説明

金網支持金具

【課題】金網の線材を傷つけることなく、金網を強固に保持することができる金網支持金具を提供する。
【解決手段】支持部11と受け部12とからなり、受け部12は側面視U字型であり、その側面視中央に押圧片13が設けられており、受け部12の正面側の壁には、螺子孔14が設けられている金網支持金具10である。金網40の線材41を受け部12の背面と押圧片13との間に落とし込んだ後、螺子孔14から螺子20をねじ込むと、螺子20の先端が押圧片13を後方に倒し、押圧片13が線材41を挟み込むので、金網40を取り付けることができる。押圧片13は線材41に対して斜め下向きの押圧力を加えることができるので、線材41が上方に抜けることはない。螺子20の先端で直接線材41を挟むことがなく、線材41を傷つけることがない。押圧片13は面接触で線材41を押さえるので、支持力が強く、金網40を強固に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網支持金具に関する。さらに詳しくは、金網の線材を傷つけることなく、金網を強固に保持することができる金網支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和、大気中の炭酸ガスの吸収などのために建築物の壁面に植栽を施す壁面緑化が行われている。
壁面緑化の方法には、主なものとして、植物を壁面上部から下垂させる方法や植栽基盤を壁面に取り付ける方法のほか、壁面に金網やワイヤーなどの登攀補助材を配設し、その登攀補助材に蔓性植物を登攀させる方法がある。
【0003】
金網を登攀補助材として壁面に配設する従来技術の一例として特許文献1がある。特許文献1では、図8に示すように、登攀補助材として用いる金網103の外周をフレーム102で囲み壁面緑化パネル108としている。そして、このような壁面緑化パネル108の壁面への取付には、図9に示すような金網支持金具が用いられている。
【0004】
図9に示すように、従来技術の金網支持金具210は、側面視J字型の支持部211と側面視U字型の受け部212とからなり、受け部212は支持部211の下端に設けられている。支持部211の上端部が螺子230によって壁面250に接合されることにより、金網支持金具210が壁面250に対して固定される。金網240の金網支持金具210への取り付けは、受け部212に金網240の横向きの線材241を落とし込み、受け部212を横向きに貫く螺子220をねじ込むことにより行われる。螺子220をねじ込むことにより、螺子220の先端と受け部212の壁面とで線材241が挟まれ、金網240が金網支持金具210に固定される。
【0005】
しかるに、螺子220の先端で線材241を挟むため、線材241が傷つき錆びやすくなるという問題がある。一般に、線材は錆び防止や色付けなどのために塗膜で覆われていることが多いが、線材241が螺子220の先端で傷つけられることによりこの塗膜が剥がれてしまうためである。
また、線材241には螺子220の先端が点接触しているだけなので、支持力が弱く、金網240がグラグラするという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−313692号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、金網の線材を傷つけることなく、金網を強固に保持することができる金網支持金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の金網支持金具は、支持部と、金網の線材を保持する受け部とからなる金網支持金具であって、前記受け部は側面視U字型であり、前記受け部の側面視中央に、舌片状の押圧片が立ち上がるように設けられており、前記受け部の正面側の壁には、螺子孔が設けられていることを特徴とする。
第2発明の金網支持金具は、第1発明において、前記押圧片の根元が薄肉であることを特徴とする。
第3発明の金網支持金具は、第1発明において、前記支持部の正面が、該正面の下端が前方に突出するように、側面視J字型に湾曲しており、前記支持部の正面の下端と、前記受け部の背面側の壁の上端が連続してつながっていることを特徴とする。
第4発明の金網支持金具は、第3発明において、前記支持部が側面視J字型に湾曲した板状であることを特徴とする。
第5発明の金網支持金具は、第1、2、3または第4発明において、前記押圧片の高さが、前記受け部の背面側の壁の高さよりも高いことを特徴とする。
第6発明の金網支持金具は、第3、4または第5発明において、前記支持部の背面の下方に、荷重を支える足が設けられていることを特徴とする。
第7発明の金網支持金具は、第1、2、3、4、5または第6発明において、前記支持部に、締結部材挿入用の孔が設けられており、該孔は、横に長い長孔であることを特徴とする。
第8発明の金網支持金具は、第7発明において、前記支持部の背面の前記締結部材挿入用の孔の周囲に、薄肉の凸部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、金網の線材を受け部の背面と押圧片との間に落とし込んだ後、螺子孔から螺子をねじ込むと、螺子の先端が押圧片を後方に倒し、押圧片が線材を挟み込むので、金網を金網支持金具に取り付けることができる。押圧片が後方に倒れた状態では、押圧片は線材に対して斜め下向きの押圧力を加えることができるので、線材が上方に抜けることはない。また、螺子の先端で直接線材を挟むことがなく、線材を傷つけることがないため、線材が錆びやすくなることがない。さらに、押圧片は面接触で線材を押さえるので、支持力が強く、金網を強固に保持することができる。
第2発明によれば、押圧片の根元が薄肉であるので、押圧片を後方に倒す際に押圧片は根元以外の部分が撓むことなく平面に保たれるため、金網の線材を確実に面接触で押さえることができる。また、押圧片の根元が曲がりやすいため、螺子孔から螺子をねじ込み、押圧片を後方に倒す作業が容易となる。
第3発明によれば、金網の線材を支持部の正面に沿って下方に滑り下ろすことにより、受け部の背面と押圧片との間に落とし込むことができるので、金網の金網支持金具への取り付け作業が容易となる。
第4発明によれば、金網の線材を支持部に正面に沿って下方に滑り下ろすことにより、受け部の背面と押圧片との間に落とし込むことができ、金網の金網支持金具への取り付け作業が容易となるが、支持部が板状であるので、軽量であり、素材も少なくすむ。
第5発明によれば、押圧片の高さが受け部の背面側の壁の高さよりも高く、金網の線材を支持部に沿って下方に滑り下ろすときに、線材が押圧片を乗り越えることがないため、線材を確実に受け部の背面と押圧片との間に落とし込むことができ、金網の金網支持金具への取り付け作業がさらに容易となる。
第6発明によれば、荷重を支える足が設けられているので、金網の重量により支持部が撓むことがなく、金網を安定して支持することができる。
第7発明によれば、支持部に締結部材挿入用の孔が設けられているので、螺子などの締結部材をこの孔を通して壁面などに螺合することにより、金網支持金具を壁面などに固定することができる。また、締結部材挿入用の孔が横に長い長孔であるので、螺子などの締結部材をこの孔を通して壁面などに螺合する際に、壁内部の鉄筋などの取り付け不可能な場所を避けて、螺合することができる。そのため、金網支持金具の位置合わせが容易であり、金網の配設作業も容易となる。
第8発明によれば、壁面などの細かい凹凸がある場所に金網支持金具を固定する際に、金網支持金具の背面が壁面に面当りしないので、金網支持金具のガタつきを抑えることができ、金網支持金具を安定して壁面などに固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る金網支持金具10の平面図である。図2は同金網支持金具10の正面図である。図3は図2におけるII‐II線矢視断面図である。本発明の金網支持金具10は立体的形状に特徴があるので、以下各図面に基づき説明する。
【0011】
図3に示すように、金網支持金具10は主に支持部11と、金網40の線材41を保持する受け部12とからなる。受け部12は側面視U字型であり、その側面視中央に舌片状の押圧片13が立ち上がるように設けられている。押圧片13の根元は他の部分に比べて肉薄に形成されている。図1に示すように、押圧片13は受け部12の両側端にかけて延び、受け部12の正面側の壁および背面側の壁に対して平行に設けられた平板である。
図2に示すように、受け部12の正面側の壁の左右中央には螺子孔14が設けられている。この螺子孔14の高さは、図3に示すように、その中心が押圧片13の中心付近の高さと同程度となっている。なお、この螺子孔14の内壁には雌螺子が形成されており、螺子20をねじ込むことが可能となっている。
【0012】
図3に示すように、支持部11は側面視J字型に湾曲した板状であり、その下端が前方に突出するように形成されている。この支持部11の下端と、受け部12の背面側の壁の上端が連続してつながるように結合され一体となっている。押圧片13の高さは、受け部12の背面側の壁の高さよりも高く形成されている。
【0013】
図2に示すように、支持部11の上方には、横に長い長孔の締結部材挿入用の孔15が設けられている。また、図3に示すように、支持部11の背面において、孔15の周囲に、薄肉の凸部16が設けられている。本実施形態において凸部16は、図2に示すように、孔15を上下に挟む2本の線状であり、支持部11の両側端にかけて延びて設けられている。
さらに、図3に示すように、支持部11の背面の下方には、足17が設けられている。足17は、支持部11の湾曲した部分と結合し、斜め下方向に延びて前記凸部16と同程度の位置まで達する。本実施形態において足17は、図2に示すように、支持部11の両側端にかけて延びて設けられている平板である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では支持部11に比べ受け部12の幅寸法を短くしている。これは、後述のとおり金網支持金具10を壁面50などに固定した際に、支持部11は壁面50に接し安定度を高める必要があるため幅広の方がよいのに対して、受け部12は金網40の線材41を挟み込むため、金網40のメッシュ間隔より細くなければならないという制約があるからである。しかし、受け部12の幅寸法が短すぎると金網40の保持力が低下するため、ある程度の幅は必要である。そのため、支持部11および受け部12の幅寸法は施工の状況に合わせて選択すればよい。
【0015】
また、本実施形態において支持部11は側面視J字型に湾曲した板状としその背面に足を設けたが、これをブロック体としその正面を側面視J字型に形成した実施形態としてもよい。つまり、支持部11の正面が側面視J字型に湾曲していればよいので、他の形状は製造の容易さなどを勘案し設計すればよい。
【0016】
なお、金網支持金具10の素材、製法は特に限定はないが、例えば、アルミの押出成形で形成される。
【0017】
つぎに、本発明の金網支持金具10への金網40の取り付け方法を説明する。
図5は金網支持金具10で金網40を支持している状態であり、図4は、本実施形態の金網支持金具10に金網40を取り付ける要領の説明図である。
図4に示すように、まず、金網40の線材41を支持部11の正面にあてがい、支持部11に沿って下方に滑り下ろす。そうすると線材41は支持部11の湾曲した表面に沿って支持部11の下端まで導かれ、受け部12に到達する。受け部12に到達した線材41は、押圧片13にぶつかり、そのまま受け部12の背面と押圧片13との間に落とし込まれる。その後、螺子孔14から螺子20をねじ込み、螺子20の先端で押圧片13を後方に倒す。押圧片13を完全に倒すと、押圧片13と受け部12とで線材41を挟み込み固定できるので、これにより金網40を金網支持金具10に取り付けることができる。
【0018】
押圧片13はアルミなどで形成されるため、わずかに倒れる程度の変形性があるが、常に螺子20に押さえられているため元の位置に戻ることはない。そのため押圧片13が後方に倒れた状態では、押圧片13は線材41に対して斜め下向きの押圧力を常に加えることができるので、線材41に上向きの外力が加わったとしても上方に抜けることはない。
また、螺子20の先端で直接線材41を挟むことがなく、線材41に施された塗膜を傷つけ剥がすことがないため、線材41が錆びやすくなることがない。
さらに、押圧片13は面接触で線材41を押さえるので、螺子20の先端で直接線材41を挟んだ場合に比べ支持力が強く、金網40を強固に保持することができる。
【0019】
なお、押圧片13の根元が肉薄になっていることにより、押圧片13が螺子20に押さえられても根元部分のみが曲がり、根元以外の部分が撓むことなく平面に保たれる。そのため線材41を確実に面接触で押さえることができる。
また、押圧片13の根元が肉薄になっていることにより、押圧片13の根元が曲がりやすいため、螺子20をねじ込み、押圧片13を後方に倒す作業が容易となるという効果もある。
【0020】
上述のとおり、金網40の線材41を受け部12に配置するためには、線材41を支持部11にあてがい、支持部11に沿って下方に滑り下ろすだけでよいため、作業が非常に容易である。
これは、金網支持金具10が、湾曲した支持部11の下端と受け部12の背面側の壁の上端が連続してつながるように結合されており、さらに押圧片13の高さが、受け部12の背面側の壁の高さよりも高いという形状を有しているからである。
【0021】
つぎに、本発明の金網支持金具10の壁面50への固定方法および金網40の配設方法を説明する。
本発明は、金網40を取り付ける受け部12に主な技術的特徴があるため、先に金網支持金具10への金網40の取り付け方法を説明したが、通常の施工の際には、金網支持金具10の壁面50への固定の後、金網40を金網支持金具10へ取り付ける。
【0022】
図4に示すように、金網支持金具10の壁面50への固定は、締結部材挿入用の孔15に、螺子30などの締結部材を通して壁面50に螺合することにより行われる。固定した金網支持金具10に上述のとおり金網40を取り付けることにより、金網40を壁面50に配設することができる。もちろん、金網支持金具10と壁面50との締結部材は螺子30に限られるものではなく、コンクリート釘など壁面50の材質によって適当なものを選択すればよい。
【0023】
また、孔15が横に長い長孔であるので、孔15に挿入する螺子30は長孔の任意の位置で壁面50に螺合することができるため、壁内部の鉄筋などの取り付け不可能な場所を避けて、螺合することができる。そのため、金網支持金具10の位置合わせが容易であり、金網40の配設作業も容易となる。
【0024】
また、壁面50に細かい凹凸がある場合に、金具を取り付けるとがたつきや傾きの原因となるが、薄肉の凸部16が設けられていることにより、螺子30の締め付けによって固定する際に、金網支持金具10の背面の凸部16が壁面50に面当りしないので、金網支持金具10のガタつきを抑えることができ、金網支持金具10を安定して壁面50などに固定することができる。
【0025】
さらに、足17が設けられていることにより、足17の先端も壁面50に接するので、支持部11の前方に突出した部分を支えることができる。このため、金網40の重量により支持部11が撓むことがなく、金網40を安定して支持することができる。
【0026】
金網支持金具10は、上述のとおり直接壁面50に固定することもできるが、柱60などにも取り付けることができる。
図5は柱60に金網支持金具10を固定し金網40を配設した実施形態の部分拡大正面図である。図6は同実施形態の部分拡大側面図である。図7は同実施形態の平面図である。
図5から図6に示すように、壁面50に設置された柱60に金網支持金具10を螺子30で固定し、固定した金網支持金具10に金網40を取り付けることにより、金網40を配設することができる。
【0027】
つぎに、本発明の他の実施形態を説明する。
本発明の金網支持金具10は、壁面緑化パネルの施工用に限られるものではなく、金網40を支持する目的のためであれば何に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る金網支持金具の平面図である。
【図2】同金網支持金具の正面図である。
【図3】図2におけるII‐II線矢視断面図である。
【図4】金網支持金具10に金網40を取り付ける要領の説明図である。
【図5】柱に金網支持金具を固定し金網を配設した実施形態の部分拡大正面図である。
【図6】同実施形態の部分拡大側面図である。
【図7】同実施形態の部分拡大平面図である。
【図8】特許文献1の壁面緑化方法の説明図である。
【図9】従来技術の金網支持金具の外観図である。
【符号の説明】
【0029】
10 金網支持金具
11 支持部
12 受け部
13 押圧片
14 螺子孔
15 締結部材挿入用の孔
16 凸部
17 足
20 螺子
30 螺子
40 金網
41 線材
50 壁面
60 柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、金網の線材を保持する受け部とからなる金網支持金具であって、
前記受け部は側面視U字型であり、
前記受け部の側面視中央に、舌片状の押圧片が立ち上がるように設けられており、
前記受け部の正面側の壁には、螺子孔が設けられている
ことを特徴とする金網支持金具。
【請求項2】
前記押圧片の根元が薄肉である
ことを特徴とする請求項1記載の金網支持金具。
【請求項3】
前記支持部の正面が、該正面の下端が前方に突出するように、側面視J字型に湾曲しており、
前記支持部の正面の下端と、前記受け部の背面側の壁の上端が連続してつながっている
ことを特徴とする請求項1記載の金網支持金具。
【請求項4】
前記支持部が側面視J字型に湾曲した板状である
ことを特徴とする請求項3記載の金網支持金具。
【請求項5】
前記押圧片の高さが、前記受け部の背面側の壁の高さよりも高い
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の金網支持金具。
【請求項6】
前記支持部の背面の下方に、荷重を支える足が設けられている
ことを特徴とする請求項3、4または5記載の金網支持金具。
【請求項7】
前記支持部に、締結部材挿入用の孔が設けられており、
該孔は、横に長い長孔である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の金網支持金具。
【請求項8】
前記支持部の背面の前記締結部材挿入用の孔の周囲に、薄肉の凸部が設けられている
ことを特徴とする請求項7記載の金網支持金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−138605(P2010−138605A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316015(P2008−316015)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】