説明

鋼管杭切断装置

【課題】吊り手段が不要で、安価であり、鋼管杭の裏面に土砂があっても切断できる鋼管杭切断装置を提供する。
【解決手段】鋼管杭11の上端部12に固定可能な複数の鋼管クランプ13を介して鋼管杭11の管端14の上方位置に実質的に同心に設けられたリング状のガイド材15と、ガイド材15に跨がって設けられるスライドレール16を備え、ガイド材15を旋回可能な旋回フレーム17と、スライドレール16に沿って移動可能な支持フレーム18と、支持フレーム18に上部が取付けられ、下部に鋼管杭11の内面19に当接する第1の水平ローラ20を備えた垂直支持部材21と、垂直支持部材21に上下調整可能に取付けられた切断用トーチ22と、支持フレーム18に一端が固定され他端が旋回フレーム17に取付けられ、支持フレーム18を半径方向外側に付勢する第1の弾性部材23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭を打設後で杭間掘削前に、地中にある鋼管杭を切断するために使用する鋼管杭切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来工法では、鋼管杭打設完了後に基礎打ちのため杭間掘削を行う場合には、大型掘削機(例えば0.7m3級バックホー)で掘削を行うが、打設した鋼管杭が支障になり、床付面の仕上げが困難な場合は、床付け仕上げのため、手元作業員を配置している。
また、大規模な構造物築造の場合には、床付け仕上げ用に小型重機を配置し、土砂を掻き集める作業及び床付けを仕上げる作業が必要となるため、作業能率の低下によって通常掘削より施工日数を要し、かつ、危険作業になっている。
一方、小規模構造物の築造では、鋼管杭基礎が採用される場合、掘削時、バックホーのバケットが入らないほどの場所で掘削を行わなければならない場合があり、人力掘削での作業が多くなる。
更に、鋼管杭の切断が掘削完了後になり、鋼管切断には合番のクレーンが必要となり、コスト的に問題があり、また、鋼管杭の切断が長尺の場合、玉掛け等が非常に危険な作業となる。
これらの問題を解決するために、掘削の時点で鋼管杭が無い状態、即ち、鋼管杭が切断されている状態にする、所謂、鋼管杭先行切断工法を行う必要がある。例えば、鋼管杭打設後、杭間掘削前に例えば、地表2m下の位置で鋼管杭を周方向に切断し、鋼管杭を撤去することにより、通常の機械掘削となり、施工能率が向上することにより、工期短縮に繋がり、作業上の危険要素を軽減させることができる。
このような切断装置として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この切断装置は垂直方向に打設された鋼管杭の管内に吊り手段により挿入された懸吊部材を複数個の固定部材を介して内面に圧接させた状態で、懸吊部材内に支承され、エアプラズマ切断用トーチが取付けられた回転部材を、エアプラズマ切断用トーチから所定の間隔をあけて設けられたガイドローラを内面に当接させて回転駆動して、エアプラズマ切断用トーチにより鋼管杭を切断するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】実開平3−13330号公報(第1図〜第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の切断装置では、吊り手段を介して懸吊部材を吊下げておく必要であり、別途吊り手段を、切断する鋼管杭の付近に設置する必要があった。また、エアプラズマ切断用トーチを使用しているので、装置が高価なものとなった。
なお、切断用トーチとして、エアプラズマ切断の他に、安価な方法としてアセチレンガス切断を採用することも考えられるが、アセチレンガス切断では鋼管杭の裏面にある土砂のため、切断が不可能であった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、吊り手段が不要で、安価であり、鋼管杭の裏面に土砂があっても切断できる鋼管杭切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る鋼管杭切断装置は、鋼管杭の上端部に固定可能な複数の鋼管クランプを介して前記鋼管杭の管端の上方位置に該鋼管杭と実質的に同心に設けられたリング状のガイド材と、前記ガイド材に跨がって設けられるスライドレールを備え、前記ガイド材を旋回可能な旋回フレームと、前記スライドレールに沿って移動可能な支持フレームと、前記支持フレームに上部が取付けられ、下部に前記鋼管杭の内面に当接する第1の水平ローラを備え、前記支持フレームから下側に延長して設けられた垂直支持部材と、前記垂直支持部材に上下調整可能に取付けられた切断用トーチと、前記支持フレームに一端が固定され、他端が前記旋回フレームに取付けられ、前記支持フレームを半径方向外側に付勢する第1の弾性部材とを有する。
【0007】
本発明に係る鋼管杭切断装置において、前記支持フレームは前記スライドレールに取付けられる下部支持フレームと、該下部支持フレームに回動調整可能に取付けられて前記垂直支持部材の上側が固定される上部支持フレームとを有し、しかも該上部支持フレームの上部には前記切断用トーチが補助支持部材を介して回動可能に取付けられ、しかも、前記補助支持部材の下部又は前記切断用トーチに設けられた第2の水平ローラを前記鋼管杭の内面に付勢する第2の弾性部材が前記補助支持部材の上部と前記上部支持フレームとの間に設けられるのが好ましい。
【0008】
本発明に係る鋼管杭切断装置において、前記切断用トーチの燃料にガソリンを使用するのが好ましい。
【0009】
本発明に係る鋼管杭切断装置において、前記鋼管クランプは、前記鋼管杭の上端部の周方向に間隔をあけて配置されたクランプ本体及び該クランプ本体から半径方向外側に水平に突出したスライドロッドを有するスライドクランプ体と、前記ガイド材の下端に設けられ、前記スライドクランプ体のスライドロッドが挿通するスライド孔が形成されたスライド用ブロックとを備えるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る鋼管杭切断装置において、前記旋回フレームは、前記ガイド材の外周部を挟んで転動する2個の両鍔付きの外側リングローラ及び前記ガイド材の内周部を挟んで転動する1個の両鍔付きの内側リングローラを有し、前記ガイド材の周方向に沿って移動可能で前記ガイド材の中心を通り前記スライドレールにより連結された2台の台車を備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜5記載の鋼管杭切断装置は、鋼管杭の上端部に複数の鋼管クランプを介して鋼管杭と実質的に同心に設けられたリング状のガイド材を旋回可能な旋回フレームに切断用トーチを取付けているので、切断用トーチを保持するための吊り手段が不要であり、しかも、切断用トーチを保持する構成をコンパクトに形成できるため、安価に製作できると共に、鋼管杭に簡単に固定できるため、取付けの作業性が向上する。
また、切断用トーチを、ガイド材に跨がって設けられるスライドレールに沿って移動可能な支持フレームから下側に延長して設けられた垂直支持部材に上下調整可能に取付け、第1の水平ローラを第1の弾性部材により鋼管杭の内面に付勢するので、旋回フレームを旋回することにより任意の高さ位置で鋼管杭を切断でき、これにより、切断の作業性が向上し、作業時間が短縮できると共に、切断用トーチのトーチヘッドと鋼管杭の内面との距離を一定に維持することができ、この結果、最適な切断性を確保することができる。
【0012】
請求項2記載の鋼管杭切断装置においては、上部支持フレームが下部支持フレームに回動調整可能に取付けられると共に、上部支持フレームには切断用トーチが補助支持部材を介して回動可能に取付けられ、しかも、第2の弾性部材により補助支持部材の下部又は切断用トーチに設けられた第2の水平ローラを鋼管杭の内面に付勢するので、鋼管杭の肉厚及び材質等に応じて、切断用トーチのトーチヘッドの適切な取付け角度及び鋼管杭の内面までの適切な距離の設定ができ、これにより、最適な鋼管杭の切断ができる。
【0013】
請求項3記載の鋼管杭切断装置においては、切断用トーチの燃料にガソリンを使用するので、例えば、アセチレンガスに比較して、鋼管杭の裏面に土砂があっても切断できると共に、搬送性及び切断作業性が向上し、コストダウンが図れる。
【0014】
請求項4記載の鋼管杭切断装置においては、鋼管杭の上端部の周方向に間隔をあけて配置されたクランプ本体を含むスライドクランプ体のスライドロッドを、ガイド材の下端に設けられスライド用ブロックのスライド孔にスライドすることにより、鋼管杭の管径の変化にも簡単に対応することができるので、装置をコンパクト、かつ軽量に構成できる。
【0015】
請求項5記載の鋼管杭切断装置においては、旋回フレームは、ガイド材の周方向に沿って移動可能でガイド材の中心を通りスライドレールにより連結された2台の台車を備え、各台車にはガイド材の外周部を挟んで転動する2個の両鍔付きの外側リングローラ及びガイド材の内周部を挟んで転動する1個の両鍔付きの内側リングローラを有しているので、旋回フレームをコンパクト、かつ軽量に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る鋼管杭切断装置の正断面図、図2は同鋼管杭切断装置の要部正断面図、図3は同鋼管杭切断装置の平面図、図4は同鋼管杭切断装置の鋼管クランプ及び旋回フレームの要部説明図、図5は同鋼管杭切断装置の要部平面図、図6(A)、(B)はそれぞれ、図1の矢視A−A断面図、矢視B−B断面図である。
【0017】
図1、図3、図5及び図6(A)に示すように、本発明の一実施の形態に係る鋼管杭切断装置10は、鋼管杭11の上端部(管端部)12に固定可能な複数(本実施の形態では4個)の鋼管クランプ13を介して鋼管杭11の管端14の上方に鋼管杭11と実質的に同心に設けられたリング状のガイド材15と、ガイド材15に跨がって設けられるスライドレール16を備え、ガイド材15を旋回可能な旋回フレーム17とを有している。
【0018】
鋼管杭切断装置10は、更に、スライドレール16に沿って移動可能な支持フレーム18と、支持フレーム18に上部が取付けられ、下部に鋼管杭11の内面19に当接する第1の水平ローラ20を備え、支持フレーム18から下側に延長して設けられた垂直支持部材21と、垂直支持部材21に上下調整可能に取付けられた切断用トーチ22と、支持フレーム18に一端が固定され、他端が旋回フレーム17に取付けられ、支持フレーム18を半径方向外側に付勢する第1の弾性部材の一例であるコイルバネ23とを有して構成されている。以下、これらについて詳しく説明する。
【0019】
図1〜図3、図5及び図6(A)に示すように、支持フレーム18はスライドレール16にスライドベアリング(図示せず)を介して取付けられる略直方体状の下部支持フレーム24と、下部支持フレーム24に回動調整可能に取付けられて垂直支持部材21の上側が固定される略直方体状の上部支持フレーム25とを有し、しかも上部支持フレーム25に取付けられた垂直支持部材21には切断用トーチ22が補助支持部材26を介して回動可能に取付けられ、しかも、切断用トーチ22の下部に設けられた第2の水平ローラ27を鋼管杭11の内面19に付勢する第2の弾性部材の一例であるコイルバネ28が補助支持部材26の上部と上部支持フレーム25との間に設けられている。
【0020】
図1〜図3に示すように、地中に打設された鋼管杭11の管径D(例えば、呼び径350〜600A、本実施の形態では400A)に応じて鋼管杭11の管端部12に固定可能な鋼管クランプ13は、鋼管杭11の管端部12の円周方向に4等分されて間隔をあけて配置されたクランプ本体29及びクランプ本体29の半径方向外側に水平に突出した断面矩形状のスライドロッド30を有するスライドクランプ体31と、ガイド材15の下端に設けられ、スライドクランプ体31のスライドロッド30が挿通する断面矩形状のスライド孔32が形成された直方体状のスライド用ブロック33とを備えている。
【0021】
クランプ本体29は外形が直方体状に形成されており、下側には鋼管杭11の管端14が当接すると共に、管端部(肉厚部)12が挿通する断面が逆凹状の嵌入部34が形成されている。クランプ本体29の嵌入部34の直上には、スライド用ブロック33のスライド孔32と同じ断面形状に取付け孔35が形成されており、取付け孔35にスライドロッド30の一側端部が嵌入されて、固定ボルト36を介してクランプ本体29に固定されている。嵌入部34の幅Wは鋼管杭11の肉厚tを考慮して適宜決定される。
【0022】
クランプ本体29の嵌入部34に連通して半径方向外側には、雌ねじ37が水平に形成されており、雌ねじ37に螺合し、先端38が鋼管杭11の外面39に当接するクランプボルト40が設けられ、更に、クランプボルト40の後端部には回転用バー41が取付けられている。
【0023】
スライド用ブロック33の下端部には、雌ねじ42が形成された垂直孔がスライド孔32の中央部に連通して設けられており、先端43がスライドロッド30の下面44に当接するするクランプボルト45が雌ねじ42に螺合して取付けられている。
円周方向に4等分して配置されたスライド用ブロック33の上端面46は、ガイド材15の下面15aに固定されている。以上の構成によって、鋼管杭11の管径Dに応じて、鋼管杭11の管端部12に4個の鋼管クランプ13を固定すると共に、鋼管クランプ13を介して、鋼管杭11の管端14の上方にガイド材15を鋼管杭11と同心に設けることができる。
【0024】
図2〜図5に示すように、ガイド材15は板状であって、鋼管杭11と同心円を有する外周47及び内周48を備えて、外周部49及び内周部50の断面は先部に台形を有して形成されている。
【0025】
旋回フレーム17は、ガイド材15の外周部49を挟んで、円周方向に間隔をあけて設けられた断面形状がH字で水平に転動する2個の両鍔付きの外側リングローラ51、及びガイド材15の内周部50を挟んで設けられた断面形状がH字で水平に転動する1個の両鍔付きの内側リングローラ52を有し、ガイド材15の円周方向に沿って移動可能で、しかも、ガイド材15の中心Oを通りスライドレール16により連結された2台の台車53、54を備えている。
【0026】
図2〜図4に示すように、台車53(54も同じ)は、スライドレール16の下面55が固定された矩形状の上部フレーム板56及び複数(本実施の形態では4個)のスペーサ部材57を介して上部フレーム板56と垂直方向に間隔をあけて上部フレーム板56に固定された下部フレーム板58を有する台車フレーム59と、台車フレーム59の半径方向外側の下部フレーム板58の下端に間隔をあけて垂直に設けられた2個の固定軸60に軸受を介して設けられ、水平面内で回転する2個の外側リングローラ51、及びの半径方向内側の下部フレーム板58の下端に垂直に設けられた1個の固定軸60aに軸受を介して設けられ、水平面内で回転する1個の内側リングローラ52とを備えている。
【0027】
スライドレール16は断面が略矩形状に形成されており、両端部は図示しない複数の固定ボルトにより台車フレーム59の上部フレーム板56に固定されている。スライドレール16には図示しないスライドベアリングを介して、スライドレール16に沿って移動する、平面視して矩形でブロック状の下部支持フレーム24が設けられている。
【0028】
下部支持フレーム24の上端には円周方向に4等分された位置にそれぞれ1本のボルト(図示せず)が垂直に設けられており、ボルトが貫通する円弧状の取付け孔61が円周方向に4等分された位置に形成された矩形状の上部支持フレーム25が設けられている。かかる構成によって、上部支持フレーム25を下部支持フレーム24に対して回動調整することができる。
【0029】
図2、図3、図5及び図6(A)に示すように、上部支持フレーム25の上面には、間隔をあけて対向して矩形状の取付け板62、63が立設されており、取付け板62、63の長手方向両端にはそれぞれ、間隔をあけて対向して設けられた矩形板状の対となる垂直材64、65を有する垂直支持部材21が垂下されている。垂直支持部材21の垂直材64、65は垂直方向に間隔をあけて、複数の水平に配置された連結部材66により連結されている。なお、第1の水平ローラ20は、図1及び図6(A)に示すように、連結部材66に取付けブラケット67を介して取付けられている。
【0030】
垂直支持部材21の垂直材65の表面には、垂直材65と略同じ大きさ(幅及び長さ)の矩形板状の補助支持部材26が上端部に設けられたピン68を介して小さな角度(0〜5°)で回動可能に設けられている。
補助支持部材26の表面でピン68の下方には、トーチレール69が補助支持部材26の長手方向に沿って設けられており、トーチレール69の平断面は先端部両側にフランジ部を有するT字状に形成されている。
【0031】
図1〜図3及び図6(A)、(B)に示すように、切断用トーチ22は、使用燃料の一例であるガソリンを下端のトーチヘッド70に供給するガソリン供給管71と、トーチヘッド70に酸素ガスを供給する、ガソリン供給管71に平行に配置された酸素ガス供給管72と、ガソリン供給管71及び酸素ガス供給管72を長手方向に間隔をあけて固定する2個のパイプホルダー73、74と、ガソリン供給管71及び酸素ガス供給管72の上端に設けられたブロック状の継手金具75とを備えている。継手金具75にはガソリン流路、酸素ガス流路が形成されており、それぞれにガソリン供給源、酸素ガス供給源が接続されるようになっている。切断用トーチ22の長さはL(例えば、1〜5m、本実施の形態では2.3m)としている。
【0032】
パイプホルダー73、74にはそれぞれ、トーチレール69の両側のフランジ部にガイドされて転動する両鍔付きの昇降ガイドローラ76、77が水平方向に間隔をあけて対向して配置されている。かかる構成によって、切断用トーチ22をトーチレール69に取付け及び取り外しでき、また、切断用トーチ22をトーチレール69に沿って上下動させ、トーチヘッド70を切断位置Xにして図示しない固定手段により補助支持部材26に固定することができる。
【0033】
更に、上部支持フレーム25を下部支持フレーム24に対して回動調整して、トーチヘッド70の鋼管杭11の内面19に対するトーチ取付け角度αを調整することができる。トーチヘッド70の切断位置Xは、図1に示すように、GLから深さH(例えば、1〜5m、実施の形態では2m)の位置にある。
【0034】
パイプホルダー74の下方で、トーチヘッド70の直上には、パイプホルダー73、74と同じように、ガソリン供給管71及び酸素ガス供給管72を固定するブラケット78を介して、鋼管杭11の内面19に当接して円周方向に転動する第2の水平ローラ27が設けられている。
【0035】
図2及び図5に示すように、上部支持フレーム25の切断用トーチ22側(図5では下側)には、スライドレール16の長手方向に沿って台車53側(図2及び図5では左側)に突出した矩形板状の取付けアーム79が設けられており、取付けアーム79の先側にねじ締結により固定された矩形状のベースプレート80には矩形板状のバネ取付けブラケット81が立設されている。
【0036】
補助支持部材26のピン68より台車53側で、しかも、ピン68の中心から上位置にはピン82が設けられており、ピン82には矩形板状の継手部材83の基側が設けられ、継手部材83の先側とバネ取付けブラケット81との間には、コイルバネ28が取付けられている。コイルバネ28のピン68側は、継手部材83の先側にフック84を介して連結されており、一方、コイルバネ28のバネ取付けブラケット81側(図2及び図5では左側)には、雄ねじが形成された付勢力調整用ボルト85が連結されており、付勢力調整用ボルト85はナット86、87を介してバネ取付けブラケット81に固定されるようになっている。
【0037】
かかる構成によって、補助支持部材26をピン68回りに付勢し、補助支持部材26に固定されたトーチレール69に沿って上下動調整可能な切断用トーチ22に設けられた第2の水平ローラ27を、鋼管杭11の内面19に当接させることができる。
【0038】
図2、図3及び図5に示すように、旋回フレーム17の台車54の直上のスライドレール16上面には、矩形状のベースプレート88を介して矩形板状のバネ取付けブラケット89が立設されており、上部支持フレーム25に立設された取付け板63とバネ取付けブラケット89との間には、コイルバネ23が取付けられている。
【0039】
コイルバネ23の台車53側は、ねじ継手部材90の先側に形成されたフック91に掛止され、ねじ継手部材90の基側はナット92、93により取付け板63に固定されている。一方、コイルバネ23の台車54側(図2及び図5では右側)には、鋼管杭11の管径Dに応じてコイルバネ23の位置を移動可能な、雄ねじが形成された付勢力調整用ボルト94が設けられており、付勢力調整用ボルト94はナット95、96を介してバネ取付けブラケット89に固定されるようになっている。
【0040】
かかる構成によって、スライドレール16に沿って移動可能な下部支持フレーム24に上部支持フレーム25を介して取付けられた垂直支持部材21の下部に設けられた第1の水平ローラ20を、鋼管杭11の内面19に一定の付勢力でもって当接させることができる。なお、図1中の符号97はパイプホルダー74に当接して、切断用トーチ22の下限位置を決めるホルダーストッパを表している。
【0041】
次いで、本発明の一実施の形態に係る鋼管杭切断装置10の使用方法及び作用(又は動作)について、図を参照しながら説明する。
事前に、必要本数の鋼管杭11が地中に打設されており、また、鋼管杭切断装置10は預け台(図示せず)に載置されている。
図2に示すように、4個の鋼管クランプ13のスライドクランプ体31のスライドロッド30を、切断する対象の鋼管杭11の管径Dに合わせて、スライド用ブロック33のスライド孔32にスライドさせてからクランプボルト45により、スライド用ブロック33に固定する。
【0042】
また、鋼管杭11の管径Dに合わせて、ナット95、96を操作して付勢力調整用ボルト94のバネ取付けブラケット89への取付け位置を調整し、付勢力調整用ボルト94をナット95、96を介してバネ取付けブラケット89に固定する。
更に、鋼管杭11の肉厚t及び材質等を考慮して、下部支持フレーム24に対する上部支持フレーム25の回動位置を調整して、トーチ取付け角度α、即ち、トーチヘッド70からの火炎の鋼管杭11の内面19に対する噴出角度(トーチヘッド70の火口の鋼管杭11の内面19に対する傾斜角度)を調整する。
【0043】
切断用トーチ22を上部支持フレーム25に設けられた補助支持部材26のトーチレール69に装着して、切断用トーチ22をトーチレール69に沿って下降させ、鋼管杭切断装置10を鋼管杭11に設置した場合に、トーチヘッド70が切断位置Xになるように切断用トーチ22を別途、固定手段によりトーチレール69に固定する。
揚重機により鋼管杭切断装置10を預け台から吊上げて、切断する鋼管杭11の管端部12に、4個の鋼管クランプ13のクランプ本体29の嵌入部34を嵌入して、回転用バー41を回転して、クランプボルト40を介してスライドクランプ体31を鋼管杭11に固定することにより鋼管杭切断装置10を鋼管杭11に固定する。
【0044】
必要に応じて、付勢力調整用ボルト85のバネ取付けブラケット81への固定位置をナット86、87を介して調整して、コイルバネ28による第2の水平ローラ27への付勢力の調整を行う。
切断用トーチ22の継手金具75のガソリン流路、酸素ガス流路にそれぞれ、ガソリン供給源、酸素ガス供給源を接続する。
【0045】
トーチヘッド70にガソリン及び酸素ガスを供給しながら着火し、人手により旋回フレーム17をガイド材15に対してゆっくりと旋回させながら、トーチヘッド70の火口から噴出される高温の燃焼ガスにより鋼管杭11を円周方向に溶断する。なお、鋼管杭11内には、切断部が酸欠になって消火しないように、送風手段により常時空気を送風している。
【0046】
図1及び図3に示すように、旋回フレーム17を旋回させる際、支持フレーム18及び垂直支持部材21等を介してコイルバネ23によって付勢された第1の水平ローラ20が鋼管杭11の内面19に当接して転動することにより、支持フレーム18及び垂直支持部材21等の鋼管杭11の内面19に対する距離が一定に保持されると共に、補助支持部材26及び切断用トーチ22等を介してコイルバネ28によって付勢された第2の水平ローラ27が鋼管杭11の内面19に当接して転動することにより、トーチヘッド70の火口と鋼管杭11の内面19との距離(例えば、20〜40mm)を一定に保持することができる。
【0047】
実際の現場において、鋼管杭切断装置10を用いて、呼び径=400A(管外径=406.4mm)、肉厚t=6mm、材質STPY400である鋼管杭11を20本切断した場合には、従来工法に比較して杭間掘削が無くなるので、約2日間工期を短縮することができた。
【0048】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の鋼管杭切断装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【0049】
前記実施の形態では、支持フレームを下部支持フレームと上部支持フレームに分け、しかも、補助支持部材を垂直支持部材に対して回動可能に構成したが、これに限定されず、必要に応じて、下部支持フレームと上部支持フレームを一体にして上部支持フレームの回動調整を行わないようにすると共に、補助支持部材を垂直支持部材に対して固定することもできる。また、切断用トーチのトーチヘッドの直上に、鋼管杭の内面に当接して転動する第2の水平ローラを設け、コイルバネにより第2の水平ローラを鋼管杭の内面に付勢したが、これに限定されず、必要に応じて、第2の水平ローラ及びコイルバネを省略することもできる。第2の水平ローラを切断用トーチに設けたが、補助支持部材の下部に設けてもよい。
【0050】
切断用トーチの燃料にガソリンを使用したが、これに限定されず、必要に応じて、鋼管杭の裏面に土砂があっても切断できるその他の燃料を使用することもできる。
4個の鋼管クランプを使用したが、これに限定されず、必要に応じて、2、3個又は5個以上の鋼管クランプを使用することもできる。
鋼管クランプには鋼管杭の管径に対応するように、スライドクランプ体及びスライド用ブロックを設けたが、これに限定されず、必要に応じて、例えば、鋼管杭の管径が一定であれば、スライド機構を省略することもできる。
【0051】
ガイド材の外周部及び内周部の先部の断面形状を台形としたが、これに限定されず、必要に応じて、他の形状とすることもできる。
旋回フレームを人手により旋回したが、これに限定されず、必要に応じて、駆動手段により旋回することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鋼管杭切断装置の正断面図である。
【図2】同鋼管杭切断装置の要部正断面図である。
【図3】同鋼管杭切断装置の平面図である。
【図4】同鋼管杭切断装置の鋼管クランプ及び旋回フレームの要部説明図である。
【図5】同鋼管杭切断装置の要部平面図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ、図1の矢視A−A断面図、矢視B−B断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10:鋼管杭切断装置、11:鋼管杭、12:(上端部)管端部、13:鋼管クランプ、14:管端、15:ガイド材、15a:下面、16:スライドレール、17:旋回フレーム、18:支持フレーム、19:内面、20:第1の水平ローラ、21:垂直支持部材、22:切断用トーチ、23コイルバネ(第1の弾性部材)、24:下部支持フレーム、25:上部支持フレーム、26:補助支持部材、27:第2の水平ローラ、28:コイルバネ(第2の弾性部材)、29:クランプ本体、30:スライドロッド、31:スライドクランプ体、32:スライド孔、33:スライド用ブロック、34:嵌入部、35:取付け孔、36:固定ボルト、37:雌ねじ、38:先端、39:外面、40:クランプボルト、41:回転用バー、42:雌ねじ、43:先端、44:下面、45:クランプボルト、46:上端面、47:外周、48:内周、49:外周部、50:内周部、51:外側リングローラ、52:内側リングローラ、53、54:台車、55:下面、56:上部フレーム板、57:スペーサ部材、58:下部フレーム板、59:台車フレーム、60、60a:固定軸、61:取付け孔、62、63:取付け板、64、65:垂直材、66:連結部材、67:取付けブラケット、68:ピン、69:トーチレール、70:トーチヘッド、71:ガソリン供給管、72:酸素ガス供給管、73、74:パイプホルダー、75:継手金具、76、77:昇降ガイドローラ、78:ブラケット、79:取付けアーム、80:ベースプレート、81:バネ取付けブラケット、82:ピン、83:継手部材、84:フック、85:付勢力調整用ボルト、86、87:ナット、88:ベースプレート、89:バネ取付けブラケット、90:ねじ継手部材、91:フック、92、93:ナット、94:付勢力調整用ボルト、95、96:ナット、97:ホルダーストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の上端部に固定可能な複数の鋼管クランプを介して前記鋼管杭の管端の上方位置に該鋼管杭と実質的に同心に設けられたリング状のガイド材と、
前記ガイド材に跨がって設けられるスライドレールを備え、前記ガイド材を旋回可能な旋回フレームと、
前記スライドレールに沿って移動可能な支持フレームと、
前記支持フレームに上部が取付けられ、下部に前記鋼管杭の内面に当接する第1の水平ローラを備え、前記支持フレームから下側に延長して設けられた垂直支持部材と、
前記垂直支持部材に上下調整可能に取付けられた切断用トーチと、
前記支持フレームに一端が固定され、他端が前記旋回フレームに取付けられ、前記支持フレームを半径方向外側に付勢する第1の弾性部材とを有することを特徴とする鋼管杭切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管杭切断装置において、前記支持フレームは前記スライドレールに取付けられる下部支持フレームと、該下部支持フレームに回動調整可能に取付けられて前記垂直支持部材の上側が固定される上部支持フレームとを有し、しかも該上部支持フレームの上部には前記切断用トーチが補助支持部材を介して回動可能に取付けられ、しかも、前記補助支持部材の下部又は前記切断用トーチに設けられた第2の水平ローラを前記鋼管杭の内面に付勢する第2の弾性部材が前記補助支持部材の上部と前記上部支持フレームとの間に設けられていることを特徴とする鋼管杭切断装置。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の鋼管杭切断装置において、前記切断用トーチの燃料にガソリンを使用することを特徴とする鋼管杭切断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼管杭切断装置において、前記鋼管クランプは、前記鋼管杭の上端部の周方向に間隔をあけて配置されたクランプ本体及び該クランプ本体から半径方向外側に水平に突出したスライドロッドを有するスライドクランプ体と、前記ガイド材の下端に設けられ、前記スライドクランプ体のスライドロッドが挿通するスライド孔が形成されたスライド用ブロックとを備えていることを特徴とする鋼管杭切断装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼管杭切断装置において、前記旋回フレームは、前記ガイド材の外周部を挟んで転動する2個の両鍔付きの外側リングローラ及び前記ガイド材の内周部を挟んで転動する1個の両鍔付きの内側リングローラを有し、前記ガイド材の周方向に沿って移動可能で前記ガイド材の中心を通り前記スライドレールにより連結された2台の台車を備えていることを特徴とする鋼管杭切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−303097(P2007−303097A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130562(P2006−130562)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000178011)山九株式会社 (48)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】