説明

鉄心コイルを用いた発電機

【課題】鉄心コイルを用いた発電機のコイルと鉄心とを電気的に接続するアース用導体が振動により接触不良となることを防止する。
【解決手段】エキサイタコイル2が巻回されたボビン4の貫通孔4aにU字状鉄心1の一方の突出部分1aを挿入し、コイルのアースをアース用導体11を介して鉄心に接続するようにして鉄心コイルを構成する。アース用導体を、鉄心とボビンとの間に挟持して鉄心に接触させる。アース用導体に鉄心側に突出する突起12を設け、突起を鉄心に接触させる。ボビンの弾性復元力により突起が鉄心に接触するため、アース用導体の鉄心に対する確実な電気的接続が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄心にコイルを巻装した鉄心コイルを用いた発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関用点火装置のコイルへの電力供給用に鉄心コイルを有するマグネット発電機を用いているものがある(例えば特許文献1参照)。そのようなマグネット発電機にあっては、クランク軸と一体のフライホイールの外周部にマグネットを固設し、フライホイールと一体に回転するマグネットの通過に伴って生じる磁束変化により、シリンダブロックに固定した鉄心に巻装したコイルに起電力を生じさせる構造としている。また、その鉄心の固定にあっては、簡単かつ確実なものとしてシリンダブロックにねじ止めするなどしている。
【特許文献1】特開平11−303715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の鉄心コイルの一例として、例えば図5に示されるように、U字状の積層鋼板からなる鉄心21にエキサイタコイル(発電コイル)22及び点火コイル23(一次コイル23a・二次コイル23b)を配設したものがある。図では、実線により鉄心21とコイル22・23との取り付け前を示しており、コイル22・23との取り付け状態における鉄心21を二点鎖線で示している。内燃機関のフライホイールFWの例えば外周面に固着されたマグネットMgがフライホイールFWの回転に伴って図の矢印Aに示されるように移動することにより、シリンダブロック(図示せず)に固定した鉄心21にあっては磁束が変化し、それによりエキサイタコイル22に電圧が誘起される。その発電電流をコンデンサ(例えば図2のコンデンサ)に充電し、エキサイタコイル22に発生する負電圧でスイッチ素子(図示せず)を導通し、二次コイル23bに高圧を発生させて点火プラグ(図示せず)に点火することができる。このようにして、マグネット発電機を用いた点火装置を簡単かつ低コストで実現できる。
【0004】
また、コイルのアース接続構造においても簡単にして低コスト化を促進するために、コイルのアース側をアース用導体を介して鉄心に電気的に接続しているものがある。しかしながら、運転中の振動により鉄心とコイルとの間にがたが生じて、アース用導体もその影響を受ける虞がある。そのため、アース用導体の取り付けにおいてもがたに対する対策を必要とし、種々の構造が提案されている。
【0005】
上記図示例のものでは、各コイル22・23を対応する筒状のボビン24・25と共にハウジング26内に配置し、ハウジング26内を樹脂材で充填して各部材を一体化し、その後、鉄心21を各コイル22・23(ボビン24・25)に図の矢印Bに示されるように挿入して取り付ける。また、アース用導体27にあっては、その一端部をコイル22・23の対応する端末と接続した状態で樹脂材によりモールドして固定し、他端部側を図の実線に示されるように外方(図における上方)に突出させておく。
【0006】
そして、アース用導体27の突出部分を図の矢印Cに示されるようにボビン24の孔内に向けて曲折し、鉄心21をボビン24に挿入する時に鉄心21の曲折形状の角部に設けた凹設部21aで湾曲状に曲げて押さえ付けるようにして、取り付け状態で鉄心21とボビン24との間にアース用導体27を挟むようにして固定する。これにより、アース用導体27は鉄心21と接続状態になる。
【0007】
しかしながら、この構造においても、運転中の振動によりアース用導体が鉄心と摺接して摩耗する虞があり、その摩耗が進行すると接触不良に至るという問題が生じる。また、剛性の高い鉄心に対してボビンを合成樹脂製とした場合にはその弾性変形による反発力でアース用導体の鉄心に対する接触圧を得ることになるが、合成樹脂製の成形品の仕上がり精度のばらつきにより接触圧のばらつきも大きくなり、品質が不安定になるという問題がある。成形品の加工精度を上げることもできるが高コスト化してしまう。
【0008】
また、ハウジング内に合成樹脂材を充填する場合に真空注型で行うことができるが、アース用導体の一端部を予めコイルと接続しておくためには半田付けや導電性接着剤を使用することになり、高コスト化するという問題もある。また、合成樹脂材の充填した外部でアース用導体とコイルとの接続をする場合には、接続部がモールドされないため、運転による振動や空気にさらされることによる腐食により導通不良にる虞もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決して、鉄心コイルを用いた発電機のコイルと鉄心とを電気的に接続するアース用導体が振動により接触不良となることを防止することを実現するために本発明に於いては、鉄心にコイルを巻装し、前記鉄心に交番磁束を生じさせることにより前記コイルに生じる起電力により発電させるようにした鉄心コイルを用いた発電機であって、前記コイルが巻回されかつ前記鉄心に装着される弾性体からなるボビンと、前記コイルの一端と前記鉄心とを電気的に接続するアース用導体とを有し、前記アース用導体が、前記ボビンと前記鉄心との間に前記ボビンの弾性変形の復元力にて挟持されていると共に、前記挟持された状態で前記鉄心に接触するように形成された突起を有するものとした。
【0010】
特に、前記鉄心の一部と一体成形されたハウジングを有し、前記ハウジング内に前記コイル及び前記ボビンと前記アース用導体とが受容されかつ前記ハウジング内に充填された合成樹脂材により固定されていると良い。また、前記鉄心の一部と一体成形されたハウジングを有し、前記ハウジング内に、前記アース用導体を半田付けした基板が装着されていると良い。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、コイルのアース接続用のアース用導体が、鉄心とボビンとの間に挟持された状態に取り付けられ、その状態で鉄心に接触する突起がアース用導体に形成されており、ボビンの弾性復元力により突起が鉄心に接触するため、アース用導体の鉄心に対する確実な電気的接続が得られる。
【0012】
特に、鉄心に一体成形されたハウジングを設け、そのハウジング内にアース用導体が鉄心とボビンとの間に挟持された状態で合成樹脂材(例えばエポキシ樹脂)によりモールディングされる等して封入されることにより、合成樹脂材の硬化によりアース用導体が振動に対して振れ難くなって、アース用導体と鉄心との間にがたが生じることを抑制し得る。また、アース用導体が鉄心とボビンとの間に挟持された状態でかつ基板に半田付けされていることにより、アース用導体が基板と一体化されるため、上記と同様の効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用されたマグネット発電機の要部を破断して示す正面図である。図示されない内燃機関のフライホイールFWの例えば外周面にマグネットMgが固着されており、フライホイールFWの回転に伴ってマグネットMgが図の矢印Aに示されるように移動するようになっている。
【0014】
マグネット発電機は、積層鋼板により形成された図において逆向きの略U字状の鉄心1と、その鉄心1のU字形状における一方の突出部分1aにエキサイタ(発電)コイル2が巻装され、他方の突出部分1bに点火コイル3を構成する1次側コイル3aと2次側コイル3bとが巻装されている。なお、各コイル2・3は矩形筒状のボビン4・5にそれぞれ巻回されており、各ボビン4・5の各貫通孔4a・5aに対応する各突出部分1a・1bが挿入されて、鉄心1に各コイル2・3が装着されている。
【0015】
また、鉄心1のU字形状における根本部分(両突出部分1a・1b間の部分)には合成樹脂製であって良いハウジング6が一体成形により固着されている。ハウジング6は、鉄心1の両突出部分1a・1bに巻装された状態の各コイル2・3を外囲する椀状に形成されている。点火コイル用ボビン5を取り付ける突出部分1bは、ハウジング6の一部をボス状にした形状に覆われている。これは、ボビン5の内側(貫通孔5aの内周面)に1次側コイル3aを巻回し、ボビン5の外側に2次側コイル3bを巻回するようにしており、それにより1次側コイル3aの鉄心1に対する絶縁性を確保するためである。
【0016】
なお、鉄心1の適所には固定ねじ用の複数(図示例では2箇所)の取り付け孔7が設けられており、取り付け孔7に挿通したねじ(図示せず)を用いてシリンダブロック(図示せず)に鉄心1が固定される。
【0017】
このようにして構成されたマグネット発電機の電気回路の概略を図2に示す。図の回路は公知の内部トリガCDI回路であり、CDI回路としての詳しい説明は省略する。図において、エキサイタコイル2と1次側コイル3aとの間に、コンデンサ及びダイオード及びサイリスタなどが実装されたプリント基板8が設けられている。なお、2次側コイル3bの出力端子に点火プラグ9が接続されている。
【0018】
上記回路において、アース側は1つにまとめられ、本願発明のアース用導体11に接続されている。アース用導体11は、図1及び図4に示されるように、板状導体を図における逆L字状断面形状を有するように折り曲げるなどして形成されている。アース用導体11のL字状における長辺部分11aが、取り付け状態で鉄片1の突出部分1aとエキサイタコイル用ボビン4との間に厚さ方向に挟持されている。これによりアース用導体11は、鉄心1を介してシリンダブロックに接続されていることになり、ボディアースされた状態になる。
【0019】
アース用導体11にあっては、図3及び図4に示されるように鉄心1(1a)とボビン4との間に挟持される長辺部分11aであって、上記挟持状態で鉄心1(1a)側に突出するように形成された複数の突起12が設けられている。突起12の形成にあっては、例えば半円状に切り込みを入れ、その半円部分の突側を所定量押し出すように半抜きして、半円形状の直径部分を折り目として円弧側が突出した形状にすることができる。これにより、鉄心1(1a)とボビン4とによる挟持状態では鉄心1(1a)に突起12が食い込むように接触し得るため、アース用導体11と鉄心1(1a)との接触が確実なものとなる。
【0020】
また、ボビン4を合成樹脂材で形成することにより、ある程度の弾性変形が可能となり、上記挟持状態における弾性変形による復元力によりアース用導体11(長辺部分11a)をバネ的に押圧することができ、組み立てにおいて鉄心1とボビン4との間にがたが生じそうになっても上記復元力により接触状態が確保される。
【0021】
なお、アース用導体11の短辺部分に位置決め孔11bが設けられ、ボビン4には対応する突部4bが設けられており、突部4bを位置決め孔11bに突入させた係合状態にすることによりアース用導体11が位置決めされるようになっている。また、アース用導体11の短辺部分の突出端側は、装着状態で側方に位置することになる基板8側に曲折されており、基板8に設けられたスルーホール8aに半田付けされる。
【0022】
アース用導体11の取り付けにあっては、例えば、ボビン4の貫通孔4aに長辺部分11aを挿入し、上記突部4bと位置決め孔11bとの係合によりボビン4に対してアース用導体11が位置決めされ、その状態のアース用導体11を基板8に半田付けする。また、各コイル2・3の接続端部を基板8の対応する各スルーホール(図示せず)に半田付けする。これにより、各コイル2・3(ボビン4・5)と基板8とアース用導体11とが一体化され、その状態のボビン4・5の貫通孔4a・5aに鉄心1の各突出部分1a・1bを図3の矢印Bに示されるように挿入して、各コイル2・3(ボビン4・5)と基板8とアース用導体11とがハウジング6に受容された状態に装着される(図1)。
【0023】
この時、アース用導体11はボビン4に対して位置決めされていることから、突出部分1aの挿入作業と同時にアース用導体11を容易かつ確実に鉄心1(1a)とボビン4(貫通孔4aの内周面)との間に挿入させることができる。また、アース用導体11に設けた突起12の形状を、図3・4に示されるように鉄心1(1a)の挿入方向に対して倒伏する方向に傾けておくことにより、鉄心1(1a)の挿入作業において大きな抵抗となることがなく、挿入作業に支障を来すことがない。
【0024】
そして、従来技術と同様にハウジング6内に合成樹脂材(例えばエポキシ樹脂)を充填渋滞に設ける場合に真空注型で行う場合であっても、上記アース用導体11にあっては突起12による高い接触圧が確保されているため、接触不良になるような問題は生じない。また、突起12の鉄心1(1a)と接触している部分は、図1に示されるようにハウジング6内に合成樹脂材13が充填状態に設けられていることにより、硬化した合成樹脂材13により固定されるので接触状態が確保されるため、突起12が摩耗することがなく、突起12と鉄心1(1a)との接触不良が生じない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明にかかる鉄心コイルを用いた発電機は、振動が避けられない内燃機関に用いた場合でもコイルと鉄心とを接続するアース用導体のがたによる接触不良を防止することができ、鉄心コイルを用いた発電機により構成される点火装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明が適用されたマグネット発電機の要部を破断して示す正面図である。
【図2】マグネット発電機の概略回路図である。
【図3】マグネット発電機の分解組立要領を示す要部破断正面図である。
【図4】マグネット発電機の分解組立要領を示す斜視図である。
【図5】従来のマグネット発電機の分解組立要領を示す要部破断正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 鉄心、1a・1b 突出部分
2 エキサイタコイル
3 点火コイル
4・5 ボビン
6 ハウジング
8 プリント基板
11 アース用導体
12 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心にコイルを巻装し、前記鉄心に交番磁束を生じさせることにより前記コイルに生じる起電力により発電させるようにした鉄心コイルを用いた発電機であって、
前記コイルが巻回されかつ前記鉄心に装着される弾性体からなるボビンと、前記コイルの一端と前記鉄心とを電気的に接続するアース用導体とを有し、
前記アース用導体が、前記ボビンと前記鉄心との間に前記ボビンの弾性変形の復元力にて挟持されていると共に、前記挟持された状態で前記鉄心に接触するように形成された突起を有することを特徴とする鉄心コイルを用いた発電機。
【請求項2】
前記鉄心の一部と一体成形されたハウジングを有し、
前記ハウジング内に前記コイル及び前記ボビンと前記アース用導体とが受容されかつ前記ハウジング内に充填された合成樹脂材により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄心コイルを用いた発電機。
【請求項3】
前記鉄心の一部と一体成形されたハウジングを有し、
前記ハウジング内に、前記アース用導体を半田付けした基板が装着されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄心コイルを用いた発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−136310(P2008−136310A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321059(P2006−321059)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(390008877)日本ウォルブロー株式会社 (39)
【Fターム(参考)】