説明

銀粒子の清浄化方法及び該方法により清浄化された銀粒子

【課題】電子機器材料として好適な微細な銀粒子について、その表面から有機物を効果的に洗浄除去し、従来よりも更に不純物炭素量を低減し得る銀粒子の清浄化方法及び該方法により有機物が除去され、清浄化された銀粒子を提供する。
【解決手段】銀アンミン錯体をヒドロキノンで還元することにより析出させた銀粒子に、酸素分圧10〜5000Pa、温度100〜250℃で30〜800分間保持する加熱処理を施して銀粒子の表面から有機物を除去する。この銀粒子の不純物炭素量は、単位表面積当たり0.5mg/m2以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀粒子の表面から有機物を除去する銀粒子の清浄化方法及び該方法により有機物が除去され、清浄化された銀粒子に関する。更に詳しくは、電子デバイスの配線材料や電極材料となるペースト成分として好適な銀粒子の表面から有機物を除去し、清浄化する方法及び該方法により有機物が除去され、有機不純物量が低減し清浄化された銀粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化を図るために、電子デバイスの小型化と高密度化が要請されており、配線及び電極のファイン化を達成するために、これらを形成するペースト材料に用いられる銀粒子についても、より微細で高分散性の銀粒子が求められている。また、電子機器の高性能化の要求に応じ、不純物のより少ない高品位のものが要求されている。
【0003】
従来、これらの電子機器や電子デバイスを形成するペースト材料に用いられる銀粒子を製造する方法として、銀塩のアンミン錯体を還元して銀粒子を沈澱させ、これを洗浄、乾燥して平均粒径が数μm程度の銀粒子を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、銀アンミン錯体を還元して銀粒子を析出させる際に、還元時の液温を25〜60℃に調整して微細な銀粒子を製造する方法である。
【0004】
また、硝酸銀溶液にアンモニア水を添加して銀アンミン錯体溶液を調製した後、還元剤を添加する際に、還元剤を20秒以内に混合することによってBET比表面積0.25m2/g以上の微細な銀粒子を析出させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、銀アンミン錯体水溶液が流れる流路の途中に有機還元剤溶液を合流させることによって、管路内で銀を還元して結晶子径の小さい微粒銀粉を製造する方法が知られている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照。)。この特許文献4の発明では、析出させた微粒銀粉を、過剰のアルコールにより洗浄することによって、不純物である炭素含有量を0.25質量%以下としている。また、析出させた銀微粒子を水洗した後、更にアルカリ液、水溶性強還元液又はアミド系溶剤を用いて薬液洗浄をすることにより、不純物炭素量が単位表面積当たり2.0mg/m2以下の銀微粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−134513号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2001−107101号公報(請求項2,4)
【特許文献3】特開2005−48236号公報(請求項4)
【特許文献4】特開2005−48237号公報(請求項3,4、明細書の段落[0020]及び段落[0032])
【特許文献5】特開2008−297589号公報(請求項1及び請求項2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特許文献1〜3に示された方法により製造された銀粒子では、洗浄処理後においても有機物の汚れが残留し、この汚れに基づく少量の炭素含有量が認められる。また、上記特許文献4,5で開示されている洗浄処理を行えば、ある程度は、炭素含有量を低減させることができるものの、半導体材料等の用途としては、更に不純物である炭素の含有量を低減させる必要がある。
【0007】
本発明の目的は、電子機器材料として好適な微細な銀粒子について、その表面から有機物を効果的に洗浄除去し、従来よりも更に不純物炭素量を低減し得る銀粒子の清浄化方法を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、表面から有機物が十分に洗浄除去され、従来よりも更に不純物炭素量が低減された銀粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、銀アンミン錯体をヒドロキノンで還元することにより析出させた銀粒子に、酸素分圧10〜5000Pa、温度100〜250℃で30〜800分間保持する加熱処理を施して銀粒子の表面から有機物を除去する銀粒子の清浄化方法である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく方法により表面から有機物が除去された銀粒子であって、銀粒子の不純物炭素量が単位表面積当たり0.5mg/m2以下である清浄化された銀粒子である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の観点の清浄化方法では、銀アンミン錯体をヒドロキノンで還元することにより析出させた銀粒子に、酸素分圧10〜5000Pa、温度100〜250℃で30〜800分間保持する加熱処理を施すことにより、粒子同士の焼結による大粒径化を防止しつつ、従来の洗浄方法では除去されずに銀粒子の表面に残留していた有機物を十分に除去し、不純物炭素量をより低減させることができる。
【0012】
本発明の第2の観点の銀粒子では、本発明の清浄化方法により、その表面から有機物が除去されているため、単位表面積当たり0.5mg/m2以下という、半導体材料等の用途としても十分な不純物炭素量を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明を実施するための形態を説明する。銀粒子の製造は、一般に、銀イオン溶液に還元剤を添加して銀粒子を還元析出させることによる。本発明の銀粒子の清浄化方法を効果的に適用し得る銀粒子は、ヒドロキノン等の有機系の還元剤を用いて、銀イオン溶液中の銀アンミン錯体を還元し析出させた銀粒子である。還元剤としてヒドロキノンを用いる銀粒子の製造方法では、還元剤であるヒドロキノン自身が、銀アンミン錯体を還元することによって酸化され、これによって発生したベンゾキノンが不純物として銀粒子の表面に有機物の汚れとして付着する。本発明は、この有機物を銀粒子の表面から十分に除去し、不純物炭素量をより低減させるものである。還元剤としてヒドロキノンを用いる製造方法によって析出させた銀粒子であれば、これらの例に限定されることなく本発明の清浄化方法を効果的に適用することができるが、その製造方法の例を以下に示す。
【0014】
第1の方法は、硝酸銀溶液等の銀イオン溶液にアンモニア水を添加して銀アンミン錯体溶液を調製し、これに還元剤であるヒドロキノンを溶解させた還元剤溶液を加えて銀粒子を還元析出させる方法である。
【0015】
第2の方法は、上記第1の方法を改良した製造方法であり、還元剤溶液にアルカリを添加し、該還元剤溶液の酸化還元電位の安定域において、該還元剤溶液と銀アンミン錯体溶液とを混合する方法である。この方法によれば、平均粒径0.05〜1.0μm、結晶子径20nm〜150nmの銀粒子を効率よく析出させることができる。なお、還元剤溶液の酸化還元電位の安定域とは、該酸化還元電位の極小値に至る直前の領域における極小値より0.02V高い酸化還元電位から極小値を経て極小値以降の定常値の範囲を含む領域である。
【0016】
第3の方法は、上記第1の方法を改良した製造方法であり、互いに斜め下方に向かって相対向する2つのノズルから、銀アンミン錯体水溶液と還元剤溶液とをそれぞれ別々に噴射し、開放空間においてこれらを衝突混合させて銀アンミン錯体を還元する方法である。この方法によれば、平均粒子径0.08μm〜1.0μm、結晶子径20nm〜150nmであって、粒子径5μm以上の粗大粒子を含まない銀粒子を得ることができる。
【0017】
第4の方法は、上記第1の方法を改良した製造方法であり、銀アンミン錯体溶液に、ハロゲンイオンの存在下で、還元剤溶液を添加して銀アンミン錯体を還元し、微細な銀粒子を析出させる方法である。この方法では、例えば、銀に対するヨウ素のモル比(I/Ag)を1.0×10-7〜1.8×10-6に調整して平均粒径1.5〜0.5μmの銀粒子を析出させることができる。また、上記銀ヨウ素モル比を1.8×10-6〜3.0×10-5に調整して平均粒径0.5〜0.15μmの銀粒子を析出させることができる。また、上記銀ヨウ素モル比を3.0×10-5〜1.5×10-3に調整して平均粒径0.15〜0.08μmの銀粒子を析出させることができる。
【0018】
第5の方法は、上記第1の方法を改良した製造方法であり、銀ナノ粒子を添加して銀アンミン錯体を還元することにより、微細な銀粒子を析出させる方法である。この方法では、例えば、銀イオンの個数に対するナノ粒子の個数の比を5.0×10-7〜3.0×10-6に調整して平均粒径1.5〜0.5μmの銀微粒子を析出させることができる。また、上記銀イオン銀ナノ粒子比を3.0×10-6〜2.5×10-5に調整して平均粒径0.5〜0.1μmの銀粒子を析出させることができる。また、上記銀イオン銀ナノ粒子比を2.5×10-5〜1.5×10-4に調整して平均粒径0.1〜0.02μmの銀粒子を析出させることができる。
【0019】
第6の方法は、上記第1の方法を改良した製造方法であり、主還元剤と、主還元剤より還元力の強い副還元剤とを併用し、少量の副還元剤の存在下で主還元剤を加えて銀アンミン錯体を還元し、微細な銀粒子を析出させる方法である。この方法では、例えば、銀イオン溶液としてアンモニア水を加えた硝酸銀溶液を用い、主還元剤としてヒドロキノン液を用い、副還元剤としてヒドラジンを用いる。そして、銀濃度に対するヒドラジンのモル比(銀ヒドラジン比:N22/Ag)を2.5×10-8〜3.0×10-5に調整して平均粒径1.5〜0.5μmの銀粒子を析出させることができる。また、上記銀ヒドラジン比を3.0×10-5〜4.2×10-2に調整して平均粒径0.5〜0.1μmの銀粒子を析出させることができる。更に、上記銀ヒドラジン比を4.2×10-2〜5.0×10-1に調整して平均粒径0.1〜0.05μmの銀粒子を析出させることができる。これら第1〜6の方法では、いずれもヒドロキノンを還元剤として使用しており、本発明の清浄化方法を効果的に適用できる。
【0020】
次いで、上記製造方法等によって析出した銀粒子は、その表面に付着する不純物等を洗浄除去する湿式による洗浄工程に付される。この洗浄工程では、先ず、析出した銀粒子を固液分離し、これを水、アルカリ液、水溶液強還元液又はアミド系溶剤を用いて洗浄する。具体的には、例えば、析出した銀粒子の分散液を遠心分離して上澄み液を除去した後に、洗浄液を加えて振盪洗浄し、更にこれを遠心分離して上澄み液を除去する洗浄操作を数サイクル、例えば5サイクル前後繰り返し行い、上澄み液が無色透明になるまで十分に洗浄する。
【0021】
上記湿式による洗浄工程に続いて、本発明の清浄化方法を行う。洗浄後の銀粉末を加熱処理炉に入れ、ここに酸素分圧を10〜5000Paの範囲に制御した気体を連続的に導入しながら、温度100〜250℃で30〜800分間保持する。これにより、湿式による上記洗浄工程では、除去しきれなかった銀粒子の表面に有機物の汚れとして残留するベンゾキノンを十分に除去することができ、不純物炭素量をより低減させることができる。製造される銀粒子は、非常に微細な粒子であるため、通常の加熱処理では、この加熱処理によって粒子同士が焼結することがある。そのため、銀粒子の表面に残留する有機物と酸素の反応による発熱量を抑制しながら、所定の条件で行わなければならない。酸素分圧を上記範囲に限定したのは、酸素分圧が10Pa未満でも除去効果を発現するが、酸素分圧が低すぎると長時間の加熱処理が必要となり、時間及び加熱処理にかかるエネルギーに無駄が生じるからである。一方、5000Paを超えると、銀粒子の表面に残留する有機物と酸素の反応による発熱により、粒子同士の焼結が開始してしまい、当初の微細な粒径を維持できず大粒径化する不具合が生じる。また、加熱処理の温度を上記範囲に限定したのは、温度が100℃未満では、有機物と酸素の反応が進行せずに銀粒子の表面に残留する有機物を十分に除去することができないからである。一方、250℃を超えると、粒子同士の焼結が開始してしまい、当初の微細な粒径を維持できずに大粒径化する不具合が生じる。また、保持時間を上記範囲に限定したのは、保持時間が30分未満では、清浄化が不十分であり、800分を超えても清浄効果が変わらないからである。酸素分圧、加熱処理の温度及び保持時間を上記範囲の中で調整することで、より有機物の少ない高品位の銀粒子を得ることができる。例えば、酸素分圧が上記範囲の中で低いときには、温度を高温にし、かつ長時間保持する。また、酸素分圧が上記範囲の中で高いときには、温度を低温にし、かつ短時間保持する。このうち、酸素分圧100〜1000Pa、温度150〜250℃で60〜300分間保持するのが好ましい。本発明の清浄化方法を実施するための装置については、加熱処理の際の条件を上記のように設定できれば特に限定されない。また、加熱処理中の酸素分圧は、窒素又はアルゴン等の活性の低い気体を酸素と混合することで制御することができる。
【0022】
水を使用した場合の上記湿式による洗浄工程後の銀粒子では、単位表面積(BET比表面積)当たりの不純物炭素量は2.2〜5mg/m2程度であり、アルカリ液、水溶性強還元液、アミド系溶剤を使用した場合では、0.6〜2.0mg/m2程度である。一方、従来の湿式による洗浄工程に続いて、本発明の清浄化方法を行えば、湿式による洗浄工程では除去しきれなかった銀粒子の表面に有機物の汚れとして残留するベンゾキノンを十分に除去することができる。これにより、不純物炭素量が単位表面積当たり0.5mg/m2以下の高品位の銀粒子を得ることができる。
【実施例】
【0023】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0024】
<実施例1>
先ず、銀アンミン錯体をヒドロキノンで還元することにより析出させた銀粒子を固液分離し、これを水により洗浄した銀粒子(体積平均粒径0.8μm、BET比表面積1.3m2/g、単位表面積当たりの不純物炭素量2.4mg/m2)50gを、底面が100mm×100mmで高さが25mmのアルミナ製角形るつぼに敷き詰め、ガスを導入できる電気炉(炉内容積500mL)内に搬入した。次に、この電気炉内に導入される気体の酸素分圧が10Paとなるよう調整した窒素との混合気体を5000mL/分で導入し、10分間保持した。
【0025】
次いで、混合気体の導入を継続し、電気炉内に導入される気体の酸素分圧を10Paに維持しながら、電気炉内の温度を150℃まで昇温させ、この温度で600分間保持する加熱処理を施した。その後、電気炉の加熱及び混合気体の導入を停止し、電気炉内が40℃以下になるまで放置して冷却した。この加熱処理による清浄化後の銀粉末を実施例1とした。
【0026】
<実施例2>
酸素分圧を100Pa、混合気体の導入量を1000mL/分、昇温後の保持時間を300分としたこと以外は、実施例1と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例2とした。
【0027】
<実施例3>
酸素分圧を1000Pa、混合気体の導入量を100mL/分、昇温後の保持時間を300分としたこと以外は、実施例1と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例3とした。
【0028】
<実施例4>
酸素分圧を5000Pa、混合気体の導入量を100mL/分、昇温後の保持時間を60分としたこと以外は、実施例1と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例4とした。
【0029】
<実施例5>
酸素分圧を500Pa、処理温度を100℃、混合気体の導入量を500mL/分、昇温後の保持時間を120分としたこと以外は、実施例1と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例5とした。
【0030】
<実施例6>
処理温度を150℃としたこと以外は、実施例5と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例6とした。
【0031】
<実施例7>
処理温度を200℃としたこと以外は、実施例5と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例7とした。
【0032】
<実施例8>
処理温度を250℃としたこと以外は、実施例5と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例8とした。
【0033】
<実施例9>
混合気体の導入量を2000mL/分、昇温後の保持時間を30分としたこと以外は、実施例6と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例9とした。
【0034】
<実施例10>
混合気体の導入量を100mL/分、昇温後の保持時間を800分としたこと以外は、実施例6と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を実施例10とした。
【0035】
<比較例1>
酸素分圧を5Pa、昇温後の保持時間を800分としたこと以外は、実施例6と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を比較例1とした。
【0036】
<比較例2>
酸素分圧を7500Paとしたこと以外は、実施例4と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を比較例2とした。
【0037】
<比較例3>
処理温度を50℃としたこと以外は、実施例6と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を比較例3とした。
【0038】
<比較例4>
処理温度を300℃としたこと以外は、実施例6と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を比較例4とした。
【0039】
<比較例5>
混合気体の導入量を5000mL/分、昇温後の保持時間を20分としたこと以外は、実施例6と同様に、加熱処理を施して銀粒子の清浄化を行った。この清浄化後の銀粉末を比較例5とした。
【0040】
<比較試験及び評価>
実施例1〜10及び比較例1〜5の清浄化後の銀粉末について、これらの銀粉末に含まれる銀粒子の単位表面積(BET比表面積)当たりの不純物炭素量をそれぞれ測定した。その結果を以下の表1に示す。なお、炭素量の測定は、炭素分析装置(堀場製作所製 EMIA−110)を用いて測定した。具体的には、長さ13.5mm×幅10mm×高さ80mmのアルミナ製燃焼ボートに、実施例1〜10及び比較例1〜5の銀粉末、約0.5gをそれぞれ1mg精度で量りとる。これを1000℃の管状炉内で酸素を導入しながら、60秒間加熱処理し、炭素成分を燃焼しガス化させる。ガス化した炭素を赤外線吸収法により定量し、試料に含まれる炭素量を求めるものである。
【0041】
また、実施例1〜10及び比較例1〜5の清浄化後の銀粉末について、粒子同士の焼結により粗大化した粒子の有無を評価した。具体的には、走査電子顕微鏡(SEM)により銀粉末を観察し、得られた顕微鏡写真の画像において、目視により判断した。
【0042】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1〜10及び比較例1〜5を比較すると、実施例1〜10では、いずれも炭素量が単位表面積当たり0.5mg/m2以下であり、また、粒子同士の焼結によって粗大化した粒子も存在しなかった。このことから、本発明の銀粒子の清浄化方法が効果的であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の銀粒子の清浄化方法は、小型化と高密度化が要請されている電子機器、電子デバイスの配線及び電極等を形成するためのペースト材料に好適に用いられる銀粒子の有機不純物の除去に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀アンミン錯体をヒドロキノンで還元することにより析出させた銀粒子に、酸素分圧10〜5000Pa、温度100〜250℃で30〜800分間保持する加熱処理を施して前記銀粒子の表面から有機物を除去する銀粒子の清浄化方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法により表面から有機物が除去された銀粒子であって、前記銀粒子の不純物炭素量が単位表面積当たり0.5mg/m2以下である清浄化された銀粒子。

【公開番号】特開2011−58055(P2011−58055A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209544(P2009−209544)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】