説明

鋳造用金型

【課題】サポート部材を用いずに撓みを防止する鋳造用金型を提供する。
【解決手段】鋳造用金型4、7には製品を成型するキャビティを形成する成型面14、21と、成型面14、21側とは反対側の面に、成型面14、21側に窪んだ曲面15、22とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成型機に用いる型締め装置において、型締め力の変化を抑制するために、可動側プラテンとプラテン駆動手段の加圧板との間に皿バネなどのサポート部材を配置するものが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−154475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の発明のようなサポート部材を用いることで、キャビティに注入される溶湯の圧力が大きい成型機における金型の撓みを抑制することができる。
【0005】
しかし、成型機には金型から製品を離型させるためにエジェクタピンが設けられており、エジェクタピンと干渉しないようにサポート部材を配置しなければならない。そのためサポート部材の配置箇所が限定され、サポート部材によって金型の撓みを十分に抑制することができず、製品に撓みが生じる、といった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、サポート部材を用いずに製品の撓みを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る鋳造用金型は、製品を成型するキャビティを形成する成型面と、成型面側とは反対側の面に、成型面側に窪んだ曲面とが形成されている。
【発明の効果】
【0008】
この態様によると、成型面側に窪んだ曲面によって、溶湯の圧力に対する鋳造用金型の強度を強くすることができるので、サポート部材を用いずに金型の撓みを防ぎ、製品の撓みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のダイカスト装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態のダイカスト装置の一部を拡大した図である。
【図3】本実施形態のダイカスト装置を用いて成型する成型工程を示す図である。
【図4】第1曲面にかかる力の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の鋳造用金型を用いたダイカスト装置について図1、図2を用いて説明する。図1は、ダイカスト装置の全体を示す図である。図2は、ダイカスト装置の一部を拡大した概略図である。図2においては、説明のためエジェクタピンなどの一部の部材を省略している。
【0011】
ダイカスト装置1は、固定プラテン2と、固定ホールデンブロック3と、固定ダイ本体4と、可動プラテン5と、可動ホールデンブロック6と、可動ダイ本体7と、エジェクタプレート8と、エジェクタピン9と、プランジャースリーブ10と、プランジャチップ11と、アルミ溶湯給湯器12とを備える。
【0012】
固定プラテン2は、可動プラテン5と向かい合って配置され、位置が固定されている。固定プラテン2には可動プラテン5側に固定ホールデンブロック3が取り付けられている。
【0013】
固定ホールデンブロック3は、可動プラテン5側に、固定ダイ本体4を取り付ける第1凹部13を備える。
【0014】
固定ダイ本体4には、可動プラテン5側に、製品を成型するキャビティを形成する第1成型面14と、第1曲面15とが形成されている。
【0015】
第1曲面15は、第1成型面14とは反対側、つまり固定プラテン2側の面に形成されている。第1曲面15は、第1成型面14側に窪んで湾曲する面である。本実施形態においては、第1曲面15は球面の一部であるが、これに限られることはなく、楕円の一部などであってもよい。
【0016】
第1曲面15は、キャビティに溶湯が注入された場合に、溶湯によって固定ダイ本体4にかかる応力の一部を面方向に分散させる。第1曲面15は、第1成型面14にかかる溶湯の圧力によって固定ダイ本体4が撓まないように、溶湯による応力分布に基づいて形成されている。固定ダイ本体4が撓んだ状態で溶湯が冷却し、製品が成型されると、製品にも撓みが生じ、製品が不良品と判定されるおそれがある。第1曲面15は、製品が不良品であると判定される撓みを防止するために形成されている。
【0017】
固定ダイ本体4は、固定ホールデンブロック3の第1凹部13に取り付けられ、背面および側面を第1凹部13によって保持されている。固定ホールデンブロック3の第1凹部13に固定ダイ本体4を取り付けることで、固定ダイ本体4は固定ホールデンブロック3を介して固定プラテン2によって位置が固定される。
【0018】
可動プラテン5は、固定プラテン2と向かい合って配置され、図示しない油圧シリンダなどによって前後進する。可動プラテン5には固定プラテン2側に可動ホールデンブロック6が取り付けられている。
【0019】
可動ホールデンブロック6は、可動プラテン5に取り付けられた取付部16と、取付部16よりも固定プラテン2側に設けられ、可動ダイ本体7を保持する保持部17と、取付部16と保持部17とを連結する連結部18とを備える。
【0020】
保持部17は、固定プラテン2側に可動ダイ本体7を取り付ける第2凹部19を備える。保持部17には、エジェクタピン9が貫通する第1貫通孔20が形成されている。
【0021】
連結部18によって、取付部16と保持部17との間には隙間が形成される。取付部16と保持部17との間に形成された隙間にエジェクタプレート8が設けられる。
【0022】
エジェクタプレート8は、図示しない油圧シリンダなどによって前後進する。エジェクタプレート8が前後進する方向は、可動プラテン5が前後進する方向と同一方向である。エジェクタプレート8には、エジェクタピン9が連結しており、エジェクタプレート8が油圧シリンダなどによって前後進すると、エジェクタピン9はエジェクタプレート8と一体となって前後進する。
【0023】
可動ダイ本体7には、製品を成型するキャビティを形成する第2成型面21と、第2曲面22と、エジェクタピン9が貫通する第2貫通孔23とが形成されている。
【0024】
第2曲面22は、第2成型面21とは反対側、つまり可動プラテン5側の面に形成されている。第2曲面22は、第2成型面21側に窪んで湾曲する面であり、第1曲面15と同様に形成されている。第2曲面22は、第1曲面15と同様に、第2成型面21にかかる溶湯の圧力によって可動ダイ本体7が撓まないように、溶湯による応力分布に基づいて形成されている。
【0025】
可動ダイ本体7は、可動ホールデンブロック6の第2凹部19に取り付けられ、背面および側面を第2凹部19によって保持されている。可動ダイ本体7は、可動プラテン5が油圧シリンダなどによって前後進すると、可動プラテン5とともに前後進する。
【0026】
固定ダイ本体4の第1成型面14と可動ダイ本体7の第2成型面21とによってキャビティが形成され、キャビティにプランジャースリーブ10内の高温の溶湯が注入され、製品の成型が行われる。プランジャースリーブ10にはアルミ溶湯給湯器12から溶湯が供給される。
【0027】
次に、本実施形態のダイカスト装置1を用いた成型方法について図3を用いて説明する。図3は本実施形態のダイカスト装置1を用いた成型工程を示す図である。
【0028】
ステップS100では、初期位置から可動プラテン5を前進させる。これにより、可動ダイ本体7も前進し、可動ダイ本体7と固定ダイ本体4とによってキャビティが形成される。初期位置は、可動プラテン5、およびエジェクタプレート8が後退した位置である。初期位置において、エジェクタピン9は可動ダイ本体7の第2成型面21から固定ダイ本体4側に突出していない。
【0029】
ステップS101では、プランジャースリーブ10の溶湯をプランジャチップ11によってキャビティ内に注入する。溶湯はプランジャチップ11によってキャビティ内に高圧で注入されるので、キャビティ内の溶湯圧力は大きくなる。そのため、固定ダイ本体4および可動ダイ本体7にも大きな応力がかかる。
【0030】
本実施形態では、固定ダイ本体4には、キャビティを形成する第1成型面14と反対側の面に第1曲面15が形成されている。同様に可動ダイ本体7には、第2曲面22が形成されている。また、固定ダイ本体4および可動ダイ本体7は、背面および側面を固定ホールデンブロック3または可動ホールデンブロック6で保持されている。そのため、溶湯により固定ダイ本体4および可動ダイ本体7に応力がかかった場合には、第1曲面15または第2曲面22の端部では、固定ホールデンブロック3または可動ホールデンブロック6から反力を受け、図4に示すように溶湯による応力は、圧縮力に変換される。図4は第1曲面15における力の分布を示すものである。これにより、溶湯の圧力によって、固定ダイ本体4および可動ダイ本体7に応力がかかった場合でも、固定ダイ本体4および可動ダイ本体7が撓むことを防ぐことができる。
【0031】
ステップS102では、溶湯を冷却し、製品を成型する。
【0032】
ステップS103では、可動プラテン5を後退させて、製品を固定ダイ本体4から離型させる。
【0033】
ステップS104では、エジェクタプレート8を前進させて、エジェクタピン9によって製品を可動ダイ本体7から離型させる。
【0034】
ステップS105では、製品を取り出す。
【0035】
ステップS106では、エジェクタプレート8を後退させる。これによって、可動プラテン5、およびエジェクタプレート8は初期位置となる。
【0036】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0037】
固定ダイ本体4の第1成型面14とは反対側に第1曲面15、および可動ダイ本体7の第2成型面21とは反対側に第2曲面22を形成することで、キャビティ内に注入された溶湯の圧力に対する固定ダイ本体4および可動ダイ本体7の強度を強くすることができる。そのため、撓みを防止するためのサポート部材を用いずに固定ダイ本体4および可動ダイ本体7の撓みを防止することができ、製品に撓みが生じることを防止することができる(請求項1に対応する効果)。
【0038】
本実施形態を用いずに、固定ダイ本体および可動ダイ本体の厚さを厚くすることによっても、固定ダイ本体および可動ダイ本体の撓みを防止することができる。しかし、固定ダイ本体および可動ダイ本体の厚さが厚くなると、可動ダイ本体を前後進させる油圧シリンダなどが大きくなる。また固定プラテンと可動プラテンとの距離が大きくなる。そのため大型のダイカスト装置を用いなければならない。本実施形態では、固定ダイ本体4および可動ダイ本体7の厚さを厚くせずに、小型のダイカスト装置1によって固定ダイ本体4および可動ダイ本体7の撓みを防止することができ、製品に撓みが生じることを防止することができる(請求項1に対応する効果)。
【0039】
キャビティに溶湯を注入した場合に、溶湯によって固定ダイ本体4および可動ダイ本体7にかかる応力の一部は第1曲面15および第2曲面22によって面方向に分散される。これにより、固定ダイ本体4および可動ダイ本体7の撓みを防止し、撓んだ製品が成型されることを防止することができる(請求項2に対応する効果)。
【0040】
本実施形態では、固定ダイ本体4に第1曲面15を形成し、可動ダイ本体7に第2曲面22を形成したが、固定ダイ本体4または可動ダイ本体7のどちらか一方に曲面を形成してもよい。
【0041】
上記実施形態において鋳造用金型は、固定ダイ本体4と可動ダイ本体7とを示しているが、固定ダイ本体4の背面側に配置される固定ホールデンブロック3、可動ダイ本体7の背面側に配置される可動ホールデンブロック6を含んでもよく、固定ホールデンブロック3、または可動ホールデンブロック6に第1曲面15、または第2曲面22を形成してもよい。具体的には、第1曲面15は、固定ダイ本体4と向かい合う面とは反対側の面、つまり固定プラテン2側の面に形成される。また、第2曲面22は、可動ダイ本体7と向かい合う面とは反対側の面、つまり可動プラテン5側の保持部17の面に形成される。また固定ダイ本体4と固定ホールデンブロック3との間、可動ダイ本体7と可動ホールデンブロック6との間に他の金型を介在させてもよい。また、介在させた金型に第1曲面15または第2曲面22を形成してもよい。
【0042】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 ダイカスト装置
3 固定ホールデンブロック(第2金型)
4 固定ダイ本体(第1金型)
6 可動ホールデンブロック(第2金型)
7 可動ダイ本体(第1金型)
14 第1成型面(成型面)
15 第1曲面(曲面)
21 第2成型面(成型面)
22 第2曲面(曲面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を成型するキャビティを形成する成型面と、
前記成型面側とは反対側の面に、前記成型面側に窪んだ曲面とが形成されていることを特徴とする鋳造用金型。
【請求項2】
前記曲面は、前記キャビティに溶湯が注入された場合に、前記溶湯によってかかる応力の一部を面方向に分散させることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用金型。
【請求項3】
前記成型面を有する第1金型と、
前記第1金型の背面側に配置され、前記第1金型と向かい合う面とは反対側の面に前記曲面が形成された第2金型とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳造用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−192412(P2012−192412A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56093(P2011−56093)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】