説明

鉄ベースの非メタロセン複合体を有するフッ素化された担体

【課題】【解決手段】(a) 鉄ベースの非メタロセン触媒成分、(b) アルカリ化剤および(c) 官能化され且つフッ素化された活性担体から成る活性担持触媒系と、この活性担持触媒系の製造方法と、そのオレフィン重合での使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性担体上に支持された非メタロセン複合体を有するオレフィン重合方法に関するものである。
本発明のこの触媒は高価な有機アルミニウムオキシ−化合物または有機硼素化合物を含むものに比べて触媒寿命が長く、例えば30分以上の触媒寿命を有する。
【背景技術】
【0002】
エチレンやプロピレンのようなモノ-1-オレフィンは、遷移金属、例えばチタン、バナジウム、クロム、ニッケルおよび/またはその他の金属を、アルミナ、シリカ、チタニア、その他の耐火性金属のような担体に支持するか、支持せずに用いた触媒系で重合することができるということは公知である。多くの場合、担持された重合触媒系は共触媒、例えばアルキル硼素化合物および/またはアルキルアルミニウム化合物および/またはアルキルアルミノキシ化合物と一緒に用いられる。有機金属触媒系またはチグラー−ナッタタイプの触媒系は一般に担持され、共触媒、例えばメチルアルミノキサンと一緒に使用される。触媒および共触媒の外に他の成分をさらに用いることもある。
【0003】
また、スラリーまたはループ式のポリマー製造プロセスは簡単でないが、他の重合プロセスより運転が容易であるため商業的には望ましい重合プロセスであるということも周知である。さらに、使用する重合プロセスのタイプが最終的に得られるポリマーに影響を及ぼす。例えば、反応装置の温度が高いと触媒活性および生産性が低下し、ポリマー製品の分子量が小さくなる。反応装置圧力を高くすると、得られるポリマーに望まれる分枝量が減少する。
【0004】
スラリー法を用いて作った大部分のポリマー製品、特に担持クロム触媒系を使用して作ったポリマー製品は分子量分布が広く、従って、ポリマー製品を最終製品に成形するのが極めて容易である。他の方法、例えば高温および/または高圧の溶液法で作ったポリマーは分子量分布の幅が狭く、そうしたポリマーは物品への製造方法が非常に難しくなる。
【0005】
多くの均質有機金属触媒系は活性が低く、極めて高価なメチルアルミノキサン(MAO)のような共触媒の消費量が多く、得られるポリマーは低分子量で、分子量分布の幅は狭い。さらに、MAOは所望特性を有するポリマーを作るのに有用であり、必要であったとしても、MAOが過剰になると触媒系の活性が低下することになる。しかも、このタイプの均質触媒系は溶液または気相の重合化方法だけで用いるのが好ましい。
【0006】
下記文献にはニッケルまたはパラジウムα-ジイミン錯体と、金属含有ヒドロカルビル化物と、所定のルイス酸とを含む触媒系を用いてオレフィンを重合する方法が記載されている。
【特許文献1】米国特許第US-A-5852 145号明細書
【0007】
金属含有ヒドロカルビル化物はヒドロカルビル基をニッケルまたはパラジウム化合物へ移すことができる化合物と定義されている。この特許で有用なアルキル化剤(ヒドロカルビル化物を含む金属の形で定義される)は式:MX2Rn6または[AI(O)R11qで表され、ハロゲン基を有する,または有しない、アルキルアルミニウムおよびアルキル亜鉛化合物、さらには、アルキルアルミノキサンを含む。この特許で選択されるルイス酸は化合物(II)とよばれ、この化合物(II)は、ヒドロカルビル化物がアルミニウム原子またはアルキル・アルミノキサンに結合した一つまたは複数のハロゲン原子を含むアルキルアルミニウム化合物でない場合には、必須であるとされている。
【0008】
下記文献には、ニッケルおよびパラジウム触媒と金属アルキル共触媒とから成る触媒系でのアルミノホスフェートの使用を開示している。
【特許文献2】米国特許第US-A-6583235号明細書
【0009】
下記文献には第8、9、10族金属複合体をベースにした活性触媒系を開示している。
【特許文献3】ドイツ特許第DE-A-19959251号公報
【0010】
エチレンの単独重合または共重合に適したジイミンニッケル二ハロゲン化複合体は下記文献に開示されている。
【特許文献4】欧州特許第EP-A-884331号公報
【0011】
下記特許文献5にもオレフィンの重合に適した多数の最近の遷移金属複合体が開示され、特に、下記非特許文献1にはエチレンの単独重合または共重合で使用可能なレート金属触媒を開示している。
【特許文献5】米国特許第US-A-4、716,208号明細書
【非特許文献1】lttel et al.,Ittel S. D., Johnson L.K. and Brookhart M.; in Chem. Rev., 100, 1169, 2000
【0012】
しかし、これらの触媒成分は全て、オレフィンを重合するのに活性化剤、好ましくはアルミノキサンを使用しなければならないという不利な点がある。
下記文献には有機アルミニウムオキシ−化合物も有機硼素化物も含まないオレフィン重合方法および触媒の製造方法が開示されている。
【特許文献6】欧州特許第EP 1238989号公報
【0013】
この触媒は高価な有機アルミニウムオキシ−化合物や有機硼素化合物を使用せずに高い重合活性を有し、長い触媒寿命で高い活性を示す。このオレフィン重合触媒は以下から成る:
(A) 硼素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレニウムから成る群の中から選択される少なくとも2つの原子を含む遷移金属化合物またはランタノイド化合物−この特許では非メタロセン複合体とよばれる、
(B) CdCl2タイプ、例えばMgCl2(金属リストからアルミニウムは除かれる)、クレーまたはクレーミネラルまたはイオン交換層状化合物またはヘテロポリ化合物またはハロゲン化ランタノイド化合物のような層状結晶構造を有するイオン性結合化合物を有することができるルイス酸、
(C) 酸素含有化合物または窒素含有化合物、
(D) 化合物(A)に対して酸素含有化合物または窒素含有化合物(C)を不活性にする酸素含有化合物または窒素含有化合物と反応可能な不活性化化合物。
【0014】
高価な有機アルミニウムオキシ化合物を用いた、または用いないメタロセン触媒成分と一緒に活性化担体を使用することも下記文献に記載の通り公知である。
【特許文献7】フランス特許第FR-2769245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、アルミノキサンを必要としない、製造が簡単な、遷移金属複合体をベースにした活性触媒系を製造するというニースがある。
本発明の目的は、上記のような非メタロセン複合体または特許文献6(欧州特許第EP1 238 989号公報)に記載の非メタロセン(I)〜(III)を用いて製造される活性触媒系を製造することにある。その際に、非メタロセン化合物用のアルキル化剤と組合されたフッ素化アルミニウム・ルイス酸を含む活性化担体によって賦活階段が行われる。
本発明の他の目的は、形態に優れたポリオレフィンを製造することにある。
本発明のさらに他の目的は、活性寿命が長く、典型的には少なくとも30分の活性寿命を有する、従来法と互換性のある触媒系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、下記(a)〜(c)から成る触媒系を開示する:
(a) 硼素、窒素、酸素、燐、硫黄およびセレニウム、好ましくは窒素または酸素から成る群の中から選択される少なくとも2つの原子を含む非メタロセン配位錯体、
(b) フッ素化アルミニウム・ルイス酸を含む活性化担体、
(c) 非メタロセン錯体に結合した金属-炭素結合を作ることが可能な少なくとも一つの金属炭素を有する有機金属化合物。
【0017】
本発明の好ましい実施例では金属ベースの成分は下記の式(I)で表すことができる:
【0018】
【化1】

【0019】
[ここで、
Lは異種原子を含むリガンド、
nは1〜3の整数、
Xは金属Mに共有結合またはイオン結合した原子または基、
2とR4はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビル、置換または未置換のヘテロヒドロカルビルまたはSiR'3の中から選択され(ここで、SiR'はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビルまたは置換または未置換のヘテロヒドロカルビルから選択され、互いに隣接したR'は一緒になって環を形成していてもよく)、
MはFeであり、
Tは遷移金属の酸化状態、bは原子または基Xの結合価、
YとY'はそれぞれ独立してCまたはP(R3)から選択され、
1、A2およびA3はそれぞれ独立してN、PまたはCR9であるが、少なくとも1つはCR9であり、
3、R7、R8およびR9はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビル、置換または未置換のヘテロヒドロカルビルまたはSiR'3の中から選択され(ここで、SiR'はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビルまたは置換または未置換のヘテロヒドロカルビルから選択される)]
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
YまたはY’はCであるのが好ましい。A1〜A3は各々独立してCR9であるか、A1およびA3の両方がNで、A2がCR9であるか、A1またはA3の一方がNで、他の2つが各々独立してCR9であり、より好ましくはCR9はCHである。
【0021】
2とR4は各々独立して置換または未置換の脂環式基、複素環基または芳香剤基の中から選択するのが好ましく、例としてはフェニル、1- ナフチル、2- ナフチル、2- メチルフェニル、2- エチルフェニル、2,6- ジイソプロピルフェニル、2,3- ジイソプロピルフェニル、2,4- ジイソプロピルフェニル、2,6- ジ-n- ブチルフェニル、2,6- ジメチルフェニル、2,6- ジメチルフェニル、2,6- ジメチルフェニル、2- ジ-t- ブチルフェニル、2,6- ジフェニルフェニル、2,4,6- トリメチルフェニル、2,6- トリフルオロメチルフェニル、4- ブロム-26- ジメチルフェニル、3,5- ジクロル-26- ジエチルフェニル、2,6- ビス(2,6- ジメチルフェニル)フェニル、シクロヘキシル、ピロリル(pyrolyl)、2,5-ジメチルピロリルおよびピリジニルが挙げられる。
【0022】
本発明の他の実施例では、非メタロセン錯体は下記の式(Ia)、(IIb)または(IIIc)で表される:
【0023】
【化2】

【0024】
(ここで、全ての記号は欧州特許第EP−A−1238989号公報の第4頁第32行、第9頁第17行に記載の意味を有し、ただし、Mは鉄に限定される)
【0025】
上記の非メタロセン配位錯体またはメタロセンおよび/または非メタロセン配位錯体の組合せは活性化担体上に堆積させ、それと反応させることができる。この活性化担体は下記の工程で製造できる:
(a) 一種以上の多孔質鉱物酸化物から作られた担体を用意し、
(b) 必要に応じて、この担体を不活性ガス下に加熱し、
(c) 上記担体をアルキル化剤を含む溶液で官能化し、
(d) 上記担体をフッ素化剤を含む溶液でフッ素化し、
(e)フッ素化された活性担体を取出す。
【0026】
官能化剤とフッ素化薬剤とを含む適当な溶液を用いることで官能化と弗素化とを1階段で行うこともできる。
本発明の特徴は、鉄錯体を活性化するために官能化し且つフッ素化した担体を加熱したり、酸化する必要がないという点にある。これとは違って、鉄以外の金属は活性化しなければならない。
多孔質無機酸化物はシリカ、アルミナおよびこれらの混合物の中から選択するのが好ましく、好ましくはシリカにする。多孔質無機酸化物は以下の特数の少なくとも1つを有するのが好ましい:
(1)7.5〜30ナノメートルの直径を孔を有する。
(2)1〜4cm3/gの気孔率を有する。
(3)100〜1000m2/gの比表面積を有する。
(4)1〜100マイクロメートルの平均直径を有する。
【0027】
担体は官能化される前にその表面上に-OHラジカルを有する。特に、100〜1000℃の温度、好ましくは120〜800℃の温度、より好ましくは140〜700℃の温度で不活性ガス下に少なくとも60分の間熱処理するか、化学処理することで1nm2当り0.25〜10、好ましくは0.5〜4つの-OHラジカルを有するようになる。この担体は官能化後に1nm2当り少なくとも部分的にフッ素化されたアルミニウムおよび/またはマグネシウム・ルイス酸部位を同じだけ有する。
【0028】
担体は各種の担体にすることができる。その種類、水和状態および水の保持能力に従って、所望する-OHラジカルの表面含有量となるように、脱水処理の強さを変えることができる。当業者は-OHラジカルの所望の表面含有量となるように、担体に加える脱水処理の強さをルーチンの試験によって決定することができる。
【0029】
出発材料の担体はシリカから成るのが好ましい。一般に、シリカは不活性ガス、例えば窒素またはアルゴン下に大気圧または約10-5バールの減圧下に、100〜1000℃、好ましくは120〜800℃、より好ましくは140〜700℃の温度で、少なくとも60分間加熱することができる。この熱処理時に脱水を速めるためにシリカに例えばNH4Clを混合することもできる。
【0030】
あるいは、熱処理を100〜450℃の温度でシラン化処理と一緒に行うこともできる。この場合にはシリコンから生じる化学種が担体表面とグラフトし、その表面がより疎水性になる。
【0031】
このシランは例えばアルコキシトリアルキルシラン、例えばメトオキシトリメチルシランまたはトリアルキルクロルシラン、例えばトリメチルクロルシランまたはトリエチルクロロシランにすることができる。これは一般に有機シラン溶液中に担体の懸濁液を形成する担体に適用される。このシラン溶液は担体上のOHラジカルの1モル当り0.1〜10モルの濃度を有する。この溶液のための溶剤は直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素、例えばヘキサンまたはヘプタン、置換されていてもよい脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、芳香族炭化水素、例えばトルエン、ベンゼンまたはキシレンの中から選択することができる。シラン溶液による担体の処理は一般に撹拌下に50〜150℃の温度で1〜48時間行うことができる。
【0032】
シラン化処理後、例えばサイフォンを通すか、濾過して溶剤を除去し、例えば担体1グラム当り0.3リットルの溶剤を用いて担体を完全に洗浄する。
【0033】
担体の表面-OHラジカル含有量は公知の方法を用いて分析できる。例えば、担体をCH3MgIのような有機マグネシウム化合物と反応させ、放出されたメタンの量を測定することによって決定できる(下記文献参照)。
【非特許文献2】McDaniel (McDaniel M. P., in J. Catal., 67, 71 ,1981
【0034】
あるいは、担体をトリエチルアルミニウムと反応させ、放出されたエタンの量を測定することによって決定することができる(下記文献参照)。
【非特許文献3】Gachard-Pasquet (Thesis of Veronique Gachard-Pasquet, Universite Claude Bernard, Lyon 1 , France, pages 221-224, 1985
【0035】
本発明の第1の実施例では官能化と弗素化を2つの別々の階段で実行する。次に、担体粒子が有する-OHラジカルを少なくとも一種の官能化剤と反応させて活性化担体を形成する。本発明では特許文献7(フランス特許第FR-2,769,245号公報)の第5頁第9行目〜第6頁第11行目に記載の任意の官能化剤またはその混合物を使用することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施例では、官能化階段は官能化剤を含む溶媒中で担体粒子の懸濁液を−150℃〜+150℃の温度で1分〜12時間の時間処理し、洗浄後、グラフトされた粒子を回収することによって実行される。溶剤は脂肪族、脂環式および芳香族の炭化水素から選択するのが好ましい。この処理は30〜100℃の温度で、1〜3時間行うのが好ましい。官能化剤の濃度は担体粒子1g当り0.5〜20mmolにするのが好ましい。
【0037】
次に、官能化された担体をフッ素化剤で処理して、官能化剤のラジカルをフッ素で部分的に置換する。官能化された担体粒子をガスのフッ化水素酸と接触させてフッ素化処理を行うことができる。この接触階段は20〜800℃の温度で1分〜24時間の時間行う。あるいは、フッ化水素酸を粉末の(NH42SiF6に代えることができる。この(NH42SiF6によるフッ素化処理は担体粒子の混合物を不活性ガス、例えばアルゴンまたは窒素流下に穏やかに流動化させ、300〜500℃の温度で1〜10時間、熱処理することで実行できる。このフッ素化処理では担体の全重量に対して1〜10重量%のフッ素を使用する。好ましいフッ素の最少量は3重量%である。好ましいフッ素の最大量は7重量%、好ましくは6重量%、さらに好ましくは5重量%である。
【0038】
本発明の第2実施例ではフッ素化階段を無くし、少なくとも一つのアルミニウムと、1つのフッ素と、1つの有機基とを有する化合物で担体を処理し、必要に応じてさらに、M''F、M''RP、M'F2、M'RPFまたはM'RP2の中から選択される一つ以上の化合物をさらに組み合わせて処理することもできる。ここで、M''は1族金属、M'は2族金属、RPは1〜20の炭素原子を有するアルキル基である。有機基は1〜12の炭素原子を有するヒドロカルビル、より好ましくはアルキル基であるのが好ましい。官能化兼フッ素化剤は下記の式(III)の化合物であるのが好ましい。
【0039】
Al(R')2F (III)
(ここで、R'基は1〜20の炭素原子を有するアルキル基で、互いに同じでも異なっていてもよく、R'基は好ましくはメチル、エチル、ブチルおよびヘキシルであり、全てのR'基は同じものであるのがより好ましい。最も好ましい式(III)の化合物はフッ化ジエチルアルミニウム(diethyl aluminium fluoride)である。フッ素化アルキルアルミニウムは下記文献に記載の方法で得ることができる。
【非特許文献4】H. Roesky review, Journal of Fluorinated Chemistry, 2003, 122, 125
【0040】
官能化剤は単独でも、M''F、M''RP、M'F2、M'RPFまたはM'RP2の中から選択される一つ以上の基と一緒に組み合わせて用いることができる。ここで、M''は第1族金属、好ましくはNaであり、M'は第2族金属、好ましくはMgであり、Rpは1〜20の炭素原子を有するアルキルである。
【0041】
式(Ia)、(IIb)または(IIIc)のいずれかに記載の非メタロセン配位錯体またはこれらの組み合わせ物は活性化担体に含浸されているか、活性化担体と反応される。
置換基の種類、寸法および位置に応じてポリマーの構造は決定され、従って、置換基の種類、寸法および位置はポリマーの所望特性および構造に従って選択される。得られるポリマーは置換基の種類および位置によってアイソタクチックまたはシンジオタクチックになる。
【0042】
本発明ではアルキル化階段は錯体を活性化せずにアルキル化できる有機金属化合物で行なわなければならない。アルキル化剤は金属-L基結合を金属-炭素結合または金属-水素結合に変えることができる有機金属化合物またはその混合物で、Al、Li、MgまたはZnのアルキル化誘導体から選択できる。アルキル化剤は式(IV)のアルミニウムのアルキル化誘導体から選択するのが好ましい。
【0043】
Al RmnX'3-n (IV)
(ここで、
m基は1から12の炭素原子を含む置換または未置換のアルキル、例えばエチル、イソブチル、n-ヘキシルおよびn-オクチルであり、互いに同じでも異なっていてもよく、X'はハロゲンまたは水素であり、nは1〜3の整数であり、ただし、少なくとも一つのRm基はアルキルである)
【0044】
さらに、最終触媒系の活性をダメにしない限り、金属-炭素結合を作ることができる任意の有機金属化合物にすることができる。
好ましいアルキル化剤はアルミニウムアルキルであり、より好ましくはトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)またはトリエチルアルミニウム(TEAL)である。
アルキル化剤はジエチル亜鉛にすることもできる。
【0045】
活性触媒系を作る場合、アルキル化剤、活性化官能化担体および非メタロセン錯体は任意の順番で加えることができる。本発明の一実施例では、先ず最初にアルキル化剤を活性化官能化担体に加え、次に、芳香族溶剤に溶かした非メタロセン錯体を加え、それから処理済みの担体を加える。本発明の他の実施例では、アルキル化剤と非メタロセン錯体とを混合し、混合物に活性化担体を加える。
【0046】
アルキル化剤の量は変えることができ、Al/Mの比は1〜10000である。活性化担体の量は鉄ベースの非メタロセン錯体の1ミクロモル当り0.01〜2000mgの担体である。
本発明で使用可能なモノマーはα−オレフィンまたはエチレンであり、好ましくはエチレンおよびプロピレンである。
重合条件は特に制限されず、モノマーと高性能(レート)遷移金属錯体によって変わる。重合温度は0〜120℃で、モノマー圧力で定義される圧力は大気圧から100バールまでであり、一般には3〜50バールである。
鎖長を制御するために水素を系に加えることができる。
【0047】
本発明の触媒系は均質重合と比較して、反応装置をきれいに維持しておくことができるという大きな効果を有している。
本発明の他の効果は、高価な有機アルミニウムオキシ化合物または有機硼素化合物を含むものより触媒寿命が長い点にある。
【実施例】
【0048】
以下の全ての実施例はアルゴン下で古典的なシュレンク(Schlenk)法を用いて実行された。ヘプタンおよびトルエンの溶剤は0.3ナノメートルのモレキュラーシーブ上で乾燥した。数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwおよび多分散性指数Mw/Mnはトリクロロベンゼン(TCB)溶剤を用いて135℃でSteric Exclusion Chromatography (SEC)によってポリスチレンスケールで求めた。ポリエチレンのMark-Houwinck係数はK=5.25.10-4、α=0.76。
【0049】
溶融温度は示差走査熱量測定(DSC)法で測定し、密度はASTM 1505規格の方法で23℃の温度で測定した。ポリマーの形態は、充分な量のポリマーが得られた場合には粒度分析で求め、そうでない場合には電子顕微鏡で求めた。
【0050】
実施例1
担体S1の合成
出発材料のシリカは以下の特数を有するタイプ332のグレイス ダビッドソン(Grace Davidson、登録商標)のシリカである:
平均粒径=70マイクロメートル
平均比表面積=300m2/g
孔容積=1.65mL/g
見掛け密度=0.35g/cm3
【0051】
ステップA
5gのシリカを以下の温度管理下に動的減圧(102mバール)下に加熱した:
30℃から100℃へ1時間;
100℃から130℃へ30分;
130℃から450℃へ1時間;
450℃で4時間維持。
得られたシリカの表面シラノールの量は1.3mmol/gである。
【0052】
ステップB
機械的撹拌機を備えた250cm3の三口フラスコ中で、2.32gの加熱したシリカを100mlの無水ヘプタン中に懸濁した。得られた懸濁液を15 mlのフッ化ジエチルアルミニウム(DEAF)の0.6Mトルエン溶液すなわちシラノールに対して3当量で室温(約25℃)で1時間処理する。次に、100MLのトルエンを加え、溶液を撹拌下に10分間維持した。懸濁液を静置分離し、上澄を取出す。製品を30mlのヘプタンで3時間洗浄した。得られた含浸済み担体を減圧下(10-2mバール)で1時間乾燥した。
原子発光分析(Inductive Coupled Plasma)による処理済み担体の元素分析結果はAl 4.56%、F 2.21%であった。
【0053】
実施例2
錯体2,6-ビス[2.6-ビス(イソプロピル)フェニル)イミド)エチル]ピリジンFe(M)ジクロライドC1の合成(図1)
リガンドの2,6-ビス[1-2,6-ビス(イソプロピル)フェニル)イミド)エチル]ピリジンを下記文献に記載の方法で製造した。
【非特許文献5】Gibson (Gibson V. C, in J. Am. Chem. Soc, 121 , 8728, 1999
【0054】
(C33433)の元素分析から下記の結果を得た:
理論値:% C= 82.32;% H= 8.94;% N=8.73
測定値:% C= 82.11;% H=8.91;% N=8.69
1H NMR(CDC13):δ8.52(d、2H、3J(HH)=7.8 Hz,Py-Hm)、7.94(t、1H、Py-Hp)、7.1(m、6H、Ar-H)、2.78(sept、4H、3J(HH)=5.6Hz、CHMe2)、2.28(s、6H、N=CMe)、1.18(d、24H、CHMe2
【0055】
上記で製造したリガンドから、同じく上記非特許文献5(Gibson)に記載の方法で2,6-ビス[1-2,6-ビス(イソプロピル)フェニル)イミド)エチル] ピリジンFe(II)二塩化物の青色錯体を得た。(C33H43N3FeC12)の元素分析から下記の結果を得た:
理論値:% C= 64.19;% H= 7.18;% N=6.8%
測定値:% C= 64.19;% H=6.9 ;% N=6.7
【0056】
実施例3
MAOによる錯体C1の賦活
アルゴン下に置いた1Lのフラスコに300mlのヘプタンと、1.17mlのMAO溶液(Albemarle,トルエンの10重量%溶液)とを加えた。15μmol/Lに対応する5mlの上記錯体C1(トルエン中の1.046M)の懸濁液(Al/Fe比は333)をフラスコに注入した。黄色の媒体を室温(約25℃)で5分間、手動で撹拌した後、500mlのブッチ(Buchi)タイプの反応装置中に注入した。
重合は50℃の温度、エチレン圧力3バールで、25分間行った。ポリマーを濾過し、メタノールで洗浄し、減圧乾燥した。得られた24.29gのポリマーの活性は1.1 107g/molFe/hに対応し、下記特性を有している:
Mw= 250000
D= 27.1
Tm= 137.3℃
結晶化度= 46%
形態(モルフォロジー)なし
【0057】
実施例4
担体S1およびTiBAIによる錯体C1の賦活
アルゴン下に置いた50mLのフラスコ中で0.52mlのTIBAI(ヘプタンの1M溶液)を2mLの青色錯体C1(トルエン中、[Fe]=2.669mM溶液)の懸濁液に加えた。溶液は直ちに黄色になった。アルゴン下に置いた50mLのフラスコ中で秤量した194mgの担体S1に1.57mLの黄色の錯体溶液C1/TIBAIを加えた。担体は黄色になるが、残りの溶液は無色である。
アルゴン下に置いた1Lのフラスコ中で333mLのヘプタンに黄色の錯体溶液C1/TIBAIを含浸したS1担体の全ての懸濁液を加えた。上澄は無色になり、重合中、無色のままであった。
【0058】
媒体を室温(約25℃)で5分間、手動で撹拌した後、500mLのブッチ(Buchi)タイプの反応装置に注入した。重合は50℃の温度、エチレン圧力3バールで60分間行った。得られたポリマーを濾過し、メタノールで洗浄し、減圧乾燥した。得られた1.02gのポリマーの生産性は5g/g担体に対応し、下記の特性を有する:
Mw= 837000(図2)
D= 18.7
Tm= 137.2℃
結晶性= 46%
形態=[図3]に示す形態
【0059】
結論として、全ての実施例において本発明の触媒系は高価な有機アルミニウムオキシ化合物または実施例2に記載の有機硼素化合物より長い触媒寿命を示し、得られたポリマーは優れた形態を有している。本発明の触媒系の寿命は30分以上である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】錯体C1、2,6-ビス[1,2,6-ビス(イソプロピル)フェニル)イミド)エチル]ピリジンFe(II)二塩化物の構造を表す図。
【図2】実施例3および実施例4で得られた活性プロフィルの図。
【図3】実施例3および実施例4で得られたポリマーの分子量分布を表す図。
【図4】図4aと図4bは実施例4で製造されたポリエチレンの形態を表す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c):
(a) 活性化担体を作り、
(b) この活性化担体と鉄ベースの非メタロセン配位錯体と反応させ、
(c) 少なくとも一つの金属−炭素結合を有する有機金属化合物を加え、
の工程から成る活性担体触媒系の製造方法であって、
上記活性化担体を下記の(1)〜(5):
(1)一種以上の多孔質無機酸化物から担体を作り、
(2)必要に応じて、この担体を不活性ガス下に加熱し、
(3)上記担体をアルキル化剤で官能化し、
(4)フッ素化剤を含む溶液で上記担体をフッ素化し、
(5)フッ素化された活性担体を取出し、
の工程で製造し、上記鉄ベースの非メタロセン配錯体が下記式(I)で表されることを特徴とする方法:

[ここで、
Xは鉄に共有結合またはイオン結合した原子または基、
Lは異種原子を含むリガンド、
nは1〜3の整数、
Tは遷移金属の酸化状態、bは原子または基Xの結合価、
2とR4はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビル、置換または未置換のヘテロヒドロカルビルまたはSiR'3の中から選択され(ここで、SiR'はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビルまたは置換または未置換のヘテロヒドロカルビルから選択され、互いに隣接したR'は一緒になって環を形成していてもよく)、
YとY'はそれぞれ独立してCまたはP(R3)から選択され、
1、A2およびA3はそれぞれ独立してN、PまたはCR9であるが、少なくとも1つはCR9であり、
3、R7、R8およびR9はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビル、置換または未置換のヘテロヒドロカルビルまたはSiR'3の中から選択され(ここで、SiR'はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、置換または未置換のヒドロカルビルまたは置換または未置換のヘテロヒドロカルビルから選択される)]
【請求項2】
Yおよび/またはY'がCである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2およびR4がそれぞれ独立して置換または未置換の脂環式基、複素環式基または芳香剤基の中から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
非メタロセン配位錯体が下記の式:(Ia)、(IIb)または(IIIc)である請求項1に記載の方法:

(ここで、全ての記号は欧州特許第EP−A−1238989号公報の第4頁第32行、第9頁第17行に記載の意味を有し、ただし、Mは鉄に限定される)
【請求項5】
上記の官能化階段および弗素化階段を少なくとも一つのアルミニウム、1つの塩素および1つの有機基を含む試薬を用いて一階段で実行する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記の官能化の試薬がAI(R')2Fである請求項5に記載の方法。(ここで、各R基は1〜20の炭素原子を有するアルキル基で、互いに同じでも異なっていてもよい)
【請求項7】
有機金属化合物がアルミニウムアルキルである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を用いて得られる鉄ベースの活性触媒系。
【請求項9】
下記(a)〜(d)の工程から成るオレフィンの単独重合または共重合方法:
(a) 請求項8に記載の活性担体触媒系を用意し、
(b) 反応帯域中にモノマーと任意成分のコモノマーとを注入し、
(c) 重合条件下に維持し、
(d) ポリマーを取出す。
【請求項10】
モノマーがエチレンまたはプロピレンである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の方法で得られるポリマー。
【請求項12】
触媒寿命を30分以上に維持するための請求項9に記載の活性担持触媒系の使用。

【公表番号】特表2009−503214(P2009−503214A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524489(P2008−524489)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064676
【国際公開番号】WO2007/014890
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】