説明

金微粒子被覆体とその製造方法、およびその用途

【課題】ポリエチレングリコール(PEG)を側鎖にグラフトしたポリマーによって被覆されており、水中や血液中での分散安定性に優れており、生体に対して安全な金ナノロッド被覆体とその製造方法、用途を提供する。
【解決手段】ロッド状の金微粒子がポリマーの多層膜によって被覆されており、該ポリマー多層膜の最表面層を形成するポリマーにポリエチレングリコールが結合していることを特徴とし、好ましくは、ポリマー多層膜において、ポリエチレングリコール(PEG)が結合している最表面層ポリマーが下層のポリマーと複数の架橋点でアミド結合している金微粒子被覆体と、その製造方法および用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)を側鎖にグラフトしたポリマーによって被覆されているロッド状の金微粒子被覆体とその製造方法、およびその用途に関する。本発明の金微粒子はナノサイズのロッド状微粒子(金ナノロッド)であり、本発明の金微粒子被覆体は金ナノロッド被覆体である。
【0002】
本発明は、より具体的には、PEGをグラフトしたポリマーを微粒子表面のポリマーと化学結合させることによって金微粒子の分散安定性を高めた金ナノロッド被覆体とその用途に関する。本発明の技術は、水中や血液中での金ナノロッドの分散安定性を高める方法として有用であり、金ナノロッドを生体内へ投与しバイオマーカーとして利用できるため生体内の近赤外イメージングが可能である。
【背景技術】
【0003】
溶媒中に分散した金属微粒子に光を照射すると局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon resonance:LSPR)と呼ばれる共鳴吸収現象が生じる。この吸収現象は金属の種類と形状、そして金属微粒子周囲における媒体の屈折率によって吸収波長が決定される。例えば、球状の金微粒子が水に分散した場合は530nm付近に吸収域を持ち、金微粒子の形状を短軸10nm程度のロッド状(金ナノロッド)にすると、ロッドの短軸に起因する530nm付近の吸収の他に、ロッドの長軸に起因する長波長側の吸収を有することが知られている(非特許文献1)。この吸収波長については、ロッドの長軸長さ、短軸長さの数値に基づいた吸収波長の理論計算が可能である。
【0004】
なお、ロッド状とは、非特許文献1に記載されているように、形状が円柱状ないし棒状であって、その長さが短い方向を短軸と云い、長い方向を長軸と云う。ナノサイズ(数nm〜数百nm)のロッド状の金微粒子を金ナノロッドと云う。非特許文献2に記載されているように、金ナノロッドは表面には異なる結晶面が存在しており、単純な円柱ではなく多面体構造である。
【0005】
これらの金属微粒子分散液は、低分子化合物や高分子化合物を保護剤として金属微粒子表面に吸着ないし結合させることによって、金属微粒子が凝集することなく安定に溶媒に分散させることができる。特に金ナノロッドは、形状の変化や凝集状態の変化、金ナノロッド周辺の環境によって分光特性が変化する特異な金微粒子であり(非特許文献3〜6)、近赤外光をプローブとして用いる新しい分光分析の材料として可能性がある。
【0006】
金ナノロッドはアスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)が1より大きいロッド状のナノサイズの金微粒子であり、例えば、カチオン性界面活性剤である第4級アンモニウム塩のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)に溶解した水中で合成され、CTAB水溶液中の金イオンを化学還元、電気還元、光還元などによって合成することが可能であり、合成した金ナノロッドはCTABの保護作用によって水中で安定に分散している(特許文献1〜4、非特許文献7)。
【0007】
金ナノロッドの表面処理方法として、近赤外域にプラズモン吸収のピークトップを有する金ナノロッドについて、CTABを除去しつつ、フォスファチジルコリン(PC)を金ナノロッドへ吸着させ、CTABの細胞毒性を低減させる方法が報告されており、CTABの低減とPCの吸着をゼータ電位の変化として測定している(非特許文献8)。また、金ナノロッド水分散液中の過剰なCTABを除去しておき、α−メトキシ−ω−メルカプトポリエチレングリコール(mPEG-SH)を表面修飾して生体内での分散安定性を高める技術(非特許文献9)が報告されている。
【0008】
近年、窒素や硫黄を吸着基とする分散剤を、水中で合成した金ナノロッドに表面処理して有機溶媒中へ安定に抽出させる方法が報告されている(特許文献5、6)。さらに、保護鎖としてPEGを共有結合したポリリジン骨格中のアミノ基に近赤外域(650nm〜1300nm)に吸収を有する蛍光色素を共有結合させた近赤外蛍光プローブを用いた生体内の近赤外イメージング技術が報告されている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−292627号公報
【特許文献2】特開2005−97718号公報
【特許文献3】特開2006−169544号公報
【特許文献4】特開2006−118036号公報
【特許文献5】特開2005−270957号公報
【特許文献6】特開2006−176876号公報
【特許文献7】特許公表2002−514610号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S. Link, M. B. Mohamed, M. A. El-Sayed, J. Phys. Chem. B, 103, p3073(1999)
【非特許文献2】Z. L. Wang, M. B. Mohamed, S. Link, M. A. El-Sayed, Surface Science, 440, L809(1999)
【非特許文献3】K. Honda, Y. Niidome, N. Nakashima, H. Kawazumi, S. Yamada, Chem. Lett., 35, p854(2006)
【非特許文献4】Y. Niidome, H. Takahashi, S. Urakawa, K. Nishioka, S. Yamada, Chem. Lett., 33, p454(2004)
【非特許文献5】S. Link, M. A. El-Sayed, J. Phys. Chem. B, 109, p10531(2005)
【非特許文献6】P. K. Jain, S. Eustis, M. A. El-Sayed, J. Phys. Chem. B, 110, p18243 (2006)
【非特許文献7】Y. Niidome, H. Kawasaki, S. Yamada, S. Chem. Commun, 18, p2376 (2003)
【非特許文献8】H. Takahashi, Y. Niidome, T. Niidome, K. Kaneko, H. Kawasaki, S.Yamada, Langmuir, 22, p2 (2006)
【非特許文献9】T. Niidome, M. Yamagata, Y. Okamoto, Y. Akiyama, H. Takahashi, T. Kawano, Y. Katayama, Y. Niidome, J. Control. Release, 114, p343 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜4や非特許文献7などに記載されている方法で合成された金ナノロッドはCTABに被覆されて水中に分散しているが、CTABは高い細胞毒性を示すため、血液中への投与などの生体内への適用はできない。特許文献5〜6に記載されている方法では、窒素や硫黄で吸着する分散剤を用いて有機溶媒に金ナノロッドを安定に分散させることが可能であるが、血液中での分散安定性は検討されていない。特許文献7に記載されているものは、蛍光色素による生体内の近赤外イメージングを目的とした蛍光プローブであるが、蛍光色素をバイオマーカーに使用した場合は、得られる光信号の定量性に欠けており、再現性の得られる測定結果が得られない。
【0012】
非特許文献8には、CTABを低減してPCで修飾した金ナノロッドは細胞毒性を低減することが報告されているが、水中や血液中の分散安定性を高めたものではなく、ゼータ電位はCTABの除去割合を指標として数値化したものである。非特許文献9には、PEG修飾による金ナノロッドは血液中で分散安定性が高まることが報告されているが、PEG鎖の金ナノロッドからの脱離により分散安定性が低下する問題については、解決方法が開示されておらず、さらにPEGには反応性の官能基がないため、他の化合物を導入することはできない。
【0013】
本発明は、金ナノロッドについて、従来の上記技術では知られていない新規技術を提供する。具体的には、水中や血液中での分散安定性を高めた生体に対して安全な金ナノロッド被覆体とその製造方法、およびその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の構成を有する金微粒子被覆体に関する。
〔1〕ロッド状の金微粒子がポリマーの多層膜によって被覆されており、該ポリマー多層膜の最表面層を形成するポリマーにポリエチレングリコールが結合していることを特徴とする金微粒子被覆体。
〔2〕ポリマー多層膜において、ポリエチレングリコール(PEG)が結合している最表面層ポリマーが下層のポリマーと複数の架橋点でアミド結合している上記[1]に記載する金微粒子被覆体。
〔3〕ポリマー多層膜が、金微粒子を被覆するポリスチレンスルホネート層(PSS)、これを被覆するポリアリルアミンハイドロクロライド層(PAH)、これを被覆するポリ−N−アクリロキシスクシンイミド層(PNAS)によって形成されており、該PNASにポリエチレングリコール(PEG)が結合している上記[1]または上記[2]に記載する金微粒子被覆体。
〔4〕ポリマー多層膜の最表面層ポリマーに、官能基を有するポリエチレングリコール(PEG)がグラフト重合している上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する金微粒子被覆体。
〔5〕ポリエチレングリコール(PEG)の片末端がメトキシ基である上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する金微粒子被覆体。
〔6〕ポリエチレングリコール(PEG)の片末端がカルボキシル基である上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する金微粒子被覆体。
【0015】
また、本発明は、以下の構成を有する金微粒子被覆体の製造およびその用途に関する。
〔7〕ポリスチレンスルホネート層(PSS)と該PSS層を被覆するポリアリルアミンハイドロクロライド層(PAH)を有するロッド状金微粒子と、ポリ−N−アクリロキシスクシンイミド(PNAS)にポリエチレングリコール(PEG)をグラフトしたポリマーとを混合して、該PNASのアミノ基と上記PAHのスクシンイミド基とを反応させてアミド結合を形成することによって、金微粒子表面にPSS層/PAH層/PNAS層/PEGからなる被覆層を形成することを特徴とする金微粒子被覆体の製造方法。
〔8〕CTABが表面修飾した金ナノロッド水分散液とポリスチレンスルホネート(PSS)水溶液とを混合して金ナノロッド表面にPSSが吸着したPSS被覆体を形成し、次いで、このPSS被覆体の水分散液とポリアリルアミンハイドロクロライド(PAH)水溶液と混合してPSS表面にPAHが吸着したPAH被覆体を形成し、一方、ポリ−N−アクリロキシスクシンイミドにポリエチレングリコール(PEG)をグラフトしたポリマー(PEG-g-PNAS)を調製し、このPEG-g-PNAS水溶液と上記PAH被覆体水分散液とを混合し、該PNASのアミノ基と該PAHのスクシンイミド基との反応によるアミド結合を形成させることによって、金ナノロッド表面にPSS層/PAH層/PNAS層/PEGからなる被覆層を形成する請求項7に記載する金微粒子被覆体の製造方法。
〔9〕上記[1]〜上記[6]の何れかに記載する金微粒子被覆体をバイオマーカーとして使用する生体内の近赤外イメージング。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金微粒子被覆体は、金微粒子がポリマーの多層膜によって被覆されているので該ポリマー層が剥離し難く安定である。好ましくは、表面のポリマー層が下層のポリマー層と複数の架橋点でアミド結合しているので、金微粒子を被覆しているポリマー多層膜が剥離し難く安定である。
【0017】
本発明の金微粒子被覆体は、好ましくは、ポリマー多層膜が、金微粒子を被覆するポリスチレンスルホネート層(PSS)、これを被覆するポリアリルアミンハイドロクロライド層(PAH)、これを被覆するポリ−N−アクリロキシスクシンイミド層(PNAS)によって形成されており、PAH層とPNAS層は複数の架橋点でアミド結合しているので、結合が強固であり、該ポリマー層が剥離し難く安定である。
【0018】
また、本発明の金微粒子被覆体は、ポリマー多層膜の最表面層を形成するポリマーにポリエチレングリコール(PEG)が結合しているので、水中や血液中での分散安定性が高い。好ましくは、PEGは最表面層ポリマーの側鎖にグラフト重合されているので、結合が強固であり離脱し難く、安定である。さらに好ましくは、PEGは予め最表面層ポリマーに結合してから、金ナノロッド表面のポリマーと結合させればよいので、金ナノロッドに修飾するPEGの量や鎖長を任意に調整することが可能である。
【0019】
本発明の金微粒子被覆体は、例えば、カルボキシル基などの官能基を有するPEGを用いることによって、アミノ基を有する化合物とアミド結合させて該化合物を導入することができる。例えば、アミノ基を有するペプチド、タンパク質、蛍光色素、ビオチンなどのように生体内で機能性を発現する化合物を導入することができる。
【0020】
さらに、本発明の金微粒子被覆体は、LSPRの最大吸収波長が700〜2000nmの範囲の金ナノロッドを用いれば、波長750〜1100nmの近赤外光は水の吸収による影響が少なく(Water Window)、生体にも安全な波長域であり、生体内に投与された場合、金ナノロッドをバイオマーカーとしてLSPRの分光変化を確認することで、近赤外光を用いたバイオイメージングが可能であり、近赤外分析システムを構築するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ポリマー多層膜で被覆された金ナノロッドの概念図
【図2】CTAB-NRs水分散液の吸収スペクトル図
【図3】mPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液の吸収スペクトル図
【図4】cPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液の吸収スペクトル図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、濃度の%は特に示さない限り質量%である。また、本発明明において、吸収スペクトルの変化とは、金ナノロッドの凝集に伴うLSPRの最大吸収波長の吸光度の低下や吸収スペクトル形状の変化を意味する。
【0023】
本発明の金微粒子被覆体は、ロッド状の金微粒子がポリマーの多層膜によって被覆されており、該ポリマー多層膜の最表面層を形成するポリマーにポリエチレングリコールが結合していることを特徴とする金微粒子被覆体である。
【0024】
本発明の金微粒子被覆体は、好ましくは、ポリマー多層膜において、ポリエチレングリコール(PEG)が結合している最表面層ポリマーが下層のポリマーと複数の架橋点でアミド結合しており、ポリマー多層膜の最表面層ポリマーに官能基を有するポリエチレングリコール(PEG)がグラフト重合している金微粒子被覆体である。
【0025】
本発明の金微粒子被覆体は、ポリスチレンスルホネート層(PSS)と該PSS層を被覆するポリアリルアミンハイドロクロライド層(PAH)を有するロッド状金微粒子と、ポリ−N−アクリロキシスクシンイミド(PNAS)にポリエチレングリコール(PEG)をグラフトしたポリマーとを混合して、該PNASのアミノ基と上記PAHのスクシンイミド基とを反応させてアミド結合を形成することによって、金微粒子表面にPSS層/PAH層/PNAS層/PEGからなる被覆層を形成することによって製造することができる。
【0026】
本発明の金微粒子被覆体は、より具体的には、CTABが表面修飾した金ナノロッド水分散液とポリスチレンスルホネート(PSS)水溶液とを混合して金ナノロッド表面にPSSが吸着したPSS被覆体を形成し、次いで、このPSS被覆体の水分散液とポリアリルアミンハイドロクロライド(PAH)水溶液と混合してPSS表面にPAHが吸着したPAH被覆体を形成し、一方、ポリ−N−アクリロキシスクシンイミドにポリエチレングリコール(PEG)をグラフトしたポリマー(PEG-g-PNAS)を調製し、このPEG-g-PNAS水溶液と上記PAH被覆体水分散液とを混合し、該PNASのアミノ基と該PAHのスクシンイミド基との反応によるアミド結合を形成させ、金ナノロッド表面にPSS層/PAH層/PNAS層/PEGからなる被覆層を形成することによって製造することができる。
【0027】
〔金ナノロッド〕
本発明に用いる金微粒子は、金ナノロッドであり、好ましくは、長軸長さが5〜100nm、短軸長さが3〜30nmであって、アスペクト比が2〜12であり、LSPRの最大吸収波長が700〜2000nmの金ナノロッドであり、長軸長さが20〜80nm、短軸長さが4〜10nmの粒子径を有するものが分散安定性の面からより好ましい。長軸長さが100nmより長いと、金ナノロッドが自重で沈降しやすくなる傾向があるため、分散媒中での分散安定性が失われる。また、金ナノロッドのアスペクト比は、生体内に投与した場合でも、光照射や検出が可能な近赤外域にLSPRの最大吸収波長を有するものが好ましいので、上記アスペクト比2〜12が良い。
【0028】
上記金ナノロッドは次式[I]で示される4級アンモニウム塩が溶解した水溶液中で金イ
オンを還元することによって合成することができる。例えば、n=15のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を使用することによって、CTABが表面に吸着した金ナノロッドを得ることができる。合成した段階での金ナノロッドはCTABが吸着した状態で水中に安定に分散している。
【0029】
CH3(CH2)n+(CH3)3Br- (nは1〜15の整数) …[I]
【0030】
金ナノロッド水分散液は、式[I]に示される水中に存在する余剰の界面活性剤を除去し
てから表面処理に使用するとよい。具体的には、金ナノロッド水分散液を遠心分離して金ナノロッドを遠沈管の底に沈降させ、界面活性剤を含む上澄みを除去する。沈降した金ナノロッドは水を添加して再分散させる。この操作を1〜3回繰り返すことによって余剰な界面活性剤を除去することができる。なお、界面活性剤を過剰に除去すると金ナノロッドが凝集して水に再分散しなくなる。
【0031】
〔PEGグラフトポリマー〕
金ナノロッドに表面修飾するPEGとしては、片方の末端がメトキシ基、またはカルボキシル基であり、もう一方の末端がアミノ基を有する重量平均分子量500〜50000のPEG(PEG-NH2)が好ましく、重量平均分子量1000〜20000のPEG-NH2がより好ましい。このPEG-NH2の重量平均分子量が50000より大きい場合には血液中での分散安定性に変化はなくコスト的に不利である。また、PEG-NH2の重量平均分子量が500より小さい場合には血液中での分散安定性が低くなり、金ナノロッドが凝集する可能性が高くなる。このPEG-NH2はポリマー多層膜の最表面層を形成するポリマーに予めグラフトしておけばよい。
【0032】
PEGをグラフトするポリマーとしては、PEG末端のアミノ基、および金ナノロッドに表面処理されているポリマー中のアミノ基と化学反応して、生体中で安定なアミド結合が得られる官能基を有するポリマーを選択すればよい。このようなポリマーとしては、好ましくは、アミノ基と反応してアミドを形成するスクシンイミド基を有するポリ−N−アクリロキシスクシンイミド(Poly-N-acryloxysuccinimide;PNAS)を用いればよい。
【0033】
上記PNASの重量平均分子量は1000〜100000が適当であり、10000〜50000が好ましい。重量平均分子量が100000より大きい場合、PEG末端のアミノ基、および金ナノロッドに表面処理されているポリマー中のアミノ基と反応するスクシンイミド基は過剰に存在するためコスト的に不利である。また、重量平均分子量が1000より小さい場合、PNAS分子中のスクシンイミド基数が不足し、上記PEG-NH2や金ナノロッドに表面処理されているポリマーとの反応が不完全となりPEGの脱離傾向が高まるため、血中で金ナノロッドが凝集を起こす可能性が高くなる。
【0034】
PEG-NH2は、あらかじめPNASと反応させてグラフトしておくとよい(PEG-g-PNAS)。PEGをグラフとしたPNAS(PEG-g-PNAS)は、金ナノロッドに表面処理されているポリマーと反応させるため、未反応のスクシンイミド基が残るように調整する。具体的には、PNAS中のスクシンイミド基の2〜80%、好ましくは5〜80%をPEG-NH2と反応させればよい。PEGをPNASにグラフトさせておくことによって、金ナノロッドに導入するPEGの量や鎖長を任意に調整することが可能である。
【0035】
〔金ナノロッドの表面処理〕
余剰のCTABを除去した金ナノロッド水分散液に、アニオン性高分子であるポリスチレンスルホネート(PSS)を添加して攪拌すると、負の電荷をもつPSSは正電荷のCTABで被覆されている金ナノロッド表面に静電相互作用で吸着し、PSSで被覆された金ナノロッドが得られる(PSS-NRs)。
【0036】
PSSは重量平均分子量が1000以上のものが好ましい。特に重量平均分子量が10000〜100000の範囲が好ましく、この重量平均分子量のPSSは金ナノロッド表面に残存するCTABの正電荷と過不足なく吸着することが可能である。重量平均分子量が1000より小さいと、金ナノロッド表面に残存するCTABの正電荷に対するPSSの負電荷点が不足し、金ナノロッドの分散安定性が失われ、金ナノロッドが凝集する可能性が高くなる。
【0037】
PSSの使用量は、余剰のCTABを除去した金含有率3.0mMの金ナノロッド水分散液0.5mlに対して、PSSを0.1〜10mg添加して攪拌すればよく、好ましくはPSSを1〜5mg添加すればよい。PSSの添加量が0.1mgより少ないと金ナノロッド表面への処理量が不足して金ナノロッドの凝集が発生する。一方、PSSの添加量が10mgより多いと金ナノロッドに吸着しないPSSの余剰分が発生しコスト的に不利である。
【0038】
PSSで被覆された金ナノロッド(PSS-NRs)は負に荷電しており、静電相互作用によってカチオン性高分子をPSS-NRsに被覆することができる(PAH-PSS-NRs)。カチオン性高分子としてはポリアリルアミンハイドロクロライド(PAH)を使用するとよい。具体的には、PSSで被覆された金ナノロッド(PSS-NRs)水分散液とPHA水溶液とを混合して攪拌することによって、PSS-NRs表面にPAHが静電相互作用によって吸着し、PAHで被覆された金ナノロッド(PAH-PSS-NRs)が得られる。
【0039】
PAHは重量平均分子量が1000以上のものが好ましい。特に重量平均分子量が10000〜100000のPAHが好ましく、このPAHは金ナノロッド表面のPSSの負電荷と過不足なく吸着することが可能である。重量平均分子量が1000より小さいと、金ナノロッド表面のPSSの負電荷に対するPAHの正電荷点が不足し、金ナノロッドの分散安定性が失われ、金ナノロッドが凝集する可能性が高くなるばかりでなく、PEG-g-PNASのスクシンイミド基との反応が不完全となる。
【0040】
PAHの使用量は、金含有率3.0mMのPSS-NRs分散液0.5mlに対して、PAHを0.1〜10mg添加して攪拌すればよく、好ましくはPAHを1〜5mg添加すればよい。PAHの添加量が0.1mgより少ないとPSS表面への処理量が不足して金ナノロッドの凝集が発生する。一方、PAHの添加量が10mgより多いとPSSに吸着しないPAHやPEG-g-PNASのスクシンイミド基と吸着しないPAHが発生し、コスト的に不利である。
【0041】
〔金ナノロッドへのPEG鎖導入〕
本発明の金微粒子被覆体(PEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)は、PEG-g-PNASに残存しているスクシンイミド基と、PAHで被覆された金ナノロッド(PAH-PSS-NRs)のアミノ基とを反応させてアミド結合を形成することによって得られる。具体的には、PAH-PSS-NRs水分散液とPEG-g-PNAS水溶液とを混合して攪拌し、炭酸水素ナトリウムなどpH=8.5程度の緩衝液を添加してPNASのスクシンイミド基とPAHのアミノ基とを反応させ、アミド結合を形成することによって本発明の金微粒子被覆体(PEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)を得ることができる。
【0042】
PEG-g-PNASの使用量は、金含有率3.0mMのPAH-PSS-NRs水分散液0.25mlに対して、PEG-g-PNASを0.1〜1000mg添加して攪拌すればよく、好ましくはPEG-g-PNASを1〜200mg添加すればよい。PEG-g-PNASの添加量が0.1mgより少ないとPAH-PSS-NRs表面への処理量が不足し金ナノロッドの凝集が発生する。一方、PEG-g-PNASの添加量が1000mgより多いとPAH-PSS-NRsに吸着しないPEG-g-PNASが発生しコスト的に不利である。
【0043】
本発明の金微粒子被覆体(PEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)は、PEG鎖が分散剤として機能するため生体内における金ナノロッドの分散安定性が得られる。さらに、PEG、PNAS、PAH間では生体安定性の高いアミド結合で多点結合しており、即ち、複数の架橋点でアミド結合しているため分解や脱着によるPEG鎖の解離が起こり難く、高い分散安定性が得られる。
【0044】
本発明の金微粒子被覆体(PEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)は、PEGの片末端のメトキシ基、またはカルボキシル基によって、表面電荷(ゼータ電位)を調整することが可能である。メトキシ基と比較してカルボキシル基を用いた場合、金微粒子被覆体のゼータ電位は低くなる。
【0045】
金微粒子被覆体(PEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)のゼータ電位は、+25mV以下が適当であり、+20mV以下が好ましい。ゼータ電位が+25mVより大きいと、血液中での分散安定性が低下し、凝集を起こす傾向が高くなる。
【0046】
本発明の金微粒子被覆体(PEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)は、PEGの片末端がカルボキシル基の場合、アミノ基を有する化合物とアミド結合を形成することによって該化合物を導入することができる。例えば、アミノ基を有するペプチド、タンパク質、蛍光色素、ビオチンなどのような生体内で機能性を発現する化合物を導入することができる。
【0047】
〔用途〕
本発明の金微粒子被覆体は、好ましくは、700〜2000nmの近赤外域にLSPRの吸収ピークを有する金ナノロッドが用いられ、これは血液中で安定に分散するので、バイオマーカーとして使用することができる。特に波長800nm〜1200nmの近赤外光は水の吸収による影響が少なく(Near Infrared Window)、生体にも安全な波長域であるので、生体外部から近赤外光を照射することによって、生体内に投与した金ナノロッドの分散状態や凝集状態による分光特性の変化を安全に測定することが可能であり、近赤外光分析システムやバイオイメージングシステムなどを構築することができる。近赤外光としては、近赤外線を発する近赤外線レーザー(CW、半導体レーザー)などを利用すればよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。また、比較例を示す。なお、以下の実施例において、金ナノロッドは特許文献3に示されるCTABを保護剤として塩化金酸を水中で還元して合成されたものであり、長軸40nm、短軸10nm、アスペクト比4のロッド状の金微粒子であり、主に900nm付近の波長域におけるLSPRの吸収波長シフトを測定しているが、金ナノロッドのアスペクト比を変更することによって700〜2000nmまでの波長域についても同様の吸収波長のシフトを測定することができる。また、実施例では水中での保存安定性を確認しているが、血中においても同等の保存安定性が得られる。また分光特性(吸光度)は日本分光株式会社製品(製品名V-670)を用いて測定した。ゼータ電位はMalverne社製測定器(Zeta-sizer NanoZS)を用いて測定した。なお、各例の相対遠心加速度は遠心加速度を地球の重力加速度で除した速度である。
【0049】
〔実施例1〕
以下の手順で、ポリマー多層膜で被覆した金微粒子を調製した。ポリマー多層膜で被覆された金ナノロッドの概念図を図1に示す。
【0050】
〔金ナノロッド水分散液〕
CTABで修飾された金ナノロッド水分散液を次の手順で準備した。
400mMのCTAB水溶液中で合成された金ナノロッド水分散液(金原子濃度1.5mM)1mlを遠沈管に入れ、14000(×g)の相対遠心加速度で10分間遠心分離して金ナノロッドを遠沈管の底に沈降させた。上澄み液を除去し、沈降した金ナノロッドを1mlの水で再分散させた。さらに再分散させた金ナノロッドを14000(×g)で10分間遠心分離して金ナノロッドを沈降させ、上澄み液を除去した。沈降した金ナノロッドを0.5mlの水で再分散し、金ナノロッド水分散液0.5ml(CTAB-NRs、金原子濃度3.0mM)を得た。金ナノロッド水分散液中の金原子濃度は吸光度から求めた。CTAB-NRs水分散液のゼータ電位を測定したところ、+40mVであった。CTAB-NRs水分散液の吸収スペクトルを図2に示す。
【0051】
〔PNASの調製〕
N−アクリロキシスクシンイミド(N-acryloxysuccinimide;NAS)1503.5mgとアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile;AIBN)75mg、そしてN,N−ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide;DMF)10mlを混合し、60℃で1時間反応させて、ポリ−N−アクリロキシスクシンイミド(PNAS)を生成させた。反応終了後、アセトン沈殿を行い、得られたPNASを回収して真空乾燥した。得られたPNAS(重量平均分子量30765)の収率は60%であった。
【0052】
〔mPEG-g-PNASの調製〕
片末端がメトキシ基を有するPEG-NH2(mPEG-NH2、重量平均分子量5000)をPNASに導入した。PNASのスクシンイミド基のモル数:mPEG-NH2のアミノ基のモル数=4:1になるように、PNASを200mg、mPEG-NH2を1558mg、DMFを20ml混合し、3日間攪拌して反応させた。
【0053】
〔PSS-NRsの調製〕
金原子濃度3.0mMのCTAB-NRs水分散液0.5mlと、PSS(重量平均分子量70,000)を6mM塩化ナトリウム水溶液で溶解したPSS水溶液(PSS:2mg/ml)0.5mlを混合し、金ナノロッド表面にPSSを静電相互作用で吸着させた(PSS-NRs)。得られたPSS-NRs水分散液1mlを遠沈管に入れ、8000(×g)の相対遠心加速度で10分間遠心分離してPSS-NRsを遠沈管の底に沈降させた。上澄み液を除去し、沈降したPSS-NRsは1mlの水で再分散させた。さらに再分散させた金ナノロッドを8000(×g)で10分間遠心分離して金ナノロッドを沈降させ、上澄み液を除去した。沈降したPSS-NRsは0.5mlの水で再分散して余剰のPSSを除去し、PSS-NRs水分散液0.5ml(金原子濃度3.0mM)を得た。このPSS-NRs水分散液のゼータ電位を測定したところ、−38mVであった。
【0054】
〔PAH-PSS-NRsの調製〕
金原子濃度3.0mMのPSS-NRs水分散液0.5mlと、PAH(重量平均分子量15,000)を6mM塩化ナトリウム水溶液で溶解したPAH水溶液(PSS:2mg/ml)0.5mlを混合し、PSS-NRs表面にPAHを静電相互作用で吸着させた(PAH-PSS-NRs)。得られたPAH-PSS-NRs水分散液1mlを遠沈管に入れ、4000(×g)の相対遠心加速度で5分間遠心分離してPAH-PSS-NRsを遠沈管の底に沈降させた。さらに上澄み液を4000(×g)の相対遠心加速度で5分間遠心分離してPAH-PSS-NRsを遠沈管の底に沈降させた。上澄み液を除去し、沈降したPAH-PSS-NRsは0.25mlの水で再分散し、余剰のPAHを除去したPAH-PSS-NRs水分散液0.25ml(金原子濃度3.0mM)を得た。このPAH-PSS-NRs水分散液のゼータ電位を測定したところ、+43mVであった。
【0055】
〔mPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRsの調製〕
金原子濃度3.0mMのPAH-PSS-NRs水分散液0.25mlと、mPEG-g-PNAS水溶液(mPEG-g-PNAS:20mg/ml)0.25mlを混合し、3時間撹拌した。その後、0.2Mの炭酸水素ナトリウム0.5mlを混合し、12時間攪拌し、PAH-PSS-NRs表面のPAHのアミノ基とmPEG-g-PNASのスクシンイミド基を反応させ、片末端がメトキシ基のPEG鎖を導入した金ナノロッド被覆体(mPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)の水分散液1.0ml(金原子濃度3.0mM)を得た。このmPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液のゼータ電位を測定したところ、−16mVであった。このmPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液の吸収スペクトルを図3に示す。図3の吸収スペクトルは表面処理前の図2の吸収スペクトルと同様にシャープな吸収ピークを示しており、凝集せず安定に分散していることが確認された。
【0056】
〔mPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRsの水中での安定性〕
CTAB-NRs水分散液のLSPRの最大吸収波長における吸光度を100%として設定し、調製した上記mPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液の室温における経時安定性(1日〜56日経過)を調べた。この結果を表1に示した。表1に示すように、上記mPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液は経過56日目で76%以上の吸光度を示しており、安定に分散していることが確認された。
【0057】
〔実施例2〕
片末端がカルボキシル基を有するPEG-NH2(cPEG-NH2、重量平均分子量10000)をPNASに導入する以外は実施例1と同様に処理し、片末端がカルボキシル基のPEG鎖を導入した金ナノロッド被覆体(cPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)の水分散液1.0ml(金原子濃度3.0mM)を得た。このcPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液のゼータ電位を測定したところ、−24mVであった。このcPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液の吸収スペクトルを図4に示す。図4の吸収スペクトルは表面処理前の図2の吸収スペクトルと同様にシャープな吸収ピークを示しており、凝集せず安定に分散していることが確認された。
【0058】
〔cPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRsの水中での安定性〕
CTAB-NRs水分散液のLSPRの最大吸収波長における吸光度を100%として設定し、調製した上記cPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液の室温における経時安定性(1日〜56日経過)を調べた。この結果を表1に示した。表1に示すように、上記cPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs水分散液は経過56日目で80%の吸光度を示しており、安定に分散していることが確認された。
【0059】
〔比較例1〕
金原子濃度3.0mMのCTAB-NRs水分散液0.5mlと、片方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がチオール基を有するポリエチレングリコール(mPEG-SH、重量平均分子量5000)を溶解したmPEG-SH水溶液(mPEG-SH:9mg/ml)0.5mlを混合し、mPEG-SH末端のチオール基で金ナノロッド表面と結合した金ナノロッド(mPEG-NRs)を得た。このmPEG-NRs水分散液1mlを遠沈管に入れ、14000(×g)の相対遠心加速度で10分間遠心分離してmPEG-NRsを遠沈管の底に沈降させた。金ナノロッドに吸着していないmPEG-SHを含む上澄み液を除去し、沈降したmPEG-NRsを1mlの水で再分散させることによって、PNAS/PAH/PSS多層膜を有しないmPEG-NRs水分散液を得た。
【0060】
〔mPEG-NRsの水中での安定性〕
CTAB-NRs水分散液のLSPRの最大吸収波長における吸光度を100%として設定し、調製した上記mPEG-NRs水分散液の室温における経時安定性(1日〜56日経過)を調べた。この結果を表1に示した。表1に示すように、上記mPEG-NRs水分散液は経過56日目で62%の吸光度を示しており、比較的に安定に分散していることが確認されたが、本発明の金微粒子被覆体(mPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs、およびcPEG-g-PNAS/PAH/PSS/NRs)の水中での安定性よりも低い値であった。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状の金微粒子がポリマーの多層膜によって被覆されており、該ポリマー多層膜の最表面層を形成するポリマーにポリエチレングリコールが結合していることを特徴とする金微粒子被覆体。
【請求項2】
ポリマー多層膜において、ポリエチレングリコール(PEG)が結合している最表面層ポリマーが下層のポリマーと複数の架橋点でアミド結合している請求項1に記載する金微粒子被覆体。
【請求項3】
ポリマー多層膜が、金微粒子を被覆するポリスチレンスルホネート層(PSS)、これを被覆するポリアリルアミンハイドロクロライド層(PAH)、これを被覆するポリ−N−アクリロキシスクシンイミド層(PNAS)によって形成されており、該PNASにポリエチレングリコール(PEG)が結合している請求項1または請求項2に記載する金微粒子被覆体。
【請求項4】
ポリマー多層膜の最表面層ポリマーに、官能基を有するポリエチレングリコール(PEG)がグラフト重合している請求項1〜請求項3の何れかに記載する金微粒子被覆体。
【請求項5】
ポリエチレングリコール(PEG)の片末端がメトキシ基である請求項1〜請求項4の何れかに記載する金微粒子被覆体。
【請求項6】
ポリエチレングリコール(PEG)の片末端がカルボキシル基である請求項1〜請求項4の何れかに記載する金微粒子被覆体。
【請求項7】
ポリスチレンスルホネート層(PSS)と該PSS層を被覆するポリアリルアミンハイドロクロライド層(PAH)を有するロッド状金微粒子と、ポリ−N−アクリロキシスクシンイミド(PNAS)にポリエチレングリコール(PEG)をグラフトしたポリマーとを混合して、該PNASのアミノ基と上記PAHのスクシンイミド基とを反応させてアミド結合を形成することによって、金微粒子表面にPSS層/PAH層/PNAS層/PEGからなる被覆層を形成することを特徴とする金微粒子被覆体の製造方法。
【請求項8】
CTABが表面修飾した金ナノロッド水分散液とポリスチレンスルホネート(PSS)水溶液とを混合して金ナノロッド表面にPSSが吸着したPSS被覆体を形成し、次いで、このPSS被覆体の水分散液とポリアリルアミンハイドロクロライド(PAH)水溶液と混合してPSS表面にPAHが吸着したPAH被覆体を形成し、一方、ポリ−N−アクリロキシスクシンイミドにポリエチレングリコール(PEG)をグラフトしたポリマー(PEG-g-PNAS)を調製し、このPEG-g-PNAS水溶液と上記PAH被覆体水分散液とを混合し、該PNASのアミノ基と該PAHのスクシンイミド基との反応によるアミド結合を形成させることによって、金ナノロッド表面にPSS層/PAH層/PNAS層/PEGからなる被覆層を形成する請求項7に記載する金微粒子被覆体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項6の何れかに記載する金微粒子被覆体をバイオマーカーとして使用する生体内の近赤外イメージング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−63867(P2011−63867A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217241(P2009−217241)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】