説明

鋼矢板圧入引抜機

【課題】多様な継手ピッチサイズの鋼矢板に対応し得るとともに、U形鋼矢板及びZ形鋼矢板の双方に対応し得る汎用性を有する鋼矢板圧入引抜機を提供することを目的とする。
【解決手段】固定クランプ爪12と可動クランプ爪13からなるクランプ爪25を既設の鋼矢板の上端部に跨らせた状態で、クランプシリンダ15によって可動クランプ爪13を固定クランプ爪12に向けて伸長させることによりクランプする複数のクランプ装置3と、圧入,引抜する鋼矢板を、固定チャック爪52と可動チャック爪53の間に挿通した状態でチャックシリンダ54によって可動チャック爪53を固定チャック爪52に向けて伸長させることによりチャックするチャック装置10と、チャックした鋼矢板を圧入,引抜する圧入引抜シリンダ9を具備する鋼矢板圧入引抜機において、クランプ装置3のクランプ爪25を位置調節可能とした鋼矢板圧入引抜機を基本手段としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様な継手ピッチサイズの鋼矢板に対応し得るとともに、U形鋼矢板及びZ形鋼矢板の双方に対応し得る汎用性を有する鋼矢板圧入引抜機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種土木基礎工事等における鋼矢板の圧入,引抜工事においては、振動,騒音の発生が少ない静荷重型の鋼矢板圧入引抜機が採用されている。この静荷重型の鋼矢板圧入引抜機は、特許文献1に示すように、既設の鋼矢板上に定置された台座の下方に複数のクランプ装置を設けて、このクランプ装置により既設の鋼矢板をクランプすることによって反力を得て、チャック装置によりチャックした鋼矢板を圧入引抜シリンダによって地盤に圧入している。
【0003】
圧入される鋼矢板として種々のタイプが提供されており、わが国で広く普及しているものとして、U形鋼矢板がある(非特許文献1参照)。図32に示すように、U形鋼矢板31は、ほぼU形の断面形状を有しており、ウエブ31aの両端に所定の配置角度θを有するフランジ31bが連接されており、フランジ31bの開放端部に継手31cが形成されている。このU形鋼矢板31では、ウエブ31aが中立軸L1と平行に延びて、フランジ31bは継手ピッチ及び鋼矢板の型式により配置角度が変化することとなる。そして、継手31cを相互に噛合させて図33に示すように連続して圧入するものであり、圧入後の鋼矢板壁の中立軸L2上に継手31cが位置している。U形鋼矢板31の継手ピッチ38は、従来400mmのものが主流であり、その他に500mm,600mmのものが使用されており、近年700mmのものも提供されている。
【0004】
また、わが国でも使用されるとともにヨーロッパで広く普及している鋼矢板として、Z形鋼矢板がある(特許文献2,非特許文献1参照)。図34に示すように、Z形鋼矢板41は、ほぼZ形の断面形状を有しており、ウエブ41aの両端に、平行に対向して位置された一対のフランジ41bが連接されており、フランジ41bの開放端部に継手41cが形成されている。よって、ウエブ41aはフランジ41bに対して所定の配置角度θを有している。このZ形鋼矢板41では、フランジ41bが中立軸L1と平行に伸びて、ウエブ41aは継手ピッチ及び鋼矢板の型式により配置角度が変化することとなる。そして、継手41cを相互に噛合させて図35に示すように連続して圧入するものであり、圧入後の鋼矢板壁の中立軸L2の内外両側に相互に噛合した継手41cが交互に位置している。Z形鋼矢板41の継手ピッチ50は、従来575mm,580mm,630mm,670mmのものが主流であり、近年700mmのものも提供されている。
【0005】
U形鋼矢板31を圧入する場合、図36,図38に示すように、既設のU形鋼矢板31のウエブ31aを鋼矢板圧入引抜機に装備した複数のクランプ装置32でクランプすることにより、鋼矢板圧入引抜機を既設のU形鋼矢板31上に定置させるとともに、圧入時の反力を得るようにしている。これはU形鋼矢板31のフランジ31bは継手ピッチ及び鋼矢板の型式により配置角度θが変化するため、同一のクランプ装置32で同一方向にクランプするにはU形鋼矢板31の中立軸L1と平行に延びるウエブ31aをクランプする必要があるためである。
【0006】
クランプ装置32は、固定クランプ爪33と可動クランプ爪34からなり、可動クランプ爪34をクランプシリンダ35によって、固定クランプ爪33に向けて伸長させることにより、固定クランプ爪33と可動クランプ爪34の間に既設のU形鋼矢板31のウエブ31aの上端部分を押圧して保持している。
【0007】
Z形鋼矢板41を圧入する場合、図39,図41に示すように、継手41cが相互に噛合した2枚の既設のZ形鋼矢板41のフランジ41bを一体として、鋼矢板圧入引抜機に装備した複数のクランプ装置42でクランプすることにより、鋼矢板圧入引抜機を既設のZ形鋼矢板41上に定置させるとともに、圧入時の反力を得るようにしている。これはZ形鋼矢板41のウエブ41aの配置角度θは継手ピッチ及び鋼矢板の型式により違った角度を持っているため、同一のクランプ装置42で同一方向にクランプするためにZ形鋼矢板41の中立軸L1と平行に伸びているフランジ41bをクランプする必要があるためである。
【0008】
クランプ装置42は、固定クランプ爪43と可動クランプ爪44からなり、可動クランプ爪44をクランプシリンダ45によって、固定クランプ爪43に向けて伸長させることにより、固定クランプ爪43と可動クランプ爪44の間に既設のZ形鋼矢板41の2枚分のフランジ41bの先端部分を押圧して保持している。そして、Z形鋼矢板41の場合は、相互に噛合した継手41cを含んだフランジ41bをクランプするため、固定クランプ爪43と可動クランプ爪44の対向する位置には、凹部46,47が形成され、この凹部46,47によって形成される空間部に、フランジ41bより肉厚で突出している継手41cを包囲した状態でクランプしている。
【特許文献1】特公昭63−47848号公報
【特許文献2】特開2002−294691号公報
【非特許文献1】JIS A 5528 熱間圧延鋼矢板特開2002−129558
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の鋼矢板圧入引抜機は、図36,図39に示すようにクランプピッチ36,37,48,49が固定されているために、圧入するU形鋼矢板31やZ形鋼矢板41の継手ピッチ38,50が一定の範囲を超えて変化すると、即ち一定の範囲を超えて異なるサイズとなると対応できなくなり、クランプすることができなくなる。
【0010】
U形鋼矢板31の場合、図36に示すようにクランプピッチ36が400mm、クランプピッチ37が350mmの鋼矢板圧入引抜機を使用して、継手ピッチ38が400mmのU形鋼矢板31はクランプできるが、図37に示すように継手ピッチ38が500mmに拡大したU形鋼矢板31をクランプしようとすると、固定クランプ爪33と可動クランプ爪34がU形鋼矢板31のウエブ31aの範囲から逸脱してしまうため、クランプすることができなくなる。また、U形鋼矢板31のクランプ装置32は、図38に示すように押圧するクランプシリンダ35自体が可動クランプ爪34となっている。また固定クランプ爪33と可動クランプ爪34にはZ形鋼矢板41の継手41cに対応する凹部が形成されていないため、既設のZ形鋼矢板41をクランプすることができない。
【0011】
Z形鋼矢板41の場合、図39に示すようにクランプピッチ48,49ともに660mmの鋼矢板圧入引抜機を使用して、継手ピッチ50が630mmのZ形鋼矢板41はクランプできているが、図40に示すように継手ピッチ50が575mmに変化したZ形鋼矢板41をクランプしようとすると、継手41cが固定クランプ爪43と可動クランプ爪44の凹部46,47から逸脱してしまうため、クランプすることができなくなる。
【0012】
よって、従来はU形鋼矢板31とZ形鋼矢板41の継手ピッチが一定範囲を超えて変化すると、クランプ装置をそれぞれ継手ピッチに対応したサイズのものに交換する必要があり、又U形鋼矢板31とZ形鋼矢板41を同一の鋼矢板圧入引抜機を使用してクランプすることができなかった。
【0013】
一方、圧入する鋼矢板をチャックするチャック装置も、クランプ装置がU形鋼矢板とZ形鋼矢板の双方に対応するものではなかったため、双方の鋼矢板をチャックできるチャック装置は提供されていない。
【0014】
そこで本発明はこのような従来の鋼矢板圧入引抜機が有している課題を解決するため、圧入する鋼矢板の多様なサイズの継手ピッチに対応し得るとともに、U形鋼矢板及びZ形鋼矢板の双方に対応し得る汎用性を有する鋼矢板圧入引抜機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を達成するために、固定クランプ爪と可動クランプ爪からなるクランプ爪を既設の鋼矢板の上端部に跨らせた状態で、クランプシリンダによって可動クランプ爪を固定クランプ爪に向けて伸長させることによりクランプする複数のクランプ装置と、圧入,引抜する鋼矢板を、固定チャック爪と可動チャック爪の間に挿通した状態でチャックシリンダによって可動チャック爪を固定チャック爪に向けて伸長させることによりチャックするチャック装置と、チャックした鋼矢板を圧入,引抜する圧入引抜シリンダを具備する鋼矢板圧入引抜機において、クランプ装置のクランプ爪を位置調節可能とした鋼矢板圧入引抜機を提供する。そして、複数のクランプシリンダの間隔を変更することなく、クランプ装置のクランプ爪を位置調節可能とする。
【0016】
更に、固定クランプ爪と可動クランプ爪からなるクランプ爪を既設の鋼矢板の上端部に跨らせた状態で、クランプシリンダによって可動クランプ爪を固定クランプ爪に向けて伸長させることによりクランプする構成を有する前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプからなるクランプ装置と、圧入,引抜する鋼矢板を、固定チャック爪と可動チャック爪の間に挿通した状態でチャックシリンダによって可動チャック爪を固定チャック爪に向けて伸長させることによりチャックするチャック装置と、チャックした鋼矢板を圧入,引抜する圧入引抜シリンダを具備する鋼矢板圧入引抜機において、前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプの各クランプ入替シリンダを伸縮させることにより、クランプする既設の鋼矢板の中立軸と直交する方向にレールに沿って各クランプ装置をスライド自在に構成し、レールの中心線に対して、前部クランプのクランプシリンダの作用中心線をチャック装置側へ、後部クランプのクランプシリンの作用中心線をチャック装置と反対側に一定距離ずらして構成し、前部クランプと後部クランプの位置を交換することにより、前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプのクランプピッチを変更するとともに、クランプ装置のクランプ爪を位置調節可能とした鋼矢板圧入引抜機を提供する。
【0017】
そして、クランプ装置のクランプ爪を既設の鋼矢板の中立軸と平行な方向に移動可能とし、クランプ装置のクランプ爪を既設の鋼矢板の中立軸と平行な方向に移動可能とすることにより、複数のクランプ爪の間隔を変更する。複数のクランプ爪の間隔を変更することにより、多様な継手ピッチを有する鋼矢板の圧入,引抜作業を可能とした。
【0018】
更に、可動クランプ爪を支持体を介してクランプシリンダに装着することにより、可動クランプ爪のみを交換可能とし、可動クランプ爪と固定クランプ爪の対向する位置に凹部を形成し、Z形鋼矢板をクランプするときに、凹部にてZ形鋼矢板の継手部を包囲してクランプする。チャック装置は、U形鋼矢板とZ形鋼矢板の双方をそれぞれ対称位置に挿通可能な挿通孔を有する。また、チャック装置は、平面視において中央部に、圧入,引抜する鋼矢板のウエブを挿通可能に固定チャック爪と可動チャック爪を対向させて配置し、両側部に圧入,引抜する鋼矢板のフランジを対称位置に挿通可能な挿通孔を有する。そして、可動チャック爪を支持体を介してチャックシリンダに装着することにより、可動チャック爪のみを交換可能とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機によれば、鋼矢板の継手ピッチのサイズが異なるため、そのままでは既設の鋼矢板としてクランプ装置でクランプすることができない場合であっても、複数のクランプシリンダの間隔を変更することなく、クランプ爪を既設の鋼矢板の中立軸と平行な方向に移動させることにより、複数のクランプ爪の間隔を変更して、継手ピッチのサイズが異なる鋼矢板を既設杭としてクランプすることが可能となる。さらに、前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプからなるクランプ装置の前部クランプと後部クランプの位置を入れ替えて前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプのクランプピッチを変更する手段を併用することによって、より広範囲で多様な継手ピッチサイズの鋼矢板に対応し得る。
【0020】
また、クランプ爪はZ形鋼矢板の継手部を包囲して収納する凹部を有するため、Z形鋼矢板とU形鋼矢板のいずれであっても既設杭としてクランプすることができ、更にチャック装置は、U形鋼矢板とZ形鋼矢板の双方をそれぞれ対称位置に挿通可能な挿通孔としたため、U形鋼矢板とZ形鋼矢板の双方を1台の鋼矢板圧入引抜機で圧入,引抜施工をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図面に基づいて本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機の最良の実施形態を説明する。図1は本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機1の側面図、図2はその平面図である。図において、1は鋼矢板圧入引抜機であって、2は台座、3は台座2の下部に配設されて、既設の鋼矢板をクランプして鋼矢板圧入引抜機1を定置するとともに、既設の鋼矢板から反力を得るためのクランプ装置である。このクランプ装置3は、複数のクランプから構成されるものであり、図示例では前部ランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cの3本のクランプから構成されている。なお、本実施形態で説明するU形鋼矢板31は、図32,図33に示す構成を、Z形鋼矢板41は図34,図35に示す構成と同一のものであり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
Fは鋼矢板圧入引抜機1の直進方向を示す。台座2には鋼矢板圧入引抜機1の直進方向Fに沿ってスライドベース4が、圧入するU型鋼矢板の継手ピッチ以上、及びZ形鋼矢板の継手ピッチの2倍以上の距離を摺動自在に配備されている。このスライドベース4上には支持アーム5が縦軸を中心として回動自在に軸支され、この支持アーム5の前部に設けた軸受部6を中心として回動可能なガイドフレーム7が立設されている。このガイドフレーム7は、一端が支持アーム5に軸支された傾動シリンダ(図示略)の伸縮によって軸受部6を中心として傾動可能となっている。
【0023】
ガイドフレーム7には昇降体8が昇降自在に装着されている。該昇降体8の両側には左右一対の鋼矢板圧入引抜シリンダ9が取り付けられていて、この鋼矢板圧入引抜シリンダ9の一端が前記軸受部6に軸支されており、昇降体8を上下駆動するように構成されている。10は圧入,引抜作業をする鋼矢板をチャックするチャック装置であり、昇降体8の下方にあって該昇降体8に対して旋回自在に配備されている。これらの基本構成は公知の静荷重型の鋼矢板圧入引抜機と同様である。
【0024】
次に図3〜図13に基づき、鋼矢板圧入引抜機1のクランプ装置3の構成を説明する。図3は前部クランプ3a又は後部クランプ3c近傍における要部縦断面図であり、クランプ入替シリンダ11が伸長することによりクランプ装置3が巾方向(図面において右側)に移動している。なお、図示においてクランプ装置3は、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cの3個装備しているが、全て同一の構成とすることができる。
【0025】
図において、11はクランプ入替シリンダであり、一端が台座2に固定され、他端がクランプ装置3に固定してあり、このクランプ入替シリンダ11を伸縮動作させることにより、クランプ装置3は、レール26(図10参照)に沿ってクランプする既設の鋼矢板の中立軸(図33,図35参照)と直交する方向(鋼矢板圧入引抜機1の直進方向Fに対して直交する方向)にスライド自在に構成されている。図4はクランプ入替シリンダ11を縮小させてクランプ装置3を反対巾方向(図面において左側)に移動させた状態を示す要部縦断面図である。
【0026】
図5,図6はクランプ装置3のA−A部の平断面図、図7は固定クランプ爪12及び可動クランプ爪13を外した状態を示すクランプ装置3の平断面図であり、図8の(A)は固定クランプ爪12の正面図、(B)は同右側面図、(C)は同背面図、(D)は横断面図である。この固定クランプ爪12は、クランプ装置3のボルト孔19a,19bから固定クランプ爪のボルト孔12b,12d又は12a,12cに向けてボルト18a,18bを螺着することによって、クランプ装置3に脱着自在に固定されており、クランプする既設の鋼矢板の中立軸(図33,図35参照)と平行な方向(鋼矢板圧入引抜機1の直進方向Fと平行な方向)に所定量移動可能である。
【0027】
図5は、直進方向Fの反対方向に固定クランプ爪12を移動させた状態を示すものであり、ボルト孔12cと、クランプ装置3から外方に張り出したボルト孔12aとは使用しておらず、ボルト18aがボルト孔12bに、ボルト18bがボルト孔12dに螺合することによって固定されている。よって、固定クランプ爪12は直進方向Fと反対方向に所定量オフセットされている。一方、図6に示す状態は、ボルト孔12dがクランプ装置3から外方に張り出しており、ボルト18aがボルト孔12aに、ボルト18bがボルト孔12cに螺合することによって固定されている。よって、固定クランプ爪12は直進方向Fの方向に所定量オフセットされている。即ち、固定クランプ爪12は、図5,図6に示すボルト孔12a,12c或いはボルト孔12b,12dを使用してクランプ装置3に固定することにより、位置を変えることが可能である。
【0028】
図9の(A)は可動クランプ爪13の正面図、(B)は同右側面図、(C)は同背面図、(D)は横断面図である。この可動クランプ爪13は、クランプ装置3に装着されたクランプシリンダ15にボルト21a,21bにて一体に固定された可動クランプ爪支持体14のボルト孔22a,22bから可動クランプ爪13のボルト孔13a,13bにボルト23a,23bを螺着することによって、可動クランプ爪支持体14に脱着自在に固定されており、クランプする既設の鋼矢板の中立軸(図33,図35参照)と平行な方向(鋼矢板圧入引抜機1の直進方向Fと平行な方向)に所定量移動可能である。図5は、直進方向Fの反対方向に可動クランプ爪13を移動した状態を示すものであり、可動クランプ爪13のボルト孔13aと可動クランプ爪支持体14のボルト孔22aがボルト23aで一体に固定されるとともに、可動クランプ爪13のボルト孔13bと可動クランプ爪支持体14のボルト孔22bがボルト23bで一体に固定されている。よって、可動クランプ爪13は直進方向Fと反対方向に所定量オフセットされている(図10,図11に示す後部クランプ3cの状態)。
【0029】
一方、図6に示す状態は、可動クランプ爪13を前後方向に反転させ、可動クランプ爪13のボルト孔13bと可動クランプ爪支持体14のボルト孔22aがボルト23aで一体に固定されるとともに、可動クランプ爪13のボルト孔13aと可動クランプ爪支持体14のボルト孔22bがボルト23bで一体に固定されている。よって、可動クランプ爪13は直進方向Fに所定量オフセットされている(図10,図11に示す前部クランプ3aの状態)。可動クランプ爪13は、前後に反転させて固定することにより、位置を変えることが可能である。
【0030】
上記構成の固定クランプ爪12と可動クランプ爪13からクランプ爪25が構成されており、クランプ爪25は、クランプする既設の鋼矢板の中立軸(図33,図35参照)と平行な方向(鋼矢板圧入引抜機1の直進方向Fと平行な方向)に移動可能であり、複数のクランプシリンダ15の間隔を変更することなく、複数のクランプ爪25の間隔を変更することができる。そして、複数のクランプ爪25の間隔を変更することにより、クランプ装置3を交換することなく、多様な継手ピッチを有する鋼矢板を既設杭としてクランプすることができ、鋼矢板圧入引抜機1を既設杭上に定置できるとともに、既設杭から反力を得ることができる。
【0031】
また、可動クランプ爪13を可動クランプ爪支持体14を介してクランプシリンダ15に装着することにより、摩耗の大きい可動クランプ爪13のみを交換することができる。固定クランプ爪12と可動クランプ爪13の対向する位置にはそれぞれ凹部16,17を形成し、Z形鋼矢板41をクランプするときに、凹部16,17にてフランジ41bより肉厚の継手41cを包囲してクランプするようにする。よって、相互に噛合したZ形鋼矢板41のフランジ41bと継手41cを一体としてクランプすることが可能となる。前部ランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cは全て同一の構成とすればよい。なお、中央クランプ3bは、前部ランプ3aのクランプ爪25及び後部クランプ3cのクランプ爪25が移動可能であれば、前部ランプ3a及び後部クランプ3cとの間隔を相対的に変更できるので、移動機構を採用しなくともよい。
【0032】
図10はクランプ装置3の配置構成を示す鋼矢板圧入引抜機1の側面図、図11はクランプ装置3の部分拡大側断面図である。前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cをクランプする既設の鋼矢板の中立軸(図33,図35参照)と直交する方向にスライドさせるためのレール26の中心線26aと、可動クランプ爪13を移動させるクランプシリンダ15の作用中心線15aとがクランプする既設の鋼矢板の中立軸(図33,図35参照)と平行な方向へ距離dだけずれる形状にして配置している。即ち、レール26の中心線26aに対して、前部クランプ3aのクランプシリンダ15の作用中心線15aをチャック装置10側へ、後部クランプ3cのクランプシリンダ15の作用中心線15aをチャック装置10と反対側に距離dだけずらして構成している。また、図10に示すように前部クランプ3aと後部クランプ3cとは垂直線に対して線対称の形状としてあり、前部クランプ3aと後部クランプ3cの位置を入替えることにより前部クランプ3aと中央クランプ3b間及び中央クランプ3bと後部クランプ3c間の距離(クランプピッチ)を変化させることが可能となる。
【0033】
図12は、前部クランプ3a及び後部クランプ3cが鋼矢板圧入引抜機1の進行方向Fに対して左へ,中央クランプ3bが右へスライドしている状態を示す要部平面図であり、クランプ入替シリンダ11は、前部クランプ3a及び後部クランプ3cは同一方向へ、中央クランプ3bは、前部クランプ3a及び後部クランプ3cに対して反対方向に伸縮させるように配置してある。これはクランプ装置3は既設のU形鋼矢板31のウエブ31a、或いは既設の2本のZ形鋼矢板41の継手41cを含むフランジ41bをクランプするため、前部クランプ3a及び後部クランプ3cは中央クランプ3bとは左右の位置関係が逆になるため、クランプ入替シリンダ11の伸縮方向もそれぞれのポジションに移動するスピードが同調し易い、同じ方向としている。よって、図12に示す状態では、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプ入替えシリンダ11が全て縮小した状態となっている。
【0034】
図13は、図12とは逆に前部クランプ3a及び後部クランプ3cが鋼矢板圧入引抜機1の進行方向Fに対して右へ,中央クランプ3bが左へスライドしている状態を示しており、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプ入替えシリンダ11が全て伸長した状態となっている。
【0035】
次に図14〜図18に基づき、鋼矢板圧入引抜機1のチャック装置10の構成を説明する。図14はチャック装置10の要部平断面図である。51は挿通孔であり、U形鋼矢板31とZ形鋼矢板41の双方をそれぞれ対称位置に挿通可能である。そのために、平面視において中央部に、圧入,引抜するU形鋼矢板31のウエブ31a及びZ形鋼矢板41のウエブ41aを挿通可能に固定チャック爪52と可動チャック爪53を対向させて配置し、両側部に圧入,引抜するU形鋼矢板31のフランジ31bとZ形鋼矢板41のフランジ41bを対称位置に挿通可能な挿通孔51aと51bを有している。よって、挿通孔51は同一形状の挿通孔51aと51bが固定チャック爪52と可動チャック爪53の間を介して連通した形状を有する。54はチャックシリンダであり、可動チャック爪53を固定チャック爪52に向けて伸縮させることにより、固定チャック爪52と可動チャック爪53との間に挿通されたU形鋼矢板31のウエブ31a及びZ形鋼矢板41のウエブ41aを押圧して保持することができる。
【0036】
固定チャック爪52は、ボルト56によってチャック装置10に脱着自在に固定されている。可動チャック爪53は、チャック装置10に装着されたチャックシリンダ54にボルト57にて一体に固定された可動チャック爪支持体55にボルト58で脱着自在に固定されている。よって、摩耗の大きい可動チャック爪53のみを交換することができる。固定チャック爪52と可動チャック爪53の対向する位置にはそれぞれ凹部59,60を形成し、ウオータージェット用の管(図示略)を配置する管路を確保できるようにしてある。
【0037】
図15,図16はチャック装置10で、U形鋼矢板31をチャックする状態を示しており、図15のフランジ31bが下方に位置する状態であっても、図16のフランジ31bが上方に位置する状態であっても挿通可能であり、U形鋼矢板31を対象位置に挿通してチャックすることができる。また、図17,図18はチャック装置10で、Z形鋼矢板41をチャックする状態を示しており、図17,図18に示すようにフランジ41bを相互に反転させた対称位置に挿通してチャックすることができる。これらの構成により、圧入,引抜作業を行う次のU形鋼矢板31或いはZ形鋼矢板41を挿通孔51に挿通してチャックする際に、チャック装置10の旋回動作を少なくすることができ、圧入,引抜作業を効率的に行うことができる。
【0038】
鋼矢板圧入引抜機1には、図1に示すように台座2の後部に自走補助ローラ装置61が装備されている。図19は自走補助ローラ装置61の部分平断面図、図20は部分側断面図、図21は後方からの部分断面図であり、自走補助ローラ装置61は、クランプする既設の鋼矢板の中立軸(図33,図35参照)と直交する軸を中心として回動する自走補助ローラ61aと、自走補助ローラ61aを昇降させる自走補助シリンダ61bから構成されている。自走補助シリンダ61bを伸縮動作させることにより、自走補助ローラ61aによって既設のU形鋼矢板31及びZ形鋼矢板41の上端面を押圧したり、或いは離反させることができる。この自走補助ローラ装置61は後述するように、鋼矢板圧入引抜機1が連続施工のために、既設の鋼矢板上を自走する場合に、鋼矢板圧入引抜機1の自重を支えるとともに、安定した姿勢を保つためのものである。
【0039】
上記構成の鋼矢板圧入引抜機1を使用して、既設のZ形鋼矢板41をクランプして定置するとともに反力を得て、新たなZ形鋼矢板を圧入施工する施工状態を図22に基づき説明する。図22(A)は、相互に継手41cを噛合して圧入されている既設のZ形鋼矢板41e,41f,41g,41hの噛合した継手41cとフランジ41bをそれぞれ前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cでクランプし、圧入する1枚目のZ形鋼矢板41iを圧入終了後、スライドベース4を伸長させて圧入する2枚目のZ形鋼矢板41jをチャック装置10でチャックして圧入作業をしている状態である。
【0040】
図22(A)に示すように、2枚目のZ形鋼矢板41jを充分な支持力が得られるまで圧入した後に、図22(B)に示すように、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cを開放し、昇降体8を上昇させて、鋼矢板圧入引抜機1を上昇させる。このとき、自走補助ローラ装置61の自走補助シリンダ61bを伸長させて、自走補助ローラ61aを下降させて既設のZ形鋼矢板41eの上端部を押圧した状態で行う。これにより、鋼矢板圧入引抜機1は安定した状態で圧入作業中のZ形鋼矢板41jに支持される。
【0041】
次に、図22(B)に示す状態から図22(C)に示すように、1枚の既設のZ形鋼矢板41の継手ピッチ長さだけスライドベース4を前方に移動させる。そして、図22(C)に示す状態から、自走補助ローラ装置61の自走補助シリンダ61bを上昇させて自走補助ローラ61aを上昇させながら、昇降体8を下降させ、鋼矢板圧入引抜機1を下降させて、既設のZ形鋼矢板41f,41g,41h,41iの噛合した継手41cとフランジ41bをそれぞれ前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cでクランプする。その後Z形鋼矢板41jの圧入作業を完了させ、スライドベース4を1枚のZ形鋼矢板41の継手ピッチ長さ分前方に移動させ、次のZ形鋼矢板をチャックして圧入作業を行う。以後順次この動作を繰り返すことにより、既設のZ形鋼矢板41上を自走しながら、圧入作業を行うことができる。
【0042】
図23は、U形鋼矢板31を圧入施工する施工状態を示すものであり、(A)は相互に継手31cを噛合して圧入されている既設のU形鋼矢板31e,31f,31g,31hの内、U形鋼矢板31f,31g,31hの各ウエブ31aをそれぞれ前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cでクランプし、圧入する1枚目のU形鋼矢板31iを圧入終了後、スライドベース4を伸長させて圧入する2枚目のU形鋼矢板31jをチャック装置10でチャックして圧入作業をしている状態である。
【0043】
図23(A)に示すように、2枚目のU形鋼矢板31jを充分な支持力が得られるまで圧入した後に、図23(B)に示すように、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cを開放し、昇降体8を上昇させて、鋼矢板圧入引抜機1を上昇させる。このとき、自走補助ローラ装置61の自走補助シリンダ61bを伸長させて、自走補助ローラ61aを下降させて既設のU形鋼矢板31eの上端部を押圧した状態で行う。これにより、鋼矢板圧入引抜機1は安定した状態で圧入作業中のU形鋼矢板31jに支持される。
【0044】
次に、図23(B)に示す状態から図23(C)に示すように、1枚の既設のU形鋼矢板31の継手ピッチ長さだけスライドベース4を前方に移動させる。そして、図23(C)に示す状態から、自走補助ローラ装置61の自走補助シリンダ61bを上昇させて自走補助ローラ61aを上昇させながら、昇降体8を下降させ、鋼矢板圧入引抜機1を下降させて、既設のU形鋼矢板31g,31h,31iのそれぞれのウエブ31aを前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cでクランプする。その後U形鋼矢板31jの圧入作業を完了させ、スライドベース4を1枚のU形鋼矢板31の継手ピッチ長さ分前方に移動させ、次のU形鋼矢板をチャックして圧入作業を行う。以後順次この動作を繰り返すことにより、既設のU形鋼矢板31上を自走しながら、圧入作業を行うことができる。
【0045】
なお、施工時に自走補助ローラ装置61を使用するのは、鋼矢板圧入引抜機1の重量は、圧入,引抜作業をするZ形鋼矢板41、U形鋼矢板31の最大継手ピッチによって略決定し相当な重量になるが、最小の継手ピッチのZ形鋼矢板41、U形鋼矢板31をチャックして自走する場合、Z形鋼矢板41、U形鋼矢板31の強度が弱く1枚のZ形鋼矢板41、U形鋼矢板31で鋼矢板圧入引抜機1の全自重を支えることが困難なためである。そのため、自走補助ローラ装置61で既設のZ形鋼矢板41、U形鋼矢板31の上端部を押圧して、鋼矢板圧入引抜機1を支えるようにしてある。なお、圧入作業中のZ形鋼矢板41、U形鋼矢板31(図示例では、Z形鋼矢板41i,U形鋼矢板31i)で鋼矢板圧入引抜機1の全重量を安定して支えることが可能な場合は、自走補助ローラ装置61は使用する必要がない。
【0046】
そして、本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機1のクランプ装置3が多様な継手ピッチサイズのU形鋼矢板31及びZ形鋼矢板41をクランプできることを具体的に説明する。図24はU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の継手ピッチ670mm,675mm,700mmに対応可能なクランプ装置3の位置関係を示す平面説明図、図25は側面説明図である。前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプシリンダ15のクランプピッチ65(作用中心間距離)が660mmになるように構成している。そして、前部クランプ3aの固定クランプ爪12及び可動クランプ爪13はクランプする既設のU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の中立軸(図33,図35参照)と平行に前方(チャック装置10側)に25mm移動させ、後部クランプ3cは同様に後方(チャック装置10と反対方向)へ25mm移動させるている。これにより、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプ爪25(固定クランプ爪12+可動クランプ爪13)のクランプ爪ピッチ66(クランプ爪25の中心間距離)が685mmになる。よって、図25に示すように、前部クランプ3aからは前方にオフセットした可動クランプ爪13が視認され、後部クランプ3cからは後方にオフセットした可動クランプ爪13が視認される状態となる。
【0047】
クランプするU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の継手ピッチを670mm,675mm,700mmとすればクランプ爪25の中心部とU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の継手ピッチのずれが最大15mmとなり、U形鋼矢板31の場合はウエブ31aの範囲に収まり、Z形鋼矢板41の場合にも継手41cが凹部16,17内に収まるとともに相互に噛合した2枚のフランジ41bの範囲に収まるため、これらの継手ピッチを有するU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41を同一の鋼矢板圧入引抜機1で汎用的にクランプすることができる。併せて、チャック装置10の挿通孔51をこれらのサイズの継手ピッチを有するU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41を挿通可能なサイズとしておくことにより、圧入,引抜作業が可能となる。
【0048】
図26は、U形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の継手ピッチ630mmに対応可能なクランプ装置3の位置関係を示す平面説明図、図27は側面説明図である。前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプシリンダ15のクランプピッチ65(作用中心間距離)が660mmになるように構成している。そして、前部クランプ3aの固定クランプ爪12及び可動クランプ爪13はクランプする既設のU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の中立軸(図33,図35参照)と平行に後方(チャック装置10と反対方向)に25mm移動させ、後部クランプ3cは同様に前方(チャック装置10側)へ25mm移動させるている。これにより、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプ爪25(固定クランプ爪12+可動クランプ爪13)のクランプ爪ピッチ66(クランプ爪25の中心間距離)が635mmになる。よって、図27に示すように、前部クランプ3aからは後方にオフセットした可動クランプ爪13が視認され、後部クランプ3cからは前方にオフセットした可動クランプ爪13が視認される状態となる。
【0049】
クランプするU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の継手ピッチを630mmとすればクランプ爪25の中心部とU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41継手ピッチのずれが最大5mmとなり、U形鋼矢板31の場合はウエブ31aの範囲に収まり、Z形鋼矢板41の場合にも継手41cが凹部16,17内に収まるとともに相互に噛合した2枚のフランジ41bの範囲に収まるため、これらの継手ピッチを有するU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41を同一の鋼矢板圧入引抜機1で汎用的にクランプすることができる。チャック装置10の挿通孔51のサイズを選択することは図24,図25に示す場合と同様である。
【0050】
図28は、U形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の継手ピッチ575mm,580mmに対応可能なクランプ装置3の位置関係を示す平面説明図、図29は側面説明図である。この場合は、前部クランプ3aと後部クランプ3cを入れ替えて、前方(チャック装置10側)に後部クランプ3cを、後方に前部クランプ3aを配備し、中央にはそのまま中央クランプ3bを配備する。これにより前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプシリンダ15のクランプピッチ65(作用中心間距離)を560mmに変更することができる。そして、後方に配備されている前部クランプ3aの固定クランプ爪12及び可動クランプ爪13はクランプする既設のU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の中立軸(図33,図35参照)と平行に後方(チャック装置10と反対方向)に25mm移動させ、前方に配備されている後部クランプ3cは前方(チャック装置10側)へ25mm移動させるている。これにより、前部クランプ3a,中央クランプ3b,後部クランプ3cのクランプ爪25(固定クランプ爪12+可動クランプ爪13)のクランプ爪ピッチ66(クランプ爪25の中心間距離)が585mmになる。
【0051】
よって、図29に示すように、クランプ3aとクランプ3cの位置が入れ替わり、クランプ3aがチャック装置10と反対方向の後部に、クランプ3cがチャック装置10方向の前方に位置している。また、クランプ3aからは後方にオフセットした可動クランプ爪13が視認され、クランプ3cからは前方にオフセットした可動クランプ爪13が視認される状態となる。
【0052】
クランプするU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41の継手ピッチを575mm,580mmとすればクランプ爪25の中心部とU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41継手ピッチのずれが最大10mmとなり、U形鋼矢板31の場合はウエブ31aの範囲に収まり、Z形鋼矢板41の場合にも継手41cが凹部16,17内に収まるとともに相互に噛合した2枚のフランジ41bの範囲に収まるため、これらの継手ピッチを有するU形鋼矢板31又はZ形鋼矢板41を同一の鋼矢板圧入引抜機1で汎用的にクランプすることができる。チャック装置10の挿通孔51のサイズを選択することは図24,図25に示す場合と同様である。
【0053】
このように、前記した実施例によれば、継手ピッチが600mm,700mmのU形鋼矢板31や、継手ピッチが575mm,580mm,630mm,670mm,675mm,700mmのZ形鋼矢板41を1台の鋼矢板圧入引抜機1にてクランプすることができるとともに、チャックすることができて、圧入,引抜作業を行うことができる。また、固定クランプ爪12及び可動クランプ爪13の移動量やサイズを変更することにより、更に広範囲の継手ピッチにも対応することが可能であり、現在使用されている継手ピッチが400mm,500mmのU形鋼矢板31やその他の継手ピッチのU形鋼矢板31やZ形鋼矢板41を施工することも可能である。なお、本発明は、U形鋼矢板31やZ形鋼矢板41に特に効果を発揮するが、ハット形鋼矢板や他の形状の鋼矢板への適用も可能であり、特にクランプ装置3はそのまま適用することが可能である。
【0054】
図30はU形鋼矢板31の1枚目の施工状態を示す略平面図、図31はZ形鋼矢板41の1枚目の施工状態を示す略平面図である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機によれば、鋼矢板の継手ピッチのサイズが異なるため、そのままでは既設の鋼矢板としてクランプ装置でクランプすることができない場合であっても、複数のクランプシリンダの間隔を変更することなく、クランプ爪を既設の鋼矢板の中立軸と平行な方向に移動させることにより、複数のクランプ爪の間隔を変更して、継手ピッチのサイズが異なる鋼矢板を既設杭としてクランプすることが可能となる。そのため、多様な継手ピッチサイズの鋼矢板に対応し得る。また、クランプ爪はZ形鋼矢板の継手部を包囲して収納する凹部を有するため、Z形鋼矢板とU形鋼矢板のいずれであっても既設杭としてクランプすることができ、更にチャック装置は、U形鋼矢板とZ形鋼矢板の双方をそれぞれ対称位置に挿通可能な挿通孔としたため、U形鋼矢板とZ形鋼矢板の双方を1台の鋼矢板圧入引抜機で圧入,引抜施工をすることができる。そのため、多様な継手ピッチサイズの鋼矢板に対応し得るとともに、U形鋼矢板及びZ形鋼矢板の双方に対応し得る汎用性を有する鋼矢板圧入引抜機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明にかかる鋼矢板圧入引抜機の側面図。
【図2】同平面図。
【図3】クランプ装置の要部縦断面図。
【図4】クランプ装置の要部縦断面図。
【図5】図3のA−A部の平断面図。
【図6】図3のA−A部の平断面図。
【図7】クランプ爪を外した状態を示すクランプ装置の平断面図。
【図8】(A)は固定クランプ爪の正面図、(B)は同右側面図、(C)は同背面図、(D)は横断面図。
【図9】(A)は可動クランプ爪の正面図、(B)は同右側面図、(C)は同背面図、(D)は横断面図。
【図10】鋼矢板圧入引抜機の側面図。
【図11】クランプ装置の部分拡大側断面図。
【図12】クランプ装置の要部平面図。
【図13】クランプ装置の要部平面図。
【図14】チャック装置の要部平断面図。
【図15】チャック装置の要部平断面図。
【図16】チャック装置の要部平断面図。
【図17】チャック装置の要部平断面図。
【図18】チャック装置の要部平断面図。
【図19】自走補助ローラ装置の部分平断面図。
【図20】同部分側断面図。
【図21】同部分断面図。
【図22】Z形鋼矢板の施工状態を示す説明図。
【図23】U形鋼矢板の施工状態を示す説明図。
【図24】クランプ状態を示す説明図。
【図25】鋼矢板圧入引抜機の側面図。
【図26】クランプ状態を示す説明図。
【図27】鋼矢板圧入引抜機の側面図。
【図28】クランプ状態を示す説明図。
【図29】鋼矢板圧入引抜機の側面図。
【図30】U形鋼矢板の施工状態を示す平面図。
【図31】Z形鋼矢板の施工状態を示す平面図。
【図32】U形鋼矢板の平面図。
【図33】U形鋼矢板の施工状態を示す平面図。
【図34】Z形鋼矢板の平面図。
【図35】Z形鋼矢板の施工状態を示す平面図。
【図36】U形鋼矢板のクランプ状態を示す説明図。
【図37】U形鋼矢板のクランプ状態を示す説明図。
【図38】従来のU形鋼矢板のクランプ装置の平断面図。
【図39】Z形鋼矢板のクランプ状態を示す説明図。
【図40】Z形鋼矢板のクランプ状態を示す説明図。
【図41】従来のZ形鋼矢板のクランプ装置の平断面図。
【符号の説明】
【0057】
1…鋼矢板圧入引抜機
2…台座
3…クランプ装置
3a…前部クランプ
3b…中央クランプ
3c…後部クランプ
4…スライドベース
5…支持アーム
6…軸受部
7…ガイドフレーム
8…昇降体
9…鋼矢板圧入引抜シリンダ
10…チャック装置
11…クランプ入替シリンダ
12…固定クランプ爪
13…可動クランプ爪
25…クランプ爪
15…クランプシリンダ
14…可動クランプ爪支持体
16,17…凹部
31…U形鋼矢板
41…Z形鋼矢板
31a,41a…ウエブ
31b,41b…フランジ
31c,41c…継手
L1,L2…中立軸
38,50…継手ピッチ
51,51a,51b…挿通孔
52…固定チャック爪
53…可動チャック爪
54…チャックシリンダ
55…可動チャック爪支持体
61…自走補助ローラ装置
61a…自走補助ローラ
61b…自走補助シリンダ
65…クランプピッチ
66…クランプ爪ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定クランプ爪と可動クランプ爪からなるクランプ爪を既設の鋼矢板の上端部に跨らせた状態で、クランプシリンダによって可動クランプ爪を固定クランプ爪に向けて伸長させることによりクランプする複数のクランプ装置と、圧入,引抜する鋼矢板を、固定チャック爪と可動チャック爪の間に挿通した状態でチャックシリンダによって可動チャック爪を固定チャック爪に向けて伸長させることによりチャックするチャック装置と、チャックした鋼矢板を圧入,引抜する圧入引抜シリンダを具備する鋼矢板圧入引抜機において、
クランプ装置のクランプ爪を位置調節可能としたことを特徴とする鋼矢板圧入引抜機。
【請求項2】
複数のクランプシリンダの間隔を変更することなく、クランプ装置のクランプ爪を位置調節可能とした請求項1記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項3】
固定クランプ爪と可動クランプ爪からなるクランプ爪を既設の鋼矢板の上端部に跨らせた状態で、クランプシリンダによって可動クランプ爪を固定クランプ爪に向けて伸長させることによりクランプする構成を有する前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプからなるクランプ装置と、圧入,引抜する鋼矢板を、固定チャック爪と可動チャック爪の間に挿通した状態でチャックシリンダによって可動チャック爪を固定チャック爪に向けて伸長させることによりチャックするチャック装置と、チャックした鋼矢板を圧入,引抜する圧入引抜シリンダを具備する鋼矢板圧入引抜機において、
前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプの各クランプ入替シリンダを伸縮させることにより、クランプする既設の鋼矢板の中立軸と直交する方向にレールに沿って各クランプ装置をスライド自在に構成し、レールの中心線に対して、前部クランプのクランプシリンダの作用中心線をチャック装置側へ、後部クランプのクランプシリンダの作用中心線をチャック装置と反対側に一定距離ずらして構成し、前部クランプと後部クランプの位置を交換することにより、前部クランプ,中央クランプ及び後部クランプのクランプピッチを変更するとともに、クランプ装置のクランプ爪を位置調節可能としたことを特徴とする鋼矢板圧入引抜機。
【請求項4】
クランプ装置のクランプ爪を既設の鋼矢板の中立軸と平行な方向に移動可能とした請求項1,2又は3記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項5】
クランプ装置のクランプ爪を既設の鋼矢板の中立軸と平行な方向に移動可能とすることにより、複数のクランプ爪の間隔を変更する請求項1,2,3又は4記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項6】
複数のクランプ爪の間隔を変更することにより、多様な継手ピッチを有する鋼矢板の圧入,引抜作業を可能とした請求項1,2,3,4又は5記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項7】
可動クランプ爪を支持体を介してクランプシリンダに装着することにより、可動クランプ爪のみを交換可能とした請求項1,2,3,4,5又は6記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項8】
可動クランプ爪と固定クランプ爪の対向する位置に凹部を形成し、Z形鋼矢板をクランプするときに、凹部にてZ形鋼矢板の継手部を包囲してクランプする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項9】
チャック装置は、U形鋼矢板とZ形鋼矢板の双方をそれぞれ対称位置に挿通可能な挿通孔を有する請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項10】
チャック装置は、平面視において中央部に、圧入,引抜する鋼矢板のウエブを挿通可能に固定チャック爪と可動チャック爪を対向させて配置し、両側部に圧入,引抜する鋼矢板のフランジを対称位置に挿通可能な挿通孔を有する請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の鋼矢板圧入引抜機。
【請求項11】
可動チャック爪を支持体を介してチャックシリンダに装着することにより、可動チャック爪のみを交換可能とした請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10記載の鋼矢板圧入引抜機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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