説明

鋳造用金型

【課題】製品の突出部において鋳巣が発生することを抑制する鋳造用金型1を提供する。
【解決手段】製品を成形するキャビティを形成する成形面20を有する鋳造用金型1であって、成形面20には、製品の突出部を成形する凹部2と、凹部2の底面5における溶湯の流れ方向に沿って、底面5から製品側に突出する複数のリブ6とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、突出部の壁面と本体部とを複数のリブによって連結させて、鋳造を行う場合にはリブを通して突出部へ溶湯を注入し、突出部の先端側まで溶湯が回りやすくするものが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−130643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の発明では、鋳造時に混入したエアーが突出部の先端側に残り、突出部に鋳巣が生じる、といった問題点がある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、製品の突出部の先端側に鋳巣が生じることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る鋳造用金型は、製品を成形するキャビティを形成する成形面を有する鋳造用金型であって、成形面には、製品の突出部を成形する凹部と、凹部の底面における溶湯の流れ方向に沿って、底面から前記製品側に突出する複数のリブとが形成されている。
【発明の効果】
【0007】
この態様によると、製品の突出部の先端側に鋳巣が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の金型の一部を製品側から見た図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本実施形態の変形例を示す図である。
【図4A】本実施形態の金型における溶湯の流れを示す図である。
【図4B】本実施形態の金型における溶湯の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の鋳造用金型(以下、金型と言う。)1について図1、2を用いて説明する。図1は本実施形態の金型1の一部を製品側から見た図である。図2は、図1のII−II断面図である。鋳造は、金型1と図示しない他の金型とによって形成されたキャビティに溶湯を注入して行われる。
【0010】
金型1にはキャビティを形成する成形面20が形成されている。成形面20には、製品の突出部に応じた凹部2と、凹部2に溶湯を導入する導入部4と、凹部2の底面5から製品側に突出する複数のリブ6とが形成されている。
【0011】
リブ6は、凹部2の底面5における溶湯の流れ方向に沿って形成される。本実施形態では、金型1は、凹部2の底面5が鉛直方向に平行となるように配置されており、導入部4は凹部2よりも鉛直方向下側に位置している。図1においては鉛直方向上向きをy方向として示している。溶湯は主に導入部4を通って凹部2に流入する。凹部2に流入した溶湯はy方向に上昇する。そのため、リブ6は凹部2の底面5における溶湯の流れ方向となるy方向に沿って形成される。リブ6は、シミュレーションや実験によって底面5における溶湯の流れ方向を分析し、分析結果に基づいて形成される。凹部2における溶湯の流れが図3に示すように曲がっている場合には、リブ6は溶湯の流れ方向に沿って曲がった形状に形成される。
【0012】
図2に示すように、隣り合う2つのリブ6の側面6a、6bと底面5とによって、1つの溝7が形成される。凹部2の底面5に複数のリブ6を設けることで、凹部2の底面5に複数の溝7が形成される。リブ6を挟んで隣り合う溝7は、リブ6によって隔てられている。つまり、リブ6は、リブ6を挟んで隣り合う溝7を流れる溶湯が凹部2の底面5で合流しないように形成されている。本実施形態では、リブ6は等間隔で形成されている。また、リブ6の幅と溝7の幅とは同一であり、一例としてはそれぞれ1mmである。しかし、リブ6の間隔、リブ6の幅、および溝7の幅は、これらに限られることはない。
【0013】
リブ6は、底面5における溶湯の流れ方向に垂直な面の断面が矩形状となる。しかし、リブ6の断面形状はこれに限られることはなく、リブ6の先端側が細くなるテーパ形状などでもよい。
【0014】
金型1を用いて成型される製品は、成型後に突出部の先端が切削加工され、リブ6および溝7によって成型された箇所は切削される。リブ6の突出量(高さ)は、切削加工により切削される量よりも小さい。
【0015】
次に本実施形態の金型1を用いて鋳造した場合の溶湯の流れについて図4A、4Bを用いて説明する。図4A、4Bは図1に示す金型1の凹部2を溶湯が流れる様子を示す図である。
【0016】
金型1によって形成されるキャビティに溶湯が注入されると、溶湯の液面10が上昇する(図4A)。図4Aにおいては説明のために導入部4の溶湯の液面10のみを示す。
【0017】
溶湯が凹部2内へ流入すると、凹部2の底面5側においては、溶湯はリブ6の間に形成された溝7をy方向に上昇する(図4B)。図4Bにおいては説明のために凹部2の溶湯の液面10のみを示し、溝7を上昇する溶湯の流れ方向を矢印で示している。このようにして凹部2に溶湯が充填される。
【0018】
次に本実施形態の効果について説明する。
【0019】
凹部2の底面5側で、溶湯に含まれるエアーが停滞すると、製品の突出部の先端側に鋳巣が発生するおそれがある。鋳巣とは、溶湯中にエアーが混入し、圧縮されて製品内に残った空洞部を言う。
【0020】
鋳巣が製品の突出部の先端側に発生すると、製品の突出部の先端側を切削加工した場合に、切削表面に鋳巣が現れ、製品が不良品として廃却される。
【0021】
本実施形態では、金型1の凹部2の底面5における溶湯の流れ方向に沿ってリブ6を形成したことで、凹部2の底面5側において、溶湯はリブ6の間に形成された溝7を流れる。これにより、溶湯に含まれるエアーが底面5側に停滞することを抑制することができ、製品の先端側を切削加工した場合に、切削表面に鋳巣が現れることを抑制することができる。そのため、製品の廃却数を少なくすることができ、コストを削減することができる(請求項1に対応の効果)。
【0022】
また、溶湯が凹部2の底面5側で合流すると、凹部2の底面5側で湯境が発生するおそれがある。湯境とは、キャビティ内で溶湯の温度が下がり、溶湯が融合できずに発生する溶湯の境界を言う。湯境が大きい場合には、製品の先端側を切削加工した場合でも湯境が残り、製品が不良品として廃却される。
【0023】
本実施形態では、リブ6を設けることで、リブ6を挟んで隣り合う溝7を流れる溶湯が底面5で合流することを防ぐことができる。これにより、製品の先端側を切削加工した場合に、切削表面に湯境が残ることを抑制することができる。そのため、製品の廃却数を少なくすることができ、コストを削減することができる(請求項2に対応の効果)。
【0024】
本実施形態においては、導入部4を用いて凹部2に溶湯を導入する金型1について説明したが、導入部4を用いない金型についても、本実施形態と同様に凹部の底面にリブを設けることで、切削表面に鋳巣、または湯境が現れることを抑制することができ、コストを削減することができる。
【0025】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 金型
2 凹部
5 底面
6 リブ
20 成形面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を成形するキャビティを形成する成形面を有する鋳造用金型であって、
前記成形面には、
前記製品の突出部を成形する凹部と、
前記凹部の底面における溶湯の流れ方向に沿って、前記底面から前記製品側に突出する複数のリブとが形成されていることを特徴とする鋳造用金型。
【請求項2】
前記リブは、前記リブ間を流れる前記溶湯が前記底面で合流することを防止することを特徴とする請求項1に記載の鋳造用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−179650(P2012−179650A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45555(P2011−45555)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】