説明

鋼床版の補強構造及び補強方法

【課題】鋼床版の下面への補強桁(補強リブ)の固定による隙間を従来よりも小さくすることで鋼床版の変形量を小さくし、疲労破壊の可能性を低減可能な鋼床版の補強構造及び補強方法を提供する。
【解決手段】走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造であって、前記横桁の間に走行方向に沿って複数の補強桁を設置し、該補強桁の上面を前記鋼床版の下面に当接した形態で、前記複数の補強桁間を連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する前記補強桁を取付部材を介して該横桁に固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造において、補強桁による鋼床版の補強構造及び補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や高架道路における床版には、鉄筋により補強されたコンクリートによるいわゆるRC床版と、鋼板を用いる鋼床版とがある。鋼床版の場合、車両交通による交番荷重により鋼床版が疲労破壊する可能性があるため、既存の鋼床版については補強が必要となる場合がある。
図6は床版に鋼床版を用いた鋼床版式橋梁の鋼床版ユニットの補強桁による補強構造の一例を示す。上面側を車両が走行する平板からなる鋼床版1の下面(下面)には一定間隔で逆T字状断面の横桁4,4が固定されており、前記鋼床版1下方部位の横桁4,4の間には走行路方向(Y矢方向)にI型断面形状の補強桁2が配置され、該補強桁2の両端部は、前記各横桁4,4から内側に突設された取付部材5,5に複数のボルト6で固定されている。なお、横桁4,4の間を鋼床版ユニットと呼ぶ。
【0003】
しかしながら、図6に示されるような鋼床版ユニットにあっては、鋼床版1が長尺で薄肉であるため鋼床版1の下面は完全なる平面ではなく、横桁4,4の間に亘り多少の緩やかな凹凸(そり)が施工誤差の範囲で形成されている(図6では凸の場合を示す)。かかる場合には、鋼床版1の下面と補強桁2の上面との間に隙間1a(隙間最大寸法=S)が形成されるため、両者を有効に密着させることは、実質的に困難を伴い、十分な補強が期待できない場合がある。
このため、かかる従来の補強構造にあっては、前記のような隙間1aの形成に伴う補強桁2の補強機能不足によって、鋼床版1の疲労破壊を招くおそれがある。
【0004】
前記鋼床版1の疲労破壊を防止する手段の一つに、特許文献1(特開2006−77523号公報)の技術が提供されている。
かかる技術においては、鋼床版1の下面の走行路方向に複数延設されたUリブの間に、補強リブを該Uリブと平行に延設して、該補強リブの上端面を鋼床版1の下面に溶接接合し、該補強リブの両端部を鋼床版の下面に一定間隔で固定された横桁に溶接接合するか、またはデッキプレートへの溶接が困難な場合(古い鋼材を使用等)は横桁へ補強リブをボルト接合することで、鋼床版1の撓み及びかかる撓みによる鋼床版1の疲労破壊を防止している。
【0005】
【特許文献1】特開2006−77523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1(特開2006−77523号公報)の技術にあっては、鋼床版1の補強機能の向上はある程度得られるが、次のような解決すべき課題を抱えている。
即ち、鋼床版の下面に多少の凹凸が形成されている場合に、鋼床版の下面と補強リブの上辺とを横桁間で有効に密着させることができないことから、溶接で補強リブを固定する場合は溶接が困難となり、またボルトで横桁に補強リブを固定する場合は補強機能が不十分となる。
【0007】
さらに、鋼床版の長さ程度の長尺かつ重量の大きい補強リブを運搬及び架設する必要があるため、ハンドリング性に劣り、この面からも補強リブの取付作業工数の増大を招く。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、鋼床版の下面への補強桁(補強リブ)の固定による隙間を従来よりも小さくすることで鋼床版の変形量を小さくし、疲労破壊の可能性を低減可能な鋼床版の補強構造及び補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造であって、前記横桁の間に走行方向に沿って複数の補強桁を設置し、該補強桁の上面を前記鋼床版の下面に当接した形態で、前記複数の補強桁間を添接板等の連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する前記補強桁を取付部材を介して該横桁に固定したことを特徴とする。
かかる発明において、好ましくは、前記補強桁は、前記走行方向に直角な断面をI型断面に形成され、I型断面の上面を前記鋼床版の下面に当接させるとともに、前記I型断面のウェブ部の両側に前記連結部材を配置して該連結部材により前記ウェブ部を挟持するように構成する。
【0010】
かかる発明によれば、横桁の間に走行方向に沿って設置した複数の補強桁の上面を鋼床版の下面に当接した形態で、複数の補強桁間を連結部材により前記補強桁のウェブ部を挟持して連結するとともに、両端側の補強桁を取付部材を介して横桁に固定した構造であるので、鋼床版の下面形状に沿って配置した複数の補強桁のそれぞれの上面を、個別に鋼床版の下面形状にあわせて該下面に押し付けることが可能となって、鋼床版の下面と複数の補強桁のそれぞれとの間に発生する隙間を従来よりも小さくすることで、両者を横桁間で有効に密着させることができる。
これにより、前記特許文献1(特開2006−77523号公報)の技術では補強自体が困難であった鋼床版の下面に凹凸が形成されている場合にも、鋼床版の補強を確実に行なうことが可能となり、鋼床版の剛性を向上し、鋼床版の変形による疲労破壊の発生を防止できる。
【0011】
また、横桁の間に複数に分割された補強桁を取り付けるので、各補強桁が軽量となってハンドリング性が向上して鋼床版の下面への搬送及び取付けが容易となり、補強作業工数を低減でき、短い工期で補強桁の取付け作業を行なうことができる。
【0012】
また、本発明は、走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造の補強方法であって、前記横桁の間に支持桁を配置するとともにその両端部を該横桁に固定して架設し、前記横桁の間に走行方向に沿って複数の補強桁を配置し、前記支持桁に支持したジャッキで各補強桁上面を前記鋼床版の下面に押し付けながら前記複数の補強桁間を連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する補強桁を取付部材を介して該横桁に固定することを特徴とする。
【0013】
かかる発明によれば、横桁の間に架設した支持桁に支持したジャッキで複数の補強桁を個別に押圧して各補強桁を鋼床版の下面に押し付けながら補強桁を鋼床版の下面に当接させるので、補強桁の上面と鋼床版の下面とを、高い押付け力で隙間を形成することなく確実に当接できる。
【0014】
かかる発明において、好ましくは、前記取付部材に吊り上げ用具をそれぞれ取付け、該吊り上げ用具により前記各補強桁の上面が鋼床版の下面に前記ジャッキにより当接可能な位置まで取付部材を巻上げる。
また、かかる発明において、好ましくは、前記支持桁を前記横桁の間に該横桁に仮固定して架設し、前記補強桁の取付作業終了後、前記支持桁及びジャッキ及びこれらに付属する取付作業要具を除去する。
【0015】
また、本発明は、走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造の補強方法であって、横桁の間に配置することが可能な支持桁上に複数個の補強桁を仮固定するとともに隣接する補強桁同士を仮連結して補強桁及び支持桁が一体化した架設部材を構成し、前記各補強桁の上面が鋼床版の下面に前記ジャッキにより当接可能な位置で支持桁の両端をそれぞれ前記横桁に固定して架設し、前記ジャッキで各補強桁上面を前記鋼床版の下面に押し付けながら前記複数の補強桁間を連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する補強桁を取付部材を介して該横桁に固定することを特徴とする。
【0016】
かかる発明によれば、横桁の間に配置した支持桁上に複数個の補強桁を仮固定するとともに、隣接する補強桁同士を仮連結して補強桁及び支持桁が一体化した架設部材を構成し、前記各補強桁の上面が鋼床版の下面に前記ジャッキにより当接可能な位置で支持桁の両端をそれぞれ前記横桁に固定して架設し、前記ジャッキで各補強桁上面を前記鋼床版の下面に押し付けながら前記複数の補強桁間を連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する補強桁を取付部材を介して該横桁に固定するので、複数に分割された補強桁の取付作業に人力を要さず、補強桁の取付作業能率が向上する。また好ましくは、前記架設部材に吊り上げ用具をそれぞれ取付け、該吊り上げ用具により前記各補強桁の上面が鋼床版の下面に前記ジャッキにより当接可能な位置まで架設部材を巻上げ、さらに、好ましくは、前記支持桁を前記横桁の間に該横桁に仮固定して架設し、前記補強桁の取付作業終了後、前記支持桁及びジャッキ及びこれらに付属する取付作業要具を除去する。
【0017】
また、本発明は、走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造であって、前記横桁の間に支持桁をその両端部を該横桁に固定して架設し、複数の補強桁の上面を前記鋼床版の下面に当接した形態で、各補強桁を前記支持桁にその長手方向に沿って固定したことを特徴とする。
【0018】
かかる発明において、具体的には次のように構成するのが好ましい。
(1)前記各補強桁と前記支持桁との結合部は、前記補強桁で支持桁を挟持した形態で該補強桁と支持桁とを貫通するボルトを、テーパ状の補助ピースを介して締め付けることにより、前記補強桁を前記鋼床版側に移動せしめて該補強桁を該鋼床版の下面に押付け可能に構成する。
(2)前記各補強桁を前記鋼床版の下面に当接可能な平板状部材で構成し、前記支持桁の上部に前記平板状部材からなる各補強桁に対向した水平フランジ部を形成して該水平フランジ部に前記各補強桁に対応して複数個のねじ穴を穿孔し、前記複数個のねじ穴のそれぞれに押しボルトを螺合し、該押しボルトをねじ穴に沿って押し込むことによって該押しボルトの上端面で前記平板状部材からなる補強桁の下面を押圧することにより、前記各補強桁を前記鋼床版の下面に当接させるように構成する。
【0019】
かかる発明によれば、複数の補強桁を、両端部を該横桁に連結した支持桁上にボルトにより固定した状態で鋼床版の下面に当接させるので、複数の補強桁の支持剛性が高く、複数の補強桁を隙間を生じることなく、より確実に鋼床版に当接できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、横桁の間に走行方向に沿って設置した複数の補強桁の上面を鋼床版の下面に当接した形態で、複数の補強桁間を連結部材により前記補強桁のウェブ部を挟持して連結するとともに、両端側の補強桁を取付部材を介して横桁に固定した構造であるので、鋼床版の下面形状に沿って配置した複数の補強桁のそれぞれの上面を、個別に鋼床版の下面形状にあわせて該下面に押し付けることが可能となって、鋼床版の下面と複数の補強桁のそれぞれとの間に発生する隙間を従来よりも小さくすることで、両者を横桁間で有効に密着させることができる。
これにより、前記特許文献1(特開2006−77523号公報)の技術では補強自体が困難であった鋼床版の下面に凹凸が形成されている場合にも、鋼床版の補強を確実に行うことが可能となり、鋼床版の剛性が向上し、鋼床版の変形による疲労破壊の発生を防止できる。
また、横桁の間に複数に分割された補強桁を取り付けるので、各補強桁が軽量となってハンドリング性が向上して鋼床版の下面への搬送及び取付けが容易となり、補強作業工数を低減でき、短い工期で補強桁の取付け作業を行なうことができる。
以上により、狭隘な鋼床版の下部空間での補強桁取付け作業が容易化されて鋼床版の補強作業工数を低減できて、短い工期で補強桁の取付け作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【実施例1】
【0022】
図1(A)は本発明の第1実施例に係る鋼床版の補強構造を示す側面図、(B)は(A)におけるA−A線断面図である。
図1(A)、(B)において、上面側を車両が走行する平板からなる鋼床版1の下面の両端部には一定間隔で逆T字状断面の横桁4,4が固定されている。
前記鋼床版1下方部位の前記横桁4,4の間には走行路方向(Y矢方向)に補強桁2が複数(この例では3個)設置されている。前記複数の補強桁2は、該補強桁2の上面を前記鋼床版1の下面に当接した形態で、該複数の補強桁2間を添接板3を介して複数のボルト7によって締付け固定されている。
【0023】
また、図1(B)のように、前記補強桁2は、前記走行路に直角な断面即ち走行方向に直角な断面をI型断面に形成され、I型断面の上面を前記鋼床版1の下面に当接させるとともに、前記I型断面のウェブ部2zの両側に前記添接板3を配置し、該添接板により前記ウェブ部2zを挟持して、複数のボルト7によって締付け固定されている。
また、前記補強桁2の前記横桁4に隣接する側は、該横桁に固定された取付部材5
に複数のボルト6によって締付け固定されている。
鋼床版式橋梁は、以上のように構成された鋼床版ユニットを走行路方向(Y矢方向)に多数列設して構成される。
【0024】
かかる第1実施例によれば、横桁4,4の間に走行路方向(Y矢方向)に沿って設置した複数の補強桁2の上面を鋼床版1の下面に当接した形態で、該複数の補強桁2間を添接板3により該補強桁2のウェブ部2zを挟持して連結するとともに、両端側の補強桁2を取付部材5,5を介して横桁4,4に固定した構造であるので、、鋼床版1の下面形状に沿って配置した複数の補強桁2のそれぞれの上面を、個別に鋼床版1の下面形状にあわせて該下面に押し付けることが可能となって、鋼床版1の下面と複数の補強桁2のそれぞれとの間に発生する隙間を従来よりも小さくすることで、両者を横桁4,4間で有効に密着させることができる。
これにより、従来の技術では補強自体が困難であった鋼床版1の下面に凹凸が形成されている場合にも、鋼床版1の補強を確実に行なうことが可能となり、鋼床版1の剛性を向上し、鋼床版1の変形による疲労破壊の発生を防止できる。
【0025】
またかかる第1実施例によれば、複数の補強桁2の上面を鋼床版1の下面に当接した形態で複数の補強桁2間を添接板3を介してボルト7で連結し、両端側の補強桁2を取付部材5を介して横桁4にボルト6で固定できるので、補強桁の取付けに伴う溶接作業は不要となり、ボルト6,7締結のみで補強桁3の取付けが可能となる。
また、横桁4,4の間に複数に分割された補強桁2を取り付けるので、各補強桁2が軽量となってハンドリング性が向上して鋼床版1の下面への搬送及び取付けが容易にできる。
以上により、狭隘な鋼床版1の下部空間での補強桁取付け作業が容易化されて鋼床版1の補強作業工数を低減できる。
【実施例2】
【0026】
図2は本発明の第2実施例を示す鋼床版の補強構造を示す側面図である。
この第2実施例においては、前記横桁4,4の間にI型断面の支持桁9を架設し、その両端部を該横桁4に固定した取付部材10に複数のボルト11によって締付け固定している。前記支持桁9の上方には、前記第1実施例と同様に、前記横桁4,4の間に走行路方向(Y矢方向)に沿って複数の補強桁2を配置している。
そして、前記支持桁9の上面には前記補強桁2毎に油圧ジャッキ8が配置され、各油圧ジャッキ8で各補強桁2の下面を押して、各補強桁2の上面を前記鋼床版1の下面に押し付けながら、前記複数の補強桁2間を添接板3を介して複数のボルト7で連結するとともに、前記横桁4,4に隣接する補強桁2を該横桁4に固定された取付部材5に添接板12を介して複数のボルト13で固定している。
尚、前記油圧ジャッキ8は、各補強桁2について複数個(好ましくは2個)設けるのが好ましい。
【0027】
尚、かかる第2実施例において、前記支持桁9を前記横桁4,4の間に配置し該横桁4,4にボルト11により仮固定し、以上のようにして、前記補強桁2の取付作業を行なった後には、前記支持桁9及び油圧ジャッキ8及びこれらに付属する取付作業要具を除去する。
【0028】
かかる第2実施例によれば、横桁4,4の間に架設した支持桁9に支持した油圧ジャッキ8で複数の補強桁2を個別に押圧して各補強桁2を鋼床版1の下面に押し付けながら該補強桁2を鋼床版1の下面に当接させるので、補強桁2の上面と鋼床版1の下面とを、高い押付け力で隙間を従来よりも小さくすることで両者を横桁4,4間で有効に密着させることができる。また、前記補強桁2の取付作業終了後には、支持桁9及び油圧ジャッキ8及びこれらに付属する取付作業要具を除去するので、取付作業終了後における部品の増加はない。
【実施例3】
【0029】
図3は本発明の第3実施例を示す鋼床版の補強方法を示す側面図である。
この例においては、前記第1〜第2実施例のように、補強桁2を走行方向に沿って複数個に分割して、連結部材である添接板3及びボルト7により仮連結し、図3のように、前記横桁4,4の間に挿入可能な支持桁32s上に油圧ジャッキ8を介して、前記連結部材である添接板3により仮固定した複数個の補強桁2を載置して一体化した架設部材200を構成し、前記2個のレバーブロック33を取付けた横梁37を取付具36を介して前記架設部材200の両端を係合する。
そして、前記支持桁32s上に油圧ジャッキ8を介して前記各補強桁2を載置して一体化した架設部材200を構成し、この架設部材200の形態で、前記レバーブロック33によって、該補強桁2を鋼床版1の下面に確実に当接する位置まで巻上げて、支持桁32sの両端を支持桁取付部材30を介して前記横桁4,4の連結部に固定する。この場合、前記油圧ジャッキ8を用いて各補強桁2の高さ調整を行う。
そして、前記補強桁2の取付作業終了後、前記支持桁32s及び油圧ジャッキ8及びこれらに付属する取付作業要具を除去する。
【0030】
かかる第3実施例によれば、鋼床版1と横桁4との2箇所の連結部を利用してレバーブロック33を取付け、レバーブロック33を用いて、支持桁32s上に油圧ジャッキ8を介して複数の補強桁2を添接板3及びボルト7により連結した形態で載置して一体化した架設部材200を吊り上げて、該補強桁2を鋼床版1に当接させるので、複数に分割された補強桁2の架設作業に人力を要さず、補強桁2の該取付作業能率が向上する。
【0031】
図4は本発明の第4実施例を示し、(A)は鋼床版の補強構造を示す側面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図、(C)は(B)におけるZ部の部分拡大断面図である。
この第4実施例においては、前記横桁4,4の間に支持桁17を架設して、該支持桁17の両端部を該横桁4,4に固定した取付部材に複数のボルト6によって固定し、該支持桁17上に長手方向に沿って複数の補強桁15を固定している。
そして、前記各補強桁15は、図4(B)、(C)のように、L字状に形成されて、該L字状の補強桁15で前記支持桁17の側面を挟持した形態で、該補強桁15と支持桁17とを貫通するボルト16aを、テーパ状の補助ピース16bを介して締め付け、ナット16cを締めることにより、前記補強桁15のボルト穴15aと該ボルト穴15に対して偏心した支持桁17のボルト穴17aとの共働によって、補強桁15が支持桁17に対して押し上げられ、該補強桁15の上面が前記鋼床版1の下面に押付けられるようになっている。
図4において、160は前記補助ピース16bを用いない通常の通しボルトを示す。
【0032】
図5は本発明の第5実施例を示し、(A)は鋼床版の補強構造を示す側面図、(B)は(A)におけるC−C線断面図、(C)は(B)におけるY部の部分拡大断面図である。
この第5実施例においては、前記横桁4,4の間に支持桁20を架設して、該支持桁20の両端部を該横桁4,4に固定した取付部材に複数のボルト6によって固定し、該支持桁20上に長手方向に沿って複数の補強桁21を固定している。
そして、かかる第5実施例においては、前記各補強桁21を前記鋼床版1の下面に当接可能な平板状部材で構成し、前記支持桁20の上部に前記平板状部材からなる各補強桁21に対向した水平フランジ部20aを形成している。
【0033】
そして、かかる第5実施例においては、該水平フランジ部20a上に溶接固定したナット25に、前記各補強桁21に対応して複数個のねじ穴を穿孔し、前記複数個のねじ穴のそれぞれに押しボルト23を螺合し、該押しボルト23を前記ナット25のねじ穴に沿って押し込むことによって該押しボルト25の上端面24で前記平板状部材からなる補強桁21の下面を押圧することにより、前記各補強桁21を前記鋼床版1の下面に当接させるように構成している。26はロックナットである。
尚、前記ナット25を設けずに、前記水平フランジ部20aにねじを加工して、このねじに前記押しボルト23をねじ込むようにしてもよい。
【0034】
以上の第4、第5実施例によれば、複数の補強桁15あるいは21を、両端部を該横桁4に連結した支持桁17あるいは20上にボルト16a、23等により固定した状態で鋼床版1の下面に当接させるので、複数の補強桁15あるいは21の支持剛性が高く、複数の補強桁15あるいは21を隙間を生じることなく、より確実に鋼床版1に当接できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、鋼床版の下面と補強桁(補強リブ)上面との隙間を従来よりも小さくし両者を有効に密着させることで、鋼床版の変形量を小さくし、疲労破壊の可能性を低減可能な鋼床版の補強構造及び補強方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(A)は本発明の第1実施例に係る鋼床版の補強構造を示す側面図、(B)は(A)におけるA−A線断面図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す鋼床版の補強構造を示す側面図である。
【図3】本発明の第3実施例における複数個の補強桁を連結した場合の鋼床版の補強方法を示す側面図である。
【図4】本発明の第4実施例を示し、(A)は鋼床版の補強構造を示す側面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図、(C)は(B)におけるZ部の部分拡大断面図である。
【図5】本発明の第5実施例を示し、(A)は鋼床版の補強構造を示す側面図、(B)は(A)におけるC−C線断面図、(C)は(B)におけるY部の部分拡大断面図である。
【図6】従来技術に係る鋼床版の補強構造を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 鋼床版
2、15、21、32 補強桁
2z ウェブ部
3 添接板
4 横桁
5 取付部材
8 油圧ジャッキ
9、17、20 支持桁
16a ボルト
16b 補助ピース
20a 水平フランジ部
23 押しボルト
30 取付部材
33 レバーブロック
200 架設部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造であって、前記横桁の間に走行方向に沿って複数の補強桁を設置し、該補強桁の上面を前記鋼床版の下面に当接した形態で、前記複数の補強桁間を連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する前記補強桁を取付部材を介して該横桁に固定したことを特徴とする鋼床版の補強構造。
【請求項2】
前記補強桁は、前記走行方向に直角な断面をI型断面に形成され、I型断面の上面を前記鋼床版の下面に当接させるとともに、前記I型断面のウェブ部の両側に前記連結部材を配置して該連結部材により前記ウェブ部を挟持したことを特徴とする請求項1記載の鋼床版の補強構造。
【請求項3】
走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造の補強方法であって、前記横桁の間に支持桁を配置するとともにその両端部を該横桁に固定して架設し、前記横桁の間に走行方向に沿って複数の補強桁を配置し、前記支持桁に支持したジャッキで各補強桁上面を前記鋼床版の下面に押し付けながら前記複数の補強桁間を連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する補強桁を取付部材を介して該横桁に固定することを特徴とする鋼床版構造の補強方法。
【請求項4】
走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造の補強方法であって、横桁の間に配置することが可能な支持桁上に複数個の補強桁を仮固定するとともに隣接する補強桁同士を仮連結して補強桁及び支持桁が一体化した架設部材を構成し、前記各補強桁の上面が鋼床版の下面に前記ジャッキにより当接可能な位置で支持桁の両端をそれぞれ前記横桁に固定して架設し、前記ジャッキで各補強桁上面を前記鋼床版の下面に押し付けながら前記複数の補強桁間を連結部材で連結するとともに、前記横桁に隣接する補強桁を取付部材を介して該横桁に固定することを特徴とする鋼床版構造の補強方法。
【請求項5】
前記取付部材または前記架設部材に吊り上げ用具をそれぞれ取付け、該吊り上げ用具により前記各補強桁の上面が鋼床版の下面に前記ジャッキにより当接可能な位置まで前記取付部材または前記架設部材を巻上げることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の鋼床版構造の補強方法。
【請求項6】
前記支持桁を前記横桁の間に該横桁に仮固定して架設し、前記補強桁の取付作業終了後、前記支持桁及びジャッキ及びこれらに付属する取付作業要具を除去することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の鋼床版構造の補強方法。
【請求項7】
走行路の床版を構成する鋼床版の下面に、一定間隔で横桁を固定してなる鋼床版構造であって、前記横桁の間に支持桁をその両端部を該横桁に固定して架設し、複数の補強桁の上面を前記鋼床版の下面に当接した形態で、各補強桁を前記支持桁にその長手方向に沿って固定したことを特徴とする鋼床版の補強構造。
【請求項8】
前記各補強桁と前記支持桁との結合部は、前記補強桁で支持桁を挟持した形態で該補強桁と支持桁とを貫通するボルトを、テーパ状の補助ピースを介して締め付けることにより、前記補強桁を前記鋼床版側に移動せしめて該補強桁を該鋼床版の下面に押付け可能に構成したことを特徴とする請求項7記載の鋼床版の補強構造。
【請求項9】
前記各補強桁を前記鋼床版の下面に当接可能な平板状部材で構成し、前記支持桁の上部に前記平板状部材からなる各補強桁に対向した水平フランジ部を形成して該水平フランジ部に前記各補強桁に対応して複数個のねじ穴を穿孔し、前記複数個のねじ穴のそれぞれに押しボルトを螺合し、該押しボルトをねじ穴に沿って押し込むことによって該押しボルトの上端面で前記平板状部材からなる補強桁の下面を押圧することにより、前記各補強桁を前記鋼床版の下面に当接させるように構成したことを特徴とする請求項7記載の鋼床版の補強構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−150862(P2008−150862A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340015(P2006−340015)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(506360446)日立造船鉄構株式会社 (1)
【出願人】(390007788)松尾橋梁株式会社 (3)
【出願人】(506122246)三菱重工橋梁エンジニアリング株式会社 (111)
【出願人】(390003241)株式会社宮地鐵工所 (8)
【Fターム(参考)】