鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具
【課題】乾燥収縮によるコンクリートのひび割れをより高い精度で抑制する。
【解決手段】本発明に係るひび割れ防止具21は、RC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5と該圧縮力導入機構に取り付けられる可撓性拘束部材としての拘束部材6とからなる。拘束部材6は、可撓性材料である鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、その各端部を面外方向に折り返すことで該各端部にフック22,22を形成してあり、該フックを圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けることにより、圧縮力導入機構5に着脱自在となるように構成してある。
【解決手段】本発明に係るひび割れ防止具21は、RC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5と該圧縮力導入機構に取り付けられる可撓性拘束部材としての拘束部材6とからなる。拘束部材6は、可撓性材料である鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、その各端部を面外方向に折り返すことで該各端部にフック22,22を形成してあり、該フックを圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けることにより、圧縮力導入機構5に着脱自在となるように構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鉄筋コンクリート壁に形成された窓等の開口の隅部に用いられる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートは、本来的に引張力に弱く、乾燥や温度変化による収縮変形が拘束されると、ひび割れが生じる。応力が集中しやすい開口の隅部には、上述したひび割れが特に発生しやすい。
【0003】
コンクリートのひび割れは、引張応力を鉄筋が負担し圧縮応力をコンクリートが負担するという鉄筋コンクリート構造の特性上、それ自体が鉄筋コンクリートの強度にただちに悪影響を及ぼすものではないが、ひび割れを原因としたコンクリートの中性化によって鉄筋が腐食した場合、経年的には鉄筋コンクリートの強度にも悪影響が及ぶ。加えて、コンクリートのひび割れは、強度上問題ないとしても、鉄筋コンクリート構造物の美観を損ねたり、漏水を発生させたりする。
【0004】
ここで、コンクリートにひび割れが生じる原因は、上述したような乾燥や温度変化を受けたときの変形拘束のほか、地震によって過大な強制変形を受けることが挙げられるが、乾燥収縮は、鉄筋コンクリート構造物を構築した直後から初期ひび割れとして数多く発現するため、漏水や美観の点で従来からさまざまな対策がとられてきた。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−48055号公報
【特許文献2】特開昭63−110344号公報
【特許文献3】特開2002−266469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような乾燥収縮による初期ひび割れは、例えば、コンクリートを打設した後、開口隅部に圧縮力を導入することで、ある程度抑制することができる(特許文献1,2)。
【0007】
しかしながら、鉄筋コンクリート構造物には、以前にも増して高いデザイン性や美観が求められており、従来の技術では、昨今のニーズに対応することが難しいという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、乾燥収縮や熱収縮によるコンクリートの初期ひび割れをより確実に抑制することが可能な鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は請求項1に記載したように、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部から作用する圧縮力が伝達されるように該一対の定着部にそれぞれ取付け自在としたものである。
【0010】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は請求項2に記載したように、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定したものである。
【0011】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は請求項3に記載したように、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化したものである。
【0012】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部の形状及び寸法を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定したものである。
【0013】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部を全体形状がコ字状、L字状又は円弧状となるように形成したものである。
【0014】
第1の発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、圧縮力導入機構と、両端を有し内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなり、該可撓性拘束部材は、その各端部を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部から作用する圧縮力が伝達されるように該一対の定着部にそれぞれ取付け自在としてある。
【0015】
また、第2の発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなり、可撓性拘束部材は、その各端部を圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定してある。
【0016】
また、第3の発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部とからなり、可撓性拘束部は、その各端部を圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化してある。
【0017】
第1の発明に係るひび割れ防止具を用いて鉄筋コンクリート構造物に形成された開口のひび割れ抑制を行うには、可撓性拘束部材を圧縮力導入機構に先行して取り付け、しかる後、圧縮力導入機構及び可撓性拘束部材を開口の隅部近傍に埋設するか、又は、圧縮力導入機構及び可撓性拘束部材のうち、いずれか一方を開口の隅部近傍に先行埋設し、しかる後、他方を一方に取り付ける。
【0018】
可撓性拘束部材の各端部を一対の定着部にそれぞれ取り付けるにあたっては、圧縮力導入機構から可撓性拘束部材に圧縮力が伝達される限り、その取付け方法は任意であり、例えば、ボルト止め、嵌合等の取付け方法を採用することが可能である。
【0019】
また、第2,3の発明に係るひび割れ防止具を用いて鉄筋コンクリート構造物に形成された開口のひび割れ抑制を行うには、該ひび割れ防止具を開口の隅部近傍に埋設する。
【0020】
本発明に係るひび割れ防止具を配置するにあたっては、圧縮力導入機構の圧縮方向が開口の隅部に発生するであろうひび割れの走行方向に概ね直交するように配置する。
【0021】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構を作動させる。
【0022】
このようにすると、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部には、従来技術と同様、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によって圧縮力が導入され、かかる圧縮力によって該開口隅部に生ずるひび割れが抑制されるが、本発明においては、圧縮力導入機構によって導入された圧縮力の一部が、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に直接作用し、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部は、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途及ぼしめる。
【0023】
そして、開口隅部に位置するコンクリートには、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部による圧縮応力があらたに発生する。
【0024】
すなわち、開口隅部でひび割れが生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構による圧縮応力に加えて、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部による圧縮応力が累加的に発生することとなり、かくして開口隅部に生ずるであろうひび割れをさらに確実に抑制することが可能となる。
【0025】
可撓性拘束部材又は可撓性拘束部によってコンクリートに生じる圧縮応力は、圧縮力導入機構によってコンクリートに直接発生する圧縮応力とは異なり、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に作用し又は伝達する圧縮力によって該可撓性拘束部材又は可撓性拘束部が間接的にコンクリートに圧縮応力を発生させるものであり、本明細書では、圧縮力導入機構による圧縮応力を1次圧縮応力、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部による圧縮応力を2次圧縮応力と呼ぶ。
【0026】
圧縮力導入機構は、一対の定着部と、該一対の定着部をコンクリート硬化後に引き寄せることでコンクリートを圧縮し該コンクリート中に圧縮応力を発生させる圧縮力導入部材と、該圧縮力導入部材を作動させる操作部とを備えたものであれば、その構成は任意であるが、例えばプレストレス形式のものを用いるのがよい。
【0027】
プレストレス形式の圧縮力導入機構として、「プレトール」(登録商標)の商品名で本出願人が製造販売しているひび割れ防止治具を採用することができる。
【0028】
可撓性拘束部材又は可撓性拘束部は、両端を有しかつ内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成されることによって、圧縮力導入機構から受けた圧縮力で内方の包囲空間に拡がるコンクリートに2次圧縮応力を発生させることができるものであって、かかる作用を奏する限り、具体的な形状は任意であり、例えばコ字状、L字状又は円弧状に形成し、さらに具体的には、半円に曲げ加工した異形鉄筋や平鋼を用いて構成することができる。
【0029】
第1の発明における可撓性拘束部材の取付け自在な構成とは、例えば施工時において可撓性拘束部材を圧縮力導入機構に取り付けることができるようになっていれば足りるものであって、いったん取り付けたものを取り外せることまで要するものではなく、その意味で着脱自在である必要はない。
【0030】
第2の発明における可撓性拘束部材は、その各端部を圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定するものであり、該固定方法としては、溶接、螺着、圧着等の公知の方法から適宜選択することが可能である。
【0031】
第3の発明における可撓性拘束部は、その各端部を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化するものであり、該一体化方法としては、例えば圧縮力導入機構の定着板から可撓性拘束部を延設することによって、該定着板に可撓性拘束部の端部としての機能を持たせる構成が考えられる。
【0032】
上述した各発明において、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部の形状及び寸法を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定したならば、圧縮力導入機構で導入された圧縮力の一部がコンクリートを介して可撓性拘束部材又は可撓性拘束部にも作用し、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途及ぼしめる。
【0033】
すなわち、開口隅部でひび割れが生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構による圧縮応力と、該圧縮力導入機構から可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に直接伝達された圧縮力による圧縮応力とに加えて、圧縮力導入機構からコンクリートを介して可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に間接的に伝達された圧縮力による圧縮応力が累加的に発生することとなり、かくして開口隅部に生ずるであろうひび割れをさらに確実に抑制することが可能となる。
【0034】
なお、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部によってコンクリートに生じる圧縮応力のうち、圧縮力導入機構によって間接的に伝達された圧縮力によるものは、直接的に伝達された圧縮力によるものとは異なるため、本明細書では、これを3次圧縮応力と呼ぶ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
(第1実施形態)
【0037】
図1は、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を示した図であり、図2はその配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ防止具21は、鉄筋コンクリート構造物としてのRC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5と該圧縮力導入機構に取り付けられる可撓性拘束部材としての拘束部材6とからなる。
【0038】
圧縮力導入機構5は、その圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れの走行方向(同図では水平軸に対して45度の角度で隅部4から左上に延びる方向)に概ね直交するように配置してある。ひび割れは、主としてコンクリート打設後の乾燥収縮に起因したものであり、応力が集中する隅部4に発生しやすい。
【0039】
図3は、圧縮力導入機構5を示した図である。同図でわかるように、圧縮力導入機構5は、直列配置された反力パイプ11a,11bと、該反力パイプに挿通されPC鋼棒で形成された緊張力導入ロッド12と、該緊張力導入ロッドの一端に圧着固定された定着板13aと、他端に螺合された定着板13bと、反力パイプ11a,11bの間に挟み込まれるU型スペーサー14と、反力パイプ11a,11bの外周側に配置されるシール管15a,15bとから構成してあり、緊張力導入ロッド12に引張力を与えた状態で反力パイプ11a,11bの間にU型スペーサー14を挟み込むことで、緊張力導入ロッド12の引張力を反力パイプ11a,11bの圧縮力と均衡させ、かかる状態でコンクリートが硬化した後にU型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bが負担していた圧縮力をコンクリートに導入し、該コンクリートに圧縮応力を発生させることができるようになっている。なお、定着板13a,13bは、本発明に係る一対の定着部を構成する。
【0040】
定着板13aは、緊張力導入ロッド12に圧着された円筒スリーブと該円筒スリーブの端部に一体に設けられた環状板とから構成してあるとともに、定着板13bは、緊張力導入ロッド12の他端に切られた雄ねじが螺合されるナットと環状板とからなり、これらの環状板が主として定着板としての機能を担う。
【0041】
拘束部材6は、可撓性材料である鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、その各端部を面外方向に折り返すことで該各端部にフック22,22を形成してあり、該フックを圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けることにより、圧縮力導入機構5に着脱自在となるように構成してある。
【0042】
ここで、拘束部材6は、その外側直径が一対の定着板13a,13bの内側離間距離よりも若干大きくなるように形成してあり、かかる構成により、フック22,22を圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けたときに該フックを介して定着板13a,13bからの圧縮力が半円部分に伝達するようになっている。
【0043】
本実施形態に係るひび割れ防止具21を用いてRC壁2に形成された開口3のひび割れ抑制を行うにはまず、圧縮力導入機構5の圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れの走行方向に概ね直交するように、ひび割れ防止具21を開口3の隅部4近傍に埋設する。
【0044】
図2に示したひび割れ32は、本実施形態に係るひび割れ防止具21がなければ、開口3の隅部4に発生するであろうひび割れであり、典型的には隅部4から左上45゜方向に延びる。
【0045】
ひび割れ防止具21を配置するにあたっては、拘束部材6を圧縮力導入機構5に先行して取り付け、しかる後、圧縮力導入機構5及び拘束部材6を埋設するようにしてもよいし、例えば圧縮力導入機構5を開口3の隅部4に先行埋設し、しかる後、拘束部材6を圧縮力導入機構6に取り付けるようにしてもよい。
【0046】
拘束部材6を圧縮力導入機構5に取り付ける際は、半円部分を両手で縮めておき、かかる状態でフック22,22を圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けるようにすればよい。
【0047】
このようにすれば、取付け後は、拘束部材6がその復元力で拡がろうとし、フック22,22は、定着板13a,13bの内側に確実に当接される。
【0048】
なお、拘束部材6については、その両端でひび割れ32が挟み込まれるように配置する。
【0049】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構5を作動させる、すなわち、U型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bの圧縮力を解放する。
【0050】
このようにすると、RC壁2に形成された開口3の隅部4には、従来技術と同様、圧縮力導入機構5を構成する一対の定着板13a,13bによって圧縮力が導入され、図4に示すように圧縮応力領域31に1次圧縮応力を発生させる。
【0051】
加えて、圧縮力導入機構5による圧縮力は、その一部が定着板13a,13bの引寄せ力という形でフック22,22を介して拘束部材6にも作用し、かかる拘束部材6は、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ、2次圧縮応力を発生させる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ防止具21によれば、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5による圧縮応力(1次圧縮応力)に加えて、拘束部材6による圧縮応力(2次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れがさらに確実に抑制される。
【0053】
ちなみに、後述する実験によれば、ひび割れ幅は、従来の約1/2〜1/4に抑制され、初期ひび割れに起因する従来の問題を改善することができることがわかった。
【0054】
本実施形態では、円弧形成された拘束部材6で本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部材は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状であってもかまわない。
【0055】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、フック22,22が定着板13a,13bに実質的に当接することで、該定着板からの圧縮力を半円部分に確実に伝達させることができるのであれば、拘束部材6の外側直径が一対の定着板13a,13bの内側離間距離よりも必ずしも大きくなるように構成する必要はない。
【0056】
すなわち、定着板13a,13bから拘束部材6に圧縮力が伝達する場合において、拘束部材6と一対の定着板13a,13bとの間に生じるクリアランスを無視し得ることができるのであれば、むしろ、拘束部材6の外側直径を一対の定着板13a,13bの内側離間距離よりも若干小さく形成することで、拘束部材6aの取付け時の施工性を良好にする構成としてもかまわない。
【0057】
また、本実施形態では、拘束部材6の各端部に設けられたフックを圧縮力導入機構5に引っ掛けることで、拘束部材6が圧縮力導入機構5に対して着脱自在となるようにしたが、本発明における可撓性拘束部材は、必ずしも着脱自在とする必要はなく、いったん取り付けた後に取り外せなくてもかまわない。
【0058】
また、本実施形態では、可撓性拘束部材の取付け自在構成として、拘束部材6の各端部にフック22,22を設ける構成としたが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。
【0059】
図5は、鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工して可撓性拘束部材としての拘束部材6aとするとともに、その各端部を、互いに直交する2枚の切片82,83から構成されたL型受け具81を介して圧縮力導入機構5の定着板13a,13bに取り付けるようにした例を示したものである。
【0060】
同図に示す変形例においては、L型受け具81の切片83に形成されたボルト孔84に緊張力導入ロッド12を挿通し、かかる状態で該切片を反力パイプ11bと定着板13bとの間に挟み込んで圧縮力導入機構5に固定するとともに、もう一方についても、同様にして切片83を反力パイプ11aと定着板13aとの間に挟み込んで圧縮力導入機構5に固定し、かかる状態で、切片82,82に形成された孔85,85に拘束部材6aの各端部をそれぞれ差し込む。
【0061】
かかる構成においては、L型受け具81は、U型スペーサー14を抜いて反力パイプ11a,11bの圧縮力が解放された後、定着板13a,13bから圧縮方向の力を受け、拘束部材6aを収縮させる。
【0062】
以下、コンクリートに1次圧縮応力及び2次圧縮応力が生じる点は上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0063】
また、可撓性拘束部材の取付け自在構成として、現場対応の取付け自在な構成としてもかまわない。
【0064】
図6は、かかる変形例を示したものであり、同図(a)は、半円形をなす拘束部材6aの端部を圧縮力導入機構5の定着板13a,13bの内側にあてがった上、鋼線で圧縮力導入機構5に結束した例、同図(b)は、半円形をなし各端部が同一面内で折り曲げられてなる拘束部材6a′の端部を圧縮力導入機構5の定着板13a,13bの内側にあてがった上、鋼線で圧縮力導入機構5に結束した例を示したものである。
【0065】
いずれも、作用効果については上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0066】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、本発明に係る可撓性拘束部材の形状及び寸法を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定してもよい。
【0067】
図7に示す変形例においては、圧縮力導入機構5を構成する一対の定着部13a,13bによってコンクリート中に形成される圧縮応力領域31内に拘束部材6a′を配置することができるよう、該拘束部材の寸法(直径)を設定してある。
【0068】
同図に示す例においては、拘束部材6a′をコンクリート中に形成される圧縮応力領域31内に配置してあるため、導入された圧縮力は、その一部がコンクリートを介して拘束部材6a′にも作用し(同図点線)、かかる拘束部材6a′は、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ(同図点線)、3次圧縮応力を発生させる。
【0069】
すなわち、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5による圧縮応力(1次圧縮応力)及び拘束部材6a′による圧縮応力(圧縮力導入機構5から直接伝達された圧縮力によるもの、2次圧縮応力)に加えて、拘束部材6a′による圧縮応力(圧縮力導入機構5からコンクリートを介して間接的に伝達された圧縮力によるもの、3次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れをさらに確実に抑制することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、半円形に加工形成された拘束部材6で本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部材は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状あるいは弓状であってもかまわない。
【0071】
(第2実施形態)
【0072】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図8は、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を示した図であり、図9はその配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ防止具21bは、RC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5と該圧縮力導入機構に固定された可撓性拘束部としての拘束部材6bとからなる。
【0074】
拘束部材6bは、可撓性材料である鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、その各端部を圧縮力導入機構5の定着板13a,13bに溶接で固定してあり、かかる構成により、定着板13a,13bからの圧縮力が半円部分に伝達するようになっている。
【0075】
本実施形態に係るひび割れ防止具21bを用いてRC壁2に形成された開口3のひび割れ抑制を行うには、図9に示すようにまず、圧縮力導入機構5の圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れ32の走行方向に概ね直交するように、ひび割れ防止具21bを開口3の隅部4近傍に埋設する。また、拘束部材6bについては、その両端でひび割れ32が挟み込まれるように配置する。
【0076】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構5を作動させる、すなわち、U型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bの圧縮力を解放する。
【0077】
このようにすると、RC壁2に形成された開口3の隅部4には、従来技術と同様、圧縮力導入機構5を構成する一対の定着板13a,13bによって圧縮力が導入され、圧縮応力領域31に1次圧縮応力を発生させる。
【0078】
加えて、圧縮力導入機構5による圧縮力は、その一部が定着板13a,13bの引寄せ力という形で拘束部材6bにも作用し、かかる拘束部材6bは、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ、2次圧縮応力を発生させる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ防止具21bによれば、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5による圧縮応力(1次圧縮応力)に加えて、拘束部材6bによる圧縮応力(2次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れがさらに確実に抑制される。
【0080】
ちなみに、後述する実験によれば、ひび割れ幅は、従来の約1/2〜1/4に抑制され、初期ひび割れに起因する従来の問題を改善することができることがわかった。
【0081】
本実施形態では、円弧形成された拘束部材6bで本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部材は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状であってもかまわない。
【0082】
(第3実施形態)
【0083】
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1,2実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
図10は、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を示した図であり、図11はその配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ防止具21cは、RC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5aと該圧縮力導入機構と一体化された可撓性拘束部としての拘束部6cとからなる。
【0085】
拘束部6cは、可撓性材料である帯状の平鋼を半円形となるように弱軸廻り(面外)に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、圧縮力導入機構5aは、図3に示した圧縮力導入機構5と同様、直列配置された反力パイプ11a,11bと、該反力パイプに挿通されPC鋼棒で形成された緊張力導入ロッド12と、反力パイプ11a,11bの間に挟み込まれるU型スペーサー14と、反力パイプ11a,11bの外周側に配置されるシール管15a,15bとを備える。
【0086】
ここで、圧縮力導入機構5aは圧縮力導入機構5とは異なり、緊張力導入ロッド12の各端部を、拘束部6cの各端部81a,81bに形成されたロッド孔に挿通した上、2つのナットをそれぞれ螺合することにより、拘束部6cの各端部81a,81bを緊張力ロッド12の各端にそれぞれ取り付けてある。
【0087】
すなわち、拘束部6cに形成された端部81a,81bは、緊張力ロッド12による圧縮力を拘束部6cの半円部分に伝達する役割を果たしており、圧縮力導入機構5aの定着部としても機能する。
【0088】
拘束部6cの端部81a,81bは、圧縮力導入機構5aの定着部として作用し得るよう、所定直径を有する円板部分が形成されるように構成する。
【0089】
なお、圧縮力導入機構5aにおいては、圧縮力導入機構5と同様、緊張力導入ロッド12に引張力を与えた状態で反力パイプ11a,11bの間にU型スペーサー14を挟み込むことで、緊張力導入ロッド12の引張力を反力パイプ11a,11bの圧縮力と均衡させ、かかる状態でコンクリートが硬化した後にU型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bが負担していた圧縮力をコンクリートに導入し、該コンクリートに圧縮応力を発生させることができるようになっている。
【0090】
本実施形態に係るひび割れ防止具21cを用いてRC壁2に形成された開口3のひび割れ抑制を行うには、図11に示すようにまず、圧縮力導入機構5aの圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れ32の走行方向に概ね直交するように、ひび割れ防止具21cを開口3の隅部4近傍に埋設する。また、拘束部6cについては、その両端でひび割れ32が挟み込まれるように配置する。
【0091】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構5aを作動させる、すなわち、U型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bの圧縮力を解放する。
【0092】
このようにすると、RC壁2に形成された開口3の隅部4には、従来技術と同様、圧縮力導入機構5aを構成する一対の定着部81a,81bによって圧縮力が導入され、圧縮応力領域31に1次圧縮応力を発生させる。
【0093】
加えて、圧縮力導入機構5aによる圧縮力は、その一部が定着部81a,81bの引寄せ力という形で拘束部6cにも作用し、かかる拘束部6cは、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ、2次圧縮応力を発生させる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ防止具21cによれば、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5aによる圧縮応力(1次圧縮応力)に加えて、拘束部6cによる圧縮応力(2次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れがさらに確実に抑制される。
【0095】
ちなみに、後述する実験によれば、ひび割れ幅は、従来の約1/2〜1/4に抑制され、初期ひび割れに起因する従来の問題を改善することができることがわかった。
【0096】
本実施形態では、円弧形成された拘束部6cで本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状であってもかまわない。
【実施例】
【0097】
本発明に係るひび割れ防止具の作用効果を実証する試験を行ったので、以下に説明する。
【0098】
矩形フレーム窓枠を縦横に二分割した状態に相当するL字状窓枠部分を製作し、これを試験体とした(試験体寸法は同図に示した通り)。図12は、かかる試験体を45゜回転させて示した正面図である。なお、載荷試験機によって荷重を載荷する箇所については、試験の都合上、面取りして平坦に形成した。開口隅部には、ひび割れ幅を計測するための開口部変位計91を取り付けた。
【0099】
図13は、半円状鉄筋が2本の斜筋に取り付けられた複合鉄筋を示した平面図であり、本発明との対比で用いたものである(寸法は同図に示した通り)。
【0100】
図14(a)は、「プレトール」という商品名で本出願人が製造販売している圧縮力導入機構と、その定着板に各端部が溶接固定されたほぼ半円形をなす拘束筋(大リング)とで構成したひび割れ防止具を示した平面図である(寸法は同図に示した通り)。なお、同図(b)には、参考のため、「プレトール」とそれに非固定であってほぼ半円状をなす拘束筋(小リング)とで構成したひび割れ防止具を同様に平面図で示してある。
【0101】
試験は、従来の開口補強手段である斜筋だけを使ったケース1、複合鉄筋を併用したケース2、斜筋と「プレトール」とを併用したケース3、「プレトール」と小リングの拘束筋とで構成されたひび割れ防止具を用いたケース4、及び「プレトール」と大リングの拘束筋とで構成されたひび割れ防止具を用いたケース5の計5ケース行った。
【0102】
載荷試験の結果を図15に示す。
【0103】
同図でわかるように、50kNの荷重で見たとき、ひび割れ抑制を行わないケース1やケース2では、ひび割れ幅が0.02mmに達しているとともに、「プレトール」を使ったケース3でも、ひび割れ幅を0.015〜0.02mm程度に抑制できるにとどまっているのに対し、本発明に係るひび割れ防止具に相当するケース5では、ひび割れ幅が0.005mm以下に抑制されており、かくして本発明によれば、乾燥収縮に伴うひび割れ幅を、従来の1/2〜1/4に抑制することができるという顕著な作用効果を奏することがわかった。
【0104】
ちなみに、従来技術のひび割れ抑制は、主として地震荷重レベルを対象としているため、本実証試験のように初期ひび割れに対応した荷重の場合、ひび割れ抑制効果は小さいことがわかる。
【0105】
なお、ケース4でも、ひび割れ幅が0.0125mm程度に抑制されており、かかる構成(非固定)によっても、従来技術では奏し得ない作用効果を奏するのがわかる。
【0106】
なお、図15における荷重範囲は、初期ひび割れの原因となる乾燥収縮や温度変化によって開口隅部に作用するであろう荷重を想定し、100kN以下とした。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具21を示した図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線方向から見た側面図。
【図2】本実施形態に係るひび割れ防止具21の配置図。
【図3】圧縮力導入機構5を示した図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線に沿う断面図、(c)はU型スペーサー14近傍の詳細図。
【図4】本実施形態に係るひび割れ防止具21の作用を示した図。
【図5】変形例に係るひび割れ防止具を示した斜視図。
【図6】同じく変形例に係るひび割れ防止具を示した平面図。
【図7】ひび割れ防止具の別の使用形態を示した配置図。
【図8】第2実施形態に係るひび割れ防止具21bを示した平面図。
【図9】本実施形態に係るひび割れ防止具21bの配置図。
【図10】第3実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具21cを示した図であり、(a)は正面図、(b)はC−C線方向から見た側面図。
【図11】本実施形態に係るひび割れ防止具21cの配置図。
【図12】本発明の実証試験に用いた試験体の図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図13】従来の複合鉄筋を示した平面図。
【図14】実証試験で用いたひび割れ防止具を示した平面図。
【図15】実証試験の結果を示したグラフ。
【符号の説明】
【0108】
2 RC壁(鉄筋コンクリート構造物)
3 開口
4 隅部
5 圧縮力導入機構
6,6a,6a′,6b
拘束部材(可撓性拘束部材)
6c 拘束部(可撓性拘束部)
13a,13b 定着板
21,21b,21c ひび割れ防止具
31 圧縮応力領域
32 ひび割れ
81a,81b 定着部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鉄筋コンクリート壁に形成された窓等の開口の隅部に用いられる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物を構成するコンクリートは、本来的に引張力に弱く、乾燥や温度変化による収縮変形が拘束されると、ひび割れが生じる。応力が集中しやすい開口の隅部には、上述したひび割れが特に発生しやすい。
【0003】
コンクリートのひび割れは、引張応力を鉄筋が負担し圧縮応力をコンクリートが負担するという鉄筋コンクリート構造の特性上、それ自体が鉄筋コンクリートの強度にただちに悪影響を及ぼすものではないが、ひび割れを原因としたコンクリートの中性化によって鉄筋が腐食した場合、経年的には鉄筋コンクリートの強度にも悪影響が及ぶ。加えて、コンクリートのひび割れは、強度上問題ないとしても、鉄筋コンクリート構造物の美観を損ねたり、漏水を発生させたりする。
【0004】
ここで、コンクリートにひび割れが生じる原因は、上述したような乾燥や温度変化を受けたときの変形拘束のほか、地震によって過大な強制変形を受けることが挙げられるが、乾燥収縮は、鉄筋コンクリート構造物を構築した直後から初期ひび割れとして数多く発現するため、漏水や美観の点で従来からさまざまな対策がとられてきた。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−48055号公報
【特許文献2】特開昭63−110344号公報
【特許文献3】特開2002−266469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような乾燥収縮による初期ひび割れは、例えば、コンクリートを打設した後、開口隅部に圧縮力を導入することで、ある程度抑制することができる(特許文献1,2)。
【0007】
しかしながら、鉄筋コンクリート構造物には、以前にも増して高いデザイン性や美観が求められており、従来の技術では、昨今のニーズに対応することが難しいという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、乾燥収縮や熱収縮によるコンクリートの初期ひび割れをより確実に抑制することが可能な鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は請求項1に記載したように、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部から作用する圧縮力が伝達されるように該一対の定着部にそれぞれ取付け自在としたものである。
【0010】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は請求項2に記載したように、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定したものである。
【0011】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は請求項3に記載したように、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化したものである。
【0012】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部の形状及び寸法を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定したものである。
【0013】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部を全体形状がコ字状、L字状又は円弧状となるように形成したものである。
【0014】
第1の発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、圧縮力導入機構と、両端を有し内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなり、該可撓性拘束部材は、その各端部を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部から作用する圧縮力が伝達されるように該一対の定着部にそれぞれ取付け自在としてある。
【0015】
また、第2の発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなり、可撓性拘束部材は、その各端部を圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定してある。
【0016】
また、第3の発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具は、圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部とからなり、可撓性拘束部は、その各端部を圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化してある。
【0017】
第1の発明に係るひび割れ防止具を用いて鉄筋コンクリート構造物に形成された開口のひび割れ抑制を行うには、可撓性拘束部材を圧縮力導入機構に先行して取り付け、しかる後、圧縮力導入機構及び可撓性拘束部材を開口の隅部近傍に埋設するか、又は、圧縮力導入機構及び可撓性拘束部材のうち、いずれか一方を開口の隅部近傍に先行埋設し、しかる後、他方を一方に取り付ける。
【0018】
可撓性拘束部材の各端部を一対の定着部にそれぞれ取り付けるにあたっては、圧縮力導入機構から可撓性拘束部材に圧縮力が伝達される限り、その取付け方法は任意であり、例えば、ボルト止め、嵌合等の取付け方法を採用することが可能である。
【0019】
また、第2,3の発明に係るひび割れ防止具を用いて鉄筋コンクリート構造物に形成された開口のひび割れ抑制を行うには、該ひび割れ防止具を開口の隅部近傍に埋設する。
【0020】
本発明に係るひび割れ防止具を配置するにあたっては、圧縮力導入機構の圧縮方向が開口の隅部に発生するであろうひび割れの走行方向に概ね直交するように配置する。
【0021】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構を作動させる。
【0022】
このようにすると、鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部には、従来技術と同様、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によって圧縮力が導入され、かかる圧縮力によって該開口隅部に生ずるひび割れが抑制されるが、本発明においては、圧縮力導入機構によって導入された圧縮力の一部が、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に直接作用し、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部は、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途及ぼしめる。
【0023】
そして、開口隅部に位置するコンクリートには、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部による圧縮応力があらたに発生する。
【0024】
すなわち、開口隅部でひび割れが生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構による圧縮応力に加えて、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部による圧縮応力が累加的に発生することとなり、かくして開口隅部に生ずるであろうひび割れをさらに確実に抑制することが可能となる。
【0025】
可撓性拘束部材又は可撓性拘束部によってコンクリートに生じる圧縮応力は、圧縮力導入機構によってコンクリートに直接発生する圧縮応力とは異なり、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に作用し又は伝達する圧縮力によって該可撓性拘束部材又は可撓性拘束部が間接的にコンクリートに圧縮応力を発生させるものであり、本明細書では、圧縮力導入機構による圧縮応力を1次圧縮応力、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部による圧縮応力を2次圧縮応力と呼ぶ。
【0026】
圧縮力導入機構は、一対の定着部と、該一対の定着部をコンクリート硬化後に引き寄せることでコンクリートを圧縮し該コンクリート中に圧縮応力を発生させる圧縮力導入部材と、該圧縮力導入部材を作動させる操作部とを備えたものであれば、その構成は任意であるが、例えばプレストレス形式のものを用いるのがよい。
【0027】
プレストレス形式の圧縮力導入機構として、「プレトール」(登録商標)の商品名で本出願人が製造販売しているひび割れ防止治具を採用することができる。
【0028】
可撓性拘束部材又は可撓性拘束部は、両端を有しかつ内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成されることによって、圧縮力導入機構から受けた圧縮力で内方の包囲空間に拡がるコンクリートに2次圧縮応力を発生させることができるものであって、かかる作用を奏する限り、具体的な形状は任意であり、例えばコ字状、L字状又は円弧状に形成し、さらに具体的には、半円に曲げ加工した異形鉄筋や平鋼を用いて構成することができる。
【0029】
第1の発明における可撓性拘束部材の取付け自在な構成とは、例えば施工時において可撓性拘束部材を圧縮力導入機構に取り付けることができるようになっていれば足りるものであって、いったん取り付けたものを取り外せることまで要するものではなく、その意味で着脱自在である必要はない。
【0030】
第2の発明における可撓性拘束部材は、その各端部を圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定するものであり、該固定方法としては、溶接、螺着、圧着等の公知の方法から適宜選択することが可能である。
【0031】
第3の発明における可撓性拘束部は、その各端部を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化するものであり、該一体化方法としては、例えば圧縮力導入機構の定着板から可撓性拘束部を延設することによって、該定着板に可撓性拘束部の端部としての機能を持たせる構成が考えられる。
【0032】
上述した各発明において、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部の形状及び寸法を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定したならば、圧縮力導入機構で導入された圧縮力の一部がコンクリートを介して可撓性拘束部材又は可撓性拘束部にも作用し、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途及ぼしめる。
【0033】
すなわち、開口隅部でひび割れが生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構による圧縮応力と、該圧縮力導入機構から可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に直接伝達された圧縮力による圧縮応力とに加えて、圧縮力導入機構からコンクリートを介して可撓性拘束部材又は可撓性拘束部に間接的に伝達された圧縮力による圧縮応力が累加的に発生することとなり、かくして開口隅部に生ずるであろうひび割れをさらに確実に抑制することが可能となる。
【0034】
なお、可撓性拘束部材又は可撓性拘束部によってコンクリートに生じる圧縮応力のうち、圧縮力導入機構によって間接的に伝達された圧縮力によるものは、直接的に伝達された圧縮力によるものとは異なるため、本明細書では、これを3次圧縮応力と呼ぶ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
(第1実施形態)
【0037】
図1は、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を示した図であり、図2はその配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ防止具21は、鉄筋コンクリート構造物としてのRC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5と該圧縮力導入機構に取り付けられる可撓性拘束部材としての拘束部材6とからなる。
【0038】
圧縮力導入機構5は、その圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れの走行方向(同図では水平軸に対して45度の角度で隅部4から左上に延びる方向)に概ね直交するように配置してある。ひび割れは、主としてコンクリート打設後の乾燥収縮に起因したものであり、応力が集中する隅部4に発生しやすい。
【0039】
図3は、圧縮力導入機構5を示した図である。同図でわかるように、圧縮力導入機構5は、直列配置された反力パイプ11a,11bと、該反力パイプに挿通されPC鋼棒で形成された緊張力導入ロッド12と、該緊張力導入ロッドの一端に圧着固定された定着板13aと、他端に螺合された定着板13bと、反力パイプ11a,11bの間に挟み込まれるU型スペーサー14と、反力パイプ11a,11bの外周側に配置されるシール管15a,15bとから構成してあり、緊張力導入ロッド12に引張力を与えた状態で反力パイプ11a,11bの間にU型スペーサー14を挟み込むことで、緊張力導入ロッド12の引張力を反力パイプ11a,11bの圧縮力と均衡させ、かかる状態でコンクリートが硬化した後にU型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bが負担していた圧縮力をコンクリートに導入し、該コンクリートに圧縮応力を発生させることができるようになっている。なお、定着板13a,13bは、本発明に係る一対の定着部を構成する。
【0040】
定着板13aは、緊張力導入ロッド12に圧着された円筒スリーブと該円筒スリーブの端部に一体に設けられた環状板とから構成してあるとともに、定着板13bは、緊張力導入ロッド12の他端に切られた雄ねじが螺合されるナットと環状板とからなり、これらの環状板が主として定着板としての機能を担う。
【0041】
拘束部材6は、可撓性材料である鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、その各端部を面外方向に折り返すことで該各端部にフック22,22を形成してあり、該フックを圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けることにより、圧縮力導入機構5に着脱自在となるように構成してある。
【0042】
ここで、拘束部材6は、その外側直径が一対の定着板13a,13bの内側離間距離よりも若干大きくなるように形成してあり、かかる構成により、フック22,22を圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けたときに該フックを介して定着板13a,13bからの圧縮力が半円部分に伝達するようになっている。
【0043】
本実施形態に係るひび割れ防止具21を用いてRC壁2に形成された開口3のひび割れ抑制を行うにはまず、圧縮力導入機構5の圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れの走行方向に概ね直交するように、ひび割れ防止具21を開口3の隅部4近傍に埋設する。
【0044】
図2に示したひび割れ32は、本実施形態に係るひび割れ防止具21がなければ、開口3の隅部4に発生するであろうひび割れであり、典型的には隅部4から左上45゜方向に延びる。
【0045】
ひび割れ防止具21を配置するにあたっては、拘束部材6を圧縮力導入機構5に先行して取り付け、しかる後、圧縮力導入機構5及び拘束部材6を埋設するようにしてもよいし、例えば圧縮力導入機構5を開口3の隅部4に先行埋設し、しかる後、拘束部材6を圧縮力導入機構6に取り付けるようにしてもよい。
【0046】
拘束部材6を圧縮力導入機構5に取り付ける際は、半円部分を両手で縮めておき、かかる状態でフック22,22を圧縮力導入機構5の反力パイプ11a,11bに引っ掛けるようにすればよい。
【0047】
このようにすれば、取付け後は、拘束部材6がその復元力で拡がろうとし、フック22,22は、定着板13a,13bの内側に確実に当接される。
【0048】
なお、拘束部材6については、その両端でひび割れ32が挟み込まれるように配置する。
【0049】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構5を作動させる、すなわち、U型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bの圧縮力を解放する。
【0050】
このようにすると、RC壁2に形成された開口3の隅部4には、従来技術と同様、圧縮力導入機構5を構成する一対の定着板13a,13bによって圧縮力が導入され、図4に示すように圧縮応力領域31に1次圧縮応力を発生させる。
【0051】
加えて、圧縮力導入機構5による圧縮力は、その一部が定着板13a,13bの引寄せ力という形でフック22,22を介して拘束部材6にも作用し、かかる拘束部材6は、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ、2次圧縮応力を発生させる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ防止具21によれば、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5による圧縮応力(1次圧縮応力)に加えて、拘束部材6による圧縮応力(2次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れがさらに確実に抑制される。
【0053】
ちなみに、後述する実験によれば、ひび割れ幅は、従来の約1/2〜1/4に抑制され、初期ひび割れに起因する従来の問題を改善することができることがわかった。
【0054】
本実施形態では、円弧形成された拘束部材6で本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部材は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状であってもかまわない。
【0055】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、フック22,22が定着板13a,13bに実質的に当接することで、該定着板からの圧縮力を半円部分に確実に伝達させることができるのであれば、拘束部材6の外側直径が一対の定着板13a,13bの内側離間距離よりも必ずしも大きくなるように構成する必要はない。
【0056】
すなわち、定着板13a,13bから拘束部材6に圧縮力が伝達する場合において、拘束部材6と一対の定着板13a,13bとの間に生じるクリアランスを無視し得ることができるのであれば、むしろ、拘束部材6の外側直径を一対の定着板13a,13bの内側離間距離よりも若干小さく形成することで、拘束部材6aの取付け時の施工性を良好にする構成としてもかまわない。
【0057】
また、本実施形態では、拘束部材6の各端部に設けられたフックを圧縮力導入機構5に引っ掛けることで、拘束部材6が圧縮力導入機構5に対して着脱自在となるようにしたが、本発明における可撓性拘束部材は、必ずしも着脱自在とする必要はなく、いったん取り付けた後に取り外せなくてもかまわない。
【0058】
また、本実施形態では、可撓性拘束部材の取付け自在構成として、拘束部材6の各端部にフック22,22を設ける構成としたが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。
【0059】
図5は、鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工して可撓性拘束部材としての拘束部材6aとするとともに、その各端部を、互いに直交する2枚の切片82,83から構成されたL型受け具81を介して圧縮力導入機構5の定着板13a,13bに取り付けるようにした例を示したものである。
【0060】
同図に示す変形例においては、L型受け具81の切片83に形成されたボルト孔84に緊張力導入ロッド12を挿通し、かかる状態で該切片を反力パイプ11bと定着板13bとの間に挟み込んで圧縮力導入機構5に固定するとともに、もう一方についても、同様にして切片83を反力パイプ11aと定着板13aとの間に挟み込んで圧縮力導入機構5に固定し、かかる状態で、切片82,82に形成された孔85,85に拘束部材6aの各端部をそれぞれ差し込む。
【0061】
かかる構成においては、L型受け具81は、U型スペーサー14を抜いて反力パイプ11a,11bの圧縮力が解放された後、定着板13a,13bから圧縮方向の力を受け、拘束部材6aを収縮させる。
【0062】
以下、コンクリートに1次圧縮応力及び2次圧縮応力が生じる点は上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0063】
また、可撓性拘束部材の取付け自在構成として、現場対応の取付け自在な構成としてもかまわない。
【0064】
図6は、かかる変形例を示したものであり、同図(a)は、半円形をなす拘束部材6aの端部を圧縮力導入機構5の定着板13a,13bの内側にあてがった上、鋼線で圧縮力導入機構5に結束した例、同図(b)は、半円形をなし各端部が同一面内で折り曲げられてなる拘束部材6a′の端部を圧縮力導入機構5の定着板13a,13bの内側にあてがった上、鋼線で圧縮力導入機構5に結束した例を示したものである。
【0065】
いずれも、作用効果については上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0066】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、本発明に係る可撓性拘束部材の形状及び寸法を、圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定してもよい。
【0067】
図7に示す変形例においては、圧縮力導入機構5を構成する一対の定着部13a,13bによってコンクリート中に形成される圧縮応力領域31内に拘束部材6a′を配置することができるよう、該拘束部材の寸法(直径)を設定してある。
【0068】
同図に示す例においては、拘束部材6a′をコンクリート中に形成される圧縮応力領域31内に配置してあるため、導入された圧縮力は、その一部がコンクリートを介して拘束部材6a′にも作用し(同図点線)、かかる拘束部材6a′は、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ(同図点線)、3次圧縮応力を発生させる。
【0069】
すなわち、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5による圧縮応力(1次圧縮応力)及び拘束部材6a′による圧縮応力(圧縮力導入機構5から直接伝達された圧縮力によるもの、2次圧縮応力)に加えて、拘束部材6a′による圧縮応力(圧縮力導入機構5からコンクリートを介して間接的に伝達された圧縮力によるもの、3次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れをさらに確実に抑制することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、半円形に加工形成された拘束部材6で本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部材は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状あるいは弓状であってもかまわない。
【0071】
(第2実施形態)
【0072】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図8は、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を示した図であり、図9はその配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ防止具21bは、RC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5と該圧縮力導入機構に固定された可撓性拘束部としての拘束部材6bとからなる。
【0074】
拘束部材6bは、可撓性材料である鉄筋等の鋼棒を半円形に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、その各端部を圧縮力導入機構5の定着板13a,13bに溶接で固定してあり、かかる構成により、定着板13a,13bからの圧縮力が半円部分に伝達するようになっている。
【0075】
本実施形態に係るひび割れ防止具21bを用いてRC壁2に形成された開口3のひび割れ抑制を行うには、図9に示すようにまず、圧縮力導入機構5の圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れ32の走行方向に概ね直交するように、ひび割れ防止具21bを開口3の隅部4近傍に埋設する。また、拘束部材6bについては、その両端でひび割れ32が挟み込まれるように配置する。
【0076】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構5を作動させる、すなわち、U型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bの圧縮力を解放する。
【0077】
このようにすると、RC壁2に形成された開口3の隅部4には、従来技術と同様、圧縮力導入機構5を構成する一対の定着板13a,13bによって圧縮力が導入され、圧縮応力領域31に1次圧縮応力を発生させる。
【0078】
加えて、圧縮力導入機構5による圧縮力は、その一部が定着板13a,13bの引寄せ力という形で拘束部材6bにも作用し、かかる拘束部材6bは、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ、2次圧縮応力を発生させる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ防止具21bによれば、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5による圧縮応力(1次圧縮応力)に加えて、拘束部材6bによる圧縮応力(2次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れがさらに確実に抑制される。
【0080】
ちなみに、後述する実験によれば、ひび割れ幅は、従来の約1/2〜1/4に抑制され、初期ひび割れに起因する従来の問題を改善することができることがわかった。
【0081】
本実施形態では、円弧形成された拘束部材6bで本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部材は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状であってもかまわない。
【0082】
(第3実施形態)
【0083】
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1,2実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
図10は、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具を示した図であり、図11はその配置図である。同図でわかるように、本実施形態に係るひび割れ防止具21cは、RC壁2に形成された開口3の隅部4近傍に埋設され、圧縮力導入機構5aと該圧縮力導入機構と一体化された可撓性拘束部としての拘束部6cとからなる。
【0085】
拘束部6cは、可撓性材料である帯状の平鋼を半円形となるように弱軸廻り(面外)に曲げ加工することで内方に包囲空間が形成されるように構成してあるとともに、圧縮力導入機構5aは、図3に示した圧縮力導入機構5と同様、直列配置された反力パイプ11a,11bと、該反力パイプに挿通されPC鋼棒で形成された緊張力導入ロッド12と、反力パイプ11a,11bの間に挟み込まれるU型スペーサー14と、反力パイプ11a,11bの外周側に配置されるシール管15a,15bとを備える。
【0086】
ここで、圧縮力導入機構5aは圧縮力導入機構5とは異なり、緊張力導入ロッド12の各端部を、拘束部6cの各端部81a,81bに形成されたロッド孔に挿通した上、2つのナットをそれぞれ螺合することにより、拘束部6cの各端部81a,81bを緊張力ロッド12の各端にそれぞれ取り付けてある。
【0087】
すなわち、拘束部6cに形成された端部81a,81bは、緊張力ロッド12による圧縮力を拘束部6cの半円部分に伝達する役割を果たしており、圧縮力導入機構5aの定着部としても機能する。
【0088】
拘束部6cの端部81a,81bは、圧縮力導入機構5aの定着部として作用し得るよう、所定直径を有する円板部分が形成されるように構成する。
【0089】
なお、圧縮力導入機構5aにおいては、圧縮力導入機構5と同様、緊張力導入ロッド12に引張力を与えた状態で反力パイプ11a,11bの間にU型スペーサー14を挟み込むことで、緊張力導入ロッド12の引張力を反力パイプ11a,11bの圧縮力と均衡させ、かかる状態でコンクリートが硬化した後にU型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bが負担していた圧縮力をコンクリートに導入し、該コンクリートに圧縮応力を発生させることができるようになっている。
【0090】
本実施形態に係るひび割れ防止具21cを用いてRC壁2に形成された開口3のひび割れ抑制を行うには、図11に示すようにまず、圧縮力導入機構5aの圧縮方向が開口3の隅部4に発生するであろうひび割れ32の走行方向に概ね直交するように、ひび割れ防止具21cを開口3の隅部4近傍に埋設する。また、拘束部6cについては、その両端でひび割れ32が挟み込まれるように配置する。
【0091】
次に、コンクリートが硬化して所定の強度が発現した後、圧縮力導入機構5aを作動させる、すなわち、U型スペーサー14を引き抜くことにより、反力パイプ11a,11bの圧縮力を解放する。
【0092】
このようにすると、RC壁2に形成された開口3の隅部4には、従来技術と同様、圧縮力導入機構5aを構成する一対の定着部81a,81bによって圧縮力が導入され、圧縮応力領域31に1次圧縮応力を発生させる。
【0093】
加えて、圧縮力導入機構5aによる圧縮力は、その一部が定着部81a,81bの引寄せ力という形で拘束部6cにも作用し、かかる拘束部6cは、その包囲空間内に向けてコンクリートに圧縮力を別途作用させ、2次圧縮応力を発生させる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態に係るひび割れ防止具21cによれば、開口隅部でひび割れ32が生じるであろう箇所には、圧縮力導入機構5aによる圧縮応力(1次圧縮応力)に加えて、拘束部6cによる圧縮応力(2次圧縮応力)が累加的に発生することとなり、かくして開口3の隅部4に生ずるであろうひび割れがさらに確実に抑制される。
【0095】
ちなみに、後述する実験によれば、ひび割れ幅は、従来の約1/2〜1/4に抑制され、初期ひび割れに起因する従来の問題を改善することができることがわかった。
【0096】
本実施形態では、円弧形成された拘束部6cで本発明の可撓性拘束部材を構成したが、可撓性拘束部は、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された両端を有する部材である限り、その具体的構成については任意であり、円弧でなくても円弧状、例えば楕円であってもかまわないし、そもそも円弧状である必要はなく、コ字状やL字状であってもかまわない。
【実施例】
【0097】
本発明に係るひび割れ防止具の作用効果を実証する試験を行ったので、以下に説明する。
【0098】
矩形フレーム窓枠を縦横に二分割した状態に相当するL字状窓枠部分を製作し、これを試験体とした(試験体寸法は同図に示した通り)。図12は、かかる試験体を45゜回転させて示した正面図である。なお、載荷試験機によって荷重を載荷する箇所については、試験の都合上、面取りして平坦に形成した。開口隅部には、ひび割れ幅を計測するための開口部変位計91を取り付けた。
【0099】
図13は、半円状鉄筋が2本の斜筋に取り付けられた複合鉄筋を示した平面図であり、本発明との対比で用いたものである(寸法は同図に示した通り)。
【0100】
図14(a)は、「プレトール」という商品名で本出願人が製造販売している圧縮力導入機構と、その定着板に各端部が溶接固定されたほぼ半円形をなす拘束筋(大リング)とで構成したひび割れ防止具を示した平面図である(寸法は同図に示した通り)。なお、同図(b)には、参考のため、「プレトール」とそれに非固定であってほぼ半円状をなす拘束筋(小リング)とで構成したひび割れ防止具を同様に平面図で示してある。
【0101】
試験は、従来の開口補強手段である斜筋だけを使ったケース1、複合鉄筋を併用したケース2、斜筋と「プレトール」とを併用したケース3、「プレトール」と小リングの拘束筋とで構成されたひび割れ防止具を用いたケース4、及び「プレトール」と大リングの拘束筋とで構成されたひび割れ防止具を用いたケース5の計5ケース行った。
【0102】
載荷試験の結果を図15に示す。
【0103】
同図でわかるように、50kNの荷重で見たとき、ひび割れ抑制を行わないケース1やケース2では、ひび割れ幅が0.02mmに達しているとともに、「プレトール」を使ったケース3でも、ひび割れ幅を0.015〜0.02mm程度に抑制できるにとどまっているのに対し、本発明に係るひび割れ防止具に相当するケース5では、ひび割れ幅が0.005mm以下に抑制されており、かくして本発明によれば、乾燥収縮に伴うひび割れ幅を、従来の1/2〜1/4に抑制することができるという顕著な作用効果を奏することがわかった。
【0104】
ちなみに、従来技術のひび割れ抑制は、主として地震荷重レベルを対象としているため、本実証試験のように初期ひび割れに対応した荷重の場合、ひび割れ抑制効果は小さいことがわかる。
【0105】
なお、ケース4でも、ひび割れ幅が0.0125mm程度に抑制されており、かかる構成(非固定)によっても、従来技術では奏し得ない作用効果を奏するのがわかる。
【0106】
なお、図15における荷重範囲は、初期ひび割れの原因となる乾燥収縮や温度変化によって開口隅部に作用するであろう荷重を想定し、100kN以下とした。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具21を示した図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線方向から見た側面図。
【図2】本実施形態に係るひび割れ防止具21の配置図。
【図3】圧縮力導入機構5を示した図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線に沿う断面図、(c)はU型スペーサー14近傍の詳細図。
【図4】本実施形態に係るひび割れ防止具21の作用を示した図。
【図5】変形例に係るひび割れ防止具を示した斜視図。
【図6】同じく変形例に係るひび割れ防止具を示した平面図。
【図7】ひび割れ防止具の別の使用形態を示した配置図。
【図8】第2実施形態に係るひび割れ防止具21bを示した平面図。
【図9】本実施形態に係るひび割れ防止具21bの配置図。
【図10】第3実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具21cを示した図であり、(a)は正面図、(b)はC−C線方向から見た側面図。
【図11】本実施形態に係るひび割れ防止具21cの配置図。
【図12】本発明の実証試験に用いた試験体の図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【図13】従来の複合鉄筋を示した平面図。
【図14】実証試験で用いたひび割れ防止具を示した平面図。
【図15】実証試験の結果を示したグラフ。
【符号の説明】
【0108】
2 RC壁(鉄筋コンクリート構造物)
3 開口
4 隅部
5 圧縮力導入機構
6,6a,6a′,6b
拘束部材(可撓性拘束部材)
6c 拘束部(可撓性拘束部)
13a,13b 定着板
21,21b,21c ひび割れ防止具
31 圧縮応力領域
32 ひび割れ
81a,81b 定着部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部から作用する圧縮力が伝達されるように該一対の定着部にそれぞれ取付け自在としたことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項2】
鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定したことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項3】
鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化したことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項4】
前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部の形状及び寸法を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定した請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項5】
前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部を全体形状がコ字状、L字状又は円弧状となるように形成した請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部から作用する圧縮力が伝達されるように該一対の定着部にそれぞれ取付け自在としたことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項2】
鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部材とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部材の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ固定したことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項3】
鉄筋コンクリート構造物に形成された開口の隅部近傍に埋設される圧縮力導入機構と、内方に包囲空間が形成されるように湾曲又は屈曲状に形成された可撓性拘束部とからなる鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具であって、前記可撓性拘束部の各端部を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部にそれぞれ一体化したことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項4】
前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部の形状及び寸法を、前記圧縮力導入機構を構成する一対の定着部によってコンクリート中に形成される圧縮応力領域内に配置できるように設定した請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【請求項5】
前記可撓性拘束部材又は前記可撓性拘束部を全体形状がコ字状、L字状又は円弧状となるように形成した請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の鉄筋コンクリート構造物のひび割れ防止具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−274619(P2008−274619A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118466(P2007−118466)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
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