説明

鉄道車両用電力変換装置

【課題】放熱フィンの上側、下側に流れる風の乱れを低減し、また放熱フィン間の空気の淀みを緩和することによって、冷却能力低下の度合いを低減できる鉄道車両用電力変換装置とする。
【解決手段】本発明は、装置内に内蔵した半導体素子5から発生する熱を、放熱フィン9を有した冷却器6を使って装置外に放熱する仕組みを有した電力変換装置2において、放熱フィンの下側に、車両進行方向に伸び枕木方向に傾斜した整風板15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に鉄道車両では、図9(a)、(b)に示すように、鉄道車両の車体1の床下に、直流から交流に、あるいは交流から直流に電力を変換する半導体電力変換装置2が設置されている。この半導体電力変換装置2は、半導体冷却ユニット3と内部機器4とで構成され、それぞれが導体もしくは電線で接続されている。半導体冷却ユニット3は半導体素子5、冷却器6、その他電気機器で構成されている。
【0003】
電力変換の際に半導体素子5より発生する熱を半導体電力変換装置2の外部に効率よく放熱するために、半導体素子5は冷却器6に取り付けられている。冷却器6は受熱ブロック7、複数本のヒートパイプ8、複数枚の放熱フィン9で構成され、複数本のヒートパイプ8は受熱ブロック7にハンダ接合され、複数枚の放熱フィン9はヒートパイプ8に貫通接合されている。半導体素子5は密閉構造により半導体電力変換装置1の外部と隔離されており、半導体素子5で発生する熱が受熱ブロック7に伝達され、車体1の側方方向に伸びたヒートパイプ8を介して放熱フィン9へと伝わり、放熱フィン9から大気へ熱拡散される仕組みである。放熱フィン9は周りをカバー10で保護されており、カバー10は放熱に必要な空気の流れを妨げないように通風穴が開けられている。
【0004】
このようにヒートパイプ式冷却器で半導体素子5から発生する熱を外部に放出する半導体電力変換装置は、冷却器形状が特開2005-123459号公報(特許文献1)に記載された形状、特開2006-121847号公報(特許文献2)に記載された形状の場合もある。
【0005】
上述した半導体電力変換装置において、車両の走行により放熱フィン9に風を流入させる場合や放熱による自然対流により冷却する場合がある。本発明の対象は、自然対流による冷却技術に関する。この自然対流による冷却の場合、通常は、自然対流により下から上へ空気が流れており、それにより放熱フィン9と空気との間で熱伝達がなされている。しかし、電力変換装置2の下側や上側に微量の風が流れ、電力変換装置2と半導体冷却ユニット3や放熱フィン9との段差の影響で放熱フィン9の上側や下側で空気の乱れが発生することによってその部分の気圧が低下すると自然対流が阻害されて放熱フィン9間の空気の流れが淀み、この淀みにより冷却能力が低下する場合がある。図8の実線Wに示すようにさらに風速が増してゆくと冷却性能は改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-123459号公報
【特許文献2】特開2006-121847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した放熱フィンの上側、下側に流れる風の乱れを低減し、また、放熱フィン間の空気の淀みを緩和することによって、冷却能力低下の度合いを低減できる鉄道車両用電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、装置内に内蔵した半導体素子から発生する熱を、放熱フィンを有した冷却器を使って装置外に放熱する仕組みを有した鉄道車両用電力変換装置において、前記放熱フィンの上下側の少なくとも一方に、1つまたは複数の車両進行方向に伸び、枕木方向に傾斜した整風板を設けたことを特徴とする。
【0009】
なお、本発明では、装置内に内蔵した半導体素子から発生する熱を、放熱フィンを有した冷却器を使って装置外に放熱する仕組みを有した鉄道車両用電力変換装置において、放熱フィンの下側の装置外壁を放熱フィンの方に傾斜した傾斜面にしてもよい。
【0010】
また、本発明では、装置内に内蔵した半導体素子から発生する熱を、放熱フィンを有した冷却器を使って装置外に放熱する仕組みを有した鉄道車両用電力変換装置において、放熱フィンの上側の装置外壁を放熱フィンの方に傾斜した傾斜面にしてもよい。
【0011】
また、本発明では、装置内に内蔵した半導体素子から発生する熱を、放熱フィンを有した冷却器を使って装置外に放熱する仕組みを有した鉄道車両用電力変換装置において、放熱フィンの下側に1つまたは複数の車両進行方向に伸び、枕木方向に傾斜した整風板を設けてもよい。
また、本発明では、装置内に内蔵した半導体素子から発生する熱を、放熱フィンを有した冷却器を使って装置外に放熱する仕組みを有した鉄道車両用電力変換装置において、放熱フィンの上側に1つまたは複数の車両進行方向に伸び、枕木方向に傾斜した整風板を設けてもよい。
【0012】
また、本発明では、装置内に内蔵した半導体素子から発生する熱を、放熱フィンを有した冷却器を使って装置外に放熱する仕組みを有した鉄道車両用電力変換装置において、放熱フィンのカバーの下側面部を放熱フィンの傾きと平行に傾斜させてもよい。
【0013】
また、本発明では、半導体素子から発生する熱を受熱する受熱ブロック、前記受熱ブロックに一端が接続された複数本のヒートパイプ、前記複数本のヒートパイプを貫通させ、かつ各ヒートパイプからの熱を受熱するように前記ヒートパイプに接合された複数枚の放熱フィンで構成された冷却器と、前記冷却器の周囲を覆うカバーとを備え、前記半導体素子からの熱を前記冷却器を使って装置外に放熱するようにした鉄道車両用電力変換装置において、前記半導体素子からの熱を直接に受熱する受熱ブロックは一体にし、前記放熱フィンは複数に分割した構造にし、分割された放熱フィン間に通風路を設けてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放熱フィンの上側又は下側に流れる風の乱れを緩和することによって、冷却能力低下を低減することができる。
【0015】
また、本発明によれば、放熱フィンの上側、下側に流れる風が乱れても放熱フィン間の空気の淀みを抑制でき、冷却能力低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は本発明の第1の実施の形態の電力変換装置のレール方向から見た正面図。図1(b)は図1(a)におけるA−A線断面図。
【図2】上記第1の実施の形態と従来例との冷却器の冷却特性を示すグラフ。
【図3】図3(a)は本発明の第2の実施の形態の電力変換装置のレール方向から見た正面図。図3(b)は図3(a)におけるB−B線断面図。
【図4】図4(a)は本発明の第3の実施の形態の電力変換装置のレール方向から見た正面図。図4(b)は図4(a)におけるC−C線断面図。
【図5】図5(a)は本発明の第4の実施の形態の電力変換装置のレール方向から見た正面図。図5(b)は図5(a)におけるD−D線断面図。
【図6】図6(a)は本発明の第5の実施の形態の電力変換装置のレール方向から見た正面図。図6(b)は図6(a)におけるE−E線断面図。
【図7】図7(a)は本発明の第6の実施の形態の電力変換装置のレール方向から見た正面図。図7(b)は図7(a)におけるF−F線断面図。
【図8】図8(a)は上記第6の実施の形態における冷却器のレール方向から見た正面図。図8(b)は上記第6の実施の形態における冷却器の枕木方向から見た側面図。
【図9】図9(a)は従来例の電力変換装置のレール方向から見た正面図。図9(b)は図9(a)におけるG−G線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
(第1の実施の形態)図1(a)、(b)を用いて、本発明の第1の実施の形態の電力変換装置について説明する。車体1の床下に電力変換装置2が設置されている。電力変換装置2は半導体冷却ユニット3と内部機器4とで構成され、それぞれが導体もしくは電線(図示せず)で接続されている。
【0018】
半導体冷却ユニット3は半導体素子5と、受熱ブロック7、ヒートパイプ8、放熱フィン9で構成される冷却器6と、その他の電気機器(図示せず)で構成され、それぞれが導体もしくは電線(図示せず)で接続されている。
【0019】
冷却器6の複数本のヒートパイプ8は受熱ブロック7にハンダ接合され、複数枚の放熱フィン9はヒートパイプ8に貫通接合されている。半導体素子5は密閉構造により半導体電力変換装置1の外部と隔離されており、半導体素子5で発生する熱が受熱ブロック7に伝達され、車体1の側方方向に伸びたヒートパイプ8を介して放熱フィン9へと伝わり、放熱フィン9から大気へ熱拡散される仕組みである。放熱フィン9は周りをカバー10で保護されており、カバー10は放熱に必要な空気の流れを妨げないように通風穴10Aが開けられている。
【0020】
本実施の形態の特徴として、冷却器6の下側の装置外壁2Aには、適切な角度α(好ましくは、0°〜45°)で傾斜した車両進行方向下側傾斜部11、及び、適切な角度β(好ましくは、0°〜45°)で傾斜した枕木方向下側傾斜部12が設けられている。
【0021】
本実施の形態の電力変換装置では、適切な角度αの車両進行方向下側傾斜部11、及び、適切な角度βの枕木方向下側傾斜部12を装置外壁2Aに形成したことで、冷却器6の下側に流れる風が乱れることなく放熱フィン9へ到達し、冷却に必要な自然対流を阻害することはなく、空気の流れの淀みにより冷却能力が低下する度合いを低減することができる。
【0022】
図2には図9に示した従来例と本実施の形態とのそれぞれの冷却器温度と風速との関係を示している。車両速度が高速度となり風速が速くなれば従来例も本実施の形態と同等の冷却能力を示すが、車両速度が低い状態では本実施の形態の冷却器の冷却能力が高く、冷却器温度の上昇を効果的に抑制できている。
【0023】
(第2の実施の形態)図3(a)、(b)を用いて、本発明の第2の実施の形態の電力変換装置について説明する。本発明の特徴は、冷却器6の上側の装置外壁2Bに、適切な角度α(好ましくは、0°〜45°)で傾斜した車両枕木方向上側傾斜部13を設けた点にある。尚、図3(a)、(b)に示した本実施の形態の電力変換装置2の内部構成、配置は図1(a)、(b)に示した第1の実施の形態と同様であるので、共通する要素には共通の符号を用いて示してある。
【0024】
本実施の形態によれば、冷却器6の上側の装置外壁2Bに適切な角度αの車両枕木方向上側傾斜部13を形成したことで、冷却器6の上側に流れる風が乱れることなく放熱フィン9へ到達し、冷却に必要な自然対流を阻害することはなく、空気の流れの淀みにより冷却能力が低下する度合いを低減することができる。
【0025】
(第3の実施の形態)図4(a)、(b)を用いて、本発明の第3の実施の形態の電力変換装置について説明する。本発明の特徴は、カバー10における放熱フィン9の下側に相当する位置に、適切な角度α(好ましくは、0°〜45°)で傾斜した車両進行方向に伸びた整風板14、及び、適切な角度β(好ましくは、0°〜45°)で傾斜した車両進行方向に伸びた整風板15を設けた点にある。尚、図4(a)、(b)に示した本実施の形態の電力変換装置2の内部構成、配置は図1(a)、(b)に示した第1の実施の形態と同様であるので、共通する要素には共通の符号を用いて示してある。
【0026】
本実施の形態によれば、カバー10における放熱フィン9の下側に相当する位置に、適切な角度αの車両進行方向に伸びた整風板14、及び、適切な角度βの車両進行方向に伸びた整風板15を設けたことで、冷却器6の下側に流れる風が乱れることなく放熱フィン9へ到達し、冷却に必要な自然対流を阻害することはなく、空気の流れの淀みにより冷却能力が低下する度合いを低減することができる。
【0027】
(第4の実施の形態)図5(a)、(b)を用いて、本発明の第4の実施の形態の電力変換装置について説明する。本発明の特徴は、カバー10における放熱フィン9の上側に相当する位置に、適切な角度α(好ましくは、0°〜45°)で傾斜した車両進行方向に伸びた整風板16を設けた点にある。尚、図5(a)、(b)に示した本実施の形態の電力変換装置2の内部構成、配置は図1(a)、(b)に示した第1の実施の形態と同様であるので、共通する要素には共通の符号を用いて示してある。
【0028】
本実施の形態によれば、カバー10における放熱フィン9の上側に相当する位置に、適切な角度αの車両進行方向に伸びた整風板16を設けたことで、冷却器6の上側に流れる風が乱れることなく放熱フィン9へ到達し、冷却に必要な自然対流を阻害することはなく、空気の流れの淀みにより冷却能力が低下する度合いを低減することができる。
【0029】
(第5の実施の形態)図6(a)、(b)を用いて、本発明の第5の実施の形態の電力変換装置について説明する。本発明の特徴は、カバー10の下側部分を水平ではなく、冷却器6の傾斜角と平行となるように傾斜させた傾斜面10Bにした点にある。尚、図6(a)、(b)に示した本実施の形態の電力変換装置2の内部構成、配置は図1(a)、(b)に示した第1の実施の形態と同様であるので、共通する要素には共通の符号を用いて示してある。
【0030】
本実施の形態によれば、カバー10の下側部分を、冷却器6の傾斜角と平行となるように傾斜させた傾斜面10Bにしたことで、冷却器6の下側に流れる風が乱れることなく放熱フィン9へ到達し、冷却に必要な自然対流を阻害することはなく、空気の流れの淀みにより冷却能力が低下する度合いを低減することができる。
【0031】
尚、図1に示した第1の実施の形態、図3に示した第2の実施の形態においても、本実施の形態のように、カバー10の下側部分を水平ではなく、冷却器6の傾斜角と平行となるように傾斜させた傾斜面にすることができる。
【0032】
(第6の実施の形態)図7、図8を用いて、本発明の第6の実施の形態の電力変換装置について説明する。図7、図8において、本実施の形態の電力変換装置2の内部構成、配置は図1(a)、(b)に示した第1の実施の形態と同様であるので、共通する要素には共通の符号を用いて示してある。
【0033】
本発明の特徴は、受熱ブロック7、複数本のヒートパイプ8、複数枚の放熱フィン9で構成される冷却器6の構造にあり、図8(a)、(b)に示したように、受熱ブロック7は一体であるが、各放熱フィン9は車両進行方向に3分割し、通風路17を形成している。
【0034】
本実施の形態によれば、冷却器6の下側または上側に流れる風が乱れた場合でも、分割された放熱フィン9間の通風路17を空気が流れることにより、放熱フィン9間の空気が淀むことがなく、放熱フィン9と空気との間の必要な熱伝達を確保し、冷却能力低下を低減することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…車体
2…電力変換装置
3…半導体冷却ユニット
4…内部機器
5…半導体素子
6…冷却器
7…受熱ブロック
8…ヒートパイプ
9…放熱フィン
10…カバー
11…車両進行方向下側傾斜部
12…車両枕木方向下側傾斜部
13…車両枕木方向上側傾斜部
14…整風板
15…整風板
16…整風板
17…通風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内に内蔵した半導体素子から発生する熱を、放熱フィンを有した冷却器を使って装置外に放熱する仕組みを有した鉄道車両用電力変換装置において、前記放熱フィンの上下側の少なくとも一方に、1つまたは複数の車両進行方向に伸び、枕木方向に傾斜した整風板を設けたことを特徴とする鉄道車両用電力変換装置。
【請求項2】
前記整風版は、前記放熱フィンの下側に1つまたは複数の車両進行方向に伸び、枕木方向に傾斜して設けたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項3】
前記整風版は、前記放熱フィンの上側に1つまたは複数の車両進行方向に伸び、枕木方向に傾斜して設けたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項4】
前記整風版は、前記放熱フィンのカバーの下側面部を傾斜させて設けたことを特徴とする請求項1または2記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項5】
前記整風版は、前記放熱フィンのカバーの上側面部を傾斜させて設けたことを特徴とする請求項1または3記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項6】
前記放熱フィンのカバーの下側面部の傾斜は、前記放熱フィンの傾きと平行であることを特徴とする請求項4記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項7】
前記放熱フィンのカバーの上側面部の傾斜は、前記放熱フィンの傾きと平行であることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両用電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214222(P2012−214222A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136265(P2012−136265)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2007−293277(P2007−293277)の分割
【原出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】