説明

銀ナノ粒子の製造方法およびインク

【課題】環境への影響に配慮することができ、かつ、作業性に優れた銀ナノ粒子の製造方法およびインクを提供すること。
【解決手段】銀ナノ粒子の製造方法は、少なくとも水酸基を1以上有する脂肪族カルボン酸またはその塩を溶解させた水溶液を用意する工程と、前記水溶液と、硝酸銀と、クエン酸塩と、アミン化合物とを混合して、前記硝酸銀を還元する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ナノ粒子の製造方法およびインクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の配線や、電極を形成するために、銀微粒子が使用されている。
一般に金属微粒子の製造方法としては、CVD法や噴霧熱分解法などの気相法と、化学的な還元反応を利用した湿式法が知られているが、従来の湿式法によって製造した微粒子は凝集性が強く、単分散粒子が得られ難いため、凝集が少ない高純度の銀微粒子などは多くが気相法によって製造されていた。一方、気相法によって得た金属微粒子は単分散性に優れるが、製造コストが高く、かつ粒度制御が難しいと云う問題がある。そこで、分散性に優れた金属微粒子の湿式製造方法が試みられている。
【0003】
特許文献1には、粉末状の酸化銀と長鎖脂肪酸およびアミン化合物とをトルエン等の非極性溶媒中で撹拌加熱することによって銀微粒子を製造する方法が開示されている。ここでは、酸化銀の表面から銀イオンが脂肪酸塩として溶出しながら還元されて銀微粒子が生成し、生成した銀微粒子はその表面にアミン化合物が配位することにより分散安定化しているとしている。
また、特許文献2には、特定の保護剤の存在下、エタノール中で塩化銀を還元する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−25005号公報
【特許文献2】特開平10−265812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2では、多量の有機溶媒を使用するため、取り扱い性が良好でなく、また、環境への影響が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、少なくとも水酸基を1以上有する脂肪族カルボン酸またはその塩を水に溶解させた水溶液を用意する工程と、前記水溶液と、硝酸銀と、クエン酸塩と、アミン化合物とを混合して、前記硝酸銀を還元して銀ナノ粒子を得る工程とを含む銀ナノ粒子の製造方法が提供される。
【0007】
この発明によれば、水溶液中で硝酸銀を還元しており、多量の有機溶媒を使用せずに、銀ナノ粒子を得ることができる。したがって、環境への影響に配慮することができ、かつ、作業性に優れた製造方法となる。
【0008】
また、本発明によれば、上述した製造方法により製造された銀ナノ粒子と、前記銀ナノ粒子が分散した溶液とを有するインクジェット用インクも提供できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境への影響に配慮することができ、かつ、作業性に優れた銀ナノ粒子の製造方法およびインクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例2により得られた銀ナノ粒子の粒径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態の銀ナノ粒子の製造方法は、少なくとも水酸基を1以上有する脂肪族カルボン酸もしくはその塩を水に溶解させた水溶液を用意する工程と、前記水溶液と、硝酸銀と、クエン酸塩と、アミン化合物とを混合して、前記硝酸銀を還元して銀ナノ粒子を得る工程とを含む。
ここで、銀ナノ粒子とは、平均粒径(D50)がナノオーダーの粒子を意味するが、なかでも、平均粒径(D50)50nm以下であることが好ましい。平均粒径の下限値は、特に制限されないが、1nm以上であることが好ましい。
【0012】
(水溶液を用意する工程)
ここでは、少なくとも水酸基を1以上有する脂肪族カルボン酸もしくはその塩を水に溶解させて、水溶液(以下、水酸基を有する脂肪族カルボン酸等が溶解した水溶液という)を用意する。
水酸基を1以上有する脂肪族カルボン酸もしくはその塩は、銀ナノ粒子の分散剤として働く。
水酸基を有する脂肪族カルボン酸としては、水に溶解し、銀とキレートを形成できるものであればよく、たとえば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヘプトン酸、乳酸があげられる。
また、水酸基を有する脂肪族カルボン酸塩としては、上述したいずれかの脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩、具体的にはカリウム塩、ナトリウム塩等があげられる。
分散性の観点から、グルコン酸、グルコン酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩のいずれかを使用することが好ましい。
脂肪族カルボン酸や、脂肪族カルボン酸塩は、2種以上を併用してもよい。
以上のような脂肪族カルボン酸もしくはその塩を、水に溶解させる。このとき、加熱や冷却をせずに、室温で実施することが好ましい。このようにすることで、作業性に優れたものとなる。
なお、脂肪族カルボン酸や、脂肪族カルボン酸塩の使用量は、分散性の観点から、硝酸銀1モルに対し1.5モル〜3モルであることが好ましい。
【0013】
(硝酸銀を還元する工程)
次に、前記水溶液と、硝酸銀と、クエン酸塩と、アミン化合物とを混合する。
本発明では、銀ナノ粒子の原料として、硝酸銀を使用する。硝酸銀を使用することで、粒径の小さな銀ナノ粒子を得ることができる。
硝酸銀の還元剤として、クエン酸塩を使用する。また、触媒としてアミン化合物を使用する。
クエン酸塩は、水溶性の塩であれば、特に限定されず、クエン酸リチウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸二水素アンモニウム等があげられる。なかでも、溶解性の観点から、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素二アンモニウムのいずれかが好ましい。
クエン酸塩を水に溶解した後、前記水溶液に添加することが好ましい。
クエン酸塩の使用量は、反応速度および製造コストの観点から硝酸銀1モルに対し0.5モル〜3モルであることが好ましい。
なお、クエン酸塩として、異なるクエン酸塩を2種類以上併用してもよい。
【0014】
また、アミン化合物は、水溶性で水に溶解するものであれば、特に限定されず、リシン、エチルアミン、エタノールアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン等の2級アミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、イミダゾール、トリアゾール等があげられる。なかでも、小さな粒径の銀ナノ粒子を製造する観点から、ジメチルアミノエタノール、イミダゾールまたはトリエチルアミンを使用することが好ましい。また、アミン化合物の使用量は、反応速度を適度なものとし、かつ、得られる銀ナノ粒子の粒径を小さくするために、硝酸銀に対し、モル比で1/20以上、1/5以下であることが好ましい。
なお、アミン化合物として、異なるアミン化合物を2種類以上併用してもよい。
【0015】
アミン化合物を水に溶解した後、水酸基を有する脂肪族カルボン酸等が溶解した前記水溶液に添加することが好ましい。
本工程では、水酸基を有する脂肪族カルボン酸等が溶解した前記水溶液と、硝酸銀と、クエン酸塩と、アミン化合物とを混合すればよい。
ただし、水酸基を有する脂肪族カルボン酸等が溶解した前記水溶液に対し、硝酸銀を添加した後、アミン化合物を水に溶解した溶液と、クエン酸塩を水に溶解した溶液と添加することが好ましい。このようにすることで、銀ナノ粒子の凝集を抑制することができ、粒径を制御することができる。
アミン化合物を水に溶解した溶液と、クエン酸塩を水に溶解した溶液とを同時に添加してもよく、また、クエン酸塩を水に溶解した溶液を添加した後、アミン化合物を水に溶解した溶液を添加してもよい。さらに、アミン化合物を水に溶解した溶液を添加した後、クエン酸塩を水に溶解した溶液を添加してもよい。
また、クエン酸塩を水に溶解した溶液、アミン化合物を水に溶解した溶液の添加方法としては、水酸基を有する脂肪族カルボン酸等が溶解した前記水溶液に対して滴下することが好ましい。このようにすることで、得られる銀ナノ粒子の平均粒径を小さくすることができる。また、クエン酸塩を水に溶解した溶液、アミン化合物を水に溶解した溶液の滴下時間を比較的長くすることで、得られる銀ナノ粒子の平均粒径を小さくすることができる。
【0016】
以上のようにして、全ての原料を混合した後、1〜2時間程度攪拌して、反応液を得る。攪拌は、室温で実施することができる。
なお、反応液中の硝酸銀濃度は、0.01モル/l以上、0.1モル/l以下が好ましい。このように比較的薄い濃度とすることで、得られる銀ナノ粒子の平均粒径を小さく制御することが可能となる。
本発明では、上述した全ての工程を10℃以上、50℃以下で実施することができ、さらには、特に加熱や冷却をすることなく、室温で実施することが好ましい。このようにすることで、作業性に優れた製造方法となる。なお、50℃以下とすることで、反応速度を抑制し、平均粒径の小さい銀ナノ粒子を得ることができる。また、10℃以上とすることで、反応速度の低下を抑制することができる。
また、本発明では、上述した全ての工程で、特に激しい発熱はないため、作業性に優れた製造方法となる。
さらに、本発明の製造方法は、多量の有機溶媒を使用しないため、環境への影響に配慮することができ、かつ、作業性に優れた製造方法である。
【0017】
以上のようにして得られた反応液を遠心分離し、上澄み液を捨てる。そして、得られた沈殿物に水を加えて再度遠心分離し、上澄み液を捨てる。この作業を繰り返すことで、銀ナノ粒子が分散した水分散液を得ることができる。本発明では、クエン酸塩、アミン化合物といった水溶性の原料を使用しているため、遠心分離後の沈殿物中には、ほとんど不純物が混入していないと考えられる。
また、水分散液中では、銀ナノ粒子は、ほとんど凝集しておらず、銀ナノ粒子の分散性がよい。銀ナノ粒子の分散性がよい理由としては、以下のことが考えられる。銀ナノ粒子に対し、脂肪族カルボン酸や脂肪族カルボン酸塩の水酸基、カルボキシル基(あるいはカルボキシル残基)が配位して、キレートを形成していると考えられる。これにより、銀ナノ粒子の分散性が良好となっていると推測される。
また、銀ナノ粒子の平均粒径(D50)は、50nm以下、1nm以上となる。なかでも、銀ナノ粒子の平均粒径(D50)は、10nm以下、1nm以上であることが好ましい。さらに、銀ナノ粒子の形状は、球形となる。
なお、平均粒径(D50)は、銀ナノ粒子の一次粒子の粒径を200個をTEM像で測定し、小粒径側からの累積個数が50%となる粒径(D50)を平均粒径(メディアン径D50)とする。
【0018】
以上のようにして得られた銀ナノ粒子の水分散液は、インクジェット用のインクに加工される。たとえば、銀ナノ粒子の水分散液に対し、アルコール、たとえばエタノールを混合することで、インクジェット用のインクを得ることができる。
また、以上のようにして得られたインクや銀ナノ粒子の水分散液を塗布した後、110℃以上、300℃以下で30分以上焼成し、さらに、水等の溶液で洗浄することで導電性を有する膜を得ることができる。
なお、焼成温度は、110℃以上、180℃以下であることが好ましく、このように比較的低温で焼成しても、導電性の膜を得ることができる。したがって、たとえば、ポリエチレンテレフタレート等の比較的耐熱性の低い基材上に、導電性の膜を形成することが可能となる。
【0019】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0020】
次に、本発明の実施例について説明する。
なお、各実施例において、銀ナノ粒子の平均粒径を計測しているが、計測方法は、以下の通りである。
(平均粒径の計測方法)
各実施例にて得られた銀ナノ粒子の水分散液を乾燥させて、TEM(透過型電子顕微鏡)像を観察した。装置としては、JEOL JEM2010を使用した。銀ナノ粒子の一次粒子の粒径を200個測定し、小粒径側からの累積個数が50%となる粒径(D50)を平均粒径(メディアン径D50)とした。
【0021】
(実施例1)
グルコン酸ナトリウム1gを蒸留水20mlに溶解して水溶液を得た。次に、硝酸銀0.5gを前記水溶液に添加した。その後、硝酸銀、グルコン酸ナトリウムを含有する前記水溶液に対し、クエン酸ナトリウム0.88gを蒸留水20mlに溶解した溶液を、室温、20分間で滴下した。滴下後、ジメチルアミノエタノール0.027gを0.5mlの蒸留水に溶解した溶液を滴下し、1時間撹拌した。なお、攪拌には、AS ONE社製のウォーターバススターラーを使用した。
得られた反応液を5000rpm、1分間遠心し、上澄みを捨て、沈殿物に蒸留水を加えて、5000rpm、2分間遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物に、さらに、もう一度遠心操作を行い、沈殿物を水に再分散させることで、銀ナノ粒子の水分散液を得た。以上の工程はすべて室温で実施した。
銀ナノ粒子の水分散液において、銀ナノ粒子は凝集しておらず、分散性に優れることが確認できた。また、得られた銀ナノ粒子をTEMで観察したところ、球形であることがわかった。平均粒径は5nmである。粒径分布が非常に狭く単分散であり、粒径がほぼ均一であることがわかった。
得られた水分散液をフィルムに塗布して、大気圧下で大気中150℃1時間焼成し、所定時間、水に浸漬した。その後、水を乾燥させて抵抗率を測定した。結果を表1に示す。浸漬時間が30分以上となると、導電性を示すことがわかる。
【0022】
【表1】

【0023】
また、得られた水分散液をフィルムに塗布して、大気圧下、大気中で表2に示したようにそれぞれ焼成し、所定時間、0.1モル/lの水酸化カリウム水溶液に浸漬した。その後、水で洗浄し、乾燥させて抵抗率を測定した。結果を表2に示す。導電性を示すことがわかる。
【0024】
【表2】

【0025】
(実施例2)
グルコン酸ナトリウム2gを蒸留水20mlに溶解して水溶液を得た。次に、硝酸銀0.5gを前記水溶液に添加した。その後、硝酸銀、グルコン酸ナトリウムを含有する前記水溶液に対し、クエン酸ナトリウム0.88gを蒸留水20mlに溶解した溶液を、室温、20分間で滴下した。滴下後、ジメチルアミノエタノール0.027gを0.5mlの蒸留水に溶解した溶液を滴下し、1時間撹拌した。なお、攪拌には、AS ONE社製のウォーターバススターラーを使用した。
得られた反応液を5000rpm、1分間遠心し、上澄みを捨て、沈殿物に蒸留水を加えて、5000rpm、2分間遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物に、さらに、もう一度遠心操作を行い、沈殿物を水に再分散させることで、銀ナノ粒子の水分散液を得た。以上の工程はすべて室温で実施した。
また、得られた銀ナノ粒子の平均粒径は6nmであり、粒径分布が非常に狭く単分散であり、粒径がほぼ均一であることがわかった。図1に得られた銀ナノ粒子の粒径分布を示す。5.61〜7.53nmの範囲でピークが観測され、非常に狭い分布であることがわかる。装置としては、Malvern Instruments社製の Zetasizer NanoSeriesを使用した。
さらに、銀ナノ粒子の水分散液において、銀ナノ粒子は凝集しておらず、分散性に優れることも確認できた。また、得られた銀ナノ粒子をTEMで観察したところ、球形であることがわかった。
得られた水分散液をフィルムに塗布して、表3に示したように大気中、大気圧下で焼成し、所定時間、0.1モル/lの水酸化カリウム水溶液に浸漬した。その後、乾燥させて抵抗率を測定した。結果を表3に示す。いずれも、抵抗率が低く、導電性があることがわかる。
【0026】
【表3】

【0027】
(実施例3)
DL−リンゴ酸二ナトリウム1gを蒸留水20mlに溶解した。次に、硝酸銀0.5gを前記水溶液に添加した。このようにして得られた溶液に、クエン酸ナトリウム0.88gを蒸留水20mlに溶解した溶液を、室温、20分間で滴下した。滴下後、ジメチルアミノエタノール0.027gを0.5mlの蒸留水に溶解した溶液を滴下し、1時間撹拌した。なお、攪拌には、AS ONE社製のウォーターバススターラーを使用した。
得られた反応液を5000rpm、1分間遠心し、上澄みを捨て、沈殿物に蒸留水を加えて、5000rpm、2分間遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物に、さらに、もう一度遠心操作を行い、沈殿物を水に再分散させることで、銀ナノ粒子の水分散液を得た。以上の工程はすべて室温で実施した。
得られた銀ナノ粒子の平均粒径は5nmであり、粒径分布が非常に狭く単分散であり、粒径がほぼ均一であることがわかった。さらに、銀ナノ粒子の水分散液において、銀ナノ粒子は凝集しておらず、分散性に優れることも確認できた。また、得られた銀ナノ粒子をTEMで観察したところ、球形であることがわかった。
得られた水分散液をフィルムに塗布して、表4に示したように大気中、大気圧下で焼成し、所定時間、水に浸漬した。その後、水を乾燥させて抵抗率を測定した。結果を表4に示す。浸漬時間が30分以上となると、導電性を示すことがわかる。
【0028】
【表4】

【0029】
(実施例4)
グルコン酸ナトリウム1gを蒸留水20mlに溶解して水溶液を得た。次に、硝酸銀0.5gを前記水溶液に添加した。その後、硝酸銀、グルコン酸ナトリウムを含有する前記水溶液に対し、クエン酸ナトリウム0.88gを蒸留水20mlに溶解した溶液を、室温、20分間で滴下した。滴下後、イミダゾール0.02gを0.5mlの蒸留水に溶解した溶液を滴下し、1時間撹拌した。なお、攪拌には、AS ONE社製のウォーターバススターラーを使用した。
得られた反応液を5000rpm、1分間遠心し、上澄みを捨て、沈殿物に蒸留水を加えて、5000rpm、2分間遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物に、さらに、もう一度遠心操作を行い、沈殿物を水に再分散させることで、銀ナノ粒子の水分散液を得た。以上の工程はすべて室温で実施した。
また、得られた銀ナノ粒子の平均粒径は10nmであり、粒径分布が非常に狭く単分散であり、粒径がほぼ均一であることがわかった。さらに、銀ナノ粒子の水分散液において、銀ナノ粒子は凝集しておらず、分散性に優れることも確認できた。また、得られた銀ナノ粒子をTEMで観察したところ、球形であることがわかった。
【0030】
(実施例5)
グルコン酸ナトリウム1gを蒸留水20mlに溶解して水溶液を得た。次に、硝酸銀0.5gを前記水溶液に添加した。その後、硝酸銀、グルコン酸ナトリウムを含有する前記水溶液に対し、クエン酸ナトリウム0.88gを蒸留水20mlに溶解した溶液を、室温、20分間で滴下した。滴下後、トリエチルアミン0.03gを0.5mlの蒸留水に溶解した溶液を滴下し、1時間撹拌した。なお、攪拌には、AS ONE社製のウォーターバススターラーを使用した。
得られた反応液を5000rpm、1分間遠心し、上澄みを捨て、沈殿物に蒸留水を加えて、5000rpm、2分間遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物に、さらに、もう一度遠心操作を行い、沈殿物を水に再分散させることで、銀ナノ粒子の水分散液を得た。以上の工程はすべて室温で実施した。
また、得られた銀ナノ粒子の平均粒径は5nmであり、粒径分布が非常に狭く単分散であり、粒径がほぼ均一であることがわかった。さらに、銀ナノ粒子の水分散液において、銀ナノ粒子は凝集しておらず、分散性に優れることも確認できた。また、得られた銀ナノ粒子をTEMで観察したところ、球形であることがわかった。
【0031】
(実施例6)
グルコン酸ナトリウム1gを蒸留水20mlに溶解して水溶液を得た。次に、硝酸銀0.5gを前記水溶液に添加した。その後、硝酸銀、グルコン酸ナトリウムを含有する前記水溶液に対し、クエン酸水素二アンモニウム0.68gを蒸留水20mlに溶解した溶液を、室温、20分間で滴下した。滴下後、イミダゾール0.02gを0.5mlの蒸留水に溶解した溶液を滴下し、1時間撹拌した。なお、攪拌には、AS ONE社製のウォーターバススターラーを使用した。
得られた反応液を5000rpm、1分間遠心し、上澄みを捨て、沈殿物に蒸留水を加えて、5000rpm、2分間遠心し、沈殿物を得た。この沈殿物に、さらに、もう一度遠心操作を行い、沈殿物を水に再分散させることで、銀ナノ粒子の水分散液を得た。以上の工程はすべて室温で実施した。
また、得られた銀ナノ粒子の平均粒径は4nmであり、粒径分布が非常に狭く単分散であり、粒径がほぼ均一であることがわかった。さらに、銀ナノ粒子の水分散液において、銀ナノ粒子は凝集しておらず、分散性に優れることも確認できた。また、得られた銀ナノ粒子をTEMで観察したところ、球形であることがわかった。
【0032】
なお、実施例1〜6で得られた銀ナノ粒子(焼成前)について、UV可視吸収分光法で計測したところ、400nm付近に吸収が見られた。これは、銀ナノ粒子のプラズモン共鳴吸収である。
また、実施例1〜6で得られた銀ナノ粒子(焼成前)についてEDS(エネルギー分散型X線分光分析)を用いて同定を行ったところ、3keV付近に銀ナノ粒子のピークを示し、銀以外の金属成分は観測されなかった。
また、実施例1〜6で得られた銀ナノ粒子の水分散液を室温で風乾後、水を加えて攪拌することで、再分散した銀ナノ粒子を得ることができた。銀ナノ粒子の再分散性が非常に良好であることがわかった。
また、実施例1〜6で得られた銀ナノ粒子の水分散液(攪拌直後の沈降が生じていないもの)を放置し、30分経過した時点で観察したところ、銀ナノ粒子が沈降していないことが確認された。
実施例1〜6で得られた銀ナノ粒子の分散性は、特許文献1,2で開示されたものよりも良好である。
【0033】
さらに、実施例1〜3を参照すると、焼成し、水や、水酸化カリウム水溶液で洗浄することで、導電性を有する膜を得ることができることがわかる。
これに加え、実施例1、3を参照すると、150℃〜160℃の焼成を行うことで、導電性を有する膜が得られていることがわかる。このように比較的低温で焼成することで、導電性の膜を得ることができるので、たとえば、ポリエチレンテレフタレート等の比較的耐熱性の低い基材上に、導電性の膜を形成することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水酸基を1以上有する脂肪族カルボン酸もしくはその塩を水に溶解させた水溶液を用意する工程と、
前記水溶液と、硝酸銀と、クエン酸塩と、アミン化合物とを混合して、前記硝酸銀を還元して、銀ナノ粒子を得る工程とを含む銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の銀ナノ粒子の製造方法において、
前記脂肪族カルボン酸もしくはその塩は、銀ナノ粒子の分散剤であり、
前記クエン酸塩は、前記硝酸銀を還元する還元剤である銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の銀ナノ粒子の製造方法において、
前記水溶液を用意する工程では、前記脂肪族カルボン酸もしくはその塩として、グルコン酸もしくはグルコン酸塩、または、リンゴ酸もしくはリンゴ酸塩を使用する銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の銀ナノ粒子の製造方法において、
前記アミン化合物はジメチルアミノエタノール、イミダゾールまたはトリエチルアミンである銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の銀ナノ粒子の製造方法において、
前記クエン酸塩が、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸水素二アンモニウムである銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の銀ナノ粒子の製造方法において、
前記銀ナノ粒子の平均粒径(D50)が、50nm以下、1nm以上である銀ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法により製造された銀ナノ粒子と、前記銀ナノ粒子が分散した溶液とを有するインクジェット用インク。

【図1】
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【公開番号】特開2012−251222(P2012−251222A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125339(P2011−125339)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】