定性を有するCeに基づく酸化物の製造法を開示している。熱安定性の理由は確かには分かっていないが、814号特許は、熱安定性が、少なくとも部分的に、「メソスケール」範囲(例えば、気孔寸法約9nm)の平均気孔寸法の存在によると推測している。該特許の方法は、金属イオンの溶液を、構造化セルロース系材料、例えば濾紙、の気孔に吸収することを含む。液体を乾燥させ、該材料を燃やしてセルロースを除去する。このようにして、セルロースの気孔に固体が形成され、セルロースの気孔が固体を「形づくる」(pattern)。しかし、この方法は、いくつかの欠点を有する。極めて高い有機/金属酸化物比(>100:1まで)が使用され、これは好適なセルロース材料の比較的高いコストと共に高コスト処理を生じる。さらに、紙のような固体への液体の吸収は、スケールアップしにくい工程である。最後に、金属イオンの溶液を単に乾燥して固体を形成することは、より複雑な材料に必要とされる種々の成分の均質分布を得るのに理想的でない。
【0013】
約10nmの寸法範囲の気孔を有するシリカの製造法が、J.Porous Materials 7,p.435−441,2000(Ermakovaら)に開示されている。種々の炭素マトリックスに、シリカゲルを充填し、乾燥させ、次に、燃え切らせる。増加した気孔寸法が、この方法を使用して得られた。向上した熱安定性が、触媒的繊維状炭素を炭素源として使用した場合に得られた。他の、より球状の炭素粒子からの気孔に関しては、熱安定性について試験されなかった。残念なことに、使用されたゾル−ゲル法は、特に工業規模において、多くのペロブスカイト材料の形成に望ましくない。さらに、固体の充填は、スケールアップしにくい方法である。他の問題は、炭素材料/酸化物の比率が極めて高い(最大30)であることである。これは、製造コストを増加し、生産率を減少し、炭素中の不純物成分による問題を生じる。
【0014】
米国特許第4,624,773号は、炭化水素供給原料の触媒的クラッキングの方法を開示している。該方法の一部は、触媒へのガスの流れを向上させるために、好ましくは100〜600nmの気孔を有するアルミノ−シリケート材料を製造することである。該方法は、アルミナおよびシリカのゲルを形成し、約50〜3000nmの長さを有する網状炭素粒子に混合することを含む。アルミノ−シリケート固形物が形成された後、炭素粒子を燃え切らせて、所望の寸法範囲の気孔を形成する。この方法は、高表面積を与えるアルミノ−シリケートゼオライト構造物中のより小さい気孔が、燃え切りによって影響を受けないことを必要とする。
【0015】
アルミノ−シリケート固形物を形成するためにこの方法に使用されるゲル法は、特に工業規模において、より高い化学均質性を必要とするより複雑な材料に適していない。さらに、ガスの流れを最大にするために形成される気孔は、熱安定性表面積を形成するのに必要とされる気孔より大きい。最後に、炭素は強い還元剤であり、酸化物を金属に還元する鉱物処理に広く使用されている。これは、アルミニウムおよび珪素の酸化物については問題にならないと考えられる(これらの酸化物は、極めて安定しており還元しにくい故)が、複合酸化物に一般に使用される金属を包含する多くの他の金属の酸化物は、炭素によって還元される可能性が高い。種々の元素の還元可能性は、エリンガムダイヤグラム(Elligham Diagrams)に一般に示されている。そのダイヤグラムの下部に向かう酸化物、例えばAlは、還元しにくく、上部の酸化物はかなり還元しやすい。鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムおよびカリウムのような金属は、Alよりかなり還元しやすい。エリンガムダイヤグラムは、炭素、特に熱処理雰囲気における一酸化炭素の、還元作用も示す。
【0016】
複合酸化物の処理、特に熱処理において、金属の存在は、偏析(segregation)および/または必要とされる他の元素との酸化物相を形成できないことにより、重大な問題を生ずる。従って、メソスケールにおける、炭素粒子および酸化物または酸化物先駆物質の均質混合が、必要とされる相の適切な発生を可能にするかが明らかでない。さらに、金属または他の還元された酸化物形態の存在が、焼結を著しく増加させ、表面積の重度損失および低い熱安定性を生ずる。
酸化物先駆物質への炭素に基づく材料の導入に関連した問題の例は、J.of Materials Science 35(2000),p.5639−5644に概説されており、それは、燃え切らせたセルロースを使用してLa0.8Sr0.2CoO3を形成する方法を記載している。二酸化炭素を充分に素早く除去しなければ、炭酸塩が大量に形成され、それによって、相純度を得るためにかなり高い焼成温度が必要とされることが分かった。
【0017】
アジア石油株式会社(Asia Oil Company Ltd)および三菱化学工業株式会社(Mitsubishi Chemical Industries Ltd)によるGB 2093816は、多孔質耐火性無機酸化物生成物の製造法を開示している。GB 2093816は、直径10nm〜100nmに明確なピークを有する気孔分布、および半径10nm〜50nm に0.11cc/gまたはそれ以上の気孔容積(気孔率)を有する多孔質耐火性無機酸化物生成物を提供し、該酸化物は、カーボンブラックおよび耐火性無機酸化物および/または耐火性無機酸化物先駆物質の混合物を形成し、生成物を乾燥し、それを酸素含有ガス流で燃やし、その間に該カーボンブラックを焼くことによって得られる。
【0018】
GB 2093816が耐火性無機酸化物生成物を製造することに限定されていることは明らかである。GB 2093816に使用されている一般的な耐火性無機酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、トリア、ボリア、ゼライトおよびクレーのような無機酸化物を包含する。GB 2093816に示されている実際の例は、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカアルミナ、ボリア、ゼオライト、カオリンおよびセピオライトを組み込んだ耐火性無機酸化物の形成を示しているにすぎない。
GB 2093816に示されている実施例は、実施例10(この実施例は、四塩化チタンを沈殿反応用の先駆物質として使用してチタニアを生成している)を除いて、全て、固体粒子出発物質を使用して混合酸化物生成物を得ている。実施例10の生成物はチタニアであり、混合酸化物ではない。
GB 2093816は、平均直径15〜300nmのカーボンブラックを使用している。GB 2093816は、カーボンブラックを燃え切らす工程での最終焼成温度は約500℃またはそれ以上であるが、多孔質耐火性無機酸化物生成物が、支持体または触媒の活性を失わない限り、その上限は重要でないことを記載している。
GB 2093816に使用されている処理条件および出発物質は、金属の混合物を含有する複合酸化物マトリックスを得るために、比較的高い処理温度を必要とすると考えられる。そのような処理条件は、GB 2093816に明確に開示されておらず、複合金属酸化物相が形成されないことを裏付けている。従って、本発明者らは、GB 2093816において形成されるいわゆる混合無機酸化物が、実際は、供給材料の分離グレイン(grains)または粒子の混合物から成り、各分離グレンまたは粒子は、その中の1つの供給材料のみを組み込んでいると考える。即ち、GB 2093816は、粒子を形成するために使用される種々の先駆成分からの2つまたはそれ以上の分離金属を含有する複合金属酸化物相を生じない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
先行技術の再調査は、寸法範囲約7nm〜250nmの気孔を有する複合金属酸化物材料を製造するための証明された工業的に利用可能な方法が存在しないことを明らかに示している。
向上した熱安定性を有する複合酸化物材料、およびそのような材料を製造する方法も極めて必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第一の態様において、本発明は、多孔質複合酸化物の製造法を提供し、該方法は、下記の工程を含んで成る:
下記物質の混合物を準備する工程:
a) 複合酸化物の製造に好適な先駆成分;または
b) 複合酸化物粒子の製造に好適な1つまたはそれ以上の先駆成分、および1つまたはそれ以上の金属酸化物粒子;および
c) 約7nm〜250nmの気孔寸法を与えるように選択された粒状炭素含有気孔形成材料;
ならびに、
該混合物を下記のために処理する工程:
i) 多孔質複合酸化物を形成し(該多孔質複合酸化物において、前記(a)からの2つまたはそれ以上の先駆成分、または、前記(b)からの、1つまたはそれ以上の先駆成分、および金属酸化物粒子中の1つまたはそれ以上の金属が、複合金属酸化物の相に組み込まれ、複合金属酸化物が約1nm〜150nmの粒径を有する);
ii) 複合酸化物の多孔質構造および組成を実質的に維持する条件下で、気孔形成材料を除去する。
【0021】
GB 2093816に開示されている方法(該方法は、その方法において供給粒子として使用される金属酸化物粒子の相を単に写しただけの金属酸化物相を形成するか、または該方法は、先駆成分からの唯1つの耐火性金属を含有する金属酸化物相を生じる)と異なり、本発明の方法は、金属酸化物相への供給材料として使用される先駆物質からか、または先駆物質および金属酸化物粒子から、2つまたはそれ以上の金属(いくつかの実施形態においては、2つよりかなり多い金属)を組み込んだ複合金属酸化物相を生じる。金属酸化物相が、金属酸化物のマトリックスを有し、該マトリックスは、2つまたはそれ以上の金属を組み込んだ酸化物構造を有することが理解される。好適には、2つまたはそれ以上の金属は、複合金属酸化物相全体に均質に分布している。
【0022】
好適には、単一相複合金属酸化物を形成する。しかし、本発明は、複合金属酸化物相および1つまたはそれ以上の他の金属酸化物相の形成、または任意の他の金属酸化物相を形成するかまたはしない2つまたはそれ以上の複合金属酸化物相の形成も含む。より好適には、形成される各複合金属酸化物相が相純粋相であり、即ち、相が所望の結晶相だけを有し、望ましくない結晶相が存在しない。
複合金属酸化物は、2つまたはそれ以上の金属、例えば、原子番号3、4、11、12、19〜32、37〜51、55〜84および87〜103の金属から成る群から選択される2つまたはそれ以上の金属を含有し得る。1つの実施形態において、複合金属酸化物中の2つまたはそれ以上の金属は、少なくとも1つの非耐火性金属、例えば、原子番号3、4、11、19〜21、23〜32、37〜39、41〜51、55〜84および87〜103の金属から選択される少なくとも1つの金属を包含し得る。この実施形態において、金属酸化物は、前記の非耐火性金属を含有するのに加えて、Ti、Al、ZrおよびMgのような他の金属も含有し得る。
【0023】
意外にも、このように形成された多孔質複合酸化物は、有意に増加した気孔容積または表面積、および向上した高温安定性、例えば約750℃〜1000℃の温度範囲における向上した高温安定性を示すことが見出された。複合酸化物は、好適には、各相における実質的に均質な組成も示す。本出願人には、意外にも、前記の範囲の気孔寸法と共に、前記の範囲の粒径を有して形成された複合酸化物が、表面積の増加した熱安定性と組み合わされた高い初期表面積を有することを見出した。
【0024】
本出願人は、複合酸化物の粒径が150nmより大きい場合、材料は充分な表面積を有さない場合があることを見出した。同様に、気孔寸法が約250nmより大きい場合、高温老化後に、充分な表面積が得られない場合がある。気孔寸法が約10nm未満である場合、高い表面積が得られるが、気孔、従って表面積は、高温において熱安定性でない場合がある。
GB 2093816と異なり、本発明の方法を使用して、非耐火性複合金属酸化物相を形成することができる。本発明者らは、意外にも、本発明の方法を、還元しにくい耐火性酸化物の製造に限定する必要がないことを見出した。これと対照的に、GB 2093816の全ての実施例は、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ボリア、ゼオライト、カオリンまたはセピオライトの酸化物相を製造している。
【0025】
本発明のこの態様において、このように形成された複合酸化物は、任意の好適な種類であってよい。複合金属酸化物相は、ペロブスカイトであってもよい。結晶構造は、化学式CaTiO3の鉱物「ペロブスカイト」の結晶構造である。ペロブスカイト結晶構造を有する種々の化合物が存在し、その例は、SrTiO3、YBa2Cu3x超伝導体、ならびに触媒としておよび固体酸化物燃料電池における電極として有用な多くのLaに基づくペロブスカイトを包含する。Laに基づくペロブスカイトは、LaMnO3、LaCoO3、LaFeO3およびLaGaO3を包含する。
【0026】
所望の物理的特性を得るために、酸化物格子への種々の元素の様々な置換を行ってもよい。例えば、ペロブスカイトに関して、置換をA部位(例えば、LaMnO3中のLaに換わるSr)、および/またはB部位(LaMnO3中のMnに換わるNi)で行ってよい。両方または一方の部位における多元素置換を行って、特定用途のために物理的特性をさらに調節することができる。例えば、ペロブスカイト組成物(Ln0.2La0.4Nd0.2Ca0.2)(Mn0.9Mg0.1)O3(Lnは、ほぼLa0.598Nd0.184Pr0.81Ce0.131Ca0.002Sr0.004である)は、米国特許第5,932,146号において、固体酸化物燃料電池電極に有用であることが開示されている。
【0027】
広範囲な用途のために開発されている複合酸化物の他の多くの例があり、本発明もそれらに適用できる。
本発明の混合物に有用な先駆成分は、形成される複合酸化物に依存して、任意の好適な種類であってよい。金属および金属陽イオンの、任意の好適な源を使用し得る。金属および金属化合物(1つまたはそれ以上の酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩等を包含する)の混合物を使用し得る。
先駆成分または複合酸化物および気孔形成材料の混合物は、任意の好適なタイプであってよい。混合物は、固相混合物であってもよく、または溶液、分散液等として形成してもよい。
【0028】
1つの実施形態において、下記のように、先駆成分および気孔形成材料を混合して固相混合物を形成し、次に、複合酸化物を好適な熱処理によって形成してもよい。
他の実施形態において、複合酸化物粒子を好適な先駆成分から形成し、気孔形成材料を複合酸化物粒子と混合して、混合物を形成してもよい。
または、混合物を、溶液または分散液として準備してもよい。例えば、固相混合物を先ず形成し、次に、好適な溶媒に分散または溶解させてよい。
【0029】
他の実施形態において、先ず、先駆成分混合物を溶液に形成し、次に、気孔形成材料をその溶液に添加してもよい。または、先駆成分、および気孔形成材料の少なくとも一部を混合して、固相混合物を形成し、該混合物を好適な溶媒に溶解させてもよい。
最も好適には、先駆成分が、気孔形成材料および金属酸化物粒子(使用される場合)と混合した溶液の部分を形成する。
分散液または溶液を形成する場合は、任意の好適な溶媒を使用し得る。無機および有機溶媒、例えば、酸(例えば、塩酸または硝酸)、アンモニア、アルコール、エーテルおよびケトンを使用し得るが、水が好ましい溶媒である。
混合物が界面活性剤を含有するのが好ましい場合がある。界面活性剤はどのような好適なタイプであってもよい。本出願人の国際特許出願公開第WO 02/42201号(その全ての開示は参照により本明細書に組み入まれる)に開示されているタイプの界面活性剤が好適であることが見出された。
【0030】
いくつかの例は下記の物質である:Brij C1633(OCH2CH22OH、名称C16EO2(Aldrich);Brij 30、C12EO4、(Aldrich);Brij 56、C16EO10、(Aldrich);Brij 58、C16EO20、(Aldrich);Brij 76、C18EO10、(Aldrich);Brij 78、C16EO20、(Aldrich);Brij 97、C1835EO10、(Aldrich);Brij 35、C12EO23、(Aldrich);Triton X−100、CH3C(CH32CH2C(CH3264(OCH2CH2xOH、x=10(平均)、(Aldrich);Triton X−114、CH3C(CH32CH2C(CH3264(OCH)2CH25OH、(Aldrich);Tween 20、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノカイレート(Aldrich);Tween 40、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノパルミテート(Aldrich);Tween 60、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノステアレート(Aldrich);Tween、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノオレエート(Aldrich);およびSpan 40、ソルビタンモノパルミテート(Aldrich);Terital TMN 6、CH3CH(CH3)CH(CH3)CH2CH2CH(CH3)(OCH2CH26OH(Fulka);Tergital TMN 10、CH3CH(CH3)CH(CH3)CH2CH2CH(CH3)(OCH2CH210OH(Fulka);2個の第一級ヒドロキシル基によって停止され、(疎水性)ポリ(プロピレングリコール)核を中心とするポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(EO−PO−EO)配列を有するブロックコポリマー;Pluronic L121(Mav=4400)、EO5PO70EO5(BASF);Pluronic L64(Mav=2900)、EP13PO30EO13(BASF);Pluronic P65(Mav=3400)、EP20PO30EO20(BASF);Pluronic P85(Mav=4600)、EO26PO39EO26(BASF);Pluronic P103(Mav=4950)、EO17PO56EO17(BASF);Pluronic P123(Mav=5800)、EO20PO70EO20(Aldrich);Pluronic F68(Mav=8400)、EO80PO30EO80(BASF);Pluronic F127(Mav=12600)、EO106PO70EO106(BASF);Pluronic F88(Mav=11400)、EO100PO39EO100(BASF);Pluronic 25R4(Mav=3600)、PO19EO33PO19(BASF);エチレンジアミン核に結合し、第二級ヒドロキシル基によって停止され、4個のEOn−POm鎖(またはその逆に、4個のPOn−EOm鎖)を有する星状ジブロックコポリマー;Tetronic 908(Mav=25000)、(EO113PO222NCH2CH2N(PO113EO222(BASF);Tetronic 901(Mav=4700)、(EO3PO182NCH2CH2N(PO18EO32(BASF);およびTetronic 90R4(Mav=7240)、(PO19EO162NCH2CH2N(EO16PO192(BASF)。
【0031】
前記の界面活性剤はノニオン界面活性剤である。使用し得る他の界面活性剤は、以下の界面活性剤を包含する。
アニオン界面活性剤:
アルコールエトキシカルボキシレート(R−(O−CH2−CH2)x−O−CH2−CH2−OH)(NEODOX AEC)
アルキルエトキシカルボン酸(R−(O−CH2−CH2)x−O−CH2−CO2H)(EMPICOL C)
硫酸ドデシルナトリウム CH3(CH211OSO3NA
いくつかの製造会社が存在すると考えられる。Sigmaはその例である。
カチオン界面活性剤:
セチルトリメチルアンモニウムクロリド CH3(CH215N(CH33Cl Aldrich
セチルトリメチルアンモニウムブロミド CH3(CH215N(CH33BT Aldrich
セチルピリジニウムクロリド C2138NCl Sigma
ここに挙げたものは網羅的と見なすべきでない。
【0032】
気孔形成粒子は、任意の好適なタイプであってよい。粒子は、「中間範囲」の気孔寸法(例えば、直径約7nm〜約250nm、好ましくは約10nm〜約150nmの気孔)を生じるのに好適な大きさであるべきである。約7nm〜300nm、好ましくは約10nm〜150nm、より好ましくは約10nm〜約100nmの範囲の気孔形成粒子を使用し得る。炭素粒子、好ましくはカーボンブラックを使用する。
【0033】
本発明の方法において気孔形成剤として使用される炭素含有粒子は、先駆物質/先駆物質および金属酸化物粒子は存在しないようにされるが、複合金属酸化物相は形成される領域を提供し、次に、気孔形成粒子を除去することによって、所望の寸法範囲の気孔を形成するのを促進すると考えられる。従って、ナノスケールの気孔形成粒子が必要とされる。これは、多孔質炭素含有支持体(例えば、濾紙または活性炭)を使用して、液相先駆物質混合物を吸収し、次に、支持体を除去する他の方法と区別すべきである。それらの方法に使用される支持体の大きさは、一般に、本発明に使用される気孔形成粒子の大きさより大きい、多くのオーダーで大きい。そのような先行技術法は、実験室規模を超えてスケールアップするのが極めて困難である。
【0034】
本発明の特に好ましい実施形態において、カーボンブラックを気孔形成粒子として使用する。
気孔形成粒子は、好ましくは、熱処理によって除去される。
先駆成分の混合物を形成するために、複合酸化物の形成に必要とされる成分を均質に分散すべきである。該成分は、先行技術において既知の任意の好適な方法によって混合し得る。気孔形成粒子も、高速剪断装置、超音波装置、ロールミル、ボールミル、サンドミル等を包含する当分野で既知の方法を使用して、混合物に分散すべきである。本出願人は、この段階での炭素含有気孔形成粒子のより優れた分散が、より多くの炭素含有気孔形成粒子を先駆物質とより均質に混合させ、それによって、より多くの気孔が所望の寸法範囲で存在することを見出した。他の好ましい実施形態において、液体との混合前に、真空によって、炭素含有気孔形成粒子から空気を除去する。次に、分散法を使用して液体を炭素と混合する。これは、溶液における炭素粒子のさらに優れた分散、先駆物質におけるさらに多くの炭素粒子の均質混合、およびより多くの、好ましい寸法範囲の気孔を生じる。
【0035】
気孔形成粒子は、全て、または部分的に、分散前に混合物に含有し得る。
複合酸化物を形成するための混合物の処理は、実質的に均質な組成を有する複合酸化物を生じる任意の好適なタイプであってよい。
従って、1つの実施形態において、多孔質複合酸化物の形成は、下記の2つの基本的工程を含む:
1. 複合酸化物または複合酸化物先駆成分および炭素粒子の混合物から成る粒子を製造する工程;
2. 工程(1)からの粒子を熱処理して、先駆物質を使用した場合は先駆物質から、所望の酸化物相を形成し、炭素粒子を実質的に除去して(例えば、燃え切らす)、気孔を形成する工程。
工程(1)および(2)は、順次にまたは同時に行ってよい。
【0036】
工程1において、酸化物先駆物質中の成分を均質に分散させるべきである。それらが均質に分散していない場合、成分を均質に分散して正確な相を形成するために極めて高い温度を必要とする場合があり、そのような温度は気孔の量および寸法を減少させるか、または気孔を全て除去し得る。成分が実質的に不均質な場合、相および/または相純度および正確な粒径範囲の粒子が得られない。
少なくともいくらかの炭素粒子を、好ましくは、酸化物または酸化物先駆物質と均質に混合すべきである。炭素粒子が酸化物または酸化物先駆物質と均質に混合せず、むしろ、炭素粒子が、単に、凝集塊内の酸化物または酸化物先駆物質との大きい凝集塊として存在する場合、正確な寸法の気孔が形成されない場合がある。炭素粒子の大きさ、およびこれらの粒子の容積は、所望の気孔寸法および気孔容積に適合するように選択し得る。
【0037】
成分の実質的に均質な分布を有する酸化物または酸化物先駆物質を製造するのに好適な任意の方法を本発明に使用してよく、但し、正確な大きさの炭素粒子を該方法に添加し、それによって、少なくともいくらかの炭素粒子が先駆物質と均質に混合し、かつ該方法が正確な粒径の酸化物を製造し得るものとする。
従って、本発明の好ましい実施形態において、該方法は、下記の予備工程をさらに有する:金属陽イオンを含有する複合酸化物先駆物質成分の溶液、炭素粒子源およびノニオン、カチオンまたはアニオン界面活性剤を準備し;界面活性剤ミセルが形成され、かつ混合物が実質的に均質な分散液を形成するように、該溶液、界面活性剤および炭素粒子を混合し;炭素粒子が実質的に除去される条件下で、該混合物を加熱して複合金属酸化物を形成する。
【0038】
さらに好ましい実施形態において、酸化物先駆物質を、本出願人に付与された米国特許第6,752,979号(その開示の全体が、参照により本明細書に組み入まれる)に開示されている方法によって製造してよい。この方法は下記の工程から成る:
a) 1つまたはそれ以上の金属陽イオンを含有する溶液を準備する工程;
b) 工程(a)からの溶液を、該溶液内に界面活性剤ミセルが形成されてミセル液を形成する条件下で、界面活性剤と混合する工程;および
c) 工程(b)からのミセル液を加熱して、金属酸化物を形成する工程(該加熱工程は、界面活性剤を除去する温度および時間で行われ、それによって、無秩序気孔構造を有する金属酸化物粒子を形成する)。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、カーボンブラック粒子を、a)からの溶液またはb)からの混合物に添加し、熱処理が炭素粒子を実質的に除去する(燃え切らせる)。好ましくは、混合前に、炭素粒子を工程a)からの溶液に添加する。
他の好ましい実施形態において、炭素粒子を、前記の方法によって、工程a)の陽イオンの溶液、または工程b)からの混合物、またはそれらの両方と、均質に混合する。好ましくは、カーボンブラック粒子を、液体への添加前の粒子の高速剪断、音波処理、真空化またはこれらの組合せによって、初期溶液内に、および/または溶液−界面活性剤混合物に、分散させる。
【0040】
他の好ましい実施形態において、複合酸化物および炭素粒子の混合物を、炭素粒子と複合酸化物粒子との混合によって準備してもよく、該複合酸化物粒子は、目標粒径と同じかまたはそれより小さい粒径範囲を有する。
それに代わって、あるいはそれに加えて、当分野で既知の方法を使用して、複合酸化物を形成してもよい。複合酸化物は、高分子−錯体法、共沈法またはゾル−ゲル法、熱蒸発法、水熱法または任意の他の好適な方法、またはそれらの組合せを使用して、製造し得る。そのような方法の例は、米国特許第6139816号(Liuら)、米国特許第5879715号(Higgensら)、米国特許第5770172号(Linehanら)、米国特許第5698483号(Ongら)、米国特許第6328947号(Mondenら)、米国特許第5778950号(Imamuraら)および米国特許出願公開第2005/0008777号(McCleskeyら)に記載されている。前記の参照された特許および特許出願の全ての開示は、相互参照により本明細書に組み入まれる。本発明の第一の態様の方法は、1つまたはそれ以上の先駆物質を含有する溶液を、界面活性剤またはポリマーと混合し、次に、一般に加熱によって、処理して、複合金属酸化物を形成する金属酸化物製造法に使用するのに特に好適である。
【0041】
本発明の方法における熱処理工程は、下記のような、当分野で既知の任意の好適な装置を使用して行ってよい:管、ベルトまたはマッフル炉、流動床炉、多段焼却炉、回転か焼炉、加熱支持体、熱スプレー、スプレーか焼炉等。
酸化物または酸化物先駆物質が、連結していない個々の粒子から成る場合、熱処理は、炭素の燃え切り前に、いくつかの連結が粒子間に形成されるようにすべきである。この網状構造が、炭素の燃え切り前に形成されない場合、気孔が崩壊する。
次に、熱処理によって炭素を除去(「燃え切り」)して、気孔を形成し、酸化物先駆物質を所望の酸化物結晶構造に変換する。
【0042】
加熱工程によって、金属酸化物、および粒子の気孔構造が形成される。先行技術の複合金属酸化物製造法と異なり、本発明の方法は、好適には、比較的低い適用温度を必要とするだけである。実際に、約350℃未満の適用温度がこれまでに行われた実験研究において好適であることが見出された。好ましくは、工程(c)で達する最大適用温度は約750℃を超えず、より好ましくは約650℃、最も好ましくは約300℃〜350℃である。
加熱工程は、最大所望温度への急速加熱を含むか、またはかなり厳密に管理された熱処理を含み得る。
【0043】
従って、本発明の他の好ましい実施形態において、熱処理工程は下記の工程を含む:
分散液を、所定時間にわたって、所望の最大温度まで熱処理プロフィールに付す。
例えば、加熱工程を管理雰囲気下に行ってもよい。加熱工程は、混合物を乾燥させるための乾燥温度(一般に、混合物の沸点未満)への加熱、次に、最大適用温度への徐々の昇温、または最終的に最大適用温度に達する前の中間温度への一連の漸増を含み得る。加熱工程の時間は、広く変化し、工程(c)における好ましい時間は15分〜24時間、より好ましくは15分〜2時間、さらに好ましくは15分〜1時間である。
【0044】
熱処理プロフィールは、約100℃〜750℃、好ましくは約100℃〜650℃、より好ましくは100℃〜300℃である。選択される熱処理プロフィールは、処理されている複合酸化物の特定の組成に依存することが理解される。
熱処理工程は、好ましくは、増加した酸素条件下で行われる。これは、加熱環境において、好適な空気流を供給することによって行い得る。
好ましい実施形態において、熱処理は、炭素燃え切り段階の間の、粒子への酸素の浸透を促進すべきである。好ましい装置は、流動床炉等である。酸化物または酸化物先駆物質/炭素のより小さい粒径も、酸素の浸透を促進する。出願人は、より優れた酸素の浸透が、より優れた熱安定性を生じることを見出した。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、出願人は、より優れた酸素の浸透が、より低い温度でのより完全な炭素の除去を生じ、従って、より酸化性の雰囲気を維持すると考える。より少ない酸素は、より高い温度での炭素の保持、および一酸化炭素のような還元ガスの捕捉を生じて、極めて還元性の雰囲気を生じる。これは、いくらかの金属形成およびこの金属の極めて高温への保持を生じる場合があり、これは、焼結および表面積の損失を生じ得る。酸素の浸透は、酸化物を、酸素含有雰囲気に対して移動させ、それによって酸化物のまわりの境界層の厚さを減少させ、それによって酸化物への酸素の拡散速度を増加させることによって促進し得る。流動床炉、またはその中を流れる酸素含有雰囲気を有する炉において、酸化物を処理するのが好適である。
【0045】
さらに、より低い温度、例えば約100℃〜750℃、好ましくは約100℃〜650℃、より好ましくは約100℃〜300℃の温度における炭素の燃え切りを可能にする熱処理が好ましい。充分に高い温度での燃え切りは、炭素の無制御発熱性燃え切りを生じ、これは表面積をかなり減少させる。さらに出願人は、高温への炭素の保持が、前記のメカニズムにより高温安定性を減少させると考える。
【0046】
燃え切り工程の所望温度プロフィールからの逸脱を避けるために、燃え切り工程の精密調整を維持すべきである。例えば、燃え切りの間の温度の精密監視を使用し得る。望ましくない温度増加が観測された場合(炭素の発熱燃焼速度の増加による、過剰エネルギー生成を示す)、炉に供給される雰囲気を、酸素分圧の減少によって調整し得る。この結果を得る1つの方法は、過剰窒素または他の不活性もしくは非反応性ガスを導入することである。これは、酸素の分圧を減少させるだけでなく、炉を冷却する作用もする。炭素含有気孔形成剤の燃え切りの間に、酸化雰囲気を維持することも望ましいので、温度を調節するこの方法は、切迫した温度逸脱への迅速な反応が必要な場合か、または逸脱が起きたことが明らかであり、炭素の酸化をすぐに減少させるかまたは停止させる必要がある(例えば、安全のため)場合だけ、使用すべきである。または、付加的冷却を行ってもよい。燃え切りの間に温度を精密監視する代わりに、燃え切りの間に特定の最大温度未満に温度を維持することによって、満足のいく結果を得ることもできる。特定の最大温度は、形成される特定の複合金属酸化物によって広範囲に変化し得る。他の代替法として、本発明の方法を、特定の操作条件(例えば、酸素流速および炉冷却)およびあらゆる不適格生成物を排除するように維持された品質管理プロトコル下に行ってもよい。不適格生成物の存在は、生成物の試験によるか、または1つまたはそれ以上の操作パラメーターを監視し、かつ1つまたはそれ以上のパラメーターが特定の数値範囲外に動いた場合に、形成されたあらゆる生成物を排除する監視法によって、決定し得る。例えば、簡単な熱電対を使用して、方法の実施中に達した最大温度を監視し、かつ、最大温度が特定の最大値を超えた場合に生成物を排除するか、または目視検査によって混合物または生成物が処理中に赤熱していることを示した場合に生成物を排除し得る。
【0047】
本発明の第二の態様において、高温安定性を示し、下記の一般式で示される酸化物組成を有する、多孔質複合酸化物材料を提供する:
1-xxMO3
(式中、
Aは、ランタニド元素の混合物であり;
Bは、二価または一価の陽イオンであり;
Mは、原子番号22〜32、40〜51、および73〜83の元素から成る群から選択される元素または元素の混合物であり;
xは、0.1<x<0.5の数値である)。
好ましくは、複合酸化物材料は、本発明の第一の態様の方法によって製造される。
【0048】
複合酸化物材料は、初期表面積が約15m2/gより大きく、好ましくは約20m2/gより大きく、より好ましくは約30m2/gより大きい、および空気中1000℃で2時間の老化後の表面積が約5m2/gより大きく、好ましくは約10m2/gより大きく、より好ましくは約15m2/gより大きい正確な相(correct phase)(例えば、単一相または多相)であってよい。
複合酸化物材料は、実質的に均質な組成を示す。
複合酸化物材料は、ペロブスカイト物質を含有する。
複合酸化物材料は、一般に、平均粒径約2nm〜約150nm、好ましくは約2nm〜100nm、および寸法約7nm〜約250nm、より好ましくは約10nm〜約150nmの気孔を有する。しかし、複合酸化物材料の平均粒径および気孔寸法は、選択した特定の複合酸化物に依存して変化し得る。
【0049】
例えば、CeZrO2型の複合酸化物材料について、平均粒径は、好ましくは、前記範囲の下限、例えば約2nm〜50nm、より好ましくは約2nm〜10nmであり、気孔は、約7nm〜50nm、より好ましくは約7nm〜30nmである。
マンガン酸ランタン型の複合酸化物材料は、平均粒径約2nm〜100nm、より好ましくは約2nm〜30nmであり、気孔は、約15nm〜200nm、より好ましくは約15nm〜150nmである。
より好ましくは、複合酸化物材料は、実質的に分散した気孔寸法範囲を示す。
【0050】
第三の態様において、本発明は、多孔質非耐火性金属酸化物を製造する方法を提供し、該方法は、下記の工程を含んで成る:
下記物質の混合物を準備する工程:
a) 非耐火性金属酸化物の製造に好適な1つまたはそれ以上の先駆成分、非耐火性酸化物の粒子、非耐火性酸化物の先駆物質である酸化物粒子、またはそれらの2つまたはそれ以上の混合物;および
b) 約7nm〜250nmの気孔寸法を与えるように選択された粒状炭素含有気孔形成材料;
ならびに、
該混合物を下記のために処理する工程:
i) 多孔質非耐火性金属酸化物を形成し(該非耐火性金属酸化物は約1nm〜150nmの粒径を有する);
ii) 非耐火性金属酸化物の多孔質構造および組成を実質的に維持する条件下で、気孔形成材料を除去する。
【0051】
好適には、前記の工程(i)において、前記(a)からの1つまたはそれ以上の先駆成分を、非耐火性金属酸化物の相に組み込む。
1つまたはそれ以上の先駆成分は、原子番号3、4、11、19〜21、23〜32、37〜39、41〜51、55〜84および87〜103の金属から選択される1つまたはそれ以上の金属を含有する1つまたはそれ以上の金属化合物を含有し得る。1つまたはそれ以上の金属化合物は、酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩等であってよい。
【0052】
本発明の第一の態様と異なり、本発明の第三の態様の方法は、酸化物相に唯1つの金属を有する(即ち、複合酸化物でない)特定の粒径および気孔寸法の多孔質金属酸化物の形成を含む。しかし、本発明の第三の態様は、非耐火性金属酸化物に形成に限定される。そのような非耐火性金属酸化物をこのような方法で形成できることは極めて意外な結果であり、なぜなら、炭素含有気孔形成粒子の存在は、気孔形成粒子を除去する工程中に、非耐火性金属酸化物の還元を生じる可能性が高いと考えられ、これは、当然、金属酸化物相を破壊するかまたは実質的に損ない得るからである。しかし、本発明者らは、本発明の第三の態様の方法は、実際に、そのような非耐火性金属酸化物を形成できることを見出した。
【0053】
1つの実施形態において、本発明の第三の態様の方法は、先駆成分を溶液または分散液として準備する。例えば、固相混合物を先ず形成し、次に、好適な溶媒に分散または溶解させてよい。
1つの実施形態において、先駆成分および気孔形成材料を混合して、固相混合物を形成し、次に、下記のように、好適な熱処理によって酸化物を形成し得る。
他の実施形態において、酸化物粒子を好適な先駆成分から形成し、気孔形成材料を酸化物粒子と混合して、混合物を形成し得る。
または、混合物を溶液または分散液として供給してもよい。例えば、固相混合物を先ず形成し、次に、好適な溶媒に分散または溶解させてよい。
【0054】
他の実施形態において、先ず、先駆成分を溶液に形成し、次に、気孔形成材料をその溶液に添加してもよい。または、先駆成分、および気孔形成材料の少なくとも一部を混合して、固相混合物を形成し、該混合物を好適な溶媒に溶解させてもよい。
分散液または溶液を形成する場合、任意の好適な溶媒を使用し得る。無機および有機溶媒、例えば、酸(塩酸または硝酸)、アンモニア、アルコール、エーテルおよびケトンを使用し得るが、水が好ましい溶媒である。
【0055】
本発明の第三の態様の方法は、1つまたはそれ以上の先駆物質を含有する溶液を界面活性剤またはポリマーと混合し、次に、一般に加熱によって、処理して、金属酸化物を形成する金属酸化物製造法に特に好適である。
本発明の第三の態様の実施形態の他の特徴は、本発明の種々の実施形態に関して記載した通りであり、簡便のために、再び記載する必要はない。
本発明の第三の態様の方法を使用して、大きい比表面積を示す酸化銅を形成した。他の酸化物(複合酸化物、および単一金属種を含有する酸化物の両方)も、本発明の第二の態様の方法によって作製した。
本発明の第一および第三の態様の方法は、金属酸化物粉末を製造するのに特に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
実施例1
La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93を下記の方法によって作製した。149g La(NO33.6H2O、18.2g Sr(NO32、6.86g Pd(NO32.xH2O、2.04g NiCO3、および233g/L Mnを含有する水溶液中の138.3g Mn(NO32を、135g 水および12g HNO3(70%)から成る溶液に溶解させることによって、溶液を作製した。この溶液119gを、Brij 30界面活性剤72gと混合した。この混合物を300℃にゆっくり加熱した。次に、乾燥生成物を、管状炉において空気流を使用して300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、600℃および650℃で0.5時間にわたって熱処理した。
XRDは、該物質が単相ペロブスカイトであることを示した。この熱処理後に得られた表面積は17.8m2/gであった。図1は、気孔寸法分布を示す。TEMは、平均粒径が約50nmであることを示した。1000℃で2時間の熱処理後に、表面積は6.9m2/gであった。
【0057】
実施例2
La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93を、実施例1と同様の方法で作製し、但し、16.15gのカーボンブラック(Cabot Monarch 1300、平均一次粒径13nm、DPB 吸油量100cc/g、窒素表面積560m2/g)を、界面活性剤との混合前に、電磁攪拌機で溶液に混合した。この溶液/カーボンブラック混合物を、高速剪断機で分散させ、次に、界面活性剤と混合し、次に、再び分散させた。熱処理を実施例1と同様に適用した。
XRDは、該物質が単相ペロブスカイトであることを示した。熱処理後に得られた表面積は24.7m2/gであった。図1は、気孔寸法分布を示す。TEMは、平均粒径が約50nmであることを示した。1000℃で2時間の熱処理後に、表面積は10.04m2/gであった。
カーボンブラックの組み込みが、有意により大きい気孔を与え、該物質が高温においてより高い安定性であることが分かる。
【0058】
実施例3
La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93を、実施例2と同様の方法で作製し、但し、熱処理は、300℃に加熱した物質を、直接1000℃に置くことによって行った。1000℃で2時間の熱処理後に、表面積は1.9m2/gであった。
この実施例は、ペロブスカイト先駆物質へのカーボンブラックの組み込みが、それ自体では、高温安定性を与えるのに充分でないことを示している。この実施例に使用した熱処理条件は、物質の表面領域の破壊を生じた。この実施例に使用した温度の大きい階段状変化が、酸化物からの炭素の無制御燃え切りを生じ、これが極めて高い温度の局限領域を生じたと推測される。これが、金属酸化物の焼結および還元を生じたと推測される。言い換えれば、金属酸化物の組成および気孔構造が、燃え切りの間に維持されなかった。
【0059】
実施例4
La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93を、実施例3と同様の方法で作製し、但し、管状炉に空気流は存在しなかった。その他の手順は同じであった。
XRDは、該物質がペロブスカイト相であることを示した。ピークの全幅半値(FWHM)が、実施例1および2におけるピークのFWHMと同じであり、粒径が同様であることを示した(即ち、約50nm)。この熱処理後に得られた表面積は22.1m2/gであった。1000℃で2時間の熱処理後に、表面積は9.1m2/gであった。
この結果と実施例2の結果(10.2m2/g)の比較は、熱処理中の酸素増加の有利な作用を示す。本発明者らは、より少ない酸素が、炉における還元条件を生じ、これが物質における金属の形成を生じ得ると考える。これは、焼結、ならびに表面積および気孔の減少を生ずる。
【0060】
実施例5〜8
カーボンブラック(Raven 850)の量を変化させて、La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93を実施例2と同様の方法で作製した。
XRDは、該物質がペロブスカイト相であることを示し、ピークFWHMは実施例1および2と同様であった。
表面積、気孔容積および気孔寸法分布を表1に示し、それらは、使用したカーボンブラックの量に明らかに依存していた。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例9〜11: 種々のカーボンブラックを使用したLa0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93の例
複合酸化物La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93に関して得た表面積および気孔構造における、種々のカーボンブラック気孔形成剤使用の作用を示す実施例。
種々のカーボンブラックを使用した以外は、実施例2に記載した方法を使用して、酸化物を形成した。
XRDは、全ての化合物がペロブスカイト構造であることを示し、ピークFWHMは実施例1および2と同様であり、粒径が約50nmであることを示した。得られた表面積および気孔構造の結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
実施例12〜13
実施例12および13において、La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93を、それぞれ実施例1および2(炭素不使用および炭素使用)と同様に作製し、但し、ポリエチレングリコール(分子量4000)を界面活性剤の代わりに使用した。XRDはペロブスカイト相、および実施例12における少量の不純物ピークを示した。表面積および気孔容積を表3に示す。炭素の組み込みは、より大きい気孔の数を明らかに増加させた。
【0065】
【表3】

【0066】
実施例14〜15
La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93を共沈法によって作製し、実施例14および15を、それぞれ炭素(17.8g、Monarch 1300)を使用して、および炭素を使用せずに行った。溶液を実施例1と同様の方法で作製した。シュウ酸アンモニウム55gを水960gに溶解させることによって、別の溶液を作製した。これらの溶液を、それぞれ攪拌器にゆっくり添加することによって混合し、沈殿物を得た。沈殿物を洗浄し、濾過し、約100℃以下で乾燥し、次に、実施例1と同様の方法で熱処理した。
XRDは、ペロブスカイト相およびいくつかの分離ピークを示した。表面積および気孔容積を表4に示す。
明らかに、気孔分布における炭素の作用は、界面活性剤およびポリエチレングリコールを使用した実施例で観察された作用よりかなり小さい。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、本発明者らは、共沈に必要とされることが多い、より多くの液体量が、極めて分散した沈殿物粒子および炭素粒子を生じると考える。これは、所望の気孔を得るために、炭素粒子を沈殿物に充分に分散させることを極めて困難にする。
【0067】
【表4】

【0068】
実施例16〜21: 種々のカーボンブラックを使用したCe0.54Zr0.37La0.03Pr0.06xの例
これらの実施例は、複合酸化物Ce0.54Zr0.37La0.03Pr0.06xに関して得た表面積および気孔構造における、種々のカーボンブラック気孔形成剤使用の作用を示す。
適量の、硝酸セリウム、炭酸ジルコニウム、硝酸ランタンおよび硝酸プラセオジムを、水/硝酸溶液に溶解させることによって、Ce0.54Zr0.37La0.03Pr0.06xの組成の酸化物を作製した。高速剪断器を使用して、カーボンブラック33gをその溶液に分散させ、70gのErunon LA4界面活性剤を添加し、混合物を再び分散させた。混合物を300℃にゆっくり加熱した。次に、乾燥生成物を、管状炉において空気流を使用して300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、600℃および650℃で0.5時間にわたって熱処理した。
XRDは該試料が単相であることを示し、TEMは、これらの実施例で作製した試料の平均粒径が、650℃に加熱後に約5〜10nmであることを示した。他の実施例は、同様のXRDピークFWHMを示し、同様の粒径を示した。
種々のカーボンブラックを使用した試料の表面積および気孔容積を、下記の表5に、カーボンブラックの粒径および吸油量の数値と共に示す。1000℃で2時間の熱処理後に得られた表面積も示す。
【0069】
【表5】

明らかに、気孔構造および表面積は、種々の形態学的特徴を有するカーボンブラックの使用によって変化し得る。
【0070】
実施例22〜26: 過剰La含有量を有する実施例
La0.8Sr0.2Mn0.9Ni0.04Pd0.063+La23物質を、前記実施例と同様の方法で作製した。La23の量を、2.5wt%〜20wt%で変化させた。XRDはペロブスカイト相、および、過剰La23の増加に伴って増加するLa23相の量を示した。図2および3は、650℃および800℃での熱処理後に得られた表面積を、La23含有量の関数として示す。
この実施例は、酸化組成物の気孔構造が、変化する量の第二相の組み込みによって変化することを示している。
【0071】
実施例27: 過剰CeO2(7b)
La0.8Sr0.2Ni0.04Pd0.06Mn0.93+10wt% CeO2を、実施例1と同様の方法で作製した。ここの組成物は、ペロブスカイト相および分離CeO2相を(この量の過剰CeO2は、ペロブスカイト相に組み込むことができない)を特に得るために選択した。XRDは、該物質がペロブスカイト相およびCeO2であることを示した。得られた表面積は28.9m2/gであり、3nm〜200nmの気孔の容積は0.26cc/gであり、10nm〜200nmの気孔容積は約0.25cc/gであり、50nm〜200nmの気孔容積は約0.175cc/g以下であった。1000℃で2時間の熱処理後に、表面積は11.7m2/g以下であった。
【0072】
実施例28および29: 水熱法によるCe0.45Zr0.45La0.1x
Ce0.45Zr0.45La0.1xを、同様の化合物に関して既知の方法に類似した水熱法を使用して作製した。
49.3gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)、27.4g 炭酸ジルコニウムおよび8.66gの硝酸ランタンを、940gの水および63gの硝酸(70%)を含有する溶液に溶解させた。この混合物を約95℃以下で約24時間以下加熱して、沈殿物を形成した。アンモニア溶液(%)150mLを最後に添加して、沈殿物を洗浄し、濾過によって分離し、約100℃以下で乾燥させた。次に、熱処理を行った。温度を150℃から上昇させて、0.5時間ごとに150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃および450℃にした。この熱処理後の表面積は145m2/gであった。気孔容積を表6に示し、XRDを図4に示す。
【0073】
比較例29
Raven 850カーボンブラック32gを溶液に添加し高速剪断器で分散させた以外は、実施例28と同様の方法でCe0.45Zr0.45La0.1xを作成した。次に、水熱加熱および熱処理を同様の方法で行った。この試料の表面積は約100m2/g以下であった。気孔容積を表6に示しXRDを図4に示す。実施例28と比較して、炭素の組み込みが、より大きい気孔の容積を増加させたことが分かる。しかし、XRDは、炭素の組み込みが、セリア豊富およびジルコニア豊富ないくぶん分離した相を有する酸化物を形成させたことを示している。これは、二重ピークによって示され、分離したピークがCeO2およびZrO2ピーク位置にシフトしている。このように、炭素は、水熱沈殿法に影響を及ぼし、種々の元素種の有意な分離を生じ、気孔容積を増加させた。この作用は、図5にさらに明らかに示されており、該図は、800℃で0.5時間の付加的熱処理を与えた両実施例化合物のXRDを示す。
【0074】
【表6】

【0075】
実施例30〜32: CuO
前記実施例と同様の方法を使用して、CuOを作製した。実施例30を、150℃、200℃、250℃、300℃および350℃での0.5時間の維持によって、350℃にゆっくり熱処理した。実施例31も同様に熱処理したが、この試料は、熱処理中にかなり過熱されるのが観察され、試料が350℃よりかなり高い温度を経験したことを示す領域で赤熱を示した。実施例32は、225℃で1時間の付加段階を有するより遅い熱処理を受けた。この熱処理は、より一貫した特性を有する物質を生じることが見出され、高温逸脱は観察されなかった。
全ての物質のXRDは、CuO相だけを示した。得られた表面積および気孔容積を表7に示す。
【0076】
【表7】

【0077】
これらの実施例は、意外にも、本発明の方法を使用し、適切な熱処理を使用して、感熱材料を製造できることを示している。
本明細書に開示し規定した本発明は、記載した、または本明細書もしくは図面から明らかな、各特徴の2つまたはそれ以上のあらゆる代替的組合せに及ぶことが理解される。これらの種々の組合せの全ては、本発明の種々の代替的態様を構成する。
本明細書に使用されている「含む」という語(またはその文法的変形)は「含む」という語と同意義であり、他の成分または特徴の存在を除外するものと解釈すべきでないことも理解される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】650℃への熱処理後の、実施例1および2で作製した材料の気孔寸法分布を示す。
【図2】実施例18〜22についての、La23含有量の関数としての、650℃および800℃での熱処理後に得た表面積を示す。
【図3】実施例18〜22についての、La23含有量の関数としての、650℃での熱処理後に得た気孔容積を示す。
【図4】(a)炭素を使用せずに(実施例28)および(b)炭素を使用して(実施例29)作製し、450℃に熱処理したCe0.45Zr0.45La0.1OxのXRDパターンを示す。
【図5】(a)炭素を使用せずに(実施例28)および(b)炭素を使用して(実施例29)作製し、800℃に熱処理したCe0.45Zr0.45La0.1OxのXRDパターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質複合酸化物を製造する方法であって、下記の工程を含む方法:
下記物質の混合物を準備する工程:
a) 複合酸化物の製造に好適な先駆成分;または
b) 複合酸化物粒子の製造に好適な1つまたはそれ以上の先駆成分、および1つまたはそれ以上の金属酸化物粒子;および
c) 約7nm〜250nmの気孔寸法を与えるように選択された粒状炭素含有気孔形成材料;
ならびに、
該混合物を下記のために処理する工程:
i) 多孔質複合酸化物を形成し(該多孔質複合酸化物において、前記(a)からの2つまたはそれ以上の先駆成分、または、前記(b)からの、1つまたはそれ以上の先駆成分、および金属酸化物粒子中の1つまたはそれ以上の金属が、複合金属酸化物の相に組み込まれ、複合金属酸化物が約1nm〜150nmの粒径を有する);
ii) 複合酸化物の多孔質構造および組成を実質的に維持する条件下で、気孔形成材料を除去する。
【請求項2】
単相複合金属酸化物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複合金属酸化物の相、および他の金属酸化物の1つまたはそれ以上の相を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
任意の他の金属酸化物相を有するかまたは有さずに、2つまたはそれ以上の複合金属酸化物相を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
形成された各複合金属酸化物相が相純粋相である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
気孔形成粒子が約7nm〜300nmの粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
気孔形成粒子が約10nm〜150nmの粒径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
気孔形成粒子が約10nm〜約100nmの粒径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
気孔形成粒子がカーボンブラックの粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複合酸化物を形成するために使用される成分を、均質に分散させて、先駆成分の混合物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
高速剪断、超音波混合、ロール練り、ボールミル粉砕およびサンドミル粉砕から選択される方法を使用して、気孔形成粒子を混合物に分散させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
混合物を形成する前に、真空によって、炭素含有気孔形成粒子から空気を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
下記の工程を含む、請求項1に記載の方法:
金属陽イオンを含有する複合酸化物先駆成分の溶液、炭素粒子源およびノニオン、カチオンまたはアニオン界面活性剤を準備し;界面活性剤ミセルが形成され、かつ混合物が実質的に均質な分散液を形成するように、該溶液、界面活性剤および炭素粒子を混合して混合物を形成し;炭素粒子が実質的に除去される条件下で、該混合物を加熱して複合金属酸化物を形成する。
【請求項14】
a) 1つまたはそれ以上の金属陽イオンを含有する溶液を準備する工程;
b) 工程(a)からの溶液を、該溶液内に界面活性剤ミセルが形成されてミセル液を形成する条件下で、界面活性剤と混合する工程;および
c) 工程(b)からのミセル液を加熱して、金属酸化物を形成する工程(該加熱工程は、界面活性剤を除去する温度および時間で行われ、それによって、無秩序気孔構造を有する金属酸化物粒子を形成する);
を含んで成り、カーボンブラック粒子をa)からの溶液またはb)からの混合物に添加し、熱処理がカーボンブラック粒子を実質的に除去する(燃え切らせる)、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
混合の前に、炭素粒子を工程a)の溶液に添加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複合金属酸化物を形成し、かつ炭素含有粒子を除去するために混合物を処理する工程が、約100℃〜約750℃の温度に混合物を加熱することを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
温度が約100℃〜約650℃である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
温度が約100℃〜約300℃である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
温度、冷却速度および酸素の分圧の1つまたはそれ以上を、熱処理工程の間に調節して、炭素含有粒子の除去の間の複合金属酸化物の還元を最小限にするかまたは防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
炭素含有粒子の除去の間に、特定の最大温度を超えないように温度を調節する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
金属酸化物が、原子番号3、4、11、12、19〜32、37〜51、55〜84および87〜103の2つまたはそれ以上の金属を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
混合物が液体成分を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
1つまたはそれ以上の先駆成分を液体成分に溶解させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
混合物がポリマーをさらに含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
多孔質非耐火性金属酸化物を製造する方法であって、下記の工程を含んで成る方法:
下記物質の混合物を準備する工程:
a) 非耐火性金属酸化物の製造に好適な1つまたはそれ以上の先駆成分、非耐火性酸化物の粒子、非耐火性酸化物の先駆物質である酸化物粒子、またはそれらの2つまたはそれ以上の混合物;および
b) 約7nm〜250nmの気孔寸法を与えるように選択された粒状炭素含有気孔形成材料;
ならびに、
該混合物を下記のために処理する工程:
(i) 多孔質非耐火性金属酸化物を形成し(該非耐火性金属酸化物は約1nm〜150nmの粒径を有する);
(ii) 非耐火性金属酸化物の多孔質構造および組成を実質的に維持する条件下で、気孔形成材料を除去する。
【請求項26】
1つまたはそれ以上の先駆成分が、原子番号3、4、11、19〜21、23〜32、37〜39、41〜51、55〜84および87〜103の金属から選択される1つまたはそれ以上の金属を含有する1つまたはそれ以上の金属化合物を含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1つまたはそれ以上の金属化合物が、金属酸化物、酢酸塩、炭酸塩または硝酸塩である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
先駆成分を溶液または分散液として準備する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
先駆成分を溶液に形成し、次に、気孔形成材料を該溶液に添加する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
先駆成分、および気孔形成材料の少なくとも一部を、混合して、固相混合物を形成し、該混合物を好適な溶媒に溶解させる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
下記の工程を含んで成る、請求項25に記載の方法:
金属陽イオンを含有する複合酸化物先駆成分の溶液、炭素粒子源およびノニオン、カチオンまたはアニオン界面活性剤を準備し;界面活性剤ミセルが形成され、かつ混合物が実質的に均質な分散液を形成するように、該溶液、界面活性剤および炭素粒子を混合して混合物を形成し;炭素粒子が実質的に除去される条件下で、該混合物を加熱して複合金属酸化物を形成する。
【請求項32】
a) 1つまたはそれ以上の金属陽イオンを含有する溶液を準備する工程;
b) 工程(a)からの溶液を、該溶液内に界面活性剤ミセルが形成されてミセル液を形成する条件下で、界面活性剤と混合する工程;および
c) 工程(b)からのミセル液を加熱して、金属酸化物を形成する工程(該加熱工程は、界面活性剤を除去する温度および時間で行われ、それによって、無秩序気孔構造を有する金属酸化物粒子を形成する);
を含んで成り、カーボンブラック粒子をa)からの溶液に添加し、熱処理がカーボンブラッック粒子を実質的に除去する(燃え切らせる)、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(i)において、工程(a)からの1つまたはそれ以上の先駆成分を、非耐火性金属酸化物の相に組み込む、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−518659(P2007−518659A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549785(P2006−549785)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000081
【国際公開番号】WO2005/070819
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506250033)ベリー スモール パーティクル コンパニー ピーティーワイ リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】VERY SMALL PARTICLE COMPANY PTY LTD
【住所又は居所原語表記】31 Westgate Street, Wacol, QLD 4076 (AU)
【Fターム(参考)】