説明

鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール

【課題】 鉄道車両における乗客の性別や年齢層に関する情報を収集し、それを利用して広告効果を向上させることができる、鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールを提供する。
【解決手段】 鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、ICカード乗車券Aのデータを自動改札機11〜20で読み取り、その読み取られた情報を集計機21で集計し、その集計された乗客に関するデータを路線を運行中の鉄道車両31の液晶広告装置39に利用し、乗客が関心を持つ広告を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の車内広告は、乗客の注目度が高く広告としての価値が高いので、広く利用されるようになってきている。その場合、車両用表示装置は、容易に画像を切り替えることができるように提案されている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−298054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、鉄道の乗客は若者から老人まで実に幅広い層に及んでいる。したがって、広告を行うにあたって乗客の性別や年齢層に適合するように宣伝を行うことができれば、広告効果を向上させることができる。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、鉄道車両に乗車している乗客の性別や年齢層に関する情報を収集し、その情報を利用することで広告効果を向上させることができる鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、ICカード乗車券のデータを自動改札機で読み取り、その読み取られたデータを集計機で集計し、その集計された乗客に関するデータを路線を運行中の鉄道車両の広告装置に利用し、乗客が関心を持つ広告を行うことを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記乗客に関するデータが乗客の年齢であることを特徴とする。
【0007】
〔3〕上記〔1〕記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記乗客に関するデータが乗客の性別であることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔1〕記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記広告装置が平面型の表示装置であることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔4〕記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記平面型の表示装置が液晶広告装置であることを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔4〕記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記平面型の表示装置が有機EL広告装置であることを特徴とする。
【0011】
〔7〕上記〔1〕記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記車内広告が終了した後に、この車内広告の付随情報として携帯電話を使って読み取ることができるコードを表示することを特徴とする。
【0012】
〔8〕上記〔7〕記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記コードがQRコードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鉄道車両の乗客に関する年齢や性別のデータを、ICカード乗車券から容易に収集し、車両内の広告に反映させることで、鉄道車両の乗客がより関心を示す車内広告を行うことができる。
【0014】
また、車内広告が終了した後に、その車内広告の付随情報として携帯電話を使って読み取ることができるコードを表示することにより、広告に興味を持つ利用客に対するサービスを行い、利用客の満足度を高めることができる。ひいては、車内広告の依頼主の宣伝効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールは、ICカード乗車券のデータを自動改札機で読み取り、その読み取られたデータを集計機で集計し、その集計された乗客に関するデータを路線を運行中の鉄道車両の広告装置に利用し、乗客が関心を持つ広告を行う。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールのシステムの概要ブロック図、図2はその車両の広告装置のブロック図である。
【0018】
これらの図において、1〜10はある路線の駅、11〜20は駅1〜10に設置される自動改札機、21は自動改札機11〜20から送られた乗客のICカード乗車券Aに記録されている年齢や性別に関する集計したデータを集計する集計機、22は集計機21から乗客の年齢あるいは性別に関するデータを送信する無線送信用アンテナである。また、31はその路線を運行中の鉄道車両、32は無線送信用アンテナ22から送信される乗客の年齢あるいは性別に関する集計したデータを受信する無線受信用アンテナ、33は無線受信用アンテナ32に接続される無線受信装置、34は無線受信装置33に接続される制御装置であり、この制御装置34は、入力インターフェース35、CPU(中央処理装置)36、乗客の年齢あるいは性別に対応した広告内容を記憶する記憶装置37、出力インターフェース38などから構成されている。出力インターフェース38から出力される広告データは液晶広告装置39に供給される。なお、液晶広告装置39に代えて、超薄型の有機EL広告装置を用いるようにしてもよい。このような意味から車内に実装が有利な平面型の表示装置を用いるのが好ましい。当然ブラズマ表示装置や半導体光源(SED)などを用いるようにしてもよい。
【0019】
昨今は、乗客の多くが生年月日及び性別が記録されたICカード乗車券を利用するようになっている。そのICカード乗車券は現金による決裁を行う必要がなく、ICカード乗車券を自動改札機にかざすだけで駅の改札への入退場ができるので、ICカード乗車券の利用はますます高まってきている。
【0020】
乗客がこのICカード乗車券Aをかざして自動改札機11〜20を通過して旅行を開始する時、自動改札機11〜20は乗客の保持するICカード乗車券Aに出発駅と出発時刻を記録する。
【0021】
そして、乗客が自動改札機11〜20を通過して駅の外に出る時、自動改札機11〜20はその旅客の保持するICカード乗車券Aが有効かどうかを判断し、必要に応じてICカード乗車券Aから乗車運賃を差し引く。同時にICカード乗車券Aに記録された乗客の出発駅と出発時刻、性別及び生年月日の乗客に関するデータを読み取る。
【0022】
以下に自動改札機で読み取った乗客に関するデータの処理について説明する。
【0023】
(1)乗客の出発駅と、性別及び生年月日の乗客に関するデータを乗客の持つICカード乗車券Aから読み取った到着駅の自動改札機11〜20は、その読み取ったデータと到着駅のデータを集計機21に伝送する。
【0024】
(2)集計機21は受信したデータから、性別及び生年月日を基にした年齢ごとの時間帯別ODデータを蓄積する。ここで、ODデータとは利用者の出発駅(O)と到着駅(D)の組み合わせごとにその利用人数を集計したデータであり、一日を複数の時間帯に分けて、各時間帯ごとに集計したODデータを時間帯別ODデータという。
【0025】
(3)集計された時間帯別ODデータのODごとに、乗客が利用した可能性のある全ての乗車パターン(出発駅、乗車列車、乗換駅、乗り換え列車、到着駅等の旅客の出発から到着までの行動に関するパターン)をダイヤデータ及び駅の構造データから全て計算する。
【0026】
(4)(3)の全乗車パターンの一つ一つに、そのODの乗客が利用した人数を推定する。このとき、推定は年齢・性別のセグメントごとに行う。
【0027】
(5)セグメントごとに各乗車パターンの利用人数が推定できたら、各列車の利用人数をセグメントごとに集計する。
【0028】
以上の作業により、各列車の乗車人員の変化が乗客のセグメントごとに得られる。この集計した乗客の年齢や性別に関するデータを、その路線を走行中の鉄道車両31に送信する。
【0029】
そこで、例えば、その路線の鉄道車両31の乗客が、性別の面で女性が多い場合は、広告装置39にはファッション関係の案内画像を流すようにする。また、乗客の年齢層が若者であれば、ライブショー関係の案内画像を流したりする。このように、乗客の年齢や性別のデータを用いることで、車内の乗客の層に適合した広告を行うことができる。
【0030】
また、以下のような車内広告に伴うサービスも可能である。
【0031】
図3は本発明の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールのシステムにおける車内広告に伴うサービス例を示す図であり、図3(a)は車内広告例、図3(b)は車内広告終了後に表示されるQRコードの例を示す図である。
【0032】
車内広告の内容に興味を持った乗客がさらに詳細な情報を得たい時、以下のような方法によって更なるサービスを受けることができる。ここでは、図3(a)に示すように車内広告としてサマーセールの広告が流されており、そのサマーセールの場所や商品の種類などは車内広告の後に表示される、図3(b)に示すようなQRコードを携帯電話の写真機で収集してこれにアクセスすることにより、より詳細なサービスを受けることができる。
【0033】
現在QRコードをポスターなどに印刷することで、そのポスターに関する詳細な情報を携帯電話で取得できるサービスが既に行われている。しかし、車内広告装置では、仮に紙に印刷しているようなQRコードを広告と共に表示しても、携帯電話を近づけることができないため、現実的にはQRコードを読み取ることができない。
【0034】
そこで、本発明においては、車内広告の終了後に数秒間だけ大きなサイズのQRコードを表示することにより、乗客が携帯電話を使ってそのQRコードを読み取ることができるようにする。
【0035】
なお、QRコードだけでなく、最近開発されているカラーコードや、既に利用されているバーコードでもよい。要するに、車内広告の付随情報として携帯電話を使って読み取ることができるコードであればよい。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールは、鉄道の車内広告の効果をより向上させる車内広告システムとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールのシステムの概要ブロック図である。
【図2】本発明の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールのシステムにおける車両の広告装置のブロック図である。
【図3】本発明の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールのシステムにおける車内広告に伴うサービス例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1〜10 ある路線の駅
11〜20 自動改札機
A ICカード乗車券
21 集計機
22 無線送信用アンテナ
31 運行中の鉄道車両
32 無線受信用アンテナ
33 無線受信装置
34 制御装置
35 入力インターフェース
36 CPU(中央処理装置)
37 記憶装置
38 出力インターフェース
39 液晶広告装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカード乗車券のデータを自動改札機で読み取り、その読み取られたデータを集計機で集計し、その集計された乗客に関するデータを路線を運行中の鉄道車両の広告装置に利用し、乗客が関心を持つ車内広告を行うことを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記乗客に関するデータが乗客の年齢であることを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記乗客に関するデータが乗客の性別であることを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。
【請求項4】
請求項1記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記広告装置が平面型の表示装置であることを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。
【請求項5】
請求項4記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記平面型の表示装置が液晶広告装置であることを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。
【請求項6】
請求項4記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記平面型の表示装置が有機EL広告装置であることを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。
【請求項7】
請求項1記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記車内広告が終了した後に、該車内広告の付随情報として携帯電話を使って読み取ることができるコードを表示することを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。
【請求項8】
請求項7記載の鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツールにおいて、前記コードがQRコードであることを特徴とする鉄道の車内広告に用いる鉄道マーケティングツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−55365(P2010−55365A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219498(P2008−219498)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】