説明

鉈および鉈の製造法

【課題】 本発明は、鉈および鉈の製造法に関するもので、従来の鉈の構造は、柄体の半分以上の左右両側部に割れ目を設け、この割込み部間に刀体のこみ部を嵌挿しかつらで固着する手段を採るものであるため、前記柄体の割込み部付近を把持して切断作業を行う際には手の痛みを起し疲労の原因にもなっていたことから、前記構造を根本的に改良することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、任意の形状と大きさに成る硬質木材製の柄体1の上側部に適当口径と深さに成る通孔2を設け、この通孔に縦方向にスリット4を設けた中子3を嵌挿し、この中子のスリット部に刀体こみ部6を装着しかつかつら7で固定して成るものである。また、任意の形状と大きさに加工した硬質木材製の柄体の上側部に適当口径と深さに成る通孔を設け、この通孔の上端周囲に段部を設け、前記通孔に刀体のこみ部を嵌挿するとともに前記段部にかつらを嵌着固定して成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉈および鉈の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から存する鉈は、図5及び図6に示すように、柄体の半分以上において左右両側部にわたり割れ目が入り、この割れ目に刀体のこみ部を嵌挿した後、かつらを嵌着して固定する手段を採るものであったため、この割込み部付近を把持して切断作業をする時は手の痛みを起こし疲労の原因ともなっていたし、また刀体のこみ部が柄部面に露出していることによって、発錆などによる劣化を早める原因となっていた。
【0003】
また、従来からの鉈の製造法は、刀体のこみ部を取付ける柄体は樫材のようなきわめて硬質の木材によって構成することから、柄体に嵌挿するための取付孔を直接穿設することが極めて困難であったことに鑑み、柄端部に左右両側部に及ぶ割れ目を入れるとともにこの割れ目間に嵌着した刀体のこみ部をかつらによって固定するという製造法を採らざるを得なかった。
【0004】
これを改良する試みとして、樫材のような硬質木材に代えて合成樹脂材によって鉈刀体を取付ける製法もあろうが、特開平4−285579号公報に見られるような包丁などの場合と違って、重厚物を相手とする鉈の場合にあっては合成樹脂材による製法を採ることは不可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平4−285579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は従来の鉈の製法上の課題を解決することによって、柄体を把持する手掌部に負担のかからないより使い易い鉈を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、任意の形状と大きさに成る硬質木材製の柄体の上側部に適当口径と深さに成る通孔を設け、この通孔に縦方向にスリットを設けた中子を嵌挿し、この中子のスリット部に刀体こみ部を装着しかつかつらで固定して成るものである。
【0008】
また、本発明は、任意の形状と大きさに加工した硬質木材製の柄体の上側部に適当口径と深さに成る通孔を設け、この通孔の上端周囲に段部を設け、前記通孔に刀体のこみ部を嵌挿するとともに前記段部にかつらを嵌着固定して成るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、簡単な改良構成ではあるが、鉈の機能を十分に発揮するために必要な刀体こみ部の装着が柄体の上側部の通孔において確実にでき、柄体の外観部をすっきりした形態に構成することができるから、長時間にわたる継続把持の作業が可能となり、痛みも疲労も起こらない使い易い柄体となる。
【0010】
刀体のこみ部が外面に露出していないから、発錆現象が起こらないし、柄体との連結状態が良好となり、劣化を防止することができる構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
人はかかる構成の鉈を使用することによって、柄体の上側部は割れ目のない無垢の表面形態に成るから、当該部分の柄体を把持しても手掌部に痛みや疲労が起こることはなく、長時間継続して把持使用することができるようになる。
【実施例1】
【0012】
第1の製造法
(1)樫材のような硬質木材によって任意の形状と大きさに成る柄体1を加工して用意する。
【0013】
(2)前記柄体1の上側部に適当口径と深さに成る通孔2を穿設する。
【0014】
(3)前記通孔2と略同一口径と長さに成る中子3を設け、この中子の縦方向に適当長さのスリット4を設ける。
【0015】
(4)前記スリット4を有する中子3に予めかつら7を嵌合しておく。
【0016】
(5)所定大きさに成る刀体5をこみ部6を設けて用意し、このこみ部6を前記中子3のスリット4に挿入する。
【0017】
(6)しかる後に、刀体5のこみ部6を挿入した中子3を前記柄体1の通孔2に嵌挿する。
【0018】
(7)前記中子3を通孔2に嵌挿した後、予め嵌合していたかつら7によって刀体こみ部6と中子3とを固定する。
【0019】
(8)最後には、釘8などの固着手段によって柄体1と中子3と刀体こみ部6とを連結する。
【実施例2】
【0020】
第2の製造法
(1)樫材のような硬質木材から成る素材11を用意する。
【0021】
(2)前記素材11の上側部分に適当巾と深さに成る通孔12を穿設する。
【0022】
(3)しかる後に、前記素材11を任意の形状と大きさに成る柄体13に加工する。同時に、この柄体の通孔12が臨む上端周囲に段部14を形成する。
【0023】
(4)前記段部14に予めかつら17を嵌置する。
【0024】
(5)しかる後に、所定大きさに成る刀体15のこみ部16を前記柄体13の通孔12に嵌挿する。
【0025】
(6)この段階で前記かつら17でこみ部16と柄体とを固定する。
【0026】
(7)最後に、釘18などの固着手段によって柄体13とこみ部16を連結する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一例全体の組立て前の斜視図
【図2】一例全体の組立て後の斜視図
【図3】図2A−A線の断面図
【図4】(a)(b)(c)(d)は他例の製造順序を示した説明図
【図5】従来物の斜視図
【図6】図5B−B線の断面図
【符号の説明】
【0028】
1 柄体
2 通孔
3 中子
4 スリット
5 刀体
6 こみ部
7 かつら
11 素材
12 通孔
13 柄体
14 段部
15 刀体
16 こみ部
17 かつら

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の形状と大きさに加工した硬質木材製の柄体の上側部に適当口径と深さに成る通孔を設け、この通孔に縦方向にスリットを設けた中子を嵌挿し、この中子のスリット部に刀体のこみ部を装着しかつかつらで固定して成ることを特徴とする鉈。
【請求項2】
硬質木材による柄体を任意の形状と大きさに加工して用意し、このように成る柄体の上側部に適当口径と深さに成る通孔を穿設し、前記通孔と略同一口径と長さに成る中子を用意し、この中子に設けた適当長さのスリットに所定大きさの刀体のこみ部を挿入し、このこみ部を挿入した中子を前記柄体の通孔に嵌挿し、しかる後に予め嵌合していたかつらで刀体こみ部と中子とを連結固定して成る鉈の製造法。
【請求項3】
任意の形状と大きさに加工した硬質木材製の柄体の上側部に適当口径と深さに成る通孔を設け、この通孔の上端周囲に段部を設け、前記通孔に刀体のこみ部を嵌挿するとともに前記段部にかつらを嵌着固定して成ることを特徴とする鉈。
【請求項4】
硬質木材から成る素材を用意し、この素材の上側部分に適巾と深さに成る通孔を穿設し、前記素材を任意の形状と大きさに成る柄体に加工するとともに前記通孔が臨む周囲に段部を形成し、このように成る柄体の通孔に刀体のこみ部を嵌挿し、しかる後に予め嵌置していたかつらを前記段部に嵌着固定して成る鉈の製造法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−141663(P2006−141663A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335365(P2004−335365)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(595050846)有限会社おやなぎ (1)
【Fターム(参考)】