説明

金属酸化物微粒子分散液の製造方法、金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法、樹脂組成物、及び塗料組成物

【課題】金属酸化物微粒子分散液中での凝集による粒子サイズの肥大化を抑え、金属酸化物粒子を数nmオーダーの小サイズに安定に分散させる。
【解決手段】390℃の熱水と共に、水酸化コバルト及び水酸化アルミニウムの混合物懸濁液を供給して流通型反応器14で粒子形成反応を行ない、流通型反応器14からの反応溶液の排出の途中で連続的に分散剤が供給されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物が微粒子分散された分散液を得るのに好適な金属酸化物微粒子分散液の製造方法、並びにこれを用いた金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法、塗料組成物、及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属酸化物粒子は、塗料や樹脂組成物、合成樹脂の着色剤、窯業用途、蛍光体用着色剤などに広く利用されている。そして、金属酸化物粒子の製造方法としては、例えば、共沈法、加熱加水分解法、水熱反応法などが広く知られている。
【0003】
金属酸化物粒子として、例えばコバルトブルー系の顔料は無機顔料として広く知られており、例えば光学フィルタなど光の選択的透過性、着色特性の観点から、分散性が良好で着色力の大きい顔料が求められている。また、塗料や樹脂組成物の着色においても、彩度が高く、充分な着色性を有しており、塗料や樹脂に添加しても凝集しないものが望まれている。
【0004】
上記に関連して、金属塩の水溶液を水の亜臨界ないし超臨界の条件下で処理することにより、金属酸化物粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平04−50105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製造の際に得られた粒子は凝集を起こしやすく、粒子の凝集により50〜100nmよりも大きいサイズに肥大化してしまう。このようなサイズの粒子では、粒子自体による光の散乱が大きく、着色剤として用いたときの透明感や発色性、深み感が低下し、着色が濃く、意匠性の良好な粒子は得られない。
また、一般に用いられる有機顔料のサイズを小径化したときには、その耐候性は著しく低下する。
【0006】
微粒子の分散は、粒子径が小径になるに伴なって凝集を起こしやすくなるが、透明感や発色性、深み感などの意匠性を考慮すると、数nmオーダー(例えば10nm以下)にまで小径化した微粒子の分散物を高分散な状態で得ることができる技術の確立が求められている。
【0007】
また、微粒子の分散液中にアルカリ性物質や金属塩由来のイオン性物質が残存すると、これらの残存物質の影響により微粒子に顔料を用いた場合には、意匠性が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、凝集による粒子サイズの肥大化を抑え、金属酸化物粒子を数nmオーダー(特に10nm以下)の小サイズに安定に分散含有する金属酸化物微粒子分散液を作製することができる金属酸化物微粒子分散液の製造方法、金属酸化物粒子が数nmオーダー(特に10nm以下)の小サイズに安定に分散された金属酸化物微粒子ペーストを作製することができる金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法、並びに、発色性、色合いが良好で透明感を有し、意匠性(深み感など)のある塗料組成物及び樹脂組成物を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、顔料を亜臨界もしくは超臨界条件下で形成する過程において、熱水と共に金属塩等の溶液を反応させて顔料粒子を形成後、その反応溶液を一時的に保持することなく、顔料粒子形成後の反応溶液を取り出す過程にて連続的に分散剤を加えるようにすることが、数nmオーダーの微粒子の凝集防止に特に有効であるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明に係る金属酸化物微粒子分散液の製造方法は、少なくとも水が供給され、水の亜臨界ないし超臨界条件となる200℃以上、圧力15.7MPa以上の反応帯域を有する流通型反応器に、金属塩又は金属水酸化物を含む液(以下、単に「金属溶液」ともいう。)を連続的に供給すると共に、前記流通型反応器から排出された反応溶液の排出過程で分散剤を供給する構成としたものである。
【0011】
第1の発明においては、水の亜臨界ないし超臨界条件となる200℃以上、圧力15.7MPa以上(160kg/cm以上)の反応帯域において、熱水と共に金属塩又は金属酸化物を含む液(金属溶液)を連続的に供給(例えば、200℃以上の亜臨界水又は超臨界水を供給すると共に金属溶液を供給)して反応させ、この反応を行なった流通型反応器から反応後の反応溶液を排出する際に、反応溶液を一旦排出した後ではなく、反応溶液の排出の過程で連続して分散剤を加えるようにすることで、粒子形成後の凝集が抑えられるので、粒子サイズの肥大化を回避でき、数nmオーダーの小分散径としながら金属酸化物微粒子が安定に分散された分散液を得ることができる。これにより、得られた金属酸化物微粒子分散液は、色合いが良好で高い発色(着色度)、透明感が得られる。
【0012】
金属塩又は金属水酸化物を含む液(金属溶液)には、水中に金属塩又は金属水酸化物を含有する水溶液もしくは水系の懸濁液などが含まれる。
【0013】
流通型反応器は、水供給用の給水管と金属溶液供給用の金属溶液管、あるいは前記給水管と前記金属溶液管とを兼ねる配管が接続されており、水と金属溶液とをともに流通させながら金属酸化物の粒子を反応形成させる反応容器である。
【0014】
第1の発明において金属水酸化物を用いる場合は、コバルト塩及びアルミニウム塩の混合水溶液とアルカリ性物質水溶液とを混合して水酸化コバルトと水酸化アルミニウムとを共沈させてなる金属水酸化物が好ましい。
【0015】
金属水酸化物を用いて反応させる場合に、原料として例えば硫酸コバルトや硫酸アルミニウムなどの硫酸塩を用いることが多いが、流通型反応器に供給する金属溶液中に硫酸コバルト等の硫酸塩や他のアルカリ性物質が残存していると例えばCo−Al複合酸化物微粒子の分散液を作製したときの色合いが悪化しやすいため、予めコバルトとアルミニウムの水酸化物を共沈させて得た金属水酸化物を用いることで、硫酸コバルトをはじめとする硫酸塩等のイオン性物質(不純物)の混入を回避することができるので、発色性、色合い、透明感、意匠性の悪化を抑えて、複合酸化物の発色(着色度)や色合い、透明感が良好で不純物の残存に伴なう意匠性の低下を防止することができる。
【0016】
また、上記のように共沈させた後には、コバルトとアルミニウムの水酸化物を水洗するようにすることが望ましい。
予め別系にて、水洗処理が施された金属水酸化物を用いることで、コバルト塩やアルミニウム塩あるいはアルカリ性物質に由来のイオン性物質等の不純物を除去することができるので、色合いが良好で発色(着色度)が高く、透明感が良好で、優れた意匠性の得られる複合酸化物を得ることができる。
【0017】
第1の発明で用いる分散剤としては、(a)主鎖及び/又は複数の側鎖に顔料親和性基を有すると共に、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造であって数平均分子量が2000〜1000000の高分子、(b)数平均分子量が2000〜1000000であって主鎖に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子、及び(c)数平均分子量が1000〜1000000であって主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子、からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0018】
上記の(a)〜(c)の高分子は、顔料親和性基が側鎖に存在して溶媒和部分を構成する側鎖を有するグラフト構造のもの又は主鎖に顔料親和性基を有するものであるので、粒子の分散を良好に行なうことが可能であり、金属酸化物微粒子を高濃度に含有しながら、数十nm程度の微粒な微粒子分散を行なうのに有効である。
【0019】
第1の発明においては、流通型反応器における反応は、温度が350〜600℃であり、金属塩又は金属水酸化物の反応濃度が0.02mol/l以下である範囲が好ましい。温度及び反応濃度が前記範囲内であると、副生成物の生成が効果的に抑えられ、例えばCo−Al複合酸化物微粒子(例:コバルトブルー)の分散液を得る場合には副生成物であるAlOOH(柱状物)の生成を低減して、発色(着色度)の高い金属酸化物微粒子分散液を得ることができる。
【0020】
第2の発明に係る金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法は、上記した第1の発明に係る金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液を濃縮して構成したものである。
【0021】
第2の発明は、分散微粒子として既述の第1の発明に係る金属酸化物微粒子分散液を用いることで、分散ペーストを調製した場合に、金属酸化物微粒子を数nmオーダーの小分散径にて安定的に分散させて含有させることができる。これより、色合いが良好で高い発色(着色度)、透明感が得られ、例えば希釈や溶媒変換等の操作を加えることで、色合い及び発色に優れた透明感のある塗料等を得ることができる。
【0022】
第3の発明に係る樹脂組成物は、上記した第1の発明に係る金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液と、樹脂成分とを用いて構成されたものである。
【0023】
第3の発明は、分散微粒子として既述の第1の発明に係る金属酸化物微粒子分散液を樹脂成分と共に用いることで、組成物中に金属酸化物微粒子を数nmオーダーの小分散径にて安定的に分散させて含有することができるので、耐候性に優れると共に、色合いが良好で発色(着色度)が高く、透明感に優れており、深み感など意匠性を付与することができる。
【0024】
第4の発明に係る塗料組成物は、上記した第1の発明に係る金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液を用いて構成されたものである。
【0025】
第4の発明は、分散微粒子として既述の第1の発明に係る金属酸化物微粒子分散液を用いることで、組成物中に金属酸化物微粒子を数nmオーダーの小分散径にて安定的に分散させて含有することができるので、耐候性に優れると共に、色合いが良好で発色(着色度)が高く、透明感に優れており、深み感など意匠性を付与することができる。
【0026】
第2及び第3の発明においては、金属酸化物微粒子分散液を、他の塗料成分や樹脂成分と混合する前に、適当な方法により濃縮しておくことが好ましい。濃縮により分散液をペースト状にして使用でき、上記の金属酸化物微粒子分散ペーストを好適に用いることができる。これにより、金属酸化物微粒子分散液の使用により持ち込まれる溶媒の量を少なくすることができ、元々の塗料組成物や樹脂組成物の固形分濃度を高く保ったり、粘性変化を低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、凝集による粒子サイズの肥大化を抑え、金属酸化物粒子を数nmオーダー(特に10nm以下)の小サイズに安定に分散含有する金属酸化物微粒子分散液を作製することができる金属酸化物微粒子分散液の製造方法を提供することができる。また、
本発明によれば、金属酸化物粒子が数nmオーダー(特に10nm以下)の小サイズに安定に分散された金属酸化物微粒子ペーストを作製することができる金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法を提供することができる。さらに、
本発明によれば、発色性、色合いが良好で透明感を有し、意匠性(深み感など)のある塗料組成物及び樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の金属酸化物微粒子分散液の製造方法、並びにこれにより製造された金属酸化物微粒子分散液を用いた金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法、塗料組成物、及び樹脂組成物について詳細に説明する。
【0029】
<金属酸化物微粒子分散液の製造方法>
本発明の金属酸化物微粒子分散液の製造方法は、少なくとも水が供給され、水の亜臨界ないし超臨界条件となる200℃以上、圧力15.7MPa以上の反応帯域を有する流通型反応器に、金属塩又は金属水酸化物を含む液(金属溶液)を連続的に供給すると共に、前記流通型反応器から排出された反応溶液の排出過程で分散剤を供給して分散液を得るものである。
【0030】
以下、図面を参照して詳細に説明する。
流通型反応器は、水と金属塩又は金属水酸化物を含む金属溶液とをともに流通させながら金属酸化物の粒子を反応形成させる反応容器であり、例えば図1に示すように、蒸留水を貯留した水貯留タンク11と、原料液である金属溶液を貯留した原料液貯留タンク12と、水貯留タンク11からの水を200℃以上に加熱して亜臨界水もしくは超臨界水とするための加熱用ヒータ13と、温度200℃以上、圧力15.7MPa以上の反応室を備えた流通型反応器14と、分散剤を流動する反応溶液に供給する分散剤供給装置15とを備えている。
【0031】
水貯留タンク11には、流通型反応器14での反応に必要な蒸留水が貯留されており、原料液貯留タンク12には、流通型反応器14での反応に必要な原料液として、金属塩又は金属水酸化物を含む金属溶液が貯留されている。各タンクには、蒸留水又は金属溶液の貯留量が減って再び供給、充填するための図示しない供給配管の一端が接続されている。
【0032】
水貯留タンク11には、液底近傍に一端が位置するように加熱用ヒータ13及びポンプP1が設けられた水供給管17が配置されており、ポンプP1の駆動により管内に蒸留水を流し、ポンプP1による圧力を受けて所望の圧力に加圧されると共に、この圧力状態でさらに加熱用ヒータ13によって加熱されて高温の亜臨界水又は超臨界水が生成されるようになっている。また、水供給管17の他端は、混合器20を介して供給配管19の一端と連通されている。
【0033】
原料液貯留タンク12には、液底近傍に一端が位置するようにポンプP2が設けられた原料液供給管18が配置されており、原料液供給管18の他端は混合器20を介して供給配管19の一端と連通されている。
【0034】
加熱用ヒータ13は、水供給管17内を挿通して供給された蒸留水を水の亜臨界ないし超臨界条件となる200℃以上(好ましくは350〜600℃)にまで昇温し、亜臨界水又は超臨界水(以下、熱水ともいう)を生成できる構成となっている。
ここで、ポンプP1による蒸留水への加圧は、圧力15.7MPa以上の反応帯域が形成できる範囲で任意に選択することができる。好ましくは、25〜35MPaの範囲である。
【0035】
また、供給配管19は、一端が接続する混合器20を介して水供給管17及び原料液供給管18と連通されると共に、他端は流通型反応器14と接続されており、水供給管17からの熱水と原料液供給管18からの金属溶液(原料液)とを混合しながら流通型反応器14に供給できるようになっている。
【0036】
流通型反応器14には、水の亜臨界条件ないし超臨界条件となる温度200℃以上、圧力15.7MPa以上の反応帯域で反応を行なうことができる反応室が設けられており、供給配管19の他端はこの反応室と連通するように接続され、供給配管19を介して熱水と金属溶液とがともに反応室内に供給される構成となっている。この流通型反応器14の少なくとも反応室は、水の亜臨界条件ないし超臨界条件を保持できる保温機能を有しており、金属酸化物の微粒子顔料は熱水が供給された時点で既に達している水の亜臨界条件ないし超臨界条件を保持することで反応生成される。
流通型反応器は、加熱用の加熱装置を備えていてもよい。
【0037】
反応室では、温度域を水の亜臨界条件ないし超臨界条件となる200℃以上とする。温度域が200℃未満であると、反応溶液が(例えばAlOOHが発生して)白濁してしまう。好ましくは、300℃以上であり、より好ましくは350℃以上であり、特に好ましくは350〜600℃である。特に温度が350〜600℃の範囲では、副生成物、例えばCo−Al複合酸化物微粒子(例:コバルトブルー)の分散液を得る場合にはAlOOH(柱状物)の生成が抑えられ、発色(着色度)の高い金属酸化物微粒子分散液を得るのに有効である。
【0038】
水の亜臨界条件ないし超臨界条件で行なう反応溶液中における、金属塩又は金属水酸化物(好ましくは、共沈後(更には水洗後)の水酸化コバルトと水酸化アルミニウム)の反応濃度が、0.02mol/l以下であるのが好ましく、0.01mol/l以下であるのがより好ましい。また、下限値は0.001mol/lである。特に反応濃度が0.02mol/l以下であると、副生成物、例えば上記のAlOOH(柱状物)の生成が抑えられ、金属酸化物微粒子分散液の発色(着色度)、透明性を高めることができる。
【0039】
流通型反応器14の供給配管19が接続された側と逆側には、反応後の反応溶液を排出するためのフィルタ21が取り付けられた溶液排出管22の一端が接続されており、流通型反応器14内で金属酸化物の微粒子が生成、分散されてなる反応溶液をそのままフィルタ21を通過させ得るようになっている。また、溶液排出管22の他端は分散剤供給装置15と接続され、この溶液排出管22によって流通型反応器14と分散剤供給装置15とは連通されている。
【0040】
フィルタ21は、反応溶液中の不純物を取り除くための濾過用フィルタであり、例えば、メンブレンフィルタを用いることができる。
【0041】
分散剤供給装置15は、溶液排出管22の排出方向におけるフィルタ21の下流に設けられており、流通型反応器14から排出されてフィルタ21を通過後の流動する反応溶液に直接分散剤の添加が行なえるようになっている。
このように、流通型反応器14で反応させて生成された、数十nmオーダーの金属酸化物微粒子の分散溶液に直接、つまり流通型反応器14から排出された分散溶液を一時的に容器に貯留することなく排出する過程で粒子形成反応に続けて分散剤の添加を行なうようにするので、排出後に凝集を起こして粒子径が肥大化してしまうのを抑えることが可能であり、数十nmオーダーのサイズで金属酸化物微粒子が安定的に均一分散されたペースト状の分散溶液(分散液)を得ることができる。
【0042】
金属酸化物微粒子分散液の製造は、上記のように構成された装置を用い、まずポンプP1を駆動して蒸留水が水貯留タンク11から加熱ヒーター13に送られて亜臨界水ないし超臨界水として供給されると共に、ポンプP2を駆動して原料液貯留タンク12から原料液が供給されると、流通型反応器14の反応室にて、水の亜臨界条件ないし超臨界条件(温度200℃以上、圧力15.7MPa以上)で反応させて粒子が形成され、粒子形成後に、この反応溶液を溶液排出管22を流通させているフィルタ通過後の反応溶液に追加的に分散剤を加える。このように、粒子生成後の反応溶液の排出過程で分散剤を加えるようにすることで、粒子生成後の凝集を抑えて、数nmオーダーの小分散径の金属酸化物微粒子が安定に分散された分散液が得られる。
【0043】
本発明においては、前記原料液として、金属塩又は金属水酸化物を含む液(金属溶液)を用いる。金属溶液中における金属塩又は金属水酸化物の濃度は、金属塩又は金属水酸化物の反応濃度が0.02mol/l以下となる範囲で任意に選択することができる。例えば、金属塩又は金属水酸化物の濃度は、金属溶液に対して、0.01mol/lである。
【0044】
本発明に係る金属塩としては、例えば、硫酸コバルト、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、硝酸コバルト、硝酸アルミニウム等の硝酸塩、酢酸コバルト、酢酸アルミニウム等の酢酸塩などを挙げることができ、本発明において好ましくは、硫酸塩である。
本発明に係る金属水酸化物としては、例えば、水酸化コバルト、水酸化アルミニウムなどを挙げることができる。
【0045】
前記金属水酸化物としてより好ましくは、コバルト塩及びアルミニウム塩の混合水溶液とアルカリ性物質水溶液とを混合して水酸化コバルトと水酸化アルミニウムとを共沈させてなるものである。予めコバルトとアルミニウムの水酸化物を共沈させることで、硫酸コバルト等の硫酸塩の混入を回避でき、複合酸化物の発色性、色合い、透明感の悪化を防止できる。
【0046】
コバルト塩は、例えば硫酸コバルトや硫酸コバルトなどであり、アルミニウム塩は、例えば硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどであり、共沈は、コバルト塩の少なくとも一種とアルミニウム塩の少なくとも一種とを水系溶媒に加えて混合した混合液に、アルカリ性物質を水系溶媒に溶解してなる水溶液を混合することにより、水酸化コバルト及び水酸化アルミニウムをともに沈殿させ、上澄みを除いて沈殿物を得る。
水系媒体は、水又は、水と水に相溶性のある有機溶剤との混合溶液である。
アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などから選択することができる。
【0047】
また、上記のように共沈による場合、用いたコバルト塩やアルミニウム塩あるいはアルカリ性物質に由来するイオン性物質等の不純物を除去する観点から、好ましくは共沈させて得られた水酸化コバルトと水酸化アルミニウムとを水洗する工程が設けられる。
水洗後の金属水酸化物、例えば水酸化コバルト、水酸化アルミニウムを用いた場合、未水洗の場合に比して、例えば青みの強い発色や色合いが得られ、透明性も向上する。なお、共沈した沈殿物である水酸化コバルトと水酸化アルミニウムとは、水洗によっては特に生成する粒子サイズが変化するものではない。
【0048】
水洗は、一般的な方法、例えば、限外ろ過法や遠心分離で粒子成分を金属酸化物微粒子分散液から濃縮、分離した後、再度水系溶媒を加え、濃縮、分離操作を所望の不純物濃度まで行なう等の方法により行なうことができ、水洗は少なくとも1回行なえば効果的であり、複数回行なうことでより発色や色合いの良好な金属酸化物微粒子が得られる。不純物の程度は、例えば電気伝導度を測定する等して行なえる。
【0049】
次に、粒子生成後の反応溶液の排出過程で加える分散剤について詳述する。
本発明の金属酸化物微粒子分散液の製造方法に用いる分散剤としては、特に制限はなく、顔料などの粒子の分散に用いられる分散剤として知られているもの等から選択することができるが、高分子量の分散剤を好適に用いることができる。
【0050】
高分子量の分散剤は、高分子量の重合体に、顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されている両親媒性の共重合体である。これらの共重合体は、塗料用等の樹脂組成物に対して充分な相溶性を有することから、金属酸化物の分散剤として好適であり、一般に顔料分散液の製造時に顔料分散剤として用いられているものから選択できる。
【0051】
高分子量の分散剤としては特に限定されないが、中でも、(a)主鎖及び/又は複数の側鎖に顔料親和性基を有すると共に、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造であって数平均分子量が2000〜1000000の高分子、(b)数平均分子量が2000〜1000000であって主鎖に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子、及び(c)数平均分子量が1000〜1000000であって主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子が好ましく、これらの群より一種もしくは二種以上を選択して用いることができる。
【0052】
ここで、顔料親和性基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基やフェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等を挙げることができる。
【0053】
上記の櫛形構造の高分子(a)は、顔料親和性基を有する主鎖及び/又は複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである。
【0054】
前記櫛形構造の高分子(a)において、顔料親和性基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。
なお、溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する部分であって、親水性又は疎水性の構造をいい、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。
【0055】
前記櫛形構造の高分子(a)としては、特に限定されず、例えば、特開平5−177123号公報に記載の、1個以上のポリ(カルボニル−炭素数3〜炭素数6のアルキレンオキシ)鎖を有し、これらの各鎖が3〜80個のカルボニル−炭素数3〜炭素数6のアルキレンオキシ基を有しかつアミド又は塩架橋基によってポリ(エテレンイミン)に結合されている構造のポリ(エチレンイミン)又はその酸塩からなるもの;特開昭54−37082号公報に記載の、ポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物よりなり、各ポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に少なくとも2つのポリエステル連鎖が結合されたもの;特公平7−24746号公報に記載の、末端にエポキシ基を有する高分子量のエポキシ化合物に、アミン化合物と数平均分子量300〜7000のカルボキシル基含有プレポリマーとを同時に又は任意順に反応させて得られる顔料分散剤、等を挙げることができる。
【0056】
前記櫛形構造の高分子(a)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。顔料親和性基が、2個以上であると分散安定性が良好であり、3000個以下であると粘度を抑えて良好に取り扱うことができる。より好ましくは、25〜1500個である。
また、櫛形構造の高分子(a)は、溶媒和部分を構成する側鎖が1分子中に2〜1000存在するものが好ましい。該側鎖が、2以上であると分散安定性が良好であり、1000以下であると粘度を抑えて良好に取り扱うことができる。より好ましくは、5〜500である。
【0057】
前記櫛形構造の高分子(a)の分子量としては、数平均分子量で2000〜1000000であることが好ましい。数平均分子量が、2000以上であると分散安定性が良好であり、1000000以下であると粘度を抑えて良好に取り扱うことができる。より好ましくは、4000〜500000である。
【0058】
上記の、主鎖に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子(b)は、複数の顔料親和性基が主鎖に沿って配置されているものであり、顔料親和性基は例えば主鎖にペンダントしているものである。
顔料親和部分は、顔料親和性基が1つ又は複数存在して、顔料表面に吸着するアンカーとして機能する部分をいう。
【0059】
前記高分子(b)としては、例えば、特開平4−210220号公報に記載の、ポリイソシアネートと、モノヒドロキシ化合物及びモノヒドロキシモノカルボン酸又はモノアミノモノカルボン酸化合物の混合物、並びに、少なくとも1つの塩基性環窒素とイソシアネート反応性基とを有する化合物との反応物;特開昭60−16631号公報、特開平2−612号公報、特開昭63−241018号公報に記載の、ポリウレタン/ポリウレアよりなる主鎖に複数の第3級アミノ基又は塩基性環式窒素原子を有する基がペンダントした高分子;特開平1−279919号公報に記載の、水溶性ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する立体安定化単位、構造単位及びアミノ基含有単位からなる共重合体であって、アミン基含有単量単位が第3級アミノ基若しくはその酸付加塩の基又は第4級アンモニウムの基を含有しており、該共重合体1g当たり0.025〜0.5ミリ当量のアミノ基を含有する共重合体;特開平6−100642号公報に記載の、付加重合体からなる主鎖と、少なくとも1個のC1〜C4のアルコキシポリエチレン又はポリエチレン−コプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる安定化剤単位とからなり,かつ、2500〜20000の重量平均分子量を有する両親媒性共重合体であって、主鎖は、30質量%までの非官能性構造単位と、合計で70質量%までの安定化剤単位及び官能性単位を含有しており、前記官能性単位は、置換されているか又は置換されていないスチレン含有単位、ヒドロキシル基含有単位及びカルボキシル基含有単位であり、ヒドロキシル基とガルボキシル基、ヒドロキシル基とスチレン基及びヒドロキシル基とプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基とめ比率が、それぞれ、1:0.10〜26.1;1:0.28〜25.0;1:0.80〜66.1である両親媒性高分子等を挙げることができる。
【0060】
前記高分子(b)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。顔料親和性基の数が、2個以上であると分散安定性が良好であり、3000個以下であると粘度を抑えて良好に取り扱うことができる。より好ましくは、25〜1500個である。
【0061】
前記高分子(b)の分子量としては、数平均分子量で2000〜1000000であることが好ましい。数平均分子量が、2000以上であると分散安定性が良好であり、1000000以下であると粘度を抑えて良好に取り扱うことができる。より好ましくは、4000〜500000である。
【0062】
上記の、主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子(c)は、主鎖の片末端のみに1つ又は複数の顔料親和性基からなる顔料親和部分を有しているが、顔料表面に対して充分な親和性を有するものである。
【0063】
前記直鎖状の高分子(c)としては、特に限定はなく、例えば、特開昭46−7294号公報に記載の、一方が塩基性であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4656226号明細書に記載の、Aブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子;米国特許第4032698号明細書に記載の、片末端が塩基性官能基であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4070388号明細書に記載の、片末端が酸性官能基であるA−Bブロック型高分子;特開平1−204914号公報に記載の、米国特許第4656226号明細書に記載のAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子の耐候黄変性を改良したもの等を挙げることができる。
【0064】
前記直鎖状の高分子(c)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。顔料親和性基の数が、2個以上であると分散安定性が良好であり、3000個以下であると粘度を抑えて良好に取り扱うことができる。より好ましくは、5〜1500個である。
【0065】
前記直鎖状の高分子(c)の分子量としては、数平均分子量で1000〜1000000であることが好ましい。数平均分子量が、1000以上であると分散安定性が良好であり、1000000以下であると粘度を抑えて良好に取り扱うことができる。より好ましくは、2000〜500000である。
【0066】
高分子量の分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。市販品として例えば、ソルスパース20000、ソルスパース27000、ソルスパース40000、ソルスパース41090(日本ルーブリゾール社製);ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック193(ビックケミー社製);EFKA4500、EFKA4510、EFKA4520、EFKA4530、EFKA4540、EFKA4550(EFKAケミカル社製);フローレンTG720W、フローレンTG730W、フローレンTG740W、フローレンTG745W(共栄社化学社製);ジョンクリル57、ジョンクリル60、ジョンクリル62、ジョンクリル63、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル680、ジョンクリル682、ジョンクリル683(ジョンソンポリマー社製)、等を挙げることができる。
【0067】
上記した高分子量の分散剤は、顔料親和性基が側鎖に存在し、溶媒和部分を構成する側鎖を有するクラフト構造のもの〔前記櫛形構造の高分子(a)〕、主鎖に顔料親和性基を有するもの〔前記共重合体(b)及び前記直鎖状の高分子(c)〕であるので、金属酸化物微粒子の分散性が良好であり、これらの使用により安定した金属酸化物微粒子分散液を得ることができる。
【0068】
分散剤の添加量としては、安定に分散させる点から、排出される反応溶液100質量部/分に対して、0.02〜0.2質量部/分が好ましい。
【0069】
<金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法>
本発明の金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法は、既述の本発明の金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液を濃縮して構成されたものである。濃縮により分散ペーストが得られ、この分散ペーストには、必要に応じて塗料等に用いられている成分等の他の成分を用いて構成することができる。
【0070】
濃縮は、限外ろ過法のほか、金属酸化物微粒子分散液を遠心分離して粒子成分を沈降分離した後、上澄み液を除去し、所望の濃度になるよう溶媒を加えて再分散させる方法、等によって行なえる。沈降分離させる場合には、粒子間に凝集が生じる場合があるので、限外ろ過法による方法が好ましい。
濃縮の程度は、目的等に応じて適宜選択すればよい。
【0071】
<樹脂組成物、塗料組成物>
本発明の樹脂組成物及び塗料組成物は、既述の本発明の金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液を含んでなるものである。また、本発明の塗料組成物及び樹脂組成物は、必要に応じて塗料に用いられている成分等の他の成分を更に用いて構成することができる。
【0072】
この樹脂組成物及び塗料組成物は、既述のようにして得た金属酸化物微粒子分散液を用いて構成されるので、色合いが良好で着色が濃く、しかも透明性を有し、意匠性に優れている。
【0073】
本発明の塗料組成物及び樹脂組成物では、調製の際、金属酸化物微粒子分散液を、他の塗料成分や樹脂成分と混合する前に、適当な方法により濃縮しておくことが好ましい。これより、金属酸化物微粒子分散液の使用により持ち込まれる溶媒の量を少なくすることができ、元々の塗料組成物や樹脂組成物の固形分濃度を高く保ったり、粘性変化を低減することができる。
濃縮の方法については、前記金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法において記載した方法を適用することができる。
【0074】
濃縮の過程では、除去した溶媒の代わりに所望の有機溶媒を加え、さらに濃縮操作を繰り返すことで、溶媒を所望の溶剤に置換することも可能である。また、二種以上の有機溶媒を用いて徐々に溶媒を変化させることも可能である。金属酸化物微粒子分散液を製造する過程で含まれる水を除去し、比較的低極性の有機溶媒に置換することで、幅広い有機溶剤型塗料や樹脂組成物に混合することが可能になる。
【0075】
本発明の塗料組成物、樹脂組成物において、金属酸化物微粒子分散液の使用量は、目的に応じて選択することができるが、各組成物の全質量に対して、微粒子が0.1〜50質量%となる範囲が一般的である。使用量が前記範囲内であると、塗料又は着色組成物として様々な態様に好適に用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0077】
(実施例1)
まず、水30mlに、0.32mol/lの水酸化ナトリウム水溶液20mlを加えてよく撹拌した。この液を撹拌しながら、さらに0.02mol/lの硫酸コバルト水溶液15mlと0.02mol/lの硫酸アルミニウム水溶液15mlとを混合した混合液を徐々に添加し、水酸化コバルト(nCo)と水酸化アルミニウム(nAl)とのモル比(nCo:nAl)が1:2の混合物懸濁液を得た。
【0078】
続いて、得られた混合物懸濁液を遠心分離機で沈降分離し、その上澄み液をデカンテーションで除去後、イオン交換水50mlを加えて再分散させる操作(水洗処理)を3回繰り返した。
【0079】
ここで、流通型反応器として、図1に示すように構成されたITEC社製の流通式水熱反応装置(反応後の反応溶液の排出途中で分散剤を加える連続式装置)を準備し、上記より得た水酸化コバルトと水酸化アルミニウムとのモル比(nCo:nAl)が1:2の混合物懸濁液を、この装置の原料液貯留タンク12内に収容した。なお、水貯留タンク11には、蒸留水が貯留されている。
【0080】
装置を起動すると、ポンプP1、P2が駆動して、原料液貯留タンク12内に収容されている混合物懸濁液を6ml/分にて原料液供給管18から供給配管19を経由して流通型反応器14に供給すると共に、水貯留タンク11内の蒸留水を390℃の熱水として30ml/分で供給配管19を経由して流通型反応器14の反応室に供給し、微粒子の形成反応を約10分間かけて行なった。
このとき、反応室内の反応条件は、温度:390℃、圧力:31MPaとした。
その後、微粒子を分散含有する反応溶液を流通型反応器14に接続された溶液排出管22から排出し、溶液排出管22を流しながらフィルタ21を通して濾過処理し、さらに分散剤供給装置15においてディスパービック190〔ビックケミー社製;既述の本発明に係る櫛形構造の高分子(a);分散剤〕を0.01g/分となるように添加した。添加完了後、図示しない回収容器に回収し、コバルトブルー粒子分散液(主成分CoO・nAl)を得た。
【0081】
(評価)
上記のように回収されたコバルトブルー粒子分散液の一次粒子径〔μm〕を透過型電子顕微鏡を用いて計測した。また、コバルトブルー粒子分散液中に存在する一次粒子凝集体のサイズ(二次粒子径)を動的光散乱法により計測した。結果を下記表1に示す。
【0082】
(実施例2)
実施例1において、反応温度を390℃から360℃に変更し、ディスパービック190〔櫛形構造の高分子(a)〕を、ソルスパース20000〔日本ルーブリゾール(株)製;複数の顔料親和部分を有する高分子(b)〕に代えたこと以外、実施例1と同様にして、コバルトブルー粒子分散液を得ると共に、同様の評価を行なった。
【0083】
(実施例3)
実施例1において、ディスパービック190〔櫛形構造の高分子(a)〕を、ジョンクリル〔JONCRYL 67;BASFジャパン(株)製;直鎖状の高分子(c)〕に代えたこと以外、実施例1と同様にして、コバルトブルー粒子分散液を得ると共に、同様の評価を行なった。
【0084】
(比較例1〜6)
実施例1において、反応温度、分散剤の有無及び種類、分散剤の添加形式を下記表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様にして、コバルトブルー粒子分散液を得ると共に、同様の評価を行なった。
なお、比較例3では、実施例1での分散剤供給装置15における分散剤の添加を行なわず、濾過処理後に直接、ディスパービック190〔本発明に係る櫛形構造の高分子(a);分散剤〕の5%溶液を収容しておいた回収容器に回収し、撹拌して、コバルトブルー粒子分散液を得た。
【0085】
【表1】

【0086】
前記表1に示すように、実施例では、形成粒子の凝集が抑えられ、粗大な凝集粒子サイズが小さく、一次粒子サイズが10nm以下(特に5nm付近)の微粒な粒子分散液が得られた。
これに対し、分散剤を用いなかった比較例では、凝集による粗大な二次粒子の発生が顕著であり、比較例3のように分散剤を用いたが添加方法をバッチ式とした場合でも、100nm以下の微粒な二次粒子は得られず、凝集も抑えられなかった。
【0087】
次に、以下のようにして、塗料を調製した。
固形分濃度30%の水溶性アクリルポリオール樹脂と固形分濃度90%の水溶性メラミン樹脂とを、固形分比率で7:3に混合して混合溶液とし、これに更に、実施例1、2又は3で得たコバルトブルー粒子分散液、又は比較例3のバッチ式で得たコバルトブルー粒子分散液を、それぞれ限外ろ過により2%に濃縮したものを、固形分中におけるコバルトブルーの濃度が5%となるようにそれぞれ配合して、コバルトブルーを顔料として含有する4種類の塗料を作製した。
【0088】
実施例のコバルトブルー粒子分散液を用いて作製した塗料はいずれも、比較例のコバルトブルー粒子分散液を用いた塗料に比し、青みが強く、色合い、透明性に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の金属酸化物微粒子分散液の製造方法を行なうための装置の構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0090】
11…水貯留タンク
12…原料液貯留タンク
13…加熱ヒーター
14…流通型反応器
15…分散剤供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水が供給され、水の亜臨界ないし超臨界条件となる200℃以上、圧力15.7MPa以上の反応帯域を有する流通型反応器に、金属塩又は金属水酸化物を含む液を連続的に供給すると共に、前記流通型反応器から排出された反応溶液の排出過程で分散剤を供給する金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記金属水酸化物が、コバルト塩及びアルミニウム塩の混合水溶液とアルカリ性物質水溶液とを混合して水酸化コバルトと水酸化アルミニウムとを共沈させてなることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記共沈の後、水酸化コバルトと水酸化アルミニウムとを水洗することを特徴とする請求項2に記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記分散剤が、(a)主鎖及び/又は複数の側鎖に顔料親和性基を有すると共に、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造であって数平均分子量が2000〜1000000の高分子、(b)数平均分子量が2000〜1000000であって主鎖に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子、及び(c)数平均分子量が1000〜1000000であって主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子、からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記流通型反応器における前記反応帯域の反応条件は、温度が350〜600℃であり、前記金属塩又は金属水酸化物の反応濃度が0.02mol/l以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液を濃縮する金属酸化物微粒子分散ペーストの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液と樹脂成分とを含む樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法により得られた金属酸化物微粒子分散液を含む塗料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−248136(P2008−248136A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92689(P2007−92689)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】