説明

鉄イオンが担持されたゼオライト触媒、その製造方法、及びその触媒を利用してアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減する方法

本発明は、アンモニア還元剤による温室効果ガスである亜酸化窒素の単独低減、或いは、亜酸化窒素及び大気汚染ガスである一酸化窒素の同時低減のための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法、その製造方法によって製造された触媒、その触媒を利用してアンモニア還元剤により亜酸化窒素の単独低減或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素の同時低減方法に関する。本発明は、アンモニア還元剤により亜酸化窒素の単独低減或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための高効率触媒として鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法、その製造方法によって製造された触媒、その触媒を利用してアンモニア還元剤による亜酸化窒素の単独低減或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素の同時低減温度を低温化する方法を提供することを課題とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア還元剤により亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法、その製造方法によって製造された触媒、及びその触媒を利用して亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減する方法に関し、より詳細には、鉄イオンが担持されたゼオライト触媒を水分処理し、或いは、水分処理したゼオライトに鉄イオンを担持した後、その触媒を利用してアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を低温で同時に低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
亜酸化窒素の25%程度は、産業の固定排出源によって放出されている。放出された亜酸化窒素は、通常、酸素の多い雰囲気で一酸化窒素とともに存在する。産業の固定排出源から排出される一酸化窒素は、アンモニア、水素、一酸化炭素のような還元剤を利用する選択的触媒還元(selective catalytic reduction:SCR)技術によって除去される。低温及び高温で上記技術を適用するために、様々な種類の触媒が開発されており、このうちV−TiO系の触媒システムが商業化され、アンモニア還元剤とともに主に使用されている。亜酸化窒素を低減するために、主に鉄が担持されたゼオライト触媒が使われており、この場合の還元剤としては、メタンやプロパンのような炭化水素又はアンモニアが使用されている。
【0003】
炭化水素を還元剤として使用した場合は、400℃未満の温度でも亜酸化窒素が低減できるが、アンモニアを還元剤として利用した場合は、亜酸化窒素を低減するために、400℃以上の温度が必要である。
【0004】
従って、単一の還元剤を利用して亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減することは容易でない。
【0005】
以下、先行技術について説明する。米国特許公報第5、198、403号、第5、300、472号では、チタン酸化物に、W、Si、B、Al、P、Zr、Ba、Y、La、Ceのいずれかの酸化物と、Y、Nb、Mo、Fe、Cuのいずれかの酸化物を混合して触媒を製造し、一酸化窒素を選択的に還元させる還元剤としてアンモニアを使用している。このように製造された触媒の50〜99%は、チタン酸化物から構成される。この場合、360〜500℃で一酸化窒素の81.1%〜94.3%が還元された。
【0006】
米国公開特許公報US2002/0127163A1号、国際公開公報WO02/072245A2号、大韓民国公開特許公報10−2004−0010608号では、アンモニアを使用した一酸化窒素の選択的還元のために、BETA、ZSM、MORD、Yなどのゼオライトに、Fe、Cu、Co、Ce、Pt、Rh、Pd、Ir、Mgなどをイオン交換させて触媒を製造している。このように製造された触媒のうち、亜酸化窒素の選択的還元反応に活性を有する触媒を選択して一酸化窒素及び亜酸化窒素を選択的に還元させた。450及び500℃での亜酸化窒素の転換率は、各々、80%及び99%であった。
【0007】
米国特許公報US6682710B1号、米国公開特許公報US2004/0192538A1号、米国特許公報US7238641B2号には、FERゼオライトに鉄イオンをイオン交換させ得られた触媒を利用して亜酸化窒素及び一酸化窒素を除去する方法が開示されている。また、米国特許公報US6872372B1号には、鉄イオンが含まれたゼオライト触媒にパラジウム、ロジウム、金などを添加した場合、亜酸化窒素を350℃以下の温度で選択的に還元できることが開示されている。還元剤としては、メタンやプロパンの飽和炭化水素が使用された。
【0008】
日本公開特許公報第2006−281026号には、窒素酸化物を還元させるために、チタン酸化物と、Cr、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、W、Pt、Au、Pbのいずれか或いはその酸化物から選ばれた一つとを混合した触媒を使用している。
【0009】
以上の特許文献は、炭化水素を還元剤として使用した場合は、亜酸化窒素を350℃以下の温度で低減できることを開示している。しかし、アンモニアを還元剤として使用した場合、以上の特許文献に開示されている触媒は、亜酸化窒素を単独で還元させるためには360℃以上の温度が必要である。
【0010】
また、アンモニアを還元剤として使用した場合、以上の特許文献は、一酸化窒素及び亜酸化窒素を同時に低減するために効果的な温度として400℃以上を開示している。
【0011】
従って、アンモニアを還元剤として使用しながらも、亜酸化窒素単独を低減するための温度のみならず、一酸化窒素及び亜酸化窒素を同時に低減するための温度も炭化水素を還元剤として使用した場合と同じレベルに抑える触媒の製造、同時低減技術の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するために工夫したものであり、アンモニア還元剤により亜酸化窒素及び一酸化窒素を300〜400℃の反応温度で同時に還元できる鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法及びその触媒を提供することを課題とする。
【0013】
本発明は、アンモニア還元剤により鉄イオンが担持されたゼオライト触媒を使用して亜酸化窒素を低い反応温度で還元させ低減する方法を提供することを他の課題とする。
【0014】
本発明は、アンモニア還元剤により鉄イオンが担持されたゼオライト触媒を使用して亜酸化窒素及び一酸化窒素を低い反応温度で同時に還元させ低減する方法を提供することを更に他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための本発明の一つの特徴に従ったアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、(A)ゼオライトを水分により高温で前処理する段階と、(B)前記(A)段階で前処理されたゼオライト、又は、前記(A)段階を経ておらず前処理されていないゼオライトに鉄イオンの前駆体物質溶液によって鉄イオンを担持する段階と、(C)前記(B)段階で鉄イオンが担持されたゼオライト粒子を濾過し、乾燥させる段階と、(D)前記(C)段階で乾燥された粉末の鉄含有量を増加させるために(B)段階及び(C)段階を繰り返す段階と、(E)前記(D)段階で製造された触媒を空気中で焼成する段階と、(F)前記(A)段階を経ていないゼオライトから前記(E)段階までを経て得られた触媒を水分により高温で処理する段階とを含む。
【0016】
本発明の他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記(A)段階において、前記ゼオライトは、BEA、MFI、MOR及びFERのいずれかを含み、前記ゼオライトのAl/SiOモル比は、5〜100であり、前記ゼオライトは、ナトリウム、アンモニウム及び水素のいずれかの陽イオンを含む。
【0017】
本発明の更に他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記ゼオライトを400〜600℃で加熱した後、ゼオライト重量に対して0.1〜5倍の水分を窒素雰囲気下で0.1〜2時間供給してゼオライトを水分処理する。
【0018】
本発明の更に他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記(B)段階は、鉄イオンの前駆体物質として鉄硝酸水和物(Fe(NO・9HO)を使用して濃度を0.001〜1.0モル濃度に調節する。
【0019】
本発明の更に他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記鉄イオン前駆体物質の溶液に(A)段階で水分処理されたゼオライト、又は、前記(A)段階を経ていないゼオライトを0.1〜3.0の重量比で添加し、10〜35℃で5〜30時間撹拌する。
【0020】
本発明の更に他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記(C)段階は、前記(B)段階で得られたゼオライトスラリーを濾過させ得られたケーキを脱イオン化された蒸溜水500〜2000mlで洗浄し、洗浄した鉄イオンが担持されたゼオライトを空気中の100〜120℃で5〜24時間乾燥する。
【0021】
本発明の更に他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記(D)段階は、前記(B)段階及び前記(C)段階を2〜5回繰り返す。
【0022】
本発明の更に他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記(E)段階は、前記(D)段階で得られたゼオライトを空気中の400〜600で1〜5時間焼成する。
【0023】
本発明の更に他の特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法は、前記(F)段階は、前記(A)段階を経ていないゼオライトから前記(B)段階、前記(C)段階、前記(D)段階及び前記(E)段階を経て得られた鉄イオンが担持されたゼオライトに対して400〜600℃で加熱した後、ゼオライト重量に対して0.1〜5倍の水分を窒素雰囲気下で0.5〜2時間供給する。
【0024】
上記の課題を解決するための本発明の一つの特徴に従った鉄イオンが担持されたゼオライト触媒は、上記したゼオライト触媒の製造方法によって製造され、鉄イオンが担持されたゼオライトが活性化され、アンモニア還元剤により70〜100%の亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素のそれぞれを300〜400℃で同時に還元させるように構成される。
【0025】
上記の課題を解決するための本発明の一つの特徴に従ったアンモニア還元剤により亜酸化窒素或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減する方法は、亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に供給し、上記したゼオライト触媒の製造方法によって製造され活性化された鉄イオンが担持されたゼオライト触媒と接触反応させ、アンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低温の触媒反応温度で還元させ低減する。
【0026】
本発明の更に他の特徴に従ったアンモニアを還元剤として利用し、亜酸化窒素或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を低減する方法は、前記亜酸化窒素及び一酸化窒素の低減時の触媒反応温度は、低温である300〜500℃である。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、ゼオライトを水分処理した後鉄イオンを担持し、或いは、鉄イオンが担持されたゼオライト触媒を水分処理した鉄イオンが担持されたゼオライト触媒を使用することで、アンモニア還元剤により亜酸化窒素単独又は亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に300〜500℃の温度で低減することができ、低温活性を向上させて亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するために単一還元剤を使用することができる有用な発明であり、産業上の利用が大きく期待される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、アンモニア還元剤により亜酸化窒素単独又は亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の実施例1,2及び3に従って製造された鉄イオンが担持されたBEAゼオライト触媒を利用した場合、温度とアンモニア還元剤による亜酸化窒素単独の転換率との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例1に従って製造された鉄イオンが担持されたBEAゼオライト触媒を利用した場合、温度とアンモニア還元剤による亜酸化窒素及び一酸化窒素の転換率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。また、本発明を説明するにおいて、関連する公知機能又は公知構成に関する具体的な説明が本発明の要旨の理解の妨げになると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0030】
本発明は、還元剤としてアンモニアを使用した場合、亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に還元させるための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法、その製造方法によって製造された触媒、及びその触媒を利用して亜酸化窒素又は亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減する方法を提供する。
【0031】
まず、鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法について説明する。本発明による触媒の製造方法は、(A)ゼオライトを水分により高温で前処理する段階、(B)(A)段階で前処理されたゼオライト、又は、(A)段階で前処理されていないゼオライトに鉄イオンの前駆体物質溶液によって鉄イオンを担持する段階、(C)(B)段階で鉄イオンが担持されたゼオライト粒子を濾過し、乾燥させる段階、(D)(C)段階で乾燥された粉末の鉄含有量を増加させるために(B)段階及び(C)段階を繰り返す段階、(E)(D)段階で製造された触媒を空気中で焼成する段階、(F)(A)段階を経ていないゼオライトから前記(E)段階で得られた触媒を水分により高温で処理する段階を含む。
【0032】
以下、各段階を具体的に説明する。
【0033】
(A)段階は、鉄イオンを担持するために、ゼオライトを水分処理によって準備する段階である。ゼオライトは、Beta(BEA)、ZSM−5(MFI)、Mordenite(MOR)、Ferrierite(FER)のいずれかを含む。ゼオライトのAl/SiOモル比は、5〜100である。この範囲外では、鉄イオンの担持量が極めて少ないため触媒としての効果が発揮できない。また、ゼオライトは、ナトリウム、アンモニウム及び水素のいずれかの陽イオンを含む。鉄イオンがゼオライト内にイオン交換によって担持されるため、それ以外の陽イオンを使用すると鉄イオンとのイオン交換性能が低下する。このように準備したゼオライトを400〜600℃で加熱した後、ゼオライトの重量に対して0.1〜5倍の水分を窒素雰囲気下で0.1〜2時間供給する。ゼオライトの水分処理効果を得るためには、このような数値範囲で水分処理を行うのが望ましい。
【0034】
(B)段階は、鉄イオン溶液を準備し、ゼオライトに鉄イオンを担持する段階である。鉄イオンの前駆体物質としては、鉄硝酸水和物(iron nitrate hydrate、Fe(NO・9HO)を使用し、濃度は、0.001〜1.0モルに調節する。このような範囲に限定したのは、鉄イオンがゼオライト内にイオン交換させる原動力を提供するとともに過剰の鉄イオンの担持を抑制するためである。鉄イオン前駆体物質の溶液に(A)段階で水分処理したゼオライト、又は、(A)段階を経ていないゼオライトを0.1〜3.0の重量比で添加し、10〜35℃で5〜30時間撹拌する。このような条件に限定したのは、鉄イオンのイオン交換量を最大化させるためである。
【0035】
(C)段階は、(B)段階によるゼオライトスラリーを濾過し、濾過して得られたケーキを脱イオン化された蒸溜水500〜2000mlで洗浄する段階である。この段階では、ゼオライト内にイオン交換されていない溶液内の鉄イオンを濾過によって除去し、ゼオライト粒子の周りに付着している余剰の鉄イオンを洗浄によって除去する。洗浄のための蒸溜水量を上記のように限定したのは、余剰鉄イオンの除去効果を高めるとともに、ゼオライト内に担持されている鉄イオンの損失を最小化するためである。
【0036】
洗浄された鉄イオンが担持されたゼオライトは、空気中の100〜120℃で5〜24時間乾燥する。このように乾燥温度及び時間を限定したのは、ゼオライト内に含まれている水分を除去して次の段階で追加イオン交換及び焼成の効果を高めるためである。
【0037】
(D)段階は、(B)段階及び(C)段階を2〜5回繰り返す段階である。このように回数を限定したのは、鉄イオンの担持量を極大化するとともに、過剰の鉄酸化物がゼオライト粒子の周りに付着することを防ぐためである。
【0038】
(E)段階は、(D)段階で得られたゼオライトを空気中の400〜600℃で1〜5時間焼成する段階である。このように温度及び時間を限定したのは、触媒に含まれている不純物を除去するためである。
【0039】
(F)段階は、(A)段階を経ていないゼオライトから(B)、(C)、(D)、(E)段階を経て得られた鉄イオンが担持されたゼオライトを400〜600℃で加熱した後、ゼオライト重量に対して0.1〜5倍の水分を窒素雰囲気下で0.1〜2時間供給する。(A)段階を経ていないゼオライトに鉄イオンを担持した場合、このように温度、水分量及び時間を限定したのは、鉄イオンが担持されたゼオライト触媒を活性化させるためである。
【0040】
また、本発明は、上述した触媒製造方法によって鉄イオンをゼオライトに担持することで、300〜500℃の温度で亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時にアンモニアにより還元させることで亜酸化窒素及び一酸化窒素を低減する。
【0041】
以下、本発明のより明確な理解のために実施例について説明する。
【0042】
<実施例1>
Al/SiOモル比が25であるBEAゼオライト8gに1liter/minの窒素を供給して500℃で加熱した後、脱イオン化された蒸溜水を注射器ポンプによって0.5ml/minの流量で1時間供給した。蒸溜水を供給した後、同じ窒素流量で常温へ冷却することで水分処理されたBEAゼオライト(A)を準備した。
【0043】
鉄イオン溶液(B)は、鉄硝酸水和物(Fe(NO・9HO)1.6gを脱イオン化された蒸溜水1リットルに溶解させ準備した。水分処理されたBEAゼオライト(A)8gを準備した鉄イオン溶液(B)1リットルに分散させ、21℃で24時間撹拌した。撹拌されたゼオライトスラリーを濾過することで鉄イオンが担持されたゼオライトのケーキを得た。また、脱イオン化された蒸溜水1リットルでゼオライトのケーキを洗浄した。洗浄されたゼオライトのケーキを空気中の105℃で12時間乾燥した。乾燥されたゼオライトを上記した鉄イオン溶液に添加して鉄イオンをイオン交換させ、乾燥させる過程を更に2回行った。最終的に乾燥された鉄イオンが担持されたゼオライトを空気中の500℃で4時間焼成した。
【0044】
<実施例2>
鉄イオン溶液(B)は、鉄硝酸水和物(Fe(NO・9HO)1.6gを脱イオン化された蒸溜水1リットルに溶解させ準備した。Al/SiOモル比が25であるBEAゼオライト8gを準備した鉄イオン溶液(B)1リットルに分散させ、21℃で24時間撹拌した。撹拌されたゼオライトスラリーを濾過することで鉄イオンが担持されたゼオライトのケーキを得た。脱イオン化された蒸溜水1リットルでゼオライトのケーキを洗浄した。洗浄されたゼオライトのケーキを空気中の105℃の温度で12時間乾燥した。乾燥したゼオライトを上記した鉄イオン溶液に添加して鉄イオンをイオン交換させ乾燥させる過程を更に2回行った。最終的に乾燥された鉄イオンが担持されたゼオライトは空気中の500℃で4時間焼成した。
【0045】
鉄イオンが担持されたBEAゼオライト触媒を水分処理するために、焼成された触媒0.4gに1liter/minの窒素を供給しながら500℃で加熱した後、脱イオン化された蒸溜水を注射器ポンプによって0.017ml/minの流量で1時間供給した。蒸溜水を供給した後は、上記と同じ窒素流量で常温に冷却した。
【0046】
<実施例3>
実施例1と実施例2の触媒を比較するために、水分処理を行っていない鉄イオンが担持されたBEAゼオライトを準備した。鉄イオン溶液(B)は、鉄硝酸水和物(Fe(NO・9HO)1.6gを脱イオン化された蒸溜水1リットルに溶解させ準備した。Al/SiOモル比が25であるBEAゼオライト8gを準備した鉄イオン溶液(B)1リットルに分散させ、21℃で24時間撹拌した。撹拌されたゼオライトスラリーを濾過して鉄イオンが担持されたゼオライトのケーキを得た。また、脱イオン化された蒸溜水1リットルでゼオライトのケーキを洗浄した。洗浄されたゼオライトのケーキを空気中の105℃で12時間乾燥した。乾燥したゼオライトを上記した鉄イオン溶液に添加して鉄イオンをイオン交換させ乾燥させる過程を更に2回行った。最終的に乾燥された鉄イオンが担持されたゼオライトを空気中の500℃で4時間焼成した。
【0047】
<実施例4>
アンモニア還元剤による亜酸化窒素単独の還元反応に対する、実施例1、2及び3による触媒の反応性を実験するために各実施例の触媒0.4gを1/2″のステンレススチールチューブ反応器内の中央に配置した。反応器の温度は、電気炉を利用して4℃/minの速度で常温から500℃まで上昇させた。反応器に亜酸化窒素400ppmを供給し、400ppmのアンモニア還元剤を使用した。反応ガス内の酸素濃度を3,000ppmに調節した。反応ガスの総流量は、窒素を利用して0.4l/minに維持し、空間速度(GHSV)を20,000hr-1に維持した。反応後、ガス成分分析のために亜酸化窒素の濃度をオンラインガス分析計(SIEMENS製)によって測定した。
【0048】
図2は、本発明の実施例1,2及び3に従って製造された鉄イオンが担持されたBEAゼオライト触媒を利用した場合、温度とアンモニア還元剤による亜酸化窒素単独の転換率との関係を示すグラフである。図2は、空間速度:20,000hr-1、総有量:0.4l/min、NO:400ppm、O:3,000ppm、NH:400ppmの条件で実験した結果を示す。
【0049】
実施例1、2及び3に従って製造された触媒による亜酸化窒素の転換率は、反応温度350℃で、各々、89%、69%及び27%であった。このことから、水分処理されたBEAゼオライトに鉄イオンを担持した触媒の方が、水分処理を行っていない鉄イオンが担持されたBEAゼオライトより亜酸化窒素の転換率が非常に高いことが分かる。
【0050】
<実施例5>
アンモニア還元剤による亜酸化窒素及び一酸化窒素の同時還元反応に対する、実施例1による触媒の反応性を実験するために触媒0.4gを1/2″のステンレススチールチューブ反応器内の中央に配置した。反応器の温度は、電気炉を利用して4℃/minの速度で常温から500℃まで上昇させた。反応器に亜酸化窒素400ppmを供給し、800ppmのアンモニア還元剤を使用した。反応ガス内の酸素濃度を3,000ppmに調節した。反応ガスの総流量は、窒素を利用して0.4l/minに維持し、空間速度(GHSV)を20,000hr-1に維持した。反応後、ガス成分分析のために亜酸化窒素及び一酸化窒素の濃度をオンラインガス分析計(SIEMENS製)によって測定した。
【0051】
図3は、本発明の実施例1に従って製造された鉄イオンが担持されたBEAゼオライト触媒を利用した場合、温度とアンモニア還元剤による亜酸化窒素及び一酸化窒素の転換率との関係を示すグラフである。図3は、空間速度:20,000hr-1、総有量:0.4l/min、NO:400ppm、NO:400ppm、O:3,000ppm、NH:800ppmの条件で実験した結果を示す。
【0052】
実施例1に従って製造された触媒による亜酸化窒素の転換率及びの一酸化窒素の転換率は、反応温度350℃で、各々、75%及び100%であった。このことから、単一のアンモニア還元剤により亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減できることが分かる。
【0053】
以上、本発明について例示的な実施形態に基づいて説明したが、本発明の技術分野に属する通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲及び要旨を外れずに種々の変形及び変更が可能であることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゼオライトを水分により高温で前処理する段階と、
(B)前記(A)段階で前処理されたゼオライト、又は、前記(A)段階を経ておらず前処理されていないゼオライトに鉄イオンの前駆体物質溶液によって鉄イオンを担持する段階と、
(C)前記(B)段階で鉄イオンが担持されたゼオライト粒子を濾過し、乾燥させる段階と、
(D)前記(C)段階で乾燥された粉末の鉄含有量を増加させるために(B)段階及び(C)段階を繰り返す段階と、
(E)前記(D)段階で製造された触媒を空気中で焼成する段階と、
(F)前記(A)段階を経ていないゼオライトから前記(E)段階までを経て得られた触媒を水分により高温で処理する段階と、
を含むことを特徴とするアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項2】
前記(A)段階において、
前記ゼオライトは、BEA、MFI、MOR及びFERのいずれかを含み、
前記ゼオライトのAl/SiOモル比は、5〜100であり、
前記ゼオライトは、ナトリウム、アンモニウム及び水素のいずれかの陽イオンを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライトを400〜600℃で加熱した後、ゼオライト重量に対して0.1〜5倍の水分を窒素雰囲気下で0.1〜2時間供給してゼオライトを水分処理する
ことを特徴とする請求項2に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(B)段階は、鉄イオンの前駆体物質として鉄硝酸水和物(Fe(NO・9HO)を使用して濃度を0.001〜1.0モル濃度に調節する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項5】
前記鉄イオン前駆体物質の溶液に(A)段階で水分処理されたゼオライト、又は、前記(A)段階を経ていないゼオライトを0.1〜3.0の重量比で添加し、10〜35℃で5〜30時間撹拌する
ことを特徴とする請求項4に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項6】
前記(C)段階は、前記(B)段階で得られたゼオライトスラリーを濾過させ得られたケーキを脱イオン化された蒸溜水500〜2000mlで洗浄し、洗浄した鉄イオンが担持されたゼオライトを空気中の100〜120℃で5〜24時間乾燥する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項7】
前記(D)段階は、前記(B)段階及び前記(C)段階を2〜5回繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項8】
前記(E)段階は、前記(D)段階で得られたゼオライトを空気中の400〜600℃で1〜5時間焼成する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項9】
前記(F)段階は、前記(A)段階を経ていないゼオライトから前記(B)段階、前記(C)段階、前記(D)段階及び前記(E)段階を経て得られた鉄イオンが担持されたゼオライトに対して400〜600℃で加熱した後、ゼオライト重量に対して0.1〜5倍の水分を窒素雰囲気下で0.5〜2時間供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のゼオライト触媒の製造方法によって製造され、
鉄イオンが担持されたゼオライトが活性化され、アンモニア還元剤により70〜100%の亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素の両方を300〜400℃で同時に還元させるように構成される
ことを特徴とするアンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低減するための鉄イオンが担持されたゼオライト触媒。
【請求項11】
亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に供給し、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のゼオライト触媒の製造方法によって製造され活性化された鉄イオンが担持されたゼオライト触媒と接触反応させ、アンモニア還元剤により亜酸化窒素単独或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を同時に低温の触媒反応温度で還元させ低減する
ことを特徴とするアンモニア還元剤により亜酸化窒素或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を低減する方法。
【請求項12】
前記亜酸化窒素及び一酸化窒素の低減時の触媒反応温度は、低温の300〜500℃である
ことを特徴とする請求項11に記載のアンモニア還元剤により亜酸化窒素或いは亜酸化窒素及び一酸化窒素を低減する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−521288(P2012−521288A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501916(P2012−501916)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001539
【国際公開番号】WO2010/110502
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(595065552)コリア インスティチュート オブ エナジー リサーチ (11)
【Fターム(参考)】