説明

鉄道分岐器用床板装置

【課題】 ばねクリップを外方から視認しつつ取付作業できるようにして作業性を良好にする。
【解決手段】 摺動板1と本体部2とを外向壁3aとともに一体に形成して内端に空隙部4を有する高床タイプの床板5を形成する。摺動板1の裏面両側に下向突部11、11を突設する。外向壁3aの両側に側方が開口した係止溝30、30を形成する。1対の棒ばね6、6を床板5の側方から内方に挿入して各内端60を空隙部4から突出させる。各棒ばね6の途中を下向突部11で押圧するとともに各外端61を係止溝30に係止して各棒ばね6の各内端60を常時は下方向に付勢させてレール7の脚部70を弾性締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道用分岐器の分野、特に床板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より分岐器におけるまくらぎとトングレールのような転換されるレールとの間には床板が使用されている。
【0003】
しかも最近では床板5を高床タイプにし、図12から図15で示すようにその中にヘアピン型のばねクリップaを挿入し、このばねクリップaで基本レール7の脚部70を押圧し、反対側の周知のばねクリップ90とともにすべてクリップ締結とし、ボルトの緩み管理を不要にしている。
【特許文献1】なし。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の高床タイプの床板5は、いわゆる一体彫りによるもので、内向端および外向端に開口部b、bを有するボックス状のものであり、ヘアピン型のばねクリップaの外端a1を作業者が握持してヘアピン型のばねクリップaの内端a2を所定の位置に挿入し、専用工具を何度も操作してヘアピン型のばねクリップaの外端a1を係止部cに係止させざるを得ず、その取付作業性が悪く、熟練者によっても厄介なものであった。
【0005】
さらに図13で示すように基本レール7の脚部70にヘアピン型のばねクリップaの内端a2を押圧させるため、基本レール7は仮想線で示すように小返りさせながら敷設しなければならず、基本レール7自体の敷設作業性も効果的ではなかった。
【0006】
また寒冷地においては、分岐器における曲レール箇所で車両底に付着した雪が床板上に落下しやすい。しかし、従来例では摺動板1の肉厚が小さく床板5自体に融雪機能を持たせることができなかった。
【0007】
本発明は前記の不都合を解消することを課題とし、第1の本発明ではばねクリップを外方から視認しつつ取付作業をできるようにすることを課題とする。
【0008】
第2の本発明では前記課題に加え、基本レールを垂直に敷設できるようにし、また床板装置全体の製造を容易にし、安価に提供できるようにすることを課題とする。
【0009】
第3の本発明では前記課題に加え、融雪機能をもたせるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の手段は、摺動板と本体部とを外向壁とともに一体に形成して内端に空隙部を有する高床タイプの床板を形成し、前記摺動板の裏面両側に下向突部を突設し、前記外向壁の両側に側方が開口した係止溝を形成し、また1対の棒ばねを前記床板の側方から内方に挿入して各内端を前記空隙部から突出させ、前記各棒ばねの途中を前記下向突部で押圧するとともに各外端を前記係止溝に係止して各棒ばねの各内端を常時は下方に付勢させてレールの脚部を弾性締結することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第2の手段は、摺動板のレール押え部分の後方裏面に、レールの脚部の肉厚部に当接する下向係止壁を突設し、前記下向係止壁の両側に細長孔を穿設し、前記摺動板の外端裏面に下向壁を突設し、前記下向壁の両端に側方が開口した係止溝を形成し、一方、本体部の略中央外寄りに側方が開口した1対の略L字状係止片を突設し、前記本体部に、本体部と別体に形成した前記摺動板を載置して高床タイプの床板を形成し、また一対の棒ばねをそれぞれ前記床板の側方から内方に挿入して前記各棒ばねの内端を前記細長孔に挿入するとともに途中部分を前記略L字状係止片で当接し、前記外端を前記係止溝に係止して各棒ばねの各内端を常時は下方向に付勢させてレールの脚部を前記レール押え部分で弾性締結することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の手段は、前記第1・2の本発明において、摺動板の肉厚内に複数本のケーブル挿通孔を穿設することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の本発明によれば、1対の棒ばねを側方から視認しながら本装置の内に挿入することができ、作業性が良好である。
【0014】
第2の本発明によれば、前記第1の本発明の効果に加え、レールを小返りさせることなく、垂直に載置して摺動板を取付ければよく、また一体のものに比べて製造が容易で、安価に提供することができる。
【0015】
第3の本発明によれば、前記第1・2の本発明の効果に加え、摺動板にケーブル挿通孔を穿設したので、この孔に電気的融雪用ケーブルを挿入することにより摺動板上の雪を容易に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から図4は、第1の実施の形態を示すもので、本体部2と摺動板1と外向壁3aとが例えば一体彫りのように一体に形成するもので、以後1ピースタイプと呼び、図5〜図11に示す第2の実施の形態は本体部2と摺動板1とをそれぞれ別体に製造し、後で摺動板1を本体部2に取付けるものであり、以後これを2ピースタイプと呼ぶ。
【0017】
1および2ピースタイプともに図示を省略したまくらぎに植設されたボルト8にナット9締めにより本体部2を固定するものである。また図示したショルダー80とクリップばね90は周知のもので本発明には関係がなく、その説明を省略する。なお1ピースタイプのショルダー80には略L字状の座金81を介してクリップばね90を例えば基本レール7の脚部70に弾性締結するが、2ピースタイプのショルダー80ではクリップばね90で直接、レール7の脚部70を弾性締結する。
【0018】
1・2ピースタイプともショルダー80とレール7の載置面21を有する。符号22は軌道パッドを示す。本体部2へ溝状の載置面21を形成し、1ピースタイプはこの載置面21の両側縁のやや内側に各棒ばね6の挿入空間3cを形成する。
【0019】
外向壁3aに側方が開口した係止溝30をそれぞれを形成する。ちなみに外向壁3aにより摺動板1が高位置にあるので高床タイプの床板と呼ぶ。
【0020】
外向壁3aと一体の摺動板1の肉厚内に多数本のケーブル挿通孔10、10、10・・・を並列に貫通する。摺動板1の裏面両側に角ブロック状の係止片11a、11aを突設し、各内側に凸弧状の下向突部11、11を膨出する。
各棒ばね6は図2の仮想線で示すようにやや「く」の字状で、外側に行くに従ってその上面61が低く傾斜している。
【0021】
この1対の棒ばね6、6を床板5の各側方から内方つまり各挿入空間3cに挿入する。具体的には各棒ばね6の内端60のほぼ水平部分62を空隙部4からレール7側に突出させ、途中を下向突部11で押圧するとともに係止片11aで係止し、外端61の湾曲部を、係止溝30の側方開口部31から係止溝30に挿入して係止する。
【0022】
このため各棒ばね6は図2の仮想線状態から実線状態で示すように上面61がほぼ水平状に変形し、その復元力により常時は内端60が下方向に付勢し、レール7の脚部70を弾性締結する。
【0023】
なお図示を省略した電気的融雪器用ケーブルは各挿入孔10、10、10に挿入しておき、その後レール7の敷設、各弾性締結を行う。
【0024】
第2の実施の形態である2ピースタイプは第1の実施の形態と原理的には同一であるので同一符号は均等部材であり、その詳述を省略するが、この2ピースタイプの方が1ピースタイプのものより実用的である。
【0025】
本体部2の略中央外寄り、つまり溝状の載置面21のやや前方外寄りに、それぞれ側方に開口部15aを有する1対の略L字状係止片15、15を突設する。
【0026】
また本体部2とは別体の摺動板1の肉厚内に多数本のケーブル挿通孔10、10、10・・・を並列に貫通する。摺動板1の裏面内端を脚部70に当接する形状にしてレール押え部分12を形成し、このレール押え部分12の後方裏面に、脚部70の肉厚部に当接する下向係止壁13を突設し、下向係止壁13の両側にそれぞれ細長孔14、14を穿設する。
【0027】
摺動板1の外端裏面に下向壁3bを突設し、下向壁3bの両端に側方に開口部31を有する係止溝30を形成する。この摺動板1を本体部2に載置する。このとき下向壁3bと下向係止壁13により摺動板1が本体部2より高い位置に配置されるので高床タイプの床板と呼する。
【0028】
各棒ばね6は図7の仮想線で示すように上面が水平で、下面がやや「く」の字状で、外側に行くに従って上昇傾斜している。
【0029】
この1対の棒ばね6、6を床板5の各側方から内方に挿入する。このとき各棒ばね6内端の水平部分62をやや斜め方向から各細長孔14に挿入し、その後、まっすぐにしてから途中部分を略L字状係止片15に当接させ、外端61の湾曲部を開口部31から係止溝30に係止する。
【0030】
このため各棒ばね6は図7の仮想線状態から上面61が実線で示すように弓状に変形し、その復元力により内端60が常時は下方向に付勢し、レール押え部分12が脚部70を弾性締結する。なお符号7′はトングレールのような転換されるレールであり、摺動板1上を摺動する。
【0031】
なお、この2ピースタイプの場合、クリップばね90、摺動板1を取付ける前にレール7を敷設し、その後クリップばね90で一方の脚部70を弾性締結した後、既述のように摺動板1、棒ばね6、6を取付けることにより、レール7を小返りさせず垂直に載置することができる。
【0032】
なお、摺動板1には、各挿通孔10、10、10・・・に図示を省略した電気的融雪器用ケーブルを事前に挿入しておく。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の本発明の分解斜視図である。
【図2】同上の一部切欠き側面図である。
【図3】同上の一部切欠き平面図である。
【図4】A−A断面図である。
【図5】第2の本発明の分解斜視図である。
【図6】同上の斜視図である。
【図7】同上の一部切欠き側面図である。
【図8】同上の一方の棒ばねを除いた一部切欠き平面図である。
【図9】B−B断面図である。
【図10】C−C断面図である。
【図11】D−D断面図である。
【図12】従来例の分解斜視図である。
【図13】同上の一部切欠き側面図である。
【図14】同上の平面図である。
【図15】E−E断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 摺動板
2 本体部
3a 外向壁
3b 下向壁
4 空隙部
5 床板
6 棒ばね
7 レール
10 ケーブル挿通孔
11 下向突部
12 レール押え部分
13 下向係止壁
14 細長孔
15 略L字状係止片
30 係止溝
60 内端
61 外端
70 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動板と本体部とを外向壁とともに一体に形成して内端に空隙部を有する高床タイプの床板を形成し、前記摺動板の裏面両側に下向突部を突設し、前記外向壁の両側に側方が開口した係止溝を形成し、また1対の棒ばねを前記床板の側方から内方に挿入して各内端を前記空隙部から突出させ、前記各棒ばねの途中を前記下向突部で押圧するとともに各外端を前記係止溝に係止して各棒ばねの各内端を常時は下方向に付勢させてレールの脚部を弾性締結することを特徴とする鉄道分岐器用床板装置。
【請求項2】
摺動板のレール押え部分の後方裏面に、レールの脚部の肉厚部に当接する下向係止壁を突設し、前記下向係止壁の両側に細長孔を穿設し、前記摺動板の外端裏面に下向壁を突設し、前記下向壁の両端に側方が開口した係止溝を形成し、一方、本体部の略中央外寄りに側方が開口した1対の略L字状係止片を突設し、前記本体部に、本体部と別体に形成した前記摺動板を載置して高床タイプの床板を形成し、また一対の棒ばねをそれぞれ前記床板の側方から内方に挿入して前記各棒ばねの内端を前記細長孔に挿入するとともに途中部分を前記略L字状係止片で当接し、前記外端を前記係止溝に係止して各棒ばねの各内端を常時は下方向に付勢させてレールの脚部を前記レール押え部分で弾性締結することを特徴とする鉄道分岐器用床板装置。
【請求項3】
摺動板の肉厚内に複数本のケーブル挿通孔を穿設することを特徴とする請求項1または2の鉄道分岐器用床板装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−161921(P2009−161921A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339543(P2007−339543)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(591036893)鉄道機器株式会社 (17)
【Fターム(参考)】