説明

鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造および鋼床版構造

【課題】Uリブと横リブとの交差部の溶接部の端部を起点とした亀裂の発生を防止しつつ、ダイヤフラムで挟まれるUリブ内部の密閉性を保つこと。
【解決手段】床版下に設けられるUリブが橋軸方向で接合された接合部分を、橋軸方向の両側で閉塞するように、Uリブの内面と床版の下面とで囲まれる領域に配置されるダイヤフラム6を有する鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造において、Uリブに比較して軟質材で形成され、Uリブの内面および床版の下面に対して外周部分が連続しつつ密着して設けられる外周部材61と、外周部材61に比較して硬質材で形成され、Uリブの内面および床版の下面に対して密着していない外周部材の内側部分に設けられ外周部材61の形状を維持する内設部材62とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼床版におけるUリブに用いられるダイヤフラム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の床組構造としては、RC床版や合成床版、鋼床版などが存在するが、鋼床版は軽量であることや、工場にて予め製作したものを現場で接合することができるため、施工工期を短縮化することが可能であるという特徴がある。この鋼床版の多くは、比較的剛性が高いU型の縦リブ(以下、Uリブという)が用いられている。このUリブを含む鋼床版は、輸送上の制約から輸送可能な長さに分割し、現場で接合する必要がある。また、Uリブを含む鋼床版の場合、Uリブ内部は気密性が高いことから、一般的にUリブ内部は塗装などの防錆処理が実施されていないため、接合箇所の橋軸方向両端側を塞ぐダイヤフラム構造を設け、ダイヤフラムで挟まれた区間を密閉にすることで防食性を確保している。なお、部材端部から当該ダイヤフラム構造までの区間については防錆処理が実施される。
【0003】
ところで、床版上を通過する車輪によって、ダイヤフラムの配設位置近辺にUリブ断面中央から偏心した垂直下向きの力が作用した場合、Uリブにねじれ変形が生じるが、そのねじれ変形をダイヤフラムが拘束し、Uリブの断面形状を保ったままUリブがねじられるため、Uリブと横リブとの交差部の溶接端に応力がかかり、当該溶接端を起点とした疲労亀裂が生じるおそれがある(非特許文献1参照)。
【0004】
上述した事象に対処するため、従来、特許文献1に記載の鋼床版Uリブの密閉ダイヤフラム構造は、Uリブ内に配設するリブと、そのリブに接合する密閉材である複合体として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】井口ら「鋼床版SFRC舗装施工前の静的載荷試験」土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)CS10−017、333〜334頁
【特許文献1】特許第4561618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載のダイヤフラム構造において、図7〜図9を参照すると、リブは、密閉材の内側部分を除いた周縁部分に配置されている。このため、リブが設けられていない密閉材の内側部分が変形した場合、本来目的とするダイヤフラムで挟まれるUリブ内部の密閉性を保つことが困難となるおそれがある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、Uリブと横リブとの交差部の溶接部の端部を起点とした亀裂の発生を防止しつつ、ダイヤフラムで挟まれるUリブ内部の密閉性を保つことのできる鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造および鋼床版構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造は、床版下に設けられるUリブが橋軸方向で接合された接合部分を、橋軸方向の両側で閉塞するように、前記Uリブの内面と前記床版の下面とで囲まれる領域に配置されるダイヤフラムを有する鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造において、前記Uリブに比較して軟質材で形成され、前記Uリブの内面および前記床版の下面に対して外周部分が連続しつつ密着して設けられる外周部材と、前記外周部材に比較して硬質材で形成され、前記Uリブの内面および前記床版の下面に対して密着していない前記外周部材の内側部分に設けられ前記外周部材の形状を維持する内設部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
この鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造によれば、外周部材がUリブの内面および床版の下面およびダイヤフラムで囲まれる領域を密閉する。しかも、外周部材がUリブに比較して軟質材で形成されていることから、ダイヤフラムが取り付いているにも関らずUリブの断面変形を拘束することがないため、Uリブと横リブとの交差部の溶接部分に発生する応力が抑制されるので、当該溶接部分を起点とした疲労亀裂の発生を防ぐことができる。しかも、内設部材が外周部材の形状を維持することから、Uリブの内面および床版の下面に対して外周部分が連続しつつ密着する外周部材の状態を維持することができる。
【0010】
また、本発明の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造では、前記外周部材は、その外周部分に沿って凹部が形成され、当該凹部内にシール材が充填されることを特徴とする。
【0011】
この鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造によれば、凹部にシール材を充填することで、Uリブの内面と床版の下面とで囲まれる領域に対して他の部分の区画を密閉する密閉性の向上とリダンダンシーを確保することができる。
【0012】
また、本発明の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造は、前記凹部が前記外周部材の外周部分に沿って形成された溝として設けられており、かつ前記溝内に外側から貫通して前記シール材が注入される貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造によれば、貫通孔からシール材を注入することで、シール材を凹部に充填するときの施工性を向上することができる。
【0014】
また、本発明の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造では、前記外周部材は、外周縁に沿ってテーパー面が形成されていることを特徴とする。
【0015】
この鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造によれば、Uリブの内面と床版の下面とで囲まれる領域に設置するため、Uリブが延在する橋軸方向に押し込まれる際、テーパー面がUリブの内面や床版の下面に倣うため、設置時の施工性を向上することができる。
【0016】
また、本発明の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造は、前記外周部材が前記Uリブの内面および前記床版の下面に対して密着しない部分に、把手が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造によれば、Uリブの内面と床版の下面とで囲まれる領域に設置するため、Uリブが延在する橋軸方向に押し込まれる際、把手を掴むことで設置時の施工性を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、Uリブと横リブとの交差部の溶接部の端部を起点とした亀裂の発生を防止しつつ、ダイヤフラムで挟まれるUリブ内部の密閉性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造が適用される橋梁(鋼床版)の斜視図である。
【図2】図2は、Uリブにダイヤフラムを設置した状態の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造のUリブへの設置を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造が適用される橋梁(鋼床版)の斜視図である。本実施の形態の橋梁は、鋼材からなるもので、床版1と、床版1の下面にて橋軸方向(橋梁の長手方向)に沿って設けられたUリブ2と、床版1の下面にて橋軸方向に直交する幅方向に沿って設けられた横リブ3とを備えた鋼床版10を有している。
【0022】
床版1は、橋梁の橋軸方向に連続するとともに、幅方向の全域に渡り設けられた鋼板であり、車両などが走行する橋梁の床面を構成するものである。床版1の上面には、車両などの走行面として舗装などが敷設される。
【0023】
Uリブ2は、鋼材からなる断面がU型に形成されて橋軸方向に延在するとともに、幅方向で所定間隔をおいて複数並設されている。Uリブ2は、上方が開口するように配置され、床版1の下面に上端が溶接により接合される。
【0024】
横リブ3は、下端にフランジを有するT形鋼として構成されて幅方向のほぼ全域に延在するとともに、橋軸方向で所定間隔をおいて複数並設されている。横リブ3は、床版1の下面に上端が溶接により接合される。
【0025】
Uリブ2と横リブ3とは、それぞれが延在する橋軸方向と幅方向とで互いに交差して設けられている。かかる交差部においては、横リブ3に、Uリブ2を挿通する切欠部31が形成され、この切欠部31にUリブ2を通すことでUリブ2と横リブ3とが互いに交差する。さらに、切欠部31は、Uリブ2の下端の閉塞部分に対して一部もしくは全てが非接触となるように形成されている。そして、Uリブ2は、その対向する側片の外面が、横リブ3の切欠部31の内周縁に対して溶接により接合される。
【0026】
また、鋼床版10は、桁部材4が設けられている。桁部材4は、本実施の形態では箱桁として構成され、溶接による接合やボルトによる締結で箱状に組み付けられている。桁部材4は、横リブ3に接合されるとともに、橋軸方向に延在して設けられ、各横リブ3を介して床版1を支持する。この桁部材4は、図には明示しないが、地面に立設された架台(橋脚)上に載置される。また、図示しないが、桁部材4は、鈑桁として構成されていてもよい。
【0027】
図2は、Uリブにダイヤフラムを設置した状態の斜視図である。上述した橋梁(鋼床版10)において、Uリブ2を含む鋼床版10は、橋軸方向に所定の長さとされて工場で製作され、現場にて接合される。この接合部分において、Uリブ2は、スプライスプレート5によって両側片が挟まれ、当該スプライスプレート5を介して高力ボルトによって摩擦接合される。また、Uリブ2が橋軸方向で接合された接合部分において、その橋軸方向の両側は、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S1にダイヤフラム6が配置される。ダイヤフラム6によりUリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S2が密閉される。そして、接合部分である領域S1は、塗装などの防錆処理が施される。
【0028】
図3および図4は、本実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造の斜視図であり、図5は、本実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造のUリブへの設置を説明する斜視図である。
【0029】
ダイヤフラム6は、外周部材61と、内設部材62とを含み構成されている。外周部材61は、Uリブ2に比較して軟質材で形成されたもので、例えば、ゴムや、樹脂エラストマーや、それらの発泡体等弾性を有する材料であって、Uリブ2と比較して、例えばヤング係数比で、200,000,000分の1〜20,000分の1の範囲が好ましい。また、硬度(JIS K6253:2006 タイプAデュロメータ硬さ試験)はhs30〜40のものが好ましい。材質としては特に限定されないが、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)などがあげられる。外周部材61は、その外形が、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S1の断面積よりも若干大きく形成された板体として構成されている。そして、外周部材61は、上記のごとくダイヤフラム6をUリブ2内に配置した場合、Uリブ2の内面および床版1の下面に対して外周部分が連続しつつ密着して設けられる。このため、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S2が密閉される。なお、外周部材61は、弾性を有していることが好ましく、Uリブ2の内面および床版1の下面に対して外周部分をより密着させることが可能である。
【0030】
内設部材62は、外周部材61に比較して硬質材で形成されたものである。外周部材61に比較して硬質材とは、Uリブ2と同様の鋼材や、FRP(Fiberglass Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)などがある。内設部材62は、Uリブ2の内面および床版1の下面に対して密着しないように外周部材61の内側部分に設けられている。具体的に、内設部材62は、その外形が、外周部材61の外形よりも小さく形成された板体として構成されており、外周部材61の板体内に埋設されている。そして、内設部材62は、上記のごとくダイヤフラム6をUリブ2内に配置した場合、外周部材61の形状を維持する。このため、Uリブ2の内面および床版1の下面に対して外周部分が連続しつつ密着し、上記領域S2を密閉するための外周部材61の状態が維持される。
【0031】
しかも、床版1上を通過する車輪によって、ダイヤフラム6の配設位置近辺にUリブ2の断面中央から偏心した垂直下向きの力が作用した場合、外周部材61がUリブ2に比較して軟質材で形成されていることから、ダイヤフラム6が取り付いているにも関らずUリブの断面変形を拘束することがないため、Uリブと横リブとの交差部の溶接部分に発生する応力が抑制されるので、当該溶接端を起点とした疲労亀裂の発生を防ぐことが可能になる。
【0032】
本実施の形態に係る鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造では、外周部材61の外周形状は、Uリブ2と床版1とで形成される断面形状よりも大きく、内設部材62の外周形状は、Uリブ2と床版1とで形成される断面形状よりも小さく設定される。こうした構成とすることで、Uリブ2や内設部材62よりも相対的に柔軟な外周部材61が、Uリブ2または床版1と内設部材62に圧縮された状態で載置されて密閉性を高めることができる。従って、外部荷重により変形したUリブ2と内設部材62との間隔が初期設置時よりも広がった場合は、圧縮されていた外周部材61が元の形状に復元(膨張)することで密閉性が確保されやすい。
【0033】
なお、外周部材61は、板体として説明したが、この限りではない。外周部材61は、Uリブ2の内面および床版1の下面に対して外周部分が連続しつつ密着して設けられるものであればよく、例えば、図には明示しないが、板体とされた内設部材62の周囲に設けられた枠体であってもよい。この構成の場合、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S2の密閉は、外周部材61および内設部材62によってなされる。
【0034】
また、内設部材62は、外周部材61に埋設されている構成として説明したが、この限りではない。例えば、図には明示しないが、板体として構成された外周部材61の板面に内設部材62を貼り付けた構成であってもよい。また、内設部材62は、板体として説明したが、この限りではない。例えば、図には明示しないが、内設部材62は、格子状、ハニカム状など、曲げや圧縮に対して板体よりも強度が高く軽量な構成であってもよく、または、波状板など、曲げや圧縮に対して板体よりも強度が高い構成であってもよく、あるいは、多孔板など軽量な構成であってもよい。なお、内設部材62が、格子状、ハニカム状、多孔板で構成された場合、外周部材61は、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S2を閉塞するため、板体として構成される。
【0035】
ところで、上述した鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造において、外周部材61は、その外周部分に沿って凹部61aが形成されている。図4に示すように、凹部61aは、外周部材61の外周部分に沿って形成された溝として設けられている。さらに、外周部材61は、凹部61aの溝内に外側から貫通する貫通孔61bが設けられている。このように構成されたダイヤフラム6は、図5に示すように、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S1に設置された後、貫通孔61bから注入されたシール材(シリコンなど)63が凹部61a内に充填される。このため、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S2を密閉する密閉性の向上とリダンダンシーを確保することが可能になる。なお、図には明示しないが、凹部61aは溝ではなく、外周部材61の外周角部分に沿って周縁が切り欠かれて設けられていてもよい。この場合、貫通孔61bはないが、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S1に設置された後、切り欠かれた凹部61aにシール材63が直接充填される。なお、図5に示すように、領域S1におけるUリブ2の底部(接合部分)には、作業用の切欠部2aが設けられる。従って、この切欠部2aを介してUリブ2の外側から凹部61aへのシール材63の充填を容易に行うことも可能である。
【0036】
また、上述した鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造において、外周部材61は、外周縁に沿ってテーパー面61cが形成されている。図4に示すように、外周部材61に凹部が形成される場合、相対的に2つの凸部が外周部材の周縁に延在するが、この2つの凸部の外周縁に沿って各々テーパー面61cが形成される。各々のテーパー面61cは、ダイヤフラム6を押し込む側とは反対面において同方向を向いて設けられている。このようにテーパー面61cを設ければ、図5に一点鎖線で示す位置からUリブ2が延在する橋軸方向に押し込まれる際、外周部材61がUリブ2の内面や床版1の下面に摺接しながら押し込まれても、外周部材61の周縁が変形しやすく摩擦抵抗を減らすことができ、ダイヤフラム6の設置時の施工性を向上するうえで好ましい。しかも、テーパー面61cは、外周部材61の周縁が変形しやすく摩擦抵抗を減らすことで、ダイヤフラム6の設置時での外周部材61の密着性を向上するうえでも好ましい。また、後述するように、ダイヤフラム6に把手64が設けられる場合には、上記と同様の理由から、把手64の設けられた面とは反対の面側にテーパー面61cを設けることが好ましい。なお、図には明示しないが、テーパー面61cは、外周部材61の外周角部分に沿って周縁が切り欠かれて設けられた凹部61aが形成されている場合、この凹部61aと相反する側の外周角部分に設けられていてもよく、この場合は、凹部61aに充填されたシール材63を保持するうえで好ましい。さらに、図には明示しないが、テーパー面61cは、凹部61aを有さない構成において設けられていてもよい。
【0037】
また、上述した鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造において、外周部材61がUリブ2の内面および床版1の下面に対して密着しない部分に把手64が形成されている。図3および図4に示すように、把手64は、内設部材62に設けられ、ダイヤフラム6の外側に突出して形成されている。このように構成されたダイヤフラム6は、図5に示すように、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S1に設置するため、一点鎖線で示す位置からUリブ2が延在する橋軸方向に押し込まれる際、把手64を掴むことでダイヤフラム6の設置時の施工性を向上することが可能になる。なお、図には明示しないが、把手64は、内設部材62ではなく外周部材61と同じ軟質材で構成され外周部材61に設けられていてもよい。なお、上記把手64の構造に限らず、図には明示しないが、内設部材62に溝や突起などを設けておき、この溝や突起に対して着脱可能な治具を把手として適用してもよい。
【0038】
なお、上述した鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造は、外周部材61がUリブ2の内面および床版1の下面に対して外周部分が連続しつつ密着するように構成されているが、装着性を容易にするために外周部材61の外周部分がUリブ2の内面および床版1の下面に対して密着しないように構成してもよく、またはUリブ2や外周部材61の形状誤差によって外周部材61の外周部分がUリブ2の内面および床版1の下面に対して十分に密着しない場合がある。このような場合、Uリブ2に比較して軟質材で形成され、Uリブ2の内面および床版1の下面に沿って外周部分が設けられる外周部材61と、外周部材61の外周部分に沿って設けられた凹部61aに充填されるシール材63とを備える別の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造としてもよい。
【0039】
この別の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造によれば、凹部61aにシール材63を充填することで、Uリブ2の内面と床版1の下面とで囲まれる領域S2の密閉性の向上とリダンダンシーを確保することができる。しかも、外周部材61がUリブ2に比較して軟質材で形成されていることから、ダイヤフラムが取り付いているにも関らずUリブ2の断面変形を拘束することがないため、Uリブ2と横リブ3との交差部の溶接部分に発生する応力が抑制されるので、当該溶接部分を起点とした疲労亀裂の発生を防ぐことができる。
【0040】
この別の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造においても、凹部61aが外周部材61の外周部分に沿って形成された溝として設けられ、溝内に外側から貫通してシール材63が注入される貫通孔61bが設けられていてもよい。さらに、この別の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造においても、外周部材61は、外周縁に沿ってテーパー面61cが形成されていてもよい。またさらに、外周部材61に把手が形成されていてもよい。
【0041】
ところで、上述の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造を適用した鋼床版構造によれば、Uリブと横リブとの交差部の溶接部の端部を起点とした亀裂の発生を防止しつつ、Uリブで挟まれる区画の密閉性を保つことのできる鋼床版を得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1 床版
2 Uリブ
2a 切欠部
3 横リブ
4 桁部材
5 スプライスプレート
6 ダイヤフラム
61 外周部材
61a 凹部
61b 貫通孔
61c テーパー面
62 内設部材
63 シール材
64 把手
10 鋼床版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版下に設けられるUリブが橋軸方向で接合された接合部分を、橋軸方向の両側で閉塞するように、前記Uリブの内面と前記床版の下面とで囲まれる領域に配置されるダイヤフラムを有する鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造において、
前記Uリブに比較して軟質材で形成され、前記Uリブの内面および前記床版の下面に対して外周部分が連続しつつ密着して設けられる外周部材と、
前記外周部材に比較して硬質材で形成され、前記Uリブの内面および前記床版の下面に対して密着していない前記外周部材の内側部分に設けられ前記外周部材の形状を維持する内設部材と
を備えることを特徴とする鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造。
【請求項2】
前記外周部材は、その外周部分に沿って凹部が形成され、当該凹部内にシール材が充填されることを特徴とする請求項1に記載の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造。
【請求項3】
前記凹部が前記外周部材の外周部分に沿って形成された溝として設けられており、かつ前記溝内に外側から貫通して前記シール材が注入される貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造。
【請求項4】
前記外周部材は、外周縁に沿ってテーパー面が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造。
【請求項5】
前記外周部材が前記Uリブの内面および前記床版の下面に対して密着しない部分に、把手が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の鋼床版Uリブ用ダイヤフラム構造を適用したことを特徴とする鋼床版構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−40454(P2013−40454A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176331(P2011−176331)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】