説明

針型センサ

【課題】信頼性の高い針型センサ10を提供する。
【解決手段】針型センサ10は、アナライトを検知するための複数の電極17を有するセンサ部11Aが、基体の上面に形成されている針先端部11と、それぞれの電極17と接続された複数の配線層18が前記基体の上面21に形成されており、基体の側面22方向の変形に対して他の部分よりも大きな可撓性のある可撓性部13を有する針本体部12と、を有する針部14と、配線層18と接続されている接続端子16を有するコネクタ部15と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針先端部にアナライトの濃度を計測するセンサ部を有する針型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
針型センサは、針先端部が被検体に穿刺されることにより、センサ部が被検体の体内に挿入され、被検体の血液または体液中のアナライト、すなわち被計測物質の濃度を計測するバイオセンサである。
【0003】
特開2008−62072号公報には、可撓性を有する基板から針部を構成した針型センサが開示されている。針部が可撓性を有する針型センサは、強い力が加わっても基板自身がたわむので、破損し難い。
【0004】
しかし、針型センサにおいては、針部基板の一主面に各電極を等間隔に並べて配置することが好ましい。すると、電極配置面は広い面積が必要になるため、針部の長手直交方向の断面が長軸と短軸とを有する長方形となる。
【0005】
針部の材料に可撓性材料を用い、針部の基板厚を薄くすることにより、基板厚方向、すなわち断面長方形の短軸方向には、たわみ易くできるが、基板幅方向、すなわち断面長方形の長軸方向にはたわみにくい。
【0006】
このため、従来の針型センサは基板幅方向に、被検体が動いたり、挿入位置に強い力が加わったりした場合、基板等に破損が発生するおそれがあった。すなわち、従来の針型センサは信頼性が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−62072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は信頼性の高い針型センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の針型センサは、アナライトを検知するための複数の電極を有するセンサ部が、基体の上面に形成されている針先端部と、それぞれの前記電極と接続された複数の配線層が前記基体の上面に形成されており、前記基体の側面方向の変形に対して他の部分よりも可撓性のある可撓性部を有する針本体部と、を有する針部と、前記配線層と接続されている接続端子を有するコネクタ部と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信頼性の高い針型センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態の針型センサを有するセンサシステムの外観図である。
【図2】第1実施形態の針型センサの上面図である。
【図3】第1実施形態の針型センサの先端部の断面図である。
【図4】第2実施形態の針型センサの可撓性部の外観図である。
【図5】第3実施形態の針型センサの可撓性部の外観図である。
【図6】第4実施形態の針型センサの可撓性部の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、図面を用いて、本発明の第1実施形態の針型センサ10について説明する。図1に示すように、本実施の形態の針型センサ10は本体部2およびレシーバー3と組み合わせてセンサシステム1として使用される。すなわち、センサシステム1は、針型センサ10と、本体部2と、本体部2からの信号を受信し記憶するレシーバー3と、を有する。本体部2とレシーバー3との間の信号の送受信は無線または有線で行われる。
【0013】
針型センサ10は、主要部である基体の上面にセンサ部11Aが形成されている針先端部11と細長い針本体部12とを有する針部14と、針本体部12の後端部と一体化したコネクタ部15と、を具備する。針部14とコネクタ部15とは同一材料により一体形成されていてもよい。
【0014】
コネクタ部15は、本体部2の嵌合部2Aと着脱自在に嵌合する。針型センサ10はコネクタ部15が本体部2の嵌合部2Aと機械的に嵌合することにより、接続端子16を介して、本体部2と電気的に接続される。
【0015】
本体部2は、図示しないがレシーバー3との間で無線信号を送受信するための無線アンテナと、電池等の電源と、センサ部11Aの駆動および制御などを行う各種回路を有する。各種回路としては例えば、信号を増幅する増幅回路、回路用基準クロック発生回路、ロジック回路、データ処理回路、AD変換処理用回路、および通信用高周波発生器回路などを例示することができる。なお、レシーバー3との間を有線送受信する場合には、本体部2は無線アンテナに代えて信号線を有する。
【0016】
針型センサ10は感染防止等のために使用後は処分される使い捨て(ディスポ)部であるが、本体部2およびレシーバー3は繰り返し再使用されるリユース部である。なお、本体部2は必要な容量のメモリ部を有する場合にはレシーバー3は不要である。
【0017】
そして、図2および図3に示すように、針先端部11に配設されたセンサ部11Aは、アナライトを検知するための4個の電極17A〜17Dを有し、それぞれの電極17A〜17Dと接続された配線層18A〜18Dが、針部14の基体の上面21に形成されている。
【0018】
本実施形態の針型センサ10のセンサ部11Aは、作用電極と対電極を有しており、電気化学的計測を行う。すなわち、電極17Aはセンサ層19Aが形成された作用電極であり、電極17Bは対電極である。電極18Cはノイズ成分を検出するためのノイズ計測電極であり、電極17Dは標準電極電位を計測するための電極である。さらに温度測定のための電極等を有していてもよい。
【0019】
すなわちアナライトを検出するセンサ層19Aは被検出物質の電解を促進するように設計された1種以上の成分を含む。センサ層19Aは例えば、検体の反応を触媒し、作用電極17Aでの応答を生み出す触媒、あるいは検体と作用電極17Aの間で電子を間接または直接に移動させる電子移動剤、あるいはその両方を含んでもよい。
【0020】
例えば、グルコースを検出するためには、センサ層19Aは、触媒であるグルコースオキシダーゼと電子移動剤であるペルオキシダーゼの両方を含んでもよい。
【0021】
一方、センサ層19Bは標準電極電位を計測するための、例えば銀/塩化銀層である。
【0022】
なお以下、類似機能の複数の構成要素のそれぞれを、符号の末尾のアルファベット1文字を省略して表現する。例えば、電極17A〜17Dのそれぞれを電極17という。
【0023】
配線層18は、銅もしくはアルミニウム等の金属、導電性インクまたは導電性樹脂などの導電体より成り、センサ部11Aからコネクタ部15の接続端子16まで延設され、本体部2からの電力をセンサ部11Aに供給し、かつセンサ部11Aの信号を本体部2に伝達する。
【0024】
作用電極と対電極との間の電位差を正しく設定するために、電極17は平面状の基板の一主面21に等間隔に並べて配置されている。すなわち、図1および図3に示すように、針型センサ10は、基板の主面21に電極17を等間隔に並べて配置するため、針部14の長手直交方向の断面が、幅(X軸方向寸法)Wの長軸と、厚さT(Y軸方向寸法)Tの短軸と、からなる長方形である。
【0025】
すなわち、針部の幅Wは、厚さTの2〜10倍である。例えば、幅Wは300〜500μmであり、厚さTは40〜200μmである。なお、針部14の長さ(Z軸方向寸法)は、例えば、6mmである。また、針先端部11の先端は鋭角状に尖っていてもよい。
【0026】
作用電極17Aと対電極17Bとの間には、本体部2から接続端子16および配線層18を通じて電位差が与えられる。この時、アナライトは、センサ層19A上で反応し、センサ層19Aに電子輸送層が用いられる場合には、反応で生成した電子が作用電極17Aに運ばれ、配線層18および接続端子16を介して、本体部2内で作用電極17Aと対電極17Bとの間の電位変動量として検出される。
【0027】
一方、ノイズ計測電極17Cには、センサ部11Aの挿入環境内にあってノイズとなる電子または正孔が検出され、作用電極17Cと対電極17B間のノイズ電位変動量として検出される。作用電極17Aと対電極17Bとの間の電位変動量から、ノイズ電位変動量を差し引くことにより、正しく反応した量を表す電気信号を得ることができる。そして、理論または実験に基づく演算により、アナライトの量に変換される。
【0028】
センサ部は、電気化学計測手段に限られるものではなく、体液中のアナライトを電気信号として計測できれば、光学的計測手段等であってもよい。
【0029】
例えば、光学的計測手段であるセンサ部は、励起光を発生する発光ダイオード素子と、アナライトおよび励起光との相互作用により蛍光を発生するインジケータ層と、蛍光を検出するフォトダイオード素子とを有する。そして、アナライトとしてグルコースのような糖類を測定する場合には、インジケータ層としてルテニウム有機錯体、蛍光フェニルボロン酸誘導体、またはフルオレセイン等の蛍光色素が結合した蛋白質であってグルコースと可逆結合するものを用いることができる。
【0030】
そして、図1および図2に示すように、本実施形態の針型センサ10の針本体部12は、基体の側面22に複数のV字型の切り欠き13Kが形成されている可撓性部13を有する。可撓性部13は、基体の側面22方向(X軸方向)の変形に対して他の部分よりも大きな可撓性がある。言い換えれば、針本体部12は、その長手方向(Z軸方向)の一部分が可撓性部13であり、針本体部12は、可撓性部13と、その前後の主要部12A、12Bとからなる。
【0031】
なお、針部14は、その長手方向(Z軸方向)に、複数の可撓性部13を有していてもよいが、可撓性部13の全長は針部14の全長の50%以下であることが好ましく、30%以下が特に好ましい。前記範囲内であれば、針部14の被検体への穿刺、および生体内での安定保持が容易である。
【0032】
また、針部14は、シリコン等の非可撓性材料だけでなく、樹脂等の可撓性材料により構成してもよい。すなわち、針部14の材料として、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリアミドまたはポリイミドなどの熱可塑性プラスチック、それらの共重合体、例えばグリコール修飾ポリエチレンテレフタレート(PETG)などを用いることができる。
【0033】
ただし、針部14が過度の可撓性を有する材料を用いることは、好ましくない。このため、針部14の材料の弾性率(曲げ)は1000MPa以上が好ましい。
【0034】
前記範囲内であれば針部14の、被検体への穿刺、および生体内での安定保持が容易である。なお、前記弾性率の上限は針部14の仕様にもよるが、針部14を構成する基板の板厚Tが厚い場合にも、上下方向(Y軸方向)の可撓性を確保するために、10000MPa以下が好ましい。
【0035】
針部14(基板)の材料としては、生体適合性等を考慮すると、弾性率3100MPaのポリイミドまたは弾性率9000MPaのPET等が特に好ましい。
【0036】
可撓性部13の切り欠き13Kは、例えばホットエンボス加工法、フォトエッチング法、またはレーザーアブレーション法などを用いて、針部14を加工することによって作製可能である。
【0037】
なお、図4に示すような可撓性部を有する針型センサであってもよい。図4(A)に示す針型センサ10Aの可撓性部13Aは、円弧状の切り欠き13KAを有する。図4(B)に示す針型センサ10Bの可撓性部13Bは、対向面のそれぞれに設けた凹凸を繰り返す構造の切り欠き13KBを有する。
【0038】
すなわち、切り欠きは、数または形状に制限はなく、所望の可撓性を針部14に付与可能な様々な形状を用いることができる。また、切り欠きは、針部14の側面22に対向して設ける必要もなく、片面にのみに設けてもよい。
【0039】
次に、例えば数日間にわたって体内のアナライトを連続して検出する体内留置型センサである針型センサ10の動作について説明する。使用開始時には針先端部11と針本体部12の一部とは、被検体の体表より皮下組織に穿刺し挿入される。穿刺のときに、別体の剛性を有する鞘針を針型センサ10の外周部等にかぶせて、共に挿入してもよい。挿入後に鞘針は抜去され、針型センサ10だけが体内に留置される。
【0040】
本実施形態の針型センサ10等は、被検体の動作や外的要因によって針部14を幅方向(X軸方向)に曲げる強い力が加わっても、可撓性部13がたわむ。このため、針部14の亀裂、破損、配線層18の断裂等の発生を防ぐ。このため、針型センサ10等は信頼性が高い。
【0041】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の針型センサ10Cについて説明する。針型センサ10Cは針型センサ10と類似しているため、類似機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0042】
図5に示すように、針型センサ10Cの可撓性部13Cは、他の部分よりも大きな可撓性がある材料により構成されている。言い換えれば、可撓性部13Cは、針本体部12の可撓性部13C以外の他の部分(主要部)よりも、高弾性率の材料からなる。
【0043】
針型センサ10Cは、例えば、可撓性部13Cが弾性率4.6MPaのPDMS(Polydimethylsiloxane)で構成されており、針本体部12の主要部17A、17Bおよび針先端部11が弾性率3100MPaのポリイミドで構成されている。
【0044】
可撓性部13Cの材料の弾性率は100MPa以下が好ましく、20MPa以下が特に好ましい。前記範囲内であれば、被検体の動作や外的要因によって針部14曲げる強い力が加わっても、可撓性部13Cがたわむため、破損等を防止できる。
【0045】
なお、針部14は、その長手方向(Z軸方向)に、複数の可撓性部13Cを有していてもよいが、可撓性部13Cの全長は針部14の全長の50%以下であることが好ましく、30%以下が特に好ましい。前記範囲内であれば、針部14の被検体への穿刺、および生体内での安定保持が容易である。
【0046】
また、可撓性部13Cは、針本体部12を構成する材料の特性を変化させることによっても作製できる。例えば、針本体部12は、ポリウレタンのような、比較的大きな可撓性を有する多孔質体に液状ポリイミドを含浸する方法で作製することができる。ポリイミドが含浸することにより針本体部12は硬く、すなわち弾性率が高くなる。
【0047】
そして、ポリイミド含浸処理前に、針本体部12の一部分をマスキングすることによってポリイミドが充填されない部分を設ける。すると、マスキングされた部分は他の部分よりも大きな可撓性がある可撓性部となる。
【0048】
さらに、針本体部12を紫外線硬化型樹脂により作製する場合には、一部分をマスキングする等の方法により部分的に紫外線照射量を減ずることにより、可撓性部を作成することもできる。すなわち、針本体部12をポリマーで構成する場合には、重合度の低い可撓性部13Cを設けることができる。
【0049】
針型センサ10Cは、針本体部12の全体が一様な幅および厚さであるため、被検体への穿刺が容易であり、かつ上下方向(Y軸方向)にも大きな可撓性を有する。
【0050】
このため、針型センサ10Cは、針型センサ10等が有する効果を有し、さらに挿入性が良く、さらに、より信頼性が高い。
【0051】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の針型センサ10Dについて説明する。針型センサ10Dは針型センサ10と類似しているため、類似機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0052】
図6に示すように、針型センサ10Dの可撓性部13Dは、針型センサ10の可撓性部13と同様の切り欠き13KD1を有するが、切り欠き13KD1は針部14Aの他の部分(主要部)17A、17Bよりも大きな可撓性がある材料により充填され、充填部13KD2となっている。
【0053】
充填部13KD2の充填材料は、すでに説明した第2実施形態の針型センサ10Cの可撓性部13Cと同様の材料から選択することができる。
【0054】
針型センサ10Dは、針型センサ10等が有する効果を有し、針本体部12の全体が一様な幅および厚さであるため、さらに被検体への挿入および抜去が容易である。
【0055】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等ができる。
【符号の説明】
【0056】
1…センサシステム、2…本体部、2A…嵌合部、3…レシーバー、10、10A〜10D…針型センサ、11…針先端部、11A…センサ部、12…針本体部、13、13A〜13D…可撓性部、13K…切り欠き、14…針部、15…コネクタ部、16…接続端子、17…電極、17A、17D…作用電極、17B、17C…対電極、18…配線層、19A、19B…センサ層、21…上面、22…側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナライトを検知するための複数の電極を有するセンサ部が、基体の上面に形成されている針先端部と、それぞれの前記電極と接続された複数の配線層が前記基体の上面に形成されており、前記基体の側面方向の変形に対して他の部分よりも大きな可撓性のある可撓性部を有する針本体部と、を有する針部と、
前記配線層と接続されている接続端子を有するコネクタ部と、を具備することを特徴とする針型センサ。
【請求項2】
前記可撓性部は、前記基体の側面に切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の針型センサ。
【請求項3】
前記可撓性部は、前記針本体部の前記可撓性部以外の前記他の部分よりも、高弾性率の材料からなることを特徴とする請求項1に記載の針型センサ。
【請求項4】
被検体に穿刺され、体内のアナライトを連続して検出する体内留置型センサであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の針型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−80959(P2012−80959A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227733(P2010−227733)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】