説明

鋸歯形ガスケット

【課題】無駄になる材料が少なく、いかなる大きさにも適用可能で、コスト的にも安価な鋸歯形ガスケットを提供する。
【解決手段】第1の部材22と第2の部材24との間に介装され、第1の部材22ならびに第2の部材24間に挿通されたネジ部材28により位置決めがなされるとともに、ガスケット本体に形成された鋸歯形凹凸部30aが、第1の部材22側のシール面ならびに第2の部材24側のシール面にそれぞれ食い込んでシール力が発揮される鋸歯形ガスケットであって、前記ガスケット本体が、鋸歯形凹凸部30aが形成されたシール部本体32と、シール部本体32の外周側にシール部本体32とは別体で形成され、かつ第1の部材22ならびに第2の部材24に対する位置決めを行う位置決め部分34と、から構成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット本体に鋸歯形の凹凸部が形成され、この鋸歯形の凹凸部がシール面に食い込まれることにより十分なシール力が発揮される鋸歯形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
鋸歯形ガスケットは、シール効率を高めるために、ガスケット本体の表面に断面鋸歯形の環状凹凸溝を多数形成して、シール部における有効接触面積を小さくしたものである。このような鋸歯形ガスケットは、バルブのボンネットや管フランジ、圧力容器のカバーガスケットなどに使用されている。そして、特に、高温・高圧の水蒸気などの流体通路に好適である。
このような鋸歯形ガスケットとしては、例えば、図12に示した鋸歯形ガスケット10が知られている。この鋸歯形ガスケット10は、鋸歯形の凹凸部2aが両面に形成されたシール部本体2と、シール部本体2に一体的に形成された位置決め用の位置決め部分2bと、から構成されている。
【0003】
このような凹凸部2aが複数形成された従来の鋸歯形ガスケット10は、これまで一枚物の大形の圧延金属板から所定の寸法に削り出すことにより形成されていた。そのため、切削に多大の労を要するとともに、無駄となる材料が増えてしまいコスト高になるという問題があった。
また、使用条件(流体、温度、圧力など)によってはガスケットのシール部本体の材質を使い分ける必要があるが、高価な材料の場合位置決めのための部分も含めたガスケット全体にその材料を使用すると非常にコスト高になるという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、無駄になる材料が少なく、いかなる大きさにも適用可能で、コスト的にも安価な鋸歯形ガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明に係る鋸歯形ガスケットは、
第1の部材と第2の部材との間に介装され、
ガスケット本体に形成された鋸歯形凹凸部が、前記第1の部材側のシール面ならびに前記第2の部材側のシール面にそれぞれ食い込んでシール力が発揮される鋸歯形ガスケットであって、
前記ガスケット本体が、
前記鋸歯形凹凸部が形成されたシール部本体と、前記シール部本体の外周側に前記シール部本体とは別体で形成され、かつ前記第1の部材ならびに前記第2の部材に対する位置決めを行う位置決め部分と、から構成されていることを特徴としている。
このような構成の鋸歯形ガスケットによれば、第1の部材と第2の部材が予め別体で形成され、これらの組み合せにより構成されていることから、切削に要する労力が少なくなるとともに、大型化したとしても材料が無駄になることはない。
また、本発明では、前記シール部本体の外周面には、金属製で略断面略くの字状にクセ付けされた帯状部材が巻回され、前記位置決め部分の内周面には断面くの字状の環状凹部が形成され、前記位置決め部分の前記環状凹部に前記帯状部材が着脱自在に装着されていることが好ましい。
このような構成によれば、組付けが容易であるとともに、一体に組み込まれた場合に、ガスケットが外れ難い。
ここで、前記位置決め部分が周方向に分割された複数の分割体から構成されていることが好ましい。
このような分割体により位置決め部分を構成すれば、材料も大型化されることはなく、小さな材料から形成することができる。
また、本発明は、前記分割体が、前記シール部本体に直接固定されていても良い。
【0006】
また、本発明では、前記分割体同士が、溶接により一体化されていることが好ましい。
このように溶接により一体化すれば、後で外れてしまうことを防止できる。
さらに、前記分割体同士が、凹凸嵌合部の圧入により一体化されていても良い。
【0007】
このような構成であれば、溶接が不要となるので安価に製造することができる。
また、本発明では、前記位置決め部分は金属製の帯状部材が巻回されることにより構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、帯状部材の巻回数により、位置決め部分の大きさを適宜調整することができ、どんな大きさにも容易に対応することができる。
さらに、本発明では、前記位置決め部分は前記シール部本体から径外方に向かって略放射状に配置された少なくとも2本の棒状部材により構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、位置決めするに際し、これら棒状部材により適正な位置に固定することができる。
また、前記棒状部材には、前記棒状部材には所定位置に予め貫通孔が形成され、この貫通孔に前記ネジ部材が挿通されることにより、前記第1の部材と前記第2の部材との間に位置決めしても良い。
このような構成であれば、締付けと位置決めを同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る鋸歯形ガスケットによれば、大形の金属板から削り出しにより形成するのではなく、予め別体で形成されたシール部本体と位置決め部分との組み合せによりガスケット本体を構成するので、切削に要する費用を大幅に削減することができるとともに、材料が無駄になることもない。したがって、コストが安価で、特に大口径の場合にコスト低減効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に示した本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施例による鋸歯形ガスケットが装着された管継手を示したものである。
【0010】
この管継手20では、第1の部材22と第2の部材24との間に鋸歯形ガスケット26
が装着され、この鋸歯形ガスケット26が複数本のボルト28により締付けられている。
上記鋸歯形ガスケット26は、図2に拡大して示したように、鋸歯形の凹凸部30aが両面に形成されたシール部本体32と、第1の部材22および第2の部材24とに対する位置決めを行う位置決め部分34とから構成され、これらシール部本体32と位置決め部分34とは、予め別体で形成されたものが組み込まれることにより形成されている。
【0011】
シール部本体32の厚さTは、位置決め部分34の厚さtに比べて大きい。
本実施例では、シール部本体32と位置決め部分34とが予め別体で形成された後、互いに嵌め合わされることにより一体化されている。鋸歯形ガスケット26は、図1に示したように、第1の部材22と第2の部材24との間に装着された場合に、位置決め部分34の外周面34aが図1のボルト28に当接され、これにより、第1の部材22と第2の部材24との間で位置決めがなされる。よって、装着時に不用意に位置ずれしてしまうことが防止されている。
シール部本体32と位置決め部分34との組付けは、このような単なる噛合せの他に、様々な態様を取ることができる。
【0012】
すなわち、図3は、シール部本体32の外周面に、予め断面くの字にクセ付けされた金属製の帯状部材36がシール部本体32の外周面に複数回巻回され、溶接により固定されたものである。
一方、外方の位置決め部分34には、その内周面に断面略くの字状の環状凹部38が形成され、この環状凹部38に帯状部材36の角部が圧接されることにより、互いに抜けがないように密着されている。
【0013】
このような鋸歯形ガスケットであっても、削り出しが不要であるとともに、大型化が容易である。
また、図4は、シール部本体32の外周面に環状溝40を形成し、この環状溝40に位置決め部分34の内周縁34bを嵌合させたものである。この場合は、位置決め部分34を、図5に示したように、複数の分割体34cから構成し、2つの分割体34c、34cを互いに突き当てた後、突き当て部を溶接で一体化させることができる。あるいは、位置決めを確実にするために分割体34c、34cの端面に凹凸嵌合部を設け、この凹凸嵌合部で一体化させた後、溶接しても良い。
【0014】
また、環状溝40と位置決め部分34の内周縁34bとの結合は、特に溶接に限定されず、他の手段、例えばろう付けや接着などで固定しても良い。さらに、他の手段としては、位置決め部分34の板厚と環状溝40との寸法差を小さく設定し、位置決め部分34を環状溝40内に圧入することで両者を固定しても良い。
【0015】
また、分割体の変形例としては、図6に示したように、一部にスリット34dが形成された位置決め部分34を形成し、このスリット34dを開いた状態でシール部本体32の外周に嵌め合わせても良い。この場合も嵌め合わせ後に、スリット部34dを溶接により接合することができる。
あるいは、図6の場合、例えばあらかじめスリット部34dの間隔を大きめにしておき、はめ合わせた後に機械的に34部の間隔が狭くなるように締め付けて固定することもできる。
【0016】
さらに別の実施例として、図7に示したものは、位置決め部分34を、くの字状にクセ付けされた帯状部材36で形成するとともに、帯状部材36の巻き回数を調整することにより外径寸法Dを設定したものである。
【0017】
また、図8(A),(B)に示したように、シール部本体32の外周面に環状の凹溝46を形成し、この凹溝46に、略六角形状の金属線材48を装着することにより、位置決め部分34に相当する位置決め用の部材を構成したものである。
この場合、図8では金属線材48を六角形状としたが、特に六角形に限定されず、他の多角形状でも良い。また、本実施例の場合は、金属細線48の角部をフランジのガスケット装着溝側壁にあてることにより位置決めされる。
【0018】
この場合、金属線材48は、その一部にスリット48aを設けたもので、そのスリット48aを開口して、図8(B)に示したように、凹溝46に装着させる。なお、スリット48aを装着後に溶接する。
【0019】
あるいは、金属線材48は若干であれば撓ませることが可能であるため、あらかじめ溶接して多角形状にし、多角形状に一体化された金属細線48をたわませながら凹溝46に装着することもできる。
【0020】
また、図9に示したように、シール部本体32の外方に、少なくとも2本の棒状部材52を径外方に向かって略放射状に直接固設することもできる。このように、位置決め部分34を直接シール部本体32に固定すれば、位置決め部材34同士を一体化する必要がなくなる。
なお、本実施例における棒状部材52とは、ある程度の幅を備えた板状部材の概念を含むものである。
【0021】
このように、本発明では、棒状部材52あるいは板状部材により位置決め部分34としたガスケット60であっても良い。このようなガスケット60は、図10に示したように、第2の部材24に形成された内鍔24aの凹溝内に棒状部材52が突き当てられる。これにより、位置決めがなされる。
【0022】
さらに、図11(A)に示したように、シール部本体32の外方に例えば、2本の平板56を略直線状に配置し、この平板56により外側フランジ34を構成するとともに、平板56にネジ孔58を設け、このボルト孔58に図1に示したボルト28を挿通させて、位置決めすることもできる。このように設定すれば、第1の部材22と第2の部材24との取り付けと同時に、ガスケットの位置決めを行うことができる。
【0023】
また、図11(B)に示したように、平板の1本のみボルト孔58’は半円でも良い。
以上、本発明の好ましい実施態様について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。例えば、本発明では、例えば、図4および図5に示した実施例の他、図9および図11(A),(B)に示した実施例でも、シール部本体側に溝を形成し、この溝に棒状部材52あるいは平板56を圧入することで固定することもできる。
【0024】
このように、本発明では、様々な手段で外側の位置決め部分を内側のシール部本体に装着することができ、実施例に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の一実施例による鋸歯形ガスケットが装着された管継手の断面図である。
【図2】図2は図1に示した鋸歯形ガスケットの拡大断面図である。
【図3】図3は本発明の他の実施例による鋸歯形ガスケットの概略半断面図である。
【図4】図4は本発明のさらに他の実施例による鋸歯形ガスケットの概略半断面図である。
【図5】図5は図4に示したフランジ部分の組付け構造を示す概略半断面図である。
【図6】図6は本発明のさらに他の実施例による鋸歯形ガスケットの概略平面図である。
【図7】図7は本発明のさらに他の実施例による鋸歯形ガスケットの概略半断面図である。
【図8】図8は本発明のさらに他の実施例による鋸歯形ガスケットを示したもので、図8(A)はその概略半断面図、図8(B)はその概略平面図である。
【図9】図9は本発明のさらに他の実施例による鋸歯形ガスケットの概略平面図である。
【図10】図10は図9に示した鋸歯形ガスケットの装着例を示した半断面図である。
【図11】図11(A),(B)は本発明のさらに他の実施例による鋸歯形ガスケットの概略平面図である。
【図12】図12は従来の鋸歯形ガスケットの断面図である。
【符号の説明】
【0026】
22 第1の部材
24 第2の部材
24a 内鍔
26 鋸歯形ガスケット
28 ボルト
30a 鋸歯形凹凸部
32 シール部本体
34 位置決め部分
34a 外周面
34b 内周縁
34c 分割体
34d スリット
36 くの字状の帯状部材
38 くの字状の環状凹部
40 環状溝
46 環状凹溝
48 金属細線
48a スリット
52 棒状部材
60 鋸歯形ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材との間に介装され、
ガスケット本体に形成された鋸歯形凹凸部が、前記第1の部材側のシール面ならびに前記第2の部材側のシール面にそれぞれ食い込んでシール力が発揮される鋸歯形ガスケットであって、
前記ガスケット本体が、
前記鋸歯形凹凸部が形成されたシール部本体と、前記シール部本体の外周側に前記シール部本体とは別体で形成され、かつ前記第1の部材ならびに前記第2の部材に対する位置決めを行う位置決め部分と、から構成されていることを特徴とする鋸歯形ガスケット。
【請求項2】
前記シール部本体の外周面には金属製で略断面略くの字状にクセ付けされた帯状部材が巻回され、前記位置決め部分の内周面には断面くの字状の環状凹部が形成され、前記位置決め部分の前記環状凹部に前記帯状部材が着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の鋸歯形ガスケット。
【請求項3】
前記位置決め部分が周方向に分割された複数の分割体から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋸歯形ガスケット。
【請求項4】
前記分割体が、前記シール部本体に直接固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋸歯形ガスケット。
【請求項5】
前記分割体同士が、溶接により一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の鋸歯形ガスケット。
【請求項6】
前記分割体同士が、凹凸嵌合部の圧入により一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の鋸歯形ガスケット。
【請求項7】
前記位置決め部分は金属製の帯状部材が巻回されることにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋸歯形ガスケット。
【請求項8】
前記位置決め部分は前記シール部本体から径外方に向かって略放射状に配置された少なくとも2本の棒状部材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋸歯形ガスケット。
【請求項9】
前記棒状部材には所定位置に予め貫通孔が形成され、この貫通孔に前記ネジ部材が挿通されることにより、前記第1の部材と前記第2の部材との間に位置決めされることを特徴とする請求項1、2、7のいずれかに記載の鋸歯形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−333065(P2007−333065A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164952(P2006−164952)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【出願人】(000235358)飯田パッキン工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】