説明

鋼管杭の杭頭把持装置および鋼管杭の施工方法

【課題】装置の小型化、軽量化を図ることができ、かつ滑りを防止して鋼管杭を確実に把持することができる鋼管杭の杭頭把持装置および鋼管杭の施工方法を提供すること。
【解決手段】第1および第2チャックブロック7,8が鋼管杭Pの内周面および一対の突起部P3,P4に当接して一対の突起部P3,P4間に係合することで、杭頭把持装置1と鋼管杭Pとの滑りを防止することができる。従って、鋼管杭Pを地盤に貫入する際に作用する振動による杭頭把持装置1と鋼管杭Pとの上下の滑りが防止できるので、鋼管杭Pを確実に把持して杭の施工を円滑かつ確実に実施することができる。さらに、第1および第2チャックブロック7,8と鋼管杭P内周面との摩擦のみで把持する機構ではないため、これらを押し付けるための機構が不要にでき、杭頭把持装置1の小型化、軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の杭頭把持装置および鋼管杭の施工方法に関し、詳しくは、鋼管杭を地盤に貫入する際に杭頭部を把持して杭打ち機の打設力を鋼管杭に伝達する鋼管杭の杭頭把持装置、および杭頭把持装置を用いた鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転貫入により地盤に貫入される鋼管杭の把持装置(チャック装置)として、鋼管杭の内部から杭頭部を把持するタイプのものが各種提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1に記載されたチャック装置は、ケーシングと、ケーシングに支持されたチャックロッドと、チャックロッドを上下駆動するチャックシリンダと、チャックロッドの下降によりスライドするスライドブロックと、スライドブロックに連動して径方向外側に突出する複数段のチャックブロックとを備えて構成されている。そして、このチャック装置は、チャックシリンダの伸張力によりチャックロッドを下降させ、スライドブロックを介してチャックブロックを突出させ、その先端を鋼管杭の内周面に圧接させることで、杭頭部を把持するように構成されている。
【0003】
一方、特許文献2、3に記載された回転貫入用治具は、ケーシングと、ケーシングに支持された摺動軸と、摺動軸の下降により径方向外側に突出するクランプブロックとを備え、杭打ち機の自重等により摺動軸を下降させてクランプブロックを突出させ、その先端のクランプシューを鋼管杭の内周面に圧接させることで、杭頭部を把持するように構成されている。これらの回転貫入用治具では、クランプブロックを突出させて杭頭部を把持した状態を維持させるために、下降させた摺動軸の上昇を規制するストッパーを有しているため、前記特許文献1のチャックシリンダのように、油圧等を用いて把持状態を維持するための機構が不要になって装置の小型、軽量化が可能になっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−100260号公報
【特許文献2】実開平5−81333号公報
【特許文献3】特開平8−144280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1〜3に記載の従来の把持装置では、チャックブロックやクランプシューと鋼管杭内周面との摩擦力のみで杭頭部が把持されるため、施工中に地盤から鋼管杭に大きな抵抗力が作用した場合に滑りが生じ、杭打ち機からの力が鋼管杭に十分に伝達されない可能性がある。特に、従来の把持装置が対象とする回転貫入鋼管杭ではなく、杭打ち機から上下の振動や打撃を加えることで鋼管杭を地盤に圧入する振動圧入工法や打込み工法の場合には、杭打ち機からの力が大きく、これと比較して把持力が不足してしまい、把持装置が鋼管杭に対して上下方向に滑って杭の施工に支障をきたす可能性が高い。
ここで、把持力を高めるためにチャックブロックやクランプブロックの突出力を大きくしたり、摩擦力を高めるために鋼管杭内周面と接するクランプシュー等の面積を小さくしたりすると、把持装置が大型化したり、把持位置における応力集中によって鋼管杭自体が局部変形したり等、他の不具合を引き起こす可能性があり好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、装置の小型化、軽量化を図ることができ、かつ滑りを防止して鋼管杭を確実に把持することができる鋼管杭の杭頭把持装置および鋼管杭の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の鋼管杭の杭頭把持装置は、鋼管杭の施工に際して杭頭部を把持する鋼管杭の杭頭把持装置であって、前記鋼管杭の杭頭部内周面には、当該内周面から突出した一対の突起部が当該鋼管杭の軸方向に沿った所定距離だけ離隔して設けられており、駆動源を有した駆動部と、この駆動部に駆動されて前記鋼管杭の軸方向に沿って進退移動可能な進退部と、この進退部の先端側に設けられた伝達部と、前記駆動部に連結されかつ杭頭内部に挿入可能に設けられた骨組部と、この骨組部に支持されて前記伝達部を介した前記駆動源からの駆動力により前記鋼管杭の径方向に移動自在に設けられるとともに、前記径方向外側に移動した際に前記一対の突起部に当接可能かつ当該突起部間にて当該鋼管杭の内周面に当接可能に設けられた少なくとも1つの把持部とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0008】
以上の本発明によれば、径方向外側に突出した把持部が一対の突起部間で鋼管杭の内周面に当接することで、把持部と突起部とが係合されることとなり、この機械的な係合により鋼管杭との滑りを防止することができる。特に、上下一対の突起部に把持部が係合することで、振動圧入工法や打込み工法において上下に作用する振動や打撃に対して把持部と鋼管杭との滑りが防止されるので、鋼管杭を確実に把持でき、杭の施工を円滑かつ確実に実施することができる。また、把持部と鋼管杭内周面との摩擦のみで把持する機構ではないため、把持状態を維持するために把持部を押し付けておく必要がなく、押し付けるための油圧装置などが不要にでき、装置の小型化、軽量化を図ることができる。さらに、摩擦力を高める必要もないことから、押し付け力を大きくしたり、把持部先端の面積を小さくしたりする必要もなく、鋼管杭の局部変形等の不具合の発生を防止することもできる。
【0009】
この際、本発明の鋼管杭の杭頭把持装置では、前記把持部は、前記鋼管杭の径方向外側かつ当該鋼管杭の杭頭方向に移動して前記鋼管杭の内周面に当接可能な第1把持部と、前記鋼管杭の径方向外側かつ当該鋼管杭の杭先端方向に移動して前記鋼管杭の内周面に当接可能な第2把持部と、これらの第1把持部および第2把持部と前記伝達部との間に設けられて前記鋼管杭の径方向にスライド自在なスライド部とを有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、第1把持部、第2把持部およびスライド部を有して把持部を構成し、第1把持部と第2把持部とがそれぞれ径方向外側に移動しつつ互いに鋼管杭の軸方向に沿った逆方向に移動して鋼管杭の内周面に当接することで、杭頭部への挿入時には把持部のサイズを小さくして挿入しやすくできる。さらに、第1把持部および第2把持部が上下の突起部に向かって拡がるように移動することで、突起部と確実に係合させて上下のがたつきを防止することができ、上述のように鋼管杭との滑りを防止することができる。
【0010】
さらに、本発明の鋼管杭の杭頭把持装置では、前記伝達部には、前記進退部の進退方向に対し所定の傾斜角度を有した伝達傾斜面が設けられ、前記スライド部には、前記伝達傾斜面に摺接するスライド摺接面と、前記第1把持部側に設けられて所定の傾斜角度を有した第1傾斜面と、前記第2把持部側に設けられて所定の傾斜角度を有した第2傾斜面とが設けられ、前記第1把持部には、前記第1傾斜面に摺接する第1摺接面と、前記鋼管杭の内周面に当接可能な第1当接面と、前記一対の突起部のうちの一方に当接可能な第1突起当接面とが設けられ、前記第2把持部には、前記第2傾斜面に摺接する第2摺接面と、前記鋼管杭の内周面に当接可能な第2当接面と、前記一対の突起部のうちの他方に当接可能な第2突起当接面とが設けられ、前記駆動部に駆動された前記進退部の一方への移動に伴い、前記伝達部の伝達傾斜面に前記スライド摺接面が摺接かつ押圧されて前記スライド部が径方向外側にスライドし、このスライド部の第1傾斜面に前記第1摺接面が摺接かつ押圧されて前記第1把持部が径方向外側かつ杭頭方向に移動するとともに、前記スライド部の第2傾斜面に前記第2摺接面が摺接かつ押圧されて前記第2把持部が径方向外側かつ杭先端方向に移動し、これらの第1把持部および第2把持部の前記第1当接面および第2当接面が前記鋼管杭の内周面に当接するとともに、前記第1突起当接面および前記第2突起当接面が前記一対の突起部の一方および他方にそれぞれ当接して当該鋼管杭の杭頭部を把持することが好ましい。
このような構成によれば、伝達傾斜面とスライド摺接面とを摺接させてスライド部をスライドさせ、第1、第2傾斜面と第1、第2摺接面とを摺接させて第1、第2把持部を移動させることで、各摺接面と傾斜面との間で押圧力を確実に作用させることができ、駆動部からの駆動力を把持力として鋼管杭の内周面および突起部に効率よく伝達することができる。
【0011】
また、本発明の鋼管杭の杭頭把持装置では、前記第1傾斜面および第2傾斜面は、それぞれ前記鋼管杭の径方向に沿った平面に対して40°〜50°の傾斜角度で形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、第1、第2把持部の径方向外側への移動量と、鋼管杭の軸方向に沿った移動量とがほぼ等しくなり、鋼管杭の内周面への当接力および突起部との係合力とをバランスさせて効率よく鋼管杭を把持することができる。
【0012】
さらに、本発明の鋼管杭の杭頭把持装置では、前記骨組部と前記第1把持部、第2把持部およびスライド部との間には、それぞれ当該第1把持部、第2把持部およびスライド部を前記鋼管杭の径方向内側に付勢する付勢手段が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、付勢手段によって第1、第2把持部およびスライド部をそれぞれ径方向内側に付勢することで、進退部を杭頭部側に後退させて伝達部からの押圧力を除去すれば、スライド部および第1、第2把持部を自動的に初期位置に戻すことができる。従って、複雑な復帰機構等を設けなくても、簡単な構造によってスライド部および第1、第2把持部を縮めて把持装置を鋼管杭から抜き出すことができる。
【0013】
また、本発明の鋼管杭の杭頭把持装置では、前記把持部は、少なくとも一対で構成され、一対の把持部同士が互いに径方向逆向きに移動自在に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、一対の把持部が互いに逆向きに移動する、すなわち鋼管杭の軸を挟んで対称に把持部が設けられたことで、これら一対の把持部に作用する把持力が互いに釣り合うこととなるため、把持部から骨組部や他の部位に反力が生じず、このような反力を支持するための補強等が不要にでき、装置の小型化、軽量化を促進させることができる。ここで、把持装置において一対の把持部が一組だけ設けられていてもよく、二組(把持部が4つ)や三組(把持部が6つ)、四組(把持部が8つ)の把持部が設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明の鋼管杭の杭頭把持装置では、前記駆動部は、前記骨組部と連結された駆動部本体と、この駆動部本体に収納されるとともに前記進退部と連結された前記駆動源としての電動モータと、この電動モータを進退自在に支持する進退支持部とを有して構成され、前記駆動部本体には、前記進退部に設けられた雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、駆動源を電動モータで構成したことで、油圧モータと比較して作動に要する機構を簡素化することができる。さらに、電動モータに連結した進退部に雄ねじ部を形成し、この雄ねじ部と駆動部本体の雌ねじ部とを螺合させたことで、電動モータで進退部を回転させれば雄ねじ部に案内されて進退部が進退移動することとなり、油圧シリンダ等を用いなくても容易に進退部を進退駆動することができる。また、雄ねじ部と雌ねじ部とが螺合していることで、回転を止めた状態では進退部の進退移動が規制され、電動モータによる駆動力を常に作動させておかなくても、把持状態または初期状態を維持させることができる。従って、装置の小型化、軽量化を一層促進させることができる。
【0015】
また、本発明の鋼管杭の杭頭把持装置では、前記一対の突起部は、それぞれ前記鋼管杭の周方向に関して複数に分割された突起部材を当該鋼管杭の内周面に溶接接合して形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、閉断面を有した鋼管杭の内周面に比較的容易に突起部を形成することができる。
【0016】
一方、本発明の請求項9に記載の鋼管杭の施工方法は、前記いずれかの鋼管杭の杭頭把持装置を用いた鋼管杭の施工方法であって、地上において前記鋼管杭を略水平に設置した状態で前記杭頭把持装置の骨組部および把持部を当該鋼管杭の杭頭部に挿入し、前記駆動部によって前記進退部を前記鋼管杭の先端側に移動させ、この進退部の移動によって前記伝達部を介して径方向外側に移動した前記把持部を前記鋼管杭の内周面に当接させ、この把持部で前記鋼管杭の杭頭部を把持した状態で前記杭頭把持装置とともに当該鋼管杭を略鉛直に立ち上げ、立ち上げた鋼管杭に前記杭頭把持装置を介して上下振動を加えつつ地盤に貫入することを特徴とする。
【0017】
以上の施工方法によれば、前述した杭頭把持装置による効果と同様の効果を得ることができる。特に、上下振動により鋼管杭を地盤に貫入する振動圧入工法において、把持装置と鋼管杭との滑りを効果的に防止して施工性を向上させることができる。
【0018】
この際、本発明の鋼管杭の施工方法では、前記杭頭把持装置で前記鋼管杭の杭頭部を把持する際に、当該鋼管杭と前記駆動部との相対移動を規制する規制手段を用いて当該駆動部を位置決めすることが好ましい。
このような構成によれば、杭頭把持装置の駆動部によって進退部を鋼管杭先端方向に押し込んだ際に、その反力により鋼管杭から離れる方向に駆動部が移動しようとしても、その移動を規制手段で規制することで駆動部を所定位置に位置決めすることができ、把持作業を確実に実施することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明の鋼管杭の杭頭把持装置および鋼管杭の施工方法によれば、把持装置の小型化、軽量化を図ることができ、かつ把持装置と鋼管杭との滑りを防止して鋼管杭を確実に把持して施工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2は、それぞれ本発明の実施形態に係る鋼管杭Pの杭頭把持装置1を示す縦断面図である。図3〜図7は、それぞれ杭頭把持装置1を示す横断面図である。図8〜図10は、それぞれ杭頭把持装置1の要部を示す斜視図である。ここで、図1は、図3〜図6において矢視I−I線で示す縦断面図であり、図2は、図3〜図6において矢視II−II線で示す縦断面図である。図3〜図7は、それぞれ図1、図2において矢視III−III線、矢視IV−IV線、矢視V−V線、矢視VI−VI線および矢視VII−VII線で示す横断面図である。そして、図1、図2における左側および図3、図5には、杭頭把持装置1の初期状態(非把持状態)が示され、図1、図2における右側および図4、図6には、杭頭把持装置1の把持状態が示されている。
【0021】
図1〜図10において、杭頭把持装置1は、鋼管杭Pの上下振動圧入による地盤への貫入施工に際して杭頭部を内側から把持するものである。ここで、鋼管杭Pは、円形鋼管で形成された鋼管杭本体P1と、この鋼管杭本体P1の杭頭部外周面に固定された複数(例えば4つ)の係止片P2と、鋼管杭本体P1の杭頭部内周面にから突出したリング状の一対の突起部(上側突起部P3、下側突起部P4)とを有して形成されている。上側突起部P3と下側突起部P4とは、互いに鋼管杭Pの軸方向に沿った所定距離だけ離隔して設けられており、これらの上側突起部P3および下側突起部P4は、ぞれぞれ鋼管杭Pの周方向に関して複数(例えば4つ)に分割された突起部材を鋼管杭本体P1の内周面に溶接固定して構成されている。そして、鋼管杭Pは、杭頭把持装置1の上側に装着される杭打ち機M(後述)によって、杭頭把持装置1を介して上下振動が加えられるとともに、下方押圧されることで地盤に貫入(振動圧入)されるようになっている。
【0022】
杭頭把持装置1は、駆動源としての電動モータ21を有した駆動部2と、この駆動部2に駆動されて鋼管杭Pの軸方向に沿って進退移動可能な進退部としてのチャックロッド3と、このチャックロッド3の先端側に設けられた伝達部としての摺動錐4と、駆動部2に連結されて杭頭内部に挿入可能に設けられた骨組部5と、この骨組部5に支持されてチャックロッド3および摺動錐4を介した電動モータ21からの駆動力により鋼管杭Pの径方向に移動自在に設けられた少なくとも1つの把持部とを備えて構成されている。把持部は、摺動錐4の側方に設けられて鋼管杭Pの径方向にスライド自在なスライド部6と、鋼管杭Pの径方向外側かつ鋼管杭Pの杭頭方向(上方)に移動可能な第1把持部としての第1チャックブロック7と、鋼管杭Pの径方向外側かつ鋼管杭Pの杭先端方向(下方)に移動可能な第2把持部としての第2チャックブロック8とを有して構成されている。これらのスライド部6、第1および第2チャックブロック7,8を1セットとした把持部は、本実施形態では、8セットが周方向に略等間隔で並んで配置され、すなわち鋼管杭Pの軸に対称に一対(2つ)の把持部が四組で構成されている。
【0023】
駆動部2は、チャックロッド3の上端に連結された電動モータ21と、骨組部5と連結されるとともに電動モータ21を収納する駆動部本体としてのケーシング22と、電動モータ21を上下進退自在に支持する進退支持部23とを有して構成されている。そして、ケーシング22の底面には、チャックロッド3を挿通させるとともにチャックロッド3に設けた雄ねじ部31と螺合する雌ねじ部24が形成されている。このような駆動部2では、適宜な電源から電力を供給して電動モータ21を回転作動させることで、チャックロッド3が回転駆動され、ケーシング22の雌ねじ部24に雄ねじ部31が案内されることで、チャックロッド3が上下進退移動し、これに伴って進退支持部23に案内されて電動モータ21も上下移動するように構成されている。そして、チャックロッド3および電動モータ21が上方の始端位置(図1、2の左側に示す位置)から、下方の終端位置(図1、2の右側に示す位置)まで下降することで、前記スライド部6、第1および第2チャックブロック7,8を初期状態から把持状態に駆動できるようになっている。
【0024】
伝達部としての摺動錐4は、図1、2、7に示すように、下方に向かって径寸法が徐々に小さくなる全体略円錐台状に形成され、チャックロッド3の下端部に回転自在に取り付けられている。この摺動錐4の側面部には、上方に向かって徐々に径方向外側に向かって傾斜した伝達傾斜面41が形成されており、この伝達傾斜面41がチャックロッド3の下降に伴ってスライド部6に摺接することで、スライド部6を径方向外側に移動させるように構成されている。この際、チャックロッド3が回転しながら下降するようになっているが、チャックロッド3に対して摺動錐4が回転することで、摺動錐4自体は、スライド部6に対して相対回転しないようになっている。そして、伝達傾斜面41の傾斜角度は、鋼管杭Pの径方向に沿った平面(水平面)に対して40°〜50°に設定されている。
【0025】
骨組部5は、図2、8〜10に示すように、駆動部2のケーシング22に連結されて上下に延びる複数(例えば4本)の連結棹51と、第1および第2チャックブロック7,8の上下間に位置するリング状の中間フレーム52と、この中間フレーム52の上側に固定されて第1チャックブロック7を支持する上側フレーム53と、中間フレーム52の下側に固定されて第2チャックブロック8を支持する下側フレーム54と、下側フレーム54の下部同士を連結する底板フレーム55とを有して構成されている。上側フレーム53および下側フレーム54は、スライド部6、第1および第2チャックブロック7,8と周方向に交互に設けられており、これらの把持部のセット数と同一の8セットで構成されている。
【0026】
スライド部6は、鋼管杭Pの径方向に沿った長孔を有して構成され、この長孔に骨組部5の中間フレーム52が挿通されることで、骨組部5に対して径方向に進退自在に支持されている。そして、スライド部6は、摺動錐4の伝達傾斜面41に摺接可能なスライド摺接面61と、第1チャックブロック7側に設けられた第1傾斜面62と、第2チャックブロック8側に設けられた第2傾斜面63とを有して形成されている。第1傾斜面62は、上方に向かって徐々に径方向内側に向かって傾斜して形成され、その傾斜角度は、鋼管杭Pの径方向に沿った平面に対して40°〜50°に設定されている。第2傾斜面63は、下方に向かって徐々に径方向内側に向かって傾斜して形成され、その傾斜角度は、鋼管杭Pの径方向に沿った平面に対して40°〜50°に設定されている。また、スライド部6と中間フレーム52との間には、スライド部6を径方向内側に向かって付勢する付勢手段としてのばね64が設けられ、前述のように摺動錐4によってスライド部6が径方向外側に移動された後に摺動錐4が上方に戻れば、ばね64の付勢力によってスライド部6が初期位置(図1の左側の位置)に戻るようになっている。
【0027】
第1チャックブロック7は、骨組部5の隣り合う上側フレーム53間に挟まれるとともに、上側フレーム53に設けられた案内部に沿って径方向外側かつ鋼管杭Pの杭頭方向(上方)に移動自在に支持されている。この第1チャックブロック7は、スライド部6の第1傾斜面62に摺接可能な第1摺接面71と、鋼管杭Pの内周面に当接可能な第1当接面72と、前記一対の突起部P3,P4のうちの一方である上側の突起部P3に当接可能な第1突起当接面74とを有して形成され、スライド部6の第1傾斜面62に第1摺接面71が摺接かつ押圧されることで、径方向外側かつ上方に移動して第1当接面72を鋼管杭Pの内周面に当接し、第1突起当接面74を突起部P3の下面に当接するように構成されている。そして、第1チャックブロック7と上側フレーム53との間には、第1チャックブロック7を径方向内側かつ下方に向かって付勢する付勢手段としてのばね73が設けられ、前述のようにスライド部6が径方向内側に戻れば、ばね73の付勢力によって第1チャックブロック7が初期位置(図1の左側の位置)に戻るようになっている。
【0028】
第2チャックブロック8は、骨組部5の隣り合う下側フレーム54間に挟まれるとともに、下側フレーム54に設けられた案内部に沿って径方向外側かつ鋼管杭Pの杭先端方向(下方)に移動自在に支持されている。この第2チャックブロック8は、スライド部6の第2傾斜面63に摺接可能な第2摺接面81と、鋼管杭Pの内周面に当接可能な第2当接面82と、前記一対の突起部P3,P4のうちの他方である下側の突起部P4に当接可能な第2突起当接面84とを有して形成され、スライド部6の第2傾斜面63に第2摺接面81が摺接かつ押圧されることで、径方向外側かつ下方に移動して第2当接面82を鋼管杭Pの内周面に当接し、第2突起当接面84を突起部P4の上面に当接するように構成されている。そして、第2チャックブロック8と下側フレーム54との間には、第2チャックブロック8を径方向内側かつ上方に向かって付勢する付勢手段としてのばね83が設けられ、前述のようにスライド部6が径方向内側に戻れば、ばね83の付勢力によって第2チャックブロック8が初期位置(図1の左側の位置)に戻るようになっている。
【0029】
以上の杭頭把持装置1では、以下のように動作して鋼管杭Pの杭頭部を把持する。
すなわち、鋼管杭Pの杭頭部側からチャックロッド3の先端側、つまり摺動錐4、骨組部5、スライド部6、第1および第2チャックブロック7,8を鋼管杭P内部に挿入し、駆動部2の電動モータ21を作動する。この電動モータ21による回転でチャックロッド3が鋼管杭Pの先端側に進出させることで、摺動錐4が杭先端側に移動するとともに、この摺動錐4の伝達傾斜面41にスライド摺接面61が押圧されかつ摺接し、これによりスライド部6が径方向外側に移動する。そして、スライド部6の第1傾斜面62に第1摺接面71が押圧されかつ摺接することで、第1チャックブロック7が径方向外側かつ杭頭方向に移動し、第1当接面72が鋼管杭Pの内周面に当接するとともに、第1チャックブロック7の上端面が上側突起部P3に当接する。さらに、スライド部6の第2傾斜面63に第2摺接面81が押圧されかつ摺接することで、第2チャックブロック8が径方向外側かつ杭先端方向に移動し、第2当接面82が鋼管杭Pの内周面に当接するとともに、第2チャックブロック8の端面が下側突起部P4に当接する。以上のように、第1チャックブロック7および第2チャックブロック8が鋼管杭Pの内周面に当接するとともに、上側突起部P3と下側突起部P4との間に係合することで、鋼管杭Pの杭頭部が杭頭把持装置1によって把持される。
【0030】
一方、把持を解除して杭頭把持装置1を鋼管杭Pから抜き出す場合には、駆動部2の電動モータ21を逆向きに作動してチャックロッド3を鋼管杭Pの杭頭側に後退させることで、摺動錐4が杭頭側に移動するとともに、この摺動錐4の伝達傾斜面41による押圧が解除され、ばね64の付勢力でスライド部6が径方向内側に移動する。そして、スライド部6の第1傾斜面62による押圧が解除されることで、ばね73の付勢力で第1チャックブロック7が径方向内側かつ杭先端方向に移動するとともに、スライド部6の第2傾斜面63による押圧が解除されることで、ばね83の付勢力で第2チャックブロック8が径方向内側かつ杭頭方向に移動する。これにより、第1チャックブロック7および第2チャックブロック8が鋼管杭Pの内周面、上側突起部P3および下側突起部P4から離れて初期位置に戻り、このように摺動錐4、スライド部6、第1および第2チャックブロック7,8を初期位置に戻した状態で、これらを鋼管杭P内部から抜き出せばよい。
【0031】
次に、鋼管杭Pの施工方法について、図11〜図14に基づいて説明する。
図11〜図14は、それぞれ杭頭把持装置1を用いた鋼管杭Pの施工手順を示す断面図である。
先ず、図11に示すように、鋼管杭Pを地上において横向きに設置した状態で、杭頭部から杭頭把持装置1のチャックロッド3の先端側(第1および第2チャックブロック7,8など)を鋼管杭Pの内部に挿入する。この際、杭頭把持装置1の駆動部2を杭打ち機Mに固定しておくとともに、また駆動部2の電動モータ21に電力線等を結合しておく。また、鋼管杭Pの先端部側にストッパーS1を設置し、鋼管杭Pが地面に対して移動しないように位置決めしておく。
次に、図12に示すように、第1および第2チャックブロック7,8が鋼管杭Pの上側突起部P3および下側突起部P4に対して適切な位置まで杭頭把持装置1を挿入してから、杭打ち機M側にストッパーS2を設置し、杭打ち機Mおよび杭頭把持装置1が地面および鋼管杭Pに対して移動しないように位置決めしておく。
【0032】
次に、図13に示すように、杭頭把持装置1の駆動部2を駆動して前述のように第1および第2チャックブロック7,8を上側突起部P3および下側突起部P4側に移動させ、杭頭把持装置1で鋼管杭Pの杭頭部を内部から把持する。この際、チャックロッド3を押し下げた反力が鋼管杭Pおよび駆動部2に作用するが、この反力は、鋼管杭Pを介して一方のストッパーS1に支持されるとともに、杭打ち機Mを介して他方のストッパーS2に支持され、これにより鋼管杭P、杭頭把持装置1および杭打ち機Mが移動しないようになっている。これに続いて、鋼管杭Pの係止片P2と杭打ち機Mの係止片M1とをワイヤー状のストッパーS3で連結し、このストッパーS3を所定の緊張力で締め付け、前述のストッパーS1,S2で支持していた反力をストッパーS3で支持する。これにより、ストッパーS1,S2を取り外しても、ストッパーS3によって鋼管杭Pと杭頭把持装置1および杭打ち機Mとが相対的に移動しないようにでき、すなわちストッパーS1,S2,S3によって本発明の規制手段が構成されている。
【0033】
以上のようにして鋼管杭Pの杭頭部を杭頭把持装置1で把持した状態で、図14に示すように、鋼管杭P、杭頭把持装置1および杭打ち機Mを立ち上げる。次に、杭打ち機Mを適宜な重機に取り付けるとともに、所定の杭施工位置に鋼管杭Pの先端をセットしてから、杭打ち機Mにより上下振動を加えつつにより、鋼管杭Pを地盤に貫入する。そして、所定の深さまで鋼管杭Pを貫入したら、前述のように杭頭把持装置1の駆動部2を逆に駆動して第1および第2チャックブロック7,8を初期位置に戻してから、これらを鋼管杭Pから抜き出して杭の施工が完了する。
【0034】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、第1および第2チャックブロック7,8が鋼管杭Pの内周面および一対の突起部P3,P4に当接して一対の突起部P3,P4間に係合することで、杭頭把持装置1と鋼管杭Pとの滑りを防止することができる。従って、振動圧入工法によって鋼管杭Pを地盤に貫入する際に、上下に作用する振動による杭頭把持装置1と鋼管杭Pとの上下の滑りが防止できるので、鋼管杭Pを確実に把持して杭の施工を円滑かつ確実に実施することができる。
【0035】
(2)さらに、第1および第2チャックブロック7,8と鋼管杭P内周面との摩擦のみで把持する機構ではないため、把持状態を維持するために第1および第2チャックブロック7,8を押し付けておく必要がなく、押し付けるための油圧装置などが不要にでき、杭頭把持装置1の小型化、軽量化を図ることができる。さらに、第1および第2チャックブロック7,8と鋼管杭P内周面と摩擦力をさほど高める必要もないことから、押し付け力を大きくしたり、把持部先端の面積を小さくしたりする必要もなく、鋼管杭Pの局部変形等の不具合の発生を防止することもできる。
【0036】
(3)さらに、第1チャックブロック7が径方向外側に移動しつつ鋼管杭Pの杭頭側に移動し、第2チャックブロック8が径方向外側に移動しつつ鋼管杭Pの杭先端側に移動するように構成したことで、杭頭部への挿入時には第1および第2チャックブロック7,8部分のサイズを小さくして挿入しやすくできる。そして、第1および第2チャックブロック7,8が上下の突起部P3,P4に向かって拡がるように移動することで、上下の突起部P3,P4と確実に係合させて上下のがたつきを防止することができ、鋼管杭Pとの滑りを確実に防止することができる。
【0037】
(4)また、チャックロッド3先端の摺動錐4の伝達傾斜面41とスライド部6のスライド摺接面61とを摺接させてスライド部6をスライドさせるとともに、スライド部6の第1および第2傾斜面62,63と第1および第2チャックブロック7,8の第1および第2摺接面71,81とを摺接させて第1および第2チャックブロック7,8を移動させることで、各摺接面61,71,81と傾斜面41,62,63との間で押圧力を確実に作用させることができ、駆動部2からの駆動力を把持力として鋼管杭Pの内周面および上下の突起部P3,P4に効率よく伝達することができる。
【0038】
(5)さらに、ばね64,73,83によってスライド部6および第1および第2チャックブロック7,8をそれぞれ径方向内側に付勢することで、チャックロッド3および摺動錐4を後退させれば、スライド部6および第1および第2チャックブロック7,8を自動的に初期位置に戻すことができ、複雑な復帰機構等を設けなくても、簡単な構造によってスライド部6および第1および第2チャックブロック7,8を縮めて杭頭把持装置1を鋼管杭Pから抜き出すことができる。
【0039】
(6)また、スライド部6、第1および第2チャックブロック7,8をセットにした把持部が鋼管杭Pの軸対称に複数組で配置されているので、対称位置にある一対の把持部に作用する把持力が互いに釣り合うこととなるため、把持部から骨組部5や他の部位に反力が生じず、このような反力を支持するための補強等が不要にでき、杭頭把持装置1の小型化、軽量化を促進させることができる。
【0040】
(7)さらに、駆動源を電動モータ21で構成したことで、油圧モータと比較して作動に要する機構を簡素化することができるとともに、電動モータ21に連結したチャックロッド3の雄ねじ部31をケーシング22の雌ねじ部24に螺合させたことで、電動モータ21の回転によりチャックロッド3を進退移動させることができ、油圧シリンダ等を用いなくても容易に進退駆動させることができる。また、雄ねじ部31と雌ねじ部24とが螺合していることで、電動モータ21の回転を止めた状態ではチャックロッド3の進退移動が規制され、電動モータ21による駆動力を常に作動させておかなくても、把持状態または初期状態を維持させることができ、杭頭把持装置1の小型化、軽量化を一層促進させることができる。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、杭頭把持装置1で把持した鋼管杭Pを杭打ち機Mによる上下振動で地盤に圧入する振動圧入工法を用いた場合を説明したが、杭の施工方法としては、振動圧入工法に限定されるものではなく、打込み工法や回転貫入工法などであってもよく、鋼管杭Pの杭頭部を把持した状態で杭を貫入する工法であれば、任意の施工方法に対して本発明を適用することができる。
【0042】
また、前記実施形態では、スライド部6と第1および第2チャックブロック7,8とを有した把持部を採用した場合を説明したが、把持部としては、前述のような第1および第2チャックブロック7,8を有さない構成が採用可能である。すなわち、把持部として、鋼管杭の径方向外側に突出するのみで、杭頭側や杭先端側に移動しないものを採用してもよい。その場合であっても、鋼管杭内周面に当接する把持部の当接部分が鋼管杭の一対の突起部間に係合するようにしておけば、鋼管杭との滑りを防止することができる。
さらに、把持部の数としては、前記実施形態で説明したものに限らず、任意の個数が採用可能である。
【0043】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る鋼管杭の杭頭把持装置を示す縦断面図である。
【図2】前記杭頭把持装置を示す縦断面図である。
【図3】前記杭頭把持装置の初期状態を示す横断面図である。
【図4】前記杭頭把持装置の把持状態を示す横断面図である。
【図5】前記杭頭把持装置の初期状態を示す横断面図である。
【図6】前記杭頭把持装置の把持状態を示す横断面図である。
【図7】前記杭頭把持装置の駆動部を示す横断面図である。
【図8】前記杭頭把持装置の要部を示す斜視図である。
【図9】前記杭頭把持装置の要部を示す斜視図である。
【図10】前記杭頭把持装置の要部を示す斜視図である。
【図11】前記杭頭把持装置を用いた鋼管杭の施工手順を示す断面図である。
【図12】前記杭頭把持装置を用いた鋼管杭の施工手順を示す断面図である。
【図13】前記杭頭把持装置を用いた鋼管杭の施工手順を示す断面図である。
【図14】前記杭頭把持装置を用いた鋼管杭の施工手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1…杭頭把持装置、2…駆動部、3…進退部としてのチャックロッド、4…伝達部としての摺動錐、5…骨組部、6…スライド部、7…第1チャックブロック、8…第2チャックブロック、21…電動モータ、22…駆動部本体としてのケーシング、23…進退支持部、24…雌ねじ部、31…雄ねじ部、41…伝達傾斜面、61…スライド摺接面、62…第1傾斜面、63…第2傾斜面、64…付勢手段としてのばね、71…第1摺接面、72…第1当接面、73…付勢手段としてのばね、74…第1突起当接面、81…第2摺接面、82…第2当接面、83…付勢手段としてのばね、84…第2突起当接面、P…鋼管杭、P3,P4…突起部、S1,S2,S3…規制手段としてのストッパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の施工に際して杭頭部を把持する鋼管杭の杭頭把持装置であって、
前記鋼管杭の杭頭部内周面には、当該内周面から突出した一対の突起部が当該鋼管杭の軸方向に沿った所定距離だけ離隔して設けられており、
駆動源を有した駆動部と、
この駆動部に駆動されて前記鋼管杭の軸方向に沿って進退移動可能な進退部と、
この進退部の先端側に設けられた伝達部と、
前記駆動部に連結されかつ杭頭内部に挿入可能に設けられた骨組部と、
この骨組部に支持されて前記伝達部を介した前記駆動源からの駆動力により前記鋼管杭の径方向に移動自在に設けられるとともに、前記径方向外側に移動した際に前記一対の突起部に当接可能かつ当該突起部間にて当該鋼管杭の内周面に当接可能に設けられた少なくとも1つの把持部と
を備えて構成されていることを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管杭の杭頭把持装置において、
前記把持部は、前記鋼管杭の径方向外側かつ当該鋼管杭の杭頭方向に移動して前記鋼管杭の内周面に当接可能な第1把持部と、前記鋼管杭の径方向外側かつ当該鋼管杭の杭先端方向に移動して前記鋼管杭の内周面に当接可能な第2把持部と、これらの第1把持部および第2把持部と前記伝達部との間に設けられて前記鋼管杭の径方向にスライド自在なスライド部とを有して構成されていることを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の鋼管杭の杭頭把持装置において、
前記伝達部には、前記進退部の進退方向に対し所定の傾斜角度を有した伝達傾斜面が設けられ、
前記スライド部には、前記伝達傾斜面に摺接するスライド摺接面と、前記第1把持部側に設けられて所定の傾斜角度を有した第1傾斜面と、前記第2把持部側に設けられて所定の傾斜角度を有した第2傾斜面とが設けられ、
前記第1把持部には、前記第1傾斜面に摺接する第1摺接面と、前記鋼管杭の内周面に当接可能な第1当接面と、前記一対の突起部のうちの一方に当接可能な第1突起当接面とが設けられ、
前記第2把持部には、前記第2傾斜面に摺接する第2摺接面と、前記鋼管杭の内周面に当接可能な第2当接面と、前記一対の突起部のうちの他方に当接可能な第2突起当接面とが設けられ、
前記駆動部に駆動された前記進退部の一方への移動に伴い、前記伝達部の伝達傾斜面に前記スライド摺接面が摺接かつ押圧されて前記スライド部が径方向外側にスライドし、このスライド部の第1傾斜面に前記第1摺接面が摺接かつ押圧されて前記第1把持部が径方向外側かつ杭頭方向に移動するとともに、前記スライド部の第2傾斜面に前記第2摺接面が摺接かつ押圧されて前記第2把持部が径方向外側かつ杭先端方向に移動し、これらの第1把持部および第2把持部の前記第1当接面および第2当接面が前記鋼管杭の内周面に当接するとともに、前記第1突起当接面および前記第2突起当接面が前記一対の突起部の一方および他方にそれぞれ当接して当該鋼管杭の杭頭部を把持することを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の鋼管杭の杭頭把持装置において、
前記第1傾斜面および第2傾斜面は、それぞれ前記鋼管杭の径方向に沿った平面に対して40°〜50°の傾斜角度で形成されていることを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の鋼管杭の杭頭把持装置において、
前記骨組部と前記第1把持部、第2把持部およびスライド部との間には、それぞれ当該第1把持部、第2把持部およびスライド部を前記鋼管杭の径方向内側に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼管杭の杭頭把持装置において、
前記把持部は、少なくとも一対で構成され、一対の把持部同士が互いに径方向逆向きに移動自在に設けられていることを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の鋼管杭の杭頭把持装置において、
前記駆動部は、前記骨組部と連結された駆動部本体と、この駆動部本体に収納されるとともに前記進退部と連結された前記駆動源としての電動モータと、この電動モータを進退自在に支持する進退支持部とを有して構成され、
前記駆動部本体には、前記進退部に設けられた雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成されていることを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の鋼管杭の杭頭把持装置において、
前記一対の突起部は、それぞれ前記鋼管杭の周方向に関して複数に分割された突起部材を当該鋼管杭の内周面に溶接接合して形成されていることを特徴とする鋼管杭の杭頭把持装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の鋼管杭の杭頭把持装置を用いた鋼管杭の施工方法であって、
地上において前記鋼管杭を略水平に設置した状態で前記杭頭把持装置の骨組部および把持部を当該鋼管杭の杭頭部に挿入し、前記駆動部によって前記進退部を前記鋼管杭の先端側に移動させ、この進退部の移動によって前記伝達部を介して径方向外側に移動した前記把持部を前記鋼管杭の内周面に当接させ、この把持部で前記鋼管杭の杭頭部を把持した状態で前記杭頭把持装置とともに当該鋼管杭を略鉛直に立ち上げ、立ち上げた鋼管杭に前記杭頭把持装置を介して上下振動を加えつつ地盤に貫入することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項10】
請求項9に記載の鋼管杭の施工方法において、
前記杭頭把持装置で前記鋼管杭の杭頭部を把持する際に、当該鋼管杭と前記駆動部との相対移動を規制する規制手段を用いて当該駆動部を位置決めすることを特徴とする鋼管杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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