説明

釣り具

【課題】 装飾面での軽量化を維持しながら、単一色部、中抜き部、ボカシ模様部、模様部といった多様な装飾形態を施どこされた釣り具の表面装飾構造を提供する。
【解決手段】 竿素材Aの外周面に単一の装飾層2を形成する。装飾層2に、枠内が透明の中抜き部2A、色が徐々に変化するボカシ模様部2B、複数の異なる色を組み合わせた色分け模様部2C、濃色部分2aとを有する。中抜き部2A、ボカシ模様部2B、色分け模様部2Cに対応した情報に基づいてインクジェットヘッド5を制御する。インクジェットヘッド5の一回の装飾作動によって、基本となる複数種の色インクを任意の割合で配合して対象物に施し、中抜き部2A等を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り具及びその表面装飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り具の一例である釣り竿においては、模様を形成する場合には、基本となる色の塗料を竿素材に施すとともに、その基本色の上から異なる色の塗料を吹き付け塗装やシゴキ塗装等の塗装方法を用いて行っていた(特許文献1参照)。
しかし、その場合には、塗装厚みが厚くなる等の欠点を有することとなり、軽量化に反することとなっていた。
一方、吹き付け塗装やシゴキ塗装の代わりに、スクリーン印刷等を利用して装飾を行うこともできるが、多色印刷が難しく、多色装飾を施すには作業性が悪い面があった。
また、社名等のロゴについてはシールを塗装面に施していたが、シール面と他の塗装面との段差を解消すべくトップコート処理を必要として、作業の手間が大変であった。
したがって、以上のような欠点を解消するものとして、複数の塗料をその配合割合を変更した状態で調整し、その調整塗料を複数のノズルから塗布して、竿素材に塗布することによって竿の軽量化を図ったものがあった(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特公平3−11735号公報
【特許文献2】特開平9−23789号(段落番号〔0012〕、及び、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載された発明においては、色の異なる部分を同一の仕上層に形成してあるので、模様を形成するために重ね塗りする必要がなく軽量化が図れるものではある。
しかし、複数のノズルから吹き付ける異なる色塗料の割合を一定に設定した状態で吹き付ける塗装方法を採っているので、竿の軸線方向においては色塗料の割合を変更して異なる色の領域を区画形成できるが、周方向においては同一色の塗装を施すことができるだけで、ロゴや模様等を同一周方向において形成することができない面があった。
【0005】
本発明の目的は、装飾面での軽量化を維持しながら、単一色部、中抜き部、ボカシ模様部、色分け模様部いった多様な装飾形態を施どこされた釣り具及びその表面装飾方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、素材の外周面に装飾層を積層するとともに、前記装飾層を、必要な情報に基づいて基本となる複数種の色インクを任意の割合で配合したインクを施して、単一色を一定領域に亘って施した単一色部、色をその濃淡が徐々に変化するボカシ模様部、複数の異なる色を組み合わせた色分け模様部、周縁部に着色を施し周縁部の内部は着色していない中抜き部、との内の少なくとも二つで構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
予め与えられた情報に基づいて基本となる複数種の色インクを任意の割合で配合して素材に施すことによって、単一色部、色分け模様部、ボカシ模様部、中抜き部を形成できる。
【0008】
〔効果〕
したがって、従来のように、模様を形成するのに重ね塗りする必要もなく、ロゴ等を作成するのにシールを添付する必要もなく、かつ、与えられた情報に基づいて装飾を行うので、釣り竿であっても軸線方向だけでなくあらゆる方向への異なる色を施すことができ、釣り具の製作が迅速に行える。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、素材の外周面に、必要な情報に基づいて基本となる複数種の色インクを任意の割合で配合して施こすインクジェット式の装飾装置を作動させて、単一色を一定領域に亘って施した単一色部、色の濃淡が徐々に変化するボカシ模様部、複数の異なる色を組み合わせた色分け模様部、周縁部に着色を施し周縁部の内部は着色していない中抜き部、との内の少なくとも二つを備えた装飾層を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用〕
予め単一色部、中抜き部、ボカシ模様部、色分け模様部を施すに必要な情報を制御手段に備える。この情報に基づいて制御手段は作動情報をインクジェット式の装飾装置に与える。装飾装置はその制御情報に基づいて基本となる複数種の色インクを任意の割合で配合する。
そして、中抜き部においては、中抜き部の周縁部に配合調整したインクを施し、周縁部の内部ではインクを施さないように装飾装置を制御する。単一色部、ボカシ模様部と色分け模様部においては、対応した情報に基づいてインクを調合し、所定場所にその調合インクを施すことによって、それらを形成する。
【0011】
〔効果〕
このように、予め単一色部、中抜き部、ボカシ模様部、色分け模様部に対応した情報を制御手段に与え、その情報に基づいて装飾装置を制御することができるので、単一色部、中抜き部、ボカシ模様部、色分け模様部を一方向に沿った状態だけでなく任意の方向に沿った状態で設けることができるにいたった。
これによって、装飾層の軽量を維持しながら、単一色部、中抜き部、ボカシ模様部、色分け模様部を利用して装飾層を形成でき、かつ、釣り具の表面を凹凸の少ないものとできた。
特に、単一色部、中抜き部、ボカシ模様部、色分け模様部を利用して社名等のロゴを施すことができるので、シールを使用してロゴを施す場合に比べて、シールと他の塗装面との段差を無くすトップコート処理が必要ではなく、作業性の良好である。
【0012】
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記装飾層の上に、透明な保護層を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
〔作用効果〕
つまり、保護層によって中抜き部においても均平化処理され、従来のように、シールを使用した場合のように、均し処理を行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
釣り竿に適用する形態について説明する。対象となる竿素材Aとしては、釣り竿を構成する穂先竿から元竿までの全ての竿体を構成する竿素材Aが対象となる。
図2及び図3示すように、竿素材Aの外周面にベース層1を施すとともに、ベース層1の上から装飾層2を施し、装飾層2の上に表面保護層3を施して、竿体を構成してある。
【0015】
ベース層1について説明する。図3に示すように、金、銀、白色等の光を反射する機能の高い塗料をシゴキまたはハケ塗り等の塗装方法、又は、インクジェット式の装飾装置Bを用いて竿素材Aの表面に施してある。ベース層1を構成する塗料としては、光を反射する機能の低い塗料であってもよい。
【0016】
装飾層2について説明する。
装飾層2には、枠内が透明の中抜き部2A、色が徐々に変化するボカシ模様部2B、複数の異なる色を組み合わせた色分け模様部2Cとが備えられている。
装飾層2を形成する領域の周縁部分にボカシ模様部2Bを形成するとともに、ボカシ模様部2Bで囲まれた内部にボカシ模様部2Bの内で最も濃い色を施してある濃色部分2aを形成してある。この濃色部分2aによって単一色部を形成する。
【0017】
図2に示すように、濃色部分2a内には、類似形状を繰り返し展開する色分け模様部2Cが形成されており、この色分け模様部2Cには濃色部分2aとは異なる色が施してある。
濃色部分2aと色分け模様部2Cには、メーカ銘を表示するロゴや製品を主張する標語等が中抜き文字で表示された中抜き部2Aが形成されている。
【0018】
前記した、単一色部2a、中抜き部2A、ボカシ模様部2B、色分け模様部2Cを形成する製造方法について説明する。図1に示すように、インクジェット式の装飾装置Bは、基本となる複数種の色インクを収納したインクタンク4と、そのインクタンク4から供給されるインクを任意の割合で配合して対象物に施すインクジェットヘッド5とを装備して構成してある。
基本となる色インクは、シアン系、マゼンダ系、イエロー系、ブラック系のインクである。ただし、必要な場合によっては、白色等を追加してもよい。
【0019】
インクジェットヘッド5には、シアン系、マゼンダ系、イエロー系、ブラック系のインクを液滴として供給する複数本のノズルが配置されるとともに、図示しない制御手段からの作動情報を受けてインクを急激に加熱し液滴化を促すとともに気泡によって噴出させるべく、加熱媒体を装備してある。この方式は、サーマルジェット方式と呼ばれているが、ピエゾ方式を採用してもよい。
【0020】
竿素材Aに装飾を施す具体構成について説明する。図1に示すように、竿素材Aをマンドレル6に装着するとともに、マンドレル6と竿素材Aとをマンドレル6の軸芯周りで回転可能に構成する。インクタンク4とインクジェットヘッド5とを含む装飾装置Bをマンドレル6の軸線に沿って移動可能に構成する。
【0021】
以上のような構成によって、竿素材Aを回転させながら、装飾装置Bを移動させることによって、制御手段からの作動情報に基づいて、複数種のインクを所望の割合に混合した調整インクを液滴としてドッド状に竿素材Aの表面に施していく。
これによって、装飾装置Bの一回の装飾行程で、前記した濃色部分2a、中抜き部2A、ボカシ模様部2B及び、色分け模様部2Cを形成することができる。
【0022】
中抜き部2Aとしては、この部分に調整インクを施さないことによって、形成される。したがって、この中抜き部2Aにおいては、ベース部1に施された光反射層の色が発色することとなる。ただし、ベース部1における前記中抜き部2Aに対応する部分を、単一色ではなく、前記したボカシ模様部2B、色分け模様部2Cに形成していれば、中抜き部2Aを通して、ボカシ模様部2B、色分け模様部2Cを視認することができる。
【0023】
ボカシ模様部2B及び濃色部分(単一色部)2aとしては、インクジェットヘッド4からの液滴ドッドを周縁部においては粗い状態で施し、内部の濃色部分2aに向かってドッド密度を高くし、濃色部分2aで最も密度を高くすることによって、形成してある。
【0024】
色分け模様部2Cにおいては、色を塗り分けることによって形成することができる。
尚、装飾層2における明度はその厚み(ノズルからの突出量)を変更することによって調節できるが、厚みの範囲は2〜35ミクロンである。また、装飾層2における色相としては、4色のインクの配合割合を変更することによって、調整可能である。
【0025】
装飾層2の上に設けられる表面保護層3について説明する。図3に示すように、透明のクリア塗料を使用し、吹き付け塗装、シゴキ塗装、或るいは、インクジェット式の装飾装置Bによって、装飾層2の上に表面保護層3を形成する。
また、クリア塗料以外に透明度の高い塗料であれば使用でき、メタリックパールが含有する塗料であってもよい。
【0026】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、釣り竿に適用する形態について説明したが、他の釣り具、例えば、リール、ルアー、魚収納ケース等に適用してもよい。
(2)装飾装置Bと竿素材Aとの関係は、装飾装置Bを竿素材Aの周方向に移動させて装飾を施す形態を採ってもよい。
(3)装飾装置Bを竿素材Aの軸線方向に移動させる構成を示したが、竿素材Aの全長に相当するインクジェットヘッド5を装備して移動する必要のないものとしてもよい。
(4)上記実施形態においては、ベース層1を設ける形態について説明したが、ベース層1がなく、直接、素材に装飾層2を施してもよい。
(5)装飾層2を形成するのに、一回の装飾作動で行う形態について説明したが、装飾対象物によっては、二回以上の装飾作動を行う制御形態を採ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インクジェット式の装飾装置で竿素材の外周面に装飾を施す状態を示す斜視図
【図2】中抜き部、ボカシ模様部及び濃色部分、模様部を示す側面図
【図3】竿素材に形成されたベース層、装飾層、表面保護層を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0028】
1 ベース層
2 装飾層
2A 中抜き部
2B ボカシ模様部
2C 色分け模様部
2a 濃色部分(単一色部)
A 竿素材
B 装飾装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材の外周面に装飾層を積層するとともに、前記装飾層を、必要な情報に基づいて基本となる複数種の色インクを任意の割合で配合したインクを施して、単一色を一定領域に亘って施した単一色部、色をその濃淡が徐々に変化するボカシ模様部、複数の異なる色を組み合わせた色分け模様部、周縁部に着色を施し周縁部の内部は着色していない中抜き部、との内の少なくとも二つで構成してある釣り具。
【請求項2】
素材の外周面に、必要な情報に基づいて基本となる複数種の色インクを任意の割合で配合して施こすインクジェット式装飾装置を作動させて、単一色を一定領域に亘って施した単一色部、色の濃淡が徐々に変化するボカシ模様部、複数の異なる色を組み合わせた色分け模様部、周縁部に着色を施し周縁部の内部は着色していない中抜き部、との内の少なくとも二つを備えた装飾層を形成する釣り具の表面装飾方法。
【請求項3】
前記装飾層の上に、透明な保護層を設けてある請求項1記載の釣り具の表面装飾構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−206415(P2008−206415A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43809(P2007−43809)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】