説明

鋼管または鋼管杭の把持装置

【課題】把持装置をより軽量かつ強固な構造とすると共に主軸と鋼管または鋼管杭側との連結を簡単にした鋼管または鋼管杭の把持装置の提供
【解決手段】先端部に鋼管杭が接続される主軸5の他方の端部に、主軸5にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置を備え、主軸5に回転力を付与するための回転駆動装置とを備える鋼管杭の打込み装置に用いられ、鋼管杭と主軸5とを接続するための鋼管杭の把持装置であって、主軸5の先端部に、楔支承用テーパー状傾斜面16を有するガイド体3が、主軸5とのねじ式結合により接続され、テーパー状傾斜面に係合する斜面および押圧部を有する複数の分割型楔片4が配置され、主軸5の下面は分割型楔片4の上面を押圧する押圧面とされ、ガイド体3には、鋼管杭側のストッパ22に係合して共回りを防止する係合部21が設けられて、主軸5に対してガイド体3は昇降可能にかつ回転不能に装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の打込みおよび引抜き装置等に用いられる鋼管または鋼管杭の把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭の建て込み装置としては、油圧バイブレータ等の加振装置を搭載した掘削機のスピンドルに鋼管杭を連結し、鋼管杭を軸心の回りに回転させると共に、鋼管杭に軸心方向の振動を与えながら押圧力を加えて建て込むようにする鋼管杭の建て込み装置が知られている(例えば、特許文献1照)。
また、振動杭打ち装置に用いられる杭の把持装置は、従来公知の油圧式のチャック装置が用いられている。例えば、特公昭57−43696号公報(特許文献2)等に示されるように、(1)一対の顎を有し、一方は固定顎で、他方は開放顎となっており、開放顎を油圧シリンダーにて作動させて、一対の顎にて鋼杭を直接もしくは、鋼杭に固着されたチャッキングプレートと呼称される鋼板を、油圧力による強固に掴む装置が用いられている。
このような把持装置を軽量化するために、(2)特公昭58−51090号公報(特許文献3)に記載された発明では、クサビ作用やテコ作用を応用し、軽量化する発明がなされている。
また、従来、ロッドに軸線方向の起振力を往復振動力として付与する装置も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平2002−371555号公報
【特許文献2】特公昭57−43696号公報
【特許文献3】特公昭58−51090号公報
【特許文献4】特開平2003−295160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記(1)の把持装置は、油圧シリンダーを内蔵し、油圧にて強固に把持することが出来る一方で、油圧シリンンダーおよびその取付部(ブラケットおよび連結軸)を含む分、把持装置の重量が重くなり、これらの部分を含めて加振装置により杭とともに振動させる必要があるため、本来、杭のみを振動させるのに必要な加振能力以上の過大な加振能力が必要となる。
また、そのため、過大な振動を与えるようになるため、エネルギー効率が低下するともに、杭打ちに伴う振動や騒音が増大するという課題がある。また、油圧シリンダーを杭打ち時に振動させるため、油圧装置の耐久性にも課題がある。
前記(2)の場合は、前記従来の場合と同様、油圧シリンダーを内蔵する構造形態ため、加振装置により加振する部分に油圧シリンダーを含み、加振する部分の軽量化には限界があるとともに、油圧シリンダーを杭打ち時に振動させるため、油圧装置の耐久性にも課題がある。
また、加振装置側と把持装置側との連結を多数のボルトを使用してなす方法も想定されるが、一般に鋼管杭を杭打ち機にて把持する作業は、鋼管杭を鉛直に起立させた後に、鋼管杭の頭部を、上空にて杭打ち機にて把持することになるので、多数のボルトの緊結作業を、作業者が上空にて高所作業車等を用いて行うことになり、作業が煩雑で安全性にも課題があるため、より簡単で、上空作業を伴わない連結構造が求められる。
また、鋼管杭を含む鋼管類の搬送等にも適用でき、地上作業者を少なくすることができる鋼管または鋼管杭の把持装置が望まれている。
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、把持装置をより軽量かつ強固な構造とすると共に回転駆動装置により回転される主軸と鋼管または鋼管杭側との連結をより簡単にした鋼管または鋼管杭の把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の鋼管の把持装置においては、回転駆動装置により回転される主軸を備え、その主軸と鋼管とを接続するための鋼管の把持装置であって、前記主軸の先端部に、楔支承用テーパー状傾斜面を有するガイド体が、主軸とガイド体のいずれか一方に設けられた雄ねじと他方に設けられた雌ねじとのねじ式結合により接続され、前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管の側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする。
また、第2発明の鋼管杭の把持装置においては、先端部に鋼管杭が接続される主軸の他方の端部に、その主軸にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置を備え、かつ前記主軸に回転力を付与するための回転駆動装置とを備えてなる鋼管杭の打込みおよび引抜き装置に用いられ、鋼管杭と前記主軸とを接続するための鋼管杭の把持装置であって、前記主軸の先端部に、楔支承用テーパー状傾斜面を有するガイド体が、主軸とガイド体のいずれか一方に設けられた雄ねじと他方に設けられた雌ねじとのねじ式結合により接続され、前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管杭の側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管杭側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする。
また、第3発明の鋼管杭の把持装置では、先端部に鋼管杭が接続される主軸の他方の端部に、その主軸にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置を備え、かつ前記主軸に回転力を付与するための回転駆動装置とを備えてなる鋼管杭の打込みおよび引抜き装置に用いられ、鋼管杭と前記主軸とを接続するための鋼管杭の把持装置であって、少なくとも先端部は中空とされた前記主軸の先端部内側に雌ねじ孔が設けられ、前記雌ねじ孔にガイド体の上部の雄ねじ軸部が螺合されて接続され、前記ガイド体には、その下部の外周側面が上方に向かって漸次縮径するように傾斜する楔支承用テーパー状傾斜面を有し、
前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管杭の内側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管杭側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする。
また、第4発明の鋼管杭の把持装置においては、先端部に鋼管杭が接続される主軸の他方の端部に、その主軸にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置を備え、かつ前記主軸に回転力を付与するための回転駆動装置とを備えてなる鋼管杭の打込みおよび引抜き装置に用いられ、鋼管杭と主軸とを接続するための鋼管杭の把持装置であって、該主軸の先端部には、円盤状フランジが接合されており、その円盤状フランジの外周側面は雄ねじ部が設けられ、その雄ねじ部にガイド体の上部の雌ねじ孔が連結されて接続され、
前記ガイド体には、その下部の内周側面が上方に向かって漸次拡径するように傾斜する楔支承用テーパー状傾斜面を有し、前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管杭の外側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管杭側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
第1発明によると、回転駆動装置により回転される主軸と鋼管とを、主軸に対して昇降されるガイド体により分割型楔片を鋼管の側面を複数の分割型楔片により押圧して鋼管杭を把持することができる。また、従来のように把持手段に油圧ジャッキを使用しない形態であり、楔支承用テーパー状傾斜面を有するガイド体により複数の分割型楔片を鋼管の側面に押圧するように噛み込ませる形態であるので、構造が簡単であると共に強固な把持装置とすることができる。また、把持装置の構造も簡単であるので、製作が容易で、安価な把持装置とすることができる。
第2発明によると、鋼管杭の打ち込みおよび引き抜き装置により加振される把持装置の部分に、従来のように油圧シリンダを備えていないので、その分、把持装置の軽量化を図ることができる。また、楔支承用テーパー状傾斜面を有するガイド体により複数の分割型楔片を鋼管の側面に押圧するように噛み込ませる楔を使用した機械的な把持装置であるので、強固であると共に、把持装置の耐久性を向上させることができる。また、把持装置の構造も簡単であるので、製作が容易で、安価な把持装置とすることができる。
また、楔支承用テーパー状傾斜面を有するガイド体が、主軸とガイド体のいずれか一方に設けられた雄ねじと他方に設けられた雌ねじとのねじ式結合により連結されているので、これらの供回りを防止した状態で、主軸を一方向または逆方向に回転させることにより、ガイド体を上昇させて各分割型楔片を鋼管杭の側面に向かって押圧させるように横移動して、鋼管杭を把持することができる。
第3発明によると、先端部が中空とされている主軸の雌ねじ孔に、ガイド体の雄ねじ軸部がねじ込まれ、ガイド体の下部には、上方に向かって漸次縮径するように傾斜する楔支承用テーパー状傾斜面が設けられ、また、ガイド体には鋼管側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられているので、主軸を回転させることで、ガイド体を主軸に対して昇降させて、分割型楔片を鋼管杭の内面に圧着させたり、離反させことができ、簡単な動作で鋼管杭内面側から把持したり離脱させたりすることができ、簡単軽量な把持装置とすることができ、強固な鋼管把持装置とすることができる。
第4発明によると、主軸の雄ねじ部に、ガイド体の雌ねじ孔がねじ込まれ、ガイド体の下部の内周側面には、下方に向かって漸次縮径するように傾斜する楔支承用テーパー状傾斜面が設けられ、また、ガイド体には鋼管側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられているので、主軸を回転させることで、ガイド体を主軸に対して昇降させて、分割型楔片を鋼管杭の外側面に圧着させたり、離反させることができ、簡単な動作で鋼管杭外側面から把持したり離脱させたりすることができ、簡単軽量な把持装置とすることができ、強固な鋼管把持装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0007】
図1〜図5は、本願発明の第1実施形態の鋼管杭の把持装置1およびこれを装着する鋼管杭の打ち込みおよび引き抜き装置(以下、単に杭打ち装置ともいう。)2の一実施形態を示すもので、先端部に鋼管杭7が接続される主軸5の他方の端部に、前記主軸5にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置11を主軸ハウジング8内の上部に備え、かつ主軸ハウジング8内の下部には、前記主軸5に回転力を付与するための回転駆動装置9を備えている。
【0008】
また、前記主軸ハウジング8内には、内歯および外歯を有するリングギヤ10が軸受けにより回転可能に支承されて収容されており、主軸5が前記主軸ハウジング8を貫通して配置され、この主軸5は、前記リングギヤ10の内歯に嵌合するスプライン12を有し、軸線方向には移動自在となっている。前記主軸ハウジング8内には、複数の駆動モーターからなる回転駆動装置9が固定され、その出力軸に主軸ハウジング8内において固定された駆動ピニオン13が、前記リングギヤ10の外歯と噛み合い、内歯と噛み合ったスプライン12を駆動し、主軸5が回転駆動させられる。したがって、主軸5は、起振装置11により上下振動可能に、主軸5と共に上下振動するスプライン12はリングギヤ10に対して上下摺動可能にされている。また主軸5は、上下可動ピストン(図示を省略した)杆を備えた起振装置11側内において、カップリング等により上下可動ピストン杆に連結され上下動可能に支承されている。
【0009】
また、本発明の実施形態では、把持装置1の駆動系を簡素にするために、鋼管杭の打ち込み装置(以下、単に杭打ち装置ともいう。なお、把持装置と共同して鋼管杭の引き抜き装置にもなる)2側の主軸5の下端部に、ねじ式連結部を設けて、前記主軸5の回転駆動力により、把持装置1を作動させ、把持装置1側の駆動装置を不要にし、把持装置1側の構成を簡素に、把持装置1をより強固な構造になるようにされている。したがって、前記主軸5は、把持装置1の駆動軸であり、主軸5下端部のねじ部(第1実施形態では、雌ねじ部14)を介して把持装置1側に駆動力を伝達している。
【0010】
鋼管杭7に対する把持装置1の把持力は、前記の回転駆動装置9のトルクが所定の値となるように設定される。回転駆動装置9のトルクは設計により設定される。
【0011】
次に、前記の主軸5の下端部の雌ねじ孔14に連結される本発明の鋼管杭の把持装置1の第1実施形態について、図2を参照しながら説明すると、図2は、本発明の鋼管杭の把持装置1の断面図であり、杭打ち装置2における少なくとも下部が鋼製中空円筒体とされている中空主軸5の先端部(下端部)に、環状フランジ6が溶接などにより固着されている。
【0012】
前記環状フランジ6は鋼製環状のリング板であり、環状フランジ6の内空穴の径dは、前記中空主軸5の円筒体の内径Dより若干小さな内径としてある。環状フランジ6の内空面には、上部に雄ねじ軸部15を有するガイド体3を螺合させるための螺旋状の雌ねじ14が刻設されてあり、ガイド体3の上部外面に設けた螺旋状の上部雄ねじ部15と螺合させて連結されている。すなわち、該主軸5を回転させると、環状フランジ6が共に回転することで、これに螺合されているガイド体3が、主軸5の回転方向により、回転することなく上昇移動したり、下降移動させるようにしている。
【0013】
前記のガイド体3の下部外面は、下方に向かって漸次拡径するテーパー状傾斜面16とされ、軽量化を図るために、下部が上方に向かって漸次縮径する截頭円錐状の中空体であり、上部は中空雄ねじ軸部15とされている。ガイド体3は鋼製材料により製作される。
テーパー状傾斜面16の外周側面には、その周方向にほぼ等角度間隔をおいて、下部内側が半径方向で漸次外側に拡径するように傾斜する傾斜面17を備えていると共に半径方向外側に粗面を有する鋼管内面圧着用縦面18を備えている複数の分割型楔片4が配置され、各分割型楔片4は、各分割型楔片4の外周側に設けられた周方向の凹溝19に渡って嵌合配置された結束用環状弾性バンド20により、各分割型楔片4が所定以上に降下しないように位置保持されるようにされている。
【0014】
前記のようにガイド体3の下部は、下方に向かって外側にフレア状に拡がった形状となっており、ガイド体3の下部外面に傾斜ガイド面としてテーパー状傾斜面16を構成している。このテーパー状傾斜面16に接離自在に当接する傾斜部を有する複数のチャックブロックとしての分割型楔片4が、ガイド体3を取り囲むように配置されており、分割型楔片4は、半径方向でその内側が、テーパー状傾斜面16と当接する傾斜面17を有するとともに、半径方向外側は、接合される鋼管杭の内面に圧着される鉛直な縦面18を有している。
【0015】
横方向の周方向に間隔をおいて隣合う分割型楔片4同士は、ゴムのような環状弾性体や環状バネ材により円周方向に弾性結合されているのが望ましく、ガイド体3の外側を取り囲むように設置される。また、分割型楔片4の上端は環状フランジ6の下面に、近接または接するように設置してある。
【0016】
この実施形態では、環状フランジ6とガイド体3が相対的に上下方向に深く螺合されるに従って、前記の環状フランジ6の下面により、前記の各分割型楔片4の上面を押圧し、分割型楔片4を鋼管杭7の内面に圧着するようにされている。
【0017】
次に、杭打ち装置2に前記のような把持装置1を装着した状態で、鋼管杭7を把持する場合の工程について説明する。
【0018】
ガイド体3およびその周囲に設置された分割型楔片4は、接合される鋼管杭7における鋼管7aの中に挿入できるように、鋼管7aの内径よりも小さく設定されている。これらの把持装置1を鋼管杭7の上部より、鋼管7a内に挿入して、分割型楔片4の内側の傾斜部までのレベルが鋼管7a内にほぼ収まるまで挿入する。
【0019】
そうした後に、杭打ち装置2に取り付けられた回転駆動装置9により、鋼管主軸5を所定の方向に回転させる。すると、加振前では、主軸5側はほぼ一定位置に支持されているので、主軸5に固着された環状フランジ6の内側に螺合されたガイド体3が上方に移動する。この際、主軸5の回転と同時にガイド体3がとも回りしないように冶具などを固着すると良い。例えば、図示の形態ように、ガイド体3の下面外周側近傍に、下向きに突出する鋼板または鋼棒等の一つまたは複数の突起からなる係合部21を等角度間隔をおいて設け、また、鋼管杭7における鋼管7aの上端部内面に鋼板からなるストッパ22を、前記係合部21と係合するように半径方向で重なる位置となる部分を有するように溶接等により固定することで、ガイド体3の回転を抑制する等の方法が考えられる。
【0020】
ガイド体3が上方に移動すると、各分割型楔片4の上端は環状フランジ6の下面により抑えられているので、ガイド体3の下部に設けられたテーパー状傾斜面16に沿って各分割型楔片4が外側に、すなわち鋼管7aの内面に接する方向に移動することになる。このことにより各分割型楔片4が鋼管内面に押し付けられることとなり、各分割型楔片4と鋼管7aの内面が摩擦力により強固に結合され、結局、鋼管7aと該主軸5の強固な結合を得ることができる。
【0021】
この場合、各分割型楔片4の半径方向外周面18には、鋼管杭7の鋼管内面と強固に接続されるように、各分割型楔片4側に多数の突起4aを設けたり、表面を焼き入れ等により硬化させた鋼材などを用いると、接合強度が増加するので、好ましい。また、鋼管7aが分割型楔片4により外側に押されることになるため、鋼管7aの変形を抑えるとともに、鋼管内面と分割型楔片4の押圧力を増加させるために、鋼管外面に補強バンド23などを予め固着しておくとさらに良好な結合が得られる。
前記の補強バンド23としては、鋼製帯状板を鋼管杭7の外周側面に溶接等により固定してもよく、また、締め付け金具付き補強バンドを鋼管杭の外周面に装着するようにしてもよい。
【0022】
前記のような構造により把持装置1を介して主軸5と鋼管杭7とを結合する場合、この結合力は、杭打ち装置2の回転駆動装置9(図示の形態では、2つのモータ)により発生するトルクにより与えられるが、主軸5は回転駆動装置9を固着した主軸ハウジング8と軸方向には移動自在であるため、回転駆動装置9は、主軸5と一緒には振動しないため、把持力を付与する加力装置(従来の場合では、油圧ジャッキ、本発明では、回転駆動装置9)を、杭打ち時に一緒に振動させる必要がないので、把持装置1を含む振動させる装置の重量を大幅に軽量にすることができることから、小型の加振装置(起振装置)にて大きな振動を加えることが可能となり、エネルギー効率が向上し、コストを低減することができる。さらに、本発明では、加振装置により振動される振動体に、加力装置を含むことなく振動させることができるため、加力装置を含む機器の耐久性についても向上させることでできる。
【0023】
また、回転駆動装置9を逆回転させると、主軸5を逆方向に回転させ、ガイド体3は下方に移動することになり、分割型楔片4による鋼管7a外面の押圧力が弱まる。さらに主軸5を回転させると、分割型楔片4同士を結合している結束用環状弾性バンド20の反発力により、分割型楔片4は、鋼管内面7bから離れる方向へ移動するため、鋼管7aと把持装置1の結合が解かれ、容易に把持装置1を鋼管7aから離脱させることができる。
【0024】
(第2実施形態)
図6は、図1に対応した別形態の杭打ち装置2であり、図1と相違する部分は、フランジ6が円盤状であり、内側に中空部を設けないで、円盤状フランジ6の側周面に雄ねじ部24を設け、その雄ねじ部24をガイド体3の雌ねじ孔25(図7参照)に螺合して、把持装置1本体との連結および回転駆動装置9のトルクを伝達するようにした形態である。
【0025】
図7〜図9は、本発明の第2実施形態の鋼管杭の把持装置1の断面図であり、杭打ち装置2における中空円筒体状の主軸5の先端部に、円盤状フランジ6が溶接などにより固着されている。フランジ6は円盤状であり、フランジ6の外面には、ほぼ円筒状のガイド体3を螺合させるための螺旋状の雄ねじ部24が設けられており、ガイド体3の上部内面に設けられた螺旋状雌ねじ孔25を螺合させて連結または連結固定されている。
【0026】
すなわち、加振前では、主軸5側はほぼ一定位置に支持されているので、前記主軸5を回転させると、円盤状フランジ6が回転することで、これに螺合されているガイド体3が、前記円盤状フランジ6の回転方向により上下に移動させることができる。
【0027】
ガイド体3の上下方向の下部内側面(ほぼ中央部から下端部)には、下方に向かって漸次内径が縮径するように傾斜する楔支承用テーパー状傾斜面16aを備えており、すなわち内側にフレア状に拡がった形状のテーパー状傾斜面となっており、ほぼ円筒状のガイド体3の下部内面に傾斜ガイド面を前記楔支承用テーパー状傾斜面16aにより構成している。この楔支承用テーパー状傾斜面16aに、接離自在に当接する傾斜部を有する複数の分割型楔片4が、ガイド体3の内面下部に周方向に等角度間隔をおいて内包されるように配置されており、分割型楔片4は、半径方向外側下部が、楔支承用テーパー状傾斜面16aと当接するように傾斜面17を有するとともに、半径方向内側は、圧着して接合される鋼管杭7の外周面26と当接されるように鉛直な縦面18を備え、前記縦面18には突起または粗面が設けられている。
【0028】
各分割型楔片4同士は、各分割型楔片4を相互に離反させるように押圧する圧縮ゴムや圧縮バネ27により、円周方向に弾性的に連結結合されているのが望ましく、ガイド体3の内周部に円周方向に等角度間隔をおいて軽く圧着された状態に設置される。また、各分割型楔片4の上端部は、ガイド体3内に螺合された円盤状フランジ6下面に近接または接するように設置してある。
【0029】
ガイド体3およびその内側に設置された分割型楔片4の内径は、接合される鋼管7aの外側に被せることができるように、鋼管の外径よりも大きく設定されている。
【0030】
前記のような把持装置1を使用して鋼管杭7を把持する場合には、把持装置1を鋼管杭7の上部より、鋼管7aに被せるように設置し、分割型楔片4の内側の傾斜面17の上端が、鋼管上端とほぼ一致するようにする。
そうした後に、杭打ち装置2に取り付けられた回転駆動装置9により、鋼管主軸5を所定の方向に回転させる。すると、主軸5に固着された円盤状フランジ6の内側に螺合されたガイド体3が上方に移動する。この際、主軸5の回転と同時にガイド体3がとも回りしないような冶具などを固着すると良い。例えば、図示のように、ガイド体3からその下側に突起物からなる係合部21を固着しておき、係合部21が鋼管外側に設けられた鋼製の突起物からなるストッパ22と係合することで、ガイド体3の回転を抑制するなどの方法が考えられる。
【0031】
ガイド体3が上方に移動すると、分割型楔片4の上端は、円盤状フランジ6の下面により抑えられているので、ガイド体3の下部に設けられたテーパー状傾斜面16に沿って分割型楔片4が内側に、すなわち鋼管7aの外面に接する方向に移動することになる。このことにより分割型楔片4が鋼管外面に押し付けられることとなり、分割型楔片4と鋼管7aの外面が摩擦力により強固に結合され、結局、鋼管と該主軸の強固な結合を得ることができる。
【0032】
このとき、分割型楔片4の半径方向内面18は、鋼管杭7と強固に接続されるように、各分割型楔片側に多数の突起4aを設けたり、表面を焼き入れ等により硬化させた鋼材などを用いると、接合強度が増加するので、好ましい。また、鋼管が分割型楔片4により外側から内側に押されることになるため、鋼管の変形を抑えるとともに、鋼管外面と分割型楔片4の押圧力を増加させるために、鋼管内面に、鋼製補強バンドなどを予め固着しておくとさらに良好な結合が得られる。
なお、前記の鋼製補強バンド23を鋼管7aの内周面に圧着する方向としては、鋼管7aの内周面の周長よりも若干短い帯状鋼板を鋼管内周面に沿って配置し、かつ帯状鋼板の両端部の一方または両方に板幅方向に延長する傾斜面を設け、その板幅方向の傾斜面に楔を圧入することにより、帯状鋼板を拡径するようにして鋼管内面に圧着するように押し付け、必要に応じ溶接により固着することで、鋼管杭7の上端部を補強するようにしてもよい。
【0033】
前記のような第2実施形態の構造においても、第1実施形態と同様に把持力を付与する加力装置を、杭打ち時に一緒に振動させる必要がないので、把持装置1を含む振動させる対象物の重量を大幅に軽量にすることができることから、小規模な加振装置にて大きな振動を加えることが可能となり、エネルギー効率が向上しコストを低減することができる。さらに、振動体に加力装置を含まないため、把持装置1を含む機器の耐久性についても向上させることでできる。
【0034】
前記の第2実施形態においては、主軸5は、中空軸の場合を説明したが、中実軸であってもよい。
【0035】
図示の形態においては、鋼管杭7に、等角度間隔をおいて複数のストッパ22を設ける形態を示したが、本発明を実施する場合、鋼管杭7に1つのストッパを設けるようにしてもよく、対称位置に複数のストッパー22を設けるようにしてもよい。
【0036】
前記各実施形態においては、回転駆動装置9を内臓した杭打ち装置2の主軸5に、把持装置1を連結した形態を示したが、回転駆動装置9を有しない杭打ち装置2である場合には、外部に露出している主軸5の中間部に平歯車等のギヤを取り付け、杭打ち装置2のフレームに、回転駆動装置9を別途取り付けて、主軸5を回転駆動するようにしてもよい。
【0037】
また、本発明の鋼管または鋼管杭の把持装置は、起立される、または起立している鋼管(例えば、鋼製短管)または鋼管杭を搬送する場合に適用することができる。
【0038】
なお、各実施形態において、杭打ち装置2は、掘削機あるいはクレーン等のからの係止フック付きワイヤロ−プ等の条体28により、吊り下げ支持される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態の鋼管杭の把持装置に使用する杭打ち装置の一部縦断正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の鋼管杭の把持装置を鋼管杭の上部に配置した状態を示す一部縦断正面図である。
【図3】図2に示す状態から把持装置により鋼管杭を把持している状態を示す一部縦断正面図である。
【図4】ガイド体と主軸とを分離して示す把持装置の斜視図である。
【図5】図2のA−A線断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の鋼管杭の把持装置に使用する杭打ち装置の一部縦断正面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の鋼管杭の把持装置を鋼管杭の上部に配置した状態を示す一部縦断正面図である。
【図8】(a)は図7のB−B線断面図、(b)図7のC−C線断面図である
【図9】図7に示す状態から把持装置により鋼管杭を把持している状態を示す一部縦断正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 把持装置
2 杭打ち装置
3 ガイド体
4 分割型楔片
4a 突起
5 主軸
6 フランジ
7 鋼管杭
7a 鋼管
7b 鋼管内面
8 主軸ハウジング
9 回転駆動装置
10 リングギア
11 起振装置
12 スプライン
13 駆動ピニオン
14 雌ねじ孔(雌ねじ)
15 雄ねじ軸部(雄ねじ部)
16 テーパー状傾斜面
16a テーパー状傾斜面
17 傾斜面
18 縦面
19 凹溝
20 結束用環状弾性バンド
21 係合部
22 ストッパ
23 補強バンド
24 雄ねじ部
25 雌ねじ孔
26 鋼管(杭)の外周面
27 圧縮バネまたは圧縮ゴム
28 条体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動装置により回転される主軸を備え、その主軸と鋼管とを接続するための鋼管の把持装置であって、前記主軸の先端部に、楔支承用テーパー状傾斜面を有するガイド体が、主軸とガイド体のいずれか一方に設けられた雄ねじと他方に設けられた雌ねじとのねじ式結合により接続され、前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管の側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする鋼管の把持装置。
【請求項2】
先端部に鋼管杭が接続される主軸の他方の端部に、その主軸にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置を備え、かつ前記主軸に回転力を付与するための回転駆動装置とを備えてなる鋼管杭の打込みおよび引抜き装置に用いられ、鋼管杭と前記主軸とを接続するための鋼管杭の把持装置であって、前記主軸の先端部に、楔支承用テーパー状傾斜面を有するガイド体が、主軸とガイド体のいずれか一方に設けられた雄ねじと他方に設けられた雌ねじとのねじ式結合により接続され、前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管杭の側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管杭側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする鋼管杭の把持装置。
【請求項3】
先端部に鋼管杭が接続される主軸の他方の端部に、その主軸にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置を備え、かつ前記主軸に回転力を付与するための回転駆動装置とを備えてなる鋼管杭の打込みおよび引抜き装置に用いられ、鋼管杭と前記主軸とを接続するための鋼管杭の把持装置であって、少なくとも先端部は中空とされた前記主軸の先端部内側に雌ねじ孔が設けられ、前記雌ねじ孔にガイド体の上部の雄ねじ軸部が螺合されて接続され、前記ガイド体には、その下部の外周側面が上方に向かって漸次縮径するように傾斜する楔支承用テーパー状傾斜面を有し、前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管杭の内側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管杭側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする鋼管杭の把持装置。
【請求項4】
先端部に鋼管杭が接続される主軸の他方の端部に、その主軸にその軸線方向の起振力を往復振動力として付与するための起振装置を備え、かつ前記主軸に回転力を付与するための回転駆動装置とを備えてなる鋼管杭の打込みおよび引抜き装置に用いられ、鋼管杭と主軸とを接続するための鋼管杭の把持装置であって、該主軸の先端部には、円盤状フランジが接合されており、その円盤状フランジの外周側面は雄ねじ部が設けられ、その雄ねじ部にガイド体の上部の雌ねじ孔が連結されて接続され、前記ガイド体には、その下部の内周側面が上方に向かって漸次拡径するように傾斜する楔支承用テーパー状傾斜面を有し、前記楔支承用テーパー状傾斜面の周方向に間隔をおいてその楔支承用テーパー状傾斜面に係合する斜面および鋼管杭の外側面に係合する押圧部を有する複数の分割型楔片が配置され、かつ前記主軸の下面は各分割型楔片の上面を押圧する押圧面とされ、前記ガイド体には、鋼管杭側のストッパに係合して共回りを防止する係合部が設けられて、前記主軸に対して前記ガイド体は昇降可能にかつ回転不能に装着されていることを特徴とする鋼管杭の把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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