説明

鉢保持装置

【課題】 重ねられた植木鉢、ポット等の鉢を1個ずつ保持することができる鉢保持装置を提供すること。
【解決手段】 鉢を保持する鉢保持装置10において、複数の吸引用開口部11を同一平面上に配設し、各吸引用開口部11に空気路12を接続し、空気路12はダクト13に接続され、吸引用開口部11を鉢の内部の底部に接触させた状態でダクト13の開口部14から空気を吸引することにより、鉢を吸引して保持すること。さらに、吸引用開口部11は、蛇腹式の可撓性筒状部15の先端に形成され、蛇腹式の可撓性筒状部15の基部は空気路12に接続されていること。さらに、各吸引用開口部11に鉢の内部の径より若干小さい径の張り出し部16を付設したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢、ポット等の鉢を保持する鉢保持装置に関し、特に複数の鉢を同時に保持することができる鉢保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、園芸場あるいは農園等においては、苗の栽培等にあたって、所定のトレイに10〜30個のプラスチック製ミニポットを装填し、装填した前記ミニポットに腐葉土等を投入して、前記ミニポット内に、種あるいは苗等を植えて、所定の大きさに育成し、このように所定の大きさに育成した苗等を上記ミニポットとともに市場に提供するようにしている。このような育苗作業における最初の手順として、上記ミニポットをトレイ内に整頓された状態で設置しなければならないという作業がある。第1の場合として、真空圧(負圧)を利用してプラスチック製ミニポットを複数個、同時に吸引するとともに、このようにして吸引された複数個のミニポットを所定のトレイ内に装填する方法がある(例えば特許文献1参照)。
また、第2の場合として、図4に示すように、サポートチューブ41内に上下動および回転可能に配設されたシャフト部42の先端にストリッパ43が形成され、サポートチューブ41の外側に筒部44がビス45で固定され、筒部44に複数のポット引上手段46が張り出すように取付けられているものがある。そして、ポット引上手段46は腕部46aと腕部46aの先端に固定された係合爪46bからなっている。複数のポット50が重ねて配置されている場合に、上側のポット50の内部51にポット引上手段46を挿入すると、図5に示すように、係合爪46bはポット50の側壁53の最も径が大きい部分に係合する。この状態でシャフト部42を引き上げることにより、ポット50を引き上げることができる。なお、シャフト部42のサポートチューブ41に対する位置を下げてストリッパ43によりポット50の底部52を押すことによりポット引上手段46からポット50を引き離すことができる(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3568806号公報(第2頁)
【特許文献2】特許第3568806号公報(第7頁、図9、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の第1の場合では、ポットの側壁部等を吸引するので、重ね合わされたポットからポットを1個ずつ取り出すときに、2個以上のポットが重なった状態で吸引されるという問題があった。
また、第2の場合でも、ポット引上手段46がポット50の側壁53を内部51から外方に押してポット50を引き上げるので、2個以上のポット50の側壁53がポット引上手段46により押されて重なった状態で、前記2個以上のポット50が同時に引き上げられる場合があるという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、重ねられたポット等の鉢を1個ずつ保持することができる鉢保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、植木鉢、ポット等の鉢を保持する鉢保持装置において、複数の吸引用開口部を同一平面上に配設し、各吸引用開口部に空気路(例えばパイプ、ホース等)を接続し、前記空気路はダクトに接続され、前記吸引用開口部を前記鉢の内部の底部に接触させた状態で前記ダクトの開口部から空気を吸引することにより、前記鉢を吸引して保持することを特徴とする鉢保持装置である。
これにより、同一平面上に配設した複数の吸引用開口部の各々が各々の鉢の内部の底部を吸引して保持するので、1つの吸引用開口部で1個の鉢の内部の底部を吸引して保持することができ、吸引用開口部の数に等しい鉢を同時に吸引して保持することができる。そして、この吸引はダクトの開口部から電気掃除機等により空気を吸引することにより行うことができる。また、吸引用開口部が同一平面上に配設されているので、ダンボール箱等に重ねて詰め込まれた同一平面に位置する複数の鉢を同時に吸引して保持することができる。
【0005】
さらに、請求項2記載の発明は、請求項1記載の鉢保持装置であって、前記吸引用開口部は、蛇腹式の可撓性筒状部の先端に形成され、前記蛇腹式の可撓性筒状部の基部は前記空気路に接続されていることを特徴とする鉢保持装置である。
これにより、前記吸引用開口部は、蛇腹式の可撓性筒状部の先端に形成されているので、平面上に並んだ複数の鉢の内部の底部の位置が多少不揃いであっても前記吸引用開口部の位置を鉢の内部の底部の位置に合わせることができる。
【0006】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の鉢保持装置であって、前記各吸引用開口部に前記鉢の内部の径より若干小さい径の張り出し部を付設したことを特徴とする鉢保持装置である。
これにより、前記各吸引用開口部に付設された前記鉢の内部の径より若干小さい径の張り出し部が吸引される鉢の側壁の位置を規制するので、吸引される鉢の底部および側壁の姿勢が前記吸引用開口部に対して傾くことを少なくすることができる。
【0007】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項1から3までのいずれかに記載の鉢保持装置であって、前記各吸引用開口部は基盤の下側に下向きに配設され、前記ダクトは前記基盤の上面に取付けられていることを特徴とする鉢保持装置である。
これにより、請求項1から3までのいずれかに記載の鉢保持装置において、吸引用開口部およびダクトを基盤に取付けることにより鉢保持装置を構成することができる。また、吸引用開口部が下向きであるので、鉢の内部の底部を吸引することが容易である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、同一平面上に並べられた複数の鉢を同時に吸引して保持した鉢保持装置を機械、手等で移動させることにより前記保持された複数の鉢を移動させてトレイ等に装填することができる。
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、平面上に並んだ複数の鉢の底部の位置が多少不揃いであっても、前記複数の鉢を吸引して保持することができる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果とともに、吸引される鉢の姿勢を保つことができる。
さらに、請求項4記載の発明によれば、請求項1から3までのいずれかに記載の発明の効果とともに、請求項1から3までのいずれかに記載の鉢保持装置を容易に構成することができる。また、前記基盤を機械、手等で移動させることにより鉢保持装置で保持した複数の鉢を移動させることができる。また、吸引用開口部が下向きであるので、鉢の底部を吸引して引上げることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る鉢保持装置を示し、図2は図1の鉢保持装置の底面を示し、図3は図1の鉢保持装置の使用状態を示す。
【0010】
図1に示すように、鉢保持装置10では、複数の吸引用開口部11(図2参照)を同一平面上に配設し、各吸引用開口部11に空気路12を接続し、空気路12はダクト13に接続されている。なお、空気路12はパイプ12aにホース12bを接続したものであり、パイプ12aは吸引用開口部11に接続され、ホース12bはダクト13に接続されている。なお、なお、ダクト13は2つの基部13a、13bおよび基部13a、13bに連結された連結部13cを備えている。連結部13cの上面には2つの孔13d、13eが形成され、連結部13cには横向きに筒状の開口部14が付設されている。
この孔13d、13eを指等で塞いで、図示しない電気掃除機の塵埃吸引用パイプをダクト13の筒状の開口部14に差し込んで接続した状態で、吸引用開口部11を鉢30の内部31の底部32に接触させて、ダクト13の筒状の開口部14から前記電気掃除機により空気を吸引することによって鉢30を吸引して保持する。なお、鉢30は、例えば植木鉢、ポット等である。さらに、前記孔13d、13eを塞いでいる状態を解除すると、鉢30が吸引用開口部11に吸引されなくなるので、鉢30を図示しないトレイ等に装填することができる。
【0011】
図3に示すように、吸引用開口部11は、開口部用部材としての蛇腹式の可撓性筒状部15の先端15aに形成され、蛇腹式の可撓性筒状部15の基部15bは空気路12のパイプ12aの図示下端部に接続されている。
また、各吸引用開口部11に鉢30の内部31の径より若干小さい径の張り出し部16が付設されている。張り出し部16は四方に張り出して凸状に湾曲した帯状体により形成されている。この帯状体の上端部および下端部はパイプ12aに固定されている。
また、各吸引用開口部11は板状の基盤17の下面17a側に下向きに配設され、パイプ12aの上端部は基盤17を貫通するように基盤17に固定されている。そして、ダクト13の両方の基部13a、13bは基盤17の上面17bに取付けられている。なお、基盤17には多数の孔17cが形成されている。この孔17cにより基盤17を軽くすることができる。
【0012】
以上の構成の鉢保持装置10は、以下の動作をする。
複数の吸引用開口部11の各々が各々の鉢30の内部31の底部32を吸引して保持するので、1つの吸引用開口部11で1個の鉢30の底部32を吸引して保持することができる。このため、吸引用開口部11の数に等しい数の鉢30を同時に吸引して保持することができる。そして、この吸引はダクト13の開口部14から電気掃除機等により空気を吸引することにより行うことができる。また、吸引用開口部11が同一平面上に配設されているので、図示しないダンボール箱等に重ねて詰め込まれた同一平面上に位置する複数の鉢30を同時に吸引して保持することができる。
【0013】
また、吸引用開口部11は、蛇腹式の可撓性筒状部15の先端に形成されているので、平面上に並んだ複数の鉢30の内部31の底部32の位置が多少不揃いであっても、吸引用開口部11の位置を鉢30の内部31の底部32の位置に合わせることができる。
また、各吸引用開口部11に付設された鉢30の内部31の径より若干小さい径の張り出し部16が吸引される鉢30の側壁33の位置を規制するので、吸引される鉢30の内部31の底部32および側壁33の姿勢が吸引用開口部11に対して傾くことを少なくすることができる。
また、吸引用開口部11が下向きであるので、鉢30の内部31の底部32を吸引することが容易である。さらに、鉢30を図示しないトレイに装填することも容易である。
【0014】
なお、上記実施の形態において、図2に示すように、吸引用開口部11の数は8列掛ける5行の40個であるが、これに限定されることなく、例えば、4列掛ける5行の20個、4列掛ける6行の24個等であってもよい。
また、ダクト13の孔13d、13eはなくてもよい。
また、図3に示すように、1つの吸引用開口部11で1つの鉢30を吸引しているが、これに限定されず、複数の吸引用開口部11で1つの鉢30を吸引するようにしてもよい。例えば4つの吸引用開口部11を並列に空気路12に接続し、この4つの吸引用開口部11で1つの鉢30の内部31の底部32を吸引するようにしてもよい。
また、図1に示すように、ダクト13は四角形筒であるが、これに限定されず、ダクト30を円筒にしてもよい。このようにすると、ダクト30を手で掴んで、鉢保持装置10を持ち上げることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る鉢保持装置を示す斜視図である。
【図2】図1の鉢保持装置の底面図である。
【図3】図1の鉢保持装置の使用状態を示す説明図である。
【図4】従来例の使用状態を示す断面図である。
【図5】従来例の使用状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 鉢保持装置
11 吸引用開口部
12 空気路
13 ダクト
14 開口部
15 蛇腹式の可撓性筒状部
15a 先端
15b 基部
16 張り出し部
17 基盤
17a 下面
17b 上面
30 鉢
31 内部
32 底部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植木鉢、ポット等の鉢を保持する鉢保持装置において、
複数の吸引用開口部を同一平面上に配設し、
各吸引用開口部に空気路を接続し、
前記空気路はダクトに接続され、
前記吸引用開口部を前記鉢の内部の底部に接触させた状態で前記ダクトの開口部から空気を吸引することにより、前記鉢を吸引して保持することを特徴とする鉢保持装置。
【請求項2】
請求項1記載の鉢保持装置であって、
前記吸引用開口部は、蛇腹式の可撓性筒状部の先端に形成され、前記蛇腹式の可撓性筒状部の基部は前記空気路に接続されていることを特徴とする鉢保持装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の鉢保持装置であって、
前記各吸引用開口部に前記鉢の内部の径より若干小さい径の張り出し部を付設したことを特徴とする鉢保持装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の鉢保持装置であって、
前記各吸引用開口部は基盤の下側に下向きに配設され、前記ダクトは前記基盤の上面に取付けられていることを特徴とする鉢保持装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−262746(P2006−262746A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83617(P2005−83617)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(593195875)兼弥産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】