説明

鉄塔用飛散防護ネットの取付工法

【課題】飛散防護ネットの設置・撤去作業の手間を削減し、また、FRP製パイプ材、FRP製足場等の鉄塔への設置数量を半減させることができ、さらに、一度鉄塔に張設した飛散防護ネットを下部に降ろすことなく施工することができると共に、飛散防護ネットにかかる風圧による荷重を充分に受け止めることができる鉄塔用飛散防護ネット取付工法を提供する。
【解決手段】本発明は、鉄塔の塗装工事施工時に、該鉄塔を覆って外部への塗料・ケレンカス等の飛散を防止するための鉄塔用飛散防護ネットの取付工法であって、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層構造物である、例えば、架空送電線等の既設の鉄塔の周囲に、飛散防護ネットを張設するための鉄塔用飛散防護ネットの取付工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、架空送電線等の鉄塔は、防錆のために定期的に刷毛塗り作業等によって塗装されている。
【0003】
このような鉄塔の塗装作業を行うに際し、図18乃至図31の作業手順に示されるように、鉄塔の周囲・外方へ塗料・ケレンカス等が飛散するのを防止するために、飛散防護ネット1が使用される。
【0004】
この飛散防護ネット1は、1重メッシュシート、あるいは、1重メッシュシートを2枚重ね合わせた2重メッシュシート等によって形成され、一辺の長さが、例えば、約6m程度以下と小サイズのものが使用されている。
【0005】
そして、複数の飛散防護ネット1を構成するメッシュ同士は、なまし鉄線により結束している。
【0006】
また、飛散防護ネット1の鉄塔への設置においては、事前に丸太やFRP製のパイプ、単管パイプ等を鉄塔材に固定しておく等して、鉄塔に飛散防護ネット1を張設するための仮設作業を行い、その仮設部に飛散防護ネット1を設置する工法が一般的である。
【0007】
すなわち、この工法では、先ず、図28に示すように、FRP製単管パイプ等の資材を専用資材袋に収納し、この専用資材袋を、鉄塔内において荷揚げロープを使って荷揚げする。そして、この資材を鉄塔アーム部材になまし鉄線を使って結束する。また、資材同士の結束は、なまし鉄線やキャッチクランプを使用する。これと同時にアルミ製の足場板8を中間ステージの位置まで荷揚げし、なまし鉄線にて結束する。図18・図19には、中間ステージの足場板8の構成と、足場板8にFRP製パイプ材5を配設した構成が示されている。
【0008】
飛散防護ネット1は、予め丸く束ねておき、鉄塔内で荷揚げロープを使って荷揚げした後、図20・図29に示すように、中間ステージより転落防止用の水平ガイドロープを介して鉄塔外側に引き出し、さらに荷揚げロープ7を使って鉄塔頂上まで荷揚げする。
【0009】
そして、図21・図22・図27・図31に示すように、飛散防護ネット1を展開して鉄塔および腕金の周囲全体に取り巻くようにしてから、飛散防護ネット1を各資材になまし鉄線を使って固縛する。このとき、強風等の悪天候が予想される場合には、作業員を各鉄塔アーム毎に配置し、例えば、養生シート固縛間隔を2m以内として、この飛散防護ネット1を固縛する。
【0010】
また、図23乃至図26は、鉄塔下部周囲に飛散防護ネット1を仮設する手順を示している。このとき、飛散防護ネット1の上端を鉄塔の外側から荷揚げロープ7を使って中間ステージ位置まで荷揚げして吊り下げた状態にしておき(図24参照)、この状態で飛散防護ネット1を横方向に展開した後(図25参照)、飛散防護ネット1を各資材になまし鉄線を使って固縛するのである(図26参照)。
【0011】
この他、従来工法の他の例としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。この工法では、鉄塔の上部位置に、4つの主材からそれぞれ外方に突出する上突出棒が取り付けられ、他方、鉄塔の下端付近には各上突出棒の直下位置にそれぞれ下突出棒が取り付けられ、上下一対の突出棒間にそれぞれガイドロープ(合計4本)が緊張状態で張設される。
【0012】
また、防護ネットには、各ガイドロープに対応する4つの角部のそれぞれ上下2位置(合計8位置)にそれぞれガイド環を取り付け、この上下一対で4組のガイド環には、それぞれガイドロープを挿通させ、防護ネットは各ガイドロープに沿って上下動し得るようになっている。
【0013】
昇降装置は、防護ネットを吊下げている吊下げロープと、該吊下げロープを巻取るウインチを使用している。各吊下げロープは、対向位置にある2本の上突出棒の先端部付近に取り付けた滑車に巻掛けし、その各一端を防護ネットの上部枠に固定すると共に、各他端側を地上まで垂下させてそれぞれウインチに巻取らせている。
【0014】
こうして、鉄塔の最大外形部の外側を囲繞し得る大きさの筒状で、所定の高さ幅の単一の防護ネットで鉄塔の外側を囲繞した状態で、該防護ネットを塗装すべき高さに対応して上下動させながら順次塗装を行うものである。
【特許文献1】特開2001−347203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来においては、飛散防護ネットは、1重メッシュシート、あるいは、メッシュシートを2枚重ね合わせた2重メッシュシート等を複数使用しており、複数のメッシュ同士の結束は、双方のメッシュ端部を丸めて絞りながら番線ロープ等で結束して接合しているため、鉄塔の最大外形部の外側を囲繞し得る大きさの飛散防護ネットを作るのに、1基当たり20人程度の作業員による労力が必要であった。
【0016】
また、架空送電線の鉄塔の場合、片側の回線においては電気を充電しての作業が求められていることから、従来においては、飛散防護ネットを鉄塔に固定する資材として電気絶縁性の高いFRP製によるパイプ材が多く使用されている。
【0017】
しかし、パイプ材の強度は決して強いものではなく、飛散防護ネットの自重と飛散防護ネットにかかる風圧による荷重を受け止めるために、大量のパイプ材を鉄塔上に設置する必要がある。
【0018】
さらに、飛散防護ネット自体の強度、パイプ材、足場材等の強度の関係から、強風等の荒天時には一度設置した飛散防護ネットを毎日撤去しなければならないのが実状である。
【0019】
特に、飛散防護ネットは、FRP製によるパイプ材のみによって吊持されているため、パイプ材に荷重が集中してしまう。そして、パイプ材自体は、約140kg以上の曲げ荷重によって容易に破断してしまうのである。
【0020】
これは、パイプ材の下面が、略L字形に形成したアングル材の上端部による一点で支持されていることから、パイプ材の端部に荷重がかかると、パイプ材とアングル材が接している一点部分に荷重が集中してしまうため、パイプ材が容易に破断してしまうのである。
【0021】
一方、特許文献1に示す工法においては、防護ネットは、各ガイドロープに対応する4つの角部のそれぞれ上下2位置(合計8位置)に取り付けられた4組のガイド環にそれぞれガイドロープを挿通させて、該防護ネットを昇降装置により各ガイドロープに沿って上下動し得るようになっているため、飛散防護ネットの事前準備作業が非常に面倒である。
【0022】
また、各吊下げロープは、対向位置にある2本の上突出棒の先端部付近に取り付けた滑車に巻掛けし、その各一端を防護ネットの上部枠に固定すると共に、各他端側を地上まで垂下させてそれぞれウインチに巻取らせているため、その強度は決して強いものではなく、飛散防護ネットにかかる風圧による荷重を充分に受け止めることが困難である。
【0023】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、飛散防護ネットの設置・撤去作業の手間を削減し、また、FRP製パイプ材、FRP製足場等の鉄塔への設置数量を半減させることができ、一度鉄塔に張設した飛散防護ネットを下部に降ろすことなく施工することができると共に、飛散防護ネットにかかる風圧による荷重を充分に受け止めることができる鉄塔用飛散防護ネットの取付工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、鉄塔の塗装工事施工時に、該鉄塔を覆って外部への塗料・ケレンカス等の飛散を防止するための鉄塔用飛散防護ネットの取付工法であって、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛することで、上述した課題を解決した。
【0025】
また、鉄塔の塗装工事施工時に、該鉄塔を覆って外部への塗料・ケレンカス等の飛散を防止する鉄塔用飛散防護ネットの取付工法であって、鉄塔サイズに合わせて複数のメッシュシートの連結数を決定して組み合わせ、これらのメッシュシート同士を連結ロープで結束して飛散防護ネットを形成する工程と、この鉄塔サイズに調整されている飛散防護ネットを予め丸く束ねておき、鉄塔内において、荷揚げロープを使って飛散防護ネットを地上から鉄塔の中間ステージまで荷揚げした後、飛散防護ネットを中間ステージより鉄塔の外側に引き出し、さらに荷揚げロープを使って鉄塔の頂上まで荷揚げする工程と、鉄塔を囲繞するように飛散防護ネットを展開してから、飛散防護ネットを塔体側に固縛する工程と、から成ることで、同じく上述した課題を解決した。
【0026】
さらに、飛散防護ネットを塔体側に固縛する工程は、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛するものであることで、同じく上述した課題を解決した。
【0027】
また、飛散防護ネットを作成する工程は、鉄塔サイズに略対応するように、縦幅が10mおよび横幅が約1.8mの第1シートと、縦幅が10mおよび横幅が3.6mの第2シートの2種類の飛散防護ネットを組み合わせるものであることで、同じく上述した課題を解決した。
【0028】
加えて、荷揚げロープを使って鉄塔の腕金付近(中間ステージ)まで飛散防護ネットを荷揚げする工程と、腕金の上側にFRP製パイプ材を介して配された連結ロープに、飛散防護ネットの端部から延出されている連結ロープを輪状に縛結した後、飛散防護ネットを通い綱に沿って塔体側から腕金の先端側に展開してからFRP製パイプ材に固縛する工程を含むことで、同じく上述した課題を解決した。
【0029】
また、鉄塔サイズに調整されている飛散防護ネットを予め丸く束ねておき、鉄塔外において、荷揚げロープを使って飛散防護ネットを地上から鉄塔の中間ステージまで荷揚げする工程と、塔体の周囲を囲繞するように飛散防護ネットを一面づつ展開してから、飛散防護ネットをFRP製単管パイプを介して固縛する工程を含むことで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、鉄塔の塗装工事施工時に、該鉄塔を覆って外部への塗料・ケレンカス等の飛散を防止するための鉄塔用飛散防護ネットの取付工法であって、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛することから、飛散防護ネットの自重と、飛散防護ネットにかかる風圧による荷重を、鉄塔部材により充分に受け止めることができる。
【0031】
すなわち、本発明は、FRP製によるパイプ材を介して飛散防護ネットを鉄塔に固定するものではなく、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛することから、飛散防護ネットにかかる種々の荷重を、鉄塔部材が充分に受け止めるのである。
【0032】
このように、本発明によれば、パイプ材のみにより飛散防護ネットを吊持する従来の手法において生じていた、パイプ材とアングル材が接している一点部分に荷重が集中してしまう事態を回避し、パイプ材の破断も防いでいるのである。
【0033】
一方、本発明は、鉄塔の塗装工事施工時に、該鉄塔を覆って外部への塗料・ケレンカス等の飛散を防止する鉄塔用飛散防護ネットの取付工法であって、鉄塔サイズに合わせて複数のメッシュシートの連結数を決定して組み合わせ、これらのメッシュシート同士を連結ロープで結束して飛散防護ネットを形成する工程と、この鉄塔サイズに調整されている飛散防護ネットを予め丸く束ねておき、鉄塔内において、荷揚げロープを使って飛散防護ネットを地上から鉄塔の中間ステージまで荷揚げした後、飛散防護ネットを中間ステージより鉄塔の外側に引き出し、さらに荷揚げロープを使って鉄塔の頂上まで荷揚げする工程と、鉄塔を囲繞するように飛散防護ネットを展開してから、飛散防護ネットを塔体側に固縛する工程と、から成ることから、鉄塔への飛散防護ネットの設置・取り外しを迅速に行うことができる。
【0034】
また、飛散防護ネットを塔体側に固縛する工程は、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛するものであることから、飛散防護ネットの自重と、飛散防護ネットにかかる風圧による荷重を、鉄塔部材により充分に受け止めることができる。
【0035】
さらに、飛散防護ネットを作成する工程は、鉄塔サイズに略対応するように、縦幅が10mおよび横幅が約1.8mの第1シートと、縦幅が10mおよび横幅が3.6mの第2シートの2種類の飛散防護ネットを容易に作成できる。
【0036】
また、荷揚げロープを使って鉄塔の腕金付近(中間ステージ)まで飛散防護ネットを荷揚げする工程と、腕金の上側にFRP製パイプ材を介して配された連結ロープに、飛散防護ネットの端部から延出されている連結ロープを輪状に縛結した後、飛散防護ネットを通い綱に沿って塔体側から腕金の先端側に展開してからFRP製パイプ材に固縛する工程を含むことから、鉄塔の腕金にも迅速に飛散防護ネットを設置できる。
【0037】
加えて、鉄塔サイズに調整されている飛散防護ネットを予め丸く束ねておき、鉄塔外において、荷揚げロープを使って飛散防護ネットを地上から鉄塔の中間ステージまで荷揚げする工程と、塔体の周囲を囲繞するように飛散防護ネットを一面づつ展開してから、飛散防護ネットをFRP製単管パイプを介して固縛する工程を含むことから、飛散防護ネットの連結ロープを鉄塔部材に直接固縛することと合わせて、より強固に飛散防護ネットを鉄塔に設置できる。
【0038】
このように、本発明によれば、飛散防護ネットの設置・撤去の手間を大幅に削減できる。
【0039】
また、基本的には、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛し、飛散防護ネットにかかる種々の荷重を、鉄塔部材が充分に受け止めるので、FRP製パイプ材、FRP製足場等の鉄塔への設置数量を半減させることができる。
【0040】
さらに、飛散防護ネットにかかる種々の荷重を、鉄塔部材が充分に受け止めるので、一度鉄塔に張設した飛散防護ネットを下部に降ろすことなく施工することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0042】
本発明に係る鉄塔用飛散防護ネット取付工法は、2重メッシュシートによって形成された飛散防護ネット1を使用している。この飛散防護ネット1は、塗料・ケレンカス等が通過しないように、メッシュの細かいものが採用されている。
【0043】
そして、この飛散防護ネット1は、図1に示すように、鉄塔Pのサイズに略対応するように、縦幅が10mおよび横幅が約1.8mの矩形型の第1シート1a(図1(a)参照)と、高さ幅が10mおよび底辺幅が約1.8mの直角三角形型の第1シート1c(図1(b)参照)と、第1シート1aを2枚連設した縦幅が10mおよび横幅が3.6mの矩形型の第2シート1b(図1(c)参照)と、高さ幅が10mおよび底辺幅が3.6mの直角三角形型の第2シート1d(図1(d)参照)の大サイズによる4種類が用意されている。
【0044】
このとき、直角三角形型の第1シート1c、第2シート1dのそれぞれは、略縦長台形状の鉄塔P下部における両サイドの傾斜形状に合わせるようにして形成されている。そして、鉄塔Pサイズ・形状に合わせて、養生ネットの連結数を決定し、これら4種類の2重メッシュシート同士を連結ロープ2(図3参照)で結束することで、飛散防護ネット1が形成される。
【0045】
具体的には、図2(a)に示すように、1枚の第1シート1aに対し3枚の第2シート1bを隣接するように配置して互いを連結ロープ2で連結したり、図2(b)に示すように、1枚の第1シート1aの隣に第2シート1bを配置したものを縦に並べて、これらを連結ロープ2で連結したりすることで、飛散防護ネット1全体が鉄塔Pのサイズに略対応するようにしている。このように飛散防護ネット1自体は、もとから大サイズに作製されているため、鉄塔上での連結作業において、作業員による労力が少なくて済むのである。
【0046】
飛散防護ネット1における複数の2重メッシュシート同士の結束は、図3(a)・(b)に示すように、双方のシート端縁部に沿って設けた筒状の連結耳輪部3,4を介して行う。
【0047】
すなわち、双方のシートにおいて、一方のシート端部の連結耳輪部3の間に、他方のシート端部の連結耳輪部4を嵌め合わせるようにして、連結耳輪部3,4を互い違いに配置する。そして、双方の連結耳輪部3,4に連結ロープ2を挿通して、双方のシートを結束している。
【0048】
また、相手方のシート端部が連結されない飛散防護ネット1の端部においては、連結耳輪部3(または4)に連結ロープ2を単に挿通させるだけである。
【0049】
飛散防護ネット1を鉄塔Pの周囲に張設する、例えば、下部塔体養生に際し、図4に示すように、飛散防護ネット1上端から外部に延出させた連結ロープ2を、鉄塔Pの部材に直接固縛する。
【0050】
すなわち、飛散防護ネット1をFRP製パイプ材5により吊り下げて飛散防護ネット1を鉄塔Pに固定するのではなく、飛散防護ネット1の四方から延出している連結ロープ2を鉄塔P部材に直接固縛することから、飛散防護ネット1にかかる種々の荷重を、鉄塔P部材が充分に受け止めるのである。
【0051】
その結果、飛散防護ネット1を吊り下げて保持するための連結ロープ2や、他のワイヤー部材等に加わる荷重を分散させ、FRP製パイプ材5等の資材にかかる荷重を軽減させている。
【0052】
尚、図4に示す飛散防護ネット1の吊り下げ状態において、飛散防護ネット1にかかる種々の荷重は、鉄塔P部材が直接受け止めていることから、FRP製パイプ材5の先端部には、飛散防護ネット1を吊り下げるための荷重は何等作用していない。FRP製パイプ材5の先端部にかかる荷重は、飛散防護ネット1と鉄塔Pとの間の所定の距離を保持するために、飛散防護ネット1を鉄塔Pの外側に押し付けるだけのものである。
【0053】
そして、図4に示す飛散防護ネット1の吊り下げ状態において、最も上に位置しているFRP製パイプ材5の先端部にかかる荷重を軽減するには、FRP製パイプ材5の上方において、所定の距離を保持して、飛散防護ネット1の連結ロープ2を鉄塔P部材に固縛するのが好ましいものとなる。
【0054】
また、飛散防護ネット1の腕金Q部分の養生に際しては、図5に示すように、腕金Q上側の周囲毎に斜め外方に向けて固縛したFRP製パイプ材5の先端に連繋した通し綱(連結ロープ)6に、飛散防護ネット1の端部から延出されている連結ロープ2を連結する。そして、飛散防護ネット1自体は、腕金Qに対して上方が開口した袋状に張設配置される。
【0055】
次に、以上のように構成された飛散防護ネット1の具体的な取付工法について説明する。
【0056】
先ず、FRP製単管パイプ材5を専用資材袋に収納し、この専用資材袋を、荷揚げロープ7を使って鉄塔P内で荷揚げする。このFRP製単管パイプ材5は、図6に示すように、中間ステージにおいては鉄塔Pの部材に対し略放射状に配置し、なまし鉄線やキャッチクランプを用いて結束する。
【0057】
また、中間ステージより下段のステージにおいては、角部におけるFRP製単管パイプ材5同士を交差させるようにして配置し、なまし鉄線を用いて結束する。さらに、FRP製単管パイプ材5同士の結束も、なまし鉄線を用いる。
【0058】
これと同時に、アルミ製等の足場板8を中間ステージ位置まで荷揚げし、なまし鉄線を用いて結束する。また、鉄塔P上部における腕金(アーム)Qの上側前後箇所には、FRP製単管パイプ材5を配置し、なまし鉄線を用いて結束する。このFRP製単管パイプ材5同士には、四端から出たロープを固縛しておく。
【0059】
(飛散防護ネットの作成)
飛散防護ネット1の作成に際しては、縦幅が10mおよび横幅が約1.8mの矩形型の第1シート1a(図1(a)参照)と、高さ幅が10mおよび底辺幅が約1.8mの直角三角形型の第1シート1c(図1(b)参照)と、縦幅が10mおよび横幅が3.6mの矩形型の第2シート1b(図1(c)参照)と、高さ幅が10mおよび底辺幅が3.6mの直角三角形型の第2シート1d(図1(d)参照)の大サイズによる4種類が用意されていることから、鉄塔Pのサイズ・形状に合わせて養生ネットの連結数を決定する。そして、これら4種類の2重メッシュシート同士を連結ロープ2で結束することで、飛散防護ネット1を形成しておく。
【0060】
この飛散防護ネット1における複数の2重メッシュシート同士の結束に際し、図3(a)・(b)に示すように、双方のシート端縁部に沿って設けた筒状の連結耳輪部3,4を介して行う。
【0061】
すなわち、双方のシートにおいて、一方のシート端部の連結耳輪部3の間に、他方のシート端部の連結耳輪部4を嵌め合わせるようにして、連結耳輪部3,4を互い違いに配置する。そして、双方の連結耳輪部3,4に連結ロープ2を挿通して、双方のシートを結束する。このようにして、飛散防護ネット1全体は、鉄塔Pのサイズに略対応する大きさとなるように調整される。
【0062】
(鉄塔の上部への仮設手順)
飛散防護ネット1の鉄塔Pの上部への仮設に際し、図7に示すように、飛散防護ネット1を予め丸く束ねておき、地上より鉄塔P内で荷揚げロープ7を使って中間ステージまで荷揚げする。その後、中間ステージより転落防止用の水平ガイドロープを介して鉄塔Pの外側に引き出し、さらに荷揚げロープ7を使って鉄塔Pの頂上まで荷揚げする。
【0063】
そして、図8・図9に示すように、塔体Pの周囲を囲繞するように飛散防護ネット1を展開してから、飛散防護ネット1をFRP製単管パイプ材5になまし鉄線を用いて固縛する。
【0064】
(鉄塔の腕金への仮設手順)
飛散防護ネット1の鉄塔Pの上側における腕金Qへの仮設に際し、図10に示すように、荷揚げロープ7を使って腕金Q付近まで飛散防護ネット1を荷揚げする。
【0065】
その後、図11に示すように、腕金Q上側の周囲毎に斜め外方に向けて固縛したFRP製パイプ材5の先端に連繋した通し綱6に、飛散防護ネット1の端部から延出されている連結ロープ2を輪状に連結する。そして、飛散防護ネット1を通し綱6に沿って塔体側から腕金Qの先端側に展開してから、FRP製パイプ材5になまし鉄線を用いて固縛する。こうして、図12示すように、飛散防護ネット1自体は、腕金Qに対して上方が開口した袋状に張設配置される。
【0066】
(鉄塔の下部への仮設手順)
飛散防護ネット1の鉄塔Pの下部への仮設に際し、図13示すように、鉄塔Pのサイズに調整されている飛散防護ネット1を予め丸く束ねておき、鉄塔Pの外側で荷揚げロープ7を使って地上から中間ステージまで荷揚げする。
【0067】
その後、図14示すように、鉄塔Pの周囲を囲繞するように飛散防護ネット1を一面づつ展開してから、飛散防護ネット1をFRP製単管パイプ材5になまし鉄線を用いて固縛する。このとき、図4に示すように、飛散防護ネット1の四端から外部に延出させた連結ロープ2を、鉄塔Pの部材に直接固縛する。
【0068】
この鉄塔Pの下部への仮設および腕金を含む鉄塔Pの上部においては、塔体自体の横幅および周囲の長さが大きいため、図15乃至図17に示すように、鉄塔Pに合わせて飛散防護ネット1を何回かに分けて揚げてから、面毎に養生すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本実施の形態における鉄塔用飛散防護ネットの取付工法は、架空送電線等の既設の鉄塔Pの周囲に飛散防護ネット1を張設する他に、鉄塔P以外の種々の高層建造物に対しても幅広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】飛散防護ネットの一例を示すもので、(a)は幅狭矩形型の第1シートの平面図、(b)は幅狭三角型の第1シートの平面図、(c)は幅広矩形型の第2シートの平面図、(d)は幅広三角型の第2シートの平面図である。
【図2】矩形型の養生ネットの連結数の具体例を示し、(a)は1つの第1シートと3つの第2シートを横に連結した構成の平面図、(b)は第1シートと第2シートを横に連結した2つを縦方向に連結した構成の平面図である。
【図3】飛散防護ネットの各シート同士の連結状態の一例を示すもので、(a)は連結部分の平面図、(b)は連結部分を拡大した斜視図である。
【図4】飛散防護ネットの塔体の固定方法の一例を示す正面図である。
【図5】飛散防護ネットの腕金養生の一例を示すもので、(a)は腕金に連結ロープを配した状態の斜視図、(b)は連結ロープを介して飛散防護ネットを配した状態の斜視図である。
【図6】鉄塔に中間ステージ等を仮設した状態を示す正面図である。
【図7】飛散防護ネットの鉄塔の上部への仮設手順を示す正面図である。
【図8】同じく鉄塔の上部への仮設手順を示す正面図である。
【図9】同じく鉄塔の上部への仮設手順を示す正面図である。
【図10】飛散防護ネットの鉄塔の腕金への仮設手順を示す正面図である。
【図11】同じく鉄塔の腕金への仮設手順を示す正面図である。
【図12】同じく鉄塔の腕金への仮設手順を示す正面図である。
【図13】飛散防護ネットの鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図14】同じく鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図15】同じく鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図16】同じく鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図17】飛散防護ネットを、鉄塔の上部および鉄塔の腕金の横半分、鉄塔の下部の全周囲に張設した状態の正面図である。
【図18】従来例において、FRP製単管パイプ・足場等の資材を鉄塔に配置させた状態の正面図である。
【図19】同じく中間ステージにおける足場周辺の構成を示す正面図である。
【図20】従来例における飛散防護ネットの鉄塔の上部への仮設手順を示す正面図である。
【図21】同じく従来例における飛散防護ネットの鉄塔の上部への仮設手順を示す正面図である。
【図22】同じく従来例における飛散防護ネットの鉄塔の上部への仮設手順を示す正面図である。
【図23】従来例における飛散防護ネットの鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図24】同じく従来例における飛散防護ネットの鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図25】同じく従来例における飛散防護ネットの鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図26】同じく従来例における飛散防護ネットの鉄塔の下部への仮設手順を示す正面図である。
【図27】従来例における飛散防護ネットの鉄塔の上部における略半分と鉄塔の下部全体の仮設状態を示す正面図である。
【図28】従来例における鉄塔上に資材を荷揚げする状態の正面図である。
【図29】従来例における飛散防護ネットを、中間ステージより転落防止用の水平ガイドロープを介して鉄塔外側に引き出し、荷揚げロープを使って鉄塔頂上まで荷揚げする状態の正面図である。
【図30】従来例における飛散防護ネットを鉄塔の上部および腕金周囲全体と鉄塔の下部全体に仮設するために飛散防護ネットを鉄塔外側から荷揚げした状態を示す正面図である。
【図31】従来例における飛散防護ネットを展開して鉄塔および腕金の周囲全体に取り巻くようにしてから飛散防護ネットを固縛する作業を示す正面図である。
【符号の説明】
【0071】
P…鉄塔
Q…腕金(アーム)
1…飛散防護ネット
1a…第1シート
1b…第2シート
1c…第1シート
1d…第2シート
2…連結ロープ
3,4…連結耳輪部
5…パイプ材
6…通し綱(連結ロープ)
7…荷揚げロープ
8…足場板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の塗装工事施工時に、該鉄塔を覆って外部への塗料・ケレンカス等の飛散を防止するための鉄塔用飛散防護ネットの取付工法であって、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛することを特徴とした鉄塔用飛散防護ネットの取付工法。
【請求項2】
鉄塔の塗装工事施工時に、該鉄塔を覆って外部への塗料・ケレンカス等の飛散を防止する鉄塔用飛散防護ネットの取付工法であって、鉄塔サイズに合わせて複数のメッシュシートの連結数を決定して組み合わせ、これらのメッシュシート同士を連結ロープで結束して飛散防護ネットを形成する工程と、この鉄塔サイズに調整されている飛散防護ネットを予め丸く束ねておき、鉄塔内において、荷揚げロープを使って飛散防護ネットを地上から鉄塔の中間ステージまで荷揚げした後、飛散防護ネットを中間ステージより鉄塔の外側に引き出し、さらに荷揚げロープを使って鉄塔の頂上まで荷揚げする工程と、鉄塔を囲繞するように飛散防護ネットを展開してから、飛散防護ネットを塔体側に固縛する工程と、から成ることを特徴とした鉄塔用飛散防護ネットの取付工法。
【請求項3】
飛散防護ネットを塔体側に固縛する工程は、飛散防護ネットの四方から外部に延出させた連結ロープを、鉄塔部材に直接固縛するものである請求項2に記載の鉄塔用飛散防護ネットの取付工法。
【請求項4】
飛散防護ネットを作成する工程は、鉄塔サイズに略対応するように、縦幅が10mおよび横幅が約1.8mの第1シートと、縦幅が10mおよび横幅が3.6mの第2シートの2種類の飛散防護ネットを組み合わせるものである請求項2に記載の鉄塔用飛散防護ネットの取付工法。
【請求項5】
荷揚げロープを使って鉄塔の腕金付近(中間ステージ)まで飛散防護ネットを荷揚げする工程と、腕金の上側にFRP製パイプ材を介して配された連結ロープに、飛散防護ネットの端部から延出されている連結ロープを輪状に縛結した後、飛散防護ネットを通い綱に沿って塔体側から腕金の先端側に展開してからFRP製パイプ材に固縛する工程を含む請求項2乃至4のいずれかに記載の鉄塔用飛散防護ネットの取付工法。
【請求項6】
鉄塔サイズに調整されている飛散防護ネットを予め丸く束ねておき、鉄塔外において、荷揚げロープを使って飛散防護ネットを地上から鉄塔の中間ステージまで荷揚げする工程と、塔体の周囲を囲繞するように飛散防護ネットを一面づつ展開してから、飛散防護ネットをFRP製単管パイプを介して固縛する工程を含む請求項2乃至5のいずれかに記載の鉄塔用飛散防護ネットの取付工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−50838(P2008−50838A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227804(P2006−227804)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】