説明

金属酸化物粒子の製造方法

【課題】常温かつ常圧下にて、一次粒子径がナノメートルオーダであって、所望の粒子径である金属酸化物粒子を製造する。
【解決手段】常温かつ常圧下にて、金属酸化物の原料となる金属イオンとアミノアルコール類とを複数回にわたって反応させる共沈法により、金属酸化物粒子を生成する。このように金属イオンとアミノアルコール類とを反応させることで、一次粒子径がナノメートルオーダである金属酸化物粒子を製造することができ、金属イオンとアミノアルコール類を複数回に分けて反応させることにより、金属酸化物粒子の粒径を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次粒子径がナノメートルオーダである金属酸化物粒子を製造する金属酸化物粒子の製造方法に関し、このような金属酸化物粒子は、例えば、自動車排ガス用の助触媒粒子、空気質浄化用の光触媒粒子などに適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物粒子は、様々な用途に用いられており、例えば、自動車用触媒では、助触媒粒子として酸化セリウムや酸化セリウム・酸化ジルコニウム固溶体などが使われ、空気質浄化用としては、酸化チタンなどが使われている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような金属酸化物粒子の製造方法としては、固相法、液相法、気相法の様々な手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、粒子の結晶サイズすなわち一次粒子径をナノメートルオーダに微細化することで、表面積が急激に増加し、バルク体には見られない効果(ナノサイズ効果)を発現することが明らかになってきており、金属酸化物においても、ナノサイズ化することで、従来にはない高付加価値が発現する可能性があると言われている。
【特許文献1】特開2001−348223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の金属酸化物粒子の製造方法では、前駆体を高温で焼成する、高圧下で処理する等の必要があるため、粒径がナノメートルオーダの金属酸化物粒子の製造が困難であった。
【0005】
具体例をあげると、固相法では、酸化物前駆体を500℃以上で焼成することで、金属酸化物を生成するが、高温焼成する必要があるため、結晶成長し、金属酸化物の粒径はマイクロオーダとなり、ナノサイズ効果を発現するのは困難である。
【0006】
また、従来の液相法では、溶液内で金属イオンが分散した状態から反応が開始するので、固相法よりも、粒径を小さくすることは可能であるが、例えば、共沈法の場合、生成した金属酸化物粒子の粒径がマイクロオーダと大きくなってしまったり、生成した金属酸化物粒子が凝集してしまったりするため、ナノメートルオーダの金属酸化物粒子の製造が困難であった。
【0007】
一方、気相法では、最も理想的な金属酸化物ナノ粒子が作り易いが、生産性などに課題も多く、また、ナノ粒子の二次凝集化が強く、気相状態で製造したナノ粒子を例えば溶媒に分散させようとすると、二次凝集してしまうなどの課題があった。
【0008】
これら従来の工法で製造した金属酸化物粒子の二次凝集を解砕する手段もあるが、結晶成長してしまった粒子の場合、一次粒径以下には微粒化することが困難でこと、一次粒子径が小さいものでも、製造工程数が増加したり、所望の粒子径にすることが困難であったり等の問題点があるため、新たな製造方法を探索する必要があった。
【0009】
本発明は、上記事情題に鑑みてなされたものであり、金属酸化物粒子を製造するにあたって、常温かつ常圧下にて、一次粒子径がナノメートルオーダであって、所望の粒子径である金属酸化物粒子を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、常温かつ常圧下にて、金属酸化物の原料となる金属イオンとアミノアルコール類とを複数回にわたって反応させることにより、金属酸化物粒子を生成することを特徴としている。
【0011】
この発明は、本発明者の実験から得られた知見に基づいて見出されたものであり、このような金属イオンとアミノアルコール類とを反応させる方法によれば、常温かつ常圧下にて、一次粒子径がナノメートルオーダである金属酸化物粒子を製造することができる。そして、請求項1に記載の発明のように、金属イオンとアミノアルコール類を複数回にわたって反応させることにより、一度生成した金属酸化物粒子を成長させることができる。したがって、反応回数を任意に設定することで、一次粒子径が所望の大きさである金属酸化物粒子を製造することができる。
【0012】
金属イオンとアミノアルコール類とを複数回反応させる際では、具体的には、請求項2に示すように、一定の時間間隔で反応させることが好ましい。なお、請求項3に示すように、この一定の時間間隔は金属イオンが水酸化物化するのに要する時間である。この時間は具体的には5時間以上で、好ましくは24時間とすることができる。
【0013】
また、金属イオンとアミノアルコール類とを複数回反応させる方法としては、請求項4に示すように、アミノアルコール類に対して金属イオンを複数回加える方法や、請求項6に示すように、金属イオンに対してアミノアルコール類を複数回加える方法や、金属イオンとアミノアルコール類の両方を反応溶液に複数回加える方法を採用することができる。
【0014】
また、請求項4に示す方法においては、請求項5に示すように、金属イオンが存在する水溶液にアミノアルコール類を添加して水溶液のpHを8以上とした後、水溶液に対して金属イオンを1回以上投入することにより、水溶液中に金属酸化物粒子を生成する方法を採用することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態の製造方法は、共沈法の1種であり、沈殿析出法による粒子の合成を行う液相法に属する方法である。そして、この製造方法は、常温でかつ常圧での合成法であり、加熱源、温度調整を必要としない点で非常に安価な製造法である。
【0016】
具体的には、金属酸化物の原料を水溶液に溶解して、この金属酸化物の金属が水溶液中にイオン状態で存在するようにする。そして、この水溶液に対して、常温かつ常圧下にて、アミノアルコール類を添加する。これにより、金属イオンとアミノアルコール類の反応を開始させる。その後、この反応溶液に対して、金属酸化物の原料となる金属イオンを含む水溶液を1回以上投入することにより、一次粒子径がナノメートルオーダであって、所望の粒径である金属酸化物粒子を水溶液中に生成することができる。その後は、水溶液から生成した金属酸化物粒子のみを分離、洗浄し、生成した金属酸化物粒子に対して使用形態に応じた処理を施す。
【0017】
なお、本実施形態では、金属酸化物の原料となる金属イオンが存在する水溶液に対して、アミノアルコール類を添加しているが、これとは逆に、アミノアルコール類を含む水溶液に対して、金属イオンを投入しても良い。どちらの場合であっても、金属イオンとアミノアルコール類とを1回反応させた後、この反応溶液に金属イオンを1回以上投入することで、2回目以降の反応を生じさせる。
【0018】
このように、本実施形態では、アミノアルコール類に対して、金属イオンを1度に投入するのではなく、金属イオンを複数回に分割して投入することにより、金属イオンとアミノアルコール類とを複数回にわたって反応させている。
【0019】
ここで、金属酸化物の原料となる金属元素種としては、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、遷移金属類、ランタノイド金属類、典型金属類を用いることができ、水溶液中にイオン状態で溶解できる金属種であれば、金属酸化物を製造することは可能である。
【0020】
より望ましくは、Ce、Zr、Ti、Fe、Al、In、Ca、Mg、Mn、Co、Ni、La、Cu等を用いれば、容易に金属酸化物を製造することが可能である。つまり、金属酸化物粒子としては、CeO、ZrO、TiO、Fe、Al、In、CaO、MgO、MnO、CoO、NiO、Laから選ばれる1種の酸化物粒子、あるいは、2種以上の固溶酸化物粒子を製造することが可能である。
【0021】
これらについては、水溶液中に金属イオンを1種溶解させておけば、単金属酸化物が製造可能であり、金属イオンを2種以上溶解させておけば、2種以上からなる固溶体・混合体が製造できる。
【0022】
なお、遷移金属の場合、多くのイオン価数を取り得るが、多くの場合、最安定な価数を取り易く、また、出発原料である金属イオンの価数に影響されることが多い。
【0023】
また、金属イオンの原料としては、水溶液に溶解するものであれば、特に問題ないが、望ましくは、硝酸塩、水酸化物、塩化物、硫酸塩が良い。
【0024】
アミノアルコール類は、共沈剤として用いるものであり、水に溶解できるものであれば、特に問題ないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等を用いることが溶解性、粘性の面から望ましい。
【0025】
アミノアルコール類を共沈剤として用いた場合に、一次粒子径がナノメートルオーダである金属酸化物粒子を製造できる詳細なメカニズムは良くわかっていないが、次の2点が主な理由であると考えられる。
【0026】
第1に、水溶液にアミノアルコール類を添加したときの水酸化物イオンの生成スピードが適度だからである。
【0027】
ところで、水溶液に添加したときに水酸化物イオンを生成するものとしては、アミノアルコール類の他に、アンモニア水やNaOHなどの金属水酸化物がある。しかし、アンモニアでは、局所排気装置などが必要な上、アンモニアの反応スピードが速いため、生成した結晶粒子が大きくなってしまいナノメートルオーダの粒子を製造することが困難である。また、NaOHなどの金属水酸化物では、Naイオン等の金属イオンの分離が困難であり、焼成しても、金属水酸化物の金属成分が不純物金属として残存してしまうなどの問題が生じる。これに対して、アミノアルコール類を用いた場合では、金属酸化物粒子の生成後に、遠心分離や焼成等による不純物の除去が容易である。
【0028】
第2に、生成した金属酸化物の表面をアミノアルコールが被覆することで、このアミノアルコールのアミノ基が分散剤として機能するためである。これにより、生成した金属酸化物の一次粒子の凝集が抑制されていると推測される。なお、水溶液中の生成した金属酸化物の表面がアミノアルコールで被覆されていることを、本発明者のGC−MSによる分析結果より確認している。
【0029】
また、水溶液に水溶性アミン類を添加する際では、アミノアルコール類を添加した後の水溶液のpHが8以上となるようにする。これは、水溶液のpHが8よりも小さいと、水酸化物イオン濃度が低いために、金属酸化物粒子が生成しないという本発明者による実験結果に基づくものである。
【0030】
また、アミノアルコール類を添加した後の反応溶液に金属イオンを複数回投入する際では、アミノアルコール類を添加した後、所定の時間経過後に、金属イオンを投入し、先の所定時間と同じ時間経過後に、再び、金属イオンを投入する。このように、所定の時間間隔をもって反応溶液に金属イオンを複数回投入する。このようにして、金属イオンとアミノアルコール類とを複数回にわたって反応させることで、所望の粒径である金属酸化物粒子を水溶液中に生成することができる。
【0031】
ところで、本実施形態と異なり、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させて金属酸化物粒子を生成する方法では、金属イオンとアミノアルコール類とがすぐに反応して金属酸化物粒子が生成してしまうため、金属イオンとアミノアルコール類の反応量を変更しても、生成する金属酸化物粒子の数が変動するだけであり、生成する金属酸化物粒子の粒径を制御することができなかった。
【0032】
これに対して、本実施形態のように、金属イオンとアミノアルコール類とを複数回反応させた場合では、まず、金属イオンとアミノアルコールとの反応によって金属酸化物粒子が生成し、その後の金属イオンとアミノアルコールとの反応により、先に生成した金属酸化物粒子を種として、この種を成長させることができ、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させた場合と比較して、粒径が大きな金属酸化物粒子が製造できることを本発明者の実験より見出した。
【0033】
したがって、金属イオンを1回以上投入する際の投入回数、すなわち、金属イオンとアミノアルコール類との反応回数を任意に設定することで、一次粒子径が所望の大きさである金属酸化物粒子を製造することができる。
【0034】
なお、アミノアルコール類は、金属イオンを金属酸化物にするために必要であるゆえ、少なくとも、反応に用いる金属イオン全体と同等以上のモル当量であればよい。また、金属イオンを含有する水溶液を反応溶液に複数回投入する際の時間間隔は、一定であることが望ましく、さらに、金属イオンが水酸化物化するのに要する時間であることが望ましい。
【0035】
また、水溶液から生成した金属酸化物粒子のみを分離、洗浄する際では、遠心分離機等を用いて金属酸化物粒子を分離する。これにより、金属酸化物粒子生成後の水溶液中に混在する出発原料に由来する硝酸イオン、塩化物イオンなどや反応開始剤に由来する有機物等の不純物を除去する。
【0036】
また、金属酸化物粒子に対して使用形態に応じた処理として、例えば、金属酸化物粒子を乾燥粉体として使用する場合は、金属酸化物粒子を乾燥、焼成し、金属酸化物粒子をペーストとして使用する場合は、洗浄後の金属酸化物粒子を水に再分散させる。焼成する際の焼成条件は、例えば、800℃−5時間である。また、再分散させる際では、例えば、pHを1−4にコントロールし、超音波を照射することで、より効果的に、金属酸化物粒子を高分散させることが可能である。
【0037】
(他の実施形態)
第1実施形態では、アミノアルコール類に対して、金属イオンを複数回分割して投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを複数回反応させていたが、これに限らず、原料として用いる全ての金属イオンを含む水溶液に対して、アミノアルコール類を複数回に分割して投入したり、原料として用いる金属イオンとアミノアルコール類との両方を複数回に分割して反応溶液に投入したりしても良い。
【0038】
以下に、第1実施形態における実施例と比較例を記載するが、これらは一例であり、より多くの金属酸化物に適用可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0039】
ビーカを用いて、金属酸化物の原料としての硝酸アルミニウム11.25gを水1700mlに溶解させた。続いて、この水溶液を攪拌子で攪拌しながら、アミノアルコール類としてのジエタノールアミンを80ml添加し、攪拌子で24時間攪拌した。このとき、ジエタノールアミン添加後の水溶液のpHは9であった。その後、硝酸アルミニウム11.25gを溶解させた水100mlを反応溶液中へ投入し、この反応溶液を攪拌子で24時間攪拌する工程を計3回繰り返すことで、水溶液中に生成物を得た。その後、遠心分離にて、生成物を分離し、水による洗浄を3回繰り返した後に、乾燥させて、ナノメートルオーダの金属酸化物粒子を得た。
【0040】
このように、本実施例では、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後、この反応溶液に金属イオンを3回投入している。また、本実施例で用いたジエタノールアミンの量は、反応に用いたアルミニウムイオンの総モル数に対して2モル当量に相当している。また、本実施例では、24時間間隔で金属イオンとアミノアルコール類とを複数回反応させている。
【実施例2】
【0041】
硝酸アルミニウム11.25gを溶解させた水100mlを反応溶液中へ投入し、この反応溶液を攪拌子で24時間攪拌する工程の繰り返し回数を3回から2回に変更した以外は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0042】
硝酸アルミニウム11.25gを溶解させた水100mlを反応溶液中へ投入し、この反応溶液を攪拌子で24時間攪拌する工程の繰り返し回数を3回から1回に変更した以外は、実施例1と同様である。
(比較例1)
比較例1は、実施例1〜3との比較のために実施したものであり、硝酸アルミニウム11.25gを溶解させた水100mlを反応溶液中へ投入し、この反応溶液を攪拌子で24時間攪拌する工程を省略した以外は、実施例1と同様である。
【実施例4】
【0043】
用いたジエタノールアミンの量を80mlから40mlに変更した以外は、実施例1と同様である。
【実施例5】
【0044】
アミノアルコール類として、ジエタノールアミンを用いる代わりに、モノエタノールアミンを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例2)
比較例2は、実施例5との比較のために実施したものであり、アミノアルコール類として、ジエタノールアミンを用いる代わりに、モノエタノールアミンを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例6】
【0045】
アミノアルコール類として、ジエタノールアミンを用いる代わりに、トリエタノールアミンを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例3)
比較例3は、実施例6との比較のために実施したものであり、アミノアルコール類として、ジエタノールアミンを用いる代わりに、トリエタノールアミンを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例7】
【0046】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、オキシ硝酸ジルコニウムを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例4)
比較例4は、実施例7との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、オキシ硝酸ジルコニウムを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例8】
【0047】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニウムをモル比で5:5としたものを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例5)
比較例5は、実施例8との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニウムをモル比で5:5としたものを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例9】
【0048】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニウムをモル比で3:7としたものを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例6)
比較例6は、実施例9との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニウムをモル比で3:7としたものを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例10】
【0049】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニウムをモル比で7:3としたものを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例7)
比較例7は、実施例10との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニウムをモル比で7:3としたものを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例11】
【0050】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸第二鉄を用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例8)
比較例8は、実施例11との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸第二鉄を用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例12】
【0051】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸インジウムを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例9)
比較例9は、実施例12との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸インジウムを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例13】
【0052】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸チタニウムを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例10)
比較例10は、実施例13との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸チタニウムを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【実施例14】
【0053】
金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例11)
比較例11は、実施例14との比較のために実施したものであり、金属酸化物の原料として、硝酸アルミニウムの代わりに、硝酸セリウムを用いたこと以外は、比較例1と同様である。
【0054】
図1に、上記各実施例および比較例にて得られた金属酸化物の分析結果を示す。分析項目は、一般的な算出方法を用いた収率の算出、TEM観察による一次粒径の測定、XRF測定による金属元素の検出、XRD測定による結晶の同定である。
【0055】
金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入する回数が異なる実施例1〜3および比較例1では、いずれにおいても、XRF測定によりAl金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、Alに由来するものであることが確認できた。なお、XRDパターンは、ピークがブロード化しており、これは、ナノメートルオーダの粒子による影響、あるいは、結晶化が完全でないためであると考えられる。
【0056】
さらに、TEM観察による金属酸化物の一次粒径の測定結果については、実施例1では15〜20nm程度であり、実施例2では10〜15nm程度であり、実施例3では5〜10nm程度であり、比較例1では5nm程度であったことから、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入する回数が多くなるにつれて、生成する金属酸化物の粒子径が大きくなっていることが確認できた。すなわち、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入する回数を設定することで、ナノメートルオーダ内であって、所望の粒子径である金属酸化物粒子を製造できることが確認できた。
【0057】
また、反応に用いるアミノアルコール類の量が実施例1と異なる実施例4では、実施例1と同様に、XRF測定によりAl金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、Alに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は20nm程度であったことから、実施例1に対して、反応に用いる金属イオンの量はそのままで、実施例1よりもアミノアルコール類の添加量を減らしても、生成する金属酸化物粒子の粒子径は変わらないことが確認できた。
【0058】
また、実施例5および比較例2においても、実施例1と同様に、XRF測定によりAl金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、Alに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は、実施例5では20nm程度であり、比較例2では5nmであったことから、アミノアルコール類としてモノエタノールアミンを用いた場合であっても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0059】
また、実施例6および比較例3においても、実施例1と同様に、XRF測定によりAl金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、Alに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は、実施例6では20nm程度であり、比較例3では5nmであったことから、アミノアルコール類としてトリエタノールアミンを用いた場合であっても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0060】
また、実施例7および比較例4では、XRF測定によりZr金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、ZrOに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は、実施例7では20nm程度であり、比較例4では4nmであったことから、金属酸化物粒子としてZrOを製造する場合であっても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0061】
また、実施例8〜10では、CeO2・ZrO2固溶体について、配合比を変化させた場合について示したが、いずれの場合においても、XRF測定結果より、仕込値に近い配合比で粒子が作製できていることが確認され、XRD測定では、単独酸化物ピークは検出されず、固溶体に由来するピークのみが検出され、目的とする粒子が作製されていることを確認した。さらに、実施例8、実施例9、実施例10は、それぞれ、比較例5、比較例6、比較例7よりもTEM観察にて測定した一次粒径が大きくなっており、CeO2・ZrO2固溶体を製造する場合においても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0062】
また、実施例11および比較例8では、XRF測定によりFe金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、Feに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は、実施例11では25nm程度であり、比較例8では5nmであったことから、金属酸化物粒子としてFeを製造する場合であっても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0063】
また、実施例12および比較例9では、XRF測定によりIn金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、Inに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は、実施例12では25nm程度であり、比較例9では5nmであったことから、金属酸化物粒子としてInを製造する場合であっても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0064】
また、実施例13および比較例10では、XRF測定によりTi金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、TiOに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は、実施例13では20nm程度であり、比較例10では4nmであったことから、金属酸化物粒子としてTiOを製造する場合であっても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0065】
また、実施例14および比較例11では、XRF測定によりCe金属が検出されるとともに、XRD測定により得られた結晶パターンが、CeOに由来するものであることが確認でき、TEM観察による一次粒径の測定結果は、実施例14では15−20nm程度であり、比較例111では3−4nmであったことから、金属酸化物粒子としてCeOを製造する場合であっても、実施例1と同様に、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入することで、金属イオンとアミノアルコール類とを1回のみ反応させる場合と比較して、生成する金属酸化物の粒子径をナノメートルオーダ内で大きくできることが確認できた。
【0066】
また、いずれの実施例においても、収率も比較的良好であり、一次粒径がナノメートルオーダの金属酸化物粒子が、常温常圧で可能であることを示している。
【0067】
以上の結果から、従来の高温焼成などの工程を行わなくても、ナノメートルオーダの金属酸化物粒子が製造でき、さらに、金属イオンとアミノアルコール類とを反応させた後の反応溶液に金属イオンを投入する回数を任意に設定することで、ナノメートルオーダ内であって、所望の粒子径である金属酸化物粒子を製造できることが確認できた。
【0068】
なお、上記実施例では、金属イオンの投入間隔を24時間としていたが、5時間以上であれば、それぞれ所望の粒子径の金属酸化物粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1〜14および比較例1〜11にて製造された金属酸化物粒子の分析結果を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相法によって、一次粒子径がナノメートルオーダである金属酸化物粒子を製造する金属酸化物粒子の製造方法であって、
常温かつ常圧下にて、前記金属酸化物の原料となる金属イオンとアミノアルコール類とを複数回にわたって反応させることにより、前記金属酸化物粒子を生成することを特徴とする金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記金属イオンと前記アミノアルコール類とを複数回反応させる際では、一定の時間間隔で反応させることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記一定の時間間隔は、前記金属イオンが水酸化物化するのに要する時間であることを特徴する請求項2に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記アミノアルコール類に対して前記金属イオンを複数回加えることにより、前記金属酸化物粒子を生成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記金属イオンが存在する水溶液に前記アミノアルコール類を添加して前記水溶液のpHを8以上とした後、前記水溶液に対して前記金属イオンを1回以上投入することにより、前記水溶液中に前記金属酸化物粒子を生成することを特徴とする請求項4に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項6】
前記金属イオンに対して前記アミノアルコール類を複数回加えることにより、前記金属酸化物粒子を生成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の金属酸化物粒子の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2009−155123(P2009−155123A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331937(P2007−331937)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】