説明

鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法

【課題】鋳鉄管1本毎にその製造履歴および出荷先の管理を確実に把握することによって、トラブルが発生した場合であっても鋳鉄管の出荷先を即座に特定することができるので、リスクを最小限に抑えることができる。しかも、鋳鉄管1本毎の一元管理が行えることから、鋳鉄管のさらなる信頼性および安全性の確保を図ることができる。
【解決手段】鋳造する鋳鉄管の受け口に形成されたフランジの外側端面に対応する受け口鋳造用中子の面に、凹凸文字により形成される管理番号を形成する凹部を中子毎に予め刻印し、前記凹部が刻印された中子を使用して、1本毎に前記管理番号が形成された鋳鉄管を製造し、前記管理番号毎に鋳鉄管の製造履歴データと出荷先データとを保存し、かくして、前記管理番号により鋳鉄管1本毎の製造履歴および出荷先の管理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法、特に、鋳鉄管1本毎にその製造履歴および出荷先を確実に管理することができる、鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、水道管として使用される、内面にモルタルライニングを施した鋳鉄管は、以下のようにして製造されていた。
【0003】
図4に示すように、一端に受け口鋳造用中子1を装着した鋳型2を駆動装置3により高速で回転させ、高速回転する鋳型2内に樋4から溶湯5を流し込んで素管6を遠心鋳造し、このようにして鋳造した素管6に機械加工を施して仕上け、水圧試験を行った後、管外面に外面塗装を施し、この後、管内面にモルタルライニングを施し、そして、モルタルライニングの表面にシールコートを施すことによって製造されていた。
【0004】
このようにして製造される鋳鉄管の受け口7に形成されたフランジ7Aの外側端面(S1)には、図5に示すように、鋳鉄管の製造年、管径、管形式、管種あるいはロット番号等を示す文字や記号(以下、まとめて文字という。)が凹凸文字により形成されている。なお、図示の例では、番号3のみが形成されている。
【0005】
ここで、管形式とは、鋳鉄管の受け口と挿し口の形状や寸法によって区分されるものであり、管種とは、使用可能な圧力によって区分されるものである。
【0006】
上記文字を鋳鉄管の受け口7に形成されたフランジ7Aの外側端面(S1)に形成するには、図4に示すように、外側端面(S1)に対応する中子1の面(S2)に、前記文字に対応する凹部を予め刻印機により形成しておく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、上述のように、鋳鉄管の受け口に形成されたフランジの外側端面に凹凸文字を形成することによって、鋳鉄管の管理を行っていたが、あくまでロット毎の管理であったので、鋳鉄管1本毎にその製造履歴および出荷先を正確に把握することはできなかった。
【0008】
従って、この発明の目的は、鋳鉄管1本毎にその製造履歴および出荷先の管理を確実に把握することができる、鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0010】
請求項1に記載の発明は、鋳造する鋳鉄管の受け口に形成されたフランジの外側端面に対応する受け口鋳造用中子の面に、凹凸文字により形成される管理番号を形成する凹部を中子毎に予め刻印し、前記凹部が刻印された中子を使用して、1本毎に前記管理番号が形成された鋳鉄管を製造し、前記管理番号毎に鋳鉄管の製造履歴データと出荷先データとを保存し、かくして、前記管理番号により鋳鉄管1本毎の製造履歴および出荷先の管理を行うことに特徴を有するものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記凹部は、前記中子毎に自動的に形成されることに特徴を有するものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記凹部を前記中子に形成する前に、前記凹部を形成する前記中子の表面に樹脂を含浸させることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、受け口鋳造用中子に、凹凸文字により形成される管理番号を形成する凹部を中子毎に予め刻印し、この中子を使用して鋳造することによって、鋳鉄管1本毎にその製造履歴および出荷先の管理を確実に把握することができる。従って、トラブルが発生した場合であっても鋳鉄管の出荷先を即座に特定することができるので、リスクを最小限に抑えることができる。しかも、鋳鉄管1本毎の一元管理が行えることから、鋳鉄管のさらなる信頼性および安全性の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の管理方法のフローを示す図である。
【図2】凹凸文字からなる管理番号を形成する凹部を中子に刻印する態様を示す正面図である。
【図3】凹凸文字からなる管理番号が形成された受け口のフランジの外側端面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明の、鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、この発明の管理方法のフローを示す図である。
【0017】
図1に示すように、この発明は、先ず、鋳造する鋳鉄管の受け口に形成されたフランジの外側端面に対応する受け口鋳造用中子1の面(S2)に、凹凸文字からなる管理番号を形成する凹部を中子1本毎に予め刻印する。凹部は、図2に示すように、公知の電磁式ドットマーキング形式の刻印機8によって刻印する。
【0018】
凹部の刻印は、中子1をラインに沿って移動させ、定位置に設置した刻印機8により自動的に行うことができる。この際、ドットマーキングするために刻印ピン9を長尺にすることによって、中子1に突出部(P)があっても受け口鋳造用中子1の面(S2)の全面に亘って凹部を正確に形成することができる。また、中子1の面(S2)に、例えば、レゾール型フェノール樹脂を塗布し、樹脂を含浸させれば、凹部をより鮮明に形成することができる。
【0019】
なお、図2に示す中子と図4に示す中子の形状が異なるのは、受け口の形状が異なるからである。
【0020】
このようにして、中子1の面(S2)に、中子1本毎に、受け口のフランジに管理番号を形成する凹部を刻印機8により刻印したら、この中子を使用して、管理番号が形成された鋳造管を製造する。
【0021】
図3に、凹凸文字からなる管理番号が形成された受け口のフランジの外側端面(S1)の一例を示す。図3において、「922」は、製造日を示し、「123」は、管理番号を示す。なお、図3において、「100」は、管径を示し、「NS」は、管形式を示し、「10」は、製造年を示し、「D3」は、管種を示し、「水」は、水道管であることを示す。これらの文字は、ロット毎に形成される。
【0022】
このようにして、1本毎に管理番号が形成された鋳鉄管を製造したら、管理番号に対応する鋳鉄管の製造履歴を取得する。
【0023】
次に、管理番号をカメラで撮影して画像データを取得する。そして、出荷前に管理番号毎に出荷先を入力して、鋳鉄管1本毎の製造履歴および出荷先を管理番号により管理する。
【0024】
これによって、トラブルが発生した場合であっても管理番号を呼び出すことによって、鋳鉄管の出荷先を即座に特定することができるので、リスクを最小限に抑えることができる。しかも、鋳鉄管1本毎の一元管理が行えることから、鋳鉄管のさらなる信頼性および安全性の確保を図ることができる。
【0025】
以上、説明したように、この発明によれば、鋳鉄管1本毎に管理番号を形成し、この管理番号により鋳鉄管1本毎にその製造履歴および出荷先の管理を確実に把握することができるので、トラブルが発生した場合であっても鋳鉄管の出荷先を即座に特定することができるので、リスクを最小限に抑えることができる。しかも、鋳鉄管1本毎の一元管理が行えることから、鋳鉄管のさらなる信頼性および安全性の確保を図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1:中子
2:鋳型
3:駆動装置
4:樋
5:溶湯
6:素管
7:受け口
7A:フランジ
8:刻印機
9:刻印ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造する鋳鉄管の受け口に形成されたフランジの外側端面に対応する受け口鋳造用中子の面に、凹凸文字により形成される管理番号を形成する凹部を中子毎に予め刻印し、前記凹部が刻印された中子を使用して、1本毎に前記管理番号が形成された鋳鉄管を製造し、前記管理番号毎に鋳鉄管の製造履歴データと出荷先データとを保存し、かくして、前記管理番号により鋳鉄管1本毎の製造履歴および出荷先の管理を行うことを特徴とする、鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法。
【請求項2】
前記凹部は、前記中子毎に自動的に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の、鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発明において、前記凹部を前記中子に形成する前に、前記凹部を形成する前記中子の表面に樹脂を含浸させることを特徴とする、請求項1または2に記載の、鋳鉄管の製造履歴および出荷先の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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