説明

鉄蓋

【課題】水濡れ状態でも滑らず、かつ耐久性に優れた鉄蓋を提供する。
【解決手段】無機質成分が全体量の80重量%以上、樹脂成分が20重量%以下の割合で構成される、高低差平均が0.05mm以上1.0mm以下の凹凸表面を有する高硬度人造石成形体2が、上面に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールやグレーチング等の鉄蓋に関するものである。特に防滑化と夜間視認性を向上させた鉄蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車道や歩道等に設置された下水道、排水桝、防火水槽又は電力・通信ケーブル等を収容した地下空洞等のマンホールへ装着するマンホール鉄蓋、止水栓、ガス栓又は消火栓を収容したボックスへ装着するボックス鉄蓋、雨水を逃がすための通路や側溝に設けられたグレーチング等の鉄蓋は、降雨や降雪等で水濡れ状態になると滑りやすく、人や自転車あるいはオートバイ等のスリップによる転倒や衝突等の交通事故が相次いでおり、大きな社会問題となっている。
【0003】
従来、防滑機能を備えた鉄蓋が提案されているが、既存の鉄蓋を新たに交換するには大掛かりな工事と多大な費用を要する。また、既存の鉄蓋に防滑機能を持たせる加工技術(特許文献1参照)も存在するが、性能自体が確実にスリップ事故をなくすだけの十分な性能がなく、また、耐久性に難があり長期間の使用により防滑機能を失うものであった。また、特に雨天時の夜間に鉄蓋の位置が視認できず、そこを通行した人や自転車、オートバイ等がスリップし転倒する事故が多いことに着目し、夜間の視認性を付与する目的で鉄蓋の一部に蓄光材を用いる提案がなされている(特許文献2参照)。しかし、これら従来の発明は発光能力自体が十分な明るさを有しておらず、日没1時間を待たず、その発光を感知できないまでに輝度が低下するばかりか、耐候性や耐摩耗性などの耐久性がないため、短期間で発光性能が低下していた。
【特許文献1】特開2001−90097号公報
【特許文献2】特開2007−231585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、水濡れ状態でも滑らず、かつ耐久性に優れた鉄蓋を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0006】
第1に、本発明は、無機質成分が全体量の80重量%以上、樹脂成分が20重量%以下の割合で構成される、高低差平均が0.05mm以上1.0mm以下の凹凸表面を有する高硬度人造石成形体が、上面に配設されている。
【0007】
第2に、上記第1の発明において、高硬度人造石成形体の無機質成分は、2〜70メッシュの大きさの細粒成分と100メッシュアンダーの大きさの微粒成分とにより構成され、細粒成分と微粒成分との重量比が細粒成分/微粒成分=1/10〜10/1であり、樹脂成分は、可塑剤とともにメタクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂を含有する。
【0008】
第3に、上記第1または第2の発明において、夜光性または螢光性の蓄光材を含有する発光部が、高硬度人造石成形体の一部に一体に設けられている。
【0009】
第4に、上記第1から第3のいずれかの発明において、上面に凹凸模様を有する鉄蓋の凹部に、高硬度人造石成形体が嵌め込み貼り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明によれば、防滑性および耐久性に優れた高硬度人造石成形体が配設されているので、降雨や降雪等で水濡れ状態での人、自転車あるいはオートバイ等のスリップを防止することができるとともに、耐候性や耐摩耗性等の耐久性が高く、長期にわたって防滑効果が期待でき鉄蓋の長寿命化を図ることができる。
【0011】
上記第2の発明によれば、高硬度人造石成形体が軟質機能を備えることにより、鉄蓋下地に不陸や凹凸がある場合でも下地の形状に馴染みやすく、ひび割れが生じることなく使用することができる。
【0012】
上記第3の発明によれば、発光部が設けられていることにより、夜間での視認性に優れ、災害時や夜間における避難経路やライフライン設備等の誘導、表示のためのガイド、あるいは夜間装飾として特徴のある景観や外観意匠性の機能を付与することができる。
【0013】
上記第4の発明によれば、既存の鉄蓋をそのまま使用できるためコストをかけずに防滑性を付与することができる。また外観意匠性の機能をも付与して景観の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0015】
本発明は、図1に示すように、車道や歩道等に設置された下水道、排水桝、防火水槽又は電力・通信ケーブル等を収容した地下空洞等のマンホールへ装着するマンホール鉄蓋、止水栓、ガス栓又は消火栓を収容したボックスへ装着するボックス鉄蓋、雨水を逃がすための通路や側溝に設けたグレーチング等の上面に、高硬度人造石成形体2が配設されている。従来、防滑性や視認性を付与するために樹脂や塗料等のいわゆる練り物を鉄蓋表面に施しておりその耐久性に問題があったが、本発明によれば、板状の高硬度人造石成形体2を接着剤等により圧着貼り工法等で配設しているので優れた防滑性と耐久性を付与することができるとともに、夜間の視認性、意匠性の付与をも可能となる。
【0016】
鉄蓋1の上面に配設される高硬度人造石成形体2は、これまで本出願人が特許第3701480号公報、特許第3975234号公報、特許第4067170号公報等で提案している人造石成形体を用いることができる。具体的には、無機質成分と樹脂成分を主組成とし、このうち無機質成分が多量配合されて高い表面硬度と耐候性や耐摩耗性等の耐久性に優れたものとするものであり、無機質成分が高硬度人造石成形体の全体量の80重量%以上、樹脂成分が20重量%以下の割合で構成される。無機質成分の含有量を過大にすると脆くなる傾向にあり、他方、樹脂成分の含有量を過大にするとプラスチック的になって防滑性および耐久性が劣ってしまう場合もあるので、無機質成分が高硬度人造石成形体の全体量の82〜93重量%、樹脂成分が7〜18重量%の割合で構成されることが好ましい。
【0017】
高硬度人造石成形体は無機質成分が露出している凹凸表面を有しており、優れた防滑性を実現している。本発明では、その凹凸表面の高低差平均が0.05mm以上1.0mm以下としており、その範囲外では望ましい防滑性を得ることができない。本発明においては、好ましくは、凹凸表面の高低差平均が、0.05mm以上0.8mm以下であり、さらに好ましくは、0.1mm以上0.3mm以下である。
【0018】
高硬度人造石成形体の製造方法は、各種態様が可能であって、注型成形、圧縮成形等により実施される。圧縮成形においては、例えば、水平型枠としての下受型に、無機質成分成分および樹脂成分を予め成形完了後の組成において必要な量だけ配合して混練した材料(混合材料)を投入し、上型を合わせ、これを5〜100kgf/cmの面圧で押圧して圧縮成形を行うものである。そしてこの成形においては、圧縮時に、概略90〜140℃の温度に5〜20分間程度加熱する。また、この加熱しながらの圧縮成形においては、圧力とともに型枠に振動を加え、型枠内の上記混合材料の流動性を良くすることもできる。このような圧縮成形による方法は、平板成形品のように比較的単純な形状の成形法として量産効果を発揮し、また、材料のロスがほとんどないため経済性にも優れたものである。この成形時に、所望の凹凸表面を形成することもできるが、成形後の成形体表面に凹凸加工を施すことができる。
【0019】
このための方法としては、樹脂成分の選択的除去法が挙げられる。すなわち、例えば、成形型から脱型した後に、成形体の表面に高圧水を噴出させて地肌面加工を施すことが有効である。この方法は、厚みや、ノズルとの距離、加工形態等の種々の条件によって異なるので限定的ではないが、通常は、1〜20cmの厚みの場合、2〜20mm程度のノズルの高さからは、100〜1500kg/cm程度の水圧とすることができる。高圧水の噴出のためのノズルやそのシステムについては特に制限はなく、各種のものが採用される。この地肌面加工によって、ウォータージェットによる粗面化が実現され、防滑性をもった人造石成形体が製造される。
【0020】
この方法は薬品を用いるエッチング方法に比べて、廃液の処理も容易となる。もちろん、必要に応じて、表面部を有機溶剤によって処理し、樹脂成分を軟化もしくは溶融させて部分除去することもできる。この場合の有機溶媒としては、使用する樹脂成分に対応して選択すればよく、例えば、塩化エチレン、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、無水酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸やそのエステル化合物、あるいはアセトン、テトラヒドロフラン、DMF、DMSO等が例示される。成形体はこれらの有機溶媒に浸漬するか、あるいはこれら有機溶媒をスプレーもしくは流下させ、軟化もしくは溶融した樹脂成分を表面部から取除くことで表面凹凸を形成することができる。
【0021】
別の方法として、ワイヤーブラシ、切削手段等によって硬度の低い樹脂成分を表面部よりかき取るようにしてもよい。
【0022】
以上の各種手段によって粗面化し、また必要に応じて粗面化前に、表面を研磨してもよい。表面研磨のための手段には特に限定はなく、砥石、研磨布、研磨ベルトなどの工具を用いて、あるいは、バフ研磨剤、ラビングコンパウンド等の研磨剤を用いて実施する事ができる。研磨材としては、研磨作用を主とするダイヤモンド、炭化ホウ素、コランダム、アルミナ、ジルコニアや、琢磨作用を主とするトリポリ、ドロマイト、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム等が適宜に使用される。
【0023】
本発明において、高硬度人造石成形体を構成する無機質成分については、骨材成分とフィラー等としての他の無機質成分とに区分することができる。ここで骨材成分は、この高硬度人造石成形体の表面硬度をより高いものとするのに欠かせない成分である。これら骨材成分としては、みかげ石、大理石、変成岩、石英石、長石、雲母等の天然石や鉱物、溶融シリカ、ガラス、金属、陶磁器等からの各種のセラミックスや金属の細粒がその代表例として示される。他の無機質成分としては、フィラーや顔料、あるいは後述する蓄光材等が考慮される。フィラー成分の代表例としては、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等がある。天然石等の無機質成分は、より好ましくは2〜70メッシュ(Tyler基準)の大きさを有する細粒成分とし、他のフィラー等の無機質成分は100メッシュ(Tyler基準)以下の粒径のより小さな微粒成分とすることが好ましい。
【0024】
天然石等の無機質細粒成分は、得られる高硬度人造石成形体の外観ならびに物理的性質に主要な要因として機能する。特に一部を露出することで他の成分と相まって外観上の色や模様の主要因となる。微粒成分は細粒成分に比べて100メッシュレベルよりも相当細かいものであり、細粒成分の一つ一つの粒の間に侵入し粒の間の空間を埋めるように位置し、得られる高硬度人造石成形体の固さやしなやかさといった性質を得ることに寄与する。細粒成分とこの微粒成分とは、その重量比において細粒成分/微粒成分=1/10〜10/1とするのが好ましい。
【0025】
細粒成分は、前記の通り2〜70メッシュの大きさとすることが好ましく、特殊な場合を除き、同一大きさのもののみを用いることが好ましい。色のあるものとないものとを使用して、色を上あるいは下に濃く付けたい場合等において、色の有無により細粒の大きさを変えて使用することが考えられるが、極端に差のあるものの大量使用は、製品の強度を劣化させるので使用すべきではない。
【0026】
微粒成分の粒子の大きさは、前記の通り100メッシュアンダーとするが、細粒成分の粒子の間に十分に入り込めるものでなければならない。従って細粒成分の粒子の大きさに近いものは好ましくなく、より具体的には150〜至250メッシュ程度のものが好ましい。
【0027】
樹脂成分は、天然石等の細粒成分や、微粒成分に対して、これらを包み込み、全体を結合することに寄与するものであり、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂等が例示される。なかでも、メタクリル系樹脂あるいはメタクリル系樹脂と他の樹脂との混合、もしくはそれらとの共重合樹脂等が好ましいものとして示される。樹脂成分には、硬化(触媒)剤や色調の調整のために、アゾ系、フタロシアニン系の有機顔料や染料を配合しておいてもよい。
【0028】
この樹脂成分については、より好ましくは硬質樹脂を与える成分と、この硬質樹脂をより軟質なものとする成分、もしくは軟質樹脂を与える成分との組合わせ配合とすることが考慮される。ただ、この場合にも、各々の成分が分離しないで一体化されて硬化されるものとすることが欠かせない。これらは、同種、同系の成分として選択されることが好ましい。例えば、メチルメタアクリレート樹脂成分と、2−エチルヘキシルメタアクリレート樹脂成分との組合わせ配合等である。また、透明性に優れているとの観点からは、メタクリル系樹脂を採用することが好ましい。例えば次式
CH3 −CH(CH3 )−CO−O−R
(Rは、直鎖または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基あるいは環状炭化水素基等である。)
以上のようなメタクリル系樹脂とする場合、ポリメタアクリレートとメタアクリレートモノマーとを配合して硬化させることが好ましい。さらに好ましくは、メタクリル系樹脂を人造石成形体の樹脂成分とする場合には、軟質機能を付与する観点からは次の配合組成とすることが考慮される。配合割合は、<1>メチルメタクリレートモノマー(MMA)100重量部を基準としている。
<1>メチルメタクリレートモノマー(MMA):100
<2>メチルメタクリレートポリマー(PMMA):0〜50
<3>アルキルメタアクリレートモノマーまたはアルキルアクリレートモノマー:300以下
<4>可塑剤:0〜300
ここで、<3>アルキルメタアクリレートまたはアルキルアクリレートとしては、例えば、2−エチルヘキシルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルペンチルメタアクリレート、2−エチルペンチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等が例示される。なかでも、2−エチルヘキシルアクリレートは良好である。可塑剤としては、例えばフタル酸エステル等が例示される。
【0029】
以上のように、高硬度人造石成形体の無機質成分が2〜70メッシュの大きさの細粒成分と100メッシュアンダーの大きさの微粒成分とにより構成され、細粒成分と微粒成分との重量比が細粒成分/微粒成分=1/10〜10/1であり、樹脂成分が可塑剤とともにメタクリル系樹脂を含有することにより、この高硬度人造石成形体は軟質機能を備えることになり、鉄蓋下地に不陸や凹凸がある場合でも高硬度人造石成形体は鉄蓋下地の形状に馴染みやすく、ひび割れが生じることなく使用することができる。
【0030】
本発明では、高硬度人造石成形体の無機質成分として、細粒成分の一部または全部が、透明性の粒子であってもよいし、あらかじめ、その粒子もしくは小塊が無機あるいは有機物によって被覆されているものであってもよい。
【0031】
透明性細粒成分は、石英系の珪石、あるいはガラス粉等として考慮されるが、細粒成分全体に占める割合は、10〜100重量%であってよい。
【0032】
また、この細粒成分とともに微粒成分が用いられる場合、例えば前記のとおり炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等とともに、微粒成分の一部として、色調の調整のための二酸化マンガン、二酸化チタン、珪酸ジルコニウム、酸化鉄等の成分や、夜光性や螢光性という機能を付与するために、アルミン酸ストロンチウム等の蓄光材や、各種の酸化物の無機螢光材を配合してもよい。蓄光材の配合は、夜間等の暗視野下において夜光(発光)する機能を鉄蓋に与え、夜間での視認性が向上する。また、誘導、表示のためのガイド、あるいは夜間装飾として特徴のある景観や外観意匠性の機能をも持つことになる。
【0033】
本発明において、このような蓄光材を配合する場合、蓄光材を配合して成形してなる高硬度人造石成形体を発光部として形成し、蓄光材を配合していない高硬度人造石成形体の一部に一体に設けるようにして高硬度人造石成形体を構成するようにしてもよい。例えば、図2、図3に示すように、発光部21は誘導、指示のための図形や文字等として、蓄光材を配合していない高硬度人造石成形体2の一部に埋め込み等により形成される。このような蓄光材については、例えば、発光部として形成する高硬度人造石成形体の全体量の40重量%まで配合することができる。
【0034】
本発明における高硬度人造石成形体において、あらかじめ無機あるいは有機物によって被覆されている細粒成分を使用する場合、このものは透明性の細粒成分の表面に樹脂を被覆硬化させることや、あるいは水ガラス、陶磁器用の釉薬等の無機物質を焼付けて被覆すること等によって実現される。いずれの場合にも、透明性細粒成分の粒子表面には数μm〜数十μm、た例えば5〜50μm、より好ましくは20〜30μm程度の被覆が施されているようにすることができる。より具体的には、例えばアクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂組成物を用い、100〜300℃程度に加熱して、あるいは光照射して細粒成分の粒子表面にこれら樹脂組成物を被覆硬化させることや、あるいは、水ガラス、釉薬等を用いて800〜1100℃程度の高温において焼付けて無機質被覆を施すことができる。
【0035】
高硬度人造石成形体の色は細粒成分の被覆層並びに樹脂成分の色調によって制御でき、かつ、その色は、透明性の石英系細粒成分の存在により、深みを与え、艶を持たせることができる。例えば、被覆層として白色顔料を含む水ガラスの焼付層を有する場合や、ポリエステル系不飽和樹脂の硬化層を有する場合であって、樹脂成分としてポリエステル系不飽和樹脂を用いた場合は、樹脂の持つ色は一般に多少黄色味を含む白であるから、得られる製品は艶のある乳白色のものとなり、天然の乳白色の大理石によく似た色調の製品を得ることができる。被覆層を顔料、染料等の着色材を含有させたものとすることによって、深みと艶のある独特の色調を持たせることができる。本発明では、色成分として細粒成分とほぼ同じ大きさの粒状の有色のものとを混合して使用し、製品に色を与えることもできる。
【0036】
また、本発明では、陶磁器等に着色する釉薬を天然の透明性細粒成分の粉粒体に塗布し、これを焼き付けて希望する色の粉粒体とし、これを細粒成分として使用することが特に有効でもある。この方法を用いれば色を確かなものとすることができるのみならず、幅広く選ぶことができる。石英系の天然石を粉砕したもので細粒成分として使用するものと同じものを使用し、これに釉薬を塗布し焼き付けたものを使用すれば、黒あるいは赤といった色の場合、色の再現性についてはまったく心配がなく、再現される色は、単に色そのもののみでなく艶や色調といったものまで完全に再現される。
【0037】
これらの被覆は、高硬度人造石成形体全体に対しての細粒成分の親和性を大きく向上させる。また、微粒成分と樹脂成分との混合によって、強度が大きく、表面の硬度も良好となる。
【0038】
さらに重要なことは、細粒成分は前記の通りの透明性の天然石等を用い、その表面に上記の硬質被覆を行っていることから、高硬度人造石成形体の表面を研磨すると、部分的にこの被覆層が破られることである。すると、部分的に露出した無機質透明性細粒成分の粒子とその周囲の被覆層との表面組織が、光の反射に独特の効果を得ることになる。つまり、光は透明性の細粒成分に入射し、その周囲の被覆層で反射され、透明細粒成分を再通過して反射されることになる。このような透光と反射の現象は、本発明における高硬度人造石成形体に独特の深み感を与えることになる。
【0039】
以上の通りの被覆層を有する透明性細粒成分は、配合する無機質細粒成分の全量に対して、一般的には、前記のとおり10〜100重量%の割合とすることができる。
【0040】
次に、本発明の鉄蓋の製造方法について説明する。
【0041】
上記高硬度人造石成形体を鉄蓋の上面に配設するにあたり、まず、鉄蓋の表面を清掃する。鉄蓋に塗装が施してある場合、塗装面から剥離する恐れがあるため、これを除去して清掃する。次いで、所定の寸法に加工された厚さ5mm〜20mm程度の高硬度人造石成形体を接着剤等により鉄蓋上面に貼り付ける。例えば、鉄蓋の接着面が金属であれば変成シリコーン系接着剤(例えば、コニシ社 ボンド サイレックス100等)を使用し、ボンドによる圧着貼り工法により施工する。鉄蓋の上面に配設される高硬度人造石成形体が鉄蓋の設置面であるコンクリートに一部かかる場合もあり、その場合において接着面がコンクリートであればエポキシ系接着剤(例えば、コニシ社 EK222等)を使用する。施工後は夏季で24時間以上、冬季で48時間以上の養生期間を要する。
【0042】
ここで高硬度人造石成形体は、図1に示したように鉄蓋1の摘み穴を除く上面全体に貼り付けてもよいし、図4に示すように上面に凹凸模様を有する鉄蓋1の凹部に、あらかじめ鉄蓋1の凹部の形状に合わせて加工した高硬度人造石成形体2を嵌め込み貼り付けてもよい。図4によれば、既存の鉄蓋1にあらかじめ形成されている凹凸模様の凸部3を高硬度人造石成形体2で覆い隠すことなく、防滑性および外観意匠性を付与することができる。
【0043】
以下に、本発明の実施例について説明する。もちろん、以下の例によってこの発明が限定されることはない。
【実施例】
【0044】
粒径10〜25メッシュの天然珪石を細粒成分とし、平均粒径230メッシュの水酸化アルミニウムを微粒成分として、その重量比3:1において、組成物全重量の89.4重量%となるようにし、10.5重量%のポリメチルメタクリル樹脂シロップおよび0.1重量%の硬化剤を均一混合してモルタル状とした。この組成を、型枠内に投入し、厚み約10mmの板状体に成形した。次いで、表面部をコランダム研磨材を用いて研磨した。これにより、細粒成分の部分断面を露出させた。
【0045】
さらに表面に対して、30mmの距離からのノズルから1500kg/cmの水圧のウォータージェットを噴出させて粗面化加工を行った。これにより、表面の高低差平均が0.2mmの凹凸表面を有する人造石成形体を得た。
【0046】
得られた人造石成形体を鉄蓋の寸法に合わせて加工し、鉄蓋の上面全体に変成シリコーン系接着剤(コニシ社 ボンド サイレックス100等)を使用して圧着貼り工法により施工し、所定時間養生した。
【0047】
得られた鉄蓋の防滑性能を評価したところ、JIS A 1454における滑り抵抗値試験においても水濡れ状態でもC.S.R値0.83となり、極めて滑りにくい鉄蓋であることが確認された。
【0048】
また、JIS A 1452における耐摩耗性試験においての人造石成形体の平均摩耗量が0.03g以下となり、非常に耐摩耗性が高く、長期にわたっての防滑効果はもちろん、優れた耐久性を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の鉄蓋の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】埋め込みされた発光部をもつ高硬度人造石成形体が配設された鉄蓋の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】埋め込みされた発光部をもつ高硬度人造石成形体の断面斜視図である。
【図4】本発明の鉄蓋のさらに別の一実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 鉄蓋
2 高硬度人造石成形体
21 発光部
3 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質成分が全体量の80重量%以上、樹脂成分が20重量%以下の割合で構成される、高低差平均が0.05mm以上1.0mm以下の凹凸表面を有する高硬度人造石成形体が、上面に配設されていることを特徴とする鉄蓋。
【請求項2】
高硬度人造石成形体の無機質成分は、2〜70メッシュの大きさの細粒成分と100メッシュアンダーの大きさの微粒成分とにより構成され、細粒成分と微粒成分との重量比が細粒成分/微粒成分=1/10〜10/1であり、樹脂成分は、可塑剤とともにメタクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の鉄蓋。
【請求項3】
夜光性または螢光性の蓄光材を含有する発光部が、高硬度人造石成形体の一部に一体に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄蓋。
【請求項4】
上面に凹凸模様を有する鉄蓋の凹部に、高硬度人造石成形体が嵌め込み貼り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉄蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−37763(P2010−37763A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200126(P2008−200126)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(503094542)株式会社アベイラス (5)
【Fターム(参考)】