説明

鉛筆芯

【課題】 鉛筆芯に含有した香料を長期にわたり持続させながら、芯体からの溶出がなく、筆記時の芳香と筆跡濃度低下が少ない鉛筆芯を提供する。
【解決手段】 自身が摩耗することによって筆跡を形成する多孔質芯体の少なくとも多孔内に、ゲル化した香料又はゲル化した香料組成物を配置した鉛筆芯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などの被筆記面に対して擦られることによって自身が摩耗し、その摩耗粉が被筆記面に定着することによって筆跡を形成する鉛筆芯に関し、更に、香料を含浸しており、使用時に芳香を感知できる香り付きの鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭49−32726号公報(特許文献1)には、焼成した鉛筆芯に、香料を、蜜ろう、木ロウ、固形パラフィンなどのワックスと組み合わせて含浸させ、筆記の際に香りが得られる鉛筆芯が開示されている。
【特許文献1】特開昭49−32726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている、単にワックスと香料とを混合したものを含浸させた鉛筆芯では、温度環境などによってワックスが流れ出てきたり、シャープペンシルの中のように外気が流通する場所に置かれると1〜2週間余りで香りが消失されてしまい、香りの持続性の点で問題があった。また、高温でワックスを溶融させることは、加熱による香料の損失が多いという問題があり、更に、ワックスと香料との混合物では相分離が起こり、香料が徐々に染み出て揮散してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明は、自身が摩耗することによって筆跡を形成する多孔質芯体の少なくとも多孔内に、ゲル化した香料又はゲル化した香料組成物を配置した鉛筆芯を要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
香料をゲル中に配置することによって、香料の外部への揮散を極力抑制することができ、紙面などの被筆記面に対する擦過で自身が摩耗することによって、香料を空気中に開放し、筆記に供されるまでの間は香料の揮散を極力抑制しつつ、その筆跡からは芳香を醸し出すことができる。
また、焼成した多孔質芯体の多孔内にゲル化した香料又はゲル化した香料組成物を配置するので、最も外層のゲル化成分が多孔の開口部を蓋するように閉塞し、より内部の香料が残留する可能性を維持するので、より香気の持続性が得られるものである。
更に、香料又は香料成分に対するゲル化剤をオイルゲルとすることによって、水性媒体やこれに対する可溶化剤、界面活性剤などの機能成分を含有する必要がなく、その分油性成分である香料の含有量を多いものとすることができる。
また、ゲル化剤が熱可逆性ゲル化剤であることによって、芯体の多孔中に配置する際に、ゲルを熱で溶融させて含浸させることができ、更に、界面活性剤を添加することによって、香料成分を安定にゲル中に存在させると共に、芯体に対して浸透しやすくすることができる。
更に、香料を疎水性シリカにて担持させると、香料の揮発を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用される香料としては、従来公知の天然及び合成の広い範囲の香料を利用することができる。例としては、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、イランイラン油、パチュリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ボアドローズ油、チョウジ油、ユーカリ油、セダー油、ラベンダー油、ビャクダン油、ベチバー油、ゼラニウム油、ラブダナム油、ペパーミント油、ローズ油、ジャスミン油、リッツアキュベバ油などの天然源植物性精油、これらより分離されたゲラニオール、シトロネロール、オイゲノールなどの単離香料類、そしてムスク、シベット、アンバーグリス、カストリウムなどの天然源動物性香料類、そしてフェニルエチルアルコール、ジヒドロミルセノール、ベンジルアセテート、バニリン、シンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、アニスアルコール、アニスアルデヒド、イオノン、シス−3−ヘキセノール、ベンジルアルコール、アミルシンナミックアルコール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、シンナミルアセテート、イソアミルサリシレート、メチルジヒドロジャスモネート、α−ピペロニルプロパナール、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、γ−ウンデカラクトン、ベロネート、アンブロキサン、ガラクソライドなどの合成香料、更にパラアルデハイド、ベンズアルデヒド、アルデヒドC−6、アルデヒドC−7、 アルデヒドC−8、アルデヒドC−9、シトロネラール、アルデヒドC−10、トリプラール、p−エチルジメチルヒドロシンナミックアルデヒド(フローラゾン)、2−トリデセナール、アルデヒドC11などのアルデヒド系合成香料や、エチルアセテート、エチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、ブチルアセテート、エチル2−メチルブチレート、イソアミルアセテート、エチル2−メチルペンタノエート(マンザネート)、ヘキシルアセテート、アリルヘキサノエート、トリシクロデセニルプロピオネート(VERTOPRO;フロロシクレン)、アリルヘプタノエート、イソボルニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、2−ter−ブチルシクロヘキシルアセテート(ナルシドール)などのエステル系合成香料、2−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、メチルヘプテノンなどのケトン系合成香料、リモネン、α−ピネン、カンフェン、p−サイメン、フェンチェンなどのモノテルペン系合成香料、1,8−シネオール、ローズオキサイド、セドロールメチルエーテル(セドランバー)、p−クレジルメチルエーテル、イソアミルフエェニルエチルエーテル、4−フェニル−2,4,6−トリメチル−1,3−ジオキサン、アネトールなどのエーテル系合成香料を例示できる。上記香料は単独若しくは複数組み合わせて使用しても差し支えない。香料組成物中のこれら香料の含有割合は20〜90重量%であることが好ましい。香料の含有割合が20重量%未満では、筆記時の芳香が感じられにくく、90重量%を超える使用量であると、ゲル化しにくく香りの保香が困難になる場合が生じる。
【0007】
香料又は香料組成物をゲル化させるゲル化剤としては、主に水性媒体をゲル化させる水性ゲル化剤として、カラーギナン、ポリアクリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、寒天、コラーゲン、ゼラチン、架橋ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スメクタイト、モンモリロナイトなどが例示できる。
また、水以外の媒体をゲル化させるオイルゲル化剤として、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α、γ−ビス−n−ブチルアミド、N−ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミド、N−ラウロイルグルタミン酸ジラウリルアミド、ジカプロイルグルタミン酸ジラウリルアミド、ジカプロイルグルタミン酸ジブチルアミド、N−ラウロイルグルタミン酸ステアリルアミド、Nα・Nω−ジカプロイルジラウリルエステル、Nα・Nω−ジステアロイルリジンオクチルエステル、N−ステアロイルグリシンラウリルアミド、N―パルミトール−ε−アミノカプロン酸ラウリルエステル、Nα・Nω−ジカプリロイルリジンステアリルアミン、N−ラウロイルパリンラウリルアミン酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ジオクチルアミド、Nα・Nω−ジラウロイルリジンステアリルアミン酸塩などのN−アシルアミノ酸誘導体などのアミノ酸系オイルゲル化剤や、ジベンジリデンソルビトールや、12−ヒドロキシステアリン酸や、2−エチルヘキサン酸アルミニウム、そして更にステアリン酸アルミニウムなどの金属石鹸を例示できる。本発明においては、上記から選ばれるゲル化剤の1種もしくは2種以上使用できる。これら香料組成物中のゲル化剤の含有割合は、0.1〜10重量%であることが好ましく、ゲル化剤の含有割合が0.1重量%未満であると香料をゲル化するには不十分で、10重量%を超えての使用で増量してもゲル化の状態は変わらず、却って香料の占める割合を減らしてしまう。
【0008】
ゲル化した香料又はゲル化した香料組成物を、その多孔内に配置する芯体は、例えば、黒鉛、窒化ホウ素などの着色剤成分と、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ベントナイトなどの各種合成樹脂や粘土などを結合材として使用し、必要に応じて使用されるポリアミド、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレ−トなどの気孔形成材、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルなどの可塑剤、水、アルコ−ル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素などの液媒体を、ニ−ダ−、ヘンシェルミキサ−、3本ロ−ルなどで均一分散混錬し、細線状に押し出し成形後、800℃以上1200℃以下で焼成して焼成芯体を得る。この焼成芯体は、焼成処理による微細な気孔が形成されている。
【0009】
ゲル化した香料又はゲル化した香料組成物を、芯体の多孔に配置する方法としては、予め、香料又は香料組成物をゲル化しておき、これを加温したり液媒体に溶解させるなどして液状とし、これに焼成芯体を浸漬する方法や、香料又は香料組成物と、ゲル化剤又はゲル化剤組成物とのいずれか一方を、必要に応じて加温したり液媒体に溶解するなどしたものに焼成芯体を浸漬して含浸させ、次いで他方に浸漬して多孔内及び表面にてゲル化させる方法などが例示できる。特に、予めゲル化剤を熱で溶融させて液状として含浸した多孔質芯体に、後から香料を含浸し、多孔内にあるゲル化剤とゲル化させる方法とすると、香料に熱を加える必要がないので香料が揮発しない利点がある。
また、この場合、ゲル化剤に界面活性剤を使用すると、ゲル化剤が芯体に浸透し易くなり、界面活性剤はゲル化剤と香料を相溶させる可溶化剤として作用し、香料成分を安定にゲル中に存在させる。これら使用する界面活性剤としては、特に限定なく従来公知のノニオン系、アニオン系、カチオン系各種界面活性剤を使用でき、使用量はゲル化剤に対して3〜10重量%程度で使用すれば良い。
【0010】
また、香料を疎水性シリカの微細固体格子内に封じ込め担持させることで、香料の揮発を抑制させることが出来るもので、BET比表面積が30〜280m2/g、好ましくは80〜240m2/gであり、水分が5%以下、好ましくは4%以下、pH(4%分散液)3.5〜8.5、好ましくは4.0〜8.0、嵩比重40〜230g/l、好ましくは50〜200g/l、平均粒径0.5〜100μm、好ましくは1〜50μm、吸油量150〜300g/100g、好ましくは200〜300g/100gであるものが好適に用いられる。例としては、AEROJILシリーズ(日本アエロジル(株)製、販売)として、AEROJIL R104、同R106、同R202、同R711、同7200、同R805、同R812、同R812S、同R8200、同R972、同R972V、同R974などと、東ソー・シリカ(株)製、販売品として、AZ−200、AZ−201、AZ−400、AZ−600などや、SS−10、SS15、SS115、SS−50、SS−70、SS−72F、SS−50Bなどが上げられる。これら疎水性シリカの使用量は、香料又はゲル化した香料組成物に対して、概ね0.01重量%程度で良い。
【実施例】
【0011】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0012】
<焼成芯体1>
塩化ビニル樹脂 40重量部
黒鉛 50重量部
カ−ボンブラック 2重量部
ジオクチルフタレ−ト 10重量部
ステアリン酸 2重量部
メチルエチルケトン 30重量部
上記配合を配合物として、ニ−ダ−及び3本ロ−ルにより十分混練後、細線状に押し出し成形し、空気中で300℃まで加熱し、更に、不活性雰囲気で950℃に加熱し、呼び径0.5で、気孔率15%の焼成芯体1を得た。
【0013】
<焼成芯体2>
ベントナイト 20重量部
窒化硼素 50重量部
塩化ビニル樹脂 10重量部
ジオクチルフタレ−ト 10重量部
ステアリン酸 2重量部
メチルエチルケトン 30重量部
上記配合を配合物として、ニ−ダ−及び3本ロ−ルにより十分混練後、細線状に押し出し成形し、空気中で180℃まで加熱し、更に、不活性雰囲気で1000℃に加熱し、そして空気中で500℃に加熱して白色の焼成芯体を得る。この白色焼成芯体を下記赤色インク液状物へ浸し30℃で24時間静置したのち芯体表面の余分なインク成分を遠心分離器で除去し呼び径0.5で、気孔率16%の赤色の焼成芯体を得た。
【0014】
(香料組成物1)
12−ヒドロキシステアリン酸(オイルゲル化剤) 10重量部
ベルガモット(天然香料、(有)フォレスターエンタープライズ販売) 90重量部
【0015】
(香料組成物2)
ソフトールD−150(ノニオン系界面活性剤、ニチユショリューション(株)製)
3重量部
12−ヒドロキシステアリン酸(オイルゲル化剤) 8重量部
ベルガモット(天然香料、(有)フォレスターエンタープライズ販売) 89重量部
【0016】
(香料組成物3)
ソフトールD−150(ノニオン系界面活性剤、ニチユショリューション(株)製)
3重量部
12−ヒドロキシステアリン酸(オイルゲル化剤) 8重量部
ベルガモット(天然香料、(有)フォレスターエンタープライズ販売) 89重量部
Aerojil R972(日本アエロジル(株)製) 0.1重量部
【0017】
(赤色インク組成物)
赤色染料(染料、Sumifix HF Red G gran、ケムテックス(株)製、販売) 30重量部
エチルアルコール(溶剤) 70重量部
【0018】
<実施例1>
上記焼成芯体1を、ビーカ内にて12−ヒドロキシステアリン酸を加温して溶解させたものの中に投入して2時間浸漬する。その後、芯体を取り出し、芯体表面の余分な液を遠心分離器で除去した。12−ヒドロキシステアリン酸の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約0.1重量%であった。更に、得られた12−ヒドロキシステアリン酸が含浸した芯体を天然香料のベルガモット((有)フォレスターエンタープライズ販売)が入ったビーカ中に12時間浸漬し、呼び径0.5の天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。得られた芯体への香料の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約13.2重量%であった。
【0019】
<実施例2>
実施例1において、12−ヒドロキシステアリン酸を加温して溶解させたものに代えて、加温により混合溶解させたソフトールD−150(ノニオン系界面活性剤、ニチユショリューション(株)製)を5重量部と12−ヒドロキシステアリン酸(オイルゲル化剤)を95重量部との混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、ソフトールD−150と12−ヒドロキシステアリン酸との混合物の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約0.1重量%であった。更に、香料の含浸率は14.2重量%であった。
【0020】
<実施例3>
実施例1において、12−ヒドロキシステアリン酸を加温して溶解させたものに代えて、加温により混合溶解させたソフトールD−150(ノニオン系界面活性剤、ニチユショリューション(株)製)を10重量部とN−ラウロイル−L−グルタミン酸−α(アミノ酸系オイルゲル化剤)を90重量部との混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、ソフトールD−150とN−ラウロイル−L−グルタミン酸−αとの混合物の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約0.2重量%であった。更に、香料の含浸率は14.5重量%であった。
【0021】
<実施例4>
実施例1において、12−ヒドロキシステアリン酸を加温して溶解させたものに代えて、加温により混合溶解させたソフトールD−150(ノニオン系界面活性剤、ニチユショリューション(株)製)を10重量部とジベンジリデンソルビトール(オイルゲル化剤)を90重量部との混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、ソフトールD−150とジベンジリデンソルビトールとの混合物の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約0.2重量%であった。更に、香料の含浸率は14.5重量%であった。
【0022】
<実施例5>
実施例1において、12−ヒドロキシステアリン酸を加温して溶解させたものに代えて、加温により混合溶解させたソフトールD−150(ノニオン系界面活性剤、ニチユショリューション(株)製)を10重量部と2−エチルヘキサン酸アルミニウム(オイルゲル化剤)を90重量部との混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、ソフトールD−150と2−エチルヘキサン酸アルミニウムとの混合物の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約0.1重量%であった。更に、香料の含浸率は14.3重量%であった。
【0023】
<実施例6>
実施例1において、12−ヒドロキシステアリン酸を加温して溶解させたものに代えて、加温により混合溶解させたソフトールD−150(ノニオン系界面活性剤、ニチユショリューション(株)製)を5重量部と12−ヒドロキシステアリン酸(オイルゲル化剤)を95重量部とAerojil R972(日本アエロジル(株)製)を0.1重量部との混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、ソフトールD−150と12−ヒドロキシステアリン酸とAerojil R972との混合物の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約0.1重量%であった。更に、香料の含浸率は14.5重量%であった。
【0024】
<実施例7>
ビーカー内にて上記香料組成物1を加温し溶解させ、焼成芯体1を2時間浸漬した。その後取り出して、芯体表面の余分な液を遠心分離器で除去して天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、香料組成物1の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約13.5重量%であった。
【0025】
<実施例8>
ビーカー内にて上記香料組成物2を加温し溶解させ、焼成芯体1を2時間浸漬した。その後取り出して、芯体表面の余分な液を遠心分離器で除去して天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、香料組成物2の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約14.1重量%であった。
【0026】
<実施例9>
ビーカー内にて上記香料組成物3を加温し溶解させ、焼成芯体1を2時間浸漬した。その後取り出して、芯体表面の余分な液を遠心分離器で除去して天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、香料組成物3の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約13.8重量%であった。
【0027】
<実施例10>
実施例7において、前記香料組成物1を加温させることなく常温にて焼成芯体1を浸漬した以外は同様にして天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、香料組成物1の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約13.1重量%であった。
【0028】
<実施例11>
実施例8において、前記香料混合物2を加温させることなく常温にて焼成芯体1を浸漬した以外は同様にして天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、香料混合物2の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約13.8重量%であった。
【0029】
<実施例12>
実施例9において、前記香料混合物3を加温させることなく常温にて焼成芯体1を浸漬した以外は同様にして天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。尚、香料混合物3の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約13.5重量%であった。
【0030】
<実施例13>
上記焼成芯体2を、ビーカ内にて12−ヒドロキシステアリン酸を加温して溶解させたものの中に投入して2時間浸漬する。その後、芯体を取り出し、芯体表面の余分な液を遠心分離器で除去した。12−ヒドロキシステアリン酸の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約0.1重量%であった。更に、得られた12−ヒドロキシステアリン酸が含浸した芯体を天然香料のベルガモット((有)フォレスターエンタープライズ販売)が入ったビーカ中に12時間浸漬し、呼び径0.5の天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。得られた芯体への香料の含浸率は約13.3重量%であった。
【0031】
<比較例1>
焼成芯体1をを天然香料のベルガモット((有)フォレスターエンタープライズ販売)が入ったビーカ中に12時間浸漬し、天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。得られた芯体への香料の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約14.5重量%であった。
【0032】
<比較例2>
焼成芯体2を天然香料のベルガモット((有)フォレスターエンタープライズ販売)が入ったビーカ中に12時間浸漬し、天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。得られた芯体への香料の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約13.8重量%であった。
【0033】
<比較例3>
焼成芯体1をパラフィンワックスが10重量部と天然香料のベルガモット((有)フォレスターエンタープライズ販売)が90重量部の香料混合物を加温して溶融させたビーカー内に投入し12時間浸漬させる。その後取り出して、芯体表面の余分な液を遠心分離器で除去し、呼び径0.5の天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。得られた芯体への香料混合物の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約12.5重量%であった。
【0034】
<比較例4>
焼成芯体1をパラフィンワックスを加温して溶解させたビーカ内に投入し2時間含浸させる。その後取り出して、芯体表面の余分な液を遠心分離器で除去した。パラフィンワックスの含浸率は含浸前の芯体重量に対して約1重量%であった。更に、得られたパラフィンワックス含浸の芯体を天然香料のベルガモット((有)フォレスターエンタープライズ販売)が入ったビーカ中に12時間浸漬し、呼び径0.5の天然香料ベルガモットの香り付き鉛筆芯を得た。得られた芯体への香料の含浸率は含浸前の芯体重量に対して約12.9重量%であった。
【0035】
以上、各実施例及び比較例で得られた鉛筆芯について、通気性のある室温に放置して、所定期間(ア:直後、イ:室温1週間放置、ウ:室温2週間放置、エ:室温1ヶ月放置)毎に取り出して、JIS S 6005の濃度測定で使用する画線機にて筆記し、各筆跡の濃度(単位D)を測定すると共に、その時得られた画線紙から芳香性が感じられるか、感じられないかについて無作為に選んだ10人のパネラーによって試験を行った。芳香を感じたパネラーの数の割合を百分率で表す。また同時に各芯体表面を目視にて観察して、芯体含浸物の溶出などの異常がないかどうか確認した。以上得られた結果を表1に示す。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身が摩耗することによって筆跡を形成する多孔質芯体の少なくとも多孔内に、ゲル化した香料又はゲル化した香料組成物を配置した鉛筆芯。
【請求項2】
前記芯体が、少なくとも色材成分と有機結合材とを混錬し成型したものを高温で焼成した多孔質焼成体である請求項1に記載の鉛筆芯。
【請求項3】
前記ゲル化した香料又はゲル化した香料組成物におけるゲル化剤が、オイルゲル化剤である請求項1又は請求項2に記載の鉛筆芯。
【請求項4】
前記オイルゲル化剤が、アミノ酸系オイルゲル化剤、ジベンジリデンソルビトール、12−ヒドロキシステアリン酸、N−アシルアミノ酸誘導体、2−エチルへキサン酸アルミニウム、または金属石鹸からから選ばれる1種もしくは2種以上の混合物である請求項3に記載の鉛筆芯。
【請求項5】
前記ゲル化した香料又はゲル化した香料組成物におけるゲル化剤が、水性熱可逆性ゲル化剤である請求項1又は請求項2に記載の鉛筆芯。
【請求項6】
前記香料組成物が、界面活性剤を含有する請求項1乃至請求項5に記載の鉛筆芯。
【請求項7】
前記香料組成物が、香料を担持した疎水性シリカ粒子を含有する請求項1乃至請求項6に記載の鉛筆芯。

【公開番号】特開2009−67953(P2009−67953A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240065(P2007−240065)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】