説明

鉛板貼り合わせ用部品および鉛板貼り合わせ工法

【課題】溶接をすることなく鉛板同士を貼り合わせることを可能とし、作業性の改善および環境問題の改善を図る。
【解決手段】隣接する鉛板に跨って配置され、隣接する鉛板を壁に固定するためのビスを挿通させるために貫通された1対のビス用穴(11a)を有するフランジ部(11)と、ビスの露出部分と、隣接する鉛板同士の隙間とを覆うように配置される鉛製のジョイントテープを保持するための空間部(13)をフランジ部とともに形成し、ジョイントテープを壁の方向に押し付け固定するためのテープ押さえ用ネジを締着固定/締着固定解除させるために貫通されたテープ押さえ用ネジ穴(12a)を有するカバー部(12)とを備え、カバー部は、1対のビス用穴を挿通させたビスにより、フランジ部、鉛板、および壁を締着固定/締着固定解除するための開口部(12b)をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオアイソトープ(放射性同位元素)の取り扱いを必要とする施設、あるいはCT、レントゲン等、電磁的に放射線を発生する施設などにおいて、放射線防護工事の際に用いられる鉛板貼り合わせ用部品および鉛板貼り合わせ工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジオアイソトープ(放射性同位元素)の取り扱いを必要とする施設、あるいはCT、レントゲン等、電磁的に放射線を発生する施設などでは、放射線が外部に漏洩することを防止するために、施設の壁に鉛板を貼り付けることが行われる。従来の鉛板貼り合わせ工法は、以下のような手順1〜手順3で行われている。
【0003】
[手順1]鉛板をスチールの板で覆うことでパネル化する。
[手順2]パネル化された鉛板を下地材(例えば、コンクリート製の壁)に対してビスにて固定していく。
[手順3]パネル化された鉛板をビスにて固定した部分は、ビスが鉛板を貫通して下地材とつながってしまうため、ビス部分を介して放射線が外部に漏洩することを防止する必要がある。さらに、パネル化された鉛板同士の隣接部分の隙間から、放射線が外部に漏洩することを防止する必要もある。そこで、パネル化された鉛板をビスにて固定した際のビスの貫通部分、およびパネル化された鉛板同士の隣接の隙間部分を覆うように、鉛製のジョイントテープを被せ、パネル化された鉛板とジョイントテープとを溶接止めする。
【0004】
図7は、鉛板をスチールの板で覆うことでパネル化した状態を示す図である。手順1で説明したように、従来の鉛板貼り合わせ工法では、手順3における溶接作業に備えて、あらかじめ鉛板101をスチールの板102で覆うことでパネル化し、パネル100とする必要がある。
【0005】
また、図8は、従来の鉛板貼り合わせ工法による接合状態を説明するための断面図であり、手順1〜手順3の一連の処理を経た溶接後の断面状態を示している。具体的には、2枚のパネル100を、ビス111で下地材である壁112に固定した後に、ジョイントテープ120を被せ、溶接130により固定した状態を示している。なお、手順3で用いられる鉛製のジョイントテープは、図8に示すように、パネル化された鉛板と同様の構造のものを帯状としたものが用いられる。
【0006】
このように、従来の鉛板貼り合わせ工法では、放射線が外部に漏洩することを防止するために、手順1による事前のパネル化作業、および手順3による溶接作業が不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来の鉛板貼り合わせ工法は、上述したように、施工時には、溶接の有資格者による現場での溶接作業が必要となり、また、前段取りとして、鉛板をスチールの板で覆うパネル化の作業と火気養生が不可欠となる。この結果、作業性が悪いという問題があった。
【0008】
さらに、溶接により鉛板とジョイントテープを固定する際には、鉛が溶けることにより、人体に有害な煙が発生してしまうという環境面の問題もあった。このような有害な煙の発生は、溶接作業を行う当事者に対する問題ばかりでなく、病院等のような設置環境においては、患者や医療従事者などにとっても大きな問題となる。
【0009】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、溶接をすることなく鉛板同士を貼り合わせることを可能とし、作業性の改善および環境問題の改善を図ることのできる鉛板貼り合わせ用部品および鉛板貼り合わせ工法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鉛板貼り合わせ用部品は、放射線が施設の外部に漏洩することを防止する目的で、施設の壁に複数の鉛板を貼り付け固定する際に用いられる鉛板貼り合わせ用部品であって、隣接する鉛板に跨って配置され、隣接する鉛板のそれぞれを壁に固定するためのビスを挿通させるために貫通された1対のビス用穴を有するフランジ部と、1対のビス用穴に挿通されたそれぞれのビスの露出部分と、隣接する鉛板同士の隙間との両方を覆うように配置される鉛製のジョイントテープを保持するための空間部をフランジ部とともに形成し、ジョイントテープを壁の方向に押し付け固定するためのテープ押さえ用ネジを締着固定/締着固定解除させるために貫通されたテープ押さえ用ネジ穴を有するカバー部とを備え、1対のビス用穴は、空間内で保持されたジョイントテープにより覆われる所定間隔でフランジ部に設けられており、カバー部は、1対のビス用穴を挿通させたビスにより、フランジ部、鉛板、および壁を締着固定/締着固定解除するための開口部を有するものである。
【0011】
また、本発明に係る鉛板貼り合わせ用部品を用いた鉛板貼り合わせ工法は、1対のビス用穴を挿通させたビスを、開口部を利用して締着操作することで、フランジ部、鉛板、および壁を、ビスを用いて締着固定する第1ステップと、空間部を挿通させるようにジョイントテープを配置することで、第1ステップにより1対のビス用穴に挿通されたそれぞれのビスの露出部分と、隣接する鉛板同士の隙間との両方をジョイントテープにより覆うとともに、ジョイントテープを空間部により保持させる第2ステップと、テープ押さえ用ネジ穴に対してテープ押さえ用ネジを締着操作することで、第2ステップにより空間部で保持されているジョイントテープを、壁の方向に押し付け固定する第3ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鉛板貼り合わせ用部品および鉛板貼り合わせ工法によれば、隣接する鉛板同士の固定、および鉛板間の隙間から放射線が漏洩することを防止するために用いられるジョイントテープの保持、固定を、ビスおよびネジを用いた専用治具で実現することにより、溶接をすることなく鉛板同士を貼り合わせることを可能とし、作業性の改善および環境問題の改善を図ることのできる鉛板貼り合わせ用部品および鉛板貼り合わせ工法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品の形状の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品を用いて隣接する鉛板を張り合わせた状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品を用いた鉛板貼り合わせ工法の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1における鉛板端部固定用部品を用いて鉛板の端部を位置決め固定した状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるジョイントテープ重複部固定用部品の形状の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2におけるジョイントテープ重複部固定用部品が設置される領域を説明するための図である。
【図7】鉛板をスチールの板で覆うことでパネル化した状態を示す図である。
【図8】従来の鉛板貼り合わせ工法による接合状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の鉛板貼り合わせ用部品および鉛板貼り合わせ工法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。なお、実施の形態の説明にて用いられる「ネジ」、「ビス」、「フランジ部」という各用語について、本発明における技術的意味を、あらかじめ説明しておく。
ネジ:螺旋状の溝が切られており、ネジ穴の溝と係合して締結させることで、ネジの先端部分でネジ穴の下部にある部材を押圧して締着固定するもの
ビス:溝は切られておらず、ビス穴を通して打ち込まれることで、ビス穴が設けられた部材とビス穴の下部にある部材を締着固定するもの
フランジ部:部品の端部に設けられた「つば」部分に相当し、ビスによる締着固定を行うためのビス穴、あるいはネジによる締着固定を行うためのネジ穴が設けられた部分
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品の形状の一例を示す説明図である。さらに、図2は、本発明の実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品を用いて隣接する鉛板を張り合わせた状態を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品10は、フランジ部11とカバー部12とを備えて構成されている。そして、フランジ部11は、隣接する鉛板1に跨って配置され、鉛板1のそれぞれを壁2に固定するためのビス3を挿通させるために貫通された1対のビス用穴11aを有している。
【0017】
一方、カバー部12は、1対のビス用穴11aに挿通されたビス3の露出部分と、隣接する鉛板1の隙間とを覆うように配置される鉛製のジョイントテープ4を保持するための空間部13を、フランジ部11とともに形成する。そして、ジョイントテープ4を壁2の方向に押し付け固定する際に用いられるテープ押さえ用ネジ5を締着固定/締着固定解除させるためのテープ押さえ用ネジ穴12aを有している。
【0018】
図1、図2に示したように、フランジ部11における1対のビス用穴11aは、フランジ部11およびカバー部12により形成された空間部13内で保持されているジョイントテープ4により、1対のビス3の頭部の露出部分を覆うことができるような所定の間隔で設けられている。
【0019】
さらに、カバー部12には、1対のビス用穴11aを挿通させたビス3を操作することにより、フランジ部11、鉛板1、および壁2を締着固定/締着固定解除することができるように、開口部12bが設けられている。
【0020】
このような構成を有する鉛板貼り合わせ用部品10を用いることで、以下のような特徴を有する鉛板貼り付け作業を実現することができる。
(特徴1)鉛板1を壁2に固定する方法は、開口部13からビス3を締着固定/締着固定解除することで、従来どおり、1対のビス用穴11aを介してビス3を用いて行うことができる。
(特徴2)ビス3を用いて鉛板1を固定した後に、フランジ部11およびカバー部12により形成された空間内にジョイントテープ4を通すことで、ビス3の露出部分と、隣接する鉛板1の隙間の両方をジョイントテープ4で覆うことができる。
(特徴3)テープ押さえ用ネジ穴12aに対してテープ押さえ用ネジ5を締着固定することで、空間部13で保持されているジョイントテープ4を壁2の方向に押し付け固定することができる。
【0021】
このように、本実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品10は、ビスおよびネジによる締着作業のみで鉛板貼り付け作業を実現することができる。この結果、鉛板1をスチールの板で覆う事前作業を不要にできるとともに、施工時における溶接作業を不要にでき、作業性の改善および環境問題の改善を図ることができる。
【0022】
なお、図1、図2に示した本実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品10では、カバー部12が、上面、および1対の対向面の3面を有するコ字状で構成されており、フランジ部11が、上面と対向するように設けられた1対のフランジ部で構成されている場合を例示している。
【0023】
そして、このような構成を備えた鉛板貼り合わせ用部品10は、1枚の平板から容易に製造することができる。すなわち、1枚の平板に対して、1対のビス用穴11a、テープ押さえ用ネジ穴12a、および開口部12bをあらかじめ穴加工した後に、折り曲げ加工することで、コ字状部および1対のフランジ部を備えた鉛板貼り合わせ用部品として容易に製造することができる。
【0024】
しかしながら、カバー部12およびフランジ部11は、上述した特徴1〜特徴3を実現できれば、このようなコ字状部および1対のフランジ部を備えた構成に限定されるものではない。
【0025】
次に、鉛板貼り合わせ工法について、図面を用いて具体的に説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における鉛板貼り合わせ用部品10を用いた鉛板貼り合わせ工法の説明図である。この図3においては、縦2枚×横2枚の計4枚の鉛板1を貼り合わせる場合を例示している。
【0026】
まず、図3(a)に示したステップ1において、1段目に配置される2枚の鉛板1を壁2に対して貼り合わせる。この際には、まず、縦方向を位置決め固定している。ここで、隣接する2枚の鉛板同士を固定する際には、図1、図2で説明した鉛板貼り合わせ用部品10が用いられる。また、鉛板の端部を固定する際には、図4を用いて後述する鉛板端部固定用部品20が用いられる。
【0027】
鉛板貼り合わせ用部品10を用いた固定を行う場合には、フランジ部11に設けられたビス用穴11aを介して、開口部12bを利用して、ビス3による締着固定を行う。同様に、鉛板端部固定用部品20を用いた固定を行う場合には、フランジ部21に設けられたビス用穴21aを介して、ビス3による締着固定を行う(詳細は、図4を用いて後述する)。
【0028】
次に、図3(b)に示したステップ2において、2段目に配置される2枚の鉛板1を壁2に対して貼り合わせる。この際にも、先のステップ1と同様に、まず、縦方向を位置決め固定している。鉛板貼り合わせ用部品10および鉛板端部固定用部品20を用いた固定方法は、先のステップ1における1段目のときと同様である。
【0029】
次に、図3(c)に示したステップ3において、1段目と2段目に配置される鉛板1の間に相当する横方向を、壁2に対して位置決め固定している。鉛板貼り合わせ用部品10を用いた固定方法は、先のステップ1と同様である。
【0030】
次に、図3(d)に示したステップ4において、隣接する鉛板1の間に配置された鉛板貼り合わせ用部品10の空間部13を利用して、ビス3の露出部分と、隣接する鉛板1の隙間を覆うためのジョイントテープ4を配設する。そして、テープ押さえ用ネジ穴12aを利用してテープ押さえ用ネジ5を締着固定することで、ジョイントテープ4を壁2の方向に押し付け固定する。
【0031】
また、ジョイントテープ4の端部を固定する際には、図4を用いて後述する鉛板端部固定用部品20を用いることも可能である。鉛板端部固定用部品20を用いた固定方法は、先のステップ1と同様である。
【0032】
このような一連の貼り合わせ工法により、鉛板1をスチールの板で覆う事前作業を不要にするとともに、施工時における溶接作業を不要にすることができ、作業性の改善および環境問題の改善を図ることができる。
【0033】
次に、図4を用いて、鉛板1(あるいはジョイントテープ4)の端部の固定方法について説明する。図4は、本発明の実施の形態1における鉛板端部固定用部品20の斜視図、およびこの鉛板端部固定用部品20を用いて鉛板1あるいはジョニントテープ4の端部を位置決め固定した状態を示す断面図である。具体的には、鉛板端部固定用部品20の斜視図が図4(a)に例示されており、鉛板1のみの端部を固定する場合が図4(b)に例示されており、さらに、鉛板1の端部にオーバーラップしたジョイントテープ4の端部を固定する場合が図4(c)に例示されている。
【0034】
本実施の形態1における鉛板端部固定用部品20は、フランジ部21とカバー部22とを備えて構成されている。そして、フランジ部21は、フランジ部21自体を壁2に直接固定するビス3を挿通させるために貫通されたビス用穴21aを有している。
【0035】
一方、カバー部22は、L字状をしており、鉛板1の端部(図4(b)参照)、あるいは鉛板1にオーバーラップするように配設されたジョイントテープ4の端部(図4(c)参照)を壁2の方向に押し付け固定するための端部押さえ用ネジ6を締着固定/締着固定解除させるための端部押さえ用ネジ穴22aを有している。
【0036】
ここで、鉛板端部固定用部品20を用いた固定方法は、先の図1、図2で説明した鉛板貼り合わせ用部品10を用いた固定方法とは、次の点で異なっている。すなわち、端部の固定に用いられるビス3は、鉛板1を貫通して締着固定されることはないため、このビス3の露出部分をジョイントテープ4によりカバーする必要はない。従って、鉛板端部固定用部品20は、鉛板貼り合わせ用部品10のように空間部13を設ける必要はなく、図4に示すような単純な形状となっている。
【0037】
以上のように、実施の形態1によれば、隣接する鉛板同士の固定、および鉛板間の隙間から放射線が漏洩することを防止するために用いられるジョイントテープの保持、固定を、ビスおよびネジを用いて実現できる。この結果、鉛板をスチールの板で覆う事前作業を不要にできるとともに、施工時における溶接作業を不要にでき、作業性の改善および環境問題の改善を図ることができる。
【0038】
実施の形態2.
本実施の形態2では、複数の鉛板1および複数のジョイントテープ4が配設された領域で、複数の鉛板1および複数のジョイントテープ4のいずれによっても壁2を覆うことができない空間領域を、ジョイントテープ片4aで覆うために用いられる空間領域防護用部品について説明する。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態2における空間領域防護用部品の形状の一例を示す説明図である。図5に示すように、本実施の形態2における空間領域防護用部品30は、フランジ部31とカバー部32とを備えて構成されている。そして、フランジ部31は、隣接する鉛板貼り合わせ用部品10に跨って配置され、隣接する鉛板貼り合わせ用部品10のテープ押さえ用ネジ穴12aに対して、テープ押さえ用ネジ5を用いて固定するために貫通された1対の長穴31aを有している。
【0040】
一方、カバー部32は、ジョイントテープ片4aを保持するための空間部33を有している。そして、ジョイントテープ片4aを壁2の方向に押し付け固定する際に用いられるテープ押さえ用ネジ5を締着固定/締着固定解除させるためのテープ押さえ用ネジ穴32aを有している。
【0041】
図6は、本発明の実施の形態2における空間領域防護用部品30が設置される領域を説明するための図である。この図6では、左上、右上、左下、右下の4枚の鉛板1を、縦隙間用、右横隙間用、左横隙間用の3つのジョイントテープ4、および2つの鉛板貼り合わせ用部品10を用いて固定している状態を示している。
【0042】
ジョイントテープ4は、パネル化された鉛板1と同様の構造のものを帯状としたものであるため、その厚みによっては、縦方向のジョイントテープ4と横方向のジョニントテープ4とを重ね合わせることが困難な場合が考えられる。そして、このような場合には、図6に示したように、縦隙間用のジョイントテープ4を配置した後に、横隙間用のジョイントテープ4を左右2つに分断して配置することとなる。
【0043】
そして、図6に示したように、4つの鉛板1と3つのジョイントテープ4を配置した場合には、鉛板1およびジョイントテープ4のいずれによっても覆われていない部分として、図6中に黒で塗りつぶされた四角で示した2箇所のA部が存在してしまうこととなる。この結果、このままでは、この2箇所のA部から放射線が外部に漏洩することとなってしまう。
【0044】
そこで、本実施の形態2では、図5に示した空間領域防護用部品30を用いることで、2箇所のA部をジョイントテープ片4aで覆うことができ、放射線が外部に漏洩することを防止している。
【0045】
空間領域防護用部品30の1対のフランジ部31のそれぞれに設けられた長穴31aを貫通するように、テープ押さえ用ネジ5を用いることで、空間領域防護用部品30を、隣接する2つの鉛板貼り合わせ用部品10に跨るように固定配置することができる。
【0046】
そして、縦隙間用、右横隙間用、左横隙間用の3つのジョイントテープ4とカバー部32とで形成される空間部33に、適切な大きさのジョイントテープ片4aを挿入し、テープ押さえ用ネジ穴32aに対してテープ押さえ用ネジ5を締着固定させる。このようにしてジョイントテープ片4aを配置することで、放射線が外部に漏洩するおそれのあった2箇所のA部を、ジョイントテープ片4aで覆うことができる。
【0047】
以上のように、実施の形態2によれば、複数の鉛板および複数のジョイントテープが配設された領域で、複数の鉛板および複数のジョイントテープのいずれによっても壁を覆うことができない空間領域から、放射線が漏洩することを防止するために用いられるジョイントテープ片の保持、固定を、ビスを用いて実現できる。この結果、複数の鉛板をつなぎ合わせて配置する際にも、確実に放射線が漏洩することを防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 鉛板、2 壁、3 ビス、4 ジョイントテープ、5 テープ押さえ用ネジ、6 端部押さえ用ネジ、10 鉛板貼り合わせ用部品、11 フランジ部、11a ビス用穴、12 カバー部、12a テープ押さえ用ネジ穴、12b 開口部、13 空間部、20 鉛板端部固定用部品、21 フランジ部、21a ビス用穴、22 カバー部、22a 端部固定用ネジ穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が施設の外部に漏洩することを防止する目的で、前記施設の壁に複数の鉛板を貼り付け固定する際に用いられる鉛板貼り合わせ用部品であって、
隣接する鉛板に跨って配置され、前記隣接する鉛板のそれぞれを前記壁に固定するためのビスを挿通させるために貫通された1対のビス用穴を有するフランジ部と、
前記1対のビス用穴に挿通されたそれぞれのビスの露出部分と、前記隣接する鉛板同士の隙間との両方を覆うように配置される鉛製のジョイントテープを保持するための空間部を前記フランジ部とともに形成し、前記ジョイントテープを前記壁の方向に押し付け固定するためのテープ押さえ用ネジを締着固定/締着固定解除させるために貫通されたテープ押さえ用ネジ穴を有するカバー部と
を備え、
前記1対のビス用穴は、前記空間内で保持された前記ジョイントテープにより覆われる所定間隔で前記フランジ部に設けられており、
前記カバー部は、前記1対のビス用穴を挿通させた前記ビスにより、前記フランジ部、前記鉛板、および前記壁を締着固定/締着固定解除するための開口部を有する
ことを特徴とする鉛板貼り合わせ用部品。
【請求項2】
請求項1に記載の鉛板貼り合わせ用部品において、
前記カバー部は、上面、および前記上面の両端に設けられた1対の対向面の3面を有するコ字状部で構成され、
前記フランジ部は、前記1対の対向面における前記上面と反対側の端部にそれぞれ接続され、前記上面と対向するように設けられた1対のフランジ部で構成され、
前記1対のビス用穴のそれぞれは、前記所定間隔となるように前記1対のフランジ部のそれぞれに1つずつ設けられており、
前記開口部は、前記カバー部の前記上面において、前記1対のフランジ部に設けられた前記1対のビス用穴と対面する位置に設けられており、
前記テープ押さえ用ネジ穴は、前記カバー部の前記上面に設けられている
ことを特徴とする鉛板貼り合わせ用部品。
【請求項3】
請求項2に記載の鉛板貼り合わせ用部品において、
1枚の平板に対して、前記1対のビス用穴、前記開口部、および前記テープ押さえ用ネジ穴を加工生成した後に、折り曲げ加工することで、前記コ字状部および前記1対のフランジ部を備えた部品として製造される
ことを特徴とする鉛板貼り合わせ用部品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の鉛板貼り合わせ用部品において、
複数の鉛板および複数のジョイントテープが配設された領域で、前記複数の鉛板および前記複数のジョイントテープのいずれによっても前記壁を覆うことができない空間領域を、ジョイントテープ片で覆うために用いられる空間領域防護用部品をさらに備え、
前記空間領域防護用部品は、隣接する前記鉛板貼り合わせ用部品に跨って配置され、
前記テープ押さえ用ネジ穴および前記テープ押さえ用ネジを用いて固定するために貫通された1対の長穴を有するフランジ部と、
前記空間領域を覆うように配置される前記ジョイントテープ片を保持するための空間部を形成し、前記ジョイントテープ片を前記壁の方向に押し付け固定するためのテープ押さえ用ネジを締着固定/締着固定解除させるために貫通されたテープ押さえ用ネジ穴を有するカバー部と
を備えることを特徴とする鉛板貼り合わせ用部品。
【請求項5】
請求項1に記載の鉛板貼り合わせ用部品を用いた鉛板貼り合わせ工法であって、
前記1対のビス用穴を挿通させた前記ビスを、前記開口部を利用して締着操作することで、前記フランジ部、前記鉛板、および前記壁を、前記ビスを用いて締着固定する第1ステップと、
前記空間部を挿通させるように前記ジョイントテープを配置することで、前記第1ステップにより前記1対のビス用穴に挿通されたそれぞれのビスの露出部分と、前記隣接する鉛板同士の隙間との両方を前記ジョイントテープにより覆うとともに、前記ジョイントテープを前記空間部により保持させる第2ステップと、
前記テープ押さえ用ネジ穴に対して前記テープ押さえ用ネジを締着操作することで、前記第2ステップにより前記空間部で保持されている前記ジョイントテープを、前記壁の方向に押し付け固定する第3ステップと
を備えることを特徴とする鉛板貼り合わせ工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23981(P2013−23981A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162209(P2011−162209)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【特許番号】特許第4833379号(P4833379)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(000158965)技研興業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】