説明

鉄筋コンクリート製側溝

【課題】 側溝を二つの独立したブロック部材により構成し、この両部材をそれぞれの側壁部の接続部で半固定接合とすることで側壁にかかる曲げモーメントを減少させ、軽量化を図った側溝を提供することを目的とする。
【解決手段】 下部ブロック1と、該下部ブロックの横断面左右側壁部4A上に自立して載置される上部ブロック2とを、それぞれの側壁部4A,4Bの接続部における係合又は嵌合等による半固定接合とした連結部5で連結する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄筋コンクリート製の側溝に関し、更に詳しくは、特に側溝の側壁の厚みを薄
く形成して軽量化を図った上下二分割型のコンクリート製側溝に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図5に示すような暗渠型の側溝Bにあって、その頂版20Aに上載荷重がかか
った場合には、図6に示すように、頂版20Aの中央部に下向きの大きな曲げモーメント
がかかり、底版20Bの中央部には上向きの大きな曲げモーメントがかかる。同時に、前
記頂版20Aと底版20Bとを連結する左右の側壁20C,20Cの中央部にもそれぞれ
図6に示すよう外向きの大きな曲げモーメントがかかる。
【0003】
そこで、図6に示すような曲げモーメントがかかる図5に示す側溝Bにあっては、その
頂版20Aおよび底版20Bはそれぞれ、上記の曲げモーメントに耐え得るだけの厚さや
鉄筋数量を備えた頂版および底版としなければならない。同時に、前記頂版20Aと底版
20Bとを連結して一体構造とした左右の側壁20C,20Cもまた上記の曲げモーメン
トに耐え得るような厚さや配筋とする必要がある。
【0004】
その結果、図5に示すような側溝Bを製造するには多量のセメントや補強鉄筋を使用す
ることになり、ひいては側溝B全体の重量の増大化に繋がるとゝもに、運搬・施工時にお
ける重機の使用,工期の長期化など経済性,施工性の点で解決しなければならない諸問題
があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来の側溝が抱える問題点を解決するために成されたもので、
側溝を二つの独立したブロック部材により構成し、この二つのブロック部材を、側溝の側
壁を形成するそれぞれの側壁部の部分で係合或いは嵌合等による半固定接合とすることで
側壁の厚みを薄くし、軽量化を図った側溝を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、地盤上に設置される下部ブ
ロックと、該下部ブロックの横断面左右側壁部上に自立して載置される上部ブロックとか
らなり、該上・下部両ブロックによって形成される通水部の横断面形状がほゞ円形の側溝
であって、前記上・下部両ブロックの連結部が、それぞれの側壁部の接続部における係合
又は嵌合等による半固定接合としたことを特徴とする。
【0007】
そして、上記の目的を達成するため、本願の請求項2に記載の発明は、前記上部ブロッ
クと下部ブロックからなる側溝において、上載荷重によるモーメントが、側壁の半固定接
合部を中心としてほゞゼロとなるように構成したことを特徴とする。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本願の請求項3に記載の発明は、前記上部ブロック
と下部ブロックからなる側溝の側壁を、該側壁の接続部から上部ブロックの頂版部及び下
部ブロックの底版部に向け内方へ延びる内方傾斜面でそれぞれ形成し、外形が壺状,樽状
ないし釜状であるとゝもに、前記側壁の厚さが前記頂版部及び前記底版部の厚さよりそれ
ぞれ小さい断面構造としたことを特徴とする。
【0009】
そして、上記の目的を達成するため、本願の請求項4に記載の発明は、前記上部ブロッ
クと下部ブロックの連結部が、上・下部両ブロックの側壁部の接続部にそれぞれ形成した
段付突出部の段部と突出部の夫々の係合からなり、上載荷重によって前記上部ブロックの
側壁部の突出部が左右水平方向に移動した際に、該突出部と対面する前記下部ブロックの
側壁部の突出部がこれに追従して同方向に移動する接続構造としたことを特徴とする。
【0010】
更に、本願の請求項5に記載の発明は、前記上部ブロックと下部ブロックが、該上・下
部両ブロックそれぞれの側壁部の接続部に設置した取り外し可能な連結治具で一体に連結
されて製造され、設置現場に於いて前記連結治具が取り外される構成としたことを特徴と
する。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、側溝を上部ブロックと下部ブロックの二部材に分割し、且つ上部ブロッ
クと下部ブロックのそれぞれの側壁部の接続部を係合又は嵌合による連結部で連結する構
造とすることで、頂版部に上載荷重がかかった場合に発生するモーメントは頂版部および
底版部の中央で受け持つことになり、側壁の部分にはモーメントが発生しない。したがっ
て、側壁の厚みを従来のものより大幅に薄くすることができ、全体の重量の軽量化を図っ
たコンクリート製の側溝を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実験の結果、側溝を二つの独立したブロック部材により構成し、この二つのブロック部
材を、側溝の側壁を構成する上・下ブロックの側壁部の係合或いは嵌合などによる半固定
接合によって連結することで、前記側壁には曲げモーメントが殆ど発生しないことが判っ
た。したがって、側溝の側壁の厚みを薄くすることが可能であり、上記の実験によって知
得したデータに基づいて、側壁部の厚さを前記頂版部,底版部がひび割れを起こす限度の
範囲に設定することで、側溝全体の軽量化が図られたものである。
【0013】
以下、本願発明を図1乃至図4に示す実施例を参照して詳細に説明する。図において、
Aは本発明の一実施形態である二分割型の側溝で、地盤上に設置されるほゞU字状の下部
ブロック1と、該下部ブロック1の上に設置され連結部が半固定接合としたほゞ逆U字状
の上部ブロック2の二部材から構成されている。
【0014】
前記下部ブロック1は、底版部3Aと、該底版部3Aの両端からやや外方向へ向けて立
ち上がる左右の側壁部4A,4Aから構成されており、他方の前記上部ブロック2は、頂
版部3Bと、該頂版部3Bの両端からやや外方向へ向けて下降する前記下部ブロック1の
側壁部4A,4Aと接合する左右の側壁部4B,4Bからそれぞれ構成されている。
【0015】
5は前記下部ブロック1と上部ブロック2との連結部で、下部ブロック1の側壁部4A
にあっては、その接続部に形成した段部6Aと突出部7Aとからなる段付き突出部と、上
部ブロック2の側壁4Bにあっては、その接続部に形成した段部6Bと突出部7Bとから
なる段付き突出部とを係合或いは嵌合させて連結することで、上・下部ブロック1,2の
中心の中空部に横断面形状がほゞ円形の通水部10を備えた側溝Aを形成する構造として
いる。
【0016】
詳述すると、下部ブロック1の側壁部4Aの接続部には、外側の位置(通水部10から
遠い側の位置)に突出部7Aを、内側の位置(通水部10に近い側の位置)に段部6Aが
それぞれ形成されている。他方前記上部ブロック2の側壁部4Bの接続部には、外側の位
置(通水部10から遠い側の位置)に段部6Bが、内側の位置(通水部10に近い位置)
に突出部7Bがそれぞれ形成されており、下部ブロック1の突出部7Aと段部6A上に上
部ブロック2の段部6Bと突出部7Bをそれぞれ対面させて載置することで、上部ブロッ
ク2は下部ブロック1の側壁部4A上に自立した状態で設置される。
【0017】
図2及び図3は下部ブロック1と上部ブロック2のそれぞれの側壁部4A,4Bにあっ
て、それぞれの接続部に形成した段部6A,6Bと突出部7A,7Bの連結部5を示すも
のであり、相違する部分は、図2にあっては、段部6A,6Bと突出部7A,7Bとを繋
ぐ面がそれぞれ内方,外方に向け傾斜する傾斜面9A,9Bで形成されているのに対し、
図3にあっては、段部6A,6Bと突出部7A,7Bとを繋ぐ面が垂直な面8A,8Bで
それぞれ形成されている点である。
【0018】
そして、図2及び図3の(イ)に示すように、下部ブロック1の突出部7Aと段部6A
上に上部ブロック2の段部6Bと突出部7Bをそれぞれ対面させて載置する際に、下部ブ
ロック1の段部6Aと突出部7Aのコーナー部に止水パッキン9を介して載置する。これ
により、少なくとも、図2にあっては傾斜面9A,9B間に、又図3にあっては垂直な面
8A,8B間にクリアランスが形成されることになり、このクリアランスが上載荷重によ
って前記上部ブロック2の突出部7Bの水平外方向への移動を容易にしている。
【0019】
なお、本発明において、前記下部ブロック1と上部ブロック2を、例えば振動締固めに
よって一つの型枠で製造することもできる。この場合には、上・下部両ブロック1,2の
側壁部4A,4Bにあって、その連結部5となる分離した部分を跨ぐ状態で、例えばボル
ト・ナットによって着脱可能とした連結治具(図示せず)を型枠に設置しておくことで、
上・下部両ブロック1,2はその側壁部4A,4Bの接続部が前記連結治具によって連結
された状態の製品を製造できる。このような構成とすることで、搬送時には上・下部両ブ
ロック1,2を一体ものとして搬送し、設置現場では前記連結治具を取り外すことで施工
でき、搬送,施工に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る側溝の右半分が正面図、左半分が横断面図である。
【図2】上・下部ブロックの接合部を示す拡大断面説明部分図である。
【図3】上・下部ブロックの他実施例の接合部を示す拡大断面説明部分図である。
【図4】本発明に係る側溝に上載荷重がかかった場合の曲げモーメント図である。
【図5】従来の側溝の右半分が正面図、左半分が横断面図である。
【図6】従来の側溝に上載荷重がかかった場合の曲げモーメント図である。
【符号の説明】
【0021】
1 下部ブロック
2 上部ブロック
3A 底版部
3B 頂版部
4A,4B 側壁部
5 連結部
6A.6B 段部
7A.7B 突出部
8A,8B 傾斜面
9A,9B 垂直面
10 通水部
11 止水パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に設置される下部ブロックと、該下部ブロックの横断面左右側壁部上に自立して載置される上部ブロックとからなり、該上・下部両ブロックによって形成される通水部の横断面形状がほゞ円形の側溝であって、前記上・下部両ブロックの連結
部が、それぞれの側壁部の接続部における係合又は嵌合等による半固定接合としたことを
特徴とする鉄筋コンクリート製側溝。
【請求項2】
前記上部ブロックと下部ブロックからなる側溝において、上載荷重によるモーメントが、側壁の半固定接合部を中心としてほゞゼロとなるように構成したことを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート製側溝。
【請求項3】
前記上部ブロックと下部ブロックからなる側溝の側壁を、該側壁の接続部から上部ブロックの頂版部及び下部ブロックの底版部に向け内方へ延びる内方傾斜面でそれぞれ形成し、外形が壺状,樽状ないし釜状であるとゝもに、前記側壁の厚さが前記頂版部及び前記底版部の厚さよりそれぞれ小さい断面構造としたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の鉄筋コンクリート製側溝。
【請求項4】
前記上部ブロックと下部ブロックの連結部が、上・下部両ブロックの側壁部の接続部にそれぞれ形成した段付突出部の段部と突出部の夫々の係合からなり、上載荷重によって前記上部ブロックの側壁部の突出部が左右水平方向に移動した際に、該突出部と対面する前記下部ブロックの側壁部の突出部がこれに追従して同方向に移動する接続構造としたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の鉄筋コンクリート製側溝。
【請求項5】
前記上部ブロックと下部ブロックが、該上・下部両ブロックそれぞれの側壁部の接続部に設置した取り外し可能な連結治具で一体に連結されて製造され、設置現場に於いて前記連結治具が取り外される構成としたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の鉄筋コンクリート製側溝。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−127249(P2009−127249A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302065(P2007−302065)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000201504)前田製管株式会社 (35)
【Fターム(参考)】